IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイチコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-EV型作業車 図1
  • 特開-EV型作業車 図2
  • 特開-EV型作業車 図3
  • 特開-EV型作業車 図4
  • 特開-EV型作業車 図5
  • 特開-EV型作業車 図6
  • 特開-EV型作業車 図7
  • 特開-EV型作業車 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154122
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】EV型作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/22 20060101AFI20241023BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20241023BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B66F9/22 Z
B66F9/22 V
B66F11/04
E02F9/00 C
E02F9/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067770
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 朝
【テーマコード(参考)】
2D015
3F333
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3F333AA08
3F333CA09
3F333DB07
3F333FH06
(57)【要約】
【課題】車載バッテリに蓄えられた電力の減少を抑制しつつ作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることが可能なEV型作業車を提供する。
【解決手段】EV型作業車としての高所作業車は、油圧作業装置を作動させる作動油を貯留する作動油タンク54と、作動油タンク54に貯留された作動油を加温可能な電気ヒータ141とを有し、外部電源からの供給電力により走行用バッテリまたは作業用バッテリを充電するときに、その供給電力を利用して電気ヒータ54を作動させて作動油タンク141に貯留された作動油を加温するように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体を走行させる動力を発生する走行用電動モータと、前記走行用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える走行用バッテリと、前記走行用バッテリに蓄えられた電力を前記走行用電動モータに供給する走行用電力供給装置と、前記車体に設けられた油圧作業装置と、前記油圧作業装置を作動させる作動油を貯留する作動油タンクと、前記作動油タンクに貯留された作動油を前記油圧作業装置に供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動させる作業用電動モータと、前記作業用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える作業用バッテリと、前記作業用バッテリに蓄えられた電力を前記作業用電動モータに供給する作業用電力供給装置と、を備えたEV型作業車であって、
前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な電気ヒータを有し、
外部電源からの供給電力により前記走行用バッテリまたは前記作業用バッテリを充電するときに、前記供給電力を利用して前記電気ヒータを作動させて前記作動油タンクに貯留された作動油を加温するように構成されることを特徴とするEV型作業車。
【請求項2】
前記車体の走行時において、前記走行用電動モータ、前記走行用バッテリおよび前記走行用電力供給装置から発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な走行時排熱利用作動油加温システムを備えることを特徴とする請求項1に記載のEV型作業車。
【請求項3】
前記走行用バッテリの充電時において、前記走行用バッテリから発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な走行用充電時排熱利用作動油加温システムを備えることを特徴とする請求項1に記載のEV型作業車。
【請求項4】
前記作業用バッテリの充電時において、前記作業用バッテリから発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な作業用充電時排熱利用作動油加温システムを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のEV型作業車。
【請求項5】
走行可能な車体と、前記車体を走行させる動力を発生する走行用電動モータと、前記走行用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える走行用バッテリと、前記走行用バッテリに蓄えられた電力を前記走行用電動モータに供給する走行用電力供給装置と、前記車体に設けられた油圧作業装置と、前記油圧作業装置を作動させる作動油を貯留する作動油タンクと、前記作動油タンクに貯留された作動油を前記油圧作業装置に供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動させる作業用電動モータと、前記作業用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える作業用バッテリと、前記作業用バッテリに蓄えられた電力を前記作業用電動モータに供給する作業用電力供給装置と、を備えたEV型作業車であって、
