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  • 特開-駆動バッテリ搭載構造 図1
  • 特開-駆動バッテリ搭載構造 図2
  • 特開-駆動バッテリ搭載構造 図3
  • 特開-駆動バッテリ搭載構造 図4
  • 特開-駆動バッテリ搭載構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154125
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】駆動バッテリ搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241023BHJP
   B62D 21/02 20060101ALN20241023BHJP
【FI】
B60K1/04
B62D21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067774
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】パテル プラティクマ
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA14
3D203AA31
3D203BA03
3D203DB05
3D235AA06
3D235BB27
3D235CC15
3D235DD37
3D235FF02
3D235FF35
3D235HH62
(57)【要約】
【課題】乗り心地を改善させることができる駆動バッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】駆動バッテリ搭載構造は、電動車両の前輪及び後輪の間に複数の駆動バッテリが搭載される。駆動バッテリは、少なくとも2つある。また、前輪及び後輪の間を、車長方向において前方部、中間部、後方部と、等間隔で分割した場合に、一方の駆動バッテリは前方部または中間部に、他方の駆動バッテリは後方部に、夫々同軸上に位置するよう搭載される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の前輪及び後輪の間に複数の駆動バッテリが搭載される駆動バッテリ搭載構造であって、
前記駆動バッテリは、少なくとも2つあり、
前記前輪及び前記後輪の間を、車長方向において前方部、中間部、後方部と、等間隔で分割した場合に、一方の駆動バッテリは前記前方部または前記中間部に、他方の駆動バッテリは前記後方部に、夫々同軸上に位置するよう搭載されることを特徴とした駆動バッテリ搭載構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動バッテリ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、例えば、特許文献1のように駆動用のバッテリであるバッテリユニットが搭載されるが、このバッテリは、トラックのような大型車両では、車両重量と走行距離の関係上、複数搭載されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-205629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、駆動バッテリは重量が大きいため、駆動バッテリの搭載位置によっては、搭乗者の乗り心地に影響を与えることがある。したがって、上記のように複数の駆動バッテリを電動車両に搭載する場合、乗り心地を考慮して駆動バッテリの配置関係を決めることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動車両における搭乗者の乗り心地を改善させることができる駆動バッテリ搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る駆動バッテリ搭載構造は、電動車両の前輪及び後輪の間に複数の駆動バッテリが搭載される駆動バッテリ搭載構造であって、前記駆動バッテリは、少なくとも2つあり、前記前輪及び前記後輪の間を、車長方向において前方部、中間部、後方部と、等間隔で分割した場合に、一方のバッテリは前記前方部または前記中間部に、他方のバッテリは前記後方部に、夫々同軸上に位置するよう搭載されることを特徴とする。
【0008】
このように構成された駆動バッテリ搭載構造は、走行中の電動車両のキャブにおける振動又は衝撃を抑制することができる。そのため、電動車両における搭乗者の乗り心地を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の電動車両の側面図である。
図2】実施形態1の電動車両の平面図である。
図3】実施形態2の電動車両の側面図である。
図4】実施形態2の電動車両の平面図である。
図5】電動車両の速度に対するキャブの加速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態1及び実施形態2を図面に基づき説明する。なお、各実施形態において、電動車両1の左右方向を車幅方向Y,電動車両1の前後方向を車長方向X、電動車両1の上下方向を車高方向Zとする。
【0011】
