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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154110
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067752
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】林 勝美
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅志
(72)【発明者】
【氏名】中川 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】戸高 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】堺谷 洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 麟太郎
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DB01
5H604DB15
5H604DB16
5H604DB26
5H604PB03
5H604QC01
(57)【要約】
【課題】ステータコイルに対する冷却効率の向上を図ることができる回転電機の提供。
【解決手段】ステータコア径方向に並置された複数のステータコイルを内包する絶縁部材23には、スロット22に導入された冷却媒体を絶縁部材23の内包空間に導く開口が形成されている。ステータコイル21aは、スロット22の一方の側壁の方向に凸に屈曲した第1屈曲部と、スロット22の他方の側壁の方向に凸に屈曲した第2屈曲部とがスロット延在方向に沿って交互に設けられている。ステータコア径方向に互いに隣接するステータコイル(例えば、ステータコイル21aとステータコイル21b)における絶縁部材23との間の隙間S1,S2の一部が、領域S12においてステータコア径方向に重なり合っている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを備える回転電機であって、
前記ステータは、
複数のスロットが形成された環状のステータコアと、
前記スロットに配設され、ステータコア径方向に並置された複数のステータコイルと、
前記スロットに配設され、複数の前記ステータコイルを内包する絶縁部材と、
を備え、
前記ステータコアには、複数の前記スロットのそれぞれに冷却媒体を導入する流路が形成され、
前記絶縁部材には、前記スロットに導入された前記冷却媒体を前記ステータコイルが内包された空間に導く開口が形成され、
前記ステータコイルは、前記スロットの一方の側壁の方向に凸に屈曲した第1屈曲部と、前記スロットの他方の側壁の方向に凸に屈曲した第2屈曲部とが、スロット延在方向に沿って交互に設けられ、
互いに隣接する前記ステータコイルと前記絶縁部材との隙間領域の一部が、ステータコア径方向に重なり合っていることを特徴とする、回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部は、前記ステータコイルの弾性力により前記絶縁部材を前記スロットの側壁に押圧することを特徴とする、回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ステータコイルは、スロット延在方向に直線的に延びる直線部が前記開口に対向する領域に形成されていることを特徴とする、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコイルのコイルエンドを冷却する構成として、コイルエンドの上方から冷却媒体を供給する冷却管を備える回転電機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-34873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した回転電機では、コイルエンドに冷却媒体を供給して冷却する構成であるため、スロット内に収納されたコイル部分を含めたステータコイルに対する冷却が、不十分となる問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による回転電機は、ロータおよびステータを備える回転電機であって、前記ステータは、複数のスロットが形成された環状のステータコアと、前記スロットに配設され、ステータコア径方向に