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特開2024-154089絶縁基板及びサーマルプリントヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154089
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】絶縁基板及びサーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067707
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】西 宏治
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065JC02
2C065JC06
2C065JC09
2C065JC11
2C065JC12
(57)【要約】
【課題】グレーズ層の平坦性を確保することが可能な絶縁基板を提供する。
【解決手段】絶縁基板100は、第1面10aを有するセラミック層10と、第1面10a上に配置されている第1グレーズ層20とを備えている。第1グレーズ層20は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有するセラミック層と、
前記第1面上に配置されている第1グレーズ層とを備え、
前記第1グレーズ層は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である、絶縁基板。
【請求項2】
前記第1グレーズ層は、焼成されたLTCC用グリーンシートである、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項3】
前記第1グレーズ層は、前記第1面上の全面にわたって配置されている、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項4】
前記第1グレーズ層の平面視における外周縁部の厚さから前記第1グレーズ層の平均厚さを減じた値は、5μm以下である、請求項3に記載の絶縁基板。
【請求項5】
前記第1グレーズ層の厚さは、150μm以上である、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項6】
前記第1グレーズ層の厚さは、150μm以下である、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項7】
前記セラミック層は、前記第1面の反対面である第2面を有し、
前記第2面上に配置されている第2グレーズ層とを備え、
前記第2グレーズ層は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項8】
前記第1グレーズ層上に配置されており、かつ平面視において第1方向に沿って延在している第3グレーズ層及び第4グレーズ層をさらに備え、
前記第4グレーズ層は、平面視において、前記第3グレーズ層と前記第1方向に直交する第2方向において前記第3グレーズ層と離間している、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の絶縁基板。
【請求項9】
前記第1グレーズ層の熱伝導率は、前記第3グレーズ層の熱伝導率及び前記第4グレーズ層の熱伝導率の3倍以下である、請求項8に記載の絶縁基板。
【請求項10】
請求項8に記載の前記絶縁基板と、
共通電極と、
複数の個別電極と備え、
前記共通電極は、前記第2方向に沿って延在している複数の突出部を有し、
前記複数の突出部は、前記第3グレーズ層上において前記第1方向に沿って間隔を空けて並んでおり、
前記複数の個別電極の各々は、先端部と、ボンディングパッドとを有し、
前記先端部は、前記第3グレーズ層上において前記複数の突出部のうちの隣り合う2つの間に配置されており、
前記ボンディングパッドは、前記第4グレーズ層上に配置されている、サーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁基板及びサーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-175561号公報(特許文献1)には、絶縁基板が記載されている。特許文献1に記載の絶縁基板は、サーマルプリントヘッド用の絶縁基板である。特許文献1に記載の絶縁基板は、基材とグレーズ層とを有している。基材の構成材料は、セラミックである。基材は、主面を有している。グレーズ層は、基材の主面上に配置されている。グレーズ層の構成材料は、ガラスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-175561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の絶縁基板では、グレーズ層が以下の方法により形成される。第1に、ガラスを含むペーストが、基材の主面上に塗布される。第2に、塗布されたペーストが焼成されることにより、グレーズ層となる。この際、基材の主面の外周縁部上にあるペースト中の溶剤が蒸発されやすいため、ペーストが基材の主面の外周縁部上に向かって流動する。その結果、基材の主面の外周縁部上に形成されるグレーズ層の部分が周囲よりも隆起してしまうため、特許文献1の絶縁基板には、使用できない部分が生じてしまう。
