(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154128
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】インクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20241023BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241023BHJP
B05C 15/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B05C15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067780
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 幸也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英博
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 謙太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA23
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB35
2C056EB46
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC77
2C056FB05
2C056HA29
2C056HA60
4F041AA02
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F042DE01
4F042DE03
4F042DE09
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドとステージが相対移動することにより印刷ヘッドとステージの間の領域に生じる風の発生を防ぐとともに、その風による乱流の発生を防ぐことより、インクジェットが吐出したインクを精度よく印刷対象へ着弾することができるインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法を提供する。
【解決手段】インクジェット装置は、印刷対象物を載置するステージと、インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを内部に配置するブースと、前記ステージと前記インクジェットヘッドが相対移動によって生じる風であって、前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制する風抑制部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物を載置するステージと、
インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを内部に配置するブースと、
前記ステージと前記インクジェットヘッドが相対移動によって生じる風であって、前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制する風抑制部と、
を備える、インクジェット装置。
【請求項2】
前記風抑制部は、前記ステージが相対移動する方向に伸縮する伸縮構造を備える、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項3】
前記伸縮構造は、蛇腹構造である請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項4】
前記伸縮構造は、前記ブースの外部に、前記伸縮構造内部の空気を排出する排気部を備える、請求項2に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記風抑制部は、前記相対移動する方向にある前記ステージの側面の前記インクジェットヘッド側の端部にベルトを備える、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項6】
前記ベルトは、前記ブース内に配置されている、請求項5に記載のインクジェット装置。
【請求項7】
前記ベルトは、下方向に開口した前記ブースの開口部を覆うように配置されている、請求項5に記載のインクジェット装置。
【請求項8】
前記風抑制部は、前記ステージが前記相対移動する方向にある前記ブースの第1の壁面に排気ファンを備え、前記ブースの第2の壁面に給気口を備える、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項9】
前記ステージが前記インクジェットヘッドに対して移動する、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項10】
前記インクジェットヘッドが前記ステージに対して移動する、請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項11】
印刷対象物を載置するステージと、
インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを内部に配置するブースと、
前記ステージと前記インクジェットヘッドとが相対移動する際に前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に発生する風による前記インクの着弾位置のずれを補正する制御装置と、
を備える、インクジェット装置。
【請求項12】
前記制御装置は、印刷回数によって異なる補正量の情報を記憶し、当該情報に基づいて前記インクの着弾位置のずれを補正する請求項11に記載のインクジェット装置。
【請求項13】