並置された複数のステータコイルと、前記スロットに配設され、複数の前記ステータコイルを内包する絶縁部材と、を備え、前記ステータコアには、複数の前記スロットのそれぞれに冷却媒体を導入する流路が形成され、前記絶縁部材には、前記スロットに導入された前記冷却媒体を前記ステータコイルが内包された空間に導く開口が形成され、前記ステータコイルは、前記スロットの一方の側壁の方向に凸に屈曲した第1屈曲部と、前記スロットの他方の側壁の方向に凸に屈曲した第2屈曲部とが、スロット延在方向に沿って交互に設けられ、互いに隣接する前記ステータコイルと前記絶縁部材との隙間領域の一部が、ステータコア径方向に重なり合っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ステータコイルに対する冷却効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態の回転電機の概略構成を示す図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、ステータコアを説明する図である。
図4図4は、絶縁部材の展開図である。
図5図5は、図2のB-B断面図である。
図6図6は、ステータコイルの形状を説明する図である。
図7図7は、図5のD1-D1断面図である。
図8図8は、図5のD2-D2断面図である。
図9図9は、冷却媒体の流れを示す模式図である。
図10図10は、変形例1を示す図である。
図11図11は、変形例2を示す図である。
図12図12は、変形例2におけるD2-D2断面図である。
図13図13は、第2の実施形態における回転電機1Aを示す図である。
図14図14は、第2の実施形態におけるステータコアの構成を説明する図である。
図15図15は、図13のA-A断面図である。
図16図16は、第2の実施形態における絶縁部材23を示す図である。
図17図17は、図15のB-B断面図である。
図18図18は、図17のD3-D3断面図である。
図19図19は、図17のD4-D4断面図である。
図20図20は、冷却媒体の流れを示す模式図である。
図21図21は、絶縁部材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施をすることが可能である。
【0009】
図1~9は、本発明の第1の実施形態の回転電機1を説明する図である。図1は、回転電機1のステータ2およびロータ3を、ロータ3の軸方向に沿ってz座標軸の正方向から見た図である。図2は、図1のA-A断面図である。回転電機1は、ケース4と、ケース4内に配置された環状のステータ2と、ステータ2の内周側に配置されたロータ3とを備える。ステータ2は、ステータコア20(20a,20b)、ステータコイル21を備える。
【0010】
ステータコア20の内周側に形成されている複数のスロット22は、オープンスロットであり、スロット22のスロット開口は楔40により閉じられている。各スロット22には、ステータコイル21のコイル辺を構成する4本のコイル導体が収納されている。スロット22とステータコイル21との間には、絶縁部材23が配設されている。ステータコイル21には、断面形状が矩形である角線のコイル導体が用いられている。コイル導体は、2つの対向する側面がスロット22の側壁と対向するように配置されている。なお、ステータコイル21に用いられるコイル導体は角線に限られず、丸線を用いても良い。
【0011】
ステータコイル21の4本のコイル導体は、スロット開口側を除く三方を覆う絶縁部材23と、スロット開口側を覆う楔40とにより内包されている。楔40の材料には絶縁材が用いられ、非磁性材料または磁性材料(例えば、磁性材含有樹脂、磁性を有する圧粉樹脂等)のいずれを選択しても良い。絶縁部材23には、例えば、絶縁紙や合成樹脂シートなどが用いられる。
【0012】
図2に示すように、ステータコア20aはステータコア20bを挟むように一対設けられている。ステータコア20aのスロット形状とステータコア20bのスロット形状とは同一形状である。ステータコア20a,20bは、例えば、電磁鋼板を積層して形成される。また、冷却媒体導入用のステータコア20bについては、圧粉鉄心としたり、樹脂成型で構成したりしても良い。図2に示すように、スロット22内にはステータコイル21を構成する4本のコイル導体21a,21b,21c,21dが配置されているが、以下では、コイル導体21a,21b,21c,21dについてもステータコイル21a,21b,21c,21dと呼ぶことにする。
【0013】
