IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特開-液圧制御ユニット及び制御方法 図1
  • 特開-液圧制御ユニット及び制御方法 図2
  • 特開-液圧制御ユニット及び制御方法 図3
  • 特開-液圧制御ユニット及び制御方法 図4
  • 特開-液圧制御ユニット及び制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154127
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/176 20060101AFI20241023BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20241023BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B60T8/176 Z
B60T8/171 Z
B60T8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067778
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 幹矢
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA17
3D246GB01
3D246HA31A
3D246HA38A
3D246HA39A
3D246HA39B
3D246HA43A
3D246HA64A
3D246HA85A
3D246HA86B
3D246HA93B
3D246HB02B
3D246JB41
3D246KA15
3D246LA04Z
3D246LA15Z
3D246LA33Z
3D246LA67Z
(57)【要約】
【課題】アキュムレータの大型化を抑制する。
【解決手段】制御装置は、アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、ホイールシリンダのブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズで込め弁を閉状態にして弛め弁を開状態にし、ブレーキ操作が解除される時点よりも前においてはアキュムレータに溜まっているブレーキ液が副流路に戻されず、ブレーキ操作が解除された場合にアキュムレータに溜まっているブレーキ液が副流路に戻される第1モードを実行する制御部を含み、第1モードでは、制御部がモータを駆動せずに、アキュムレータに溜まっているブレーキ液が副流路に戻され、制御部は、制御モードとして、第1モードに替えて、減圧フェーズで込め弁を閉状態にして弛め弁を開状態にしてモータを駆動し、ブレーキ操作が解除されなくてもアキュムレータに溜まっているブレーキ液がポンプにより副流路に戻される第2モードを実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(1)のブレーキシステム(10)に用いられる液圧制御ユニット(12)であって、
マスタシリンダ(51)とホイールシリンダ(54)とを連通するブレーキ液の主流路(55)と、
前記主流路(55)に設けられる込め弁(61)と、
前記ホイールシリンダ(54)のブレーキ液を逃がす副流路(56)と、
前記副流路(56)に設けられる弛め弁(62)と、
前記副流路(56)のうち前記弛め弁(62)よりも下流側に設けられるアキュムレータ(63)と、
前記鞍乗り型車両(1)のライダーによるブレーキ操作時にアンチロックブレーキ制御を実行する制御装置(20)と、
を備え、
前記制御装置(20)は、前記アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、前記ホイールシリンダ(54)のブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズで前記込め弁(61)を閉状態にして前記弛め弁(62)を開状態にし、前記ブレーキ操作が解除される時点よりも前においては前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記副流路(56)に戻されず、前記ブレーキ操作が解除された場合に前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記副流路(56)に戻される第1モードを実行する制御部(22)を含み、
前記液圧制御ユニット(12)は、
前記副流路(56)のうち前記アキュムレータ(63)よりも下流側に設けられるポンプ(64)と、
前記ポンプ(64)を駆動するモータ(65)と、
をさらに備え、
前記第1モードでは、前記制御部(22)が前記モータ(65)を駆動せずに、前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記副流路(56)に戻され、
前記制御部(22)は、前記制御モードとして、前記第1モードに替えて、前記減圧フェーズで前記込め弁(61)を閉状態にして前記弛め弁(62)を開状態にして前記モータ(65)を駆動し、前記ブレーキ操作が解除されなくても前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記ポンプ(64)により前記副流路(56)に戻される第2モードを実行する、
液圧制御ユニット。
【請求項2】
前記制御部(22)は、前記第1モードにおいて、前記ポンプ(64)を通して前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液を逃がす、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項3】
前記制御部(22)は、前記制御モードが前記第2モードに設定されている状態で前記アンチロックブレーキ制御を開始する、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項4】
前記制御部(22)は、
前記制御モードが前記第1モードに設定されている状態で前記アンチロックブレーキ制御を開始し、
前記アンチロックブレーキ制御の開始後、かつ、前記ブレーキ操作が解除される時点よりも前に、前記制御モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替える、
請求項1に記載の液圧制御ユニット。
【請求項5】
前記制御部(22)は、前記アンチロックブレーキ制御の開始後、かつ、前記ブレーキ操作が解除される時点よりも前に、前記制御モードを前記第2モードから前記第1モードに切り替える、
請求項3又は4に記載の液圧制御ユニット。
【請求項6】
前記制御装置(20)は、前記アキュムレータ(63)の消費に関する情報である消費情報を取得する取得部(21)を備え、
前記制御部(22)は、前記取得部(21)により取得される前記消費情報に基づいて前記制御モードを切り替える、
請求項1又は2に記載の液圧制御ユニット。
【請求項7】
前記取得部(21)は、前記消費情報として、前記アキュムレータ(63)の現在の消費状態に関する情報を取得する、
請求項6に記載の液圧制御ユニット。
【請求項8】
前記取得部(21)は、前記消費情報として、前記アキュムレータ(63)の将来の消費状態に関する情報を取得する、
請求項6に記載の液圧制御ユニット。
【請求項9】
前記取得部(21)は、前記鞍乗り型車両(1)の車両状態に関する情報である車両状態情報に基づいて前記消費情報を取得する、
請求項6に記載の液圧制御ユニット。
【請求項10】
前記車両状態情報は、前記鞍乗り型車両(1)の減速状態に関する情報である減速状態情報を含む、
請求項9に記載の液圧制御ユニット。
【請求項11】
前記車両状態情報は、前記鞍乗り型車両(1)の速度状態に関する情報である速度状態情報を含む、
請求項9に記載の液圧制御ユニット。
【請求項12】
前記車両状態情報は、前記鞍乗り型車両(1)の姿勢状態に関する情報である姿勢状態情報を含む、
請求項9に記載の液圧制御ユニット。
【請求項13】
前記取得部(21)は、前記鞍乗り型車両(1)の走行する路面状況に関する情報である路面状況情報に基づいて前記消費情報を取得する、
請求項6に記載の液圧制御ユニット。
【請求項14】
前記制御装置(20)は、前記モータ(65)の負荷に関する情報である負荷情報を取得する取得部(21)を備え、
前記制御部(22)は、前記取得部(21)により取得される前記負荷情報に基づいて前記制御モードを切り替える、
請求項1又は2に記載の液圧制御ユニット。
【請求項15】
前記取得部(21)は、前記モータ(65)の電源(13)に関する電源情報に基づいて前記負荷情報を取得する、
請求項14に記載の液圧制御ユニット。
【請求項16】
前記取得部(21)は、前記モータ(65)の温度に関する温度情報に基づいて前記負荷情報を取得する、
請求項14に記載の液圧制御ユニット。
【請求項17】
前記取得部(21)は、前記鞍乗り型車両(1)の減速状態に関する減速状態情報に基づいて前記負荷情報を取得する、
請求項14に記載の液圧制御ユニット。
【請求項18】
鞍乗り型車両(1)のブレーキシステム(10)に用いられる液圧制御ユニット(12)の制御方法であって、
前記液圧制御ユニット(12)は、
マスタシリンダ(51)とホイールシリンダ(54)とを連通するブレーキ液の主流路(55)と、
前記主流路(55)に設けられる込め弁(61)と、
前記ホイールシリンダ(54)のブレーキ液を逃がす副流路(56)と、
前記副流路(56)に設けられる弛め弁(62)と、
前記副流路(56)のうち前記弛め弁(62)よりも下流側に設けられるアキュムレータ(63)と、
前記鞍乗り型車両(1)のライダーによるブレーキ操作時にアンチロックブレーキ制御を実行する制御装置(20)と、
を備え、
前記制御装置(20)は、前記アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、前記ホイールシリンダ(54)のブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズで前記込め弁(61)を閉状態にして前記弛め弁(62)を開状態にし、前記ブレーキ操作が解除される時点よりも前においては前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記副流路(56)に戻されず、前記ブレーキ操作が解除された場合に前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記副流路(56)に戻される第1モードを実行する制御部(22)を含み、