印刷対象物を載置するステージとインクを吐出するインクジェットヘッドが相対移動によって生じる風であって、前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制し、
前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させる、
インクジェット装置の制御方法。
【請求項14】
インクを吐出するインクジェットヘッドがブースの内部に配置されており、
印刷対象物を載置するステージと前記インクジェットヘッドとが相対移動する際に前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に発生する風による前記インクの着弾位置のずれを補正し、
補正された着弾位置に前記インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させる、
インクジェット装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスをオンデマンドのインクジェットで形成するプリンテッドエレクトロニクスが拡がりを見せている。電子デバイスの作製にはドライルームや窒素(N2)ブースのように特殊環境でのプロセスを必要とするものが多い。このような特殊環境を維持することはコストアップの要因になるため、電子デバイスを作製する環境は可能な限り体積を小さくすることが好ましい。
【0003】
一方、生産性向上の要求からインクジェットによる印刷速度は高速化を求められ、印刷ヘッドと印刷対象物の印刷時における相対速度も高速となる。この高速化は印刷ヘッドと印刷対象物の間に風を起こすことになり、印刷対象物へのインクの着弾がずれ、印刷状態の安定を難しくする。従来、インクジェットヘッドとステージの構造によって印刷時に発生する風を乱流にしない方法は存在している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブースなどの特殊環境がさらに小体積化することにより、この風が印刷状態に及ぼす影響が大きくなっており、従来の方法ではインクジェットヘッドとステージ間の領域に発生する風を防ぐことは出来ず、さらにはブースの壁に反射した風による乱流を防ぐことはできない。
【0006】
インクジェットヘッドとステージの間の領域において、このような風及び乱流の影響を受けにくくするためには、インクジェットヘッドとステージとの間の距離を小さくする必要があるが、その距離を小さくするにも限界がある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、インクジェットヘッドが吐出したインクを精度よく印刷対象物へ着弾させることができるインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかるインクジェット装置は、印刷対象物を載置するステージと、インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを内部に配置するブースと、前記ステージと前記インクジェットヘッドが相対移動によって生じる風であって、前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制する風抑制部と、を備える。
【0009】
本開示にかかるインクジェット装置は、印刷対象物を載置するステージと、インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドを内部に配置するブースと、前記ステージと前記インクジェットヘッドとが相対移動する際に前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に発生する風による前記インクの着弾位置のずれを補正する制御装置と、を備える。
【0010】
本開示にかかるインクジェット装置の制御方法は、印刷対象物を載置するステージとインクを吐出するインクジェットヘッドが相対移動によって生じる風であって、前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制し、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させる。
【0011】
本開示にかかるインクジェット装置の制御方法は、インクを吐出するインクジェットヘッドがブースの内部に配置されており、印刷対象物を載置するステージと前記インクジェットヘッドとが相対移動する際に前記ステージと前記インクジェットヘッドの間の領域に発生する風による前記インクの着弾位置のずれを補正し、補正された着弾位置に前記インクを吐出して前記印刷対象物に前記インクを着弾させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、インクジェットが吐出したインクを精度よく印刷対象物へ着弾させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態に係るインクジェット装置の基本構成を示す概略側面図である。
【
図2】第2の実施の形態に係るインクジェット装置の基本構成を示す概略側面図である。
【
図3】第3の実施の形態に係るインクジェット装置の基本構成を示す概略側面図である。
【
図4】第4の実施の形態に係るインクジェット装置の基本構成を示す概略側面図である。
【
図5A】ステージの上面に載置された印刷対象物に対して、インクジェットヘッドから吐出したインクの着弾結果を示すグラフである。
【
図5B】ステージの上面に載置された印刷対象物に対して、インクジェットヘッドから吐出したインクの着弾結果を示すグラフである。
【
図5C】ステージの上面に載置された印刷対象物に対して、インクジェットヘッドから吐出したインクの着弾結果を示すグラフである。
【
図5D】ステージの上面に載置された印刷対象物に対して、インクジェットヘッドから吐出したインクの着弾結果を示すグラフである。
