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特開2024-154130インクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法、ならびにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154130
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法、ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20241023BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067782
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 昭裕
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB29
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC38
2C056FA04
2C056KB16
2C057AF23
2C057AG44
2C057AK07
2C057AL31
2C057AL40
2C057AM21
2C057AM22
2C057AR03
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】異なる形状の複数の駆動電圧波形を用いてインクジェットヘッドを駆動する場合でも、液滴を適切に吐出することができるインクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法、ならびにプログラムを提供する。
【解決手段】ノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドの駆動装置は、印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数を検出するノズル総数検出部と、ノズルを駆動する駆動電圧の波形の基準となる基本駆動電圧波形の特徴を示す特徴情報と駆動ノズル総数とに基づき、基本駆動電圧波形を補正してノズルを駆動する補正駆動電圧を得る波形補正部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドの駆動装置であって、
印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数を検出するノズル総数検出部と、
前記ノズルを駆動する駆動電圧の波形の基準となる基本駆動電圧波形の特徴を示す特徴情報と前記駆動ノズル総数とに基づき、前記基本駆動電圧波形を補正して前記ノズルを駆動する補正駆動電圧を得る波形補正部と
を備える駆動装置。
【請求項2】
前記印刷画像データに基づき駆動ノズルの分布パターンを検出するノズルパターン検出部をさらに備え、
前記波形補正部は、
前記特徴情報、前記駆動ノズル総数、および、前記分布パターンに基づき、前記補正駆動電圧を得る
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記基本駆動電圧波形は、
第1の電圧振幅を有する第1波形と、前記第1の電圧振幅よりも大きい第2の電圧振幅を有する第2波形とが連続する波形であり、
前記特徴情報は、
前記第1波形の特徴を示す第1特徴量と、前記第2波形の特徴を示す第2特徴量とを含み、
前記波形補正部は、
前記第1特徴量に基づき前記第1波形を補正し、前記第2特徴量に基づき前記第2波形を補正する
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記基本駆動電圧波形および前記特徴情報は、
第1の電圧振幅を有する第1波形および前記第1波形の特徴を示す第1特徴量と、前記第1の電圧振幅よりも大きい第2の電圧振幅を有する第2波形および前記第2波形の特徴を示す第2特徴量とのうち、いずれか一方の波形および特徴量を含み、
前記波形補正部は、
前記基本駆動電圧波形に前記第1波形が含まれる場合に、前記第1特徴量に基づき前記第1波形を補正し、前記基本駆動電圧波形に前記第2波形が含まれる場合に、前記第2特徴量に基づき前記第2波形を補正する
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記特徴情報は、
前記基本駆動電圧波形の電圧振幅値、または、前記電圧振幅値に対応する情報である
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
ノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドの駆動方法であって、
印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数を検出し、
前記ノズルを駆動する駆動電圧の波形の基準となる基本駆動電圧波形の特徴を示す特徴情報と前記駆動ノズル総数とに基づき、前記基本駆動電圧波形を補正して前記ノズルを駆動する補正駆動電圧を得る
インクジェットヘッドの駆動方法。
駆動方法。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェットヘッドの駆動方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法、ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池のセパレータフィルムおよびペロブスカイト太陽電池の機能膜形成等を、必要に応じてインクジェットで塗工により形成するプリンテッドエレクトロニクスが広く実用化されている。塗工に用いられるインクジェットヘッドとして、一般に、インクを吐出するノズルを複数並べた多ノズルヘッドが用いられる。多ノズルヘッド構成の利点を活かして、吐出ノズルと非吐出ノズルとを組み合わせることにより、様々な塗工パターンを実現することができる。
【0003】
一方、多ノズルヘッドを用いた塗工の場合、同時に吐出するノズル数が変化したり、吐出ノズルと非吐出ノズルとの組み合わせによる吐出パターンが変化したりすることにより、ノズルから吐出される液滴の体積が変動してしまうことがある。このような問題を解決する方法として、特許文献1には、駆動されるノズル総数と、同時に駆動されるノズルの密集度等に応じて、インク滴を吐出する駆動波形信号を補正することにより、液滴の体積変動を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-199025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吐出ノズル総数または複数のノズルの吐出パターンと、吐出ノズルから吐出される液滴の体積との間の関係は、インクジェットヘッドを駆動する駆動電圧波形の形状によって変化することが知られている。このときの駆動電圧波形の形状は、例えば、吐出する液滴の体積である液滴体積によって異なる。一般的には、吐出する液滴体積が大きいほど、駆動電圧波形の電圧振幅が大きい。
【0006】
液滴体積は、吐出ノズル総数が増加するに従って小さくなるが、電圧振幅が相対的に大きい駆動電圧波形を用いて吐出される液滴の体積変動は、電圧振幅が相対的に小さい駆動電圧波形を用いて吐出される液滴の体積変動よりも大きい。すなわち、吐出ノズル総数に対する液滴の体積変動量は、吐出体積の大きい液滴に対応する駆動電圧波形を用いる場合の方が、吐出体積の小さい液滴に対応する駆動電圧波形を用いる場合よりも大きい。
【0007】
これに対して、特許文献1に記載の技術では、駆動波形信号の形状に関わらず、駆動波形信号が一定の補正率で補正される。これにより、駆動波形信号が異なる複数の駆動波形で構成されている場合に、駆動波形信号が適切に補正されないため、液滴を適切に吐出することができないという問題点があった。
【0008】
本開示は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、異なる形状の複数の駆動電圧波形を用いてインクジェットヘッドを駆動する場合でも、液滴を適切に吐出することができるインクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法、ならびにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るインクジェットヘッドの駆動装置は、
ノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドの駆動装置であって、
印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数を検出するノズル総数検出部と、
前記ノズルを駆動する駆動電圧の波形の基準となる基本駆動電圧波形の特徴を示す特徴情報と前記駆動ノズル総数とに基づき、前記基本駆動電圧波形を補正して前記ノズルを駆動する補正駆動電圧を得る波形補正部と
を備える。
【0010】
また、本開示に係るインクジェットヘッドの駆動方法は、
ノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドの駆動方法であって、
印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数を検出し、
前記ノズルを駆動する駆動電圧の波形の基準となる基本駆動電圧波形の特徴を示す特徴情報と前記駆動ノズル総数とに基づき、前記基本駆動電圧波形を補正して前記ノズルを駆動する補正駆動電圧を得る。
【0011】
さらに、本開示に係るプログラムは、上記のインクジェットヘッドの駆動方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、異なる形状の複数の駆動電圧波形を用いて前記インクジェットヘッドを駆動する場合でも、液滴を適切に吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態1に係る印刷装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】インクジェットヘッドの構成の一例を示す模式断面図である。
図3】インクジェットヘッドモジュールの構成の一例を示す等価回路図である。