【0005】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みたものである。より具体的には、本開示は、グレーズ層の平坦性を確保することが可能な絶縁基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の絶縁基板は、第1面を有するセラミック層と、第1面上に配置されている第1グレーズ層とを備えている。第1グレーズ層は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の絶縁基板によると、グレーズ層(第1グレーズ層)の平坦性を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】絶縁基板100の平面図である。
図2図1中のII-IIにおける断面図である。
図3】絶縁基板100の製造工程図である。
図4】第1グレーズ層形成工程S2を説明する断面図である。
図5】第2グレーズ層形成工程S3を説明する断面図である。
図6】第3グレーズ層形成工程S4を説明する断面図である。
図7】変形例に係る絶縁基板100の断面図である。
図8A】絶縁基板100Aの断面図である。
図8B】絶縁基板100Bの断面図である。
図9】サーマルプリントヘッド200の平面図である。
図10A図9中のXA-XAにおける断面図である。
図10B図9中のXB-XBにおける断面図である。
図11】サーマルプリントヘッド200の製造工程図である。
図12】金属層パターンニング工程S7を説明する断面図である。
図13】発熱体形成工程S9を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態の係る絶縁基板を絶縁基板100とし、実施形態に係るサーマルプリントヘッドをサーマルプリントヘッド200とする。
【0010】
(絶縁基板100の構成)
以下に、絶縁基板100の構成を説明する。
【0011】
図1は、絶縁基板100の平面図である。図1では、金属層40の図示が省略されている。図2は、図1中のII-IIにおける断面図である。図1及び図2に示されているように、絶縁基板100は、セラミック層10と、グレーズ層20と、グレーズ層30と、グレーズ層31と、金属層40とを有している。
【0012】
セラミック層10の構成材料は、セラミックである。セラミック層10の構成材料の具体例としては、アルミナ(Al)が挙げられる。セラミック層10は、第1面10aと、第2面10bとを有している。第1面10a及び第2面10bは、セラミック層10の厚さ方向における両端面である。第2面10bは、第1面10aの反対面である。
【0013】
グレーズ層20の構成材料は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である。グレーズ層20は、例えば、焼成されたLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic)用グリーンシートである。グレーズ層20は、第1面10a上に配置されている。グレーズ層20は、好ましくは、第1面10a上の全面にわたって配置されている。
【0014】
グレーズ層20の厚さを、厚さTとする。厚さTは、例えば、150μm以上である。厚さTは、150μm以下であってもよい。平面視におけるグレーズ層20の外周縁部における厚さTから厚さTの平均値を減じた値は、5μm以下であることが好ましい。
【0015】
グレーズ層30は、グレーズ層20上に配置されている。グレーズ層30は、平面視において、第1方向DR1に沿って延在している。グレーズ層31は、グレーズ層20上に配置されている。グレーズ層31は、平面視において、第1方向DR1に沿って延在しており、かつ第1方向DR1に直交する第2方向DR2においてグレーズ層30と離間している。第1方向DR1に直交する断面視において、グレーズ層30の頂面は、例えば曲線状である。第1方向DR1に直交する断面視において、グレーズ層31の頂面は、例えば平坦面を含んでいる。
【0016】
