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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154068
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】運搬車
(51)【国際特許分類】
   B62D 11/04 20060101AFI20241023BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20241023BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B62D11/04 C
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067680
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 匡輔
【テーマコード(参考)】
3D052
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D052AA03
3D052DD01
3D052EE02
3D052FF03
3D052FF05
3D052GG03
3D052HH03
3D232CC13
3D232CC33
3D232CC40
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA06
3D232DB11
3D232DC08
3D232DC33
3D232DC35
3D232DD01
3D232DD03
3D232DE09
3D232EA05
3D232EA06
3D232EB01
3D232EB04
3D232EC37
3D232GG04
3D232GG15
3D333CB04
3D333CB07
3D333CB29
3D333CB39
3D333CB45
3D333CC06
3D333CC10
3D333CC13
3D333CC14
3D333CC21
3D333CC31
3D333CC44
3D333CC45
3D333CD04
3D333CD06
3D333CD09
3D333CD14
3D333CD57
3D333CE48
(57)【要約】
【課題】運搬車において、車輪や地面に対する負荷を軽減しつつ、所望の旋回半径で進行方向を変えることが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する運搬車は、車台と、車台に支持されており、地面に接地する右前輪、左前輪、右後輪および左後輪と、右前輪、左前輪、右後輪および左後輪のうちの少なくとも1つを、操舵輪として操舵する操舵機構と、右前輪、左前輪、右後輪および左後輪を駆動する原動機と、操舵機構および原動機の動作を制御する制御ユニットを備えている。第1の旋回運転モードにおいて、制御ユニットは、旋回半径の指令値が大きい場合に、操舵輪を指令値に応じた操舵角とする操舵旋回運転を実行し、旋回半径の指令値が小さい場合に、操舵輪を直進時の操舵角とし、右前輪および右後輪に対して、左前輪および左後輪を逆方向に回転させる超信地旋回運転を実行するように構成されている。
【選択図】図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車であって、
車台と、
前記車台に支持されており、地面に接地する右前輪、左前輪、右後輪および左後輪と、
前記右前輪、前記左前輪、前記右後輪および前記左後輪のうちの少なくとも1つを、操舵輪として操舵する操舵機構と、
前記右前輪、前記左前輪、前記右後輪および前記左後輪を駆動する原動機と、
前記操舵機構および前記原動機の動作を制御する制御ユニットを備えており、
前記制御ユニットは、第1の旋回運転モードで動作可能であり、
前記第1の旋回運転モードにおいて、前記制御ユニットは、旋回半径の指令値が大きい場合に、前記操舵輪を前記指令値に応じた操舵角とする操舵旋回運転を実行し、前記旋回半径の前記指令値が小さい場合に、前記操舵輪を直進時の操舵角とし、前記右前輪および前記右後輪に対して、前記左前輪および前記左後輪を逆方向に回転させる超信地旋回運転を実行するように構成されている、運搬車。
【請求項2】
前記車台に回動軸周りに回動可能に支持されており、ユーザによって操作されるハンドルと、
前記ハンドルの前記回動軸周りの回動角度を検出する回動角度センサをさらに備えており、
前記制御ユニットは、前記回動角度センサの出力信号に基づいて、前記旋回半径の前記指令値を特定する、請求項1の運搬車。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記第1の旋回運転モードを含む複数の旋回運転モードの中からユーザが選択した旋回運転モードで動作するように構成されており、
前記複数の旋回運転モードは、第2の旋回運転モードをさらに含んでおり、
前記第2の旋回運転モードにおいて、前記制御ユニットは、前記旋回半径の前記指令値に関わらず、常に前記操舵旋回運転を実行するように構成されている、請求項1または2の運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車台と、前記車台に支持されており、地面に接地する右前輪、左前輪、右後輪および左後輪と、前記右前輪、前記左前輪、前記右後輪および前記左後輪のうちの少なくとも1つを、操舵輪として操舵する操舵機構と、前記右前輪、前記左前輪、前記右後輪および前記左後輪を駆動する原動機と、前記操舵機構および前記原動機の動作を制御する制御ユニットを備えている。前記制御ユニットは、前記操舵輪を前記指令値に応じた操舵角とする操舵旋回運転と、前記操舵輪を直進時の操舵角とし、前記右前輪および前記右後輪に対して、前記左前輪および前記左後輪を逆方向に回転させる超信地旋回運転を実行可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-135992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、超信地旋回運転によって進行方向を変える場合、旋回半径を小さくすることができるものの、車輪と地面の間の摩擦が大きく、車輪や地面に対する負荷が大きくなる。これに対して、操舵旋回運転によって進行方向を変える場合、車輪や地面に対する負荷を小さくすることができるものの、旋回半径が大きくなる。本明細書では、運搬車において、車輪や地面に対する負荷を軽減しつつ、所望の旋回半径で進行方向を変えることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する運搬車は、車台と、前記車台に支持されており、地面に接地する右前輪、左前輪、右後輪および左後輪と、前記右前輪、前記左前輪、前記右後輪および前記左後輪のうちの少なくとも1つを、操舵輪として操舵する操舵機構と、前記右前輪、前記左前輪、前記右後輪および前記左後輪を駆動する原動機と、前記操舵機構および前記原動機の動作を制御する制御ユニットを備えていてもよい。前記制御ユニットは、第1の旋回運転モードで動作可能であってもよい。前記第1の旋回運転モードにおいて、前記制御ユニットは、旋回半径の指令値が大きい場合に、前記操舵輪を前記指令値に応じた操舵角とする操舵旋回運転を実行し、前記旋回半径の前記指令値が小さい場合に、前記操舵輪を直進時の操舵角とし、前記右前輪および前記右後輪に対して、前記左前輪および前記左後輪を逆方向に回転させる超信地旋回運転を実行するように構成されていてもよい。
【0006】
上記の構成によれば、第1の旋回運転モードにおいて、旋回半径の指令値が大きい場合には、制御ユニットが操舵旋回運転を実行するので、車輪や地面に対する負荷を軽減することができる。また、第1の旋回運転モードにおいて、旋回半径の指令値が小さい場合には、制御ユニットが超信地旋回運転を実行するので、小さい旋回半径で進行方向を変えることができる。上記の構成によれば、運搬車において、車輪や地面に対する負荷を軽減しつつ、所望の旋回半径で進行方向を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例に係る運搬車2を前方右方上方から見た斜視図である。
図2】実施例に係る運搬車2を後方右方上方から見た斜視図である。
図3】実施例に係る車台ユニット4と荷台ユニット6を前後方向および上下方向に沿った断面で見た断面図である。
図4】実施例に係るハンドルユニット8を後方右方上方から見た斜視図である。
図5】実施例に係るハンドルユニット8を前方右方上方から見た斜視図である。
図6】実施例に係るハンドルユニット8の支持パイプ52と、クランプスリーブ54と、上側アーム板58と、ハンドルスリーブ62を、後方右方上方から見た斜視図である。
図7】実施例に係るハンドルユニット8の下部を前後方向および上下方向に沿った断面で見た断面図である。
図8】実施例に係るハンドルユニット8の支持パイプ52と、下側アーム板60と、ハンドルスリーブ62と、ハンドルシャフト64と、スライドスリーブ70と、コイルバネ72と、センサベース78を、前方右方下方から見た斜視図である。
図9】実施例に係るハンドルユニット8の下部を左右方向および上下方向に沿った断面で見た断面図である。
図10】実施例に係るハンドルユニット8の支持パイプ52と、下側アーム板60と、ハンドルスリーブ62と、ハンドルシャフト64と、コイルバネ72と、センサベース78を、前方右方下方から見た斜視図である。
図11】実施例に係るハンドルユニット8において、ユーザから右方向への回動操作が行われた状態での、ハンドルユニット8の下部を左右方向および上下方向に沿った断面で見た断面図である。
図12】実施例に係るハンドルユニット8のセンサ基板115を後方右方上方から見た斜視図である。
図13】実施例に係るハンドルユニット8のセンサベース78を前方右方下方から見た斜視図である。
図14】実施例に係る操舵ユニット10と前輪ユニット12を前方左方上方から見た斜視図である。
図15】実施例に係る操舵ユニット10を前方右方上方から見た斜視図である。
図16】実施例に係る操舵ユニット10を前後方向および上下方向に沿った断面で見た断面図である。
図17】実施例に係る操舵ユニット10を前後方向および左右方向に沿った断面で見た断面図である。
図18】実施例に係る操舵ユニット10のスピンドル142、カムホイール144、スパーギヤ146、ストッパプレート148およびコイルバネ150を、前方左方上方から見た分解斜視図である。
図19】実施例に係る操舵ユニット10を前後方向および上下方向に沿った別の断面で見た断面図である。
図20】実施例に係る右前輪ユニット12aを前方左方上方から見た斜視図である。
図21】実施例に係る右前輪ユニット12aを左右方向および上下方向に沿った断面で見た断面図である。
図22】実施例に係る右前輪ユニット12aにおいて、右側キングピン172から取り外された状態の右側操舵プレート182を、前方左方上方から見た斜視図である。
図23】実施例に係る右後輪ユニット14aを後方左方上方から見た斜視図である。
図24】実施例に係るバンパユニット16を前方右方上方から見た斜視図である。
図25】実施例に係るバンパユニット16を後方左方下方から見た斜視図である。
図26】実施例に係るバンパユニット16の左部を前後方向および左右方向に沿った断面で見た断面図である。
図27】実施例に係るバンパユニット16の軸受ボックス244、直動パイプ254、スイッチ支持部材270、当接プレート274および衝突検知スイッチ278を後方左方上方から見た斜視図である。
図28】実施例に係る制御ユニット35が実行する旋回運転処理のフローチャートである。
図29】実施例に係る制御ユニット35が操舵旋回運転を実行する際に行う処理のフローチャートである。
図30】実施例に係る運搬車2が操舵旋回運転をする時の、ハンドルユニット8と、操舵ユニット10と、前輪ユニット12と、後輪ユニット14の様子を、上方から見た平面図である。