図4図1の制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5図4のヘッド制御部およびヘッド駆動部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6】基本駆動電圧波形の形状の一例を示すグラフである。
図7図5の基本波形生成部の構成の一例を示すブロック図である。
図8】印刷タイミング信号に基づく基本駆動電圧波形信号および特徴情報の生成について説明するためのタイミングチャートである。
図9】本実施の形態1に係る印刷装置の動作について説明するためのタイミングチャートである。
図10】印刷画像データに基づくスイッチ制御信号の生成について説明するタイミングチャートである。
図11】駆動ノズル総数と液滴体積との関係の一例を示すグラフである。
図12】本実施の形態1に係る駆動電圧波形補正処理について説明するためのタイミングチャートである。
図13】本実施の形態2に係るヘッド制御部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図14】印刷画像データの時分割について説明するためのタイミングチャートである。
図15図13の基本波形生成部の構成の一例を示すブロック図である。
図16】基本駆動電圧波形信号および特徴情報の生成について説明するためのタイミングチャートである。
図17】本実施の形態2に係る印刷装置の動作について説明するためのタイミングチャートである。
図18】本実施の形態2の変形例に係る基本波形生成部の構成の一例を示すブロック図である。
図19】基本駆動電圧波形信号および特徴情報の生成について説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。さらにまた、電圧の高低については、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではない。
【0015】
<実施の形態1.>
以下、本開示の実施の形態1について、図面を参照して説明する。本実施の形態1に係る印刷装置は、印刷対象物に対してインク液滴を吐出することにより、印刷対象物に画像を形成するものである。特に、本実施の形態1に係る印刷装置は、二値の印刷画像データを用いて印刷対象物に画像を形成するものである。
【0016】
[印刷装置1の構成]
図1は、本実施の形態1に係る印刷装置1の構成の一例を示す概略図である。図2は、インクジェットヘッド10の構成の一例を示す模式断面図である。図3は、インクジェットヘッドモジュール100の構成の一例を示す等価回路図である。図1に示すように、印刷装置1は、インクジェットヘッドモジュール100、制御装置200およびステージ300を含んで構成されている。ステージ300上には、印刷対象物Pが載置される。また、制御装置200には、外部のホストPC(Personal Computer)2が有線または無線で接続される。
【0017】
インクジェットヘッドモジュール100は、ステージ300上に載置された印刷対象物Pに対してインク液滴を吐出する。インク液滴の吐出を含むインクジェットヘッドモジュール100の動作は、制御装置200によって制御される。
【0018】
制御装置200は、印刷装置1全体を制御する。例えば、制御装置200は、接続された外部のホストPC2から印刷画像データを受信し、受信した印刷画像データに基づき、印刷対象物Pに画像を形成させる。その際、制御装置200は、インクジェットヘッドモジュール100からのインク液滴の吐出タイミングおよびインク液滴の体積を、ステージ300の動作と連動して制御する。
【0019】
ステージ300は、例えば、インクジェットヘッドモジュール100に対して相対的に移動可能に構成され、載置された印刷対象物Pを搬送する。そして、ステージ300は、印刷対象物Pを搬送することにより、印刷対象物Pとインクジェットヘッドモジュール100との相対的な位置関係を変更する。
【0020】
また、ステージ300は、図示しないエンコーダ装置を備え、エンコーダ信号を生成し、制御装置200に対して出力する。エンコーダ信号は、印刷対象物Pの搬送速度(ステージ移動量)および方向を示す情報を含む信号である。
【0021】
なお、この例では、ステージ300が移動可能に構成されているように説明したが、印刷装置1の構成はこの例に限られない。例えば、印刷装置1の構成は、ステージ300が固定され、インクジェットヘッドモジュール100が移動する構成であってもよいし、インクジェットヘッドモジュール100およびステージ300の両方が移動する構成であってもよい。
【0022】
さらに、印刷装置1の構成は、図1に示す例に限られない。例えば、印刷装置1は、ロール状に巻回されたフィルム等の印刷媒体である印刷対象物に画像を形成した後、ロール状に巻き取る、所謂ロールtoロール設備として構成されてもよい。
【0023】
(インクジェットヘッドモジュール100)
インクジェットヘッドモジュール100は、インクジェットヘッド10と、スイッチ回路20およびヘッドモジュール基板30とを備えている。スイッチ回路20およびヘッドモジュール基板30は、例えば、図示しないドライバIC(Integrated Circuit)の機能の一部として構成されていてもよい。
【0024】
インクジェットヘッド10は、複数のノズル11を有し、制御装置200の制御に基づき、複数のノズル11からインク液滴を選択的に吐出する。本実施の形態1において、インクジェットヘッド10は、例えば、インクが循環する種類のものである。インクジェットヘッド10では、図示しない液体注入口から注入されたインクが循環し、図示しない排出口からインクが吐出される。
【0025】
スイッチ回路20は、複数のノズル11のそれぞれに対応する複数のスイッチ素子21を含んで構成されている。スイッチ回路20では、これらのスイッチ素子21が開閉されることにより、インク液滴を吐出するノズル11に対応する圧電素子15のみに駆動電圧が印加される。
【0026】
ここで、圧電素子15に印加される駆動電圧は、パルス状の波形を有するものであり、ノズル11から吐出されるインク液滴の体積に関連するものである。圧電素子15に印加される駆動電圧の波形(駆動電圧波形)の詳細については、後述する。なお、以下の説明では、駆動電圧の波形を「駆動電圧波形」と称し、駆動電圧を含む信号を「駆動電圧波形信号」と称することがある。
【0027】
スイッチ回路20におけるスイッチ素子21の開閉は、ヘッドモジュール基板30から供給されるスイッチ制御信号によって行われる。スイッチ制御信号は、スイッチ回路20に設けられたスイッチ素子21の開閉を制御するための信号である。
【0028】
ヘッドモジュール基板30は、スイッチ回路20を制御してインクジェットヘッド10を駆動する駆動制御回路として機能する。例えば、ヘッドモジュール基板30は、制御装置200から受け取った補正駆動電圧波形信号を、スイッチ回路20を介してインクジェットヘッド10に供給する。補正駆動電圧波形信号は、後述する駆動電圧波形補正処理によって得られる駆動電圧波形信号であり、駆動電圧が補正された補正駆動電圧を含む。
【0029】
また、ヘッドモジュール基板30は、制御装置200から受け取った印刷画像データを含む各種信号に基づき、スイッチ回路20に設けられたスイッチ素子を閉状態とするためのスイッチ制御信号を生成し、スイッチ回路20に対して出力する。
【0030】
(インクジェットヘッド10)
図2に示すように、インクジェットヘッド10は、複数のノズル11、複数の圧力室12、隔壁13、ダイアフラム14、圧電素子15および圧電部材16を備えている。また、インクジェットヘッド10は、圧電素子15に電圧を印加する共通電極と、それぞれの圧力室12に対してインクを供給する導入口(いずれも図示せず)とを備えている。
【0031】
複数のノズル11は、インク液滴17を吐出する。複数のノズル11は、それぞれに対応する圧力室12に連通する。ノズル11は、例えば、直径が10μm~50μm程度であり、100μm~500μmの間隔で、100個~300個程度並んでいる。
【0032】
圧力室12は、それぞれのノズル11に対応して設けられ、インクを貯留する。圧力室12は、圧電素子15の変形で発生した圧力波を適切にため込み、インクをノズル11から吐出するエネルギーを生むものである。圧縮室12には、インクが供給される図示しないインク流路が接続され、圧縮室12とインク流路との接続部分は、他の流路よりも狭い幅の絞り部となっている。これにより、圧力室12に適切に圧力波がため込まれる。
【0033】
ダイアフラム14は、圧力室12の一部を形成している。ダイアフラム14は、例えば、圧電素子15の変形を圧力室12に伝播させるための薄板であり、圧力室12と、圧電素子15および圧電部材16との間に設けられている。
【0034】
圧電素子15は、ダイアフラム14を振動させる。圧電素子15は、電圧を印加することで変形する性質を有する部材であり、ダイアフラム14の圧縮室12とは反対側の面に接するように設けられている。圧電素子15の材料は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である。
【0035】
圧電素子15が変形した場合には、ダイアフラム14が変形し、それによって圧力室12の容積が変動する。これにより、圧力室12内のインクがノズル11を介して、インクジェットヘッド10から外部に吐出される。
【0036】
圧電部材16は、それぞれの圧力室12を隔てる隔壁13を支えるために設けられている。圧電素子15および圧電部材16は、例えば、1つの部材からダイシングによって分離されている。
【0037】
(スイッチ回路20およびヘッドモジュール基板30)
図3に示すように、インクジェットヘッド10に100個のノズル11が設けられ、インクジェットヘッドモジュール100に100ビットのシリアル形式の印刷画像データが入力される場合を例にとって説明する。なお、図3において、ヘッドモジュール基板30の構成は、スイッチ回路20の制御に関連する部分のみが図示されている。
【0038】
図3に示すように、スイッチ回路20は、複数のスイッチ素子21、21、21、・・・、2199を含んで構成されている。なお、以下の説明において、複数のスイッチ素子21、21、21、・・・、2199を特に区別する必要がない場合には、単に「スイッチ素子21」と称することがある。
【0039】
スイッチ素子21は、ヘッドモジュール基板30からのスイッチ制御信号に基づき閉状態となった場合に、ヘッドモジュール基板30から受け取った補正駆動電圧波形信号をインクジェットヘッド10に供給する。一方、スイッチ素子21は、開状態となった場合に、ヘッドモジュール基板30から受け取った補正駆動電圧波形信号のインクジェットヘッド10への供給を遮断する。