前記車体の走行時において、前記走行用電動モータ、前記走行用バッテリおよび前記走行用電力供給装置から発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な走行時排熱利用作動油加温システムを備えることを特徴とするEV型作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に油圧作業装置を搭載して構成されるEV型作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穴掘建柱用のアースオーガ装置や、運搬する荷物を車体に設けられた荷台から積み下ろしするための装置(テールゲートリフト)、高所作業を行うために作業員や機材を作業位置へ昇降する昇降装置など、それぞれの作業に適した油圧作業装置(油圧により作動する作業装置)を備えた作業車が知られている。このような作業車は、油圧作業装置を作動させる作動油を貯留する作動油タンクと、作動油タンクに貯留された作動油を油圧作業装置に供給する油圧ポンプを備えている。走行用のエンジンを搭載した作業車では、油圧ポンプをエンジンの動力を用いて駆動させるものが一般的であるが、油圧ポンプを電動モータ(「作業用電動モータ」とも称する)により駆動させる構成の作業車も良く知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。このような構成の作業車では、作業用電動モータを作動させる電力を蓄えるバッテリ(「作業用バッテリ」とも称する)を備えている。
【0003】
一方、近年においては、電気自動車が広く普及してきており、トラック形式の電気自動車(EVトラック)に作業用の架装体を搭載した作業車も提案されている(例えば、下記特許文献2を参照)。EVトラックは、車体を走行させる動力源として高出力の電動モータ(「走行用電動モータ」とも称する)を備えるとともに、走行用電動モータを作動させる電力を蓄える大容量のバッテリ(「走行用バッテリ」とも称する)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐221194号公報
【特許文献2】特開2022‐101799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、EV型作業車として、作業用電動モータにより油圧ポンプを駆動させて作動油を油圧作業装置に供給する構成のEV型作業車(「油圧作業装置搭載EV型作業車」とも称する)の開発が要望されている。このような油圧作業装置搭載EV型作業車では、走行時においては走行用バッテリに蓄えられた電力が消費され、作業時においては作業用バッテリに蓄えられた電力が消費されるので、外部電源から供給される電力により走行用バッテリおよび作業用バッテリ(これらのバッテリを総称して「車載バッテリ」とも称する)を定期的に充電する必要がある。油圧作業装置搭載EV型作業車において車載バッテリを充電するのには、エンジンにより駆動される油圧ポンプを備えた作業車においてエンジン燃料を補給することに比較して、多くの時間を要する。そこで、油圧作業装置搭載EV型作業車では、車載バッテリに蓄えられた電力を効率良く使用することにより電力消費量を抑制して、車載バッテリを充電する回数や充電する電力量を低減できるようにすることが求められる。
【0006】
油圧作業装置搭載EV型作業車において、作動油タンクから油圧作業装置に供給される作動油の温度が低いと作動油の粘度が高くなって油圧作業装置を作動させる際の抵抗が大きくなるため、電力消費量が増大する。そこで、作動油タンクに貯留された作動油の温度が低い場合には、作動油を所定温度以上に予熱しておくことが望ましい。しかし、作動油を温めるために、車載バッテリに蓄えられた電力を消費してしまうと、作業や走行に利用
できる電力量が減少してしまい却って非効率に電力を消費することになってしまう虞がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、車載バッテリに蓄えられた電力の減少を抑制しつつ作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることが可能なEV型作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため第一の本発明は、走行可能な車体と、前記車体を走行させる動力を発生する走行用電動モータ(例えば、実施形態における走行用モータ115)と、前記走行用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える走行用バッテリと、前記走行用バッテリに蓄えられた電力を前記走行用電動モータに供給する走行用電力供給装置(例えば、実施形態における車体部電力供給装置110、インバータ113)と、前記車体に設けられた油圧作業装置と、前記油圧作業装置を作動させる作動油を貯留する作動油タンクと、前記作動油タンクに貯留された作動油を前記油圧作業装置に供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動させる作業用電動モータ(例えば、実施形態におけるポンプ駆動モータ53)と、前記作業用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える作業用バッテリ(例えば、実施形態における固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80)と、前記作業用バッテリに蓄えられた電力を前記作業用電動モータに供給する作業用電力供給装置(例えば、実施形態における架装部電力供給装置90)と、を備えたEV型作業車であって、前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な電気ヒータを有し、外部電源からの供給電力により前記走行用バッテリまたは前記作業用バッテリを充電するときに、前記供給電力を利用して前記電気ヒータを作動させて前記作動油タンクに貯留された作動油を加温するように構成される。
【0009】
上記構成のEV型作業車においては、前記車体の走行時において、前記走行用電動モータ、前記走行用バッテリおよび前記走行用電力供給装置から発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な走行時排熱利用作動油加温システムを備えることが好ましい。
【0010】
上記構成のEV型作業車においては、前記走行用バッテリの充電時において、前記走行用バッテリから発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な走行用充電時排熱利用作動油加温システムを備えることが好ましい。
【0011】
上記構成のEV型作業車においては、前記作業用バッテリの充電時において、前記作業用バッテリから発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な作業用充電時排熱利用作動油加温システムを備えることが好ましい。
