(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154087
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/14 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
G03G5/14 101D
G03G5/14 101E
G03G5/14 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067705
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕子
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 敬司
(72)【発明者】
【氏名】江連 和昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和隆
(72)【発明者】
【氏名】大石 康宏
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 一也
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA31
2H068AA37
2H068AA43
2H068AA44
2H068AA49
2H068BA58
2H068BB28
2H068CA06
2H068CA29
2H068CA33
(57)【要約】
【課題】電子写真感光体は、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。
【解決手段】電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる感光層とを備える。前記中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有する。前記特定無機粒子は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有する。前記表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのうち少なくとも一方と、有機シロキサン化合物に由来する成分とを含有する。前記特定ポリアミド樹脂は、炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、シクロアルカン構造を有するジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、前記導電性基体上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる感光層とを備える電子写真感光体であって、
前記中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有し、
前記特定無機粒子は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有し、
前記表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのうち少なくとも一方と、有機シロキサン化合物に由来する成分とを含有し、
前記特定ポリアミド樹脂は、炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、シクロアルカン構造を有するジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有し、
前記特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、前記第1繰り返し単位及び前記第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上である、電子写真感光体。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記シクロアルカン構造を有するジアミン化合物は、イソホロンジアミンを含む、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記有機シロキサン化合物は、メチルハイドロジェンポリシロキサンを含む、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記表面処理層は、
前記酸化アルミニウム、前記シリカ及び前記有機シロキサン化合物のみを含有するか、又は
前記シリカ及び前記有機シロキサン化合物のみを含有する、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記特定ポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を有しない、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記中間層の厚みは、1μm以上20μm以下である、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記中間層において、前記特定ポリアミド樹脂100質量部に対する前記特定無機粒子の含有量は、50質量部以上1000質量部以下である、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記特定無機粒子の個数平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下である、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記感光層は、単層である、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記感光層は、電荷発生層及び電荷輸送層を有し、
前記電荷発生層は、前記中間層上に設けられ、
前記電荷輸送層は、前記電荷発生層上に設けられる、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の電子写真感光体を備える、プロセスカートリッジ。
【請求項13】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記像担持体の前記表面にトナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、
前記像担持体から被転写体へ前記トナー像を転写する転写装置とを備え、
前記像担持体が、請求項1又は2に記載の電子写真感光体である、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体には、環境に依存せず一定の感度を維持できることや、高温高湿環境下においてもかぶりの少ない画像を形成できることが要求される。電子写真感光体は、例えば、導電性基体と、導電性基体上に設けられる中間層と、中間層上に設けられる感光層とを備える。中間層は、例えば、バインダー樹脂及び金属酸化物粒子を含有する。中間層は、導電性基体及び感光層の密着性向上や、導電性基体側から感光層側への電荷注入を抑制する役割を有する。中間層を備える電子写真感光体として、例えば、金属酸化物粒子を含有し、所定の物性を有する中間層を備える電子写真感光体が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電子写真感光体は、中間層が吸湿性を有していることが本発明者らの検討により判明した。電子写真感光体において、中間層が吸湿性を有すると、感度が環境に依存して変化するおそれや、高温高湿環境下で形成した画像にかぶりが発生するおれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる電子写真感光体を提供することである。また、本発明の別の目的は、このような電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられる中間層と、前記中間層上に設けられる感光層とを備える電子写真感光体である。前記中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有する。前記特定無機粒子は、金属酸化物粒子と、前記金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有する。前記表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのうち少なくとも一方と、有機シロキサン化合物に由来する成分とを含有する。前記特定ポリアミド樹脂は、炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、シクロアルカン構造を有するジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有する。前記特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、前記第1繰り返し単位及び前記第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上である。
【0007】
本発明のプロセスカートリッジは、上述の電子写真感光体を備える。
【0008】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記像担持体の前記表面にトナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、前記像担持体から被転写体へ前記トナー像を転写する転写装置とを備える。前記像担持体は、上述の電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子写真感光体は、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。また、本発明のプロセスカートリッジ、及び本発明の画像形成装置は、電子写真の感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の電子写真感光体の一例である単層型電子写真感光体の部分断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の電子写真感光体の一例である積層型電子写真感光体の部分断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の画像形成装置の一例を示す図である。
【
図4】
図3に示す現像装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。
【0012】
アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「一般式」及び「化学式」を包括的に、「式」と記載する。式の説明における「各々独立に」は、同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよいことを意味する。本明細書に記載の各成分は、特記なき限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、及び「A、B、及びCの少なくとも1つ」は、「A、B、及びCからなる群から選択される少なくとも1つ」と同義である。
【0013】
[第1実施形態:電子写真感光体]
