(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154166
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】医療機器用非接触給電システム及び医療機器用移動体
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20241023BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20241023BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067843
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広長 隆介
(72)【発明者】
【氏名】田中 顕
(72)【発明者】
【氏名】坂手 克彰
(57)【要約】
【課題】医療機器用移動体に設置される医療機器の保護接地を容易に実現できるとともに、利便性を向上できる医療機器用非接触給電システム及び医療機器用移動体を提供する。
【解決手段】医療機器用非接触給電システムは、医療機器を設置可能に構成された移動体本体部、移動体本体部に一体的に固定される受電ユニット、及び、受電ユニットからの電力を医療機器に対して供給可能な電源供給部を有する医療機器用移動体と、受電ユニットに対して非接触で給電する給電ユニットと、を備える。受電ユニット及び給電ユニットは、それぞれ、電力の伝送に用いられるコイルと、コイルを収容する凹部を有する筐体と、接地線に接続され、表面が露出する状態で凹部の開口に沿って配置される接地部と、を有し、受電ユニットのコイルと給電ユニットのコイルとが対向する状態で、それぞれの接地部が接地されるとともに、電力の伝送が行われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器を設置可能に構成された移動体本体部、前記移動体本体部に一体的に固定される受電ユニット、及び、前記受電ユニットからの電力を前記医療機器に対して供給可能な電源供給部を有する医療機器用移動体と、
前記受電ユニットに対して非接触で給電する給電ユニットと、を備え、
前記受電ユニット及び前記給電ユニットは、それぞれ、
電力の伝送に用いられるコイルと、
前記コイルを収容する凹部を有する筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で前記凹部の開口に沿って配置される接地部と、を有し、
前記受電ユニットの前記コイルと前記給電ユニットの前記コイルとが対向する状態で、それぞれの前記接地部が接地されるとともに、電力の伝送が行われる、
医療機器用非接触給電システム。
【請求項2】
前記医療機器用移動体及び前記給電ユニットは、前記受電ユニットの前記コイルと前記給電ユニットの前記コイルとが対向する状態となるように前記医療機器用移動体を位置決めする位置決め部を備える、
請求項1に記載の医療機器用非接触給電システム。
【請求項3】
前記位置決め部は、マグネットの磁気吸引力により前記医療機器用移動体の位置決めを行う、
請求項2に記載の医療機器用非接触給電システム。
【請求項4】
前記位置決め部により位置決めされた状態を解除するための解除部を備える、
請求項3に記載の医療機器用非接触給電システム。
【請求項5】
前記受電ユニットは、それぞれの前記コイルが鉛直方向で対向するように前記移動体本体部に備えられ、前記医療機器用移動体が位置決めされた状態において、前記給電ユニットの鉛直上方に位置する、
請求項1に記載の医療機器用非接触給電システム。
【請求項6】
前記受電ユニットは、それぞれの前記コイルが水平方向で対向するように前記移動体本体部に備えられている、
請求項1に記載の医療機器用非接触給電システム。
【請求項7】
前記受電ユニットは、それぞれの前記コイルが鉛直方向で対向するように前記移動体本体部に備えられ、前記医療機器用移動体が位置決めされた状態において、前記給電ユニットの鉛直下方に位置する、
請求項1に記載の医療機器用非接触給電システム。
【請求項8】
前記給電ユニットは、持ち運び可能に構成される、
請求項1に記載の医療機器用非接触給電システム。
【請求項9】
医療機器を設置可能に構成された移動体本体部と、
前記移動体本体部に一体的に固定される受電ユニットと、
前記受電ユニットからの電力を前記医療機器に対して供給可能な電源供給部と、を備え、
前記受電ユニットは、
電力の伝送に用いられるコイルと、
前記コイルを収容する凹部を有する筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で前記凹部の開口に沿って配置される接地部と、を有し、
前記受電ユニットの前記コイルと給電ユニットのコイルとが対向する状態で、それぞれの前記接地部が接地されるとともに、電力の伝送が行われる、