【0012】
また、上記課題を解決するため第二の本発明は、走行可能な車体と、前記車体を走行させる動力を発生する走行用電動モータと、前記走行用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える走行用バッテリと、前記走行用バッテリに蓄えられた電力を前記走行用電動モータに供給する走行用電力供給装置と、前記車体に設けられた油圧作業装置と、前記油圧作業装置を作動させる作動油を貯留する作動油タンクと、前記作動油タンクに貯留された作動油を前記油圧作業装置に供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動させる作業用電動モータと、前記作業用電動モータを作動させる電力を外部電源から供給させて蓄える作業用バッテリと、前記作業用バッテリに蓄えられた電力を前記作業用電動モータに供給する作業用電力供給装置と、を備えたEV型作業車であって、前記車体の走行時において、前記走行用電動モータ、前記走行用バッテリおよび前記走行用電力供給
装置から発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して前記作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な走行時排熱利用作動油加温システムを備える。
【発明の効果】
【0013】
第一の本発明に係るEV型作業車によれば、作動油タンクに貯留された作動油を加温可能な電気ヒータを有しており、外部電源からの供給電力により走行用バッテリまたは作業用バッテリを充電するときに、その供給電力を利用して電気ヒータを作動させて作動油タンクに貯留された作動油を加温するので、走行用バッテリおよび作業用バッテリに蓄えられた電力の減少を抑制しつつ作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることが可能となる。
【0014】
また、上記構成のEV型作業車において、上記走行時排熱利用作動油加温システムを備えることで、当該加温システムが無ければ車体の走行時において無駄に捨てられてしまうことになる、走行用電動モータ、走行用バッテリおよび走行用電力供給装置から発生する排熱の熱エネルギの一部を有効に利用して作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることができる。
【0015】
また、上記構成のEV型作業車において、上記走行用充電時排熱利用作動油加温システムを備えることで、当該加温システムが無ければ走行用バッテリの充電時において無駄に捨てられてしまうことになる、充電時に走行用バッテリから発生する排熱の熱エネルギの一部を有効に利用して作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることができる。
【0016】
また、上記構成のEV型作業車において、上記作業用充電時排熱利用作動油加温システムを備えることで、当該加温システムが無ければ作業用バッテリの充電時において無駄に捨てられてしまうことになる、充電時に作業用バッテリから発生する排熱の熱エネルギの一部を有効に利用して作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることができる。
【0017】
第二の本発明に係るEV型作業車によれば、走行時排熱利用作動油加温システムを有しており、車体の走行時において、走行用電動モータ、走行用バッテリおよび走行用電力供給装置から発生する排熱の一部を回収し、回収した排熱を利用して作動油タンクに貯留された作動油を加温するので、走行用バッテリおよび作業用バッテリに蓄えられた電力の減少を抑制しつつ作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることが可能となる。また、走行時排熱利用作動油加温システムが無ければ車体の走行時において無駄に捨てられてしまうことになる、走行用電動モータ、走行用バッテリおよび走行用電力供給装置から発生する排熱の熱エネルギの一部を有効に利用して作動油タンクに貯留された作動油の温度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である高所作業車の左側の側面を示す側面図である。
図2】上記高所作業車の右側の側面を示す側面図である。
図3】上記高所作業車の油圧作動制御および電力供給制御に関する構成を示すブロック図である。
図4】上記高所作業車の電気ヒータ利用作動油加温システムの構成を示すブロック図である。
図5】上記高所作業車の走行時排熱利用作動油加温システムの構成を示すブロック図である。
図6】上記高所作業車の走行用充電時排熱利用作動油加温システムの構成を示すブロック図である。
図7】上記高所作業車の作業用充電時排熱利用作動油加温システムの構成を示すブロック図である。
図8】上記走行時排熱利用作動油加温システムの変更態様を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1および図2は本発明の一実施形態に係るEV型作業車としての高所作業車1の側面外観を示しており、図1は高所作業車1の前方に向かって左側の側面を示し、図2は高所作業車1の前方に向かって右側の側面を示している。なお、図2において図1と同じ構成については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。以下、主にこれらの図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0020】
高所作業車1は、図1および図2に示すように、車体2の前部に運転キャブ7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。タイヤ車輪5は、左前輪5Flおよび右前輪5Frからなる前輪5Fと、左後輪5Rlおよび右後輪5Rrからなる後輪5Rによって構成されている。車体2は、左前輪5Fl、右前輪5Fr、左後輪5Rlおよび右後輪5Rrが配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0021】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置が設けられている。ジャッキ装置は、前輪5Fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10Fと、後輪5Rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10Rとを有して構成される。詳細には、左前輪5Flの後方に左フロントジャッキ10Flが配設され、右前輪5Frの後方に右フロントジャッキ10Frが配設され、左後輪5Rlの後方に左リアジャッキ10Rlが配設され、右後輪5Rrの後方に右リアジャッキ10Rrが配設されている。各ジャッキ10F,10Rは、各内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。
