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  • 特開-接合体及びその製造方法 図1
  • 特開-接合体及びその製造方法 図2A
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  • 特開-接合体及びその製造方法 図3
  • 特開-接合体及びその製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154098
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】接合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20241023BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20241023BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20241023BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20241023BHJP
   C22C 30/04 20060101ALI20241023BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20241023BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B23K35/14 A
B23K35/26 310C
B23K35/26 310D
C22C12/00
C22C28/00 B
C22C30/04
C22C13/02
H05K3/34 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067726
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】坂口 茂樹
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319BB05
5E319BB10
5E319CC33
5E319CD29
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】柔軟性、伸縮性が要望されるデバイス実装用の基材を用いた信頼性の高い接合体を提供する。
【解決手段】接合体は、基材と、基材と対向させて配置された電極ランドと、基材と電極ランドとの間を接合する接合部と、を備えた接合体であって、接合部は、電極ランドの上に設けられたSn-Bi層と、Sn-Bi層の全面を覆うと共に、基材に支持されたSn-Bi-In層とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材と対向して配置された電極ランドと、
前記基材と前記電極ランドとの間を接合する接合部と、
を備えた、接合体であって、
前記接合部は、
前記電極ランドの上に設けられたSn-Bi層と、
前記Sn-Bi層の全面を覆うと共に、前記基材に支持されたSn-Bi-In層と、
を有する、
接合体。
【請求項2】
前記電極ランドは、Niめっき層を有する、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記基材から前記電極ランドに向かっての平面視において、前記Sn-Bi-In層の外径は、前記Sn-Bi層の外径を含んでより外側に拡がっている、請求項1に記載の接合体。
【請求項4】
前記Sn-Bi層は、前記電極ランドから前記基材に向かう方向に沿って、凸部を有し、前記方向に沿った前記凸部の高さは、15μm~50μmである、請求項1に記載の接合体。
【請求項5】
前記Sn-Bi層は、Biの含有量が44~61atm%であり、
前記Sn-Bi-In層は、Snの含有量が1~40atm%、Biの含有量が10~70atm%、Inの含有量が15~75atm%である、請求項1に記載の接合体。
【請求項6】
前記電極ランドは、電子部品に設けられており、前記接合体によって前記電子部品と前記基材とを接合している、請求項1に記載の接合体。
【請求項7】
前記基材は、伸縮性を有する、請求項1に記載の接合体。
【請求項8】
電子部品の電極ランドの上にSn-Bi層を形成する工程と、
回路形成された基材の上にSn-Bi-Inソルダーペーストを設ける工程と、
前記基材から前記電極ランドに向かっての平面視において、前記Sn-Bi層を覆うように前記Sn-Bi-Inソルダーペーストを溶融させて、前記電極ランドと前記基材とを接合して、前記基材に前記電子部品を実装する工程と、