前記液圧制御ユニット(12)は、
前記副流路(56)のうち前記アキュムレータ(63)よりも下流側に設けられるポンプ(64)と、
前記ポンプ(64)を駆動するモータ(65)と、
をさらに備え、
前記第1モードでは、前記制御部(22)が前記モータ(65)を駆動せずに、前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記副流路(56)に戻され、
前記制御部(22)は、前記制御モードとして、前記第1モードに替えて、前記減圧フェーズで前記込め弁(61)を閉状態にして前記弛め弁(62)を開状態にして前記モータ(65)を駆動し、前記ブレーキ操作が解除されなくても前記アキュムレータ(63)に溜まっているブレーキ液が前記ポンプ(64)により前記副流路(56)に戻される第2モードを実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両のブレーキシステムに用いられる液圧制御ユニット、及び当該液圧制御ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータサイクル等の鞍乗り型車両には、車輪の制動力を制御するための液圧制御ユニットが設けられている。液圧制御ユニットによって、鞍乗り型車両のライダーによるブレーキ操作時にアンチロックブレーキ制御を実行することができる。アンチロックブレーキ制御では、例えば、特許文献1に開示されているように、ホイールシリンダのブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズが行われることによって、車輪がロックすることを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-024324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンチロックブレーキ制御の減圧フェーズでは、液圧制御ユニットにおいて込め弁が閉状態となり弛め弁が開状態となることによって、ホイールシリンダからアキュムレータにブレーキ液が逃がされて、ホイールシリンダ内のブレーキ液の圧力が減少させられる。アンチロックブレーキ制御による車輪のロックを抑制する性能を高めるために、アキュムレータが大型化される傾向がある。しかし、鞍乗り型車両では、装置類の搭載スペースが四輪自動車等に比較して狭いので、アキュムレータの大型化を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、アキュムレータの大型化を抑制することができる液圧制御ユニット及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液圧制御ユニットは、鞍乗り型車両のブレーキシステムに用いられる液圧制御ユニットであって、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通するブレーキ液の主流路と、前記主流路に設けられる込め弁と、前記ホイールシリンダのブレーキ液を逃がす副流路と、前記副流路に設けられる弛め弁と、前記副流路のうち前記弛め弁よりも下流側に設けられるアキュムレータと、前記鞍乗り型車両のライダーによるブレーキ操作時にアンチロックブレーキ制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、前記ホイールシリンダのブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズで前記込め弁を閉状態にして前記弛め弁を開状態にし、前記ブレーキ操作が解除される時点よりも前においては前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記副流路に戻されず、前記ブレーキ操作が解除された場合に前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記副流路に戻される第1モードを実行する制御部を含み、前記液圧制御ユニットは、前記副流路のうち前記アキュムレータよりも下流側に設けられるポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、をさらに備え、前記第1モードでは、前記制御部が前記モータを駆動せずに、前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記副流路に戻され、前記制御部は、前記制御モードとして、前記第1モードに替えて、前記減圧フェーズで前記込め弁を閉状態にして前記弛め弁を開状態にして前記モータを駆動し、前記ブレーキ操作が解除されなくても前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記ポンプにより前記副流路に戻される第2モードを実行する。
【0007】
本発明に係る制御方法は、鞍乗り型車両のブレーキシステムに用いられる液圧制御ユニットの制御方法であって、前記液圧制御ユニットは、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通するブレーキ液の主流路と、前記主流路に設けられる込め弁と、前記ホイールシリンダのブレーキ液を逃がす副流路と、前記副流路に設けられる弛め弁と、前記副流路のうち前記弛め弁よりも下流側に設けられるアキュムレータと、前記鞍乗り型車両のライダーによるブレーキ操作時にアンチロックブレーキ制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、前記ホイールシリンダのブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズで前記込め弁を閉状態にして前記弛め弁を開状態にし、前記ブレーキ操作が解除される時点よりも前においては前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記副流路に戻されず、前記ブレーキ操作が解除された場合に前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記副流路に戻される第1モードを実行する制御部を含み、前記液圧制御ユニットは、前記副流路のうち前記アキュムレータよりも下流側に設けられるポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、をさらに備え、前記第1モードでは、前記制御部が前記モータを駆動せずに、前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記副流路に戻され、前記制御部は、前記制御モードとして、前記第1モードに替えて、前記減圧フェーズで前記込め弁を閉状態にして前記弛め弁を開状態にして前記モータを駆動し、前記ブレーキ操作が解除されなくても前記アキュムレータに溜まっているブレーキ液が前記ポンプにより前記副流路に戻される第2モードを実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る液圧制御ユニット及び制御方法では、制御装置は、アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、ホイールシリンダのブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズで込め弁を閉状態にして弛め弁を開状態にし、ブレーキ操作が解除される時点よりも前においてはアキュムレータに溜まっているブレーキ液が副流路に戻されず、ブレーキ操作が解除された場合にアキュムレータに溜まっているブレーキ液が副流路に戻される第1モードを実行する制御部を含み、液圧制御ユニットは、副流路のうちアキュムレータよりも下流側に設けられるポンプと、ポンプを駆動するモータと、をさらに備え、第1モードでは、制御部がモータを駆動せずに、アキュムレータに溜まっているブレーキ液が副流路に戻され、制御部は、制御モードとして、第1モードに替えて、減圧フェーズで込め弁を閉状態にして弛め弁を開状態にしてモータを駆動し、ブレーキ操作が解除されなくてもアキュムレータに溜まっているブレーキ液がポンプにより副流路に戻される第2モードを実行する。それにより、制御装置は、制御モードとしてモータが駆動される第2モードを実行することによって、ブレーキ操作が解除されなくても、アキュムレータに溜まっているブレーキ液をポンプにより副流路に戻すことができるので、アキュムレータの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両のブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る制御装置が行う第1処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る制御装置が行う第2処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニット及び制御方法について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、二輪のモータサイクルに用いられる液圧制御ユニットについて説明しているが(図1中の鞍乗り型車両1を参照)、本発明に係る液圧制御ユニットが搭載される車両は、二輪のモータサイクル以外の他の鞍乗り型車両であってもよい。鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗り型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、自転車、バギー等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを動力源とする車両、電気モータを動力源とする車両等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0012】
また、以下では、駆動輪を駆動するための動力を出力可能な駆動源としてエンジン(具体的には、後述される図1中のエンジン11)が搭載されている場合を説明しているが、駆動源としてエンジン以外の他の駆動源(例えば、電気モータ)が搭載されていてもよく、複数の駆動源が搭載されていてもよい。