図31】実施例に係る運搬車2が超信地旋回運転をする時の、ハンドルユニット8と、操舵ユニット10と、前輪ユニット12と、後輪ユニット14の様子を、上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された運搬車、その製造方法及び使用方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0009】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0010】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記運搬車は、前記車台に回動軸周りに回動可能に支持されており、ユーザによって操作されるハンドルと、前記ハンドルの前記回動軸周りの回動角度を検出する回動角度センサをさらに備えていてもよい。前記制御ユニットは、前記回動角度センサの出力信号に基づいて、前記旋回半径の前記指令値を特定してもよい。
【0012】
一般に、ユーザがハンドルを小さく回動させる場合には、ユーザは緩やかに(すなわち大きな旋回半径で)進行方向を変えることを望んでいるものと考えられる。逆に、ユーザがハンドルを大きく回動させる場合には、ユーザは急激に(すなわち小さな旋回半径で)進行方向を変えることを望んでいるものと考えられる。上記の構成によれば、ハンドルの回動角度に応じて旋回半径の指令値を特定するので、ユーザが望んでいる旋回半径で運搬車の進行方向を変えることができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御ユニットは、前記第1の旋回運転モードを含む複数の旋回運転モードの中からユーザが選択した旋回運転モードで動作するように構成されていてもよい。前記複数の旋回運転モードは、第2の旋回運転モードをさらに含んでいてもよい。前記第2の旋回運転モードにおいて、前記制御ユニットは、前記旋回半径の前記指令値に関わらず、常に前記操舵旋回運転を実行するように構成されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、第1の旋回運転モードと第2の旋回運転モードを含む複数の旋回運転モードの中から、ユーザが所望の旋回運転モードを選択することができる。
【0015】
(実施例)
図1に示す運搬車2は、車台ユニット4と、荷台ユニット6と、ハンドルユニット8と、操舵ユニット10と、前輪ユニット12と、後輪ユニット14と、バンパユニット16を備えている。運搬車2は、荷台ユニット6に積載された荷物を運搬する。運搬車2は、車台ユニット4に搭載された受信機(図示せず)を備えている。運搬車2は、手動モード、自動モードまたはパーキングモードの何れかで動作することができる。手動モードでは、運搬車2は、ハンドルユニット8の後方に立ったユーザがハンドルユニット8を把持した状態で、ユーザによる操作に応じて前方または後方へ移動する。自動モードでは、運搬車2は、車台ユニット4の前方に立ったユーザが携帯するビーコン(図示せず)を追尾して移動する追従運転や、ユーザが操作するリモコン(図示せず)からの指示に応じて移動するリモコン運転を行う。この場合、運搬車2は、受信機によって、ビーコンやリモコンからの電波を受信する。パーキングモードでは、運搬車2は、ハンドルユニット8からの指令も、ビーコンやリモコンからの指令も受け付けることなく、その場で停止し続ける。
【0016】
(車台ユニット4)
図2に示すように、車台ユニット4は、車台フレーム20と、コントローラケース22と、バッテリボックス24と、前照灯26と、尾灯28を備えている。
【0017】
図3に示すように、コントローラケース22は、車台フレーム20の前後方向の中央近傍の下部に取り付けられている。コントローラケース22の内部には、メイン制御回路基板30、駆動制御回路基板32、電気ブレーキ回路基板34等が収容されている。メイン制御回路基板30は、運搬車2の全体の動作を制御する。駆動制御回路基板32は、後述する操舵モータ140(図16参照)、右前輪モータ204(図21参照)、左前輪モータ210(図21参照)、右後輪モータ(図示せず)および左後輪モータ(図示せず)の動作を制御する。電気ブレーキ回路基板34は、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータおよび左後輪モータに、電気ブレーキを作用させる。なお、以下ではメイン制御回路基板30、駆動制御回路基板32および電気ブレーキ回路基板34を総称して、制御ユニット35ともいう。
【0018】
バッテリボックス24は、車台フレーム20の後端下部に取り付けられている。バッテリボックス24の内部には、バッテリパックBPを着脱可能なバッテリ取付部36が設けられている。バッテリパックBPは、例えばリチウムイオン電池セル等の二次電池セルを備えている。運搬車2は、バッテリ取付部36に取り付けられたバッテリパックBPから供給される電力によって動作する。バッテリボックス24の後部には、開閉可能なバッテリカバー38が設けられている。バッテリカバー38を開いた状態とし、バッテリパックBPをバッテリ取付部36に対して前後方向にスライドさせることで、バッテリパックBPをバッテリ取付部36に対して着脱することができる。図2に示すように、バッテリボックス24の上面には、バッテリパックBPの電池残量を表示する残量表示部40と、残量表示部40の表示/非表示をユーザが切り替え操作する表示操作部42と、エラーの発生時にエラーを表示するエラー表示部43が設けられている。
【0019】
図1に示すように、前照灯26は、車台フレーム20の前方の左右端部に取り付けられている。前照灯26は、メイン制御回路基板30(図3参照)に電気的に接続されている。前照灯26は、運搬車2の前方を照明する。
【0020】
図2に示すように、尾灯28は、車台フレーム20の後方の左右端部に取り付けられている。尾灯28は、メイン制御回路基板30(図3参照)に電気的に接続されている。尾灯28は、運搬車2の後方にいる人や車両に向けて、運搬車2が動作中であることを報知する。
【0021】
(荷台ユニット6)
図3に示すように、荷台ユニット6は、車台ユニット4の車台フレーム20の上方に、過積載検出センサ44を介して取り付けられている。過積載検出センサ44は、メイン制御回路基板30に電気的に接続されている。過積載検出センサ44は、荷台ユニット6への過積載を検出する。例えば、過積載検出センサ44は、荷台ユニット6に上限重量(例えば100kg)を超える荷物が載置された場合に、荷台ユニット6への過積載を検出する。
【0022】
(ハンドルユニット8)
図4図5に示すように、ハンドルユニット8は、スイッチボックス46と、ブレーキケース48と、ハンドルバー50と、支持パイプ52と、クランプスリーブ54と、クランプ部材56と、上側アーム板58と、下側アーム板60と、ハンドルスリーブ62と、ハンドルシャフト64(図7参照)と、シャフトカバー66と、シャフトベース68と、スライドスリーブ70(図7参照)と、コイルバネ72(図7参照)と、傾斜計74と、回動角度センサ76(図7参照)と、回動検出センサ77(図7参照)と、センサベース78と(図7参照)と、センサカバー79を備えている。なお、以下ではハンドルバー50と、支持パイプ52と、クランプスリーブ54と、クランプ部材56と、上側アーム板58と、下側アーム板60と、ハンドルスリーブ62と、ハンドルシャフト64を総称して、操舵ハンドル80ともいう。
【0023】
スイッチボックス46には、主電源スイッチ82と、主電源表示部84と、進行方向切換スイッチ86と、トリガスイッチ88と、照明スイッチ90と、照明表示部92と、速度切換スイッチ94と、速度表示部96と、警笛スイッチ98が設けられている。主電源スイッチ82は、運搬車2の主電源のオン/オフをユーザが切り替え操作することができる。主電源表示部84は、運搬車2の主電源のオン/オフを表示する。進行方向切換スイッチ86は、手動モードにおいて、ユーザが運搬車2の進行方向を切り換え操作することができる。トリガスイッチ88は、手動モードにおいて、ユーザが運搬車2の前進や後退のオン/オフを切り替え操作することや、運搬車2の進行速度を調整操作することができる。照明スイッチ90は、前照灯26および尾灯28のオン/オフをユーザが切り替え操作することができる。照明表示部92は、前照灯26および尾灯28のオン/オフを表示する。速度切換スイッチ94は、手動モードにおいて、ユーザが運搬車2の進行速度を切り換え操作することができる。速度表示部96は、手動モードにおいて、運搬車2の進行速度を表示する。警笛スイッチ98は、ユーザによって操作された時に、スイッチボックス46に内蔵されたブザー(図示せず)によって警笛を鳴らすことができる。主電源スイッチ82、主電源表示部84、進行方向切換スイッチ86、トリガスイッチ88、照明スイッチ90、照明表示部92、速度切換スイッチ94、速度表示部96、警笛スイッチ98、ブザーは、それぞれ、メイン制御回路基板30(図3参照)に電気的に接続されている。
【0024】
ブレーキケース48には、ブレーキレバー100と、ブレーキ保持レバー102が設けられている。ブレーキレバー100は、ユーザが引き上げ操作したときに、運搬車2を停止させる。ブレーキケース48の内部には、ブレーキレバー100が引き上げ操作されたか否かを検出する停止スイッチ(図示せず)が設けられている。停止スイッチはメイン制御回路基板30(図3参照)に電気的に接続されている。ブレーキ保持レバー102は、ブレーキレバー100が引き上げ操作された状態で保持する。ユーザがブレーキレバー100を引き上げ操作し、さらにブレーキ保持レバー102を引き上げ操作すると、ブレーキレバー100とブレーキ保持レバー102はいずれも引き上げ操作された状態で保持される。この状態から、ユーザがブレーキレバー100をさらに引き上げ操作すると、ブレーキ保持レバー102によるブレーキレバー100の保持が解除される。
【0025】
ハンドルバー50は、左右方向に延びる中央バー50aと、中央バー50aの右端から右後方に屈曲して延びる右側バー50bと、中央バー50aの左端から左後方に屈曲して延びる左側バー50cを備えている。右側バー50bの先端には、右側グリップ104が設けられている。スイッチボックス46は、右側グリップ104の近傍で右側バー50bに固定されている。左側バー50cの先端には、左側グリップ106が設けられている。ブレーキケース48は、左側グリップ106の近傍で左側バー50cに固定されている。中央バー50aの中央には、支持パイプ52の上端が固定されている。支持パイプ52は、上下方向に延びている。支持パイプ52は、クランプスリーブ54を貫通している。
【0026】
図6に示すように、クランプスリーブ54の上端には、クランプ部54aが設けられている。クランプ部54aには、クランプ部54aの上端から下方に延びるスリット54bが形成されている。図4に示すように、クランプ部材56は、クランプスリーブ54のクランプ部54aを左右両側から挟持するクランプ片56a,56bを備えている。クランプ片56a,56bの後端には、ボルト56cと、ナット56dが取り付けられている。ボルト56cは、クランプ片56a,56bの後部を貫通している。ナット56dは、ボルト56cの先端に螺合している。ナット56dには、ピン56eが設けられている。ユーザは、ピン56eを起こして、ピン56eをボルト56cに対して回転させることで、ナット56dをボルト56cに対して回転させることができる。ナット56dがボルト56cに締め付けられると、クランプ片56a,56bがクランプスリーブ54のクランプ部54aの外面に強く押し付けられ、それによってクランプ部54aの内面が支持パイプ52の外面に強く押し付けられる。これによって、支持パイプ52はクランプスリーブ54に対して固定される。ナット56dがボルト56cに対して緩められると、クランプ片56a,56bがクランプスリーブ54の外面に押し付けられなくなり、それによってクランプ部54aの内面が支持パイプ52の外面に押し付けられなくなる。これによって、支持パイプ52はクランプスリーブ54に対して上下方向に移動可能となり、かつ上下方向周りに回動可能となる。ナット56dをボルト56cに対して緩めた状態で、支持パイプ52をクランプスリーブ54に対して所望の位置および角度に調整した後、ナット56dをボルト56cに締め付けることで、クランプスリーブ54に対する支持パイプ52の位置および角度を固定することができる。