を含む、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材と電極ランドとの間を接合する接合体及びその製造方法に関する。特に、Sn-Bi-Inソルダーペーストと部品電極ランドがNiめっき/Auフラッシュめっきの低温実装における接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向から日常生活において日々の生体情報を取得し、健康管理を行いたとのニーズが高まっている。これらの生体デバイスは、意識的に装着するウエアラブルデバイスから無意識的に密着するウエアラブルデバイスへと変化している。
【0003】
現在、多くの回路基材は、FR-4やポリイミドといった樹脂基材が一般的に使用されており、電子部品の電極ランドと回路基材との接合は、融点227℃のSn-Ag-Cuソルダーペーストを用いてリフロー温度260℃で接合が行われている。
【0004】
一方、ウエアラブルデバイスを構成するには、回路基材に柔軟性、伸縮性が求められる。しかしながら、柔軟性、伸縮性のある基材(例えば、PET、ウレタンなど)の耐熱温度は、130℃前後であり、電子部品を実装するリフロー工程においてリフロー温度が130℃以下と基材の耐熱温度より低いソルダーペースト材料が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5090349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な低温のソルダーペーストとしては、弱耐熱部品を実装する場合に融点が139℃のSn-Bi共晶のソルダーペーストを用いてリフロー温度160℃にて接合されている。
しかし、伸縮性のある基材の融点が120℃前後であるのに対し、Sn-Bi共晶ソルダーペーストの融点は、139℃であり、Sn-Bi共晶ソルダーペーストの融点が高い。このため、120℃のリフローではSn-Bi共晶ソルダーペーストが溶融しないため、実装が出来ない。そこで、融点を下げるため、Sn-BiにInを添加することで融点を96℃まで低融点化させた低温のソルダーペースト材料が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
一方、ウエアラブルデバイスに用いる電子部品においては、従来のQFP、SOP、BGAパッケージよりも高密度、低背化に向けたLGAタイプでの部品実装を行う必要がある。一般的にBGAとは異なり、はんだボールが無いLGAパッケージの電極ランドは、Niめっき処理を施した後にNiの酸化を防止するため、Auをフラッシュした構造が採用されている。
【0008】
しかしながら、Sn-BiソルダーペーストにInを添加することでリフロー時にInの酸化、粘度上昇が発生する。実装時に粘度上昇が発生することで部品の電極ランド部への濡れ広がりは大きく低下し、かつ電子部品の電極ランドのNiおよびAuめっきは融点が高いため濡れ広がりは小さい。その結果、はんだ濡れ性が低下することで接続面積が縮小される。接続面積の縮小により部品実装後の信頼性試験(温度サイクル試験など)においてクラックが発生しやすく、製品信頼性が低下する場合がある。
【0009】
本開示は、前記従来の課題を解決するもので、柔軟性、伸縮性が要望されるデバイス実装用の基材を用いた信頼性の高い接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る接合体は、基材と、基材と対向して配置された電極ランドと、基材と電極ランドとの間を接合する接合部と、を備えた、接合体であって、接合部は、電極ランドの上に設けられたSn-Bi層と、Sn-Bi層の全面を覆うと共に、基材に支持されたSn-Bi-In層と、を有する。
本開示に係る接合体の製造方法は、電子部品の電極ランドの上にSn-Bi層を形成する工程と、回路形成された基材の上にSn-Bi-Inソルダーペーストを設ける工程と、基材から電極ランドに向かっての平面視において、Sn-Bi層を覆うようにSn-Bi-Inソルダーペーストを溶融させて、電極ランドと前記基材とを接合して、基材に前記電子部品を実装する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示にかかる接合体によれば、柔軟性が要望されるデバイス実装用の回路基板と、電極ランドと、を、Sn-Bi層とSn-Bi-In層とを含む接合部で接合することで、接続面積を広げることができ、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、実施の形態1に係る接合体の平面構成を透過的に示す平面透視図であり、(b)は、(a)の接合体の断面構成を示す概略断面図である。
図2A】電子部品の電極ランドへのSn-Bi層のプリフォーム前の断面構成を示す概略断面図である。
図2B図2Aの電極ランドにSn-Bi層をプリフォーム後の断面構成を示す概略断面図である。
図3】本実施の形態1に係る接合体の製造方法のフローチャートである。