【0040】
スイッチ回路20を構成する複数のスイッチ素子21として、例えば、アナログスイッチ素子が用いられる。なお、これに限られず、スイッチ回路20は、複数のスイッチ素子21が集積されたスイッチICで構成されてもよい。
【0041】
ヘッドモジュール基板30は、シフトレジスタ31およびラッチ回路32を含んで構成されている。
【0042】
シフトレジスタ31は、入力されたシリアル形式の印刷画像データ(以下、「シリアル印刷画像データ」と適宜称する)をシフトしながら順次保持し、パラレル形式の印刷画像データ(以下、「パラレル印刷画像データ」と適宜称する)に変換する。この例では、シフトレジスタ31は、ノズル11の個数に対応した100ビットのものであり、データクロック信号の立ち上がりタイミングでQAに入力された印刷画像データを、QA、QA、・・・、QA99と順次シフトして保持する。そして、シフトレジスタ31は、保持した100ビットのシリアル印刷画像データを、パラレル印刷画像データQA~QA99として出力する。データクロック信号は、シフトレジスタ31を動作させるためのクロック信号であり、印刷画像データに同期した立ち上がりタイミングを有する。
【0043】
ラッチ回路32は、シフトレジスタ31から出力された、パラレル印刷画像データQA~QA99を保持し、データQB~QB99として出力する。例えば、ラッチ回路32は、Dフリップフロップであり、シフトレジスタ31から出力されたパラレル印刷画像データQA~QA99を一括してラッチする。そして、ラッチ回路32は、Dフリップフロップのラッチ指令信号であるデータロード信号の指令により、データQB~QB99を出力する。このときのデータQB~QB99は、スイッチ回路20におけるそれぞれのスイッチ素子21に対するスイッチ制御信号QB~QB99として機能する。
【0044】
(制御装置200)
図4は、図1の制御装置200の構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)201、RAM(Random Access Memory)202、ROM(Read Only Memory)203、ホストインターフェース204、同期制御部205、ヘッド制御部206およびヘッド駆動部207を備えている。また、CPU201、RAM202、ROM203、ホストインターフェース(以下、「ホストI/F」と適宜称する)204およびヘッド制御部206は、CPUバス210に接続されている。
【0045】
CPU201は、ROM203から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM202に展開し、展開したプログラムと協働して印刷装置1の動作を制御する。RAM202は、例えば、揮発性メモリであり、印刷装置1で用いられる各種データ等を一時的に記憶する。例えば、本実施の形態1では、RAM202には、ホストPC2から送信される印刷画像データが一時的に記憶される。ROM203は、例えば、不揮発性メモリであり、制御装置200で用いられる定数データ等の各種のデータを記憶する。例えば、本実施の形態1では、駆動電圧波形を補正する際に用いられる補正率の算出式またはテーブル等が記憶されている。
【0046】
ホストI/F204は、外部のホストPC2との間で各種のデータのやりとりを行うためのインターフェースである。例えば、ホストI/F204は、ホストPC2から印刷画像データを受け取り、受け取った印刷画像データを、CPU201の指示に従ってCPUバス210を介してRAM202に記憶する。
【0047】
同期制御部205は、ステージ300から受信したエンコーダ信号に基づき、基本印刷タイミング信号を生成する。基本印刷タイミング信号は、単位吐出を開始するためのタイミング信号を示す。単位吐出とは、1画素を形成するためのインクの吐出のことである。
【0048】
ヘッド制御部206は、インクジェットヘッドモジュール100のインクジェットヘッド10を駆動するための駆動電圧波形信号を生成する。本実施の形態1において、ヘッド制御部206は、内部で生成された基本駆動電圧波形信号に含まれる駆動電圧を補正した補正駆動電圧波形信号を駆動電圧波形信号として生成する。
【0049】
基本駆動電圧波形信号は、駆動電圧波形信号の基準となる信号であり、インク液滴を同時に吐出するノズル11の影響を考慮しない場合に、駆動される圧電素子15に印加される基本駆動電圧を含む信号である。
【0050】
また、ヘッド制御部206は、RAM202に記憶された印刷画像データと、同期制御部205で生成された基本印刷タイミング信号とに基づき、基本駆動電圧波形信号に含まれる駆動電圧を補正する駆動電圧波形補正処理を行う。そして、ヘッド制御部206は、補正した駆動電圧を含む補正駆動電圧波形信号を生成する。
【0051】
ヘッド駆動部207は、ヘッド制御部206で生成された補正駆動電圧波形信号をインクジェットヘッドモジュール100で扱うのに適した信号に変換して出力する。具体的には、ヘッド駆動部207は、補正駆動電圧波形信号をディジタル信号からアナログ信号に変換するとともに、電圧増幅および電流増幅を行う。
【0052】
本実施の形態1では、ヘッド制御部206およびヘッド駆動部207がインクジェットヘッド10の駆動装置として機能する。ヘッド制御部206およびヘッド駆動部207の機能は、例えば、CPU、ROMおよびRAM(いずれも図示せず)等を有するコンピュータによって実現されてもよい。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働してヘッド制御部206およびヘッド駆動部207の動作を集中制御する。また、ヘッド制御部206およびヘッド駆動部207の機能は、例えば、制御装置200が備えるCPU201、ROM203およびRAM202によって実現されてもよい。
【0053】
(ヘッド制御部206およびヘッド駆動部207)
図5は、図4のヘッド制御部206およびヘッド駆動部207の構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、図5において、ヘッド制御部206については、駆動電圧波形補正処理に関連する構成のみが図示されている。
【0054】
図5に示すように、ヘッド制御部206は、ノズル総数検出部61、第1補正率算出部62、ノズルパターン検出部63、第2補正率算出部64、最終補正率算出部65および駆動波形生成部66を有している。
【0055】
ノズル総数検出部61は、RAM202に記憶された印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数を検出する。駆動ノズル総数は、インクジェットヘッド10に設けられた複数のノズル11のうち、同時に駆動される圧電素子15に対応するノズル11の数を示す。なお、以下の説明では、「駆動される圧電素子15に対応するノズル11」を「駆動ノズル11」または「駆動されるノズル11」と記載する場合がある。
【0056】
第1補正率算出部62は、ノズル総数検出部61で検出された駆動ノズル総数と、駆動波形生成部66から供給される特徴情報とに基づき、第1補正率を算出する。特徴情報は、基本波形生成部261で生成される基本駆動電圧波形信号の波形の特徴を示す情報であり、例えば、基本駆動電圧の電圧振幅値または電圧振幅値に対応する指標値である。第1補正率は、駆動される圧電素子15に対応するノズル11に駆動ノズル総数が与える影響を考慮して決定される補正率である。第1補正率は、例えば、ROM203に記憶された補正率の算出式またはテーブル等を用いて算出される。
【0057】
ノズルパターン検出部63は、RAM202に記憶された印刷画像データに基づき、駆動ノズル分布パターンを検出する。駆動ノズル分布パターンは、インクジェットヘッド10に設けられた複数のノズル11のうちの駆動ノズルの分布を示す。
【0058】
第2補正率算出部64は、ノズルパターン検出部63で検出された駆動ノズル分布パターンと、駆動波形生成部66から供給される特徴情報とに基づき、第2補正率を算出する。第2補正率は、駆動される圧電素子15に対応するノズル11に駆動ノズル分布パターンが与える影響を考慮して決定される補正率である。第2補正率は、例えば、ROM203に記憶された補正率の算出式またはテーブル等を用いて算出される。
【0059】
最終補正率算出部65は、第1補正率算出部62で算出された第1補正率と、第2補正率算出部64で算出された第2補正率とに基づき、基本駆動電圧波形に対する最終的な補正率を示す最終補正率を算出する。
【0060】
駆動波形生成部66は、基本波形生成部261および波形補正部262を有している。駆動波形生成部66は、最終補正率算出部65で算出された最終補正率を用いて、生成する基本駆動電圧波形信号の基本駆動電圧波形を補正し、補正駆動電圧波形信号を生成する。すなわち、補正駆動電圧波形信号は、駆動ノズルの関係を考慮した駆動電圧を含む信号であり、具体的には、駆動ノズル総数および駆動ノズル分布パターンの影響を考慮した駆動電圧を含む信号である。
【0061】
基本波形生成部261は、印刷タイミング信号に基づき、基本駆動電圧波形信号を生成し、波形補正部262に供給する。また、基本波形生成部261は、生成した基本駆動電圧波形信号の基本駆動電圧波形に関する特徴情報を生成し、生成した特徴情報を、第1補正率算出部62および第2補正率算出部64に供給する。
【0062】
波形補正部262は、基本波形生成部261で生成された基本駆動電圧波形信号の基本駆動電圧波形を、最終補正率算出部65で算出された最終補正率で補正し、補正駆動電圧波形信号を生成する。
【0063】
ここで、基本駆動電圧波形について説明する。図6は、基本駆動電圧波形の形状の一例を示すグラフである。図6において、横軸は時間[μs]を示し、縦軸は電圧振幅[V]を示す。図6に示すように、本実施の形態1において、印刷対象物Pに二値画像を形成する場合、基本駆動電圧波形は、電圧振幅が異なる第1波形と第2波形とが連続する波形で表される。
【0064】
第1波形は、電圧振幅が相対的に小さい波形である。この例において、第1波形は、第1の電圧振幅Vを有するパルス波形となっている。第1波形は、例えば、ノズル11から液滴の体積が相対的に小さい小液滴を吐出する際に、当該ノズル11に対応する圧電素子15に印加される。
【0065】