図3は、ステータコア20bを示す図である。ステータコア20bは、外径がステータコア20aよりも小さい。また、ステータコア20bには、各スロット22のスロット底面220とコアバック200の外周面201との間を貫通する流路24bが形成されている。
【0014】
図2に示すように、ケース4には、冷却媒体をケース内に導入する貫通孔43が形成された冷媒導入部42が設けられている。貫通孔43は、ステータコア20bの外周面201と対向する位置に設けられている。ステータコア20bの外周面201とケース4の内周面とで挟まれた円環状の空間は、冷却媒体の流路24aを形成する。流路24aは、ケース4の貫通孔43およびステータコア20bの流路24bと連通している。
【0015】
上述したように、ステータコア20bの流路24bは、流路24aと連通している。流路24bは、スロット底面220に開口240を有する。スロット22内のステータコイル21を内包する絶縁部材23には、開口240と対向する位置に開口230が形成されている。
【0016】
図4は、シート状の絶縁部材23を展開したときの内表面側を示す図である。図4において、矢印で示す図示左右方向がステータコイル21a~21dの延在方向である。破線L2,L3は、絶縁部材23をスロット22内に配置する際の折り曲げ箇所を示している。開口230が形成されている破線L2と破線L3との間の領域が、スロット22のスロット底面220に対向する領域である。開口230は、図示左右方向の中央の領域R1に設けられている。
【0017】
図5図2のB-B断面図である。図1に示したように、ステータコイル21a~21dは、角線導体の対向する2つの側面(図5では図示上下方向の側面)がスロット22の側壁に対向するように配置されている。なお、紙面の手前側に存在する絶縁部材23の開口230については、想像線(二点鎖線)で示した。
【0018】
ステータコイル21a~21dの内でスロット22内に納められる部分は、蛇行するようにスロット幅方向に屈曲している。図5では、ステータコイル21a,21bのスロット底面220に対向する側面が見えている。判別しやすいように、ステータコイル21aは実線で示し、ステータコイル21bは破線で示した。ステータコイル21a~21dの屈曲形状は、ほぼ同一である。また、ステータコイル21a,21cとステータコイル21b,21dとの間では、図示左右方向(スロット延在方向)に位相がずれている。屈曲の周期に関して、ほぼ半周期(1/2ピッチ)だけ位置ずれしている。図5では、ステータコイル21c,21dは、ステータコイル21a,21bの陰に隠れて見えていない。
【0019】
図5に示すように、ステータコイル21aが図示上下(スロット幅方向)に屈曲しているので、ステータコイル21aと絶縁部材23との間には平面視で略三角形の隙間S1が形成される。同様に、破線で示すステータコイル21bと絶縁部材23との間には、平面視で略三角形の隙間S2が形成される。そして、ステータコイル21aとステータコイル21bとでは、形状がコイル延在方向に位置ずれしているので、ステータコア径方向に段違いで隣接する隙間S1と隙間S2とが、領域S12においてコイル積層方向(すなわち、ステータコア径方向)に重なっている。すなわち、z方向に交互に並んだ複数の隙間S1,S2は、互いに連通していることがわかる。
【0020】
また、ステータコイル21c,21dの位置関係は、図5に示すステータコイル21a,21bと同様であって、スロット延在方向(z方向)における隙間S3,S4(図7参照)の位置関係は、隙間S1,S2の位置関係と同一である。同様に、段違いで隣接する隙間S3と隙間S4とが重なっている領域S34についても、スロット延在方向において領域S12と同一位置に形成されている。そして、スロット延在方向に交互に並んだ複数の隙間S3,S4は、領域S34を介して互いに連通している。さらに、領域S12と領域S34とはコイル積層方向に重なっているので、絶縁部材23と各ステータコイル21a~21dとの間に形成される隙間S1~S4は、領域S12,S34を介して互いに連通している。
【0021】
図6は、ステータコイル21(21a~21d)の形状を説明する図である。ステータコイル21は、スロット22の一方の側壁221a方向に凸に屈曲する屈曲部211と、他方の側壁221b方向に凸に屈曲する屈曲部212とが、ステータコイル21の延在方向に沿って交互に形成されている。屈曲部211においては側壁221bの側に隙間が形成され、屈曲部212においては側壁221aの側に隙間が形成される。また、ステータコイル21のスロット幅方向の寸法W1は、スロット22の幅W2よりも若干大きく設定されている。