医療機器用移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護接地が必要な医療機器への給電に好適な医療機器用非接触給電システム及び医療機器用移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、点滴量を制御可能な輸液ポンプ等の医療機器は、点滴スタンド等の医療機器用移動体に設置されて使用される。このような医療機器は、例えば、床面又は壁面に設けられた固定コンセント、又は、固定コンセントに接続された延長コードの可動コンセントに接続され、電力が供給される。そのため、病室を移動するなど使用場所を変更する場合には、固定コンセントに対する電源コード(延長コードを含む)の抜き差しが必要となる。
【0003】
医療機器のケーブルレス化を図るためには、非接触給電システムが有効である。非接触給電システムは、例えば、交流電源から電圧が供給される給電コイルを有する給電ユニットと、給電コイルに対向して配置され給電コイルと磁気的に結合する受電コイルを有する受電ユニットとを備え、電磁誘導又は磁気共鳴を利用して非接触で給電を行う(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、非接触給電システムを適用した医療機器用移動体の一例として、電子機器取付スタンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医療機器に非接触給電システムを適用するに際し、医療機器の安全規格(JIS T 0601-1)「医療機器-第1部:安全に関する一般要求事項」に適合する必要がある。具体的には、クラスIに属する医療機器には、施設の医用接地端子に接続する手段を備えることが求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の非接触給電システムは、保護接地構造を有していないため、クラスIに属する医療機器の給電に用いることができない。
【0007】
本発明の目的は、医療機器用移動体に設置される医療機器の保護接地を容易に実現できるとともに、利便性を向上できる医療機器用非接触給電システム及び医療機器用移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る医療機器用非接触給電システムは、
医療機器を設置可能に構成された移動体本体部、前記移動体本体部に一体的に固定される受電ユニット、及び、前記受電ユニットからの電力を前記医療機器に対して供給可能な電源供給部を有する医療機器用移動体と、
前記受電ユニットに対して非接触で給電する給電ユニットと、を備え、
前記受電ユニット及び前記給電ユニットは、それぞれ、
電力の伝送に用いられるコイルと、
前記コイルを収容する凹部を有する筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で前記凹部の開口に沿って配置される接地部と、を有し、
前記受電ユニットの前記コイルと前記給電ユニットの前記コイルとが対向する状態で、それぞれの前記接地部が接地されるとともに、電力の伝送が行われる。
【0009】
本発明に係る医療機器用移動体は、
医療機器を設置可能に構成された移動体本体部と、
前記移動体本体部に一体的に固定される受電ユニットと、
前記受電ユニットからの電力を前記医療機器に対して供給可能な電源供給部と、を備え、
前記受電ユニットは、
電力の伝送に用いられるコイルと、
前記コイルを収容する凹部を有する筐体と、
接地線に接続され、表面が露出する状態で前記凹部の開口に沿って配置される接地部と、を有し、
前記受電ユニットの前記コイルと給電ユニットのコイルとが対向する状態で、それぞれの前記接地部が接地されるとともに、電力の伝送が行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医療機器用移動体に設置される医療機器の保護接地を容易に実現でき、利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る医療機器用非接触給電システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る医療機器用非接触給電システムの一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、給電ユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、給電ユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【
図4A】
図4Aは、受電ユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、受電ユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、医療機器用非接触給電システムの使用状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態に係る医療機器用非接触給電システムの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第3の実施の形態に係る医療機器用非接触給電システムの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、受電ユニットの構成の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態の変形例に係る医療機器用非接触給電システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、実施の形態に係る医療機器用非接触給電システム1A(以下、「非接触給電システム1A~1C」と称する)の概略構成を示す図である。