第2波形は、電圧振幅が第1波形の電圧振幅よりも大きい波形である。この例において、第2波形は、第1の電圧振幅Vよりも大きい第2の電圧振幅Vを有するパルス波形となっている。第2波形は、例えば、ノズル11から小液滴よりも液滴の体積が大きい中液滴を吐出する際に、当該ノズル11に対応する圧電素子15に印加される。
【0066】
本実施の形態1において、印刷対象物Pに二値画像を形成する場合には、第1波形と第2波形とが連続する駆動電圧波形を有する駆動電圧波形信号が圧電素子15に印加される。これにより、当該圧電素子15に対応するノズル11から、小液滴および中液滴よりも液滴の体積が大きい大液滴が吐出される。
【0067】
図7は、図5の基本波形生成部261の構成の一例を示すブロック図である。図8は、印刷タイミング信号に基づく基本駆動電圧波形信号および特徴情報の生成について説明するためのタイミングチャートである。図7に示すように、基本波形生成部261は、第1カウンタ2611、第1波形メモリ2612、比較器2613、第1選択器2614、第1レジスタ2615および第2レジスタ2616を有している。
【0068】
第1カウンタ2611には、印刷タイミング信号が入力される。第1カウンタ2611は、印刷タイミング信号が入力されたタイミングでカウント値を「0」にリセットし、所定の周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する。また、第1カウンタ2611は、カウント値が予め設定された最大値maxにとなった場合に、カウントを停止する。第1カウンタ2611でカウントされるカウント値は、第1波形メモリ2612のアドレスに対応する。
【0069】
第1波形メモリ2612には、第1カウンタ2611からのカウント値が入力される。第1波形メモリ2612は、カウント値「0」~「max」に対応するアドレスを有し、それぞれのアドレスに対応する領域に、基本駆動電圧波形の振幅データ等を示す波形データを予め格納している。第1波形メモリ2612は、入力されたカウント値が示すアドレスに格納された波形データを出力する。
【0070】
本実施の形態1において、第1波形メモリ2612のアドレス「0」~「a-1」には、第1波形における所定周期間隔での電圧振幅値が格納されている。したがって、基本波形生成部261は、第1波形メモリ2612のアドレス「0」~「a-1」に格納された電圧振幅値を所定周期毎に順次出力することにより、基本駆動電圧波形に含まれる第1波形を生成することができる。
【0071】
また、アドレス「a」~「max」には、第2波形における所定周期の電圧振幅値が格納されている。したがって、基本波形生成部261は、第1波形メモリ2612のアドレス「a」~「max」に格納された電圧振幅値を所定周期毎に順次出力することにより、基本駆動電圧波形に含まれる第2波形を生成することができる。
【0072】
比較器2613は、第1カウンタ2611によるカウント値、および予め設定されたカウント閾値aが入力される。比較器2613は、入力されたカウント値とカウント閾値aとを比較し、比較結果を出力する。カウント閾値aは、第1波形メモリ2612に格納された第1波形の成分と、第2波形の成分とを区別するための値である。
【0073】
第1選択器2614には、第1レジスタ2615および第2レジスタ2616が接続されている。また、第1選択器2614には、比較器2613による比較結果が入力される。第1選択器2614は、比較器2613による比較結果に基づき、第1レジスタ2615および第2レジスタ2616のいずれか一方に格納された特徴量を選択し、選択した特徴量を特徴情報として出力する。
【0074】
具体的には、第1選択器2614は、比較結果が「カウント値がカウント閾値a未満(カウント値<カウント閾値a)」である場合に、第1レジスタ2615に格納された特徴量を読み出す。また、第1選択器2614は、比較結果が「カウント値がカウント閾値a以上(カウント値≧カウント閾値a)」である場合に、第2レジスタ2616に格納された情報を読み出す。
【0075】
第1レジスタ2615および第2レジスタ2616は、第1波形および第2波形のそれぞれに対応して個別に設けられたレジスタである。第1レジスタ2615には、第1波形についての特徴量である第1特徴量が格納されている。第2レジスタ2616には、第2波形についての特徴量である第2特徴量が格納されている。
【0076】
第1特徴量は、例えば、第1波形の電圧振幅等の、第1波形の形状の特徴を示す特徴情報である。なお、第1特徴量は、これに限られず、例えば、立ち上がり時間または立ち下がり時間であってもよい。これは、立ち上がり時間または立ち下がり時間が、ノズル11から吐出されるインク液滴の液滴体積に影響するためである。また、第2特徴量は、例えば、第2波形の電圧振幅等の、第2波形の形状の特徴を示す特徴情報である。第2特徴量は、第1特徴量と同様に、例えば、立ち上がり時間または立ち下がり時間であってもよい。
【0077】
図5の説明に戻ると、ヘッド駆動部207は、DAC(Digital Analog Converter)71、電圧増幅部72および電流増幅部73を有している。
【0078】
DAC71は、ディジタルアナログ変換器であり、入力されたディジタル信号をアナログ信号に変換するために設けられている。具体的には、DAC71は、入力されたディジタル信号の補正駆動電圧波形信号をアナログ信号の補正駆動電圧波形信号に変換する。
【0079】
電圧増幅部72は、入力信号の電圧振幅を増幅させるために設けられている。具体的には、電圧増幅部72は、インクジェットヘッド10の圧電素子15に印加するのに適した電圧振幅となるように、アナログ信号の補正駆動電圧波形信号の電圧振幅を増幅させる。
【0080】
電流増幅部73は、入力信号の電流を増幅させるために設けられている。具体的には、電流増幅部73は、電圧増幅部72で電圧振幅が増幅された補正駆動電圧波形信号の出力電流を増幅させる。
【0081】
[印刷装置1の動作]
次に、本実施の形態1に係る印刷装置1の動作について説明する。ここでは、印刷画像データに基づいて印刷対象物Pに印刷する場合の印刷装置1の動作と、印刷時に行われる駆動電圧波形補正処理とについて説明する。
【0082】
(印刷対象物Pへの印刷)
印刷対象物Pに印刷する場合の本実施の形態1に係る印刷装置1の動作について説明する。図9は、本実施の形態1に係る印刷装置1の動作について説明するためのタイミングチャートである。まず、ホストPC2から所定の印刷画像データが送信されると、印刷装置1の制御装置200は、ホストI/F204を介して当該印刷画像データを受信する(図4参照)。印刷画像データを受信すると、制御装置200のCPU201は、受信した印刷画像データをRAM202に記憶する。また、印刷装置1のステージ300は、制御装置200に対してエンコーダ信号を供給する。
【0083】
次に、CPU201は、受信した印刷画像データに基づく印刷画像の印刷を、ヘッド制御部206に対して指示する。このとき、同期制御部205は、ステージ300からエンコーダ信号を受け取り、エンコーダ信号に基づいて基本印刷タイミング信号を生成する。そして、同期制御部205は、生成した基本印刷タイミング信号をヘッド制御部206に供給する。ここで、エンコーダ信号は、一般に、位相が互いに90°シフトした2相の信号である。図9では、エンコーダ信号として、A相の第1エンコーダ信号と、第1エンコーダ信号の位相が90°シフトしたB相の第2エンコーダ信号が示されている。
【0084】
具体的には、同期制御部205は、第1エンコーダ信号および第2エンコーダ信号のそれぞれの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングで立ち上がる4逓倍の第3エンコーダ信号を生成する。また、同期制御部205は、生成した第3エンコーダ信号を分周し、基本印刷タイミング信号の周期を決定する分周クロックを生成する。そして、同期制御部205は、生成した分周クロックの立ち上がりを抽出し、基本印刷タイミング信号を生成する。
【0085】
ヘッド制御部206は、同期制御部205から受け取った基本印刷タイミング信号に基づき、波形整形等を行って印刷タイミング信号を生成する。そして、ヘッド制御部206は、生成した印刷タイミング信号が示すタイミングで、RAM202に記憶された印刷画像データを読み出し、読み出した印刷画像データをインクジェットヘッドモジュール100に対して供給する。
【0086】
また、ヘッド制御部206は、生成した印刷タイミング信号に基づき、基本駆動電圧波形信号および特徴情報を生成する。このとき、ヘッド制御部206における駆動波形生成部66の基本波形生成部261は、印刷タイミング信号に基づき第1カウンタ2611のカウント値をリセットした後、所定周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する(図8参照)。
【0087】
そして、基本波形生成部261は、第1カウンタ2611のカウント値「0」~「max」を所定周期で順次出力し、カウント値「0」~「max」に対応するアドレスに格納された波形データを第1波形メモリ2612から出力する。これにより、基本波形生成部261は、第1波形と第2波形とが連続する基本駆動電圧波形を含む基本駆動電圧波形信号を生成する。
【0088】
また、基本波形生成部261は、第1カウンタ2611から出力されたカウント値と、カウント閾値aとを比較器2613で比較し、比較結果を第1選択器2614に供給する。第1選択器2614は、比較結果に基づき、カウント値がカウント閾値a未満である場合に、第1レジスタ2615に格納された第1波形についての特徴量FVSを取得する。また、第1選択器2614は、カウント値がカウント閾値a以上である場合に、第2レジスタ2616に格納された第2波形についての特徴量FVLを取得する。取得された特徴量FVSおよびFVLの両方は、ヘッド制御部206の第1補正率算出部62および第2補正率算出部64のそれぞれに特徴情報として供給される。
【0089】
次に、ヘッド制御部206は、RAM202から読み出した印刷画像データと、生成した基本駆動電圧波形信号および特徴情報とに基づき、駆動電圧波形補正処理を行う。駆動電圧波形補正処理の詳細については、後述する。そして、ヘッド制御部206は、駆動電圧波形補正処理により、基本駆動電圧波形を補正した補正駆動電圧波形信号を生成し、生成した補正駆動電圧波形信号をヘッド駆動部207に供給する。
【0090】
ヘッド駆動部207において、DAC71は、ヘッド制御部206から受け取った補正駆動電圧波形信号をディジタル信号からアナログ信号に変換し、電圧増幅部72に供給する(図5参照)。電圧増幅部72は、アナログ信号の補正駆動電圧波形信号の電圧振幅を増幅し、電流増幅部73に供給する。電流増幅部73は、電圧増幅部72から受け取った補正駆動電圧波形信号の出力電流を増幅し、インクジェットヘッドモジュール100に供給する。