【0022】
また、左フロントジャッキ10Fl、右フロントジャッキ10Fr、左リアジャッキ10Rlおよび右リアジャッキ10Rrには、各々、アウトリガ装置(図示略)が設けられている。各アウトリガ装置の内部にはアウトリガシリンダ12(図3参照)が設けられており、アウトリガシリンダ12を伸縮させることで対応するジャッキ装置を車体2の幅方向(図1の紙面手前から奥/紙面奥から手前へ向かう方向)に水平移動させる。具体的には、アウトリガシリンダ12を伸長させることでジャッキ装置を車体2の側面から外側方へ張り出す方向へ移動させる。また、伸長させたアウトリガシリンダ12を収縮させることで車体2の側面から外側方へ張り出したジャッキ装置を車体2へ収納する方向へ移動させる。車体2の後端部には、各ジャッキ装置およびアウトリガ装置や、後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0023】
図1に示すように、車体2の左側のサブフレームの下側において、左後輪5Rlと左リアジャッキ10Rlとの間にはバッテリ載置スペースLS1が設けられており、このバッテリ載置スペースLS1には車体2から個々に着脱自在な3つの可搬型バッテリ80(例えばリチウムイオンバッテリにより構成される)が載置されている。このバッテリ載置スペースLS1の前方近傍には、2つのジャッキベース13(路面に敷いて、伸長するジャッキ装置の先端部を受けるもの)と2つの輪止め14が収容されている。また、車体2の左側部には作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が2つ、上下に重ねて設けられている。左フロントジャッキ10Flの後側、かつ下側の工具箱26の下方には、後述する油圧ポンプ52(図3を参照)およびポンプ駆動モータ53(図3を参照)を収容したパワーユニット51が取り付けられている。なお、可搬型バッテリ80は、載置ス
ペースLS1から取り外して外部に持ち運びできるようになっており、例えば、被災地等において緊急用の電源としても利用することができる。
【0024】
図2に示すように、車体2の右側部かつサブフレームの下側において、右後輪5Rrと右リアジャッキ10Rrとの間にはバッテリ載置スペースLS2が設けられており、このバッテリ載置スペースLS2には固定具Fxによって車体2に固定された固定設置バッテリ70(例えばリチウムイオンバッテリにより構成される)が設置されている。このバッテリ載置スペースLS2の前方近傍には、2つのジャッキベース13と2つの輪止め14が収容されている。また、バッテリ載置スペースLS2と、右リアジャッキ10Rrとの間には外部のAC100V~200V電源と接続するための通常充電用コンセント15と、外部の急速充電器と接続するための急速充電用コンセント16とが設けられている。なお、固定設置バッテリ70及び可搬型バッテリ80のことを総称して、架装部バッテリとも称する。
【0025】
右前輪5Frと右後輪5Rrとの間には車体2に固定された走行用バッテリ130(例えばリチウムイオンバッテリにより構成される)が設置されている。走行用バッテリ130の近傍位置には、外部の急速充電器と接続するための急速充電用コンセント116が設けられている。また車体2のサブフレームの上側において、右フロントジャッキ10Frの背後から右後輪5Rrの位置までは、作業現場で使用される工事用具を積載することができる荷台スペースが設けられており、この荷台スペースの側面には側あおり板18が開閉自在に取り付けられている。なお、走行用バッテリ130のことを車体部バッテリとも称し、車体部バッテリおよび架装部バッテリ(固定設置バッテリ70および可搬型バッテリ80)のことを総称して、車載バッテリとも称する。
【0026】
図1に示すように、車体2における運転キャブ7の背後の架装領域におけるサブフレーム上には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回作動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮作動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏作動させることができる。また、車体2における運転キャブ7の背後の架装領域には、ブーム30を後述する格納姿勢で支持するブーム受け台28が設けられている。
【0027】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(図3を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り作動(水平旋回作動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。高所作業車1では、油圧作業装置としての昇降装置が、旋回台20、ブーム30および作業台40を有して構成される。
【0028】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。このため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0029】
次に、主に図3を参照して、上述した上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号に基づいて、前述したジャッキシリンダ11、アウトリガシリンダ12、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31および首振りモータ34等を含む各油圧アクチュエータの作動制御などを行うための構成について説明する。また、同じく図3を参照して、車体2(高所作業車1)の走行時等における電力供給を制御するための構成について説明する。