【0027】
図7に示すように、上側アーム板58は、クランプスリーブ54とハンドルスリーブ62を連結している。下側アーム板60は、上側アーム板58よりも下方で、クランプスリーブ54とハンドルスリーブ62を連結している。ハンドルスリーブ62は、ハンドルシャフト64の上端に固定されている。ハンドルシャフト64は、シャフトカバー66とシャフトベース68を貫通している。シャフトカバー66は、シャフトカバー66の上端においてハンドルシャフト64を回動可能に支持している。シャフトベース68は、シャフトベース68の下端においてハンドルシャフト64を回動可能に支持している。シャフトカバー66はシャフトベース68に固定されている。図2に示すように、シャフトベース68は、車台ユニット4の車台フレーム20に固定されている。
【0028】
図7に示すように、スライドスリーブ70は、シャフトカバー66およびシャフトベース68の内部において、ハンドルシャフト64の外周面を覆うように、ハンドルシャフト64に取り付けられている。図8に示すように、スライドスリーブ70には、ガイド溝70a,70bと、バネ受け部70cと、ボール保持孔70d,70e(図9参照)が設けられている。ガイド溝70a,70bは、スライドスリーブ70の外周面から径方向内側に陥凹しており、上下方向に沿って延びている。ガイド溝70a,70bには、上下方向に沿って延びるガイドピン108a,108bが摺動可能に係合している。図7に示すように、ガイドピン108a,108bの下部は、シャフトベース68に固定されている。このため、スライドスリーブ70は、シャフトベース68に対して上下方向に移動可能に保持されている。バネ受け部70cは、コイルバネ72の下端を支持する。コイルバネ72は、シャフトカバー66およびシャフトベース68の内部に配置されており、シャフトカバー66に対してスライドスリーブ70を下方に向けて付勢する。
【0029】
図9に示すように、ボール保持孔70d,70eには、ボール110a,110bが内側から入り込んでいる。ボール保持孔70d,70eの内径は、ボール110a,110bの外径よりも僅かに大きい。ボール保持孔70d,70eの外側はシャフトベース68によって覆われているので、ボール保持孔70d,70eは、ボール110a,110bを回転可能に保持している。ボール110a,110bは、ハンドルシャフト64の外周面に形成されたボール溝64a,64bにも、外側から入り込んでいる。図10に示すように、ボール溝64a,64bは、それぞれ、ハンドルシャフト64を上方から見たときに、反時計方向に向かうにつれて下方から上方へ向かうように傾斜した第1ボール溝64c,64dと、時計方向に向かうにつれて下方から上方へ向かうように傾斜した第2ボール溝64e,64fを備えている。ボール110a,110bは、それぞれ、第1ボール溝64c,64dおよび第2ボール溝64e,64fに沿って転動可能である。
【0030】
図4に示すハンドルユニット8において、ユーザが操舵ハンドル80を上方から見て時計方向(または反時計方向)に回動させると、ハンドルシャフト64が時計方向(または反時計方向)に回動する。この際に、図11に示すように、ボール保持孔70d,70eに保持されたボール110a,110bが、ハンドルシャフト64の第1ボール溝64c,64d(または第2ボール溝64e,64f)を転動することで、スライドスリーブ70はコイルバネ72の付勢力に抗して上方に向けて移動する。この際にハンドルシャフト64がボール110a,110bを介してスライドスリーブ70から受ける反力によるトルクが、操舵ハンドル80を回動させるユーザに作用する。
【0031】
図5に示すように、傾斜計74は、シャフトカバー66よりも前方で、シャフトベース68の上面に設けられている。傾斜計74は、運搬車2の水平に対する傾斜度合いを検出することができる。図1図2に示すように、傾斜計74は、ユーザが運搬車2の後方に立って右側グリップ104と左側グリップ106を把持した状態において、ユーザから視認可能な位置に配置されている。
【0032】
図7に示すように、回動角度センサ76と、回動検出センサ77は、ハンドルシャフト64の下方に設けられている。図12に示すように、回動検出センサ77は、フォトインタラプタ112,114を備えている。フォトインタラプタ112,114は、シャフトベース68(図7参照)に対して位置が固定されたセンサ基板115上に実装されている。フォトインタラプタ112,114は、メイン制御回路基板30に電気的に接続されている。フォトインタラプタ112,114は、発光部112a,114aと、受光部112b,114bを備えている。図13に示すように、ハンドルシャフト64の下端には、センサベース78が固定されている。センサベース78には、フォトインタラプタ112,114に対応して、遮光壁116,118が形成されている。遮光壁116,118は、下方に向けて突出しており、所定の角度範囲にわたって周方向に沿って延びている。遮光壁116,118には、遮光壁116,118の下端から上方に向かって延びる複数のスリット116a,118aが形成されている。遮光壁116は、フォトインタラプタ112の発光部112aと受光部112b(図12参照)の間に配置されており、遮光壁118は、フォトインタラプタ114の発光部114aと受光部114b(図12参照)の間に配置されている。ハンドルシャフト64がシャフトベース68に対して回動すると、フォトインタラプタ112,114においては、発光部112a,114aからの光が遮光壁116,118に遮られて受光部112b,114bに到達しない状態と、発光部112a,114aからの光がスリット116a,118aを通過して受光部112b,114bに到達する状態が交互に実現される。これによって、回動検出センサ77は、ハンドルシャフト64の回動を検出することができる。なお、遮光壁116,118およびスリット116a,118aを非対称に配置することで、回動検出センサ77によって、ハンドルシャフト64の回動方向も検出することができる。
【0033】
図12に示すように、回動角度センサ76は、ホール素子120を備えている。ホール素子120は、センサ基板115上に実装されている。ホール素子120は、メイン制御回路基板30に電気的に接続されている。図13に示すように、センサベース78には、ホール素子120に対応して、永久磁石122が固定されている。ハンドルシャフト64がシャフトベース68に対して回動すると、ハンドルシャフト64の回動角度に応じて、ホール素子120で検出される永久磁石122からの磁場が変動する。これによって、回動角度センサ76は、ハンドルシャフト64の回動角度を検出することができる。
【0034】
図7に示すように、回動角度センサ76と、回動検出センサ77は、センサカバー79によって覆われている。これによって、回動角度センサ76や回動検出センサ77に、水や埃が付着することを抑制することができる。
【0035】
(操舵ユニット10)
図14に示すように、操舵ユニット10は、車台ユニット4の車台フレーム20の前部下方に取り付けられている。操舵ユニット10は、前輪ユニット12に連結されており、前輪ユニット12の操舵を行う。
【0036】
図15に示すように、操舵ユニット10は、モータハウジング124と、モータ支持部材126と、ギヤハウジング128と、操舵角センサ130と、操舵シャフト132と、リンクプレート134と、右側タイロッド136と、左側タイロッド138を備えている。モータハウジング124は、モータ支持部材126に固定されている。モータ支持部材126は、ギヤハウジング128に固定されている。ギヤハウジング128は、車台ユニット4の車台フレーム20(図14参照)に固定されている。
【0037】
図16に示すように、モータハウジング124の内部には、操舵モータ140が収容されている。操舵モータ140は、例えば、インナロータ型のブラシレスDCモータである。操舵モータ140は、駆動制御回路基板32(図3参照)に電気的に接続されている。操舵モータ140は、前後方向に延びるモータシャフト140aと、モータシャフト140aの回転角度を検出する回転角度センサ141を備えている。モータシャフト140aは、後端近傍においてモータハウジング124に回転可能に保持されており、前部においてモータ支持部材126に回転可能に保持されている。モータシャフト140aの前部は、モータ支持部材126を貫通して、ギヤハウジング128の内部に入り込んでいる。モータシャフト140aの前端近傍には、ギヤ部140bが形成されている。
【0038】
図17に示すように、ギヤハウジング128の内部には、スピンドル142と、カムホイール144と、スパーギヤ146と、ストッパプレート148と、コイルバネ150と、円筒ウォーム152と、ウォームホイール154と、中継シャフト156が収容されている。スピンドル142は、前後方向に沿うように配置されている。スピンドル142は、前端近傍と後部において、ギヤハウジング128に回転可能に保持されている。また、スピンドル142は、後端近傍において、モータ支持部材126に回転可能に保持されている。図16に示すように、スピンドル142は、モータシャフト140aよりも上方に配置されている。
【0039】
カムホイール144は、スピンドル142の後端近傍で、スピンドル142に取り付けられている。カムホイール144は、前後方向に移動可能であり、かつ前後方向周りに回転不能に、スピンドル142に保持されている。図18に示すように、カムホイール144の後面には、カム溝144aが形成されている。スパーギヤ146は、カムホイール144よりも後方で、スピンドル142に取り付けられている。スパーギヤ146は、スピンドル142に対して前後方向に移動可能であり、かつ前後方向周りに回転可能に、スピンドル142に保持されている。スパーギヤ146の外周面には、モータシャフト140aのギヤ部140b(図16参照)と噛み合うギヤ部146aが形成されている。スパーギヤ146の前部には、カムホイール144が入り込む凹部146bが形成されている。凹部146bには、カムホイール144のカム溝144aに対応するカム突起146cが形成されている。ストッパプレート148は、スパーギヤ146よりも後方で、スピンドル142に固定されている。コイルバネ150は、カムホイール144よりも前方で、スピンドル142に取り付けられている。コイルバネ150は、スピンドル142に設けられたバネ受け部142aに保持されている。コイルバネ150は、スピンドル142に対してカムホイール144を後方に向けて付勢する。
【0040】
モータシャフト140a(図16参照)が回転すると、スパーギヤ146も回転する。スパーギヤ146のカム突起146cがカムホイール144のカム溝144aに係合している場合、スパーギヤ146の回転に伴ってカムホイール144が回転し、それによってスピンドル142も回転する。スパーギヤ146とカムホイール144の間に作用するトルクが小さい場合、コイルバネ150の付勢力によってカム突起146cとカム溝144aの係合が維持されて、モータシャフト140aからスピンドル142への回転の伝達が維持される。これに対して、スパーギヤ146とカムホイール144の間に作用するトルクが大きい場合は、コイルバネ150の付勢力に抗してカムホイール144が前方に向けて移動し、カム突起146cとカム溝144aの係合が解除されて、モータシャフト140aからスピンドル142への回転の伝達が遮断される。すなわち、カムホイール144と、スパーギヤ146と、ストッパプレート148と、コイルバネ150とによって、トルクリミッタ158が構成されている。
