(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154159
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】杭圧入機
(51)【国際特許分類】
E02D 7/20 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
E02D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067832
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】澤田 泰希
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和雄
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA06
2D050CB22
2D050CB23
2D050EE04
(57)【要約】
【課題】圧入する杭の傾斜及び位置ずれを抑制することができる杭圧入機を提供する。
【解決手段】杭圧入機1は、本体部2と、本体部2に接続され、地盤に設置された既設の杭10aの上端部を支持するクランプ装置3と、本体部2に接続され、クランプ装置3によって既設の杭10aから反力を得て、杭10bを把持して下降させて地盤に圧入するチャッキング装置4と、を備え、チャッキング装置4は、杭10bを把持する上側チャッキング機構40と、上側チャッキング機構40が杭10bを把持する部分よりも下方の位置で杭10bを把持する下側チャッキング機構50と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に接続され、地盤に設置された既設の杭の上端部を支持するクランプ装置と、
前記本体部に接続され、前記クランプ装置によって前記既設の杭から反力を得て、杭を把持して下降させて前記地盤に圧入するチャッキング装置と、を備え、
前記チャッキング装置は、
前記杭を把持する上側チャッキング機構と、
前記上側チャッキング機構が前記杭を把持する部分よりも下方の位置で前記杭を把持する下側チャッキング機構と、を有する杭圧入機。
【請求項2】
前記下側チャッキング機構は、
前記本体部に接続され、前記杭を把持する第1把持部と、
前記既設の杭に接続され、前記第1把持部が前記杭を把持する部分よりも下方の位置で前記杭を把持する第2把持部と、を有する請求項1に記載の杭圧入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼管杭や鋼管矢板等の杭は高強度で耐久性が高く、海岸や河川流域における耐震護岸や橋りょう基礎(鋼管矢板井筒等)の構造形式として多くの採用実績がある。施工時に、空頭制限や騒音、振動の制約がある等の要因で、打撃工法やバイブロハンマ工法を用いることが困難な施工環境下では、圧入工法を採用することとなる。
【0003】
圧入工法では、施工機械として下記の特許文献1に示すような鋼管圧入機が用いられる。鋼管圧入機は、既に打設している鋼管から反力を確保し、チャッキング部分1段で打設中の鋼管を支持する機構となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
杭が圧入される地盤が軟弱地盤である場合には、横方向(水平方向)の地盤反力が小さくなり、地盤中の杭の横抵抗が小さくなってしまう。特許文献1に記載の鋼管圧入機では、長尺な杭を1段のみのチャック装置で支持するため、不可視部分で、チャック装置部分を始点として緩やかに傾斜や位置ずれする虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、圧入する杭の傾斜及び位置ずれを抑制することができる杭圧入機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る杭圧入機は、本体部と、前記本体部に接続され、地盤に設置された既設の杭の上端部を支持するクランプ装置と、前記本体部に接続され、前記クランプ装置によって前記既設の杭から反力を得て、杭を把持して下降させて前記地盤に圧入するチャッキング装置と、を備え、前記チャッキング装置は、前記杭を把持する上側チャッキング機構と、前記上側チャッキング機構が前記杭を把持する部分よりも下方の位置で前記杭を把持する下側チャッキング機構と、を有する。
【0008】
このように構成された杭圧入機では、圧入する杭を把持するチャッキング装置は、クランプ装置によって既設の杭から反力を得ている。杭は、上側チャッキング機構及び下側チャッキング機構の上下2段のチャッキング機構によって、支持されている。よって、軟弱地盤であっても、杭の傾斜及び位置ずれを抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る杭圧入機は、前記下側チャッキング機構は、前記本体部に接続され、前記杭を把持する第1把持部と、前記既設の杭に接続され、前記第1把持部が前記杭を把持する部分よりも下方の位置で前記杭を把持する第2把持部と、を有していてもよい。
【0010】