本発明の第1実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。第1実施形態の感光体は、導電性基体と、導電性基体上に設けられる中間層と、中間層上に設けられる感光層とを備える電子写真感光体である。中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有する。特定無機粒子は、金属酸化物粒子と、金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有する。表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのうち少なくとも一方と、有機シロキサン化合物に由来する成分とを含有する。特定ポリアミド樹脂は、炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、シクロアルカン構造を有するジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有する。特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上である。
【0014】
第1実施形態の感光体は、上記構成を備えることで、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。その理由は、以下のように推察される。第1実施形態の感光体が備える中間層は、特定無機粒子を含有する。特定無機粒子は、金属酸化物粒子と、表面処理層とを備える。表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのうち少なくとも一方と、有機シロキサン化合物に由来する成分とを含有する。特定無機粒子は、上述の表面処理層を備えることにより、中間層を形成する際に用いる溶液(中間層形成溶液)への分散安定性に優れる。また、特定無機粒子は、中間層のバインダー樹脂である特定ポリアミド樹脂との親和性に優れる。これらの結果、上述の中間層形成溶液により形成された中間層において、特定無機粒子は、特定ポリアミド樹脂に高度に分散している。第1実施形態の感光体は、特定無機粒子が特定ポリアミド樹脂に高度に分散した中間層を備えることにより、中間層に由来する効果が最適化されている。
【0015】
また、公知の感光体は、常温常湿環境では中間層が良好な絶縁性を発揮するものの、高温高湿環境下においては中間層が吸湿して抵抗が低下し、リーク電流が発生し易い。そのため、中間層を備える公知の感光体は、高温高湿環境下において、中間層の抵抗が極端に低下して中間層の機能が十分に発揮されない場合がある。また、有機シロキサン化合物のみで表面処理された金属酸化物粒子は、中間層の抵抗を更に低下させる傾向がある。これに対して、第1実施形態の感光体が備える中間層は、特定ポリアミド樹脂を含有する。特定ポリアミド樹脂は、疎水性が高い繰り返し単位である第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位を一定割合以上有するため、分子全体としての疎水性が高い。特定ポリアミド樹脂を含有する中間層は、高温高湿環境下においても吸湿が発生し難い。更に、第1実施形態の感光体に用いられる特定無機粒子は、有機シロキサン化合物だけでなく、酸化アルミニウム又はシリカによっても表面処理されている。その結果、特定無機粒子は、中間層の抵抗をあまり低下させることがない。このように、第1実施形態の感光体が備える中間層は、特定ポリアミド樹脂及び特定無機粒子を含有することにより、高温高湿環境下においても十分な抵抗を維持できる。また、ポリアミド樹脂の一般的な特性として、ジアミン及びジカルボン酸のみから製造できるため、安定した品質を実現できる。これらの結果、第1実施形態の感光体は、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。以下、感光体について更に説明する。
【0016】
第1実施形態の感光体は、例えば、単層型電子写真感光体(以下、単層型感光体と記載することがある)、又は積層型電子写真感光体(以下、積層型感光体と記載することがある)である。単層型感光体は、例えば、負帯電型の単層型感光体である。積層型感光体は、例えば、正帯電型の積層型感光体である。
【0017】
以下、
図1を参照して、第1実施形態の感光体の一例である単層型感光体1の構造について説明する。
図1は、単層型感光体1の部分断面図を示す。
図1に示すように、単層型感光体1は、例えば、導電性基体2と、導電性基体2上に設けられる中間層3と、中間層3上に設けられる感光層4とを備える。感光層4は、単層の感光層(以下、単層型感光層と記載することがある)4aである。
【0018】
中間層3の厚みとしては、1μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましい。
【0019】
単層型感光層4aの厚みとしては、特に限定されないが、5μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。以上、
図1を参照して、第1実施形態の感光体の一例である単層型感光体1の構造について説明した。
【0020】
以下、
図2を参照して、第1実施形態の感光体の一例である積層型感光体10の構造について説明する。
図2は、積層型感光体10の部分断面図を示す。
図2に示すように、積層型感光体10は、例えば、導電性基体2と、導電性基体2上に設けられる中間層3と、中間層3上に設けられる感光層4とを備える。感光層4は、電荷発生層4bと、電荷輸送層4cとを含む。そのため、
図2に示す積層型感光体10は、より具体的には、導電性基体2と、導電性基体2上に設けられる中間層3と、中間層3上に設けられる電荷発生層4bと、電荷発生層4b上に設けられる電荷輸送層4cとを備える。
【0021】
積層型感光体10が備える中間層3は、単層型感光体1が備える中間層3と同様であるため、説明を省略する。
【0022】
電荷発生層4bの厚みとしては、特に限定されないが、0.01μm以上5μm以下が好ましく、0.1μm以上3μm以下がより好ましい。
図2に示す例において、電荷発生層4bは、単層構造を有する。但し、電荷発生層4bは、多層構造を有していてもよい。
【0023】
電荷輸送層4cの厚みとしては、特に限定されないが、2μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
図2に示す例において、電荷輸送層4cは、単層構造を有する。但し、電荷輸送層4cは多層構造を有していてもよい。以上、
図2を参照して、第1実施形態の感光体の一例である積層型感光体10の構造について説明した。
【0024】
但し、第1実施形態の感光体の構造は、
図1及び
図2と異なっていてもよい。例えば、第1実施形態の感光体は、導電性基体、中間層及び感光層に加え、他の層(例えば、感光層上に設けられる保護層)を更に備えてもよい。また、第1実施形態の感光体が積層型感光体である場合、積層型感光体は、導電性基体と導電性基体上に設けられる中間層と、中間層上に設けられる電荷輸送層と、電荷輸送層上に設けられる電荷発生層とを備えもよい。
【0025】
[中間層]
中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、第1実施形態の感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。中間層は、特定ポリアミド樹脂及び特定無機粒子のみを含有することが好ましい。具体的には、中間層において、特定ポリアミド樹脂及び特定無機粒子の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0026】
(特定ポリアミド樹脂)
特定ポリアミド樹脂は、炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、シクロアルカン構造を有するジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有する。特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計含有割合は、80モル%以上であり、95モル%以上が好ましく、100モル%が更に好ましい。
【0027】
特定ポリアミド樹脂が有する第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の種類は、それぞれ、1種でもよく、2種以上でもよい。特定ポリアミド樹脂は、1種の第1繰り返し単位と、1種の第2繰り返し単位とを有することが好ましい。
【0028】
炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸は、例えば、一般式「COOH-(CH2)n-COOH」で表される(nは、6以上18以下の整数を表す)。炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、及びエイコサン二酸が挙げられる。炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸としては、炭素原子数8以上15以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素原子数8以上12以下の脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、オクタン二酸、デカン二酸又はドデカン二酸が更に好ましい。
【0029】
シクロアルカン構造を有するジアミン化合物において、シクロアルカン構造としては、例えば、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、ビシクロペンタン構造、及びデカリン構造が挙げられる。シクロアルカン構造を有するジアミン化合物としては、例えば、1,2-シクロペンタンジアミン、1,3-シクロペンタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4-メチレンビス-2-メチルシクロヘキシルアミン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、及び2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンが挙げられる。シクロアルカン構造を有するジアミン化合物としては、イソホロンジアミン、又は4,4-メチレンビス-2-メチルシクロヘキシルアミンが好ましく、イソホロンジアミンがより好ましい。
【0030】
特定ポリアミド樹脂は、少量であれば、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位に加え、他の繰り返し単位(例えば、ラクタム化合物に由来する繰り返し単位、及び炭素原子数8未満の脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位)を有してもよい。但し、特定ポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を有しないことが好ましい。具体的には、特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の含有割合としては、5モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましく、0モル%が更に好ましい。
【0031】
中間層において、特定ポリアミド樹脂の含有割合としては、10質量%以上70質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。特定ポリアミド樹脂の含有割合を10質量%以上70質量%以下とすることで、特定ポリアミド樹脂が中間層のバインダー樹脂としての機能を発揮し易くなる。
【0032】
(特定無機粒子)
特定無機粒子は、金属酸化物粒子と、金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有する。特定無機粒子の個数平均一次粒子径としては、5nm以上100nm以下が好ましく、8nm以上50nm以下が好ましく、8nm以上20nm以下がより好ましい。
【0033】