【0041】
図17に示すように、円筒ウォーム152は、スピンドル142の前部に固定されている。ウォームホイール154は、円筒ウォーム152と噛み合うように配置されている。図19に示すように、ウォームホイール154は、中継シャフト156の上部に固定されている。中継シャフト156は、上下方向に沿うように配置されている。中継シャフト156は、上端近傍と中央部において、ギヤハウジング128に回転可能に保持されている。中継シャフト156の下端近傍には、ギヤ部156aが形成されている。図17に示すように、中継シャフト156は、スピンドル142よりも左方に配置されている。
【0042】
図19に示すように、操舵角センサ130は、ギヤハウジング128の上部に設けられている。操舵角センサ130は、ホール素子160を備えている。ホール素子160は、メイン制御回路基板30(図3参照)に電気的に接続されている。中継シャフト156の上端には、ホール素子160に対応して、永久磁石162が固定されている。中継シャフト156がギヤハウジング128に対して回動すると、中継シャフト156の回動角度に応じて、ホール素子160で検出される永久磁石162からの磁場が変動する。これによって、操舵角センサ130は、中継シャフト156の回動角度を検出することができる。
【0043】
操舵シャフト132は、上端近傍と中間部において、ギヤハウジング128に回動可能に保持されている。操舵シャフト132は、上下方向に沿うように配置されている。操舵シャフト132は、中継シャフト156よりも前方に配置されている。操舵シャフト132の上部には、中継シャフト156のギヤ部156aと噛み合うギヤ部132aが形成されている。操舵シャフト132の下端は、リンクプレート134の前端近傍に固定されている。図15に示すように、リンクプレート134は、前後方向に長手方向を有しており、左右方向に短手方向を有する、細長い平板形状を有している。リンクプレート134の後端近傍には、右側タイロッド136の後端と、左側タイロッド138の後端が、それぞれ連結されている。右側タイロッド136の後端は、リンクプレート134に対して、右側タイロッド136の長手方向に直交する二軸周りに回動可能に連結されている。左側タイロッド138の後端は、リンクプレート134に対して、左側タイロッド138の長手方向に直交する二軸周りに回動可能に連結されている。右側タイロッド136と左側タイロッド138は、いずれも、軸方向の長さを調整可能である。
【0044】
図16に示すように、モータシャフト140aの回転によってスピンドル142が回転すると、図17に示すように、円筒ウォーム152とウォームホイール154を介して、スピンドル142の回転が中継シャフト156に伝達する。図19に示すように、中継シャフト156が回動すると、それに伴って操舵シャフト132が回動し、リンクプレート134の後端が左右方向に回動する。図15に示すように、リンクプレート134が回動すると、右側タイロッド136および左側タイロッド138が移動し、前輪ユニット12の操舵が行われる。
【0045】
(前輪ユニット12)
図14に示すように、前輪ユニット12は、車台ユニット4の車台フレーム20の前部下方に取り付けられている。前輪ユニット12は、右前輪ユニット12aと、左前輪ユニット12bを備えている。右前輪ユニット12aは、右前輪164と、右側ギヤハウジング166と、右側モータハウジング168と、右前輪ガード170と、右側キングピン172(図20参照)と、右側スリーブ174と、右上側アーム176と、右下側アーム178と、右側緩衝部材180と、右側操舵プレート182を備えている。左前輪ユニット12bは、左前輪184と、左側ギヤハウジング186と、左側モータハウジング188と、左前輪ガード190と、左側キングピン192(図20参照)と、左側スリーブ194と、左上側アーム196と、左下側アーム198と、左側緩衝部材200と、左側操舵プレート202を備えている。なお、以下の説明では、操舵ユニット10と、右側キングピン172と、右側操舵プレート182と、左側キングピン192と、左側操舵プレート202を総称して、操舵機構203ともいう。
【0046】
図20に示すように、右側ギヤハウジング166は、右前輪164の左側に配置されている。右側モータハウジング168は、右側ギヤハウジング166の左部に固定されている。図21に示すように、右側モータハウジング168の内部には、右前輪モータ204が収容されている。右前輪モータ204は、例えば、インナロータ型のブラシレスDCモータである。右前輪モータ204は、駆動制御回路基板32(図3参照)に電気的に接続されている。右前輪モータ204は、左右方向に延びる右前輪モータシャフト204aを備えている。右前輪モータシャフト204aは、左端近傍において右側モータハウジング168に回転可能に保持されており、右端近傍において右側ギヤハウジング166に回転可能に保持されている。右前輪164は、左方に延びる右前輪アクスル164aを備えている。右前輪アクスル164aは、左端近傍において右側ギヤハウジング166に回転可能に保持されている。右側ギヤハウジング166の内部には、遊星歯車機構206が収容されている。遊星歯車機構206は、右前輪モータシャフト204aの回転を減速して右前輪アクスル164aに伝達する。右前輪モータ204が駆動すると、右前輪モータシャフト204aの回転が遊星歯車機構206を介して右前輪アクスル164aに伝達して、右前輪164が回転する。
【0047】
図20に示すように、右前輪ガード170は、鋼製の丸パイプを屈曲させて形成されている。右前輪ガード170は、右側ギヤハウジング166から前方に延びる第1支持部170aと、第1支持部170aの前端から屈曲して右方に延びる第1ガード部170bと、第1ガード部170bの右端から下方に屈曲し、さらに左方に屈曲する折返部170cと、折返部170cから左方に延びる第2ガード部170dと、第2ガード部170dの左端から屈曲して後方に延びており、右側ギヤハウジング166に接続する第2支持部170eを備えている。第2ガード部170dは、第1ガード部170bより下方に配置されており、第1ガード部170bに対して略平行に配置されている。第2支持部170eは、第1支持部170aより下方に配置されており、第1支持部170aに対して略平行に配置されている。折返部170cの右端は、右前輪164の右端よりわずかに右方に配置されている。第1支持部170a、第1ガード部170b、折返部170c、第2ガード部170d、第2支持部170eは、いずれも、右前輪164の回転軸(すなわち右前輪アクスル164aの回転軸)よりも下方に配置されている。
【0048】
図22に示すように、右側キングピン172は、上下方向に沿って延びる略円筒形状を有するシャフト部172aと、シャフト部172aよりも下方に形成されており、シャフト部172aよりも大径の円筒形状を有する第1円筒部172bと、第1円筒部172bよりも下方に形成されており、第1円筒部172bよりも大径の円筒形状を有する第2円筒部172cと、第2円筒部172cよりも下方に形成されており、前後方向に長手方向を有しており、左右方向に短手方向を有する略長方形の平板形状を有する平板部172dと、平板部172dよりも下方に形成されており、シャフト部172aよりも大径であり、第1円筒部172bよりも小径の円筒形状を有する第3円筒部172e(図21参照)を備えている。シャフト部172aと、第1円筒部172bと、第2円筒部172cと、第3円筒部172eは、同軸上に配置されている。平板部172dには、4つの貫通孔172fが形成されている。4つの貫通孔172fは、それぞれ、平板部172dの右前端近傍、左前端近傍、右後端近傍、左後端近傍に配置されている。右側キングピン172は、図21に示すように、第3円筒部172eを、右側ギヤハウジング166に形成された軸受溝166aに摺動可能に差し込んだ状態で、図20に示すように、4つの貫通孔172fを介して4つのボルト208を右側ギヤハウジング166に締結することで、右側ギヤハウジング166に固定されている。右側キングピン172のシャフト部172aは、右側スリーブ174(図14参照)の内部に入り込んでいる。右側キングピン172は、シャフト部172aの上端近傍と下端近傍において、右側スリーブ174に回動可能に保持されている。図14に示すように、右側スリーブ174の上部には、右上側アーム176の右端が、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。右側スリーブ174の下部には、右下側アーム178の右端が、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。右上側アーム176の左端は、車台フレーム20に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。右下側アーム178の左端は、右上側アーム176よりも下方で、車台フレーム20に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。このため、右側スリーブ174は、車台フレーム20に、右上側アーム176と右下側アーム178の可動範囲内で移動可能に支持されている。
【0049】
右側緩衝部材180は、ダンパ180aと、コイルバネ180bを備えている。右側緩衝部材180の上端は、車台フレーム20に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。右側緩衝部材180の下端は、右下側アーム178に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。このため、右前輪164が車台フレーム20に対して上下方向に移動する際には、ダンパ180aによる減衰力と、コイルバネ180bによる弾性復元力により、右前輪164からの衝撃や振動が車台ユニット4に伝達することが抑制される。
【0050】
図22に示すように、右側操舵プレート182は、全体が平板形状を有する。右側操舵プレート182は、前後方向に長手方向を有しており、左右方向に短手方向を有する、略長方形状のベース部182aと、ベース部182aの左端前部から左前方に延びるアーム部182bを備えている。ベース部182aには、ベース部182aの中央に配置された円孔182cと、ベース部182aの右側外縁から左方に延びており、円孔182cに接続する切欠き182dと、円孔182cの中心軸周りの円周上に配置されており、周方向に長手方向を有する4つの長孔182eが形成されている。アーム部182bの先端近傍には、円形状の取付孔182fが形成されている。円孔182cの内径は、右側キングピン172の第2円筒部172cの外径よりもわずかに大きい。また、切欠き182dの前後方向の幅は、右側キングピン172の第2円筒部172cの外径よりもわずかに小さく、右側キングピン172の第1円筒部172bの外径よりもわずかに大きい。なお、以下の説明では、円孔182cと切欠き182dを総称して、貫通孔182gともいう。
【0051】
右側操舵プレート182を右側キングピン172に取り付ける際には、右側キングピン172の第1円筒部172bと右側操舵プレート182を上下方向に位置合わせした状態で、第1円筒部172bが切欠き182dを通過して円孔182c内に配置されるように右側操舵プレート182を移動させる。その後に、右側キングピン172の第2円筒部172cが円孔182c内に配置されるように、右側操舵プレート182を下方に移動させる。この状態で、図20に示すように、4つの長孔182eを介して4つのボルト208を右側ギヤハウジング166に締結する、すなわち4つのボルト208を用いて右側操舵プレート182と右側キングピン172を共締めすることで、右側操舵プレート182は右側キングピン172に固定される。右側操舵プレート182の取付孔182fには、右側タイロッド136の前端が、右側タイロッド136の長手方向に直交する二軸周りに回動可能に連結されている。