【0030】
図3に示すように、高所作業車1は、上述した各油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、各油圧アクチュエータの作動を制御する架装部コントローラ60とを備えている。油圧ユニット50は、図1に示したパワーユニット51に収容されている油圧ポンプ52およびポンプ駆動モータ53と、作動油を貯留する作動油タンク54と、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブ55(例えば、図1に示す支柱21の背面等に配置される)とを有して構成される。
【0031】
また、高所作業車1は、ポンプ駆動モータ53等に電力を供給する架装部電力供給装置90を備えている。ポンプ駆動モータ53は、架装部電力供給装置90から供給される電力によって回転駆動され、これにより油圧ポンプ52を作動させて制御バルブ55へ作動油を吐出する。より詳細には、車両(例えば下部操作装置27)に設けられた架装部電源スイッチ8が、作業を開始するときにオフからオンに操作されると、架装部コントローラ60により架装部電源がオン状態とされて架装部電力供給装置90からポンプ駆動モータ53に電力が供給可能となる。そして、架装部電力供給装置90から供給される電力によってポンプ駆動モータ53が回転駆動され、これにより油圧ポンプ52から制御バルブ55に作動油が吐出される。
【0032】
制御バルブ55は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、アウトリガシリンダ12に対応する電磁比例制御バルブV2、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV3、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV4、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV5、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV6を有している。
【0033】
上部操作装置45または下部操作装置27の操作により出力された操作信号がコントローラ60に入力されると、架装部コントローラ60は、その操作信号に応じた指令信号を制御バルブ55へ出力する。この制御バルブ55は、架装部コントローラ60からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V6のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向および供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向および作動速度を制御する。この結果、上部操作装置45または下部操作装置27によって、前述したジャッキ装置およびアウトリガ装置の伸縮作動、旋回台20の旋回作動、ブーム30の起伏作動、ブーム30の伸縮作動、作業台40の首振り作動などの操作を行うことができる。
【0034】
架装部電力供給装置90は、図3に示した急速充電用コンセント16および充電器17
と接続されており、充電器17は通常充電用コンセント15と接続されている。通常充電用コンセント15は、例えばAC100V~200Vの交流電力を出力可能な通常外部電源(図示せず)と接続され、充電器17は、通常充電用コンセント15に入力された交流電力を直流電力に変換して架装部電力供給装置90に供給するようになっている。急速充電用コンセント16は、所定の直流電力を出力可能な外部急速充電装置(図示せず)と接続され、外部急速充電装置からの直流電力を架装部電力供給装置90に供給するようになっている。
【0035】
また、架装部電力供給装置90は、図3に示した固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80およびサービスコンセント19と接続されており、通常充電用コンセント15から充電器17を介して供給された電力および急速充電用コンセント16から供給された電力により固定設置バッテリ70および可搬型バッテリ80を充電できるように構成されている。また、架装部電力供給装置90は、固定設置バッテリ70および可搬型バッテリ80に蓄えられた直流電力を、例えばAC100V~200Vの交流電力に変換してサービスコンセント19から出力するようになっている。さらに、架装部電力供給装置90は、固定設置バッテリ70および可搬型バッテリ80に蓄えられた直流電力を交流電力に変換してポンプ駆動モータ53に供給(出力)するようになっている。架装部電力供給装置90は、架装部コントローラ60からの指令信号に基づきポンプ駆動モータ53に供給(出力)する交流電力の周波数や電圧を変化させることで、ポンプ駆動モータ53の回転数およびトルクを制御する。
【0036】
高所作業車1は、図3に示すように、電動の走行用モータ115を有しており、この走行用モータ115の動力により車輪を回転駆動させて走行する。また、高所作業車1は、走行用ハンドルやアクセルペダル等を有して構成される走行操作装置121と、走行用モータ115等に電力を供給する車体部電力供給装置110と、走行操作装置121からの操作信号を受けて、車体部電力供給装置110による走行用モータ115への電力供給を制御する車体部コントローラ125とを備えている。車体部電力供給装置110は、図3に示した急速充電用コンセント116と接続されている。急速充電用コンセント116は、所定の直流電力を出力可能な外部急速充電装置(図示せず)と接続され、外部急速充電装置からの直流電力を車体部電力供給装置110に供給するようになっている。
【0037】
また、車体部電力供給装置110は、図3に示した走行用バッテリ130およびサービスコンセント119と接続されており、急速充電用コンセント116から供給された電力により走行用バッテリ130を充電できるように構成されている。また、車体部電力供給装置110は、走行用バッテリ130に蓄えられた直流電力を、例えばAC100V~200Vの交流電力に変換してサービスコンセント119から出力するようになっている。さらに、車体部電力供給装置110は、インバータ113と接続されており、走行用バッテリ130に蓄えられた直流電力をインバータ113に供給(出力)するようになっている。インバータ113は、走行用モータ115と接続されており、車体部電力供給装置110から供給された直流電力を交流電力に変換して走行用モータ115に供給(出力)するようになっている。車体部電力供給装置110は、車体部コントローラ125からの指令信号に基づきインバータ113から走行用モータ115に供給される交流電力の周波数や電圧を変化させることで、走行用モータ115の回転数およびトルクを制御する。なお、車体部電力供給装置110およびインバータ113により本発明に係る走行用電力供給装置が構成される。