中間層において、特定ポリアミド樹脂100質量部に対する特定無機粒子の含有量としては、50質量部以上1000質量部以下が好ましく、100質量部以上500質量部以下がより好ましい。特定無機粒子の含有量を50質量部以上1000質量部以下とすることで、中間層は、導電性基体及び感光層の密着性向上や、導電性基体側から感光層側への電荷注入を抑制する役割を更に効果的に発揮できる。
【0034】
(金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子としては、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、及び導電性を有する金属酸化物(例えば、リンドープ酸化錫、及びアンチモンドープ酸化錫)の粒子が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン粒子がより好ましい。
【0035】
なお、特定無機粒子において、表面処理層の厚みはごく僅かである。そのため、金属酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、特定無機粒子の個数平均一次粒子径とほぼ同様である。
【0036】
特定無機粒子において、金属酸化物粒子の含有割合としては、80質量%以上99質量%以下が好ましく、85質量%以上93質量%以下がより好ましい。
【0037】
(表面処理層)
表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのうち少なくとも一方と、有機シロキサン化合物に由来する成分とを含有する。なお、表面処理層において、酸化アルミニウム及びシリカは、例えば、粒子状であるか、又は均質な膜を形成している。有機シロキサン化合物に由来する成分とは、有機シロキサン化合物そのものでもよく、有機シロキサン化合物が金属酸化物粒子又は酸素等と化学反応して生じる化合物でもよい。表面処理層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
【0038】
有機シロキサン化合物とは、有機基(例えば、置換基で置換されていてもよい炭素原子数1以上5以下のアルキル基、置換基で置換されていてもよい炭素原子数4以上8以下のシクロアルキル基、及び置換基で置換されていてもよい炭素原子数6以上10以下のアリール基)と、シロキサン結合(Si-O-Si結合)とを有する化合物である。有機基としては、メチル基、エチル基又はフェニル基が好ましい。なお、有機シロキサン化合物は、「シリコーンオイル」との名称で市販されている場合もある。
【0039】
有機シロキサン化合物としは、例えば、有機基で置換されたポリシロキサン化合物が挙げられる。有機基で置換されたポリシロキサン化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びメチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。有機シロキサン化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0040】
表面処理層において、酸化アルミニウム、シリカ及び有機シロキサン化合物に由来する成分の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、99質量%以上が好ましく、100質量%が更に好ましい。表面処理層は、酸化アルミニウム、シリカ及びメチルハイドロジェンポリシロキサンのみを含有するか、酸化アルミニウム、シリカ及びメチルポリシロキサンのみを含有するか、又はシリカ及びメチルハイドロジェンポリシロキサンのみを含有することが好ましい。
【0041】
表面処理層は、例えば、金属酸化物粒子が表面処理剤によって表面処理されることで形成される層である。表面処理剤は、有機シロキサン化合物と酸化アルミニウム及びシリカとを含有してもよく、有機シロキサン化合物と焼成等の処理によって酸化アルミニウム、又はシリカを生成する化合物(例えば、水酸化アルミニウム、又は含水シリカ水酸化)とを含有してもよい。表面処理方法としては、例えば、表面処理剤を金属酸化物粒子に塗布した後に焼成する方法が挙げられる。なお、特定無機粒子の調製の際は、有機シロキサン化合物と酸化アルミニウム又はシリカとを含有する表面処理剤を用い、一回の表面処理で金属酸化物粒子の表面に表面処理層を形成してもよい。一方、特定無機粒子の調製の際は、酸化アルミニウム又はシリカを含有する第1の表面処理剤を用いて金属酸化物粒子の表面に第1の表面処理層を形成した後、有機シロキサン化合物を含有する第2の表面処理剤を用いて第1の表面処理層の上に第2の表面処理層を形成してもよい。
【0042】
金属酸化物粒子100質量部に対する表面処理層の含有量としては、1質量部以上30質量部以下が好ましく、5質量部以上20質量部以下がより好ましい。表面処理層の含有量を1質量部以上とすることで、中間層における特定無機粒子の分散性を更に最適化できる。表面処理層の含有量を30質量部以下とすることで、特定無機粒子の抵抗を最適化できる。
【0043】
[感光層]
感光層は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、感光層バインダー樹脂とを含有する。第1実施形態の感光体が単層型感光体である場合(即ち、感光層が単層である場合)、感光層(単層型感光層)は、例えば、感光層バインダー樹脂、電荷発生剤、電子輸送剤及び正孔輸送剤を含有する。単層型感光層は、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0044】
第1実施形態の感光体が積層型感光体である場合(即ち、感光層が電荷発生層及び電荷輸送層を有する場合)、感光層が含む電荷発生層は、例えば、電荷発生剤を含有する。電荷発生層は、必要に応じて、感光層ベース樹脂を更に含有してもよい。電荷輸送層は、正孔輸送剤及び感光層バインダー樹脂を含有する。電荷発生層及び電荷輸送層は、各々、必要に応じて、添加剤を更に含有してもよい。
【0045】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。
【0046】
フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン構造を有する。フタロシアニン系顔料としては、例えば、金属フタロシアニン、及び無金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、チタニルフタロシアニンが好ましい。チタニルフタロシアニンは、式(CG-1)で表される。無金属フタロシアニンは、式(CG-2)で表される。
【0047】
【0048】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0049】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、チタニルフタロシアニン又は無金属フタロシアニンがより好ましく、Y型チタニルフタロシアニン又はX型無金属フタロシアニンが特に好ましい。
【0050】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2°にピークを有していない。
【0051】
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0052】
第1実施形態の感光体が単層型感光体である場合、感光層における電荷発生剤の含有量としては、感光層バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。第1実施形態の感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層における電荷発生剤の含有量としては、感光層ベース樹脂100質量部に対して、30.0質量部以上300.0質量部以下が好ましく、120.0質量部以上180.0質量部以下がより好ましい。
【0053】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
【0054】
正孔輸送剤としては、式(10)、(20)、(23)、(24)及び(25)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送剤(10)、(20)、(23)、(24)及び(25)と記載することがある)が挙げられる。
【0055】
【0056】
式(10)中、R1~R6は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。d1、d2、d4、及びd5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。d3及びd6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。R1~R6は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。d1、d2、d4、及びd5は、各々独立に、0、1又は2を表すことが好ましい。d3及びd6は、各々独立に、0を表すことが好ましい。
【0057】
式(10)中、d1~d6が2以上の整数を表すとき、複数のR1~複数のR6は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0058】
式(20)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。R52、R53、R54、R55、R56、R57、及びR58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。f1及びf2は、各々独立に、0以上2以下の整数を表す。f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0059】
式(20)中、f3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR50は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。f4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR51は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0060】
式(20)中、R50及びR51は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R52及びR53は、各々、水素原子又はメチル基で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。R54~R58は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。f1及びf2は、何れも0を表すか、又は何れも1を表すことが好ましい。f3及びf4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0061】
【0062】
式(23)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。R47及びR48は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。e1、e2、e3、及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。e5及びe6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。e7及びe8は、各々独立に、0又は1を表す。
【0063】
式(23)中、e1~e6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR41~複数のR46は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0064】