【0022】
ステータコイル21を、スロット22内に配設された絶縁部材23の内側に配置する場合、ステータコイル21a~21dを幅方向の寸法がスロット幅W2よりも小さくなるように弾性変形させ、変形させた状態で絶縁部材23の内側に配置する。なお、絶縁部材23は、接着剤等によりスロット22の内壁に接着しても良いし、接着しなくても良い。絶縁部材23の内側に配置されたステータコイル21a~21dは、弾性変形状態から元の状態に戻ろうとするため、屈曲部211,212の側面が絶縁部材23を介してスロット22の側壁221a,211bに押圧される。その押圧力の反力(スロット側壁からの力)により、ステータコイル21がスロット22内に固定される。すなわち、ステータコイル21は、ステータコイル21自身の弾性力によってスロット22内に固定される。
【0023】
図7は、図5のD1-D1断面図である。スロット22内には、絶縁部材23と楔40により内包されたステータコイル21a~21dが配置されている。絶縁部材23内においてステータコイル21a,21cは図示左側へ偏っており、ステータコイル21a,21cの図示右側には隙間S1,S3が形成されている。一方、ステータコイル21b,21dは図示右側へ偏っており、ステータコイル21b,21dの図示左側には隙間S2,S4が形成されている。なお、上下に重ねられたステータコイル21a~21d同士は、コイル導体自体の微妙な反りやうねりなどがあるため、符号Cで示すように微小な隙間が生じやすい。
【0024】
図8は、図5のD2-D2断面図である。D2-D2断面図は、図2に示す流路24bが設けられている部分の断面図である。上述したように、スロット22のスロット底面220には、流路24bの開口240が形成されている。絶縁部材23には、開口240に対向する位置に開口230が形成されている。図5,8に示すように、D2-D2断面位置においては、各ステータコイル21a~21dと絶縁部材23との隙間は、コイルの左右においてほぼ同程度となっている。
【0025】
(冷却媒体経路の説明)
次いで、冷却媒体が流れる経路について説明する。図9は、ステータコイル21a~21dの隙間S1~S4を流れる冷却媒体の流れを、模式的に示した図である。実線矢印は冷却媒体の流れを示す。図2に示すように、冷却媒体は、ケース4の貫通孔43を介して外部から流路24aに供給される。冷却媒体としては、例えば、冷却油が用いられる。流路24aに供給された冷却媒体は、円環状の流路24a内を周方向に流れて、図8の矢印E1で示すように各流路24bに流入する。
【0026】
流路24bに流入した冷却媒体は、開口230から絶縁部材23の内包空間に流入する。絶縁部材23の内包空間に流入した冷却媒体は、図9の矢印E2で示すように、領域S12,S34を通ってステータコイル21a~21dの隙間S1~S4に流れ込む。隙間S1~S4に流入した冷却媒体は、矢印で示すように、隙間S1~S4内をステータコイル21a~21dの中央領域から両端方向へと流れる。ステータコイル21a~21dの両端方向へと流れた冷却媒体は、絶縁部材23の両端から、すなわちステータコア20の両端からステータコイル21のコイルエンドに排出される。
【0027】
上述したように、第1の実施形態では、スロット22に導入された冷却媒体をステータコイル21a~21dが絶縁部材23により内包された空間に導く開口230が、絶縁部材23に形成されている。そして、図6に示すように、ステータコイル21a~21dは、一方のスロット側壁221aの方向に凸に屈曲した第1の屈曲部211と、他方のスロット側壁221bの方向に凸に屈曲した第2の屈曲部212とがスロット延在方向に沿って交互に設けられている。図5に示すように、ステータコア径方向に互いに隣接するステータコイル(例えば、ステータコイル21aとステータコイル21b)における絶縁部材23との間の隙間S1,S2の一部が、領域S12においてステータコア径方向に重なり合っている。
【0028】
その結果、流路24bによりスロット22に導入された冷却媒体は、開口230から絶縁部材23の内包空間へ導かれ、隙間S1~S4内を流れる。その結果、ステータコイル21a~21dを冷却媒体で直接的に冷却することができ、冷却媒体によるステータコイル21の冷却を効率的に行うことが可能となる。スロット22内のステータコイル21a~21dの全域を冷却媒体で冷却できるだけでなく、冷却媒体がステータコア20の両端からステータコイル21のコイルエンドに排出されるので、冷却媒体によりコイルエンドも冷却される。さらに、冷却媒体がコイルエンドへと排出されるので、冷却媒体がステータ2とロータ3とのエアギャップに侵入するのを防止することができる。