(実施形態1)
図1は、電動車両1の左側から見た側面図である。図2は、キャブ3及び荷台4(又は荷箱)の図示を簡略化した電動車両1の平面図である。本実施形態の電動車両1は、ラダーフレーム2、キャブ3、荷台4、車輪機構5、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、駆動バッテリ8を備える電動トラックである。また、電動車両1は、駆動バッテリ搭載構造9を備える。本実施形態の電動車両1は、走行用駆動源として電動機(後述するモータ6a)を備える電気自動車を想定しているが、電動車両としての機能を備えていればよく、例えばエンジンをさらに備えるハイブリッド自動車であってもよい。また、電動車両1は電気トラックに限定されることなく、車両を駆動するためのバッテリを備える他の商用車であってもよい。
【0012】
ラダーフレーム2は、左右一対のサイドフレーム2aと複数のクロスメンバ2bを有している。サイドフレーム2aは、電動車両1の車長方向X(前後方向)に沿って延在し、互いに車幅方向Y(左右方向)に対して平行に配置された左サイドフレーム及び右サイドフレームを有する。複数のクロスメンバ2bは、左サイドフレームと右サイドフレームとを連結する。すなわち、ラダーフレーム2は梯子型フレームを構成する。ラダーフレーム2は、キャブ3、荷台4、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、駆動バッテリ8、及び電動車両1に搭載されるその他の重量物を支持する機能を有する。
【0013】
キャブ3は、運転席を含む構造体であり、ラダーフレーム2の前部上方に設けられる。荷台4は、電動車両1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、ラダーフレーム2の後部上方に設けられている。
【0014】
車輪機構5は、本実施形態においては、車長方向Xの前方に位置する左右の前輪5a、2つの前輪5aの車軸として機能するフロントアクスル5b、車長方向Xの後方に位置しかつ左右に各2つ配置された後輪5c、及び、後輪5cの車軸として機能するリアアクスル5dを有する。本実施形態に係る電動車両1は、後輪5cが駆動輪として機能するようにモータ6aからの駆動力が後輪5cに伝達され、電動車両1を走行させる。なお、車輪機構5は、図示しないサスペンション機構を介してラダーフレーム2に懸架され、電動車両1の重量を支持する。
【0015】
駆動ユニット6はモータ6a、減速機構6b、及び差動機構6cを有する。モータ6aは、後述する駆動電力供給部7から交流電力が供給されることにより、電動車両1の走行に必要な駆動力を発生させる。減速機構6bは、図示しない複数のギアを含み、モータ6aから入力された回転トルクを減速して差動機構6cに出力する。差動機構6cは、減速機構6bから入力される動力を左右の後輪5cに対して振り分ける。すなわち、駆動ユニット6は、減速機構6b及び差動機構6cを介して、モータ6aの駆動トルクを電動車両1の走行に適した回転速度に減速して、リアアクスル5dに駆動力を伝達する。これにより駆動ユニット6は、リアアクスル5dを介して後輪5cを回転させて電動車両1を走行させることができる。
【0016】
駆動電力供給部7は、いわゆるインバータであり、駆動バッテリ8から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ6aへ供給し、電動車両1に対するアクセル操作に応じてモータ6aの回転速度を制御する。
【0017】
駆動バッテリ8は、電動車両1を走行させるためのエネルギー源としてモータ6aに電力を供給する二次電池である。本実施形態の駆動バッテリ8は、前後に長尺な略直方体状のバッテリハウジングと、該バッテリハウジングの内部に収容される大容量バッテリモジュール(不図示)を内部に備える。また、駆動バッテリ8は、複数の電動補機とそれらに電力を供給する配電ユニットとが電動車両1に搭載されている場合には(いずれも不図示)、当該配電ユニットにも電力を供給できるように構成されてもよい。
【0018】
図1及び図2に示すように、駆動バッテリ搭載構造9は、電動車両1の前輪5a及び後輪5cの間に複数の駆動バッテリ8が搭載される構造として構成される。駆動バッテリ搭載構造9の駆動バッテリ8は、少なくとも2つあり、車長方向Xに配置される。複数の駆動バッテリ8は、前輪5a及び後輪5cの間を、車長方向Xにおいて前方部P1、中間部P2、及び後方部P3の等間隔で分割した場合に、一方の駆動バッテリ8aは前方部P1に、他方の駆動バッテリは後方部P3に、夫々略同軸上に位置するよう搭載される。駆動バッテリ8a及び駆動バッテリ8bは、図2の平面図に示されるように、電動車両1に対して車幅方向Yの略中央部において、略車軸Lに沿って車長方向Xに配置される。
【0019】
(実施形態2)
次に、実施形態2の電動車両1及び電動車両1が備える駆動バッテリ搭載構造9Aについて説明する。図3は、本実施形態の電動車両1の左側から見た側面図である。図4は、キャブ3及び荷台4の図示を簡略化した本実施形態の電動車両1の平面図である。なお、実施形態2の説明において、実施形態1の電動車両1と同様の構成については、同一の符号付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0020】