式(23)中、R41~R46は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R47及びR48は、水素原子を表すことが好ましい。e1、e2、e5、及びe6は、0を表すことが好ましい。e3及びe4は、2を表すことが好ましい。e7及びe8は、何れも0を表すか、又は何れも1を表すことが好ましい。
【0065】
式(24)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。a1、a2、a3、及びa4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0066】
式(24)中、a1~a4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR11~複数のR14は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0067】
式(24)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。a1、a2、a3、及びa4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0068】
【0069】
式(25)中、R60は、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。R61、R62、及びR63は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。g1、g2、及びg3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。g4は、0又は1を表す。R60は、フェニル基を表すことが好ましい。R61、R62、及びR63は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。g1及びg2は、1を表すことが好ましい。g3は、0を表すことが好ましい。
【0070】
式(25)中、g1~g3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR61~複数のR63は、互いに同一の基を表してもよく、異なる基を表してもよい。
【0071】
正孔輸送剤としては、式(HTM-1)~(HTM-11)で表される化合物(以下、それぞれを、正孔輸送(HTM-1)~(HTM-11)と記載することがある)が好ましい。
【0072】
【0073】
【0074】
第1実施形態の感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層において、感光層バインダー樹脂100質量部に対する正孔輸送剤の含有量としては、10質量部以上200質量部以下が好ましく、50質量部以上100質量部以下がより好ましい。第1実施形態の感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層において、感光層バインダー樹脂100質量部に対する正孔輸送剤の含有量としては、10質量部以上150質量部以下が好ましく、30質量部以上60質量部以下がより好ましい。
【0075】
(電子輸送剤)
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0076】
電子輸送剤は、式(11)~(17)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。以下、式(11)~(17)で表される化合物を、各々、電子輸送剤(11)~(17)と記載することがある。
【0077】
【0078】
式(11)中のQ1及びQ2、式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24、式(13)中のQ31及びQ32、式(14)中のQ41、Q42、及びQ43、式(15)中のQ71、Q72、Q73、Q74、Q75、及びQ76、並びに式(16)中のQ61及びQ62は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は少なくとも1つの特定置換基で置換されてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。上述の特定置換基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも1つの置換基である。
【0079】
式(11)中のQ1及びQ2は、各々独立に、炭素原子数4以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(12)中のQ21、Q22、Q23、及びQ24は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(13)中のQ31及びQ32は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。式(14)中のQ41及びQ42は、各々独立に、炭素原子数3以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(14)中のQ43は、ハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基を表すことが好ましい。式(15)中のQ71及びQ73は、各々独立に、炭素原子数3以上5以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(15)中のQ72及びQ74は、水素原子を表すことが好ましい。式(15)中のQ75は、フェニル基又は炭素原子数2以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。式(15)中のQ76は、ハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基、又は炭素原子数3以上5以下のアルキル基が好ましい。式(16)中のQ61及びQ62は、各々独立に、炭素原子数3以上5以下のアルキル基が好ましい。
【0080】
式(17)中のQ81は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。Q82は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、又は炭素原子数7以上20以下のアラルキルオキシ基を表す。Q83は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。vは、0以上4以下の整数を表す。Q81は、フェニル基を表すことが好ましい。Q82は、炭素原子数7以上8以下のアラルキルオキシ基を表すことが好ましい。Q83は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。vは、0を表すことが好ましい。
【0081】
電子輸送剤としては、式(ETM-1)~(ETM-8)で表される化合物(以下、それぞれを、電子輸送剤(ETM-1)~(ETM-8)と記載することがある)が好ましい。
【0082】
【0083】
電子輸送剤における電子輸送剤(11)~(17)の含有割合としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0084】
第1実施形態の感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層における電子輸送剤の含有量としては、感光層バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下が好ましく、20質量部以上60質量部以下がより好ましい。
【0085】
(感光層バインダー樹脂)
感光層バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
【0086】
これらの樹脂の中では、加工性、機械的強度、光学的特性、及び耐摩耗性のバランスに優れた単層型感光層及び電荷輸送層が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールB型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。感光層バインダー樹脂としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂が好ましい。ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂は、式(BisZ)で表される繰り返し単位を有する樹脂である。
【0087】
【0088】
第1実施形態の感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層における感光層バインダー樹脂の含有割合としては、20質量%以上60質量%以下が好ましい。第1実施形態の感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層における感光層バインダー樹脂の含有割合としては、40質量%以上75質量%以下が好ましい。
【0089】
(感光層ベース樹脂)
電荷発生層が含有する感光層ベース樹脂としては、電荷輸送層が含有する感光層バインダー樹脂として例示した樹脂と同様の樹脂が挙げられる。但し、電荷発生層及び電荷輸送層の形成時の都合から、上記感光層バインダー樹脂と、感光層ベース樹脂とは、異なる種類の樹脂であることが好ましい。感光層ベース樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0090】
電荷発生層におけるベース樹脂の含有割合としては、20質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0091】
(添加剤)
感光層が含有する添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、電子アクセプター化合物、及びレベリング剤が挙げられる。レベリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられ、より具体的にはジメチルシリコーンオイルが挙げられる。
【0092】
第1実施形態の感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、シリコーンオイルを含有することが好ましい。この場合、単層型感光層におけるシリコーンオイルの含有量としては、感光層バインダー樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.5質量部以下が好ましい。第1実施形態の感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、シリコーンオイルを含有することが好ましい。この場合、電荷輸送層におけるシリコーンオイルの含有量としては、感光層バインダー樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.5質量部以下が好ましい。
【0093】
[導電性基体]
導電性基体は、特に限定されず、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、及びインジウムが挙げられる。導電性を有する材料を2種以上組み合わせて、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は真鍮等)として用いてもよい。感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、導電性を有する材料としては、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚みは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0094】