このように構成された杭圧入機では、下側チャッキング機構は、本体部に接続された第1把持部と、既設の杭に接続された第2把持部と、を有している。よって、既設の杭からの反力をより一層確保して、杭を安定して把持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る杭圧入機によれば、圧入する杭の傾斜及び位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る杭圧入機の一部を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る杭圧入機について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る杭圧入機の一部を示す模式的な図である。
図1に示すように、杭圧入機1は、鋼管や鋼管矢板等の杭10を地盤に圧入する圧入機である。杭圧入機1は、本体部2と、クランプ装置3と、チャッキング装置4と、を備えている。
【0014】
本体部2は、地盤に既に圧入された既設の杭10aの上側に設置されるサドル部21と、サドル部21に対して前後移動可能なスライドベース部22と、スライドベース部22の上側で水平方向に旋回可能なリーダマスト部23と、を有している。
【0015】
クランプ装置3は、本体部2のサドル部21に接続され、本体部2から下方に延びている。クランプ装置3は、地盤に既に圧入された既設の杭10aの上端部を掴んで支持する複数のクランプ装置31を有している。
【0016】
チャッキング装置4は、上側チャッキング機構40と、下側チャッキング機構50と、を有している。チャッキング装置4は、クランプ装置3によって既設の杭10aから反力を得て、圧入する杭10bを把持して下降させて地盤に圧入する。
【0017】
上側チャッキング機構40は、本体部2のリーダマスト部23の前部に接続されている。上側チャッキング機構40は、接続部41と、把持部42と、を有している。接続部41は、リーダマスト部23に昇降可能に取り付けられている。接続部41は、リーダマスト部23に対して水平方向に移動可能に取り付けられていてもよい。把持部42は、接続部41の先端部に設けられ、杭10bの外側を把持可能である。
【0018】
下側チャッキング機構50は、上側チャッキング機構40が杭10bを把持する部分よりも下方の位置で杭10bを把持する。下側チャッキング機構50は、第1把持部51と、第2把持部56と、を有している。
【0019】
第1把持部51は、接続部52と、把持部53と、を有している。接続部52は、リーダマスト部23に昇降可能に取り付けられている。接続部52は、リーダマスト部23に対して水平方向に移動可能に取り付けられていてもよい。接続部52は、上側チャッキング機構40の接続部41の下方に配置されている。把持部53は、接続部52の先端部に設けられ、杭10bの外側を把持可能である。把持部53は、上側チャッキング機構40の把持部42の下方に配置されている。
【0020】
第2把持部56は、既設側把持部57と、接続部58と、新設側把持部59と、を有している。既設側把持部57は、既設の杭10aを把持可能である。接続部58は、既設側把持部57に接続されている。例えば、既設側把持部57と接続部58との接続部分を緩めることによって、既設側把持部57が既設の杭10aに脱着可能とされている。接続部58は、第1把持部51の接続部52の下方に配置されている。新設側把持部59は、接続部58の先端部に設けられ、杭10bの外側を把持可能である。新設側把持部59は、第1把持部51の把持部53の下方に配置されている。第2把持部56は、既設の杭10aを把持することによって、既設の杭10aから反力を得ている。
【0021】
このように構成された杭圧入機1では、圧入する杭10bを把持するチャッキング装置4は、クランプ装置3によって既設の杭から反力を得ている。杭は、上側チャッキング機構40及び下側チャッキング機構50の上下2段のチャッキング機構によって、支持されている。よって、軟弱地盤であっても、杭10の傾斜及び位置ずれを抑制することができる。
【0022】
また、下側チャッキング機構50は、本体部2に接続された第1把持部51と、既設の杭10aに接続された第2把持部56と、を有している。よって、既設の杭10aからの反力をより一層確保して、杭10を安定して把持することができる。
【0023】
また、従来の圧入工法では、不可視となる土中において、杭の傾斜管理は圧入技能者の経験や技量に依存していたが、上記の杭圧入機1を使用すると、上下2段のチャッキング機構(上側チャッキング機構40及び下側チャッキング機構50)によって、杭10の傾斜を物理的に抑制することができるとともに、技能者の経験や技量に依存せず、高い鉛直精度を安定して維持できる。
【0024】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0025】
例えば、上記に示す実施形態では、下側チャッキング機構50は、第1把持部51と、第2把持部56と、を有しているが、本発明はこれに限られない。既設の杭10aに接続された第2把持部56は、設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 杭圧入機
2 本体部
3 クランプ装置
4 チャッキング装置
10,10a,10b 杭
31 クランプ装置
40 上側チャッキング機構
42 把持部
50 下側チャッキング機構
51 第1把持部
53 把持部
56 第2把持部