【
図6】
図5A~
図5Dのグラフを作成するために用いられた着弾結果のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図を参照して、本開示のインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法を実施するための形態について説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について、添付図を参照して説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るインクジェット装置1の基本構成を示す概略側面図である。第1の実施の形態では、印刷時にステージとインクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を防ぐとともに、インクジェットヘッドの周辺領域に乱流が発生することを防ぐため、蛇腹構造を用いる。
【0016】
インクジェット装置1は、印刷対象物にインクを着弾させることにより、印刷対象物に印刷する。インクジェット装置1は、インクジェットヘッド2、制御装置3、ステージ4、ブース5、蛇腹構造6、6’、及び、排気口7、7’を備える。
【0017】
インクジェットヘッド2は、複数のノズルが設けられ、各ノズルからインクを吐出し、インクの印刷対象物にインクを着弾させる。インクジェットヘッド2は、ブース5の内部に設けられる。複数のノズルは、鉛直方向およびインクジェットヘッド2の移動方向に垂直な方向に一列に並んで配置されている。以下、この方向を、ノズル配列方向と呼ぶ。
【0018】
なお、インクジェット装置1を鉛直方向から見た場合に複列で千鳥状となるよう配置されてもよい。ノズルの数に制限はないが、例えば、200~400個設けられてもよい。
【0019】
制御装置3は、インクジェット装置1に備えられた各部の動作を制御する。例えば、制御装置3は、インクジェットヘッド2に信号を送信し、インクをステージ4上に載せた印刷対象物に向けて吐出するように制御するとともに、ステージ4に信号を送信し、ステージ4を鉛直方向およびノズル配列方向と垂直な方向(
図1の矢印Aの方向)に移動するように制御する。以下、この方向を移動方向と呼ぶ。
【0020】
制御装置3は、例えば、CPUと、CPUを冷却するための冷却装置から構成される。冷却装置には、通常、ファンが用いられる。そして、ファンによりブース5内に不要な風が発生することを防ぐため、制御装置3はブース5の外部に設けられることが望ましい。
【0021】
ステージ4は、その上面に印刷対象物を載置した状態で、移動方向(
図1の矢印Aの方向)に、インクジェットヘッド2に対して往復移動する。言い換えれば、ステージ4はインクジェットヘッド2に対して相対移動可能な構成となっている。
【0022】
ステージ4は、ノズル配列方向に伸びており、インクジェット装置1の上方から見て、ノズル配列方向における幅が、インクジェットヘッド2の両端間(奥行き)の距離よりも大きい形状をしている。そのため、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して往復移動しても、インクジェットヘッド2の両端部付近に乱流が発生することはない。
【0023】
なお、本実施の形態における印刷は、インクジェットヘッド2によるインクの吐出がステージ4が一方向に移動している場合のみに行われる片道印刷であるが、ステージ4が一方向に移動している場合だけではなく、他方向に移動している場合にも行われる往復印刷でもあってもよい。
【0024】
ブース5は、その空間内部を窒素(N2)または乾燥空気等で充填し、その空間内部の温度を制御するため、外部の一般環境と空間内部の環境とを隔離する。ブース5は、例えば、直方体形状をしており、インクジェットヘッド2、ステージ4、及び、蛇腹構造6、6’は、ブース5の内部に配置される。
【0025】
蛇腹構造6、6’は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動する際に、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を抑制する風抑制部である。さらに、蛇腹構造6、6’は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動する際に、ブース5の壁面により反射してステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流を生じさせる風の発生を抑制する。
【0026】
蛇腹構造6は、ステージ4の移動方向に垂直な2つの側面のうち、第1の側面4aに一端が設けられ、他端が第1の側面4aに対向するブース5の壁面に設けられ、ステージ4の移動に伴い伸縮する部材である。
【0027】
蛇腹構造6’は、ステージ4の移動方向に垂直な2つの側面のうち、第2の側面4bに一端が設けられ、他端が第2の側面4bに対向するブース5の壁面に設けられ、ステージ4の移動に伴い伸縮する部材である。
【0028】
また、蛇腹構造6、6’を第1の側面4aおよび第2の側面4bに垂直な方向から見た形状は、その方向から見たステージ4の形状と同じにすることが好ましい。そして、蛇腹構造6、6’は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して往復移動する際に、それぞれ、ステージ4が往復移動する方向に伸縮する(矢印B)。
【0029】
なお、ここでは風及び乱流の発生を抑制する風抑制部として、蛇腹構造6、6’を用いることとしたが、伸縮することが可能な伸縮構造であればよく、例えば、ゴムのような伸縮する材料で風抑制部を構成してもよい。
【0030】