【0013】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る液圧制御ユニット及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0014】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0015】
<鞍乗り型車両の構成>
図1図3を参照して、本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両1の構成について説明する。
【0016】
図1は、鞍乗り型車両1の概略構成を示す模式図である。鞍乗り型車両1は、本発明に係る鞍乗り型車両の一例に相当する二輪のモータサイクルである。鞍乗り型車両1は、図1に示されるように、前輪2と、後輪3と、エンジン11と、液圧制御ユニット12と、電源13と、電圧センサ14と、慣性計測装置(IMU)15と、前輪車輪速センサ16と、後輪車輪速センサ17と、制御装置(ECU)20とを備える。
【0017】
エンジン11は、鞍乗り型車両1の駆動源の一例に相当し、駆動輪(具体的には、後輪3)を駆動するための動力を出力可能である。例えば、エンジン11には、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン11の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。
【0018】
液圧制御ユニット12は、車輪に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。例えば、液圧制御ユニット12は、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する油路上に設けられ、ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御するためのコンポーネント(例えば、制御弁等)を含む。液圧制御ユニット12のコンポーネントの動作が制御されることによって、車輪に生じる制動力が制御される。なお、液圧制御ユニット12を含むブレーキシステム10の詳細については、後述する。
【0019】
電源13は、鞍乗り型車両1の各装置に電力を供給する。電源13から各装置に電力が供給されることによって、各装置が駆動される。電源13としては、例えば、二次電池等が挙げられる。ただし、電源13の種類は特に限定されない。
【0020】
電圧センサ14は、電源13の電圧を検出する。電圧センサ14が、電源13の電圧に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0021】
慣性計測装置15は、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えており、鞍乗り型車両1の姿勢を検出する。慣性計測装置15は、例えば、鞍乗り型車両1の胴体に設けられている。例えば、慣性計測装置15は、鞍乗り型車両1のリーン角を検出し、検出結果を出力する。慣性計測装置15が、鞍乗り型車両1のリーン角に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。リーン角は、鉛直上方向に対する鞍乗り型車両1の車体(具体的には、胴体)のロール方向の傾きを表す角度に相当する。慣性計測装置15が、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサの一部のみを備えていてもよい。
【0022】
前輪車輪速センサ16は、前輪2の車輪速(例えば、前輪2の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。前輪車輪速センサ16が、前輪2の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪車輪速センサ16は、前輪2に設けられている。
【0023】
後輪車輪速センサ17は、後輪3の車輪速(例えば、後輪3の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。後輪車輪速センサ17が、後輪3の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪車輪速センサ17は、後輪3に設けられている。
【0024】
制御装置20は、鞍乗り型車両1の各装置を制御する。例えば、制御装置20の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット、メモリ等で構成されている。また、例えば、制御装置20の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置20は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0025】
図2は、制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、制御装置20は、例えば、取得部21と、制御部22とを備える。
【0026】
取得部21は、鞍乗り型車両1の各装置から情報を取得し、制御部22へ出力する。例えば、取得部21は、電圧センサ14、慣性計測装置15、前輪車輪速センサ16及び後輪車輪速センサ17から情報を取得する。なお、本明細書において、情報の取得には、情報の抽出又は生成(例えば、演算)等が含まれ得る。
【0027】
制御部22は、鞍乗り型車両1の各装置の動作を制御する。制御部22は、例えば、エンジン11及び液圧制御ユニット12の動作を制御する。なお、制御装置20は、エンジン11及び液圧制御ユニット12の各々と相互に通信可能となっている。例えば、取得部21は、エンジン11及び液圧制御ユニット12の各々に設けられるセンサから情報を取得できる。
【0028】
ここで、図3を参照して、鞍乗り型車両1のブレーキシステム10の概略構成、及び、鞍乗り型車両1に生じる制動力の制御について説明する。図3は、鞍乗り型車両1のブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。ブレーキシステム10は、図3に示されるように、前輪制動機構31と、後輪制動機構32と、第1ブレーキ操作部41と、第2ブレーキ操作部42とを備える。第1ブレーキ操作部41は、例えば、ブレーキレバーである。前輪制動機構31は、少なくとも第1ブレーキ操作部41に連動して前輪2を制動する。第2ブレーキ操作部42は、例えば、ブレーキペダルである。後輪制動機構32は、少なくとも第2ブレーキ操作部42に連動して後輪3を制動する。前輪制動機構31の一部、及び、後輪制動機構32の一部は、液圧制御ユニット12に含まれる。
【0029】
前輪制動機構31及び後輪制動機構32のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ51と、マスタシリンダ51に付設されているリザーバ52と、鞍乗り型車両1の胴体に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ53と、ブレーキキャリパ53に設けられているホイールシリンダ54と、マスタシリンダ51とホイールシリンダ54とを連通するブレーキ液の流路であって、マスタシリンダ51のブレーキ液をホイールシリンダ54に流通させる主流路55と、ホイールシリンダ54のブレーキ液を逃がす副流路56とを備える。
【0030】
主流路55には、込め弁(EV)61が設けられている。副流路56は、主流路55のうちの、込め弁61に対するホイールシリンダ54側とマスタシリンダ51側との間をバイパスする。副流路56には、上流側から順に、弛め弁(AV)62と、アキュムレータ63と、ポンプ64とが設けられている。
【0031】
込め弁61は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁62は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0032】
また、液圧制御ユニット12には、ポンプ64を駆動するモータ65が設けられている。モータ65は、後述されるアンチロックブレーキ制御において利用される。具体的には、モータ65から出力される駆動力によってポンプ64が駆動されることによって、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液を副流路56に戻すことができる。モータ65は、電源13から供給される電力を用いて駆動される。
【0033】
液圧制御ユニット12は、込め弁61、弛め弁62、アキュムレータ63及びポンプ64を含むブレーキ液の圧力を制御するためのコンポーネントと、それらのコンポーネントが設けられ、主流路55及び副流路56を構成するための流路が内部に形成されている基体12aと、モータ65とを含む。
【0034】
なお、基体12aは、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体12aが複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
【0035】
液圧制御ユニット12の上記のコンポーネント及びモータ65の動作は、制御装置20の制御部22によって制御される。それにより、前輪制動機構31によって前輪2に生じる制動力、及び、後輪制動機構32によって後輪3に生じる制動力が制御される。
【0036】
通常時(つまり、ライダーによるブレーキ操作に応じた制動力を車輪に生じさせるように設定している時)には、制御装置20によって、込め弁61が開状態となり、弛め弁62が閉状態となる。その状態で、第1ブレーキ操作部41が操作されると、前輪制動機構31において、マスタシリンダ51のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力が増加し、ブレーキキャリパ53のブレーキパッド(図示省略)が前輪2のロータ2aに押し付けられて、前輪2に制動力が生じる。また、第2ブレーキ操作部42が操作されると、後輪制動機構32において、マスタシリンダ51のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力が増加し、ブレーキキャリパ53のブレーキパッド(図示省略)が後輪3のロータ3aに押し付けられて、後輪3に制動力が生じる。
【0037】