グレーズ層30の構成材料及びグレーズ層31の構成材料は、例えばガラスである。グレーズ層30を構成しているガラスとグレーズ層31を構成しているガラスとは、成分が異なっていてもよい。これにより、第1方向DR1に直交する断面視におけるグレーズ層30の形状及びグレーズ層31の形状を上記のようにすることができる。グレーズ層20の熱伝導率は、グレーズ層30の熱伝導率及びグレーズ層31の熱伝導率の3倍以下であることが好ましい。グレーズ層20の熱伝導率は、グレーズ層30の熱伝導率及びグレーズ層31の熱伝導率の2倍以下であることがさらに好ましい。
【0017】
金属層40の構成材料は、例えば金(Au)である。但し、金属層40の構成材料は、これに限られるものではない。金属層40は、グレーズ層30及びグレーズ層31を覆うように、グレーズ層20上に配置されている。
【0018】
(絶縁基板100の製造方法)
以下に、絶縁基板100の製造方法を説明する。
【0019】
図3は、絶縁基板100の製造工程図である。図3に示されているように、絶縁基板100の製造方法は、準備工程S1と、第1グレーズ層形成工程S2と、第2グレーズ層形成工程S3と、第3グレーズ層形成工程S4と、金属層形成工程S5とを有している。
【0020】
準備工程S1では、セラミック層10が準備される。準備工程S1の後には、第1グレーズ層形成工程S2が行われる。
【0021】
図4は、第1グレーズ層形成工程S2を説明する断面図である。図4に示されているように、第1グレーズ層形成工程S2では、第1面10a上に、グレーズ層20が形成される。第1グレーズ層形成工程S2では、第1に、LTCC用グリーンシートが第1面10a上に配置される。第2に、第1面10a上に配置されているLTCC用グリーンシートが、第1面10aに向かって加圧された状態で加熱される。これにより、LTCC用グリーンシートが第1面10aに貼り付けられるとともに焼成されてグレーズ層20になる。第1グレーズ層形成工程S2の後には、第2グレーズ層形成工程S3が行われる。
【0022】
図5は、第2グレーズ層形成工程S3を説明する断面図である。図5に示されているように、第2グレーズ層形成工程S3では、グレーズ層20上に、グレーズ層30が形成される。第2グレーズ層形成工程S3では、第1に、ガラスを含有するペーストが、グレーズ層20上に塗布される。第2に、塗布されたペーストが加熱される。これにより、ペースト中の溶剤が蒸発されるとともにペースト中のガラスが互いに結合され、グレーズ層30が形成される。第2グレーズ層形成工程S3が行われた後には、第3グレーズ層形成工程S4が行われる。
【0023】
図6は、第3グレーズ層形成工程S4を説明する断面図である。図6に示されているように、第3グレーズ層形成工程S4では、グレーズ層20上に、グレーズ層31が形成される。第3グレーズ層形成工程S4では、第1に、ガラスを含有するペーストが、グレーズ層20上に塗布される。第2に、塗布されたペーストが加熱される。これにより、ペースト中の溶剤が蒸発されるとともにペースト中のガラスが互いに結合され、グレーズ層31が形成される。第3グレーズ層形成工程S4が行われた後には、金属層形成工程S5が行われる。
【0024】
金属層形成工程S5では、グレーズ層30及びグレーズ層31を覆うように、グレーズ層20上に金属層40が形成される。金属層形成工程S5では、第1に、金属層40の構成材料を含むレジネートペーストがグレーズ層20上に塗布される。第2に、塗布されたレジネートペーストを焼成することにより、金属層40が形成される。但し、金属層40の形成方法は、これに限られるものではない。以上により、図1及び図2に示されている構造を有する絶縁基板100が形成される。
【0025】
(絶縁基板100の変形例)
図7は、変形例に係る絶縁基板100の断面図である。図7に示されているように、絶縁基板100は、グレーズ層50をさらに有していてもよい。グレーズ層50の構成材料は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である。グレーズ層50の構成材料の具体例としては、焼成されたLTCC用グリーンシートが挙げられる。グレーズ層50は、第2面10b上に配置されている。この場合、第1グレーズ層形成工程S2では、第1面10aに対してのみならず、第2面10bに対してもLTCC用グリーンシートの焼成・貼り付けが行われることになる。
【0026】
(絶縁基板100の効果)
以下に、絶縁基板100の効果を、比較例1に係る絶縁基板(絶縁基板100A)及び比較例2に係る絶縁基板(絶縁基板100B)と対比しながら説明する。
【0027】
図8Aは、絶縁基板100Aの断面図である。図8Aに示されているように、絶縁基板100Aは、セラミック層10と、グレーズ層60と、金属層40とを有している。グレーズ層60の構成材料は、ガラスである。グレーズ層60は、第1面10a上に配置されている。金属層40は、グレーズ層60上に配置されている。