排気口7、7’は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動することにより蛇腹構造6、6’の内部に発生する風を、ブース5の外部に排気する。排気口7は、ステージ4の第1の側面に対向するブース5の壁面に設けられる。排気口7’は、ステージ4の第1の側面に対向するブース5の壁面に設けられる。
【0031】
排気口7、7’の開口面積は、蛇腹構造6、6’の断面積よりも小さいため、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動することにより発生する風は、全て排気口7、7’から排気される。
【0032】
次に、蛇腹構造6、6’が、乱流の発生を防ぐ仕組みについて説明する。インクジェットヘッド2がステージ4上に載せた印刷対象物に向けてインクを吐出する際に、ステージ4は、インクジェットヘッド2に対して矢印Aの方向に移動する。
【0033】
これにより、ステージ4の移動方向側の側面により気体が押され、蛇腹構造6、6’の内部に風が発生する。蛇腹構造6、6’は、ステージ4の動作に追随して矢印Bの方向に伸縮し、蛇腹構造6、6’の内部に発生した風がブース5内に流出することはない。蛇腹構造6、6’の内部に発生した風は、排気口7、7’を通して、外部にそのまま排気される。
【0034】
そのため、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を防ぐとともに、ブース5の内部において発生した風が、ブース5の壁面により反射してステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流を生じさせることを防ぐことが可能となる。
【0035】
本実施の形態では、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動することにより発生する風を、ブース5の外部に排気するため排気口を備えているが、蛇腹構造内部でその風を抑えることが可能であれば、排気口がなくてもよい。その場合、蛇腹構造のブース5側の端部は、インクジェットヘッド2とステージ4の空間における気体の流れに及ぼす影響が少ない位置に接続される。
【0036】
また、本実施の形態では、蛇腹構造6、6’の一端は、ブース5の壁面に直接接続されているが、ブース5の壁面と蛇腹構造6、6’の端部との間に設けられた壁面などに接続される等、直接接続されてなくてもよい。さらに、本実施の形態では、蛇腹構造6、6’の他端は、ステージ4の側面に直接接続されているが、ステージ4の側面と蛇腹構造6、6’の端部との間に設けられたフレームなど、ステージ4と共に移動する部材を介して接続される等、直接接続されてなくてもよい。
【0037】
このように、第1の実施の形態に係るインクジェット装置1およびインクジェット装置1の制御方法によれば、インクジェット装置1によるインクの印刷時に、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域における風及び乱流の発生を蛇腹構造を用いて抑制することができるので、インクジェットヘッド2が吐出したインクを精度よく印刷対象物へ着弾させることが可能となる。
【0038】
(第2の実施の形態)
次に、本開示のインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法の第2の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第2の実施の形態では、印刷時にステージとインクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制するとともに、発生する風によってインクジェットヘッドの周辺領域に乱流が発生することを抑制するため、ベルトを用いる。
【0039】
第2の実施の形態について、添付図を参照して説明する。
図2は、第2の実施の形態に係るインクジェット装置11の基本構成を示す概略側面図である。
【0040】
インクジェット装置11は、印刷対象物にインクを着弾させることにより、印刷対象物に印刷する。インクジェット装置11は、インクジェットヘッド2、制御装置3、ステージ4、ブース5、ベルト12、駆動部13、及び、ローラー14を備える。
【0041】
インクジェットヘッド2は、複数のノズルが設けられ、各ノズルからインクを吐出し、印刷対象物にインクを着弾させる。例えば、複数のノズルは、鉛直方向およびインクジェットヘッド2の移動方向に垂直なノズル配列方向に一列に並んで配置されている。
【0042】
制御装置3は、インクジェット装置11に備えられた各部の動作を制御する。
【0043】
ステージ4は、その上面に印刷対象物を載置した状態で、インクジェットヘッド2に対して、鉛直方向およびノズル配列方向に垂直な移動方向(
図2の矢印Aの方向)に移動する。
【0044】
ブース5は、その空間内部を窒素(N2)または乾燥空気等で充填し、その空間内部の温度を制御するため、外部の一般環境と空間内部の環境とを隔離する。ブース5は、例えば、直方体形状をしており、インクジェットヘッド2、ステージ4、ベルト12、駆動部13、及び、ローラー14は、ブース5の内部に配置される。
【0045】
ベルト12は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動する際に、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を抑制する風抑制部である。さらに、ベルト12は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動する際に、ブース5の壁面により反射してステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流を生じさせる風の発生を抑制する。
【0046】