【0029】
また、ステータコイル21a~21dは、ステータコイル21a~21d自身の弾性力によってスロット22内に固定される。そのため、ステータコイル21a~21dを固定するために、絶縁部材23に接着剤等で接着したりワニスを充填したりする必要がない。
【0030】
(変形例1)
図10は、上述した第1の実施形態の変形例1を示す図である。上述した第1の実施形態では、ステータコイル21は、スロット22においては全体が蛇行していたが、変形例1では蛇行した領域の一部に、スロット延在方向に直線的に延びる直線部を有している。実線で示すステータコイル21aでは直線部213を有しており、破線で示すステータコイル21bでは直線部214を有している。そして、直線部213,214が開口230と対向する位置となるように、ステータコイル21a,21bをスロット22内に配置する。なお、図示は省略するが、ステータコイル21c,21dについても同様である。
【0031】
変形例1では、このような直線形状の部分を開口230と対向する領域に設けたことにより、開口230からコイル導体が内包される空間への冷却媒体の流入を、効果的に行わせることができる。
【0032】
(変形例2)
図11,12は、上述した第1の実施形態の変形例2を示す図である。図11は、変形例2における絶縁部材23を示す図である。変形例の絶縁部材23では、開口230の代わりに開口231が形成されている。開口231は、スロット底面が対向する破線L2,L3間の領域から、スロット側壁が対向する領域(破線L2,L3よりも図示上下の領域)に延在するように形成されている。
【0033】
図12は、図11の絶縁部材23を用いた場合のD2-D2断面図である。変形例2では、スロット壁面において、開口231が対向する領域に窪み222が形成されている。このように、変形例2では、冷却媒体を導入するための開口231の面積をより拡大している。加えて、開口面積の拡大に合わせて、開口231が対向する冷媒導入領域の容積を拡大しているので、開口231から内包空間へ冷却媒体がより流入しやすくなる。
【0034】
(第2の実施形態)
図13~21は、回転電機の第2の実施形態を説明する図である。上述した第1の実施形態では、ステータコア20の軸方向中央から冷却冷媒を供給し、ステータコア20の端面から排出するような構成とした。第2の実施形態の回転電機では、後述するように、スロット22の一方の端部領域に冷却媒体を供給し、他方の端部領域から冷却媒体を排出するようにした。また、第1の実施形態では、スロット22に楔40を固定する形式としたが、第2の実施形態では、スロット底面220と対向する内周側が若干開いた半閉型スロットの場合を例に説明する。
【0035】
図13は、第2の実施形態における回転電機1Aの正面図(z方向プラス側から見た図)である。スロット22は半閉型のスロットである。シート状の絶縁部材23Aにより内包されたステータコイル21は、スロット22に対してステータコア20Aの端面側からz軸方向に挿入される。ステータコア20Aは、後述するように5つのステータコアで構成されている。
【0036】
図14は、ステータコア20Aの構成を示す図であり、回転電機1Aを側方から見た図である。なお、図14ではケース4Aのみを断面図とした。ステータコア20Aは、ステータコア20a1、2つのステータコア20a2、2つのステータコア20b1を備えている。ステータコア20a1,20a2は、第1の実施形態のステータコア20aにおいて、スロット22を半閉型としたものである。同様に、ステータコア20b1は、第1の実施形態のステータコア20bにおいて、スロット22を半閉型としたものである。
【0037】
ケース4Aは、図示右側のステータコア20b1が配置されている軸方向位置に冷媒導入部42aを備える。また、ケース4Aは、図示左側のステータコア20b1が配置されている軸方向位置に冷媒排出部42bを備える。冷媒導入部42aおよび冷媒排出部42bには、貫通孔43a,43bが形成されている。
【0038】
ケース4Aの内周面と右側のステータコア20b1の外周面201との間には、円環状の流路24a1が形成されている。同様に、ケース4Aの内周面と左側のステータコア20b1の外周面201との間には、円環状の流路24a2が形成されている。流路24a1は、冷媒導入部42aの貫通孔43aおよび右側のステータコア20b1の流路24bと連通している。流路24a2は、冷媒排出部42bの貫通孔43bおよび左側のステータコア20b1の流路24bと連通している。