【0028】
グレーズ層60は、ガラスを含有するペーストを第1面10a上に塗布するとともに、塗布されたペーストを加熱することにより形成される。平面視における第1面10aの外周縁部上に塗布されたペースト中の溶剤は蒸発されやすいため、この蒸発に伴い、ペーストは、平面視における第1面10aの外周縁部上に向かって流動する(コーヒーリング現象)。その結果、平面視におけるグレーズ層60の外周縁部は、周囲と比較して隆起してしまう。例えば、厚さが200μm程度の厚さのグレーズ層60を形成すると、平面視におけるグレーズ層60の外周縁部は、グレーズ層60の平均厚さよりも30μm程度厚くなってしまう。このように隆起したグレーズ層60を有する絶縁基板100Aの部分は、サーマルプリントヘッド用の絶縁基板として使用することが困難である。
【0029】
上記のとおり、絶縁基板100では、ペーストを用いることなく、LTCC用グリーンシートを焼成・貼り付けすることによりグレーズ層20を形成している。そのため、絶縁基板100では、コーヒーリング現象に起因して平面視におけるグレーズ層60の外周縁部が隆起しがたい。その結果、絶縁基板100では、サーマルプリントヘッド用の絶縁基板として使用することができない部分が発生しがたい。
【0030】
絶縁基板100では、グレーズ層20がLTCC用グリーンシートを用いて形成されているため、厚さTに拠らず、平面視におけるグレーズ層20の外周縁部に隆起が生じにくいため、厚さTを小さくすることも厚さTを大きくすることも可能である。より具体的には、厚さTを大きくする(例えば150μm以上)ことにより、サーマルプリントヘッドの発熱部から熱が逃げにくくなり、サーマルプリントヘッドの動作を省エネルギ化することが可能である。他方で、厚さTを小さくする(例えば150μm以下)ことにより、サーマルプリントヘッドの発熱部から熱が逃げやすくなり、高速印字が可能となる。
【0031】
絶縁基板100では、グレーズ層20がLTCC用グリーンシートを用いて形成されている、すなわちグレーズ層20の構成材料がセラミック粒子及びガラスを含む焼結体であるため、グレーズ層20の熱伝導率が過度に大きくならない(ガラスの3倍以下程度に収まる)。そのため、絶縁基板100では、グレーズ層20の蓄熱性を維持することが可能である。
【0032】
図8Bは、絶縁基板100Bの断面図である。図8Bに示されているように、絶縁基板100Bは、セラミック層10と、グレーズ層30と、グレーズ層31と、グレーズ層61と、金属層40とを有している。グレーズ層30及びグレーズ層31は、第1面10a上に配置されており、第1方向DR1に沿って延在しているとともに第2方向DR2において互いに離間されている。グレーズ層61の構成材料は、低温焼成ガラスである。グレーズ層61は、グレーズ層30及びグレーズ層31を覆うように、第1面10a上に配置されている。
【0033】
絶縁基板100Bがサーマルプリントヘッド用の絶縁基板として用いられる際、絶縁基板100は、配線形成時に加熱を受ける。グレーズ層61の構成材料は低温焼成ガラスであるため、上記の加熱により軟化し、流動してしまうことがある。この流動は、配線に断線を生じさせる原因となる。絶縁基板100では、グレーズ層20の構成材料は焼成されたLTCC用グリーンシートであり、グレーズ層30及びグレーズ層31を構成するガラスも低温焼成ガラスではないため、配線形成時の加熱により軟化・流動しがたい。そのため、絶縁基板100によると、配線の断線を抑制可能である。
【0034】
第1面10aにLTCC用グリーンシートを焼成して貼り付ける際に、セラミック層10が沿ってしまうことがある。第2面10b上にグレーズ層50が形成される際には、第1グレーズ層形成工程S2において両側から同様の加熱・加圧が行われることになり、セラミック層10の反りを抑制することが可能である。
【0035】
(サーマルプリントヘッド200の構成)
以下に、サーマルプリントヘッド200の構成を説明する。
【0036】
図9は、サーマルプリントヘッド200の平面図である。図10Aは、図9中のXA-XAにおける断面図である。図10Bは、図9中のXB-XBにおける断面図である。図9図10A及び図10Bに示されているように、サーマルプリントヘッド200には、絶縁基板100が用いられている。より具体的には、サーマルプリントヘッド200は、セラミック層10と、グレーズ層20と、グレーズ層30と、グレーズ層31と、共通電極41と、複数の個別電極42と、発熱体70とを有している。
【0037】