ベルト12の2つの端部は、ステージ4の移動方向に垂直な2つの側面4a、4bのインクジェットヘッド2側の端部に接続され、ベルト12とステージ4とで輪が形成される。以下、この輪を単にベルト12の輪と呼ぶ。ベルト12は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して往復移動する際に、その動きに合わせてステージ4の移動方向に移動する(矢印C)。
【0047】
ベルト12の幅は、ステージ4の2つの側面4a、4bと同じ幅を有する。そのため、ステージ4が往復移動しても、ステージ4の2つの側面4a、4bに押された気体はベルト12よりもインクジェットヘッド2側に移動することを防止でき、また、ブース5の壁面で反射することも防止できる。
【0048】
駆動部13は、ベルト12の輪の内部の一方側に設けられ、ベルト12を往復移動させる。駆動部13には、例えば、モーターが用いられる。ローラー14は、ベルト12の輪の内部の他方側に設けられ、駆動部13の駆動に合わせてベルト12を往復移動させる。
【0049】
なお、駆動部13は、ベルト12の動きをステージ4の動きに追随させるために補助的に設けられており、ステージ4の駆動力だけでベルト12も往復移動することが可能であれば、駆動部13を必要としない。その場合、ベルト12の両端にローラー14が設けられてもよい。
【0050】
次に、ベルト12が、乱流の発生を防ぐ仕組みについて説明する。インクジェットヘッド2がステージ4上に載せた印刷対象物に向けてインクを吐出する際に、ステージ4は、インクジェットヘッド2に対して矢印Aの方向に移動する。
【0051】
これにより、ステージ4の移動方向側の側面により気体が押され、ベルト12の輪の内部に風が発生する。ベルト12は、ステージ4の動作に追随して矢印Cの方向に移動するが、このようなベルト12の存在により、ベルト12の輪の内部に発生した風がステージ4の上方に回り込むことを防止でき、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を防ぐとともに、ブース5の壁面で反射した風によりステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流が生じることを防ぐことができる。
【0052】
仮に、ベルト12の輪の内部に発生した風が、ベルト12、駆動部13、及び、ローラー14に当たったとしても、それにより発生した乱流は、ベルト12によりインクジェットヘッド2側に届くことはない。
【0053】
なお、本実施の形態では、ベルト12とステージ4で輪を構成することとしたが、輪を構成しなくてもよい。例えば、第1のベルトの一方の端部がステージ4の側面4aのインクジェットヘッド側の端部に接続され、他方の端部がローラー14bに巻き取られるように構成されており、第2のベルトの一方の端部がステージ4の側面4bのインクジェットヘッド側の端部に接続され、他方の端部が駆動部13に巻き取られるように構成されていてもよい。
【0054】
この場合でも、ベルト12の下方で発生した風が、ステージ4の上方に回り込むことを防止でき、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を防ぐとともに、ブース5の壁面で反射した風によりステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流が生じることを防ぐことができる。
【0055】
このように、第2の実施の形態に係るインクジェット装置11およびインクジェット装置11の制御方法によれば、インクジェット装置11による印刷時に、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域における風及び乱流の発生をベルト12を用いて抑制することができるので、インクジェットヘッド2が吐出したインクを精度よく印刷対象物へ着弾することが可能となる。
【0056】
(第3の実施の形態)
次に、本開示のインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法の第3の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する第3の実施の形態においては、第2の実施の形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同じく、印刷時にステージとインクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制するとともに、発生する風によってインクジェットヘッドの周辺領域に風及び乱流が発生することを抑制するため、ベルトを用いるが、ブースの構造が異なる。
【0057】
第3の実施の形態について、添付図を参照して説明する。
図3は、第3の実施の形態に係るインクジェット装置21の基本構成を示す概略側面図である。
【0058】
インクジェット装置21は、印刷対象物にインクを着弾させることにより、印刷対象物に印刷する。インクジェット装置21は、インクジェットヘッド2、制御装置3、ステージ4、ブース22、ベルト12、駆動部13、及び、ローラー14を備える。
【0059】
インクジェットヘッド2は、複数のノズルが設けられ、各ノズルからインクを吐出し、印刷対象物にインクを着弾させる。例えば、複数のノズルは、鉛直方向およびインクジェットヘッド2の移動方向に垂直なノズル配列方向に一列に並んで配置されている。
【0060】
制御装置3は、インクジェット装置21に備えられた各部の動作を制御する。
【0061】
ステージ4は、その上面に印刷対象物を載置した状態で、インクジェットヘッド2に対して、鉛直方向およびノズル配列方向に垂直な移動方向(
図3の矢印Aの方向)に移動する。
【0062】
ブース22は、その空間内部を窒素(N2)、または、乾燥空気等で充填し、その空間内部の温度を制御するため、外部の一般環境と空間内部の環境とを隔離する。ブース22は、第1~第3の実施の形態と異なり、その直方体形状を有するが、ベルト12に対向する部分が開口している。そして、鉛直方向から見ると、ブース22は、その開口面積がベルト12の面積より小さくなっており、ステージ4及びベルト12がブース22の開口部を完全に覆っている。