【0039】
図15は、図13の回転電機1AのA-A断面図である。第1の実施形態の場合と同様に、スロット22内には絶縁部材23Aにより内包された4本のステータコイル21a~21dは収納されている。ステータコイル21a~21dは第1の実施形態と同様のものであって、それぞれ第1および第2屈曲部211,212が形成され、蛇行するようにスロット側壁方向に屈曲している。
【0040】
図16は、シート状の絶縁部材23Aを展開したときの内表面側を示す図である。破線L1~L6は、絶縁部材23Aでステータコイル21a~21dを包む際の折り曲げ箇所を示している。開口230a,230bが形成されている破線L2と破線L3との間の領域が、スロット22のスロット底面220に対向する領域である。軸方向右側の領域R3に形成されている開口230aは、図15の右側のステータコア20b1の流路24bと対向する位置に設けられている。軸方向左側の領域R4に形成されている開口230bは、図15の左側のステータコア20b1の流路24bと対向する位置に設けられている。
【0041】
また、絶縁部材23Aの軸方向両端の領域R2には、接着層30が設けられている。なお、図示は省略するが、絶縁部材23Aの外表面側には、開口230a,230bを除く全ての領域に発泡層31が設けられている。例えば、接着層30には熱硬化性樹脂等が用いられ、発泡層31には発泡材に熱硬化性樹脂等を混合したものが用いられる。
【0042】
図17は、図15のB-B断面図である。図5に示したB-B断面図の場合と同様に、ステータコイル21a~21dは蛇行するようにスロット幅方向に屈曲している。絶縁部材23Aにより内包されたステータコイル21a~21dを、ステータコア20の端面側からスロット22に対してz軸方向に挿入する。その後、絶縁部材23Aの内表面側に設けられた接着層30、および、外表面側に設けられた発泡層31の加熱硬化処理を行う。なお、図15では、絶縁部材23Aとスロット22との間の発泡層31の図示を省略した。
【0043】
図16に示したように、絶縁部材23Aの内表面側の両端の領域R2には接着層30が設けられている。両端の領域R2においては絶縁部材23Aとステータコイル21a~21dとが接着され、絶縁部材23Aとステータコイル21a~21dとの隙間が接着層30の接着剤により封止される。また、スロット22と絶縁部材23Aとの隙間が発泡層31によって埋められる。接着層30の接着剤はステータコイル21a~21d間の隙間にも入り込む。
【0044】
第2の実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、屈曲しているステータコイル21a~21dと絶縁部材23Aとの間に、隙間S1~S4が形成される。また、隙間S1と隙間S2とは領域S12において連通しており、隙間S3と隙間S4とは領域S34において連通している。
【0045】
ところで、第1の実施形態では、図6に示したように、ステータコイル21(21a~21d)のスロット幅方向の寸法W1をスロット22の幅W2よりも若干大きく設定し、弾性力によりステータコイル21をスロット22に固定するようにした。しかし、第2の実施形態では、絶縁部材23Aにより内包されたステータコイル21a~21dをステータコア端面側からスロット22内に挿入する構成なので、W1<W2に設定するようにした。そのため、図17に示すように、絶縁部材23Aの内表面側に設けた接着層30により、ステータコイル21a~21dを絶縁部材23Aに接着して固定するようにした。
【0046】
図18は、図17のD3-D3断面図であり、スロット22の端部領域の断面を示したものである。D3-D3断面は、図16に示す絶縁部材23Aの接着層30が設けられている領域R2の部分の断面である。各ステータコイル21a~21dと絶縁部材23Aとの隙間S1~S4は、接着層30により埋められて封止されている。
【0047】
図19は、図17のD4-D4断面図である。D4-D4断面は、絶縁部材23Aの冷媒排出用の開口230bが設けられている部分の断面である。なお、図示は省略するが、絶縁部材23Aの冷媒導入用の開口230aが設けられている部分の断面は、D4-D4断面図と同様であり、冷却媒体の流れる方向だけが異なる。
【0048】