【0091】
インクジェットヘッドモジュール100のヘッドモジュール基板30は、制御装置200から印刷画像データを受け取ると、シフトレジスタ31およびラッチ回路32により、受け取った印刷画像データをシリアル形式からパラレル形式に変換する(図3参照)。そして、ヘッドモジュール基板30は、パラレル形式に変換されたパラレル印刷画像データをスイッチ制御信号としてスイッチ回路20に供給する。
【0092】
一方、ヘッドモジュール基板30は、制御装置200から受け取った補正駆動電圧波形信号をスイッチ回路20に供給する。スイッチ回路20は、スイッチ制御信号により閉状態とされたスイッチ素子21に供給された補正駆動電圧波形信号を、インクジェットヘッド10に供給する。
【0093】
図10は、印刷画像データに基づくスイッチ制御信号の生成について説明するタイミングチャートである。図10には、圧電素子15図3参照)のみを駆動させる場合における、データクロック信号、印刷画像データ、データロード信号、パラレル印刷画像データQA~QA99およびスイッチ制御信号QB~QB99の状態が示されている。
【0094】
データクロック信号が100個の立ち上がりタイミングを有するクロック信号である場合、印刷画像データは、データクロック信号の100個目の立ち上がりタイミングにおいてのみ、Highレベルとなっている。そのため、印刷画像データは、シフトレジスタ31のシフト動作により、データクロック信号の最終立ち上がりタイミングt100において、データQAがHighレベルであり、データQA~QA99がLowレベルであるパラレルデータに変換される。
【0095】
シフトレジスタ31による印刷画像データのパラレル変換が完了した後、タイミングtにおいてラッチ回路32にデータロード信号が入力されると、データQA~QA99がラッチ回路32でラッチされ、パラレルデータQB~QB99として出力される。
【0096】
このようにして出力されたデータQB~QB99はスイッチ制御信号であり、データQBのみがHighレベルであるため、スイッチ素子21図3参照)が閉状態となる。したがって、補正駆動電圧波形信号がスイッチ素子21を通過し、補正駆動電圧波形信号に含まれる補正駆動電圧が圧電素子15に印加される。
【0097】
一方、データQB~QB99はLowレベルであるため、スイッチ素子21~2199が開状態となる。したがって、補正駆動電圧波形信号は、スイッチ素子21~2199で遮断され、補正駆動電圧が圧電素子15~1599に印加されることがない。
【0098】
次に、図2に示すように、インクジェットヘッド10に設けられた圧電素子15に補正駆動電圧が印加されると、符号Aが付された破線の楕円内に示されるように、圧電素子15が変形する。圧電素子15が変形すると、圧力室12の容積が小さくなるため、圧力室12内のインクに圧力が加えられる。そして、圧力室12の中に存在するインクが液滴17として外部へ吐出される。
【0099】
このようにして、インクジェットヘッドモジュール100は、受信した印刷画像データに基づき得られるスイッチ制御信号により、スイッチ素子21の開閉を制御する。そして、圧電素子15に補正駆動電圧が印加されることにより、対応するノズル11からインク液滴が吐出され、印刷対象物P上に画像が形成される。
【0100】
(駆動電圧波形補正処理)
次に、ヘッド制御部206で行われる駆動電圧波形補正処理について説明する。従来から、駆動ノズル総数の変化または駆動ノズル分布パターンの変化等の駆動されるノズル11の組み合わせの変化により、駆動ノズルからの液滴体積が変動することが知られている。近年では、このような液滴体積の変動を抑制するために、ノズル11を駆動する際に用いられる駆動電圧波形を補正することが提案されている。
【0101】
また、このような液滴体積の変動量は、駆動電圧波形における電圧振幅等の形状によって異なることも知られている。図11は、駆動ノズル総数と液滴体積との関係の一例を示すグラフである。
【0102】
図11において、横軸はインク液滴を同時に吐出する駆動ノズル総数を示し、縦軸は駆動ノズルから吐出されるインク液滴の体積である液滴体積を示す。また、図11の例は、駆動されるノズル11に対応する圧電素子15に対して、基本駆動電圧波形信号の基本駆動電圧波形である第1波形および第2波形がそれぞれ印加された場合の、駆動ノズル総数と液滴体積との関係を示す。ここで、実線で示す線は、圧電素子15に第1波形を印加した場合の液滴体積の変動を示し、破線で示す線は、圧電素子15に第2波形を印加した場合の液滴体積の変動を示す。
【0103】
図11に示すように、駆動ノズル総数に対する液滴体積は、対応する圧電素子15に印加される駆動電圧の波形によって異なる。具体的には、圧電素子15に第2波形が印加された場合の液滴体積は、第1波形が印加された場合の液滴体積よりも大きい。これは、第2波形の方が第1波形よりも電圧振幅が大きく、圧電素子15の変形量が大きいためである。
【0104】
また、液滴体積は、駆動電圧の振幅の大小に関わらず、駆動ノズル総数が増加するに従って小さくなる。これは、インクの供給路を通じて相互に他のノズル11のインクに伝搬して吐出条件を変動させる流体クロストーク量が、同時に吐出するノズル数が多いほど大きいほど増大し、吐出量を低下させるためである。
【0105】
一方、圧電素子15に第2波形が印加された場合の液滴体積の変動量は、圧電素子15に第1波形が印加された場合の液滴体積の変動量よりも大きい。これは、電圧振幅が大きいほど、流体クロストークの影響が大きいためである。
【0106】
このように、駆動ノズルから吐出されるインク液滴の体積変動量は、駆動電圧波形の形状によって異なる。また、インク液滴の体積変動量は、駆動ノズルの分布パターンによっても異なる。具体的には、複数の駆動ノズルの距離が近いほど、流体クロストークが大きくなる。そのため、例えば、駆動ノズルからのインク液滴の吐出が1箇所に集中するような印字パターンの方が、インク液滴の吐出が均一に分散するような印字パターンよりも、インク液滴の体積変動量が大きくなる。
【0107】
ここで、本実施の形態1に係る印刷装置1のように、電圧振幅が異なる第1波形および第2波形の形状を有する駆動電圧を圧電素子15に対して連続的に印加する場合について考える。例えば、図11に示す例において、駆動ノズルに対応する圧電素子15に対して第1波形の駆動電圧波形が印加されたときに吐出されるべきインク液滴の体積が、VOSであるものとする。また、当該圧電素子15に対して第2波形の駆動電圧波形が印加されたときに吐出されるべきインク液滴の体積が、VOLであるものとする。
【0108】
一方、この例では、N個のノズル11が駆動ノズルとして動作する場合の、駆動ノズルに対応する圧電素子15に対して第1波形の駆動電圧波形が印加されたときの液滴体積は、Vとなる。また、当該圧電素子15に対して第2波形の駆動電圧波形が印加されたときの液滴体積は、Vとなる。
【0109】
このとき、従来の補正処理では、例えば、第1波形の駆動電圧波形が印加された場合の液滴体積をVOSに保持するために、第1波形の電圧振幅が大きくなるように、電圧振幅が所定の補正率で補正される。また、第2波形の駆動電圧波形の電圧振幅についても、同様の補正率で補正される。
【0110】
しかしながら、第1波形を用いた場合の体積変動量と、第2波形を用いた場合の体積変動量とでは、変動量が異なる。したがって、この場合には、第1波形の電圧振幅は適切な振幅に補正されるが、補正に用いられる補正率が第2波形の補正に適した値でないため、第2波形の電圧振幅は適切な振幅に補正されず、液滴体積をVOLに保持することができない。
【0111】
このように、従来の補正処理では、複数の波形のうちいずれか一方の波形が適切な波形となるような補正率を用いて補正した場合に、他方の波形を適切な形状にすることができない。
【0112】
そこで、本実施の形態1において、印刷装置1は、形状が異なる複数の駆動電圧波形の形状に応じた補正率を算出し、算出した補正率に基づいて駆動電圧波形を補正する駆動電圧波形補正処理を行う。
【0113】
以下、駆動電圧波形補正処理について、ヘッド制御部206およびヘッド駆動部207の動作を交えて説明する。図12は、本実施の形態1に係る駆動電圧波形補正処理について説明するためのタイミングチャートである。
【0114】
まず、ヘッド制御部206は、同期制御部205から出力された基本印刷タイミング信号に基づきRAM202から読み出した印刷画像データを、ノズル総数検出部61およびノズルパターン検出部63に供給する(図5参照)。また、ヘッド制御部206は、基本印刷タイミング信号に基づいて印刷タイミング信号を生成し、駆動波形生成部66の基本波形生成部261に供給する。
【0115】
ノズル総数検出部61は、受け取った印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数Nを検出し、検出結果を第1補正率算出部62に供給する(図5参照)。また、ノズルパターン検出部63は、印刷画像データに基づき、駆動ノズル分布パターンPを検出し、検出結果を第2補正率算出部64に供給する。
【0116】
一方、基本波形生成部261は、受け取った印刷タイミング信号に基づき、基本駆動電圧波形信号、および基本駆動電圧波形の特徴情報である特徴量FVX(Xは、「S」または「L」)を生成する(図12参照)。なお、この例において、特徴量FVXは、第1波形または第2波形における電圧振幅であるものとし、以下では、「特徴量FVX」を「電圧振幅FVX」と表記する。
【0117】
そして、基本波形生成部261は、生成した基本駆動電圧波形信号を波形補正部262に供給する(図5参照)。また、基本波形生成部261は、生成した電圧振幅FVXを第1補正率算出部62および第2補正率算出部64に供給する。
【0118】
第1補正率算出部62は、ノズル総数検出部61で検出された駆動ノズル総数Nと、基本波形生成部261から受け取った電圧振幅FVXとに基づき、第1補正率α(N,FVX)を算出する。そして、第1補正率算出部62は、算出した第1補正率α(N,FVX)を最終補正率算出部65に供給する(図5参照)。
【0119】