共通電極41の構成材料は、金属層40の構成材料と同一である。共通電極41は、帯状部41aと、複数の突出部41bとを有している。帯状部41aは、グレーズ層20上に配置されている。帯状部41aは、平面視において、第1方向DR1に沿って延在している。突出部41bは、第2方向DR2に沿って帯状部41aから延在している。突出部41bの先端は、グレーズ層30上に達している。複数の突出部41bは、第1方向DR1に沿って間隔を空けて並んでいる。
【0038】
個別電極42の構成材料は、金属層40の構成材料と同一である。個別電極42は、平面視において、第1方向DR1に沿って間隔を空けて並んでいる。個別電極42は、主としてグレーズ層20上に配置されている。
【0039】
個別電極42は、先端部42aと、ボンディングパッド42bとを有している。先端部42a及びボンディングパッド42bは、第2方向DR2における個別電極42の両端部にある。先端部42aは、その先端がグレーズ層30上に達するように延在している。先端部42aは、グレーズ層30上において、隣り合う2つの突出部41bの間に配置されている。ボンディングパッド42bは、グレーズ層31の頂面が有する平坦面上に配置されている。ボンディングパッド42bは、例えばワイヤボンディングにより、ドライバIC(図示せず)に電気的に接続される。
【0040】
発熱体70の構成材料は、例えばガラス及びガラス中に含まれている導電粒子である。導電粒子は、例えば、酸化ルテニウム(RuO)で形成されている。発熱体70は、平面視において第1方向DR1に沿って延在している。発熱体70は、突出部41b及び先端部42aと重なりながら、グレーズ層30上に配置されている。
【0041】
発熱体70により、隣り合う突出部41b及び先端部42aが、グレーズ層30上において互いに電気的に接続されている。共通電極41には、固定電位が供給される。複数の個別電極42の各々には、ドライバICから選択的に電位が供給される。そのため、選択的に電位が供給されている1つの個別電極42の先端部42aと当該1つの個別電極42の先端部42aに隣り合う突出部41bとの間を接続している発熱体70は、通電されて発熱する。この熱が紙に伝わることにより、当該紙に対する印字が行われる。
【0042】
図示されていないが、サーマルプリントヘッド200は、第1配線と、第2配線と、保護ガラスとをさらに有している。第1配線は、主としてグレーズ層20上に配置されており、共通電極41に電気的に接続されている。第1配線の構成材料は、例えば、焼結された銀粒子を含む焼結体である。第2配線は、第1配線上に配置されている。第2配線の構成材料は、例えば、焼結された銀粒子を含む焼結体である。保護ガラスは、グレーズ層30、グレーズ層31、共通電極41、個別電極42、発熱体70、第1配線及び第2配線を覆うようにグレーズ層20上に配置されている。保護ガラスには、ボンディングパッド42bを露出させる開口部が形成されている。
【0043】
(サーマルプリントヘッド200の製造方法)
以下に、サーマルプリントヘッド200の製造方法を説明する。
【0044】
図11は、サーマルプリントヘッド200の製造工程図である。図11に示されているように、サーマルプリントヘッド200の製造方法は、準備工程S6と、金属層パターンニング工程S7と、第1配線形成工程S8と、発熱体形成工程S9と、第2配線形成工程S10と、保護ガラス形成工程S11と、個片化工程S12とを有している。
【0045】
準備工程S6では、絶縁基板100が準備される。準備工程S6が行われた後には、金属層パターンニング工程S7が行われる。
【0046】
図12は、金属層パターンニング工程S7を説明する断面図である。図12に示されているように、金属層パターンニング工程S7では、共通電極41及び個別電極42が形成される。金属層パターンニング工程S7では、第1に、金属層40上に、レジストが塗布される。レジストは、例えば、ロールコータを用いて塗布される。第2に、金属層40上に塗布されたレジストが露光される。露光は、例えば、ガラスマスクを用いてUV(Ultra Violet)光を部分的にレジストに照射することにより行われる。UV光が照射された部分のレジストは、変質される。
【0047】
第3に、露光により変質されたレジストの部分を溶解除去することにより、レジストパターンが形成される。第4に、レジストパターンをマスクとして金属層40をエッチングすることで、共通電極41及び個別電極42が形成される。なお、レジストパターンは、金属層40のエッチングの後に除去される。金属層パターンニング工程S7が行われた後には、第1配線形成工程S8が行われる。
【0048】