図19のD4-D4断面図では、一点鎖線矢印E3,E4で示すように、絶縁部材23Aの内包空間の冷却媒体は、開口230bから排出されて流路24b→流路24aのように流れる。一方、開口230aが設けられている部分の断面図においては、図8に示す一点鎖線矢印E1,E2の場合と同様に、冷却媒体は流路24a→流路24bのように流れ、開口230aから絶縁部材23Aの内包空間へと流入する。
【0049】
図20は、絶縁部材23Aの内包空間における冷却媒体の流れを示す模式図である。実線矢印は冷却媒体の流れを示す。まず、冷却媒体は、図15に示したケース4Aの冷媒導入部42aの貫通孔43aを介して、円環状の流路24a1に供給される。流路24a1の冷却媒体は、ステータコア20b1の流路24bに流入し、図20の矢印E1で示すように、絶縁部材23Aの開口230aから絶縁部材23Aの内包空間に流れ込む。
【0050】
絶縁部材23Aの内包空間に流入した冷却媒体は、矢印E2で示すように領域S12,S34を通ってステータコイル21a~21dの隙間S1~S4に流れ込む。隙間S1~S4に流入した冷却媒体は、矢印で示すように、隙間S1~S4内をステータコイル21a~21dの左端方向(図示左方向)へと流れる。ステータコイル21a~21dの左端方向へと流れた冷却媒体は、矢印E3で示すように領域S34,S12を開口230bの方向へと流れ、矢印E4で示すように開口230bから排出される。開口230bから排出された冷却媒体は、図15に示す流路24b、流路24a2を通って、冷媒排出部42bの貫通孔43bからケース4Aの外部へと排出される。
【0051】
以上のように、第2の実施形態においても、冷却媒体は絶縁部材23Aの開口230aから絶縁部材23Aの内包空間に導入されるので、ステータコイル21a~21dは冷却媒体により直接的に冷却される。そのため、冷却媒体によるステータコイル21a~21dの冷却を効率的に行うことができる。
【0052】
なお、ステータコイル21を絶縁部材23Aで内包する際の包み方については、図18のD3-D3断面図に示すような形態に限定されない。例えば、図21に示すようにシート状の絶縁部材23Aを折り曲げて、ステータコイル21を内包するようにしても良い。
【0053】
上述した第1の実施形態と第2の実施形態とを比較した場合、主に、以下のような相違点がある。
【0054】
(1)第2の実施形態では、図17に示すように、絶縁部材23Aの両端部において隙間S1~S4が接着層30により封止される。そのため、図20に示すように、開口230a,230bよりも端部側の領域においては冷却媒体の流れが滞り、さらに、接着層30により封止されている部分のコイル領域は、冷却媒体により直接冷却することができない。その結果、ステータコイル21に対する冷却効率が低下する。一方、第1の実施形態では、スロット22の中央位置から流入した冷却媒体はスロット22の両端方向に流れ、ステータコア端部から排出される。そのため、スロット22内のステータコイル全域を冷却媒体により効率的に冷却することができる。さらに、スロット22から排出された冷却媒体は、ステータコイル21のコイルエンドへと流れるので、冷却媒体によりコイルエンドも冷却されることになる。
【0055】
(2)第1の実施形態では、図6に示したように、屈曲部211,212が形成されたステータコイル21のスロット幅方向寸法W1は、スロット22の幅寸法W2よりも大きく設定される。ステータコイル21は、幅方向に圧縮された状態でスロット22内に設けられ、屈曲部211,212が絶縁部材23を介してスロット側壁を押圧される。すなわち、ステータコイル21は、ステータコイル21自身の弾性力によってスロット22内に固定される。その結果、第1の実施形態においては、第2の実施形態のようにステータコイル21を絶縁部材23に接着する必要がない。
【0056】
以上説明した各種の実施の形態や変形例はあくまでも一例であり、発明の特徴を損なわない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1A…回転電機、2…ステータ、3…ロータ、4,4A…ケース、20,20a,20b,20A,20a1,20a2,20b1…ステータコア、21,21a~21d…ステータコイル、22…スロット、23,23A…絶縁部材、24a,24b,24a1,24a2,24b…流路、30…接着層、40…楔、42,42a…冷媒導入部、42b…冷媒排出部、43a,43b…貫通孔、211,212…屈曲部、213,214…直線部、221a,221b…側壁、230,230a,230b,231,240…開口、S1~S4…隙間
図1
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