図4】Sn-Bi層のプリフォームの有無に関する、接合後の濡れ面積の濡れ広がり率と信頼性結果とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様に係る接合体は、基材と、基材と対向して配置された電極ランドと、基材と電極ランドとの間を接合する接合部と、を備えた、接合体であって、接合部は、電極ランドの上に設けられたSn-Bi層と、Sn-Bi層の全面を覆うと共に、基材に支持されたSn-Bi-In層と、を有する。
【0014】
第2の態様に係る接合体は、上記第1の態様において、電極ランドは、Niめっき層を有してもよい。
【0015】
第3の態様に係る接合体は、上記第1の態様において、基材から電極ランドに向かっての平面視において、Sn-Bi-In層の外径は、Sn-Bi層の外径を含んでより外側に拡がっていてもよい。
【0016】
第4の態様に係る接合体は、上記第1の態様において、Sn-Bi層は、電極ランドから基材に向かう方向に沿って、凸部を有し、方向に沿った凸部の高さは、15μm~50μmであってもよい。
【0017】
第5の態様に係る接合体は、上記第1の態様において、Sn-Bi層は、Biの含有量が44~61atm%であり、Sn-Bi-In層は、Snの含有量が1~40atm%、Biの含有量が10~70atm%、Inの含有量が15~75atm%であってもよい。
【0018】
第6の態様に係る接合体は、上記第1の態様において、電極ランドは、電子部品に設けられていてもよく、接合体によって電子部品と基材とを接合している。
【0019】
第7の態様に係る接合体は、上記第1の態様において、基材は、伸縮性を有してもよい。
【0020】
第8の態様に係る接合体の製造方法は、電子部品の電極ランドの上にSn-Bi層を形成する工程と、回路形成された基材の上にSn-Bi-Inソルダーペーストを設ける工程と、基材から電極ランドに向かっての平面視において、Sn-Bi層を覆うようにSn-Bi-Inソルダーペーストを溶融させて、電極ランドと前記基材とを接合して、基材に前記電子部品を実装する工程と、を含む。
【0021】
以下、本開示の実施の形態に係る接合体及びその製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1(a)は、実施の形態1に係る接合体の平面構成を透過的に示す平面透視図であり、(b)は、(a)の接合体の断面構成を示す概略断面図である。なお、便宜上、基材101から電極ランド102に向かう方向をZ方向(鉛直上方)、基材101の面内、及び、電極ランド102の面内をX-Y面として示している。
実施の形態1に係る接合体110は、回路成形された伸縮性のある基材101と、基材101と対向して配置された電子部品100の電極ランド102と、基材101と電極ランド102との間を接合する接合部109とを備える。電極ランド102は、表面にNiめっき106/Auフラッシュめっき107を有する。接合部109は、電極ランド102の上にプリフォームされたSn-Bi層103と、Sn-Bi層の全面を覆うSn-Bi-In層104とを有する。
この接合体110によれば、低温はんだ材料であるSn-Bi-In層104が電極ランドにプリフォームされたSn-Bi層103の全面を覆うと共に、電極ランド102のNiめっき106の面に広く濡れ拡がるので、接続面積が広くなり、信頼性を向上させることができる。また、電極ランドにプリフォームされたSn-Bi層102の融点は、Sn-Bi-In層104の融点より高く、温度サイクルを受けた場合にも、同時に溶融しにくくクラックの進展を遅らせる効果が期待でき、強度を保持できる。
【0023】
以下に、この接合体110の構成要素について説明する。
【0024】
<伸縮基材101>
伸縮性を有する基材101は、1方向以上に伸縮が可能であり、異方性のシートである。以下では、「伸縮基材」と呼ぶ場合がある。伸縮基材101の伸び率は、引っ張り力の印加のない場合を100%とした場合に、10%~60%伸びることが好ましい。人体の表面の伸びにおいて、膝の屈伸運動では最大50%の伸びが発生する。この伸び率においても機能する必要があるため、伸び率は60%とした。伸縮基材101の伸び率は、弾性変形可能な伸び率である。
伸縮基材101の素材は、例えば、ウレタン系エラストマーやシリコーン系エラストマーおよびニトリルゴム、ラテックスゴム、熱硬化性の伸縮樹脂等を用いてもよい。伸縮基材101の厚みは、使用する部位の必要な伸び率により決定される。例えば、ウエアラブル心電センサのように胸部に使用する場合、胸部の肌の伸びが20%である場合、伸縮基材101には、20%以上の伸び率を有する材料からなる基材を用いる。
【0025】
<電子部品>
電子部品100とは、例えば、QFN(Quad Flat Non-leaded package)、セラミックLGA、プラスチックLGAなどである。
<電子部品の電極ランド102>