【0063】
ブース22は、第1~第3の実施の形態のブース5と比較して小さくなっており、ブース22の内部空間の体積を小さくすることができる。
【0064】
そのため、インクジェットヘッド2は、ブース22の内部に配置されているが、制御装置3、ステージ4、ベルト12、駆動部13、及び、ローラー14は、ブース22の外側に配置される。
【0065】
ベルト12は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動する際に、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を抑制する風抑制部である。さらに、ベルト12は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動する際に、ブース5の壁面により反射してステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流を生じさせる風の発生を抑制する。
【0066】
ベルト12の2つの端部は、ステージ4の移動方向に垂直な2つの側面4a、4bのインクジェットヘッド2側の端部に接続され、ベルト12とステージ4とで輪が形成される。以下、この輪を単にベルト12の輪と呼ぶ。ベルト12は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して往復移動する際に、その動きに合わせてステージ4の移動方向に移動する(矢印C)。
【0067】
また、ノズル配列方向におけるベルト12およびステージ4の幅は、ブース22の幅より大きい。また、ブース22の下端部とベルト12およびステージ4の上面の間には、隙間がほとんどない。そのため、ブース22内の気体がブース22の外部に漏れることはほとんどない。
【0068】
駆動部13は、ベルト12の輪の内部の一方側に設けられ、ベルト12を往復移動させる。ローラー14は、ベルト12の輪の内部の他方側に設けられ、駆動部13の駆動に合わせてベルト12を往復移動させる。
【0069】
次に、ベルト12が、乱流の発生を防ぐ仕組みについて説明する。インクジェットヘッド2がステージ4上に載せた印刷対象物に向けてインクを吐出する際に、ステージ4は、インクジェットヘッド2に対して矢印Aの方向に移動する。
【0070】
これにより、ステージ4の移動方向側の側面により気体が押され、ベルト12の輪の内部に風が発生する。ベルト12は、ステージ4の動作に追随して矢印Cの方向に移動するが、このようなベルト12の存在により、ベルト12の輪の内部に発生した風がステージ4の上方に回り込むことを防止でき、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を防ぐとともに、ブース5の壁面で反射した風によりステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流が生じることを防ぐことができる。
【0071】
なお、ブース22の下端部とベルト12およびステージ4の上面の間の隙間から気体が外部に漏れること抑制するため、ブース22の下端部にコロを設け、ベルト12とコロが接触するようブース22を配置してもよい。さらに、ブース22の下端部とベルト12との間にグリースを塗布し、それらの間に隙間がなくなるようにしてもよい。
【0072】
このように、第3の実施の形態に係るインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法によれば、インクジェット装置21による印刷時に、インクジェットヘッド2の周辺領域における風及び乱流の発生をベルト12を用いて抑制することができるので、インクジェットヘッド2が吐出したインクを精度よく印刷対象物へ着弾することが可能となる。
【0073】
さらに、第3の実施の形態に係るインクジェット装置21およびインクジェット装置21の制御方法によれば、ブース22を小型化できる。
【0074】
(第4の実施の形態)
次に、本開示のインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法の第4の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する第4の実施の形態においては、第1の実施の形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第4の実施の形態では、インクジェットヘッドとステージの構造によって印刷時にステージとインクジェットヘッドの間の領域に生じる風の発生を抑制するとともに、発生する風を乱流にしないため、排気ファン及び給気口を用いる。
【0075】
第4の実施の形態について、添付図を参照して説明する。
図4は、第4の実施の形態に係るインクジェット装置31の基本構成を示す概略側面図である。
【0076】
インクジェット装置31は、印刷対象物にインクを着弾させることにより、印刷対象物に印刷する。インクジェット装置31は、インクジェットヘッド2、制御装置3、ステージ4、ブース5、排気ファン32、32’、及び、給気口33、33’を備える。
【0077】
インクジェットヘッド2は、複数のノズルが設けられ、各ノズルからインクを吐出し、印刷対象にインクを着弾させる。例えば、複数のノズルは、鉛直方向およびインクジェットヘッド2の移動方向に垂直なノズル配列方向に一列に並んで配置されている。
【0078】
制御装置3は、インクジェット装置31に備えられた各部の動作を制御する。
【0079】
ステージ4は、その上面に印刷対象物を載置した状態で、インクジェットヘッド2に対して、鉛直方向およびノズル配列方向に垂直な移動方向(
図1の矢印Aの方向)に移動する。
【0080】