【0052】
右側操舵プレート182の長孔182eは、円孔182cの中心軸周りの周方向に長手方向を有している。このため、ボルト208を緩めることで、右側操舵プレート182を右側キングピン172に取り付けた状態のまま、右側操舵プレート182を右側キングピン172に対してわずかに回動させることができる。これによって、右側操舵プレート182の右側キングピン172に対する取付角度を容易に調整することができる。また、右側操舵プレート182の切欠き182dの前後方向の幅は、右側キングピン172の第2円筒部172cの外径よりも小さいので、仮にボルト208を全て抜去した場合でも、右側操舵プレート182が右側キングピン172から外れてしまうことを抑制することができる。
【0053】
図14に示すように、右前輪ユニット12aを上方から見た時に、右側タイロッド136は、右上側アーム176および右下側アーム178に対して交差している。前輪ユニット12が右方向(または左方向)に操舵される場合には、リンクプレート134(図15参照)の後端が右方向(または左方向)に移動する。それによって右側操舵プレート182と、右側キングピン172(図20参照)と、右側ギヤハウジング166と、右側モータハウジング168と、右前輪164が、右側キングピン172のシャフト部172a(図20参照)を転舵軸として、右側スリーブ174を上方から見た時に、右側スリーブ174に対して時計回りに(または反時計回りに)回動する。
【0054】
図14に示すように、左前輪ユニット12bは、右前輪ユニット12aと左右対称の構成を備えている。以下では、右前輪ユニット12aの特徴を図示した図20図22を参照しながら、左前輪ユニット12bについて説明する。
【0055】
図20に示すように、左側ギヤハウジング186は、左前輪184の右側に配置されている。左側モータハウジング188は、左側ギヤハウジング186の右部に固定されている。図21に示すように、左側モータハウジング188の内部には、左前輪モータ210が収容されている。左前輪モータ210は、例えば、インナロータ型のブラシレスDCモータである。左前輪モータ210は、駆動制御回路基板32(図3参照)に電気的に接続されている。左前輪モータ210は、左右方向に延びる左前輪モータシャフト210aを備えている。左前輪モータシャフト210aは、右端近傍において左側モータハウジング188に回転可能に保持されており、左端近傍において左側ギヤハウジング186に回転可能に保持されている。左前輪184は、右方に延びる左側アクスル184aを備えている。左側アクスル184aは、右端近傍において左側ギヤハウジング186に回転可能に保持されている。左側ギヤハウジング186の内部には、遊星歯車機構212が収容されている。遊星歯車機構212は、左前輪モータシャフト210aの回転を減速して左側アクスル184aに伝達する。左前輪モータ210が駆動すると、左前輪モータシャフト210aの回転が遊星歯車機構212を介して左側アクスル184aに伝達して、左前輪184が回転する。
【0056】
図20に示すように、左前輪ガード190は、鋼製の丸パイプを屈曲させて形成されている。左前輪ガード190は、左側ギヤハウジング186から前方に延びる第1支持部190aと、第1支持部190aの前端から屈曲して左方に延びる第1ガード部190bと、第1ガード部190bの左端から下方に屈曲し、さらに右方に屈曲する折返部190cと、折返部190cから右方に延びる第2ガード部190dと、第2ガード部190dの右端から屈曲して後方に延びており、左側ギヤハウジング186に接続する第2支持部190eを備えている。第2ガード部190dは、第1ガード部190bより下方に配置されており、第1ガード部190bに対して略平行に配置されている。第2支持部190eは、第1支持部190aより下方に配置されており、第1支持部190aに対して略平行に配置されている。折返部190cの左端は、左前輪184の左端よりわずかに左方に配置されている。第1支持部190a、第1ガード部190b、折返部190c、第2ガード部190d、第2支持部190eは、いずれも、左前輪184の回転軸(すなわち左側アクスル184aの回転軸)よりも下方に配置されている。
【0057】
図22に示すように、左側キングピン192は、上下方向に沿って延びる略円筒形状を有するシャフト部192aと、シャフト部192aよりも下方に形成されており、シャフト部192aよりも大径の円筒形状を有する第1円筒部192bと、第1円筒部192bよりも下方に形成されており、第1円筒部192bよりも大径の円筒形状を有する第2円筒部192cと、第2円筒部192cよりも下方に形成されており、前後方向に長手方向を有しており、左右方向に短手方向を有する略長方形の平板形状を有する平板部192dと、平板部192dよりも下方に形成されており、シャフト部192aよりも大径であり、第1円筒部192bよりも小径の円筒形状を有する第3円筒部192e(図21参照)を備えている。シャフト部192aと、第1円筒部192bと、第2円筒部192cと、第3円筒部192eは、同軸上に配置されている。平板部192dには、4つの貫通孔192fが形成されている。4つの貫通孔192fは、それぞれ、平板部192dの左前端近傍、右前端近傍、左後端近傍、右後端近傍に配置されている。左側キングピン192は、図21に示すように、第3円筒部192eを、左側ギヤハウジング186に形成された軸受溝186aに摺動可能に差し込んだ状態で、図20に示すように、4つの貫通孔192fを介して4つのボルト214を左側ギヤハウジング186に締結することで、左側ギヤハウジング186に固定されている。左側キングピン192のシャフト部192aは、左側スリーブ194(図14参照)の内部に入り込んでいる。左側キングピン192は、シャフト部192aの上端近傍と下端近傍において、左側スリーブ194に回動可能に保持されている。図14に示すように、左側スリーブ194の上部には、左上側アーム196の左端が、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。左側スリーブ194の下部には、左下側アーム198の左端が、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。左上側アーム196の右端は、車台フレーム20に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。左下側アーム198の右端は、車台フレーム20に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。このため、左側スリーブ194は、車台フレーム20に、左上側アーム196と左下側アーム198の可動範囲内で移動可能に支持されている。
【0058】
左側緩衝部材200は、ダンパ200aと、コイルバネ200bを備えている。左側緩衝部材200の上端は、車台フレーム20に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。左側緩衝部材200の下端は、左下側アーム198に、前後方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。このため、左前輪184が車台フレーム20に対して上下方向に移動する際には、ダンパ200aによる減衰力と、コイルバネ200bによる弾性復元力により、左前輪184からの衝撃や振動が車台ユニット4に伝達することが抑制される。
【0059】
図22に示すように、左側操舵プレート202は、全体が平板形状を有する。左側操舵プレート202は、前後方向に長手方向を有しており、左右方向に短手方向を有する、略長方形状のベース部202aと、ベース部202aの右端前部から右前方に延びるアーム部202bを備えている。ベース部202aには、ベース部202aの中央に配置された円孔202cと、ベース部202aの左側外縁から右方に延びており、円孔202cに接続する切欠き202dと、円孔202cの中心軸周りの円周上に配置されており、周方向に長手方向を有する4つの長孔202eが形成されている。アーム部202bの先端近傍には、円形状の取付孔202fが形成されている。円孔202cの内径は、左側キングピン192の第2円筒部192cの外径よりもわずかに大きい。また、切欠き202dの前後方向の幅は、左側キングピン192の第2円筒部192cの外径よりもわずかに小さく、左側キングピン192の第1円筒部192bの外径よりもわずかに大きい。なお、以下の説明では、円孔202cと切欠き202dを総称して、貫通孔202gともいう。
【0060】
左側操舵プレート202を左側キングピン192に取り付ける際には、左側キングピン192の第1円筒部192bと左側操舵プレート202を上下方向に位置合わせした状態で、第1円筒部192bが切欠き202dを通過して円孔202c内に配置されるように左側操舵プレート202を移動させる。その後に、左側キングピン192の第2円筒部192cが円孔202c内に配置されるように、左側操舵プレート202を下方に移動させる。この状態で、図20に示すように、4つの長孔202eを介して4つのボルト214を左側ギヤハウジング186に締結する、すなわち4つのボルト214を用いて左側操舵プレート202と左側キングピン192を共締めすることで、左側操舵プレート202は左側キングピン192に固定される。左側操舵プレート202の取付孔202fには、左側タイロッド138の前端が、左側タイロッド138の長手方向に直交する二軸周りに回動可能に連結されている。
【0061】
左側操舵プレート202の長孔202eは、円孔202cの中心軸周りの周方向に長手方向を有している。このため、ボルト214を緩めることで、左側操舵プレート202を左側キングピン192に取り付けた状態のまま、左側操舵プレート202を左側キングピン192に対してわずかに回動させることができる。これによって、左側操舵プレート202の左側キングピン192に対する取付角度を容易に調整することができる。また、左側操舵プレート202の切欠き202dの前後方向の幅は、左側キングピン192の第2円筒部192cの外径よりも小さいので、仮にボルト214を全て抜去した場合でも、左側操舵プレート202が左側キングピン192から外れてしまうことを抑制することができる。
【0062】
図14に示すように、左前輪ユニット12bを上方から見た時に、左側タイロッド138は、左上側アーム196および左下側アーム198に対して交差している。前輪ユニット12が右方向(または左方向)に操舵される場合には、リンクプレート134(図15参照)の後端が右方向(または左方向)に移動し、それによって左側操舵プレート202と、左側キングピン192(図20参照)と、左側ギヤハウジング186と、左側モータハウジング188と、左前輪184が、左側キングピン192のシャフト部192a(図20参照)を転舵軸として、左側スリーブ194を上方から見た時に、左側スリーブ194に対して時計回りに(または反時計回りに)回動する。
【0063】
(後輪ユニット14)
図2に示すように、後輪ユニット14は、車台ユニット4の車台フレーム20の後部下方に取り付けられている。後輪ユニット14は、右後輪ユニット14aと、左後輪ユニット14bを備えている。
【0064】
図23に示すように、右後輪ユニット14aは、右後輪216と、右側ギヤハウジング218と、右側モータハウジング220と、右側ブレーキハウジング222と、右側クラッチレバー224と、右側緩衝部材226を備えている。
【0065】