図2Aは、電子部品100の電極ランド102へのSn-Bi層のプリフォーム前の断面構成を示す概略断面図である。電極ランド102は、例えば、Niめっき106であり、その表面にAuフラッシュめっき107を有してもよい。Niめっき106は、例えば、部品電極である銅または鉄上に電解、無電解めっき処理により膜厚0.2~1μmのNiめっき106処理を施して得られる。また、Niめっき106の上に、電解、無電解めっき処理により膜厚0.005μm以下のAuフラッシュめっき107処理を施してもよい。また、Auの使用量を抑制するため、Niめっき106とAuフラッシュめっき層との間に膜厚0.05μm以下のPdめっきを施してもよい。
【0026】
<Sn-Bi層103>
図2Bは、図2Aの電極ランド102にSn-Bi層103をプリフォーム後の断面構成を示す概略断面図である。Sn-Bi層は、例えば、Biの含有量が44~61atm%であってもよい。また、共晶組成であるBi58atm%であってもよい。Sn-Biソルダーペーストの組成は、融点が120℃以上であり、160℃以下が好ましい。更には、58重量%のBi残部をSnとした融点138℃のソルダーペーストが好ましい。すなわち、伸縮基材101と電子部品のリフロー実装時(120℃以下の温度)にSn-Bi層103を実装時の熱により溶融させないためである。また、Sn-Bi層の形状は、電極ランド102の面の法線方向(鉛直方向)に沿って凸形状の凸部を有することが好ましい。図1(b)及び図2Bに示すように、Sn-Bi層103は、鉛直下方に凸形状の凸部を有する。この凸部により、実装時のSn-Bi-InソルダーペーストがSn-Bi層の周りに広がりやすくなる。また、電極ランド102のAuフラッシュめっき107は、その表面にSn-Bi層形成時にSn-Bi層103に拡散され、Sn-Bi層103のSnと電極ランド102のNiめっきとでNi-Snの合金層を形成する。
Sn-Bi層103は、例えば、電極ランド102上にSn-Biソルダーペーストを用いてSn-Bi層103を形成してもよい。
【0027】
<Sn-Bi-In層104>
Sn-Bi-In層104は、Sn、BiおよびInを含む基本組成を有し、例えば、Snが1~40atm%、Biが10~70atm%、Inが15~75atm%である。上記組成範囲を(Sn、Bi、In)の三元相図で表すと、(Sn40、Bi45、In15)、(Sn15、Bi70、In15)、(Sn1、Bi70、In29)、(Sn1、Bi24、In75)、(Sn15、Bi10、In75)、(Sn40、Bi10、In50)を頂点とする六角形の各辺及び内部である。Sn-Bi-In層104は、上記の組成範囲において、融点が120℃以下となる。あるいは、重量ベースで表した場合には、50~70重量%のBi、10~24.5重量%のInおよび残部のSnを含んでもよい。具体的な重量ベースでは、例えば、55重量%のBi、20重量%のIn、残部をSnとした融点96℃のSn-Bi-In層104が挙げられる。基材101から電極ランド102に向かっての平面視において、Sn-Bi-In層104の外径は、Sn-Bi層103の外径を含んでより外側に拡がっていてもよい。
なお、図1では、Sn-Bi-In層104は、電極ランド102(106)と同じ外径で示しているが、これに限られず、電極ランド102(106)の外径より大きく拡がっていてもよい。
Sn-Bi-In層104は、Sn-Bi-Inソルダーペーストを基材101に塗布し、リフロー炉で加熱して溶融させ、Sn-Bi層103の全面を覆って、実装してもよい。
【0028】
<接合体の製造方法>
図3は、実施の形態1に係る接合体の製造方法のフローチャートである。以下に接合体の製造方法を説明する。
(1)Niめっき106/Auフラッシュめっき107からなる電極ランド102を有する電子部品100を用意する。
(2)電子部品100の電極ランド102のNiめっき106/Auフラッシュめっき107の上にSn-Bi層103をプリフォームする。具体的には、電子部品の電極ランド102のNiめっき106/Auフラッシュめっき107上に電極ランド102と同径もしくは電極ランド102より小さい開口の開いた印刷マスクを用いてSn-Biソルダーペーストを印刷する。
(3)次いで、Sn-Biソルダーペーストが電極ランド102に印刷された電子部品を加熱(リフロー)により溶融させ、電極ランド102上にSn-Bi層を形成する。
(4)次に、伸縮性のある基材101を電極ランドと対向して配置する。
(5)その後、Sn-Bi-Inソルダー104を基材101の上に塗布し、リフロー炉において加熱し、電極ランド102の上のSn-Bi層103を覆うようにSn-Bi-Inソルダー104を溶融させて、実装する。これによって、電極ランド102と、基材101とをSn-Bi層103及びSn-Bi-In層104からなる接合部によって接合する。
以上によって、電極ランド102と、基材101と、接合部とを含む接合体110を得ることができる。なお、電極ランド102のAuフラッシュめっき107は、Sn-Biソルダーペースト内に拡散され、その接合界面には、Niめっき106とSn-Bi-Inソルダー104のSnとによりNi-Snの合金層が形成される。
【0029】
<実施例>
本開示の実施例に係る接合体及びその製造方法について説明する。