【0038】
上述したように高所作業車1では、架装部バッテリ(固定設置バッテリ70および可搬型バッテリ80)に蓄えられた電力が、架装部電力供給装置90を介してポンプ駆動モータ53に供給されてポンプ駆動モータ53が回転駆動され、これにより油圧ポンプ52が作動して作動油が油圧ポンプ52から吐出されて油圧作業装置(油圧アクチュエータ)が
作動する。冬季など気温が低い場合、油圧作業装置を作動させる前の作動油タンク54内の作動油が所定温度(例えば、0~5℃)以下となることがある。作動油が低温の場合、作動油の粘度が高く流動抵抗が増大するため、油圧作業装置を作動させると次のような事象(「問題事象」とも称する)が発生することがある。例えば、ブーム30を作動させる際のブーム30の作動に対する作業台40のレベリング制御の追従遅れが生じる(ブーム30が動き出した後でレベリング制御が開始されたり、ブーム30の動きが停止してもレベリング制御が終了していなかったりする)という問題事象が発生することがある。また、油圧アクチュエータに設けられたパッキン部材等が冷えて固くなることで、油圧アクチュエータを作動させたときに音鳴りが生じるという問題事象が発生することもある。また、作動油の流動抵抗の増大により油圧アクチュエータの作動スピードが出にくくなるという問題事象が発生することもある。このような問題事象は、作動油の温度が上がることで発生し難くなる。一方、作動油が低温のために作動油の粘度が高く流動抵抗が増大すると、油圧ポンプ52から作動油を吐出させる際の抵抗も大きくなる。そのため、油圧ポンプ52を作動させるために回転駆動させるポンプ駆動モータ53において消費される電力量が増大してしまうという問題(「消費電力量増大問題」とも称する)も生じる。
【0039】
高所作業車1は、作動油の温度を上げるための複数の作動油加温システムを備えている。以下これらの作動油加温システムについて、図4図8を追加参照して説明する。図4は、高所作業車1に装備される第1態様の作動油加温システムとしての電気ヒータ利用作動油加温システム140の概略構成を示している。この電気ヒータ利用作動油加温システム140は、図4に示すように、作動油タンク54内に設けられる電気ヒータ141を備えて構成される。電気ヒータ141は、供給された電力(例えば、交流電力)により発熱する電熱部(図示せず)を有し、この電熱部が作動油タンク54内の作動油に浸漬されるように配置される。
【0040】
電気ヒータ141は、車載バッテリ(固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80、走行用バッテリ130)を外部電源からの供給電力により充電するときに、その供給電力を利用して作動されて作動油を加温するようになっている。例えば、固定設置バッテリ70や可搬型バッテリ80を充電するときは、その充電時に架装部電力供給装置90を介してサービスコンセント19から出力される電力を利用して電気ヒータ141を作動させる。また、走行用バッテリ130を充電するときは、その充電時に車体部電力供給装置110を介してサービスコンセント119から出力される電力を利用して電気ヒータ141を作動させる。
【0041】
電気ヒータ141は、作業者が手動により作動させるようにしてもよいが、電気ヒータ141を自動的に作動させるようにしてもよい。例えば、架装部電力供給装置90から電気ヒータ141に電力を供給するための電気回路を設け、この電気回路を介して電気ヒータ141に電力供給して電気ヒータ141を作動させたり電力供給を停止して電気ヒータ141の作動を停止させたりすることを架装部電力供給装置90が自動的に制御するようにしてもよい。この場合、架装部電力供給装置90は、所定の作動開始条件(例えば、作動油タンク54内の作動油の温度が所定温度(例えば10℃とするが温度は適宜設定可)以下であり、かつ固定設置バッテリ70または可搬型バッテリ80が充電中であるという条件)を満たすときに、電気ヒータ141に電力供給して電気ヒータ141を作動させるようにしてもよい。また、架装部電力供給装置90は、所定の作動停止条件(例えば、作動油タンク54内の作動油が所定温度(例えば60℃とするが温度は適宜設定可)以上に加温されたか、または固定設置バッテリ70および可搬型バッテリ80の充電が停止したという条件)を満たすときに、電気ヒータ141への電力供給を停止して電気ヒータ141の作動を停止させるようにしてもよい。同様に、車体部電力供給装置110から電気ヒータ141に電力を供給するための電気回路を設け、この電気回路を介して電気ヒータ141に電力供給して電気ヒータ141を作動させたり電力供給を停止して電気ヒータ14
1の作動を停止させたりすることを車体部電力供給装置110が自動的に制御するようにしてもよい。
【0042】
このように構成される電気ヒータ利用作動油加温システム140によれば、車載バッテリ(固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80、走行用バッテリ130)を外部電源からの供給電力により充電するときに、その供給電力を利用して電気ヒータ141を作動させて作動油タンク54内の作動油を加温するので、車載バッテリに蓄えられた電力の減少を抑制しつつ作動油タンク54内の作動油の温度を上げることが可能となる。また、車載バッテリの充電に要する時間を有効利用して作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。作動油の温度を上げることにより、上述の問題事象の発生や消費電力量増大問題の発生を抑制することができるとともに、架装部バッテリ(固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80)に蓄えられた電力を効率良く利用して油圧作動装置の稼働時間を延ばすことができる。
【0043】