右側ギヤハウジング218は、右後輪216の左側に配置されており、右後輪216の右後輪アクスル(図示せず)を回転可能に保持している。右側ギヤハウジング218は、右後輪アクスルから前方上方に延びている。右側モータハウジング220は、右側ギヤハウジング218の前方上方の左部に固定されている。右側ブレーキハウジング222は、右側モータハウジング220の左部に固定されている。右側モータハウジング220の内部には、右後輪モータ(図示せず)が収容されている。右後輪モータは、例えば、インナロータ型のブラシレスDCモータである。右後輪モータは、駆動制御回路基板32(図3参照)に電気的に接続されている。右後輪モータは、左右方向に延びる右後輪モータシャフト(図示せず)を備えている。右側ブレーキハウジング222には、右後輪電磁ブレーキ(図示せず)が収容されている。右後輪電磁ブレーキは、右後輪モータシャフトに連結している。右後輪電磁ブレーキは、右後輪モータシャフトの回転を許容する状態と回転を禁止する状態の間で切り換わる。右後輪電磁ブレーキは、駆動制御回路基板32(図3参照)に電気的に接続されている。駆動制御回路基板32は、右後輪電磁ブレーキの動作を制御する。運搬車2の電源が入っていないときや、電源が入っていても走行することなく停止しているときは、右後輪電磁ブレーキは、右後輪モータシャフトの回転を禁止する状態で維持される。
【0066】
右側ギヤハウジング218の内部には、平歯車機構(図示せず)と、クラッチ機構(図示せず)が収容されている。平歯車機構は、右後輪モータシャフトの回転を減速して右後輪アクスルに伝達する。右後輪モータが駆動すると、右後輪モータシャフトの回転が平歯車機構を介して右後輪アクスルに伝達して、右後輪216が回転する。クラッチ機構は、右側クラッチレバー224への操作に応じて、右後輪モータシャフトから右後輪アクスルへの回転の伝達を許容する状態と遮断する状態の間で切り換わる。このため、例えばバッテリパックBPの電池残量がなくなり、電源が入らずに右後輪電磁ブレーキが右後輪モータシャフトの回転を禁止している状況であっても、クラッチ機構を右後輪モータシャフトから右後輪アクスルへの回転の伝達を遮断する状態に切り換えることで、右後輪216を回転可能としてユーザが運搬車2を移動させることができる。
【0067】
右側ギヤハウジング218の前上端近傍には、連結部218aが設けられている。連結部218aは、車台フレーム20に、左右方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。右側緩衝部材226は、ダンパ226aと、コイルバネ226bを備えている。右側緩衝部材226の上端は、連結部218aよりも後方上方で、車台フレーム20に、左右方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。右側緩衝部材226の下端は、右側ギヤハウジング218の後上面に、左右方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。このため、右後輪216が車台フレーム20に対して上下方向に移動する際には、ダンパ226aによる減衰力と、コイルバネ226bによる弾性復元力により、右後輪216からの衝撃や振動が車台ユニット4に伝達することが抑制される。
【0068】
左後輪ユニット14bは、右後輪ユニット14aと左右対称の構成を備えている。以下では、右後輪ユニット14aの特徴を図示した図23を参照しながら、左後輪ユニット14bについて説明する。左後輪ユニット14bは、左後輪228と、左側ギヤハウジング230と、左側モータハウジング232と、左側ブレーキハウジング234と、左側クラッチレバー236と、左側緩衝部材238を備えている。
【0069】
左側ギヤハウジング230は、左後輪228の右側に配置されており、左後輪228の左後輪アクスル(図示せず)を回転可能に保持している。左側ギヤハウジング230は、左後輪アクスルから前方上方に延びている。左側モータハウジング232は、左側ギヤハウジング230の前方上方の右部に固定されている。左側ブレーキハウジング234は、左側モータハウジング232の右部に固定されている。左側モータハウジング232の内部には、左後輪モータ(図示せず)が収容されている。左後輪モータは、例えば、インナロータ型のブラシレスDCモータである。左後輪モータは、駆動制御回路基板32(図3参照)に電気的に接続されている。左後輪モータは、左右方向に延びる左後輪モータシャフト(図示せず)を備えている。左側ブレーキハウジング234には、左後輪電磁ブレーキ(図示せず)が収容されている。左後輪電磁ブレーキは、左後輪モータシャフトに連結している。左後輪電磁ブレーキは、左後輪モータシャフトの回転を許容する状態と回転を禁止する状態の間で切り換わる。左後輪電磁ブレーキは、駆動制御回路基板32(図3参照)に電気的に接続されている。駆動制御回路基板32は、左後輪電磁ブレーキの動作を制御する。運搬車2の電源が入っていないときや、電源が入っていても走行することなく停止しているときは、左後輪電磁ブレーキは、左後輪モータシャフトの回転を禁止する状態で維持される。
【0070】
左側ギヤハウジング230の内部には、平歯車機構(図示せず)と、クラッチ機構(図示せず)が収容されている。平歯車機構は、左後輪モータシャフトの回転を減速して左後輪アクスルに伝達する。左後輪モータが駆動すると、左後輪モータシャフトの回転が平歯車機構を介して左後輪アクスルに伝達して、左後輪228が回転する。クラッチ機構は、左側クラッチレバー236への操作に応じて、左後輪モータシャフトから左後輪アクスルへの回転の伝達を許容する状態と遮断する状態の間で切り換わる。このため、例えばバッテリパックBPの電池残量がなくなり、電源が入らずに左後輪電磁ブレーキが左後輪モータシャフトの回転を禁止している状況であっても、クラッチ機構を左後輪モータシャフトから左後輪アクスルへの回転の伝達を遮断する状態に切り換えることで、左後輪228を回転可能としてユーザが運搬車2を移動させることができる。
【0071】
左側ギヤハウジング230の前上端近傍には、連結部230aが設けられている。連結部230aは、車台フレーム20に、左右方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。左側緩衝部材238は、ダンパ238aと、コイルバネ238bを備えている。左側緩衝部材238の上端は、連結部230aよりも後方上方で、車台フレーム20に、左右方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。左側緩衝部材238の下端は、左側ギヤハウジング230の後上面に、左右方向に沿った回動軸周りに回動可能に連結している。このため、左後輪228が車台フレーム20に対して上下方向に移動する際には、ダンパ238aによる減衰力と、コイルバネ238bによる弾性復元力により、左後輪228からの衝撃や振動が車台ユニット4に伝達することが抑制される。
【0072】
(バンパユニット16)
図1に示すように、バンパユニット16は、車台ユニット4の車台フレーム20の前部下方に取り付けられている。図24図27に示すように、バンパユニット16は、ベース部材240と、軸受ボックス242,244と、バンパ本体246と、バンパ支持部材248,250と、直動パイプ252,254と、直動軸受256,258と、コイルバネ260,262と、ベローズ264,266と、スイッチ支持部材268,270と、当接プレート272,274と、衝突検知スイッチ276,278と、スイッチカバー280,282を備えている。
【0073】
図1に示すように、ベース部材240は、車台ユニット4の車台フレーム20に固定されている。図25に示すように、軸受ボックス242,244は、ベース部材240に固定されている。軸受ボックス242,244は、左右に並んで配置されている。
【0074】
バンパ本体246は、樹脂材料により形成されている。バンパ支持部材248,250は、バンパ本体246よりも後方で、左右に並んで配置されている。バンパ支持部材248,250は、それぞれ、バンパ本体246に固定されている。図26に示すように、バンパ支持部材248は、ボルト284a,284bおよびナット286a,286bを介して、直動パイプ252に取り付けられている。バンパ支持部材250は、ボルト288a,288bおよびナット290a,290bを介して、直動パイプ254に取り付けられている。
【0075】
直動パイプ252は、長手方向が前後方向に沿うように配置されている。直動パイプ252の前端近傍には、前後方向に並んで配置されており、それぞれが前後方向に長手方向を有する、長孔252a,252bが形成されている。ボルト284aは、長孔252aを貫通しており、ボルト284bは、長孔252bを貫通している。このため、バンパ支持部材248は、ボルト284a,284bが長孔252a,252bの前縁に当接する位置と、ボルト284a,284bが長孔252a,252bの後縁に当接する位置の間で前後方向に移動可能に、直動パイプ252に支持されている。同様に、直動パイプ254は、長手方向が前後方向に沿うように配置されている。直動パイプ254の前端近傍には、前後方向に並んで配置されており、それぞれが前後方向に長手方向を有する、長孔254a,254bが形成されている。ボルト288aは、長孔254aを貫通しており、ボルト288bは、長孔254bを貫通している。このため、バンパ支持部材250は、ボルト288a,288bが長孔254a,254bの前縁に当接する位置と、ボルト288a,288bが長孔254a,254bの後縁に当接する位置の間で前後方向に移動可能に、直動パイプ254に支持されている。
【0076】
直動パイプ252の後端は、ベース部材240と軸受ボックス242を貫通して、軸受ボックス242より後方に突出している。直動パイプ252は、軸受ボックス242に固定された直動軸受256に前後方向に移動可能に支持されている。直動パイプ252には、コイルバネ260が取り付けられている。コイルバネ260の前端は、バンパ支持部材248の後面に当接しており、コイルバネ260の後端は、ベース部材240の前面に当接している。コイルバネ260は、ベース部材240に対して、バンパ支持部材248を前方に向けて付勢している。ベローズ264は、ゴム材料により形成されている。ベローズ264は、バンパ支持部材248とベース部材240の間で、直動パイプ252とコイルバネ260の周囲を覆うように取り付けられている。同様に、直動パイプ254の後端は、ベース部材240と軸受ボックス244を貫通して、軸受ボックス244より後方に突出している。直動パイプ254は、軸受ボックス244に固定された直動軸受258に前後方向に移動可能に支持されている。直動パイプ254には、コイルバネ262が取り付けられている。コイルバネ262の前端は、バンパ支持部材250の後面に当接しており、コイルバネ262の後端は、ベース部材240の前面に当接している。コイルバネ262は、ベース部材240に対して、バンパ支持部材250を前方に向けて付勢している。ベローズ266は、ゴム材料により形成されている。ベローズ266は、バンパ支持部材250とベース部材240の間で、直動パイプ254とコイルバネ262の周囲を覆うように取り付けられている。
【0077】
図27に示すように、直動パイプ252,254の後端には、当接プレート272,274が固定されている。当接プレート272,274は、径方向外側に延びるガイド片272a,274aと、ガイド片272a,274aとは異なる位置で径方向外側に延びる当接片272b,274bを備えている。スイッチ支持部材268,270は、軸受ボックス242,244よりも後方に配置されており、軸受ボックス242,244に固定されている。スイッチ支持部材268,270には、ガイド片272a,274aを前後方向に摺動可能に受け入れるガイド溝268a,270aが形成されている。また、スイッチ支持部材268,270は、衝突検知スイッチ276,278を支持している。衝突検知スイッチ276,278は、それぞれ、メイン制御回路基板30(図3参照)に電気的に接続されている。衝突検知スイッチ276,278は、当接片272b,274bの前方に配置されている。
【0078】