第1配線形成工程S8では、第1配線が形成される。第1配線は、複数の銀粒子を含む導電性ペーストを塗布するとともに、塗布された導電性ペーストを焼成することにより形成される。第1配線形成工程S8が行われた後には、発熱体形成工程S9が行われる。図13は、発熱体形成工程S9を説明する断面図である。図13に示されているように、発熱体形成工程S9では、発熱体70が形成される。発熱体形成工程S9では、第1に、ガラス及び酸化ルテニウム粒子を含む導電性ペーストが塗布される。第2に、塗布された導電性ペーストが焼成される。発熱体形成工程S9の後には、第2配線形成工程S10が行われる。
【0049】
第2配線形成工程S10では、第2配線が形成される。第2配線は、銀粒子を含む導電性ペーストを塗布するとともに塗布された導電性ペーストを焼成することにより形成される。第2配線形成工程S10が行われた後には、保護ガラス形成工程S11が行われる。保護ガラス形成工程S11では、保護ガラスが形成される。保護ガラスは、ガラスのペーストを塗布するとともに塗布されたガラスのペーストを焼成することにより形成される。保護ガラス形成工程S11が行われた後には、個片化工程S12が行われる。
【0050】
個片化工程S12では、例えばセラミック層10にレーザ光を照射することにより、図9図10A及び図10Bに示される構造を有する複数のサーマルプリントヘッド200に個片化される。
【0051】
(付記)
以上の実施形態には、以下の構成が含まれている。
【0052】
<付記1>
第1面を有するセラミック層と、
前記第1面上に配置されている第1グレーズ層とを備え、
前記第1グレーズ層は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である、絶縁基板。
【0053】
<付記2>
前記第1グレーズ層は、焼成されたLTCC用グリーンシートである、付記1に記載の絶縁基板。
【0054】
<付記3>
前記第1グレーズ層は、前記第1面上の全面にわたって配置されている、付記1又は付記2に記載の絶縁基板。
【0055】
<付記4>
前記第1グレーズ層の平面視における外周縁部の厚さから前記第1グレーズ層の平均厚さを減じた値は、5μm以下である、付記1から付記3のいずれかに記載の絶縁基板。
【0056】
<付記5>
前記第1グレーズ層の厚さは、150μm以上である、付記1から付記4のいずれかに記載の絶縁基板。
【0057】
<付記6>
前記第1グレーズ層の厚さは、150μm以下である、付記1から付記4のいずれかに記載の絶縁基板。
【0058】
<付記7>
前記セラミック層は、前記第1面の反対面である第2面を有し、
前記第2面上に配置されている第2グレーズ層とを備え、
前記第2グレーズ層は、セラミック粒子及びガラスを含む焼結体である、付記1から付記6のいずれかに記載の絶縁基板。
【0059】
<付記8>
前記第1グレーズ層上に配置されており、かつ平面視において第1方向に沿って延在している第3グレーズ層及び第4グレーズ層をさらに備え、
前記第4グレーズ層は、平面視において、前記第3グレーズ層と前記第1方向に直交する第2方向において前記第3グレーズ層と離間している、付記1から付記7のいずれかに記載の絶縁基板。
【0060】
<付記9>
前記第1グレーズ層の熱伝導率は、前記第3グレーズ層の熱伝導率及び前記第4グレーズ層の熱伝導率の3倍以下である、付記8に記載の絶縁基板。
【0061】
<付記10>
付記8又は付記9に記載の前記絶縁基板と、
共通電極と、
複数の個別電極と備え、
前記共通電極は、前記第2方向に沿って延在している複数の突出部を有し、
前記複数の突出部は、前記第3グレーズ層上において前記第1方向に沿って間隔を空けて並んでおり、
前記複数の個別電極の各々は、先端部と、ボンディングパッドとを有し、
前記先端部は、前記第3グレーズ層上において前記複数の突出部のうちの隣り合う2つの間に配置されており、
前記ボンディングパッドは、前記第4グレーズ層上に配置されている、サーマルプリントヘッド。
【0062】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0063】
100 絶縁基板、10 セラミック層、10a 第1面、10b 第2面、20 グレーズ層、30 グレーズ層、31 グレーズ層、40 金属層、41 共通電極、41a 帯状部、41b 突出部、42 個別電極、42a 先端部、42b ボンディングパッド、50,60,61 グレーズ層、70 発熱体、100A 絶縁基板、100B 絶縁基板、200 サーマルプリントヘッド、DR1 第1方向、DR2 第2方向、S1 準備工程、S2 第1グレーズ層形成工程、S3 第2グレーズ層形成工程、S4 第3グレーズ層形成工程、S5 金属層形成工程、S6 準備工程、S7 金属層パターンニング工程、S8 第1配線形成工程、S9 発熱体形成工程、S10 第2配線形成工程、S11 保護ガラス形成工程、S12 個片化工程、T 厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13