[感光体の製造方法]
次に、第1実施形態の感光体の製造方法の一例について説明する。第1実施形態の感光体の製造方法は、例えば、中間層形成工程と、感光層形成工程とを含む。
【0095】
(中間層形成工程)
中間層形成工程では、中間層を形成するための塗布液(以下、中間層用塗布液と記載することがある)を調製する。中間層用塗布液は、特定無機粒子、特定ポリアミド樹脂及び溶媒を含有する。次いで、中間層用塗布液を、導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した中間層に含有される溶媒の少なくとも一部を除去して、中間層を形成する。
【0096】
(単層型感光体の感光層形成工程)
第1実施形態の感光体が単層型感光体である場合の感光層形成工程について説明する。単層型感光体の感光層形成工程は、単層型感光層形成工程を含む。単層型感光層形成工程では、単層型感光層を形成するための塗布液(以下、単層型感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。単層型感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、感光層バインダー樹脂と、溶媒と、任意成分(例えば、電子輸送剤及び添加剤)とを含有する。単層型感光層用塗布液は、上述の成分を混合することにより調製される。次いで、単層型感光層用塗布液を、中間層上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含有される溶媒の少なくとも一部を除去して、単層型感光層を形成する。
【0097】
(積層型感光体の感光層形成工程)
感光体が積層型感光体である場合の感光層形成工程について説明する。積層型感光体の感光層形成工程は、電荷発生層形成工程と、電荷輸送層形成工程とを含む。
【0098】
電荷発生層形成工程では、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、感光層ベース樹脂と、溶媒と、任意成分(例えば、添加剤)とを含有する。電荷発生層用塗布液は、上述の成分を混合することにより調製される。次いで、電荷発生層用塗布液を、中間層上に塗布する。次いで、塗布した電荷発生層用塗布液に含有される溶媒の少なくとも一部を除去して、電荷発生層を形成する。
【0099】
電荷輸送層形成工程では、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、感光層バインダー樹脂と、溶媒と、任意成分(例えば、添加剤)とを含む。電荷輸送層用塗布液は、上述の成分を混合することにより調製される。次いで、電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に塗布する。次いで、塗布した電荷輸送層用塗布液に含有される溶媒の少なくとも一部を除去して、電荷輸送層を形成する。
【0100】
上記中間層用塗布液、単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液、及び電荷輸送層用塗布液(以下、これらを包括的に塗布液と記載することがある)に含有される溶媒は、塗布液に含有される各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶媒としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、2-ブタノン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0101】
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶媒に溶解又は分散させることにより調製される。混合には、例えば、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0102】
塗布液を塗布する方法は、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、及びローラー塗布法が挙げられる。
【0103】
上記中間層用塗布液、単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液、及び電荷輸送層用塗布液に含有される溶媒の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上150分以下である。
【0104】
[第2実施形態:画像形成装置]
次に、
図3を参照して、本発明の第2実施形態の画像形成装置の一例である画像形成装置100について説明する。
図3は、画像形成装置100の構成の一例を示す図である。画像形成装置100は、例えば、タンデム方式のカラープリンターである。
【0105】
図3に示すように、画像形成装置100は、制御部15、操作部20、給紙部30、搬送部40、トナー補給部50、画像形成部60、転写装置70、定着装置80、及び排出部90を備える。
【0106】
制御部15は、画像形成装置100が備える各部の動作を制御する。制御部15は、プロセッサー(不図示)及び記憶部(不図示)を備える。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。記憶部は、半導体メモリーのようなメモリーを備え、HDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。プロセッサーは、制御プログラムを実行することによって、画像形成装置100の動作を制御する。記憶部は、制御プログラムを記憶している。
【0107】
操作部20は、ユーザーからの指示を受け付ける。操作部20は、ユーザーからの指示を受け付けると、ユーザーからの指示を示す信号を制御部15へ送信する。この結果、画像形成装置100による画像形成動作が開始される。
【0108】
給紙部30は、給紙カセット31、及び給紙ローラー群32を有する。給紙カセット31は、複数枚の記録媒体P(例えば、用紙)を収容可能である。給紙ローラー群32は、給紙カセット31に収容された記録媒体Pを1枚ずつ搬送部40へ給紙する。
【0109】
搬送部40は、ローラー及びガイド部材を備える。搬送部40は、給紙部30から排出部90まで延在する。搬送部40は、画像形成部60及び定着装置80を経由するように、給紙部30から排出部90まで記録媒体Pを搬送する。
【0110】
トナー補給部50は、画像形成部60にトナーを補給する。トナー補給部50は、第1装着部51Y、第2装着部51C、第3装着部51M、及び第4装着部51Kを備える。
【0111】
第1装着部51Yには第1トナーコンテナ52Yが、装着される。同様に、第2装着部51Cには第2トナーコンテナ52Cが、第3装着部51Mには第3トナーコンテナ52Mが、第4装着部51Kには第4トナーコンテナ52Kが装着される。
【0112】
第1トナーコンテナ52Y、第2トナーコンテナ52C、第3トナーコンテナ52M、及び第4トナーコンテナ52Kには、トナーがそれぞれ収容される。第2実施形態において、第1トナーコンテナ52Yには、イエロートナーが収容される。第2トナーコンテナ52Cには、シアントナーが収容される。第3トナーコンテナ52Mには、マゼンタトナーが収容される。第4トナーコンテナ52Kには、ブラックトナーが収容される。
【0113】
画像形成部60は、露光装置61、第1画像形成ユニット62Y、第2画像形成ユニット62C、第3画像形成ユニット62M、及び第4画像形成ユニット62Kを備える。
【0114】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々は、帯電装置63、現像装置64、像担持体65、クリーニング装置66、及び除電装置67を有する。
【0115】
なお、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの構成は、トナー補給部50から補給されるトナーの種類が異なるのみで、他の構成は同じである。従って、
図3において、第2画像形成ユニット62C~第4画像形成ユニット62Kが有する各構成については、符号を省略して示している。
【0116】
像担持体65は、第1実施形態の感光体(より具体的には、単層型感光体1及び積層型感光体10)である。上述の通り、第1実施形態の感光体は、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。従って、第2実施形態の画像形成装置100は、感光体の感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。
【0117】
第2実施形態において、像担持体65は、
図3の矢印R1で示す方向(
図3における時計回り方向)に回転する。帯電装置63、現像装置64、クリーニング装置66、及び除電装置67は、像担持体65の回転方向における上流側から記載された順に、像担持体65の周面に沿って配置される。
【0118】
帯電装置63は、像担持体65の表面(周面)を帯電させる。帯電装置63は、像担持体65を放電によって所定の極性に均一に帯電させる。帯電装置63は、例えば、帯電ローラーである。
【0119】
露光装置61は、帯電した像担持体65の表面を露光する。詳しくは、露光装置61は、帯電した像担持体65の表面にレーザー光を照射する。これにより、像担持体65の表面に静電潜像が形成される。
【0120】
現像装置64には、トナー補給部50からトナーが補給される。現像装置64は、トナー補給部50から補給されたトナーを、像担持体65の表面に供給する。この結果、像担持体65の表面に形成された静電潜像が、トナー像として現像される。
【0121】
第2実施形態において、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64は、第1トナーコンテナ52Yと接続する。従って、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64には、イエロートナーが補給される。よって、第1画像形成ユニット62Yが有する像担持体65の表面には、イエロートナー像が形成される。
【0122】
同様に、第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64、第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64、及び第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64は、各々、第2トナーコンテナ52C、第3トナーコンテナ52M、及び第4トナーコンテナ52Kと接続する。従って、第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64、第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64、及び第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64には、各々、シアントナー、マゼンタトナー、及びブラックトナーが補給される。よって、第2画像形成ユニット62Cが有する像担持体65の表面、第3画像形成ユニット62Mが有する像担持体65の表面、及び第4画像形成ユニット62Kが有する像担持体65の表面には、各々、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像が形成される。
【0123】
クリーニング装置66は、クリーニング部材661と、摺擦ローラー662とを有する。後述する一次転写ローラー71による転写後に、クリーニング部材661は、像担持体65の表面に圧接されて、像担持体65の表面に付着したトナーを回収する。クリーニング部材661は、例えば、クリーニングブレードである。摺擦ローラー662は、像担持体65の表面を摺擦して、像担持体65の表面を研磨する。