具体的には、図12に示すように、第1補正率算出部62は、駆動ノズル総数Nおよび電圧振幅FVSに基づき、基本駆動電圧波形信号に含まれる第1波形に対応する第1補正率α(N,FVS)を算出する。また、第1補正率算出部62は、駆動ノズル総数Nおよび電圧振幅FVLに基づき、基本駆動電圧波形信号に含まれる第2波形に対応する第1補正率α(N,FVL)を算出する。なお、以下の説明において、第1補正率α(N,FVS)およびα(N,FVL)を特に区別する必要がない場合には、第1補正率α(N,FVX)を単に「第1補正率α」と称することがある。
【0120】
第2補正率算出部64は、ノズルパターン検出部63で検出された駆動ノズル分布パターンPと、基本波形生成部261から受け取った電圧振幅FVXとに基づき、第2補正率β(P,FVX)を算出する。そして、第2補正率算出部64は、算出した第2補正率β(P,FVX)を最終補正率算出部65に供給する(図5参照)。
【0121】
具体的には、図12に示すように、第2補正率算出部64は、駆動ノズル分布パターンPおよび電圧振幅FVSに基づき、基本駆動電圧波形信号に含まれる第1波形に対応する第2補正率β(P,FVS)を算出する。また、第2補正率算出部64は、駆動ノズル分布パターンPおよび電圧振幅FVLに基づき、基本駆動電圧波形信号に含まれる第2波形に対応する第2補正率β(P,FVL)を算出する。なお、以下の説明において、第2補正率β(P,FVS)およびβ(P,FVL)を特に区別する必要がない場合には、第2補正率β(P,FVX)を単に「第2補正率β」と称することがある。
【0122】
最終補正率算出部65は、第1補正率α(N,FVX)と第2補正率β(P,FVX)とに基づき、最終補正率γ((α(N,FVX),β(P,FVX))を算出する。そして、最終補正率算出部65は、算出された最終補正率γ((α(N,FVX),β(P,FVX))を波形補正部262に供給する(図5参照)。
【0123】
具体的には、図12に示すように、最終補正率算出部65は、第1補正率α(N,FVS)および第2補正率β(P,FVS)に基づき、基本駆動電圧波形信号に含まれる第1波形に対応する最終補正率γ((α(N,FVS),β(P,FVS))を算出する。また、最終補正率算出部65は、第1補正率α(N,FVL)および第2補正率β(P,FVL)に基づき、基本駆動電圧波形信号に含まれる第2波形に対応する最終補正率γ((α(N,FVL),β(P,FVL))を算出する。なお、以下の説明において、最終補正率γ((α(N,FVS),β(P,FVS))およびγ((α(N,FVL),β(P,FVL))を特に区別する必要がない場合には、最終補正率γ((α(N,FVX),β(P,FVX))を単に「最終補正率γ」と称することがある。
【0124】
具体的には、例えば、第1補正率αおよび第2補正率βと、最終補正率γとを対応付けたLUT(Look Up Table)を予め用意しておく。そして、最終補正率算出部65は、算出された第1補正率αおよび第2補正率βに基づきLUTを参照し、当該第1補正率αおよび第2補正率βに対応する最終補正率γを決定する。
【0125】
波形補正部262は、最終補正率算出部65から受け取った最終補正率γに基づき、基本駆動電圧波形を補正し、補正駆動電圧波形信号を生成する(図12参照)。そして、波形補正部262は、生成した補正駆動電圧波形信号をヘッド駆動部207のDAC71に供給する(図5参照)。
【0126】
このようにして駆動電圧波形補正処理が行われることにより、基本駆動電圧波形信号に含まれる第1波形と第2波形とに対して、異なる最終補正率γが適用される。例えば、図12に示す例では、第1波形および第2波形のそれぞれの電圧振幅に対して異なる最終補正率γによる補正が行われている。具体的には、例えば、第1波形に対する最終補正率γ((α(N,FVS),β(P,FVS))が1.25倍であり、第2波形に対する最終補正率γ((α(N,FVL),β(P,FVL))が1.5倍である。
【0127】
このようにして補正駆動電圧波形信号が生成されることにより、圧電素子15には、駆動ノズルの関係を考慮した駆動電圧が印加されることになる。そのため、本実施の形態1では、通常の駆動電圧が印加される場合と比較して、対応するノズル11からインク液滴が適切に吐出される。
【0128】
以上のように、本実施の形態1に係る印刷装置1では、印刷画像データに基づき検出された駆動ノズル総数と特徴情報とに基づき基本駆動電圧波形を補正して補正駆動電圧波形が得られる。そして、得られた補正駆動電圧波形が、駆動ノズルに対応する圧電素子15に印加される。これにより、圧電素子15には、駆動ノズル総数を考慮した補正駆動電圧が印加されるため、異なる形状の複数の駆動電圧波形を用いた場合でも、ノズル11からインク液滴を適切に吐出することができる。
【0129】
<実施の形態2.>
次に、本実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る印刷装置1は、多値の印刷画像データを用いて画像を形成する点で、実施の形態1と相違する。なお、本実施の形態2において、実施の形態1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0130】
多値の印刷画像データによる階調表現を用いて画像が形成される場合、一般的には、圧電素子15に印加される駆動電圧の波形が階調によって異なるため、駆動されるノズル11から吐出されるインク液滴の大きさは、階調毎に異なる。例えば、多値の印刷画像データが4階調のデータである場合、ノズル11から吐出されるインク液滴は、「液滴なし」、「小液滴」、「中液滴」および「大液滴」のいずれかとなる。
【0131】
ノズル11から吐出されるインク液滴が「液滴なし」の場合、対応する圧電素子15には、駆動電圧が印加されない。ノズル11から吐出されるインク液滴が「小液滴」の場合、対応する圧電素子15には、通常、図6に示す基本駆動電圧波形における第1波形のみが印加される。ノズル11から吐出されるインク液滴が「中液滴」の場合、対応する圧電素子15には、通常、図6に示す基本駆動電圧波形における第2波形のみが印加される。ノズル11から吐出されるインク液滴が「大液滴」の場合、対応する圧電素子15には、基本駆動電圧波形における第1波形と第2波形とが連続する波形が印加される。すなわち、本実施の形態2において、基本駆動電圧波形は、第1波形および第2波形のうち、少なくともいずれか一方の波形で表される。
【0132】
このように、多値の印刷画像データによって画像が形成される場合には、階調毎に異なる波形の駆動電圧が圧電素子15に印加される。本実施の形態2では、多値の印刷画像データが用いられる場合でも、駆動電圧波形を適切に補正し、ノズル11から液滴を適切に吐出できるようにする。
【0133】
[印刷装置1の構成]
本実施の形態2に係る印刷装置1について説明する。本実施の形態2に係る印刷装置1は、図1に示す実施の形態1に係る印刷装置1と同様に、インクジェットヘッドモジュール100、制御装置200およびステージ300を含んで構成されている。また、制御装置200には、外部のホストPC2が接続されている。本実施の形態2において、制御装置200は、接続されたホストPC2から多値の印刷画像データを受信する。インクジェットヘッドモジュール100およびステージ300の構成については、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0134】
制御装置200は、図4に示すように、CPU201、RAM202、ROM203、ホストI/F204、同期制御部205、ヘッド制御部206およびヘッド駆動部207を備えている。このうち、CPU201、RAM202、ROM203、ホストI/F204、同期制御部205およびヘッド駆動部207の構成については、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。以下では、本実施の形態2に係るヘッド制御部206の構成について説明する。
【0135】
(ヘッド制御部206)
図13は、本実施の形態2に係るヘッド制御部206の構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、図13において、ヘッド制御部206の構成は、駆動電圧波形補正処理に関連する構成のみが図示されている。
【0136】
図13に示すように、ヘッド制御部206は、ノズル総数検出部61、第1補正率算出部62、ノズルパターン検出部63、第2補正率算出部64、最終補正率算出部65、駆動波形生成部66および時分割制御部67を有している。ノズル総数検出部61、第1補正率算出部62、ノズルパターン検出部63、第2補正率算出部64および最終補正率算出部65については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0137】
時分割制御部67は、多値の印刷画像データおよび印刷タイミング信号が入力される。時分割制御部67は、入力された印刷画像データを1ビット毎の印刷画像データに時分割し、ノズル総数検出部61およびノズルパターン検出部63に供給する。
【0138】
図14は、印刷画像データの時分割について説明するためのタイミングチャートである。図14において、多値の印刷画像データにおける「ab」、「cd」、・・・、「op」の表記は、印刷画像データが2ビットであることを示す。また、左側の「a」、「c」、・・・、「o」が上位ビットであり、右側の「b」、「d」、・・・、「p」が下位ビットであることを示す。図14に示すように、時分割制御部67は、多値の印刷画像データab、cd、・・・、opが入力されると、下位ビットからなる時分割画像データb、d、・・・、pを出力する。その後、時分割制御部67は、上位ビットからなる時分割画像データa、c、・・・、oを出力する。
【0139】
図13の説明に戻ると、時分割制御部67は、印刷画像データおよび印刷タイミング信号に基づき、切替制御信号、第1波形生成タイミング信号および第2波形生成タイミング信号を生成する。そして、時分割制御部67は、生成した切替制御信号、第1波形生成タイミング信号および第2波形生成タイミング信号を駆動波形生成部66に供給する。
【0140】
切替制御信号は、駆動波形生成部66の基本波形生成部263に設けられた、後述する第2選択器2635および第3選択器2636(図15参照)の切り替えを制御するための信号である。第1波形生成タイミング信号は、第1波形の生成を指示するための信号である。第2波形生成タイミング信号は、第2波形の生成を指示するための信号である。
【0141】