図5は、高所作業車1に装備される第2態様の作動油加温システムとしての走行時排熱利用作動油加温システム150の概略構成を示している。この走行時排熱利用作動油加温システム150は、図5に示すように、高所作業車1の走行時に排熱となる熱エネルギを発生させる走行時排熱発生源151と作動油タンク54との間を循環する流体(例えば、水)の流路となる流体循環路152を備えて構成される。走行時排熱発生源151としては、例えば、走行用モータ115、走行用バッテリ130および車体部電力供給装置110が含まれる。
【0044】
流体循環路152は、一端部が走行時排熱発生源151(走行用モータ115、走行用バッテリ130および車体部電力供給装置110の全てまたはこれらのうちの一部)に沿うように接触して配置され、他端部が作動油タンク54内の作動油に浸漬するように配置される。流体循環路152には、流体を貯留する流体タンク153が設けられており、この流体タンク153内に貯留された流体が流体循環路152内を通って循環するようになっている。図示していないが流体循環路152には、流体を循環させるためのポンプが適宜配置される。また、流体循環路152の他端部(作動油タンク54内の作動油に浸漬する部分)には、熱交換器154が適宜配置される。
【0045】
上記のように構成される走行時排熱利用作動油加温システム150では、高所作業車1の走行時に、流体循環路152の一端部(走行時排熱発生源151に接触して配置された部分)を移動する流体が、走行時排熱発生源151から発生する排熱により加温される。この加温された流体が流体循環路152の他端部(作動油タンク54内の作動油に浸漬する部分)に移動すると、熱交換器154を介して流体と作動油との間で熱交換が行われ、作動油が加温される。このような走行時排熱発生源151からの排熱による流体の加温、流体と作動油との熱交換による作動油の加温という過程が繰り返されることで、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。
【0046】
このように走行時排熱利用作動油加温システム150によれば、高所作業車1の走行時において、一般的には無駄に捨てられてしまうことになる、走行時排熱発生源151から発生する排熱の熱エネルギの一部を、流体循環路152の流体を用いて回収することにより有効に利用して、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。また、作動油の温度を上げることで、電気ヒータ利用作動油加温システム140により作動油の温度を上げた場合と同様の効果を得ることができる。
【0047】
図6は、高所作業車1に装備される第3態様の作動油加温システムとしての走行用充電時排熱利用作動油加温システム160の概略構成を示している。この走行用充電時排熱利用作動油加温システム160は、図6に示すように、走行用バッテリ130の充電時に排
熱となる熱エネルギを発生させる走行用充電時排熱発生源161と作動油タンク54との間を循環する流体の流路となる流体循環路162を備えて構成される。走行時排熱発生源161としては、例えば、走行用バッテリ130および車体部電力供給装置110が含まれる。
【0048】
流体循環路162は、一端部が走行用充電時排熱発生源161(走行用バッテリ130および車体部電力供給装置110の両方またはいずれか一方)に沿うように接触して配置され、他端部が作動油タンク54内の作動油に浸漬するように配置される。前述した流体循環路152と同様に流体循環路162には、流体を貯留する流体タンク163が設けられ、かつ流体を循環させるためのポンプ(図示せず)が適宜配置される。また、流体循環路162の他端部(作動油タンク54内の作動油に浸漬する部分)には、熱交換器164が適宜配置される。
【0049】
上記のように構成される走行用充電時排熱利用作動油加温システム160では、走行用バッテリ130充電時に、流体循環路162の一端部(走行用充電時排熱発生源161に接触して配置された部分)を移動する流体が、走行用充電時排熱発生源161から発生する排熱により加温される。この加温された流体が流体循環路162の他端部(作動油タンク54内の作動油に浸漬する部分)に移動すると、熱交換器164を介して流体と作動油との間で熱交換が行われ、作動油が加温される。このような走行用充電時排熱発生源161からの排熱による流体の加温、流体と作動油との熱交換による作動油の加温という過程が繰り返されることで、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。
【0050】
このように走行用充電時排熱利用作動油加温システム160によれば、走行用バッテリ130充電時において、一般的には無駄に捨てられてしまうことになる、走行用充電時排熱発生源161から発生する排熱の熱エネルギの一部を、流体循環路162の流体を用いて回収することにより有効に利用して、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。また、作動油の温度を上げることで、電気ヒータ利用作動油加温システム140により作動油の温度を上げた場合と同様の効果を得ることができる。
【0051】
図7は、高所作業車1に装備される第4態様の作動油加温システムとしての作業用充電時排熱利用作動油加温システム170の概略構成を示している。この作業用充電時排熱利用作動油加温システム170は、図7に示すように、架装部バッテリ(固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80)の充電時に排熱となる熱エネルギを発生させる作業用充電時排熱発生源171と作動油タンク54との間を循環する流体の流路となる流体循環路172を備えて構成される。作業用充電時排熱発生源171としては、例えば、架装部バッテリ(固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80)、充電器17および架装部電力供給装置90が含まれる。
【0052】
流体循環路172は、一端部が作業用充電時排熱発生源171(固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80、充電器17および架装部電力供給装置90の全てまたはこれらのうちの一部)に沿うように接触して配置され、他端部が作動油タンク54内の作動油に浸漬するように配置される。前述した流体循環路152と同様に流体循環路172には、流体を貯留する流体タンク173が設けられ、かつ流体を循環させるためのポンプ(図示せず)が適宜配置される。また、流体循環路172の他端部(作動油タンク54内の作動油に浸漬する部分)には、熱交換器174が適宜配置される。
【0053】