図26に示すように、バンパ本体246に外力が作用していない状態では、コイルバネ260,262の付勢力によって、直動パイプ252,254はベース部材240に対して前方に移動している。この場合、図27に示すように、当接片272b,274bは衝突検知スイッチ276,278に当接しており、衝突検知スイッチ276,278はオフとなっている。図26に示すバンパ本体246に後方に向けた外力が作用すると、コイルバネ260,262の付勢力に抗して、直動パイプ252,254はベース部材240に対して後方に移動する。この場合、図27に示す当接片272b、274bが衝突検知スイッチ276,278から離反して、衝突検知スイッチ276,278はオンとなる。
【0079】
図1に示すように、バンパ本体246は前輪ユニット12の前方に配置される。バンパ本体246の上端は、前輪ユニット12の右前輪164の上端および左前輪184(図14参照)の上端よりもわずかに上方に配置されている。バンパ本体246の下端は、前輪ユニット12の右前輪164の回転軸および左前輪184の回転軸よりも上方に配置されている。バンパ本体246の右端は、前輪ユニット12の右前輪164の右端よりもわずかに右方に配置されている。バンパ本体246の左端は、前輪ユニット12の左前輪184の左端よりもわずかに左方に配置されている。
【0080】
図24に示すように、バンパ本体246は、前方を向いた前面246aと、前面246aの右端に接続しており、右前方を向いた右前面246bと、前面246aの左端に接続しており、左前方を向いた左前面246cと、前面246a、右前面246bおよび左前面246cの下端に接続しており、下前方を向いた下前面246dを有している。運搬車2を前方から正面視した時に、直動パイプ252,254(図26参照)は前面246a内に配置されている。言い換えると、運搬車2を前方から正面視した時に、右前面246bは右側の直動パイプ252よりも右方に配置されており、左前面246cは左側の直動パイプ254よりも左方に配置されており、下前面246dは直動パイプ252,254よりも下方に配置されている。
【0081】
仮に、バンパ本体246が右前面246b,左前面246c,下前面246dを有しておらず、運搬車2を前方から正面視した時に、前面256aがバンパ本体246の全体に広がる形状となっている場合、バンパ本体246の右端や左端、下端近傍に前方から障害物が衝突した時に、直動パイプ252,254に大きなモーメントが作用して、直動パイプ252,254のスムーズな前後移動が妨げられるおそれがある。本実施例では、バンパ本体246が右前面246b,左前面246c,下前面246dを有しているので、バンパ本体246の右端や左端、下端近傍に前方から障害物が衝突した時に、直動パイプ252,254に作用するモーメントを小さくすることができ、直動パイプ252,254のスムーズな前後移動を実現することができる。
【0082】
(旋回運転処理)
制御ユニット35(図3参照)は、主電源がオンの場合に、手動モードが選択されていると、図28に示す旋回運転処理を実行する。
【0083】
S2では、制御ユニット35は、回動角度センサ76(図7参照)から出力信号を取得する。
【0084】
S4では、制御ユニット35は、回動検出センサ77(図7参照)から出力信号を取得する。
【0085】
S6では、制御ユニット35は、回動角度センサ76からの出力信号と、回動検出センサ77からの出力信号に基づいて、ハンドルユニット8(図4参照)が故障しているか否かを判断する。例えば、制御ユニット35は、回動角度センサ76で操舵ハンドル80がある回動角度だけ回動していることが検出されているものの、回動検出センサ77で操舵ハンドル80の回動が検出されていない場合や、回動検出センサ77で操舵ハンドル80の回動が検出されているものの、回動角度センサ76で操舵ハンドル80の回動角度が検出されていない(すなわち操舵ハンドル80の回動角度が0度と検出されている)場合に、ハンドルユニット8が故障していると判断する。あるいは、制御ユニット35は、回動角度センサ76で検出される回動角度と、回動検出センサ77の出力信号に基づいて特定される回動角度が一致しない場合に、ハンドルユニット8が故障していると判断する。ハンドルユニット8が故障していると判断される場合(YESの場合)、処理はS8へ進む。
【0086】
S8では、制御ユニット35は、スイッチボックス46(図4参照)のブザーを介してユーザに異常の発生を報知するとともに、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータ、左後輪モータを停止して、その後の再始動を禁止する。
【0087】
S6で、ハンドルユニット8が故障していないと判断される場合(NOの場合)、処理はS10へ進む。S10では、制御ユニット35は、回動角度センサ76で検出された回動角度に応じて、旋回半径の指令値を特定する。
【0088】
S12では、制御ユニット35は、特定された旋回半径の指令値が、所定のしきい値以上であるか否かを判断する。旋回半径の指令値がしきい値以上の場合(YESの場合)、処理はS14へ進む。S14では、制御ユニット35は、操舵旋回運転を実行する。S14の後、処理はS2へ戻る。S12で旋回半径の指令値がしきい値に満たない場合(NOの場合)、処理はS16へ進む。S16では、制御ユニット35は、超信地旋回運転を実行する。S16の後、処理はS2へ戻る。
【0089】
(操舵旋回運転)
制御ユニット35は、S14の操舵旋回運転を実行する際に、図29に示す処理を実行する。
【0090】
S18では、制御ユニット35は、回動角度センサ76で検出される操舵ハンドル80の回動角度に基づいて、操舵ユニット10の中継シャフト156(図19参照)の目標回動角度を特定する。
【0091】
S20では、制御ユニット35は、操舵角センサ130(図19参照)で検出される中継シャフト156の実際の回動角度が、S18で特定された目標回動角度に一致するか否かを判断する。中継シャフト156の実際の回動角度が目標回動角度に一致する場合(YESの場合)、処理はS34へ進む。中継シャフト156の実際の回動角度が目標回動角度に一致しない場合(NOの場合)、処理はS22へ進む。
【0092】
S22では、制御ユニット35は、中継シャフト156の実際の回動角度が目標回動角度に近づくように、操舵モータ140(図16参照)を駆動する。
【0093】
S24では、制御ユニット35は、回転角度センサ141(図16参照)で検出される操舵モータ140の回転角度と、操舵角センサ130で検出される中継シャフト156の回動角度に基づいて、操舵ユニット10の故障判定を行う。例えば、制御ユニット35は、操舵モータ140の回転角度に基づいて、中継シャフト156で実現されるべき回動角度を特定し、特定された回動角度と操舵角センサ130で検出される中継シャフト156の実際の回動角度が一致しない場合に、操舵ユニット10が故障していると判定する。
【0094】
S26では、制御ユニット35は、操舵モータ140の駆動時間に基づいて、操舵ユニット10の故障判定を行う。例えば、制御ユニット35は、S22で操舵モータ140を駆動してからの経過時間を計測し、中継シャフト156の実際の回動角度が目標回動角度に一致することなく、経過時間が所定時間に達した場合に、操舵ユニット10が故障していると判定する。
【0095】
S28では、制御ユニット35は、S24またはS26において、操舵ユニット10が故障していると判定されたか否かを判断する。操舵ユニット10が故障していると判定された場合(YESの場合)、処理はS30へ進む。
【0096】
S30では、制御ユニット35は、スイッチボックス46(図4参照)のブザーを介してユーザに異常の発生を報知するとともに、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータ、左後輪モータを停止して、その後の再始動を禁止する。
【0097】
S28で、操舵ユニット10が故障していると判定されていない場合(NOの場合)、処理はS32へ進む。S32では、制御ユニット35は、操舵角センサ130(図19参照)で検出される中継シャフト156の実際の回動角度が、S18で特定された目標回動角度に一致するか否かを判断する。中継シャフト156の実際の回動角度が目標回動角度に一致しない場合(NOの場合)、処理はS24へ戻る。中継シャフト156の実際の回動角度が目標回動角度に一致する場合(YESの場合)、処理はS34へ進む。
【0098】
S34では、制御ユニット35は、操舵モータ140を停止する。S34の後、図29の処理は終了する。
【0099】
図30に示すように、操舵旋回運転では、制御ユニット35は、操舵ユニット10によって、右前輪164および左前輪184を旋回半径の指令値に応じた操舵角で操舵するとともに、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータおよび左後輪モータによって、右前輪164、左前輪184、右後輪216および左後輪228を同じ方向に回転させる。これによって、大きな旋回半径で運搬車2の進行方向を変えることができる。この際に、右前輪164、左前輪184、右後輪216および左後輪228を、同一の回転数で回転させてもよいし、異なる回転数で回転させてもよい。例えば、図30に示すように、運搬車2を右方向に旋回させる場合には、左前輪184および左後輪228の回転数に比べて、右前輪164および右後輪216の回転数を低減させてもよい。
【0100】
(超信地旋回運転)
図28のS16の超信地旋回運転においては、制御ユニット35は、図31に示すように、操舵ユニット10によって、右前輪164および左前輪184を直進時の操舵角(すなわち0度の操舵角)で操舵するとともに、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータおよび左後輪モータによって、右前輪164および右後輪216を、左前輪184および左後輪228に対して逆の方向に回転させる。例えば、図31に示すように、運搬車2を右方向に旋回させる場合には、左前輪184および左後輪228を順方向に回転させつつ、右前輪164および右後輪216を逆方向に回転させる。これによって、小さな旋回半径で運搬車2の進行方向を変えることができる。
【0101】
制御ユニット35は、自動モードにおいて、図28と同様の旋回運転処理を実行してもよい。この場合、S2、S4、S6およびS8の処理は省略される。また、S10の処理において、制御ユニット35は、回動角度センサ76で検出された回動角度ではなく、制御ユニット35で生成した運搬車2の走行パターンに応じて、旋回半径の指令値を特定する。
【0102】
なお、本実施例の運搬車2では、制御ユニット35が、旋回半径の指令値に応じて、操舵旋回運転と超信地旋回運転を切り替える第1の旋回運転モードで動作するように構成されている。これとは異なり、制御ユニット35が、旋回半径の指令値に関わらず、常に操舵旋回運転を実行する第2の旋回運転モードで動作するように構成されていてもよい。あるいは、制御ユニット35が、旋回半径の指令値に関わらず、常に超信地旋回運転を実行する第3の旋回運転モードで動作するように構成されていてもよい。あるいは、制御ユニット35が、第1の旋回運転モードと、第2の旋回運転モードと、第3の旋回運転モードを含む複数の旋回運転モードの中からユーザが選択した旋回運転モードで動作するように構成されていてもよい。
【0103】
本実施例の運搬車2では、運搬車2に搭載されている全てのセンサからの出力信号が、制御ユニット35のメイン制御回路基板30に入力され、メイン制御回路基板30がそれらの出力信号に基づいて異常の有無を判定する。このような構成とすることによって、ある制御基板にあるセンサからの出力信号が入力され、別の制御基板に別のセンサからの出力信号が入力され、それぞれの制御基板が別個に異常の有無を判定する構成と比べて、速やかに異常の有無を判定することができる。
【0104】
(変形例)