駆動波形生成部66は、波形補正部262および基本波形生成部263を有している。駆動波形生成部66は、実施の形態1における駆動波形生成部66と同様に、最終補正率算出部65で算出された最終補正率を用いて基本駆動電圧波形を補正し、補正駆動電圧波形信号を生成する。なお、波形補正部262については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0142】
基本波形生成部263は、切替制御信号、第1波形生成タイミング信号および第2波形生成タイミング信号に基づき、基本駆動電圧波形信号を生成し、波形補正部262に供給する。また、基本波形生成部263は、生成した基本駆動電圧波形信号の基本駆動電圧波形に関する特徴情報を生成し、生成した特徴情報を第1補正率算出部62および第2補正率算出部64に供給する。
【0143】
図15は、図13の基本波形生成部263の構成の一例を示すブロック図である。図16は、基本駆動電圧波形信号および特徴情報の生成について説明するためのタイミングチャートである。図15に示すように、基本波形生成部263は、第1レジスタ2615、第2レジスタ2616、第2カウンタである小液滴カウンタ2631、第3カウンタである中液滴カウンタ2632、第2波形メモリである小液滴波形メモリ2633、第3波形メモリである中液滴波形メモリ2634、第2選択器2635および第3選択器2636を有している。第1レジスタ2615および第2レジスタ2616は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0144】
小液滴カウンタ2631は、第1波形生成タイミング信号が入力される。小液滴カウンタ2631は、第1波形生成タイミング信号が入力されたタイミングでカウント値を「0」にリセットし、所定の周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する。また、小液滴カウンタ2631は、カウント値が予め設定された第1最大値max_1にとなった場合に、カウントを停止する。小液滴カウンタ2631でカウントされるカウント値は、小液滴波形メモリ2633のアドレスに対応する。
【0145】
中液滴カウンタ2632は、第2波形生成タイミング信号が入力される。中液滴カウンタ2632は、第2波形生成タイミング信号が入力されたタイミングでカウント値を「0」にリセットし、所定の周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する。また、中液滴カウンタ2632は、カウント値が予め設定された第2最大値max_2にとなった場合に、カウントを停止する。中液滴カウンタ2632でカウントされるカウント値は、中液滴波形メモリ2634のアドレスに対応する。
【0146】
小液滴波形メモリ2633は、小液滴カウンタ2631からのカウント値が入力される。小液滴波形メモリ2633は、カウント値「0」~「max_1」に対応するアドレスを有し、それぞれのアドレスに対応する領域に、第1波形の振幅データ等を示す波形データを予め格納している。小液滴波形メモリ2633は、入力されたカウント値が示すアドレスに格納された波形データを出力する。
【0147】
本実施の形態2において、小液滴波形メモリ2633のアドレス「0」~「max_1」には、第1波形における所定周期間隔での電圧振幅値が格納されている。したがって、基本波形生成部263は、小液滴波形メモリ2633のアドレス「0」~「max_1」に格納された波形データを所定周期毎に順次出力することにより、第1波形を生成することができる。
【0148】
中液滴波形メモリ2634は、中液滴カウンタ2632からのカウント値が入力される。中液滴波形メモリ2634は、カウント値「0」~「max_2」に対応するアドレスを有し、それぞれのアドレスに対応する領域に、第2波形の振幅データ等を示す波形データを予め格納している。中液滴波形メモリ2634は、入力されたカウント値が示すアドレスに格納された波形データを出力する。
【0149】
本実施の形態2において、中液滴波形メモリ2634のアドレス「0」~「max_2」には、第2波形における所定周期間隔での電圧振幅値が格納されている。したがって、基本波形生成部263は、中液滴波形メモリ2634のアドレス「0」~「max_2」に格納された波形データを所定周期毎に順次出力することにより、第2波形を生成することができる。
【0150】
第2選択器2635は、小液滴波形メモリ2633および中液滴波形メモリ2634が接続されている。また、第2選択器2635には、切替制御信号が入力される。第2選択器2635は、切替制御信号に基づき、小液滴波形メモリ2633および中液滴波形メモリ2634のいずれか一方、あるいは両方に格納された波形データを選択して出力する。
【0151】
第3選択器2636は、第1レジスタ2615および第2レジスタ2616が接続されている。また、第3選択器2636には、切替制御信号が入力される。第3選択器2636は、切替制御信号に基づき、第1レジスタ2615および第2レジスタ2616のいずれか一方、あるいは両方に格納された特徴情報を選択して出力する。
【0152】
[印刷装置1の動作]
次に、本実施の形態2に係る印刷装置1の動作について説明する。図17は、本実施の形態2に係る印刷装置1の動作について説明するためのタイミングチャートである。印刷装置1の動作において、制御装置200のヘッド制御部206の動作以外の動作については、実施の形態1と同様であるため、ここでは、ヘッド制御部206の動作について説明する。また、以下の説明では、多値の印刷画像データの一例として、2ビットの印刷画像データを用いるものとする。
【0153】
(ヘッド制御部206の動作)
まず、ヘッド制御部206は、同期制御部205から出力された基本印刷タイミング信号に基づきRAM202から読み出した多値の印刷画像データを、時分割制御部67に供給する(図13参照)。また、ヘッド制御部206は、基本印刷タイミング信号に基づいて印刷タイミング信号を生成し、生成した印刷タイミング信号を時分割制御部67に供給する。
【0154】
時分割制御部67は、入力された2ビットの印刷画像データを、最下位ビットから最上位ビットの順序で1ビット毎の印刷画像データに時分割する。そして、時分割制御部67は、時分割した印刷画像データをノズル総数検出部61およびノズルパターン検出部63に供給する(図13参照)。
【0155】
また、時分割制御部67は、印刷画像データおよび印刷タイミング信号に基づき、切替制御信号、第1波形生成タイミング信号および第2波形生成タイミング信号を生成する。そして、時分割制御部67は、生成した切替制御信号、第1波形生成タイミング信号および第2波形生成タイミング信号を駆動波形生成部66の基本波形生成部263に供給する。
【0156】
ノズル総数検出部61は、受け取った印刷画像データに基づき、駆動ノズル総数を検出し、検出結果を第1補正率算出部62に供給する。また、ノズルパターン検出部63は、印刷画像データに基づき、駆動ノズル分布パターンを検出し、検出結果を第2補正率算出部64に供給する。
【0157】
一方、基本波形生成部263は、受け取った切替制御信号、第1波形生成タイミング信号および第2波形生成タイミング信号に基づき、基本駆動電圧波形信号および特徴情報を生成する。そして、基本波形生成部263は、生成した基本駆動電圧波形信号を波形補正部262に供給する。また、基本波形生成部263は、生成した特徴情報を第1補正率算出部62および第2補正率算出部64に供給する。
【0158】
このとき、基本波形生成部263は、第1波形生成タイミング信号に基づき小液滴カウンタ2631のカウント値をリセットした後、所定周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する(図16参照)。そして、基本波形生成部263は、小液滴カウンタ2631からカウント値「0」~「max_1」を所定周期で順次出力し、カウント値「0」~「max_1」に対応するアドレスに格納された波形データを小液滴波形メモリ2633から出力する。これにより、基本波形生成部263は、第1波形(図6参照)を生成し、第2選択器2635に出力する。
【0159】
また、基本波形生成部263は、第2波形生成タイミング信号に基づき中液滴カウンタ2632のカウント値をリセットした後、所定周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する(図16参照)。そして、基本波形生成部263は、中液滴カウンタ2632のカウント値「0」~「max_2」を所定周期で順次出力し、カウント値「0」~「max_2」に対応するアドレスに格納された波形データを中液滴波形メモリ2634から出力する。これにより、基本波形生成部263は、第2波形(図6参照)を生成し、第2選択器2635に出力する。
【0160】
第2選択器2635は、切替制御信号に基づき、入力された第1波形および第2波形のいずれか一方を選択する。そして、第2選択器2635は、選択された波形を含む信号を基本駆動電圧波形信号として出力する。
【0161】
また、第3選択器2636は、第1レジスタ2615に格納された第1波形についての特徴量と、第2レジスタ2616に格納された第2波形についての特徴量とが入力され、これらの特徴量を共に取得する。そして、第3選択器2636は、切替制御信号に基づき、取得した2つの特徴量のいずれか一方を選択する。選択された特徴量は、第1補正率算出部62および第2補正率算出部64のそれぞれに特徴情報として供給される。
【0162】
このようにして、切替制御信号に基づいて第2選択器2635および第3選択器2636が制御されることにより、最下位ビットの印刷画像データの送信が終了すると、第1波形および第1波形についての特徴量が、基本波形生成部263から出力される。また、最上位ビットの印刷画像データの送信が終了すると、第2波形および第2波形についての特徴量が、基本波形生成部263から出力される。
【0163】
次に、第1補正率算出部62は、ノズル総数検出部61で検出された駆動ノズル総数と、基本波形生成部263から受け取った特徴情報とに基づき、第1補正率を算出する。そして、第1補正率算出部62は、算出した第1補正率を最終補正率算出部65に供給する(図13参照)。
【0164】
また、第2補正率算出部64は、ノズルパターン検出部63で検出された駆動ノズル分布パターンと、基本波形生成部263から受け取った特徴量とに基づき、第2補正率を算出する。そして、第2補正率算出部64は、算出した第2補正率を最終補正率算出部65に供給する
【0165】
最終補正率算出部65は、第1補正率と第2補正率とに基づき、最終補正率を算出する。そして、最終補正率算出部65は、算出された最終補正率を波形補正部262に供給する。