(1)電子部品として、LGAの228ピンパッケージ101(Amkor製)、電極ランド径0.3mmΦ、電極ランド102の電極構成は、Niめっき106/Auフラッシュめっき107を施した電子部品を用いた。
(2)次に、電極ランド102と同一径で印刷マスクの厚みが80umの印刷マスクを用いて、58重量%のBi残部をSnとした融点138℃のSn-Biソルダーペースト(弘輝製)を供給した。
(3)その後、Sn-Biソルダーペーストを供給した電子部品をリフロー炉(千住金属製)により、温度160℃にてSn-Biソルダーペーストを溶融させ、電極ランドの面の法線方向(鉛直方向)に凸形状の凸部を有するSn-Bi層103を形成した。形成したSn-Bi層103の凸部の高さは、約30μmであり、高さの範囲として凸部の高さが15μm~90μmとなる様にソルダーペーストを供給する。好ましくは、凸部の高さが15μm~50μmになることが好ましい。凸部の高さが15μmより低いと電極ランド102上に形成されたSn-Bi層103の周りにSn-Bi-Inソルダーペースト104が濡れ広がらないため、実装後の接続面積が低下する。また、凸部の高さが90μmより高いと実装後の接続高さが高くなるため強度低下が発生する。
【0030】
凸部のSn-Bi層103の形成は、電解や無電解で製作すると処理コストやめっき液のパッケージへの侵入など不具合が生じるため、ソルダーペーストでの供給が好ましい。
また、印刷マスクにてソルダーペーストを供給する場合、印刷マスクの形状は、電極ランド102のランド径と同じか、若しくは電極ランド102のランド径よりも印刷マスクの径を小さくする方が凸部の形成が容易である。
凸形状のSn-Bi層103を形成する上で必要なソルダーペースト量は、電子部品の電極ランド102の面積により異なるため、印刷マスクの厚みやマスク開口面積によりソルダーペースト量を調整する。電極ランドのランド径が小さい場合は、ディスペンスやはんだボールでの供給を行うとよい。
【0031】
(4)次に、電子部品の電極ランド102と回路形成された伸縮基材101との接合をリフロー炉(千住金属製)にてリフロー温度120℃で実装を行った。具体的には、回路形成された伸縮基材101であるウレタンシート(厚み0.1mm、伸び率600%)の電極に厚さ80μmの印刷マスクにてSn-Bi-Inソルダーペーストを供給した。Sn-Bi-Inソルダーペーストは、55重量%のBi、20重量%のIn、残部をSnとした融点96℃のものを用いた。
【0032】
実装後の断面観察において、Sn-Bi層103は、凸形状の状態で存在し、その周りをSn-Bi-Inソルダーペースト105の組成で覆われていることを確認した。
図4は、今回評価を実施した、Sn-Bi層のプリフォームの有無に関する、接合後の濡れ面積の濡れ広がり率と信頼性結果とを示す図である。
【0033】
信頼性試験は、JIS C 600682-14(IEC60068)に準拠して行った。信頼性試験は、温度サイクルとして-40℃~+85℃にて実施した。温度サイクルは、-40℃で15分保持し、-40℃から+85℃まで昇温し、+85℃で15分保持し、+85℃から-45℃まで降温する、というサイクルを繰り返す。具体的には、電子部品と基材とをディジーチェーンで接続して、全ての端子の接合部の応力変化を抵抗値で確認できるようにした。評価は、ディジーチェーンされた全ての端子の合計の抵抗値(初期抵抗値:1.9Ω)を測定し、その後、100、250、500、750、1000、1500サイクルでそれぞれ抵抗値を測定し、抵抗値が初期抵抗値の2倍である3.8Ω以上となった場合に評価NGと判断した。例えば、1000サイクルにて評価NGの場合は、実力は750サイクルとした。なお、抵抗値の上昇は、例えば、温度サイクルによるクラックが接合部の端部から内部に進行し、接合面積が減少することにより生じるものと考えられる。
【0034】
図4の評価結果によれば、接合部にSn-Bi層が存在しない場合の接合面積と比較し、接合部にSn-Bi層を設けると共に、Sn-Bi層の全面を覆うSn-Bi-In層を含む場合に、ソルダーペーストの濡れ性が良化していることがわかる。すなわち接合部の面積が増加した結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示に係る接合体により、柔軟性が要望されるデバイス実装用の回路基板と、Niめっき/Auフラッシュめっきの電極ランドとを、Sn-Bi層とSn-Bi-In層とを含む説後凹部で接合することにより、高い信頼性が必要となる電子部品用途に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
100 電子部品
101 伸縮基材
102 電極ランド
103 Sn-Bi層
104 Sn-Bi-Inソルダーペースト
105 Sn-Bi共晶ソルダーペースト
106 Niめっき
107 Auフラッシュめっき
108 LGAパッケージ
109 接合部
110 接合体
図1
図2A
図2B
図3
図4