ブース5は、その空間内部を窒素(N2)または乾燥空気等で充填し、その空間内部の温度を制御するため、外部の一般環境と空間内部の環境とを隔離する。ブース5は、例えば、直方体形状をしており、インクジェットヘッド2、及び、ステージ4は、ブース5の内部に配置される。
【0081】
排気ファン32、32’は、ステージ4が移動する方向にあるブース5の壁面に設けられる。排気ファン32、32’は、ステージ4がインクジェットヘッド2に対して移動することによりステージ4の移動方向側の側面に発生する風を吸引する。
【0082】
給気口33、33’は、排気ファン32、32’が設けられた壁面とは異なるブース5の壁面に設けられる。給気口33、33’は、排気ファン32、32’が吸引した気体を、ブース5内に再び戻す。
【0083】
排気ファン32、32’が吸引した気体をブース5内に戻しやすくするため、給気口33、33’は給気ファンを備えている。ただし、この給気ファンは必ずしも必要ではない。給気口33、33’は、ブース5内に戻す気体の流れがインクジェットヘッド2による印刷作業に影響しない場所、例えば、ブース5の上面に設けられる。
【0084】
排気ファン32、32’および給気口33、33’は、ステージ4とインクジェットヘッド2が相対移動する際に、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を抑制する風抑制部である。さらに、排気ファン32、32’および給気口33、33’は、ステージ4とインクジェットヘッド2が相対移動する際に、ブース5の壁面により反射してステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に乱流を生じさせる風の発生を抑制する。
【0085】
排気ファン32と給気口33、及び、排気ファン32’と給気口33’は、ダクトなどにより空間的に接続されている。また、排気ファン32、32’と給気口33、33’の給気ファンの動作はステージ4の動きと同期している。
【0086】
すなわち、ステージ4が排気ファン32の方向に移動している場合は、排気ファン32と給気口33が稼働し、ステージ4が排気ファン32’の方向に移動している場合は、排気ファン32’と給気口33’が稼働する。
【0087】
次に、排気ファン32、32’、及び、給気口33、33’が、乱流の発生を防ぐ仕組みについて、往復印刷する場合を例に挙げて説明する。インクジェットヘッド2がステージ4上に載せた印刷対象物に向けてインクを吐出する際に、ステージ4は、矢印Aの方向に移動する。ステージ4の移動により、ステージ4の移動方向側の側面により気体が押され、風が発生する。
【0088】
例えば、ステージ4が
図4の右方向に移動する場合、その動きに同期して、排気ファン32及び給気口33の給気ファンが稼働する。これにより、右方向へと移動する気体は排気ファン32により吸引され、矢印Dの方向へ進み、給気口33からブース5内に再び戻される。
【0089】
インクジェットヘッド2によるインクの吐出後、ステージ4は、インクジェットヘッド2に対して、
図4の左方向に移動する。ステージ4の移動により、ステージ4の左側にある気体が押され、左方向への風が発生する。
【0090】
このようなステージ4の左方向への動きに同期して、排気ファン32’及び給気口33’の給気ファンが稼働する。これにより、左方向へと移動する気体は排気ファン32’により吸引され、矢印Eの方向へ進み、給気口33’からブース5内に再び戻される。
【0091】
その結果、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に生じる風の発生を防ぐとともに、ブース5の内部で発生した風は、ブース5の壁に当たって反射することがないため、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域において乱流が発生することを抑制することが可能となる。
【0092】
また、排気ファン32、32’により排気された気体は、給気口33、33’からブース5内に再投入されるため、ブース5内の気体が減少することを防ぐことが可能となる。
【0093】
このように、第4の実施の形態に係るインクジェット装置31およびインクジェット装置31の制御方法によれば、インクジェット装置31による印刷時に、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域において、ステージ4が移動することによる風及び乱流の発生を、排気ファン32、32’及び給気口33、33’を用いて抑制することができるので、インクジェットヘッド2が吐出したインクを精度よく印刷対象物へ着弾することが可能となる。
【0094】
(第5の実施の形態)
次に、本開示のインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法の第5の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する第5の実施の形態においては、第1~第4の実施の形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第5の実施の形態では、制御装置が層流の風により発生するインクの着弾ずれに対する補正機能を有する。
【0095】
第5の実施の形態について、添付図を参照して説明する。インクジェット装置の基本構成は、第1~第4の実施形態と共通するため、その説明を省略する。以下で説明する制御装置は、
図1~
図4のいずれかのインクジェット装置に搭載され得る。
【0096】
本実施の形態では、制御装置3は、ステージ4の上面に載置された印刷対象物に対して、インクジェットヘッド2から吐出したインクの着弾ずれを補正する補正機能を有する。
【0097】
また、制御装置3は、補正テーブルに基づいて、層流の風により発生する着弾位置のズレを補正する。補正テーブルには、往路/復路、印刷回数、基板厚みの情報が、印刷速度毎に登録されている。補正テーブルは、制御装置3内にある記憶部に記憶されている。