上記のように構成される作業用充電時排熱利用作動油加温システム170では、架装部バッテリ(固定設置バッテリ70および可搬型バッテリ80の両方またはいずれか一方)の充電時に、流体循環路172の一端部(作業用充電時排熱発生源171に接触して配置された部分)を移動する流体が、作業用充電時排熱発生源171から発生する排熱により
加温される。この加温された流体が流体循環路172の他端部(作動油タンク54内の作動油に浸漬する部分)に移動すると、熱交換器174を介して流体と作動油との間で熱交換が行われ、作動油が加温される。このような作業用充電時排熱発生源171からの排熱による流体の加温、流体と作動油との熱交換による作動油の加温という過程が繰り返されることで、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。
【0054】
このように作業用充電時排熱利用作動油加温システム170によれば、架装部バッテリ(固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80)の充電時において、一般的には無駄に捨てられてしまうことになる、作業用充電時排熱発生源171から発生する排熱の熱エネルギの一部を、流体循環路172の流体を用いて回収することにより有効に利用して、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。また、作動油の温度を上げることで、電気ヒータ利用作動油加温システム140により作動油の温度を上げた場合と同様の効果を得ることができる。
【0055】
上述した走行時排熱利用作動油加温システム150、走行用充電時排熱利用作動油加温システム160および作業用充電時排熱利用作動油加温システム170は、それぞれ独立して構成される態様であるが、これらのシステムを組み合わせて構成してもよい。例えば、流体循環路152,162,172の一部を統合して各システムにおいて共用できるように構成したり、流体タンク153,163,173を統合したり、熱交換器154,164,174を統合したりしてもよい。流体循環路152,162,172の一部を統合する場合、各流体循環路152,162,172の交差部に流路切替用の制御弁を配置し、この制御弁により各流体循環路152,162,172を切り換えて使用するようにしてもよい。
【0056】
上述した走行時排熱利用作動油加温システム150、走行用充電時排熱利用作動油加温システム160および作業用充電時排熱利用作動油加温システム170は、循環する流体を排熱により加温し、その加温した流体と作動油タンク内の作動油との熱交換により作動油を加温するものであるが、作動油を排熱により直接的に加温するようにしてもよい。図8は、上述した走行時排熱利用作動油加温システム150の変更態様としての走行時排熱利用作動油加温システム180を示している。この走行時排熱利用作動油加温システム180は、図8に示すように、作動油タンク54に貯留された作動油を走行時排熱発生源151と作動油タンク54との間で循環させるための作動油循環路182を備えて構成される。作動油循環路182は、作動油タンク54から延出して先端部が走行時排熱発生源151(走行用モータ115、走行用バッテリ130および車体部電力供給装置110の全てまたはこれらのうちの一部)に沿うように接触して配置される。また、作動油循環路182には、作動油を循環させるためのポンプ(図示せず)が適宜配置される。
【0057】
この走行時排熱利用作動油加温システム180では、高所作業車1の走行時に、作動油循環路182の先端部(走行時排熱発生源151に接触して配置された部分)を移動する作動油が、走行時排熱発生源151から発生する排熱により加温される。この加温された作動油が作動油循環路182を通って作動油タンク54内に移動することにより、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。
【0058】
このような走行時排熱利用作動油加温システム180によっても、高所作業車1の走行時において、一般的には無駄に捨てられてしまうことになる、走行時排熱発生源151から発生する排熱の熱エネルギの一部を有効に利用して、作動油タンク54内の作動油の温度を上げることができる。また、作動油の温度を上げることで、電気ヒータ利用作動油加温システム140により作動油の温度を上げた場合と同様の効果を得ることができる。なお、走行時排熱発生源151に替えて、走行用充電時排熱発生源161から発生する排熱を利用して、または作業用充電時排熱発生源171から発生する排熱を利用して、作動油
を直接的に加温する作動油加温システム(作動油循環路を用いた作動油加温システム)を構成してもよい。
【0059】
上述の実施形態においては、走行用バッテリ130に蓄えられた電力が、ポンプ駆動モータ53を作動させるために用いられないようになっているが、走行用バッテリ130に蓄えられた電力を利用してポンプ駆動モータ53を作動させるようにしてもよい。
【0060】
上述の実施形態においては、電気ヒータ利用作動油加温システム140と走行時排熱利用作動油加温システム150の両方を備えているがこれらのシステムのうちのいずれか一方を備えた構成としてもよい。また、走行用充電時排熱利用作動油加温システム160および作業用充電時排熱利用作動油加温システム170については、これらのシステムのうちのいずれか一方を備えた構成としてもよく、これらのシステムをいずれも備えない構成としてもよい。
【0061】
上述の実施形態では、本発明に係るEV型作業車として、高所作業車を例示して説明したがこれに限定されるものではなく、本発明は、EVトラックに昇降装置以外の油圧作業装置を搭載した種々の作業車に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 高所作業車
2 車体
10F フロントジャッキ
10R リアジャッキ
20 旋回台
30 ブーム
40 作業台
52 油圧ポンプ
53 ポンプ駆動モータ
54 作動油タンク
70 固定設置バッテリ
80 可搬型バッテリ
140 電気ヒータ利用作動油加温システム
141 電気ヒータ
150 走行時排熱利用作動油加温システム
154,164,174 熱交換器
160 走行用充電時排熱利用作動油加温システム
170 作業用充電時排熱利用作動油加温システム
180 走行時排熱利用作動油加温システム(変更態様)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8