ここで、制御部22は、鞍乗り型車両1のライダーによるブレーキ操作時にアンチロックブレーキ制御を実行することができる。アンチロックブレーキ制御では、車輪の制動力が、ロックを回避し得るような制動力に調整される。制御部22は、車輪にロック又はロックの可能性が生じた場合に、アンチロックブレーキ制御を実行する。
【0038】
制御部22は、アンチロックブレーキ制御において、ホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズと、ホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力を保持する保持フェーズと、ホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力を増大させる増圧フェーズと、をこの順に繰り返し実行する。
【0039】
まず、減圧フェーズにおいて、制御部22は、込め弁61を閉状態にして、弛め弁62を開状態にする。それにより、ホイールシリンダ54からアキュムレータ63にブレーキ液が流れ込み、ホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力が減少し、車輪に生じる制動力が減少する。なお、本実施形態では、アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動しない第1モードと、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動する第2モードとが切り替え可能となっている。第1モード及び第2モードの詳細については、後述する。
【0040】
次に、保持フェーズにおいて、制御部22は、込め弁61及び弛め弁62の両方を閉状態にする。それにより、ホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力が保持され(例えば、略一定の圧力に維持され)、車輪に生じる制動力が保持される。
【0041】
次に、増圧フェーズにおいて、制御部22は、込め弁61を開状態にし、弛め弁62を閉状態にする。それにより、マスタシリンダ51のブレーキ液の圧力がホイールシリンダ54に作用して、ホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力が増大し、車輪に生じる制動力が増大する。
【0042】
なお、アンチロックブレーキ制御は、当該アンチロックブレーキ制御が開始した後において、ブレーキ操作が解除される時点まで継続して行われる。つまり、アンチロックブレーキ制御が開始した時点からブレーキ操作が解除される時点までの期間において、減圧フェーズ、保持フェーズ及び増圧フェーズが繰り返し実行される一連の制御が、一連のアンチロックブレーキ制御として行われる。
【0043】
図3に示されるように、液圧制御ユニット12には、温度センサ71と、マスタシリンダ圧センサ72とが設けられている。
【0044】
温度センサ71は、モータ65の温度を検出する。温度センサ71が、モータ65の温度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0045】
マスタシリンダ圧センサ72は、マスタシリンダ51のブレーキ液の圧力であるマスタシリンダ圧を検出し、検出結果を出力する。マスタシリンダ圧センサ72が、マスタシリンダ圧に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。図3の例では、マスタシリンダ圧センサ72は、前輪制動機構31及び後輪制動機構32の各々に設けられており、各マスタシリンダ圧センサ72は、前輪制動機構31のマスタシリンダ圧、及び、後輪制動機構32のマスタシリンダ圧をそれぞれ検出する。
【0046】
上記では、図3を参照して、ブレーキシステム10について説明したが、図3の例はあくまでも一例に過ぎず、ブレーキシステム10の構成は図3の例に限定されない。例えば、マスタシリンダ51のブレーキ液を副流路56に供給する供給流路がさらに設けられていてもよい。また、前輪制動機構31及び後輪制動機構32の一方が省略されていてもよい。
【0047】
<液圧制御ユニットの動作>
図4及び図5を参照して、本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット12の動作について説明する。
【0048】
上述したように、本実施形態では、制御装置20の制御部22は、アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動しない第1モードと、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動する第2モードとを切り替えて実行することができる。それにより、後述されるように、モータ65の稼働を抑制した上で、アキュムレータ63の大型化を抑制することができる。以下、アンチロックブレーキ制御における制御モードの設定に関する処理として、制御装置20が行う第1処理及び第2処理をこの順に説明する。
【0049】
図4は、制御装置20が行う第1処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4におけるステップS101は、図4に示される処理フローの開始に対応する。図4におけるステップS106は、図4に示される処理フローの終了に対応する。
【0050】
図4に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の非実行時に実行される。例えば、図4に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の非実行時に予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。
【0051】
図4に示される処理フローが開始されると、ステップS102において、取得部21は、アキュムレータ63の消費に関する情報である消費情報を取得する。アキュムレータ63の消費とは、アキュムレータ63においてブレーキ液を溜めることができる空き容量が、アキュムレータ63にブレーキ液が溜まることによって消費されることを意味する。
【0052】
例えば、取得部21は、消費情報として、アキュムレータ63の現在の消費状態に関する情報を取得する。また、取得部21は、消費情報として、アキュムレータ63の将来の消費状態に関する情報を取得してもよい。アキュムレータ63の消費状態は、現在又は将来のある時点においてアキュムレータ63の消費がどの程度進行しているのかの状態を意味し、例えば、アキュムレータ63においてブレーキ液を溜めることができる最大容量に対する実際にブレーキ液を溜めることができる容量の割合等によって表現され得る。アキュムレータ63の将来の消費状態は、アキュムレータ63の消費が今後においてどの程度進行しやすいかの状態に相当し得る。なお、消費情報の詳細については、後述する。
【0053】
ステップS102の次に、ステップS103において、制御部22は、消費情報に基づいて、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えているか否かを判定する。ステップS103の基準は、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65を駆動しないとアキュムレータ63の容量が消費しつくされると想定される程度にアキュムレータ63の消費が進行しているか否かを判断し得るように設定される。具体的には、ステップS103の基準は、アンチロックブレーキ制御の実行中においてモータ65を駆動しない場合にアキュムレータ63の容量が消費しつくされる可能性が所定の可能性を超えているか否かを誤判定することなく精度良く判断し得るように設定される。つまり、ステップS103の基準は、アンチロックブレーキ制御の実行中においてモータ65を駆動しない場合にアキュムレータ63の容量が消費しつくされる可能性が所定の可能性となる進行度合いに相当する。
【0054】
現在におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えている場合、アンチロックブレーキ制御が今後実行された際に、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65を駆動しないとアキュムレータ63の容量が消費しつくされると想定される程度にアキュムレータ63の消費が現在既に進行していると判断できる。また、将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えている場合、アンチロックブレーキ制御が今後実行された際に、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65を駆動しないとアキュムレータ63の容量が消費しつくされると想定される程度にアキュムレータ63の消費が進行しやすい状況であると判断できる。
【0055】
現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないと判定された場合(ステップS103/NO)、ステップS104に進み、制御部22は、アンチロックブレーキ制御における制御モードを第1モードに設定する。一方、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていると判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS105に進み、制御部22は、アンチロックブレーキ制御における制御モードを第2モードに設定する。ステップS104又はステップS105の次に、図4に示される処理フローは終了する。
【0056】
第1モードは、上述したように、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動しない制御モードである。具体的には、制御部22は、制御モードが第1モードに設定されている場合、アンチロックブレーキ制御の減圧フェーズにおいて、込め弁61を閉状態にして弛め弁62を開状態にする。ここで、制御部22は、第1モードにおいて、減圧フェーズでモータ65を駆動しない。第1モードでは、ブレーキ操作が解除される時点よりも前(つまり、一連のアンチロックブレーキ制御が終了する時点よりも前)においてはアキュムレータ63に溜まっているブレーキ液が副流路56に戻されず、ブレーキ操作が解除された場合にアキュムレータ63に溜まっているブレーキ液が副流路56に戻される。つまり、第1モードでは、一連のアンチロックブレーキ制御において、減圧フェーズが行われる度に、アキュムレータ63にブレーキ液が溜まり、アキュムレータ63の消費が進行する。