【0124】
除電装置67は、像担持体65の表面に除電光を照射して、像担持体65の表面を除電する。
【0125】
転写装置70は、像担持体65から、被転写体である記録媒体Pへ、トナー像を転写する。詳しくは、転写装置70は、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kが有する各像担持体65の表面に形成された各トナー像を、記録媒体Pに重ねて転写する。第2実施形態において、転写装置70は、二次転写方式(中間転写方式)によって、各トナー像を、記録媒体Pに重ねて転写する。転写装置70は、4つの一次転写ローラー71、中間転写ベルト72、駆動ローラー73、従動ローラー74、及び二次転写ローラー75を有する。
【0126】
中間転写ベルト72は、4つの一次転写ローラー71、駆動ローラー73、及び、従動ローラー74に張架された無端ベルトである。中間転写ベルト72は、駆動ローラー73の回転に応じて駆動する。中間転写ベルト72は、
図3における反時計回りに周回する。従動ローラー74は、中間転写ベルト72の駆動に応じて回転駆動する。
【0127】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面と対向して配置される。第2実施形態において、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面の駆動方向Dの上流側から下流側に向けて第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの順で配置される。
【0128】
各一次転写ローラー71は、中間転写ベルト72を介して各像担持体65に対向して配置され、各像担持体65に向けて押圧されている。このため、各一次転写ローラー71によって、各像担持体65の表面に形成されたトナー像が、中間転写ベルト72に順次転写される。第2実施形態において、中間転写ベルト72には、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像がこの順で重ねて転写される。以下、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像が重ねられたトナー像を「積層トナー像」と記載する場合がある。
【0129】
二次転写ローラー75は、中間転写ベルト72を介して駆動ローラー73に対向して配置される。二次転写ローラー75は、駆動ローラー73に向けて押圧されている。これにより、二次転写ローラー75と駆動ローラー73との間に転写ニップが形成される。記録媒体Pが転写ニップを通過する際に、二次転写ローラー75によって、中間転写ベルト72上の積層トナー像が記録媒体Pに転写される。第2実施形態において、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像がこの順で、上層から下層となるように記録媒体Pに転写される。積層トナー像が転写された記録媒体Pは、搬送部40によって定着装置80へ向けて搬送される。
【0130】
定着装置80は、加熱部材81、及び加圧部材82を備える。加熱部材81、及び加圧部材82は互いに対向して配置され、定着ニップを形成する。画像形成部60から搬送された記録媒体Pは、定着ニップを通過することにより所定の定着温度で加熱されながら、加圧される。この結果、積層トナー像が記録媒体Pに定着する。記録媒体Pは、搬送部40によって定着装置80から排出部90へ搬送される。
【0131】
排出部90は、排出ローラー対91及び排出トレイ93を有する。排出ローラー対91は、排出口92を介して排出トレイ93へ記録媒体Pを搬送する。排出口92は、画像形成装置100の上部に形成される。
【0132】
次に、
図4を参照して、現像装置64の構成について詳細に説明する。
図4は、現像装置64の構成の一例を示す図である。詳しくは、
図4は、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64を示す。なお、
図4では、理解を容易にするために像担持体65を、2点鎖線で図示している。第2実施形態において、現像装置64は、二成分現像剤を使用する二成分現像方式で且つタッチダウン現像方式を採用している。
【0133】
図3を参照して既に説明したように、現像装置64の現像容器640は、第1トナーコンテナ52Yに接続する。従って、現像装置64の現像容器640には、トナー補給口640hを介して、イエロートナーが補給される。
【0134】
図4に示すように、現像装置64は、現像容器640の内部に現像ローラー641、磁気ローラー642、第1攪拌スクリュー643、第2攪拌スクリュー644、及びブレード645を有する。詳しくは、現像ローラー641は、磁気ローラー642と対向して配置される。磁気ローラー642は、第2攪拌スクリュー644と対向して配置される。ブレード645は、磁気ローラー642と対向して配置される。
【0135】
現像容器640は、仕切り壁640cによって第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとに区画される。仕切り壁640cは、現像ローラー641の軸方向に延びる。第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとは、仕切り壁640cの長手方向の両端の外方において連通している。
【0136】
第1攪拌室640aには、第1攪拌スクリュー643が配置される。第1攪拌室640aには、磁性体であるキャリアが収容されている。第1攪拌室640aには、非磁性体であるトナーが、トナー補給口640hを介して補給される。
図4に示す例では、第1攪拌室640aには、イエロートナーが補給される。
【0137】
第2攪拌室640bには、第2攪拌スクリュー644が配置される。第2攪拌室640bには、磁性体であるキャリアが収容されている。
【0138】
第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644によって、イエロートナーはキャリアと攪拌される。この結果、キャリア、及びイエロートナーを含有する二成分現像剤が構成される。そして、現像容器640(より具体的には、第1攪拌室640aと第2攪拌室640b)に、二成分現像剤が収容されることとなる。
【0139】
第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644は、第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとの間で、二成分現像剤を循環させながら攪拌する。この結果、キャリアとの摩擦によってトナーが所定の極性に帯電する。
【0140】
なお、像担持体65が単層型感光体1である場合、像担持体65の表面及びトナーは、例えば、正極性に帯電される。像担持体65が積層型感光体10である場合、像担持体65の表面及びトナーは、例えば、負極性に帯電される。
【0141】
磁気ローラー642は、非磁性の回転スリーブ642aと、マグネット体642bとによって構成される。マグネット体642bは、回転スリーブ642aの内部に固定して配置される。マグネット体642bは、複数の磁極を含む。二成分現像剤は、マグネット体642bの磁力によって、磁気ローラー642に吸着する。この結果、磁気ローラー642の表面に磁気ブラシが形成される。
【0142】
ブレード645は、磁気ローラー642と現像ローラー641とが対向する位置よりも、磁気ローラー642の回転方向の上流側に配置される。第2実施形態において、磁気ローラー642は、
図4の矢印R3で示す方向(
図4における反時計回り方向)に回転する。磁気ローラー642は、回転することによって磁気ブラシをブレード645と対向する位置まで搬送する。ブレード645は、磁気ローラー642との間にギャップ(隙間)が形成されるように配置されている。ブレード645は、磁性体により構成される。従って、ブレード645の磁力によって、磁気ブラシの厚さが規制される。
【0143】
磁気ローラー642上の磁気ブラシの厚さが規制された後、磁気ローラー642及び現像ローラー641には、所定の電圧が印加される。所定の電圧が印加されて、磁気ローラー642と現像ローラー641との間が所定の電位差になると、二成分現像剤に含まれるイエロートナーが現像ローラー641に移行する。この結果、イエロートナーから成るトナー薄層が、現像ローラー641の表面に形成される。
【0144】
現像ローラー641は、
図4の矢印R2で示す方向(
図4における反時計回り方向)に回転する。これにより、表面に形成されたトナー薄層が像担持体65と対向する位置まで搬送され、像担持体65に付着される。このようにして、現像装置64は、キャリアとの摩擦により帯電したトナーを、像担持体65の表面に供給する。
【0145】
以上、
図4を参照して、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64について説明した。第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々が有する現像装置64の構成は、トナー補給部50から補給されるトナーの種類が異なるのみで、他の構成は同じである。従って、第2画像形成ユニット62C~第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64の構成については、説明を省略する。
【0146】
以上、
図3及び
図4を参照して、第2実施形態の画像形成装置の一例である画像形成装置100について説明した。但し、第2実施形態の画像形成装置は、画像形成装置100に限定されない。例えば、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。画像形成装置は、ロータリー方式を採用してもよい。帯電装置は、帯電ローラー以外の帯電装置(例えば、スコロトロン帯電器、帯電ブラシ、又はコロトロン帯電器)であってもよい。画像形成装置は、一成分現像剤を使用する一成分現像方式を採用してもよい。画像形成装置は、タッチダウン現像方式以外の現像方式(例えば、現像ローラーを備えず、磁気ローラーが現像ローラーも兼ねる現像方式)を採用してもよい。画像形成装置は、直接転写方式を採用してもよい。画像形成装置が直接転写方式を採用する場合、像担持体が記録媒体に接触しながら、像担持体から記録媒体にトナー像が直接転写される。画像形成装置は、クリーニング装置を備えていなくてもよい。画像形成装置は、除電装置を備えていなくてもよい。以上、第2実施形態の画像形成装置について、説明した。
【0147】
[第3実施形態:プロセスカートリッジ]
次に、
図3を引き続き参照して、本発明の第3実施形態のプロセスカートリッジについて説明する。第3実施形態のプロセスカートリッジは、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々に相当する。プロセスカートリッジは、像担持体65を備え、像担持体65は、第1実施形態の感光体(より具体的には、単層型感光体1及び積層型感光体10)である。第1実施形態で述べたように、第1実施形態の感光体は、感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。従って、第3実施形態のプロセスカートリッジは、感光体の感度の環境依存を抑制できると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できる。
【0148】
プロセスカートリッジは、像担持体65に加えて、帯電装置63、露光装置61、現像装置64、転写装置70(特に、一次転写ローラー71)、クリーニング部材661、摺擦ローラー662、及び除電装置67からなる群から選択される少なくとも1つ(例えば、1つ以上7つ以下)を更に備えていてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体65の感度特性等が劣化した場合に、像担持体65を含めて容易かつ迅速に交換することができる。以上、