【0166】
波形補正部262は、最終補正率算出部65から受け取った最終補正率に基づき、基本駆動電圧波形を補正し、補正駆動電圧波形信号を生成する。そして、波形補正部262は、生成した補正駆動電圧波形信号をヘッド駆動部207に供給する。
【0167】
このように、ヘッド制御部206は、多値の印刷画像データに基づき、圧電素子15に印加される駆動電圧を各液滴量波形毎に異なる最終補正率で補正した補正駆動電圧を生成する。これにより、本実施の形態2では、多値の印刷画像データが用いられる場合でも、駆動電圧波形が適切に補正されるため、駆動ノズルからインク液滴を適切に吐出することができる。
【0168】
[変形例]
本実施の形態2の変形例では、制御装置200におけるヘッド制御部206の駆動波形生成部66に設けられた基本波形生成部263の構成が、本実施の形態2と相違する。以下、本実施の形態2の変形例による基本波形生成部263について説明する。
【0169】
(基本波形生成部263の構成)
図18は、本実施の形態2の変形例に係る基本波形生成部263の構成の一例を示すブロック図である。図19は、基本駆動電圧波形信号および特徴情報の生成について説明するためのタイミングチャートである。図18に示すように、基本波形生成部263は、第1レジスタ2615、第2レジスタ2616、第3選択器2636、第4選択器2637、第4カウンタ2638、第4波形メモリ2639および第4選択器2640を有している。第1レジスタ2615、第2レジスタ2616および第3選択器2636は、実施の形態1および2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0170】
第4選択器2637には、第1開始アドレス情報、第2開始アドレス情報および切替制御信号が入力される。第4選択器2637は、切替制御信号に基づき、第1開始アドレス情報および第2開始アドレス情報のいずれか一方のアドレス情報を選択して出力する。
【0171】
第1開始アドレス情報は、第4波形メモリ2639から第1波形についての波形データを出力する場合の開始アドレスを示す値を含む情報である。第1開始アドレス情報が示す値は、第4カウンタ2638でカウントする際の開始値に対応し、開始アドレスを示す値として、例えば「0」が設定される。
【0172】
第2開始アドレス情報は、第4波形メモリ2639から第2波形についての波形データを出力する場合の開始アドレスを示す値を含む情報である。第2開始アドレス情報が示す値は、第4カウンタ2638でカウントする際の開始値に対応し、開始アドレスを示す値として、例えば「a」が設定される。
【0173】
第4カウンタ2638は、第4選択器2637で選択されたアドレス情報およびカウンタプリセット信号が入力される。カウンタプリセット信号は、第4カウンタ2638に対してカウント値の開始値を指示するための信号である。
【0174】
第4カウンタ2638は、カウンタプリセット信号が入力されたタイミングで、入力されたアドレス情報が示す値に開始値をセットし、所定の周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する。また、第4カウンタ2638は、カウント値が開始値に予め設定された最大値maxを加算した値となった場合に、カウントを停止する。第4カウンタ2638でカウントされるカウント値は、第4波形メモリ2639のアドレスに対応する。
【0175】
例えば、開始アドレスを示す値として「0」が設定された第1開始アドレス情報が第4選択器2637から入力された場合、第4カウンタ2638は、開始値を「0」にセットする。そして、第4カウンタ2638は、所定周期でカウントを行い、カウント値が「max(=0+max)」となった場合に、カウントを停止する。
【0176】
また、例えば、開始アドレスを示す値として「a」が設定された第2開始アドレス情報が第4選択器2637から入力された場合、第4カウンタ2638は、開始値を「a」にセットする。そして、第4カウンタ2638は、所定周期でカウントを行い、カウント値が「a+max」となった場合に、カウントを停止する。
【0177】
第4波形メモリ2639は、第4カウンタ2638からのカウント値が入力される。第4波形メモリ2639は、カウント値「0」~「max」およびカウント値「a」~「a+max」に対応するアドレスを有し、それぞれのアドレスに対応する領域に、基本駆動電圧波形についての波形データを予め格納している。第4波形メモリ2639は、入力されたカウント値が示すアドレスに格納された波形データを出力する。
【0178】
本実施の形態2の変形例において、第4波形メモリ2639のアドレス「0」~「max」には、第1波形における所定周期間隔での電圧振幅値が格納されている。したがって、基本波形生成部263は、第4波形メモリ2639のアドレス「0」~「max」に格納された電圧振幅値を所定周期毎に順次出力することにより、第1波形を生成することができる。
【0179】
また、アドレス「a」~「a+max」には、第2波形における所定周期間隔での電圧振幅値が格納されている。したがって、基本波形生成部263は、第4波形メモリ2639のアドレス「a」~「a+max」に格納された電圧振幅値を所定周期毎に順次出力することにより、第2波形を生成することができる。
【0180】
なお、この変形例では、基本波形生成部263に対してカウンタプリセット信号が入力される。そのため、時分割制御部67(図13参照)は、印刷画像データおよび印刷タイミング信号に基づき、カウンタプリセット信号を駆動波形生成部66に供給する。
【0181】
(基本波形生成部263の動作)
基本波形生成部263の動作について説明する。基本波形生成部263は、受け取った切替制御信号およびカウンタプリセット信号に基づき、基本駆動電圧波形信号および特徴情報を生成する。
【0182】
このとき、基本波形生成部263の第4選択器2637は、切替制御信号に基づき、入力された第1開始アドレス情報および第2開始アドレス情報のいずれか一方を選択する。そして、第4選択器2637は、選択した開始アドレス情報を第4カウンタ2638に供給する。
【0183】
基本波形生成部263は、カウンタプリセット信号に基づき、第4カウンタ2638の開始値を入力された開始アドレス情報が示す値にセットした後、所定周期でカウント値をインクリメントしてカウント値を出力する。そして、第4カウンタ2638からカウント値「0」~「max」、または、カウント値「a」~「a+max」が所定周期で順次出力される。これにより、基本波形生成部263は、カウント値「0」~「max」、または、カウント値「a」~「a+max」に対応するアドレスに格納された波形データを第4波形メモリ2639から出力する(図19参照)。
【0184】
例えば、基本波形生成部263は、第4選択器2637で第1開始アドレス情報が選択された場合、第4波形メモリ2639のアドレス「0」~「max」に格納された波形データを所定周期毎に順次出力することにより、第1波形を生成することができる。また、例えば、基本波形生成部263は、第4選択器2637で第2開始アドレス情報が選択された場合、第4波形メモリ2639のアドレス「a」~「a+max」に格納された波形データを所定周期毎に順次出力することにより、第2波形を生成することができる。
【0185】
また、第3選択器2636は、第1レジスタ2615に格納された第1波形についての特徴量と、第2レジスタ2616に格納された第2波形についての特徴量とが入力され、これらの特徴量を共に取得する。そして、第3選択器2636は、切替制御信号に基づき、取得した2つの特徴量のいずれか一方を選択する。選択された特徴量は、第1補正率算出部62および第2補正率算出部64のそれぞれに特徴情報として供給される。
【0186】
このように、基本波形生成部263が図18に示す構成を有している場合でも、基本駆動電圧波形信号および特徴情報を、実施の形態2と同様に生成することができる。
【0187】
以上のように、本実施の形態2に係る印刷装置1では、駆動電圧波形の形状に応じた補正率を用いて駆動電圧波形が補正される。そのため、階調毎に異なる駆動電圧波形が必要な多値の印刷画像データが用いられる場合でも、駆動ノズルからインク液滴を適切に吐出することができる。
【0188】
以上、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態2の変形例について説明したが、本開示は、上述した実施の形態1、実施の形態2および実施の形態2の変形例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0189】
本実施の形態1および2において、ヘッド制御部206は、駆動ノズル総数と駆動ノズル分布パターンとの両方を考慮して最終補正率を算出するように説明したが、これはこの例に限られない。例えば、ヘッド制御部206は、駆動ノズル総数のみを考慮して最終補正率を算出してもよい。
【0190】
この場合、図5に示すヘッド制御部206は、ノズルパターン検出部63、第2補正率算出部64および最終補正率算出部65を省略し、第1補正率算出部62で算出される第1補正率を最終補正率として扱うようにする。これにより、実施の形態1および2と同様に、異なる形状の複数の駆動電圧波形を用いた場合でも、ノズル11からインク液滴を適切に吐出することができる
【符号の説明】
【0191】
1 印刷装置
2 ホストPC
10 インクジェットヘッド
11 ノズル
12 圧力室
15、15、15、15、・・・、1599 圧電素子
17 液滴
20 スイッチ回路
30 ヘッドモジュール基板
61 ノズル総数検出部
62 第1補正率算出部
63 ノズルパターン検出部
64 第2補正率算出部
65 最終補正率算出部
66 駆動波形生成部
67 時分割制御部
100 インクジェットヘッドモジュール
200 制御装置
206 ヘッド制御部
207 ヘッド駆動部
261、263 基本波形生成部
262 波形補正部
300 ステージ
2611 第1カウンタ
2612 第1波形メモリ
2613 比較器
2614 第1選択器
2615 第1レジスタ
2616 第2レジスタ
2631 小液滴カウンタ
2632 中液滴カウンタ
2633 小液滴波形メモリ
2634 中液滴波形メモリ
2635 第2選択器
2636 第3選択器
2637 第4選択器
2638 第4カウンタ
2639 第4波形メモリ
図1
図2
図3
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