【0057】
なお、アキュムレータ63には、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液を副流路56側に付勢するバネ等の付勢部材が設けられている。そして、第1モードにおいて、ブレーキ操作が解除されると、アキュムレータ63内に作用する圧力が大気圧程度まで下がり、ポンプ64が駆動されなくても付勢部材の復元力によって、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液が副流路56に戻される。
【0058】
図3のブレーキシステム10では、制御部22は、第1モードにおいて、ポンプ64の内部を通して(具体的には、副流路56のうちポンプ64が配置される部分を通過して)アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液を逃がす。ただし、ブレーキシステム10において、図3の例と異なり、副流路56におけるポンプ64より上流側と、副流路56におけるポンプ64より下流側とを接続し、ポンプ64を迂回するバイパス流路が設けられる場合、制御部22は、第1モードにおいて、ポンプ64を迂回し、上記のバイパス流路を通してアキュムレータ63に溜まっているブレーキ液を逃がしてもよい。
【0059】
第2モードは、上述したように、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動する制御モードである。具体的には、制御部22は、制御モードが第2モードに設定されている場合、アンチロックブレーキ制御の減圧フェーズにおいて、込め弁61を閉状態にして弛め弁62を開状態にする。ここで、制御部22は、第2モードにおいて、減圧フェーズでモータ65を駆動する。第2モードでは、ブレーキ操作が解除されなくても(つまり、一連のアンチロックブレーキ制御が終了しなくても)、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液がポンプ64により副流路56に戻される。つまり、一連のアンチロックブレーキ制御において、各減圧フェーズにおいて、ホイールシリンダ54からアキュムレータ63にブレーキ液が流れ込んだ後に、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液がポンプ64によって掻き出される。ゆえに、アキュムレータ63の消費が抑制される。
【0060】
図4の第1処理では、上述したように、制御部22は、取得部21により取得される消費情報に基づいて制御モードを切り替える。
【0061】
具体的には、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていない場合、制御部22は、制御モードを第1モードに切り替える。この場合には、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65を駆動しなくてもアキュムレータ63の容量が消費しつくされる可能性が低い。ゆえに、制御モードを第1モードに切り替え、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動しないことによって、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65が不要に稼働されることを抑制できる。
【0062】
一方、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えている場合、制御部22は、制御モードを第2モードに切り替える。この場合には、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65を駆動しないとアキュムレータ63の容量が消費しつくされる可能性が高い。ゆえに、制御モードを第2モードに切り替え、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動することによって、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液をポンプ64により副流路56に戻すことができるので、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。制御モードとして第2モードを利用することによって、アキュムレータ63の大型化を抑制することもできる。
【0063】
上記のように、図4の第1処理では、アキュムレータ63の消費の進行度合いを考慮して制御モードの切り替えが行われる。そして、図4の第1処理によれば、上述したように、モータ65の稼働を抑制した上で、アキュムレータ63の大型化を抑制することができる。
【0064】
上述したように、図4に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の非実行時に実行される。そして、図4に示される処理フローによって設定されている制御モードでアンチロックブレーキ制御が開始される。
【0065】
例えば、図4に示される処理フローによって制御モードが第1モードに設定されている場合、制御部22は、制御モードが第1モードに設定されている状態でアンチロックブレーキ制御を開始する。それにより、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないことがアンチロックブレーキ制御の開始時点で想定されている場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65が不要に稼働されることを抑制できる。
【0066】
一方、図4に示される処理フローによって制御モードが第2モードに設定されている場合、制御部22は、制御モードが第2モードに設定されている状態でアンチロックブレーキ制御を開始する。それにより、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていることがアンチロックブレーキ制御の開始時点で想定されている場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。
【0067】
ただし、図4に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の実行中に実行されてもよい。その場合、例えば、図4に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の実行中に予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。そして、一連のアンチロックブレーキ制御の実行中に、設定されている制御モードが図4に示される処理フローによって変更された場合、実行されている制御モードが切り替えられる。
【0068】
例えば、一連のアンチロックブレーキ制御の実行中に、図4に示される処理フローによって制御モードが第2モードに設定されている状態から制御モードが第1モードに設定されている状態に変更された場合、制御部22は、実行されている制御モードを第2モードから第1モードに切り替える。それにより、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないことがアンチロックブレーキ制御の開始後に想定されるようになった場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65が不要に稼働されることを抑制できる。
【0069】
一方、一連のアンチロックブレーキ制御の実行中に、図4に示される処理フローによって制御モードが第1モードに設定されている状態から制御モードが第2モードに設定されている状態に変更された場合、制御部22は、実行されている制御モードを第1モードから第2モードに切り替える。それにより、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていることがアンチロックブレーキ制御の開始後に想定されるようになった場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。
【0070】
ここで、ステップS102において取得部21により取得される消費情報の詳細について説明する。取得部21は、各種情報に基づいて、消費情報を取得できる。具体的には、取得部21は、各種情報に基づいて、アキュムレータ63の現在又は将来の消費状態に関する情報を消費情報として推定できる。
【0071】
取得部21は、例えば、鞍乗り型車両1の車両状態に関する情報である車両状態情報に基づいて消費情報を取得してもよい。車両状態情報は、各種情報を含み得る。
【0072】
車両状態情報としては、例えば、鞍乗り型車両1の減速状態に関する情報である減速状態情報が挙げられる。減速状態情報は、例えば、鞍乗り型車両1の減速度に換算可能な値の情報であってもよく、鞍乗り型車両1の減速度自体の値を示す情報であってもよく、それらの値の程度が数段階で表現されたラフな情報であってもよい。例えば、取得部21は、マスタシリンダ圧センサ72により検出されるマスタシリンダ圧を減速状態情報として取得してもよい。なお、取得部21は、ブレーキ操作部の操作量に基づいてマスタシリンダ圧を推定してもよく、当該操作量自体を減速状態情報として取得してもよい。また、例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1の減速度を減速状態情報として取得してもよい。なお、取得部21は、例えば、前輪車輪速センサ16及び後輪車輪速センサ17の検出結果に基づいて、鞍乗り型車両1の減速度を取得し得る。
【0073】
例えば、マスタシリンダ圧が基準値よりも低い場合、減圧フェーズにおけるホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力の低下量が小さくなりやすいので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないと判定して、制御モードを第1モードに切り替える。一方、マスタシリンダ圧が基準値よりも高い場合、減圧フェーズにおけるホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力の低下量が大きくなりやすいので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていると判定して、制御モードを第2モードに切り替える。