図3を参照して、第3実施形態のプロセスカートリッジについて説明した。
【0149】
[置換基]
以下、本明細書で用いられる置換基について説明する。ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0150】
アルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数が異なる他のアルキル基の例示としては、例えば、上述のアルキル基のうち所定の炭素原子数を有するものが挙げられる。
【0151】
アルコキシ基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、及び3-エチルブトキシ基が挙げられる。炭素原子数が異なる他のアルコキシ基の例示としては、例えば、上述のアルコキシ基のうち所定の炭素原子数を有するものが挙げられる。
【0152】
アリール基の各々は、特記なき限り、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数が異なる他のアリール基の例示としては、例えば、上述のアリール基のうち所定の炭素原子数を有するものが挙げられる。
【0153】
アルケニル基は、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、1つ以上3つ以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、及びヘキサトリニル基が挙げられる。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
【実施例0154】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0155】
[無機粒子]
下記表1に示す通りに、表面処理済み酸化チタン粒子と、表面処理剤とを組み合わせることにより、無機粒子(T1)~(T6)を準備した。また、表面処理が施されていない酸化チタン粒子を無機粒子(T7)として用いた。なお、下記表1において、「MHPS」は、メチルハイドロジェンポリシロキサンを示す。「酸化Al」は、酸化アルミニウムを示す。「部」は、質量部を示す。
【0156】
(無機粒子(T1))
表面処理済み酸化チタン粒子(1)(テイカ株式会社製「MTY-500SAS」、個数平均一次粒子径35nm)を無機粒子(T1)として用いた。この無機粒子(T1)は、酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有していた。表面処理層は、酸化アルミニウム、シリカ及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを含有していた。
【0157】
(無機粒子(T2))
以下の方法により、無機粒子(T2)を調製した。まず、表面処理済み酸化チタン粒子(2)(テイカ株式会社製「MT-05」、個数平均一次粒子径10nm)を準備した。この表面処理済み酸化チタン粒子(2)は、酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有していた。表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカを含有していた。次に、表面処理済み酸化チタン粒子(2)100質量部と、溶媒としてのトルエン500質量部と、有機シロキサン化合物としてのメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業株式会社製「KF99」)3質量部とを混合及び攪拌し、スラリーを調製した。上述のスラリーを減圧しながら加熱し、溶媒を留去した。これにより、表面処理済み酸化チタン粒子(2)を、メチルハイドロジェンポリシロキサンで更に表面処理した。その結果、無機粒子(T2)を得た。無機粒子(T2)の表面処理層は、酸化アルミニウム、シリカ及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを含有していた。無機粒子(T2)の個数平均一次粒子径は、10nmであった。
【0158】
(無機粒子(T3))
有機シロキサン化合物を、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製「KF96」)3質量部に変更した以外は、無機粒子(T2)の調製と同様の方法により、無機粒子(T3)を調製した。無機粒子(T3)の表面処理層は、酸化アルミニウム、シリカ及びジメチルポリシロキサンを含有していた。無機粒子(T3)の個数平均一次粒子径は、10nmであった。
【0159】
(無機粒子(T4))
無機粒子(T4)の調製では、まず、表面処理済み酸化チタン粒子(3)(テイカ株式会社製「MT-500SA」、個数平均一次粒子径35nm)を準備した。この表面処理済み酸化チタン粒子(3)は、酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有していた。表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカを含有していた。表面処理済み酸化チタン粒子(2)を、上述の表面処理済み酸化チタン粒子(3)100質量部に変更した以外は、無機粒子(T2)の調製と同様の方法により、無機粒子(T4)を調製した。無機粒子(T4)の表面処理層は、酸化アルミニウム、シリカ及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを含有していた。無機粒子(T4)の個数平均一次粒子径は、35nmであった。
【0160】
(無機粒子(T5))
無機粒子(T5)の調製では、まず、表面処理済み酸化チタン粒子(4)(テイカ株式会社製「MT-100WP」、個数平均一次粒子径15nm)を準備した。この表面処理済み酸化チタン粒子(4)は、酸化チタン粒子と、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有していた。表面処理層は、シリカを含有していた。表面処理済み酸化チタン粒子(2)を、上述の表面処理済み酸化チタン粒子(4)100質量部に変更した以外は、無機粒子(T2)の調製と同様の方法により、無機粒子(T5)を調製した。無機粒子(T5)の表面処理層は、シリカ及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを含有していた。無機粒子(T5)の個数平均一次粒子径は、15nmであった。
【0161】
(無機粒子(T6))
メチルハイドロジェンポリシロキサンの使用量を3質量部から9質量部に変更した以外は、無機粒子(T2)の調製と同様の方法により、無機粒子(T6)を調製した。無機粒子(T6)の表面処理層は、酸化アルミニウム、シリカ及びメチルハイドロジェンポリシロキサンを含有していた。無機粒子(T6)の個数平均一次粒子径は、10nmであった。
【0162】
(無機粒子(T7))
表面処理が施されていない酸化チタン粒子(テイカ株式会社製「MT-500B」、個数平均一次粒子径50nm)を無機粒子(T7)として用いた。この無機粒子(T7)は、表面処理層を有していなかった。
【0163】
【0164】
[ポリアミド樹脂]
以下に示す通り、下記表2に示すモノマーにより形成されるポリアミド樹脂(A1)~(A7)を準備した。なお、ポリアミド樹脂(A1)~(A7)のうち、ポリアミド樹脂(A1)~(A4)は特定ポリアミド樹脂であった。25℃でエタノールに対する溶解度を測定したところ、ポリアミド樹脂(A1)~(A4)の溶解度は10質量%以上であった。
【0165】
(ポリアミド樹脂(A1))
攪拌装置、温度計、窒素導入管及び脱水管を備えた4つ口フラスコを反応容器として用いた。反応容器に、ジカルボン酸としてのドデカン二酸(1モル部)と、ジアミンとしてのイソホロンジアミン(1モル部)とを投入した。次に、反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器の内部を窒素置換した。以降、反応終了までこの状態を維持した。次に、反応容器の内容物の温度を230℃に加熱し、この温度で反応容器の内容物を4時間反応(脱水縮合)させた。反応終了後、反応より生じた水を脱水するため、反応容器の内部を減圧し、250℃で2時間保持した。その後、反応容器の内部を常温常圧に戻した。これにより、ポリアミド樹脂(A1)を得た。
【0166】
(ポリアミド樹脂(A2)~(A6))
使用するモノマーを下記表2に示す通りに変更した以外は、ポリアミド樹脂(A1)の調製と同様の方法により、ポリアミド樹脂(A2)~(A6)を調製した。なお、ポリアミド樹脂(A5)の調製では、モノマーとして、ジカルボン酸としてのドデカン二酸(0.35モル部)と、ジアミンとしてのイソホロンジアミン(0.35モル部)と、カプロラクタム(0.30モル部)とを用いた(全モノマーの合計100モル%におけるカプロラクタムの割合:30モル%)。
【0167】
(ポリアミド樹脂(A7))
ポリアミド樹脂(A7)として、東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」を準備した。ポリアミド樹脂(A7)は、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66及びナイロン610の共重合体であった。ポリアミド樹脂(A7)は、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位を何れも有しなかった。
【0168】
(粘度測定)
メタノール60質量部と、n-ブタノール20質量部と、トルエン20質量部とを混合し、混合有機溶媒(メタノール:n-ブタノール:トルエン=3:1:1)を調製した。混合有機溶媒85質量部と、測定対象となるポリアミド樹脂(詳しくは、ポリアミド樹脂(A1)~(A7)の何れか)15質量部とを混合し、評価溶液を調製した。評価溶液の粘度について、25℃において、株式会社セコニック製振動式粘度計「VM-10A」を用いて測定した。測定結果を下記表2に示す。なお、下記表2において、「MM」は、4,4-メチレンビス-2-メチルシクロヘキシルアミンを示す。
【0169】
【0170】
<単層型感光体の製造>
以下の方法により、負帯電型の単層型感光体である実施例1~26及び比較例1~4の感光体を製造した。
【0171】
[実施例1]
(中間層形成)
無機粒子(T1)3質量部と、ポリアミド樹脂(A1)1質量部と、エタノール12質量部と、n-ブタノール4質量部と、トルエン4質量部とを混合した。得られた混合物を、ビーズミルで10時間攪拌し、無機粒子(T1)を溶媒(エタノール、n-ブタノール及びトルエンの混合有機溶媒)に十分に分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。
【0172】
導電性基体として、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、長さ244.5mm)を用いた。導電性基体に、上述の中間層形成溶液をディップコート法で塗布した。次に、塗布後の導電性基体を、130℃で30分間加熱乾燥した。これにより、導電性基体上に中間層(膜厚:2μm)を形成した。
【0173】
(単層型感光層形成)
Y型チタニルフタロシアニン3.0質量部と、正孔輸送剤(HTM-1)70.0質量部と、電子輸送剤(ETM-1)40.0質量部と、感光層バインダー樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「パンライト(登録商標)TS2050」、粘度平均分子量:50000)100.0質量部と、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社「KF96-50cs」、ジメチルシリコーンオイル)0.1質量部と、テトラヒドロフラン760.0質量部とを混合し、混合液を得た。得られた混合液を、棒状音波発振子を用いて20分間超音波分散処理した。次に、リングコート法により、導電性基体上の中間層に、単層型感光層用塗布液を塗布した。塗布した単層型感光層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、中間層上に単層型感光層(膜厚:30μm)を形成した。これにより、実施例1の感光体を得た。