【0098】
さらに、制御装置3は、連続印刷を行う場合に、2回目以降の印刷用にそれぞれ補正テーブルを用意して、インクの着弾位置のずれを補正する。連続印刷には、片道印刷を複数回行う場合、及び、往復印刷を行う場合が含まれる。以下に、この補正方法について詳しく説明する。
【0099】
図5A~
図5Dは、ステージ4の上面に載置された印刷対象物に対して、インクジェットヘッド2から吐出したインクの着弾結果を示すグラフである。また、
図6は、
図5A~
図5Dのグラフを作成するために用いられた着弾結果のデータを示す図である。本例では、インクジェットヘッド2に30個のノズルが設けられており、インクジェットヘッド2の両端にあるノズルのノズル番号は、1と30である。
【0100】
図5Aは、第1~第4の実施の形態で説明した風の発生及び乱流を防ぐ対策(蛇腹構造6、ベルト12、又は、排気ファン32、32’及び給気口33、33’)をした場合と、対策をしなかった場合との着弾結果を比較している。風による乱流を防ぐ対策をすることにより、着弾位置のずれを少なくすることができる。
【0101】
図5Bは、ステージ4が動くことによる着弾位置のずれを示す。この場合、風による影響は無関係であり、単純にステージ4が速く移動するほど着弾位置のずれが大きくなるため、ステージ4の速度分を補正することにより、着弾位置のずれを少なくすることができる。
【0102】
図5Cは、ノズルの個体差による着弾位置ずれを示す。ノズルの個体差とは、製造工程で発生するノズルの向きや位置などのばらつきである。この場合、風による影響は無関係であり、ノズルの個体差を補正することにより、着弾位置のずれを少なくすることができる。
【0103】
図5Dは、ステージ4が移動することによりステージ4のインクジェットヘッド2側の面に発生する層流の風による着弾位置ずれを示す。インクジェットヘッド2の端部、すなわち、ノズルNo1とノズルNo30の方が風の影響が大きいため、その影響分を補正することにより、着弾ずれを少なくすることができる。
【0104】
次に、制御装置3が、インクの着弾位置のずれを補正する仕組みについて説明する。本実施の形態では、乱流の発生を防止した上で、他の要因によるインクの着弾ずれ量をあらかじめ補正することにより、インクジェットヘッドが吐出したインクを精度よく印刷対象へ着弾する。
【0105】
あらかじめ、
図5A~
図5Cで説明した着弾ずれに対する対策を行う。具体的には、乱流を抑制する対策を行い、さらに、制御装置3が、ステージ4が動くことによる着弾位置のずれ、及び、ノズルの個体差(ノズルの向きや位置のばらつき)による着弾位置ずれを算出し、その算出結果を制御装置3の記憶部に記憶する。
【0106】
さらに、
図5Dで説明した層流の風の影響によるインクの着弾位置のズレ量を測定し、補正テーブルを作成する。測定は、印刷回数、印刷対象物の厚さ、印刷速度などを様々に変化させて行い、測定していない範囲については、線形補完で推測することにより、補正テーブルを作成する。
【0107】
例えば、印刷速度を変えながら着弾位置を測定し、印刷速度に対する着弾位置のズレ量を把握する。印刷速度を変化させた場合に測定しておいた着弾位置のズレ量から実際のズレを推定し、印刷位置毎に補正テーブルを作成する。
【0108】
さらに、インクジェットヘッド2及びステージ4はブース5又はブース22内部に配置されるため、閉じた空間内でステージ4が移動すると、移動するごとに風の状況が変化する。そのため、連続印刷を想定して2回目以降の印刷回数ごとに補正テーブルを作成する。
【0109】
制御装置3は、印刷時には、制御装置3の記憶部に記憶された、ステージ4が動くことによる着弾位置のずれ分、及び、ノズルの個体差(ノズルの向きや位置のばらつき)による着弾位置のずれ分を補正する。さらに、制御装置3は、層流の風の影響による着弾位置ずれを、印刷回数が変わる度に印刷回数に対応する補正テーブルを用いて補正する。その結果、インクの着弾ずれを適切に補正することが可能となる。
【0110】
このように、第5の実施の形態に係るインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法によれば、ステージ4とインクジェットヘッド2の間の領域に発生する層流の風の影響による着弾位置のずれを、印刷回数に応じた補正テーブルを用いて補正することができるので、インクジェットヘッド2が吐出したインクを精度よく印刷対象物へ着弾することが可能となる。
【0111】
(変形例)
第1~第5の実施の形態では、インクジェットヘッドが固定され、ステージがインクジェットヘッドに対して往復移動することにより、相対移動可能な構成となっているが、ステージが固定され、インクジェットヘッドがステージに対して往復移動することにより、相対移動可能な構成でもよい。その場合、インクジェットヘッドがステージに対して往復移動することにより発生する風によってインクジェットヘッドの周辺領域に乱流が発生することを抑制する手段である、第1の実施の形態の蛇腹構造、第2及び第3の実施の形態のベルト、及び、第4の実施の形態の排気ファンは、インクジェットヘッド側に設けられる。
【0112】
本開示に係るインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法は、これまでに詳細に説明された実施形態には限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えたものも本開示に係るインクジェット装置およびインクジェット装置の制御方法に包含される。
【符号の説明】
【0113】
1、11、21、31 インクジェット装置
2 インクジェットヘッド
3 制御装置
4 ステージ
4a、4b 側面
5、22 ブース
6、6’ 蛇腹構造
7、7’ 排気口
12 ベルト
13 駆動部
14 ローラー
32、32’ 排気ファン
33、33’ 給気口