【0074】
なお、後述するモータ65の負荷を考慮して制御モードを切り替える観点等の他の観点を加味し、制御部22は、マスタシリンダ圧が基準値よりも低い場合に制御モードを第2モードに切り替え、マスタシリンダ圧が基準値よりも高い場合に制御モードを第1モードに切り替えてもよい。
【0075】
なお、マスタシリンダ圧が基準値より低いか否かに応じて制御モードを切り替える例と同様に、制御部22は、例えば、ブレーキ操作部の操作量、又は、鞍乗り型車両1の減速度が基準値より低いか否かに応じて制御モードを切り替えてもよい。
【0076】
また、車両状態情報としては、例えば、鞍乗り型車両1の速度状態に関する情報である速度状態情報が挙げられる。速度状態情報は、例えば、鞍乗り型車両1の速度自体の値を示す情報であってもよく、鞍乗り型車両1の速度に換算可能な値の情報であってもよく、それらの値の程度が数段階で表現されたラフな情報であってもよい。例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1の速度を速度状態情報として取得してもよい。なお、取得部21は、例えば、前輪車輪速センサ16及び後輪車輪速センサ17の検出結果に基づいて、鞍乗り型車両1の速度を取得し得る。
【0077】
例えば、鞍乗り型車両1の速度が基準値よりも低い場合、制動距離が短くなりやすいので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないと判定して、制御モードを第1モードに切り替える。一方、鞍乗り型車両1の速度が基準値よりも高い場合、制動距離が長くなりやすいので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていると判定して、制御モードを第2モードに切り替える。
【0078】
なお、後述するモータ65の負荷を考慮して制御モードを切り替える観点等の他の観点を加味し、制御部22は、鞍乗り型車両1の速度が基準値よりも低い場合に制御モードを第2モードに切り替え、鞍乗り型車両1の速度が基準値よりも高い場合に制御モードを第1モードに切り替えてもよい。
【0079】
また、車両状態情報としては、例えば、鞍乗り型車両1の姿勢状態に関する情報である姿勢状態情報が挙げられる。姿勢状態情報は、例えば、鞍乗り型車両1のリーン角自体の値を示す情報であってもよく、鞍乗り型車両1のリーン角に換算可能な値の情報であってもよく、それらの値の程度が数段階で表現されたラフな情報であってもよい。例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1のリーン角を姿勢状態情報として取得してもよい。なお、取得部21は、例えば、慣性計測装置15の検出結果に基づいて、鞍乗り型車両1のリーン角を取得し得る。
【0080】
例えば、鞍乗り型車両1のリーン角が基準値よりも小さい場合、鞍乗り型車両1の姿勢が安定しており、減圧フェーズにおけるホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力の低下量が小さくなりやすいことがあるので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないと判定して、制御モードを第1モードに切り替える。一方、鞍乗り型車両1のリーン角が基準値よりも大きい場合、鞍乗り型車両1の姿勢が不安定となっており、減圧フェーズにおけるホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力の低下量が大きくなりやすいことがあるので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていると判定して、制御モードを第2モードに切り替える。
【0081】
なお、後述するモータ65の負荷を考慮して制御モードを切り替える観点等の他の観点を加味し、制御部22は、鞍乗り型車両1のリーン角が基準値よりも小さい場合に制御モードを第2モードに切り替え、鞍乗り型車両1のリーン角が基準値よりも大きい場合に制御モードを第1モードに切り替えてもよい。
【0082】
また、取得部21は、例えば、鞍乗り型車両1の走行する路面状況に関する情報である路面状況情報に基づいて消費情報を取得してもよい。路面状況情報は、各種情報を含み得る。
【0083】
路面状況情報としては、例えば、鞍乗り型車両1の走行する路面の摩擦状況に関する情報である摩擦状況情報が挙げられる。摩擦状況情報は、例えば、路面の摩擦係数が急峻に変化する箇所の有無を示す情報であってもよく、路面の摩擦係数の分布を値によって示す情報であってもよい。例えば、取得部21は、前輪車輪速センサ16及び後輪車輪速センサ17の検出結果に基づいて、鞍乗り型車両1のスリップ率を取得し、スリップ率の時間経過に伴う変化に基づいて、路面の摩擦係数が急峻に変化する箇所の有無を判定し得る。スリップ率は、車速と車輪速との差を車速で除算して得られる値である。路面の摩擦係数が急峻に変化する箇所としては、例えば、凍結していない路面と凍結している路面との境界等が挙げられる。
【0084】
例えば、路面の摩擦係数が急峻に変化する箇所が無い場合、減圧フェーズにおけるホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力の低下量が当該箇所の通過に起因して大きくなる現象が生じないので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないと判定して、制御モードを第1モードに切り替える。一方、路面の摩擦係数が急峻に変化する箇所が有る場合、減圧フェーズにおけるホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力の低下量が当該箇所の通過に起因して大きくなる現象が生じるので、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていると判定して、制御モードを第2モードに切り替える。
【0085】
なお、後述するモータ65の負荷を考慮して制御モードを切り替える観点等の他の観点を加味し、制御部22は、路面の摩擦係数が急峻に変化する箇所が無い場合に制御モードを第2モードに切り替え、路面の摩擦係数が急峻に変化する箇所が有る場合に制御モードを第1モードに切り替えてもよい。
【0086】
上記では、消費情報の取得に用いられる各種情報の例を説明した。ただし、消費情報の取得に用いられる情報は、上記の例に限定されない。例えば、消費情報の取得に用いられる情報は、車両状態情報及び路面状況情報以外の情報であってもよい。また、例えば、消費情報の取得に用いられる車両状態情報は、上記で例示した情報以外の情報であってもよい。また、例えば、消費情報の取得に用いられる路面状況情報は、上記で例示した情報以外の情報であってもよい。また、取得部21は、複数種類の情報を用いて消費情報を取得してもよい。例えば、取得部21は、上記で挙げられた例の中から任意に選択した複数種類の情報を併用して消費情報を取得してもよい。
【0087】
また、上記では、取得部21が、各種情報に基づいて、アキュムレータ63の現在又は将来の消費状態に関する情報を消費情報として推定する例を説明した。ただし、取得部21は、アキュムレータ63の消費状態を検出するセンサの検出結果に基づいて、アキュムレータ63の消費状態を示す情報を消費情報として直接取得してもよい。
【0088】
図5は、制御装置20が行う第2処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5におけるステップS201は、図5に示される処理フローの開始に対応する。図5におけるステップS206は、図5に示される処理フローの終了に対応する。
【0089】
図5に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の非実行時に実行される。例えば、図5に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の非実行時に予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。
【0090】
図5に示される処理フローが開始されると、ステップS202において、取得部21は、モータ65の負荷に関する情報である負荷情報を取得する。モータ65の負荷は、モータ65に対して掛かる種々の負荷を含む。モータ65の負荷が高いほど、モータ65の損耗が進みやすく、モータ65の寿命が低下しやすくなる。なお、負荷情報の詳細については、後述する。
【0091】
ステップS202の次に、ステップS203において、制御部22は、負荷情報に基づいて、モータ65の負荷が基準を超えているか否かを判定する。ステップS203の基準は、アンチロックブレーキ制御の実行中に要求される動力をモータ65から出力しにくくなっているか否かを判断し得るように設定される。
【0092】
モータ65の負荷が基準を超えている場合、モータ65の損耗が進みやすく、モータ65の寿命が低下しやすくなっていると判断できる。一方、モータ65の負荷が基準を超えていない場合、モータ65の損耗が進みにくく、モータ65の寿命が低下しにくくなっていると判断できる。
【0093】
モータ65の負荷が基準を超えていると判定された場合(ステップS203/YES)、ステップS204に進み、制御部22は、アンチロックブレーキ制御における制御モードを第1モードに設定する。一方、モータ65の負荷が基準を超えていないと判定された場合(ステップS203/NO)、ステップS205に進み、制御部22は、アンチロックブレーキ制御における制御モードを第2モードに設定する。ステップS204又はステップS205の次に、図5に示される処理フローは終了する。
【0094】
図5の第2処理では、上述したように、制御部22は、取得部21により取得される負荷情報に基づいて制御モードを切り替える。
【0095】
具体的には、モータ65の負荷が基準を超えている場合、制御部22は、制御モードを第1モードに切り替える。この場合には、モータ65の損耗が進みやすく、モータ65の寿命が低下しやすくなっていると判断できる。ゆえに、制御モードを第1モードに切り替え、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動しないことによって、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65の稼働を抑制でき、負荷によるモータ65の損耗を抑制できる。