図2は、第1の実施の形態に係る医療機器用非接触給電システム1Aの一例を示す図である。なお、
図1は、第2及び第3の実施の形態に係る医療機器用非接触給電システム1B、1Cについても共通である。
【0014】
非接触給電システム1Aは、例えば、医療機器用移動体100Aに設置される医療機器200への給電に用いられる。医療機器200は、JIS T 0601-1で規定されている保護接地が必要なクラスIに属する電気機器であり、例えば、輸液ポンプやシリンジポンプ等である。
【0015】
図1に示すように、非接触給電システム1Aは、医療機器用移動体100Aと、給電ユニット10と、を備える。医療機器用移動体100Aは、例えば、輸液ポンプ等の医療機器200が設置される点滴スタンドである。
【0016】
給電ユニット10は、給電コイル11を有する。給電コイル11は、給電ケーブル16を介して、共振用コンデンサー(図示略)等を含む給電回路17に接続される。本実施の形態では、給電ユニット10は、例えば、手術室や病室の床Fに埋設されている。
【0017】
医療機器用移動体100Aは、受電ユニット110、移動体本体部120及び電源供給部130を有する。
【0018】
受電ユニット110は、受電コイル111を有し、移動体本体部120に一体的に固定される。受電コイル111は、受電ケーブル116を介して、電源供給部130に接続される。「一体的に固定」とは、電源ケーブル等を介して移動体本体部120に接続される場合のように、移動体本体部120を移動させなくても給電ユニット10に対して受電ユニット110を位置合わせできる場合を含まず、給電ユニット10に対して受電ユニット110を位置合わせする場合には、移動体本体部120の移動が必要になることを意味する。
【0019】
電源供給部130は、受電ユニット110からの電力を、医療機器200に給電するための受電回路及び給電回路等を有する。また、電源供給部130は、医療機器200の3ピンプラグ付き電源ケーブルを接続可能な電源コンセントを含む。電源供給部130の電源コンセントは、例えば、移動体本体部120の機器設置台124に配置される。
【0020】
移動体本体部120は、脚部121、ポール122、点滴フック123及び機器設置台124等を備える。脚部121は、複数のキャスター121a等の走行体を含む。脚部121の下方、すなわち脚部121と床面との間には、受電ユニット110を配置するための空間が設けられている。ポール122は、脚部121に立設される。点滴フック123は、ポール122の上部に架設され、点滴バッグ201が吊り下げられる。機器設置台124は、ポール122に昇降可能に取り付けられる。機器設置台124には、輸液ポンプ等の医療機器200が設置される。
【0021】
第1の実施の形態では、脚部121の下面に、受電ユニット110が固定されている。給電時には、給電コイル11と受電コイル111とが鉛直方向に離間した状態で、給電ユニット10の上に受電ユニット110が対向して位置するように、医療機器用移動体100Aの位置合わせが行われる。
【0022】
また、受電ユニット110は、移動体本体部120に対して、昇降可能に固定されている。すなわち、受電ユニット110は、医療機器用移動体100Aを移動させる場合には床面から離間して移動時の床面との摺擦を回避でき、給電ユニット10から給電される場合には床面に接触して保護接地をとりつつ給電可能となっている。
【0023】
商用電源18から供給された電力は、給電回路17で所定の高周波電力に変換され、給電コイル11に印加される。給電コイル11に高周波の電流が流れると、給電コイル11の周囲に磁界が発生し、給電コイル11及び受電コイル111の双方と鎖交する磁束により、受電コイル111に電位差(電圧)が生じる。そして、受電コイル111に誘導電流が流れ、電源供給部130を介して、医療機器200に電力が供給される。
【0024】
図3Aは、給電ユニット10の断面図であり、
図3Bは、給電ユニット10を給電側筐体13の開口端側から見た図である。
【0025】
図3A、
図3Bに示すように、給電ユニット10は、給電コイル11、給電側接地リング12、給電側筐体13、給電側磁気シールド14、給電側保護体15及び給電側マグネット19等を備える。
【0026】
給電コイル11は、電線を同一平面上に所定の巻数で巻線した環状の渦巻き型コイル(パンケーキ型コイルとも呼ばれる)である。給電コイル11及び受電コイル111を円環形状とした場合、受電ユニット110が回転してもコイル同士の対向姿勢は変わらないので、容易に位置合わせを行うことができる。
【0027】