上記の実施例において、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータ、左後輪モータは、右前輪164、左前輪184、右後輪216、左後輪228に組み込まれたインホイールモータ(図示せず)であってもよい。
【0105】
上記の実施例において、操舵モータ140、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータ、左後輪モータは、アウタロータ型のブラシレスDCモータであってもよいし、ブラシ付きDCモータであってもよいし、ACモータであってもよいし、他の種類のモータであってもよい。
【0106】
上記の実施例において、操舵ユニット10は、操舵モータ140の代わりに、他の種類のアクチュエータを用いて操舵シャフト132を回動させる構成としてもよい。
【0107】
上記の実施例において、右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータ、左後輪モータの代わりに、内燃機関によって右前輪164、左前輪184、右後輪216および/または左後輪228を駆動する構成としてもよい。
【0108】
上記の実施例において、バッテリパックBPの代わりに、運搬車2の外部に配置された電源から電源コードを介して運搬車2に電力が供給される構成としてもよい。
【0109】
上記の実施例において、回動角度センサ76は他の種類の回動角度センサであってもよいし、回動検出センサ77は他の種類の回動検出センサであってもよい。また、回動検出センサ77は、操舵ハンドル80の回動角度を検出可能であってもよい。
【0110】
以上のように、1つまたはそれ以上の実施形態において、運搬車2は、車台ユニット4(車台の例)と、車台ユニット4に支持されており、地面に接地する右前輪164、左前輪184、右後輪216および左後輪228と、右前輪164および左前輪184を、操舵輪として操舵する操舵機構203と、右前輪164、左前輪184、右後輪216および左後輪228を駆動する右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータおよび左後輪モータ(原動機の例)と、操舵機構203および右前輪モータ204、左前輪モータ210、右後輪モータおよび左後輪モータの動作を制御する制御ユニット35を備えている。制御ユニット35は、第1の旋回運転モードで動作可能である。第1の旋回運転モードにおいて、制御ユニット35は、旋回半径の指令値が大きい場合に、操舵輪を指令値に応じた操舵角とする操舵旋回運転を実行し、旋回半径の指令値が小さい場合に、操舵輪を直進時の操舵角とし、右前輪164および右後輪216に対して、左前輪184および左後輪228を逆方向に回転させる超信地旋回運転を実行するように構成されている。
【0111】
上記の構成によれば、第1の旋回運転モードにおいて、旋回半径の指令値が大きい場合には、制御ユニット35が操舵旋回運転を実行するので、車輪や地面に対する負荷を軽減することができる。また、第1の旋回運転モードにおいて、旋回半径の指令値が小さい場合には、制御ユニット35が超信地旋回運転を実行するので、小さい旋回半径で進行方向を変えることができる。上記の構成によれば、運搬車2において、車輪や地面に対する負荷を軽減しつつ、所望の旋回半径で進行方向を変えることができる。
【0112】
1つまたはそれ以上の実施形態において、運搬車2は、車台ユニット4に回動軸周りに回動可能に支持されており、ユーザによって操作される操舵ハンドル80(ハンドルの例)と、操舵ハンドル80の回動軸周りの回動角度を検出する回動角度センサ76をさらに備えている。制御ユニット35は、回動角度センサ76の出力信号に基づいて、旋回半径の指令値を特定する。
【0113】
一般に、ユーザが操舵ハンドル80を小さく回動させる場合には、ユーザは緩やかに(すなわち大きな旋回半径で)進行方向を変えることを望んでいるものと考えられる。逆に、ユーザが操舵ハンドル80を大きく回動させる場合には、ユーザは急激に(すなわち小さな旋回半径で)進行方向を変えることを望んでいるものと考えられる。上記の構成によれば、操舵ハンドル80の回動角度に応じて旋回半径の指令値を特定するので、ユーザが望んでいる旋回半径で運搬車2の進行方向を変えることができる。
【0114】
1つまたはそれ以上の実施形態において、制御ユニット35は、第1の旋回運転モードを含む複数の旋回運転モードの中からユーザが選択した旋回運転モードで動作するように構成されている。複数の旋回運転モードは、第2の旋回運転モードをさらに含んでいる。第2の旋回運転モードにおいて、制御ユニット35は、旋回半径の指令値に関わらず、常に操舵旋回運転を実行するように構成されている。
【0115】
上記の構成によれば、第1の旋回運転モードと第2の旋回運転モードを含む複数の旋回運転モードの中から、ユーザが所望の旋回運転モードを選択することができる。
【符号の説明】
【0116】
2 :運搬車
4 :車台ユニット
6 :荷台ユニット
8 :ハンドルユニット
10 :操舵ユニット
12 :前輪ユニット
12a :右前輪ユニット
12b :左前輪ユニット
14 :後輪ユニット
14a :右後輪ユニット
14b :左後輪ユニット
16 :バンパユニット
20 :車台フレーム
22 :コントローラケース
24 :バッテリボックス
26 :前照灯
28 :尾灯
30 :メイン制御回路基板
32 :駆動制御回路基板
34 :電気ブレーキ回路基板
35 :制御ユニット
36 :バッテリ取付部
38 :バッテリカバー
40 :残量表示部
42 :表示操作部
43 :エラー表示部
44 :過積載検出センサ
46 :スイッチボックス
48 :ブレーキケース
50 :ハンドルバー
50a :中央バー
50b :右側バー
50c :左側バー
52 :支持パイプ
54 :クランプスリーブ
54a :クランプ部
54b :スリット
56 :クランプ部材
56a :クランプ片
56b :クランプ片
56c :ボルト
56d :ナット
56e :ピン
58 :上側アーム板
60 :下側アーム板
62 :ハンドルスリーブ
64 :ハンドルシャフト
64a :ボール溝
64b :ボール溝
64c :第1ボール溝
64d :第1ボール溝
64e :第2ボール溝
64f :第2ボール溝
66 :シャフトカバー
68 :シャフトベース
70 :スライドスリーブ
70a :ガイド溝
70b :ガイド溝
70c :バネ受け部
70d :ボール保持孔
70e :ボール保持孔
72 :コイルバネ
74 :傾斜計
76 :回動角度センサ
77 :回動検出センサ
78 :センサベース
79 :センサカバー
80 :操舵ハンドル
82 :主電源スイッチ
84 :主電源表示部
86 :進行方向切換スイッチ
88 :トリガスイッチ
90 :照明スイッチ
92 :照明表示部
94 :速度切換スイッチ
96 :速度表示部
98 :警笛スイッチ
100 :ブレーキレバー
102 :ブレーキ保持レバー
104 :右側グリップ
106 :左側グリップ
108a :ガイドピン
108b :ガイドピン
110a :ボール
110b :ボール
112 :フォトインタラプタ
112a :発光部
112b :受光部
114 :フォトインタラプタ
114a :発光部
114b :受光部
115 :センサ基板
116 :遮光壁
116a :スリット
118 :遮光壁
118a :スリット
120 :ホール素子
122 :永久磁石
124 :モータハウジング
126 :モータ支持部材
128 :ギヤハウジング
130 :操舵角センサ
132 :操舵シャフト
132a :ギヤ部
134 :リンクプレート
136 :右側タイロッド
138 :左側タイロッド
140 :操舵モータ
140a :モータシャフト
140b :ギヤ部
141 :回転角度センサ
142 :スピンドル
142a :バネ受け部
144 :カムホイール
144a :カム溝
146 :スパーギヤ
146a :ギヤ部
146b :凹部
146c :カム突起
148 :ストッパプレート
150 :コイルバネ
152 :円筒ウォーム
154 :ウォームホイール
156 :中継シャフト
156a :ギヤ部
158 :トルクリミッタ
160 :ホール素子
162 :永久磁石
164 :右前輪
164a :右前輪アクスル
166 :右側ギヤハウジング
166a :軸受溝
168 :右側モータハウジング
170 :右前輪ガード
170a :第1支持部
170b :第1ガード部
170c :折返部
170d :第2ガード部
170e :第2支持部
172 :右側キングピン
172a :シャフト部
172b :第1円筒部
172c :第2円筒部
172d :平板部
172e :第3円筒部
172f :貫通孔
174 :右側スリーブ
176 :右上側アーム
178 :右下側アーム
180 :右側緩衝部材
180a :ダンパ
180b :コイルバネ
182 :右側操舵プレート
182a :ベース部
182b :アーム部
182c :円孔
182d :切欠き
182e :長孔
182f :取付孔
182g :貫通孔
184 :左前輪
184a :左側アクスル
186 :左側ギヤハウジング
186a :軸受溝
188 :左側モータハウジング
190 :左前輪ガード
190a :第1支持部
190b :第1ガード部
190c :折返部
190d :第2ガード部
190e :第2支持部
192 :左側キングピン
192a :シャフト部
192b :第1円筒部
192c :第2円筒部
192d :平板部
192e :第3円筒部
192f :貫通孔
194 :左側スリーブ
196 :左上側アーム
198 :左下側アーム
200 :左側緩衝部材
200a :ダンパ
200b :コイルバネ
202 :左側操舵プレート
202a :ベース部
202b :アーム部
202c :円孔
202d :切欠き
202e :長孔
202f :取付孔
202g :貫通孔
203 :操舵機構
204 :右前輪モータ
204a :右前輪モータシャフト
206 :遊星歯車機構
208 :ボルト
210 :左前輪モータ
210a :左前輪モータシャフト
212 :遊星歯車機構
214 :ボルト
216 :右後輪
218 :右側ギヤハウジング
218a :連結部
220 :右側モータハウジング
222 :右側ブレーキハウジング
224 :右側クラッチレバー
226 :右側緩衝部材
226a :ダンパ
226b :コイルバネ
228 :左後輪
230 :左側ギヤハウジング
230a :連結部
232 :左側モータハウジング
234 :左側ブレーキハウジング
236 :左側クラッチレバー
238 :左側緩衝部材
238a :ダンパ
238b :コイルバネ
240 :ベース部材
242 :軸受ボックス
244 :軸受ボックス
246 :バンパ本体
246a :前面
246b :右前面
246c :左前面
246d :下前面
248 :バンパ支持部材
250 :バンパ支持部材
252 :直動パイプ
252a :長孔
252b :長孔
254 :直動パイプ
254a :長孔
254b :長孔
256 :直動軸受
256a :前面
258 :直動軸受
260 :コイルバネ
262 :コイルバネ
264 :ベローズ
266 :ベローズ
268 :スイッチ支持部材
268a :ガイド溝
270 :スイッチ支持部材
270a :ガイド溝
272 :当接プレート
272a :ガイド片
272b :当接片
274 :当接プレート
274a :ガイド片
274b :当接片
276 :衝突検知スイッチ
278 :衝突検知スイッチ
280 :スイッチカバー
282 :スイッチカバー
284a :ボルト
284b :ボルト
286a :ナット
286b :ナット
288a :ボルト
288b :ボルト
290a :ナット
290b :ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31