【0174】
[実施例2~26及び比較例1~4]
以下の点を変更した以外は、実施例1の感光体の製造と同様の方法により、実施例2~26及び比較例1~4の感光体を製造した。実施例2~26及び比較例1~4の感光体の製造では、中間層用塗布液に添加する無機粒子及びポリアミド樹脂の種類を下記表3に示す通りに変更した。また、実施例2~26及び比較例1~4の感光体の製造では、単層型感光層用塗布液に添加する正孔輸送剤及び電子輸送剤の種類を下記表3に示す通りに変更した。
【0175】
下記表3における用語は、以下の通りである。なお、後述する下記表5における用語についても、同様である。
CGM:電荷発生剤
CGM-1:Y型チタニルフタロシアニン
HTM:正孔輸送剤
ETM:電子輸送剤
Resin1:ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「パンライト(登録商標)TS2050」、粘度平均分子量:50000)
【0176】
【0177】
<単層型感光体の評価>
以下の方法により、実施例1~26及び比較例1~4の感光体について、感度の環境依存と、高温高湿環境下でのかぶりとを評価した。また、実施例1~26及び比較例1~4の感光体の製造時に使用した中間層用塗布液について、無機粒子の分散安定性を確認した。評価結果及び確認結果を下記表4に示す。
【0178】
[感度の環境依存]
温度10℃及び湿度15%RHの環境下(LL環境下)で、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、測定対象となる感光体の感度を測定した。詳しくは、ドラム感度試験機を用いて、感光体の表面電位が+800Vになるように、感光体を帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いてハロゲンランプの光から取り出した単色光(波長:780nm、光エネルギー:0.5μJ/cm2)を、感光体の表面に照射した。単色光の照射から50ミリ秒が経過した時点での感光体の表面電位を測定した。得られた表面電位をLL環境下での露光後電位VL(LL)(単位:+V)とした。次に、測定条件を温度30℃かつ湿度80%RHの環境下(HH環境下)に変更した以外は、LL環境下での露光後電位VL(LL)の測定と同様の測定を行い、得られた表面電位をHH環境下での露光後電位VL(HH)(単位:+V)とした。下記式にVL(LL)及びVL(HH)を当てはめることにより、ΔVLを算出した。感光体は、感度の環境依存が低いほど、ΔVLの値が低くなる。感光体の感度の環境依存は、以下の基準で判定した。
ΔVL=VL(LL)-VL(HH)
【0179】
(感度の環境依存の基準)
A(良好):ΔVLが40(単位:+V)以下である。
B(不良):ΔVLが40(単位:+V)超である。
【0180】
[無機粒子の分散安定性]
容量70mLのマヨネーズ瓶に、各感光体の製造時に使用した中間層用塗布液20gを投入した。上述のマヨネーズ瓶を、90rpmの速度で24時間回転攪拌処理した。次に、攪拌処理後の中間層用塗布液に含有される無機粒子について、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD-2300」)を用いて粒度分布測定を行った。粒度分布測定の結果に基づいて、攪拌処理後の無機粒子の体積中位径を算出した。無機粒子の分散安定性は、以下の基準で判定した。
【0181】
(無機粒子の分散安定性の基準)
A(良好):攪拌処理後の無機粒子の体積中位径が1.0μm以下であった。
B(不良):攪拌処理後の無機粒子の体積中位径が1.0μm超であった。
【0182】
[高温高湿環境下でのかぶり]
評価機として、プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「ECOSYS(登録商標)P2040dw」)を用いた。評価機から感光体を取り外し、代わりに評価対象となる感光体を装着した。評価用の現像剤として、上述のプリンターに標準的に附属する現像剤を用いた。温度30℃かつ湿度80%RH環境下(HH環境下)において、評価機を用いて、印刷用紙にグレー画像を形成した。グレー画像を形成後の印刷用紙を目視で観察し、かぶりと見做される画像不良の有無を確認した。高温高湿環境下でのかぶりは、以下の基準で判定した。
【0183】
A(良好):印刷用紙にかぶりが確認されなかった。
B(不良):印刷用紙にかぶりが確認された。
【0184】
【0185】
<積層型感光体の製造>
以下の方法により、正帯電型の積層型感光体である実施例27~45及び比較例5~8の感光体を製造した。
【0186】
[実施例27]
(中間層形成)
実施例1に記載の中間層形成と同様の方法により、導電性基体上に中間層(膜厚:2μm)を形成した。
【0187】
(電荷発生層形成)
Y型チタニルフタロシアニン1.5質量部と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株志会社製「エスレック(登録商標)BX-5」)1.0質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル40.0質量部と、テトラヒドロフラン40.0質量部とを混合し、混合液を得た。得られた混合液を、ビーズミルを用いて12時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。次いで、ディップコート法により、中間層上に電荷発生層用塗布液を塗布した。塗布した電荷発生層用塗布液を50℃で5分間乾燥させて、中間層上に電荷発生層(膜厚:0.3μm)を形成した。
【0188】
(電荷輸送層形成)
正孔輸送剤(HTM-1)45.0質量部と、感光層バインダー樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「パンライト(登録商標)TS2050」、粘度平均分子量:50000)100.0質量部と、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社「KF96-50cs」、ジメチルシリコーンオイル)0.1質量部と、テトラヒドロフラン700.0質量部とを混合し、電荷輸送層用塗布液を得た。次に、ディップコート法により、電荷発生層上に、電荷輸送層用塗布液を塗布した。塗布した電荷輸送層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚:30μm)を形成した。これにより、実施例27の感光体を得た。
【0189】
[実施例28~45及び比較例5~8]
以下の点を変更した以外は、実施例27の感光体の製造と同様の方法により、実施例28~45及び比較例5~8の感光体を製造した。実施例28~45及び比較例5~8の感光体の製造では、中間層用塗布液に添加する無機粒子及びポリアミド樹脂の種類を下記表5に示す通りに変更した。また、実施例28~45及び比較例5~8の感光体の製造では、電荷輸送層用塗布液に添加する正孔輸送剤の種類を下記表5に示す通りに変更した。
【0190】
下記表5における用語は、以下の通りである。
Resin2:ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株志会社製「エスレック(登録商標)BX-5」)
【0191】
【0192】
<積層型感光体の評価>
以下の方法により、実施例27~45及び比較例5~8の感光体について、感度の環境依存と、高温高湿環境下でのかぶりとを評価した。また、実施例27~45及び比較例5~8の感光体の製造時に使用した中間層用塗布液について、実施例1~26及び比較例1~4の感光体の製造時に使用した中間層用塗布液と同様の方法により、無機粒子の分散安定性を確認した。評価結果及び確認結果を下記表6に示す。
【0193】
[感度の環境依存]
温度10℃及び湿度15%RHの環境下(LL環境下)で、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、測定対象となる感光体の感度を測定した。詳しくは、ドラム感度試験機を用いて、感光体の表面電位が-700Vになるように、感光体を帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いてハロゲンランプの光から取り出した単色光(波長:780nm、光エネルギー:0.5μJ/cm2)を、感光体の表面に照射した。単色光の照射から50ミリ秒が経過した時点での感光体の表面電位を測定した。得られた表面電位をLL環境下での露光後電位VL(LL)(単位:+V)とした。次に、測定条件を温度30℃かつ湿度80%RHの環境下(HH環境下)に変更した以外は、LL環境下での露光後電位VL(LL)の測定と同様の測定を行い、得られた表面電位をHH環境下での露光後電位VL(HH)(単位:-V)とした。下記式にVL(LL)及びVL(HH)を当てはめることにより、ΔVLを算出した。感光体は、感度の環境依存が低いほど、ΔVLの値が低くなる。感光体の感度の環境依存は、以下の基準で判定した。
ΔVL=VL(LL)-VL(HH)
【0194】
(感度の環境依存の基準)
A(良好):ΔVLが45(単位:-V)以下である。
B(不良):ΔVLが45(単位:-V)超である。
【0195】
[高温高湿環境下でのかぶり]
評価機として、プリンター(サムスン電子社製「MultiXpress SL-K4350LX」)を用いた以外は、実施例1~26及び比較例1~4の感光体と同様の方法により、実施例27~45及び比較例5~8の感光体について、高温高湿環境下でのかぶりを評価した。
【0196】
【0197】
表1~6に示すように、実施例1~45の感光体は、導電性基体と、導電性基体上に設けられる中間層と、中間層上に設けられる感光層とを備えていた。中間層は、特定ポリアミド樹脂と、特定無機粒子とを含有していた。特定無機粒子は、金属酸化物粒子と、金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する表面処理層とを有していた。表面処理層は、酸化アルミニウム及びシリカのうち少なくとも一方と、有機シロキサン化合物に由来する成分とを含有していた。特定ポリアミド樹脂は、炭素原子数8以上20以下の脂肪族ジカルボン酸に由来する第1繰り返し単位と、シクロアルカン構造を有するジアミン化合物に由来する第2繰り返し単位とを有していた。特定ポリアミド樹脂の有する全繰り返し単位に対して、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計含有割合は、80質量%以上であった。
【0198】
実施例1~45の感光体は、感度の環境依存を抑制すると共に、高温高湿環境下でのかぶりの発生を抑制できた。また、実施例1~45の感光体は、製造時に用いた中間層用塗布液における無機粒子の分散安定性が良好であった。このことから、実施例1~45の感光体は、中間層に無機粒子が安定して分散していると判断される。
【0199】
一方、比較例1及び5の感光体は、中間層の形成に用いた無機粒子が表面処理層を有していなかった。また、比較例2~4及び6~8の感光体は、中間層の形成において、特定ポリアミド樹脂の代わりに、他のポリアミド樹脂が用いられていた。その結果、比較例1~8の感光体は、中間層用塗布液に無機粒子を十分に分散させることができなかった。つまり、比較例1~8の感光体は、中間層に無機粒子が安定して分散していなかったと判断される。また、比較例2~4及び6~8は、中間層が特定ポリアミド樹脂を含有しないため、吸湿性が高かったと判断される。これらにより、比較例1~8の感光体は、感度の環境依存と、高温高湿環境下でのかぶりとが不良であった。