【0096】
一方、モータ65の負荷が基準を超えていない場合、制御部22は、制御モードを第2モードに切り替える。この場合には、モータ65の損耗が進みにくく、モータ65の寿命が低下しにくくなっていると判断できる。ゆえに、制御モードを第2モードに切り替え、減圧フェーズにおいてモータ65を駆動することによって、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液をポンプ64により副流路56に戻すことができるので、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。制御モードとして第2モードを利用することによって、アキュムレータ63の大型化を抑制することもできる。
【0097】
上記のように、図5の第2処理では、モータ65の負荷を考慮して制御モードの切り替えが行われる。そして、図5の第2処理によれば、上述したように、モータ65の稼働を抑制した上で、アキュムレータ63の大型化を抑制することができる。
【0098】
上述したように、図5に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の非実行時に実行される。そして、図5に示される処理フローによって設定されている制御モードでアンチロックブレーキ制御が開始される。
【0099】
例えば、図5に示される処理フローによって制御モードが第1モードに設定されている場合、制御部22は、制御モードが第1モードに設定されている状態でアンチロックブレーキ制御を開始する。それにより、モータ65の負荷が基準を超えていることがアンチロックブレーキ制御の開始時点で想定されている場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65の稼働を抑制でき、負荷によるモータ65の損耗を抑制できる。
【0100】
一方、図5に示される処理フローによって制御モードが第2モードに設定されている場合、制御部22は、制御モードが第2モードに設定されている状態でアンチロックブレーキ制御を開始する。それにより、モータ65の負荷が基準を超えていないことがアンチロックブレーキ制御の開始時点で想定されている場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。
【0101】
ただし、図5に示される処理フローは、図4に示される処理フローと同様に、アンチロックブレーキ制御の実行中に実行されてもよい。その場合、例えば、図5に示される処理フローは、アンチロックブレーキ制御の実行中に予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。そして、一連のアンチロックブレーキ制御の実行中に、設定されている制御モードが図5に示される処理フローによって変更された場合、実行されている制御モードが切り替えられる。
【0102】
例えば、一連のアンチロックブレーキ制御の実行中に、図5に示される処理フローによって制御モードが第2モードに設定されている状態から制御モードが第1モードに設定されている状態に変更された場合、制御部22は、実行されている制御モードを第2モードから第1モードに切り替える。それにより、モータ65の負荷が基準を超えていることがアンチロックブレーキ制御の開始後に想定されるようになった場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65の稼働を抑制でき、負荷によるモータ65の損耗を抑制できる。
【0103】
一方、一連のアンチロックブレーキ制御の実行中に、図5に示される処理フローによって制御モードが第1モードに設定されている状態から制御モードが第2モードに設定されている状態に変更された場合、制御部22は、実行されている制御モードを第1モードから第2モードに切り替える。それにより、モータ65の負荷が基準を超えていないことがアンチロックブレーキ制御の開始後に想定されるようになった場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。
【0104】
ここで、ステップS202において取得部21により取得される負荷情報の詳細について説明する。取得部21は、各種情報に基づいて、負荷情報を取得し得る。
【0105】
取得部21は、例えば、モータ65の電源13に関する電源情報に基づいて負荷情報を取得してもよい。電源情報は、例えば、電源13の電圧自体の値を示す情報であってもよく、電源13の電圧に換算可能な値の情報であってもよく、それらの値の程度が数段階で表現されたラフな情報であってもよい。例えば、取得部21は、電圧センサ14により検出される電源13の電圧を電源情報として取得してもよい。なお、取得部21は、電源13の電圧に関する情報以外の情報(例えば、電源13の故障の有無を示す情報等)を電源情報として取得してもよい。
【0106】
例えば、電源13の電圧が基準値よりも低い場合、制御部22は、モータ65の負荷が基準を超えていると判定して、制御モードを第1モードに切り替える。一方、電源13の電圧が基準値よりも高い場合、制御部22は、モータ65の負荷が基準を超えていないと判定して、制御モードを第2モードに切り替える。
【0107】
なお、上述したアキュムレータ63の消費の進行度合いを考慮して制御モードを切り替える観点等の他の観点を加味し、制御部22は、電源13の電圧が基準値よりも低い場合に制御モードを第2モードに切り替え、電源13の電圧が基準値よりも高い場合に制御モードを第1モードに切り替えてもよい。
【0108】
また、取得部21は、例えば、モータ65の温度に関する温度情報に基づいて負荷情報を取得してもよい。温度情報は、例えば、モータ65の温度自体の値を示す情報であってもよく、モータ65の温度に換算可能な値の情報であってもよく、それらの値の程度が数段階で表現されたラフな情報であってもよい。例えば、取得部21は、温度センサ71により検出されるモータ65の温度を温度情報として取得してもよい。なお、取得部21は、モータ65の周囲の部品又は雰囲気の温度を温度情報として取得してもよい。例えば、マスタシリンダ圧センサ72が液圧制御ユニット12全体の温度を検出可能である場合、取得部21は、マスタシリンダ圧センサ72により検出される温度を温度情報として取得してもよい。また、取得部21は、モータ65に流れる電流の電流値の推移に基づいて、モータ65の温度が急激に上昇したか否か等のモータ65の温度変化を示す情報を温度情報として取得してもよい。
【0109】
例えば、モータ65の温度が基準値よりも高い場合、制御部22は、モータ65の負荷が基準を超えていると判定して、制御モードを第1モードに切り替える。一方、モータ65の温度が基準値よりも低い場合、制御部22は、モータ65の負荷が基準を超えていないと判定して、制御モードを第2モードに切り替える。
【0110】
なお、上述したアキュムレータ63の消費の進行度合いを考慮して制御モードを切り替える観点等の他の観点を加味し、制御部22は、モータ65の温度が基準値よりも高い場合に制御モードを第2モードに切り替え、モータ65の温度が基準値よりも低い場合に制御モードを第1モードに切り替えてもよい。
【0111】
また、取得部21は、例えば、鞍乗り型車両1の減速状態に関する減速状態情報に基づいて負荷情報を取得してもよい。上述したように、減速状態情報は、例えば、鞍乗り型車両1の減速度に換算可能な値の情報であってもよく、鞍乗り型車両1の減速度自体の値を示す情報であってもよく、それらの値の程度が数段階で表現されたラフな情報であってもよい。例えば、取得部21は、マスタシリンダ圧センサ72により検出されるマスタシリンダ圧を減速状態情報として取得してもよい。なお、取得部21は、ブレーキ操作部の操作量に基づいてマスタシリンダ圧を推定してもよく、当該操作量自体を減速状態情報として取得してもよい。また、例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1の減速度を減速状態情報として取得してもよい。なお、取得部21は、例えば、前輪車輪速センサ16及び後輪車輪速センサ17の検出結果に基づいて、鞍乗り型車両1の減速度を取得し得る。
【0112】
例えば、マスタシリンダ圧が基準値よりも高い場合、制御部22は、モータ65の負荷が基準を超えていると判定して、制御モードを第1モードに切り替える。一方、マスタシリンダ圧が基準値よりも低い場合、制御部22は、モータ65の負荷が基準を超えていないと判定して、制御モードを第2モードに切り替える。
【0113】
なお、上述したアキュムレータ63の消費の進行度合いを考慮して制御モードを切り替える観点等の他の観点を加味し、制御部22は、マスタシリンダ圧が基準値よりも高い場合に制御モードを第2モードに切り替え、マスタシリンダ圧が基準値よりも低い場合に制御モードを第1モードに切り替えてもよい。
【0114】
上記では、負荷情報の取得に用いられる各種情報の例を説明した。ただし、負荷情報の取得に用いられる情報は、上記の例に限定されない。例えば、負荷情報の取得に用いられる情報は、電源情報、温度情報及び減速状態情報以外の情報であってもよい。また、例えば、負荷情報の取得に用いられる電源情報は、上記で例示した情報以外の情報であってもよい。また、例えば、負荷情報の取得に用いられる温度情報は、上記で例示した情報以外の情報であってもよい。また、例えば、負荷情報の取得に用いられる減速状態情報は、上記で例示した情報以外の情報であってもよい。また、取得部21は、複数種類の情報を用いて負荷情報を取得してもよい。例えば、取得部21は、上記で挙げられた例の中から任意に選択した複数種類の情報を併用して負荷情報を取得してもよい。
【0115】
また、上記では、消費情報に基づいて制御モードが切り替えられる第1処理と、負荷情報に基づいて制御モードが切り替えられる第2処理とをそれぞれ説明した。ただし、制御部22は、消費情報及び負荷情報の両方を用いて制御モードを切り替えてもよい。この場合において、制御部22は、アキュムレータ63の消費の進行度合い、及び、モータ65の負荷の両方を考慮して制御モードを切り替えてもよい。例えば、制御部22は、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えているか否か、及び、モータ65の負荷が基準を超えているか否かの両方に基づいて、制御モードを切り替えてもよい。なお、制御部22は、消費情報及び負荷情報以外の情報を用いて制御モードを切り替えてもよい。