実施形態2の複数の駆動バッテリ8は、前輪5a及び後輪5cの間を、車長方向Xにおいて前方部P1、中間部P2、及び後方部P3の等間隔で分割した場合に、一方の駆動バッテリ8aは中間部P2に、他方の駆動バッテリ8bは後方部P3に、夫々略同軸上に位置するよう搭載される。駆動バッテリ8a及び駆動バッテリ8bは、図4の平面図に示されるように、電動車両1に対して車幅方向Yの略中央部において、略車軸Lに沿って車長方向Xに配置される。
【0021】
次に、実施形態1及び実施形態2の駆動バッテリ搭載構造9,9Aを電動車両1に適用した場合に、キャブ3に与える加速度の影響について説明する。図5は、空荷状態の電動車両1を継目などの凹凸を有する路面に走行させた場合において、電動車両1の走行速度に対するキャブ3が受ける加速度のシミュレーション結果を示す図である。従って、シミュレーションは、電動車両1のキャブ3が振動又は衝撃を受けやすい条件下で行われている。図5の横軸は速度である。また図5の縦軸は加速度であり、車長方向Xの加速度成分及び車高方向Zの加速度成分のベクトル和の絶対値である。
【0022】
図5は、駆動バッテリ搭載構造9を備える電動車両1のキャブ3が受ける加速度の特性f1、及び、駆動バッテリ搭載構造9Aを備える電動車両1のキャブ3が受ける加速度の特性f2を示している。また、図5は、電動車両1が図1等に示した前方部P1及び中間部P2に駆動バッテリ8を配置した場合のキャブ3が受ける加速度の特性f3を、比較例として示している。
【0023】
キャブ3が受ける加速度は、各特性f1~f3に示されるように、駆動バッテリ8をいずれの位置の組み合わせで配置した場合であっても、速度の増加に伴って山なりに変化する。すなわち、加速度は、低速領域では速度の増加とともに増加し、所定の速度を境に、高速領域では速度の減少とともに減少する。
【0024】
また、駆動バッテリ8を前方部P1及び後方部P3に配置した駆動バッテリ搭載構造9(特性f1)の場合、又は、駆動バッテリ8を中間部P2及び後方部P3に配置した駆動バッテリ搭載構造9A(特性f2)の場合は、駆動バッテリ8を前方部P1及び中間部P2に配置した場合(特性f3)と比べて、キャブ3の加速度はシミュレーションを行った略全体の速度領域において抑制される。すなわち、キャブ3が受ける加速度は、前輪5a及び後輪5cの間を車長方向Xにおいて前方部P1、中間部P2、後方部P3と、等間隔で分割した場合の少なくとも後方部P3に一方の駆動バッテリ8を設けることで、抑制される。従って、このような駆動バッテリ搭載構造9,9Aを備える電動車両1は、搭乗者が受ける振動又は衝撃も緩和されて、良好な乗り心地を得ることができる。
【0025】
なお、荷台4に荷物が搭載されている場合は、図5の加速度は減少する傾向にある。荷台4に荷物が搭載されている場合であっても、電動車両1の加速度は、実施形態1,2の駆動バッテリ搭載構造9,9Aを備えることでさらに抑制される。
【0026】
以上、各実施形態において、電動車両1の前輪5a及び後輪5cの間に複数の駆動バッテリ8(8a,8b)が搭載される駆動バッテリ搭載構造9について説明した。この駆動バッテリ搭載構造9において、駆動バッテリ8は少なくとも2つあり、前輪5a及び後輪5cの間を、車長方向Xにおいて前方部P1、中間部P2、後方部P3と、等間隔で分割した場合に、一方の駆動バッテリ8aは前方部P1または中間部P2に、他方の駆動バッテリ8bは後方部P3に、夫々同軸上に位置するよう搭載される。これにより、キャブ3の振動又は衝撃(加速度)を抑制することができるため、乗り心地が良好となるように改善可能な駆動バッテリ搭載構造9を構成することができる。
【0027】
また、駆動バッテリ搭載構造9は、駆動バッテリ8の配置を調整することでキャブ3が受ける加速度を抑制することができるため、搭乗者の乗り心地の向上を低コストで実現することができる。
【0028】
以上で本発明に係る駆動バッテリ搭載構造の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、本実施形態では、駆動バッテリ8が少なくとも2つ設けられた駆動バッテリ搭載構造9を備える電動車両1について説明したが、駆動バッテリ8は3つ以上の複数設けられてもよい。この場合、駆動バッテリ8は、後輪5c側(例えば、前輪5a及び後輪5cの間を車長方向Xにおいて前方部P1、中間部P2、中間部P2-1、後方部P3と、等間隔で分割した場合の後方部P3)に少なくとも1つ設けられる構成とすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 電動車両
2 ラダーフレーム
2a サイドフレーム
2b クロスメンバ
3 キャブ
4 荷台
5 車輪機構
5a 前輪
5b フロントアクスル
5c 後輪
5d リアアクスル
6 駆動ユニット
6a モータ
6b 減速機構
6c 差動機構
7 駆動電力供給部
8,8a,8b 駆動バッテリ
9,9A 駆動バッテリ搭載構造
L 車軸
P1 前方部
P2 中間部
P3 後方部
X 車長方向
Y 車幅方向
Z 車高方向
f1~f3 特性

図1
図2
図3
図4
図5