【0116】
<液圧制御ユニットの効果>
本発明の実施形態に係る液圧制御ユニット12の効果について説明する。
【0117】
液圧制御ユニット12は、マスタシリンダ51とホイールシリンダ54とを連通するブレーキ液の主流路55と、主流路55に設けられる込め弁61と、ホイールシリンダ54のブレーキ液を逃がす副流路56と、副流路56に設けられる弛め弁62と、副流路56のうち弛め弁62よりも下流側に設けられるアキュムレータ63と、鞍乗り型車両1のライダーによるブレーキ操作時にアンチロックブレーキ制御を実行する制御装置20と、を備える。
【0118】
制御装置20は、アンチロックブレーキ制御における制御モードとして、ホイールシリンダ54のブレーキ液の圧力を減少させる減圧フェーズで込め弁61を閉状態にして弛め弁62を開状態にし、ブレーキ操作が解除される時点よりも前においてはアキュムレータ63に溜まっているブレーキ液が副流路56に戻されず、ブレーキ操作が解除された場合にアキュムレータ63に溜まっているブレーキ液が副流路56に戻される第1モードを実行する制御部22を含む。
【0119】
ここで、液圧制御ユニット12は、副流路56のうちアキュムレータ63よりも下流側に設けられるポンプ64と、ポンプ64を駆動するモータ65と、をさらに備える。また、第1モードでは、制御部22がモータ65を駆動せずに、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液が副流路56に戻される。また、制御部22は、制御モードとして、第1モードに替えて、減圧フェーズで込め弁61を閉状態にして弛め弁62を開状態にしてモータ65を駆動し、ブレーキ操作が解除されなくてもアキュムレータ63に溜まっているブレーキ液がポンプ64により副流路56に戻される第2モードを実行する。
【0120】
それにより、制御モードとしてモータ65が駆動される第2モードを実行することによって、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液をポンプ64により副流路56に戻すことができるので、アキュムレータ63の大型化を抑制できる。また、制御モードとして第2モードのみを実行するのではなく第1モードも実行することによって、モータ65の稼働も抑制できる。ゆえに、モータ65の寿命の低下を抑制でき、モータ65の高スペック化も不要とすることができる。上記のように、液圧制御ユニット12によれば、アキュムレータ63の大型化を抑制することができる。
【0121】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、制御部22は、第1モードにおいて、ポンプ64を通して(具体的には、副流路56のうちポンプ64が配置される部分の流路を通過して)アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液を逃がす。それにより、第1モードにおいて、ブレーキ操作が解除された場合に、アキュムレータ63に溜まっているブレーキ液を副流路56に戻すことができる。
【0122】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、制御部22は、制御モードが第2モードに設定されている状態でアンチロックブレーキ制御を開始する。それにより、例えば、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていること、あるいは、モータ65の負荷が基準を超えていないことがアンチロックブレーキ制御の開始時点で想定されている場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。
【0123】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、制御部22は、制御モードが第1モードに設定されている状態でアンチロックブレーキ制御を開始し、アンチロックブレーキ制御の開始後、かつ、ブレーキ操作が解除される時点よりも前に、制御モードを第1モードから第2モードに切り替える。それにより、例えば、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていること、あるいは、モータ65の負荷が基準を超えていないことがアンチロックブレーキ制御の開始後に想定されるようになった場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にアキュムレータ63の容量が消費しつくされることを抑制できる。
【0124】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、制御部22は、アンチロックブレーキ制御の開始後、かつ、ブレーキ操作が解除される時点よりも前に、制御モードを第2モードから第1モードに切り替える。それにより、例えば、現在又は将来におけるアキュムレータ63の消費の進行度合いが基準を超えていないこと、あるいは、モータ65の負荷が基準を超えていることがアンチロックブレーキ制御の開始後に想定されるようになった場合において、アンチロックブレーキ制御の実行中にモータ65が稼働されることを抑制できる。
【0125】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、制御装置20は、アキュムレータ63の消費に関する情報である消費情報を取得する取得部21を備え、制御部22は、取得部21により取得される消費情報に基づいて制御モードを切り替える。それにより、例えば、上述した第1処理のように、アキュムレータ63の消費の進行度合いを考慮して制御モードを切り替えることができる。
【0126】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、取得部21は、消費情報として、アキュムレータ63の現在の消費状態に関する情報を取得する。それにより、アキュムレータ63の現在の消費状態に基づいて、アキュムレータ63の消費の進行度合いを考慮して制御モードを切り替えることができる。
【0127】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、取得部21は、消費情報として、アキュムレータ63の将来の消費状態に関する情報を取得する。それにより、アキュムレータ63の将来の消費状態に基づいて、アキュムレータ63の消費の進行度合いを考慮して制御モードを切り替えることができる。
【0128】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、取得部21は、鞍乗り型車両1の車両状態に関する情報である車両状態情報に基づいて消費情報を取得する。それにより、鞍乗り型車両1の車両状態に基づいて、消費情報を取得することができる。
【0129】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、車両状態情報は、鞍乗り型車両1の減速状態に関する情報である減速状態情報を含む。それにより、鞍乗り型車両1の減速状態に基づいて、消費情報を取得することができる。
【0130】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、車両状態情報は、鞍乗り型車両1の速度状態に関する情報である速度状態情報を含む。それにより、鞍乗り型車両1の速度状態に基づいて、消費情報を取得することができる。
【0131】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、車両状態情報は、鞍乗り型車両1の姿勢状態に関する情報である姿勢状態情報を含む。それにより、鞍乗り型車両1の姿勢状態に基づいて、消費情報を取得することができる。
【0132】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、取得部21は、鞍乗り型車両1の走行する路面状況に関する情報である路面状況情報に基づいて消費情報を取得する。それにより、鞍乗り型車両1の走行する路面状況に基づいて、消費情報を取得することができる。
【0133】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、制御装置20は、モータ65の負荷に関する情報である負荷情報を取得する取得部21を備え、制御部22は、取得部21により取得される負荷情報に基づいて制御モードを切り替える。それにより、例えば、上述した第2処理のように、モータ65の負荷に基づいて制御モードを切り替えることができる。
【0134】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、取得部21は、モータ65の電源13に関する電源情報に基づいて負荷情報を取得する。それにより、モータ65の電源13の状態に基づいて、負荷情報を取得することができる。
【0135】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、取得部21は、モータ65の温度に関する温度情報に基づいて負荷情報を取得する。それにより、モータ65の温度に基づいて、負荷情報を取得することができる。
【0136】
好ましくは、液圧制御ユニット12において、取得部21は、鞍乗り型車両1の減速状態に関する減速状態情報に基づいて負荷情報を取得する。それにより、鞍乗り型車両1の減速状態に基づいて、負荷情報を取得することができる。
【0137】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 鞍乗り型車両、2 前輪、2a ロータ、3 後輪、3a ロータ、10 ブレーキシステム、11 エンジン、12 液圧制御ユニット、12a 基体、13 電源、14 電圧センサ、15 慣性計測装置、16 前輪車輪速センサ、17 後輪車輪速センサ、20 制御装置、21 取得部、22 制御部、31 前輪制動機構、32 後輪制動機構、41 第1ブレーキ操作部、42 第2ブレーキ操作部、51 マスタシリンダ、52 リザーバ、53 ブレーキキャリパ、54 ホイールシリンダ、55 主流路、56 副流路、61 込め弁、62 弛め弁、63 アキュムレータ、64 ポンプ、65 モータ、71 温度センサ、72 マスタシリンダ圧センサ。
図1
図2
図3
図4
図5