なお、給電コイル11の形状は円環形状に限定されず、例えば、長円形状(小判形状やレーストラック形状)であってもよい。給電コイル11及び受電コイル111を長円形状とした場合、コイルの直線部分同士が対向していれば、直線部分に沿う長手方向に位置ずれが生じても、電力伝送効率の低下を抑制することができる。
【0028】
給電コイル11を形成する電線には、例えば、導体に絶縁被膜を焼き付けたエナメル線(素線)を複数本撚り合わせたリッツ線が適用される。給電コイル11の両端部には、例えば、半田付けなどにより給電ケーブル16の電力線の端子金具(図示略)が接続される。
【0029】
給電側筐体13は、凹部13aを有する有底筒体であり、例えば、円筒形状を有する。給電側筐体13は、凹部13aに、給電コイル11及び給電側磁気シールド14を収容する。
【0030】
給電側筐体13は、例えば、アルミニウム等の金属材料で形成される。給電側筐体13は、例えば、給電ケーブル16の接地線の端子金具(図示略)に接続され、接地される。この場合、給電側筐体13は、外部への電磁波の放射及び外部からの電磁波の入射を防止する電磁シールドとしても機能する。
【0031】
なお、給電側筐体13は、給電ケーブル16とは別に設けられた給電側接地線を介して接地されてもよい。また、給電ユニット10の磁気シールドを別途設ける場合、給電側筐体13は、例えば、エポキシ系樹脂材料にフィラーを混入させた繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)などの樹脂材料で形成されてもよい。フィラーは、例えばガラス繊維材料である。この場合、誘導加熱による給電側筐体13の発熱を防止することができ、さらには、FRPのフィラーとして熱伝導性のよいものを採用して、給電側筐体13の放熱性を向上させることもできる。
【0032】
給電側接地リング12は、導電性の材料で形成され、給電側筐体13の凹部13aの開口に対応する環形状(例えば、円環形状)を有する。給電側接地リング12は、表面が露出する状態で、凹部13aの開口に沿って配置される。給電側接地リング12は、給電側接地線を介して接地される。本実施の形態では、給電側接地リング12は、金属製の給電側筐体13と接合され、給電側筐体13を介して接地されている。この場合、給電側接地リング12は、全体として環形状を呈していればよく、部分的に分断されていてもよい。
【0033】
給電側接地リング12と給電側筐体13は、同種材料で形成されてもよいし、異種材料で形成されてもよい。
【0034】
給電側接地リング12と給電側筐体13とを同種材料で形成する場合、すなわち、給電側筐体13の一部が給電側接地リング12となる場合、部品点数が少なくなるので、給電ユニット10の製造工程が簡素化され、製造コストを低減することができる。
【0035】
一方、給電側接地リング12と給電側筐体13とを異種材料で形成する場合、それぞれの機能を実現するために適した材料を選定することができる。例えば、給電側筐体13にアルミニウム系合金材料、給電側接地リング12にハステロイ(登録商標)などのニッケル系合金材料を適用することで、床面として露出する給電側接地リング12の耐食性を備えることができ、かつ、例えばステンレス系金属材料よりも給電側筐体13を軽量化することができる。
【0036】
給電側接地リング12の表面は、後述する受電側接地リング112のように凹凸構造を有していてもよいが、床面の掃除のしやすさや、つまずき防止の観点から、平坦であることが好ましい。
【0037】
給電側磁気シールド14は、受電コイル111に対向する面を除く給電コイル11の外面を覆うように配置される。給電側磁気シールド14は、例えば、フェライト等の磁性材料で形成される。給電側磁気シールド14を設けることにより、磁気抵抗の低い通路が形成されるので、結果として給電コイル11の性能(Q値)が高まり、漏れ磁束が少なくなる。したがって、効率よく磁力線を集束して電力伝送効率を向上できるとともに、ノイズの発生を抑制することができる。また、金属製の給電側筐体13の発熱を抑制することができる。
【0038】
給電側保護体15は、給電側筐体13の凹部13aに給電コイル11及び給電側磁気シールド14を固定する。給電側保護体15は、絶縁性媒体151及び表面保護層152を含む。絶縁性媒体151には、例えば、エポキシ系樹脂材料を用いることができる。
【0039】
給電側筐体13の凹部13aに給電コイル11及び給電側磁気シールド14を配置した状態で、絶縁性媒体151を充填し、硬化させることで、給電コイル11及び給電側磁気シールド14は、凹部13aに固定される。絶縁性媒体151は、表面保護層152の厚み分(例えば、2mm)だけ、給電側接地リング12の端面よりも凹んで形成される。
【0040】
表面保護層152は、絶縁性媒体151の受電ユニット110と対向する面に、給電側接地リング12と面一となるように形成される。表面保護層152は、絶縁性媒体151の表面を保護するとともに、給電ユニット10が設置される床の床面を形成する。表面保護層152は、例えば、手術室等に使用されるクッション性を有する樹脂性床材で形成される。表面保護層152は、例えば、塩化ビニル系樹脂材料製の床材を用いることができる。表面保護層152は、給電ユニット10が設置される床に使用されている床材と同一材料で形成されることが好ましい。
【0041】
なお、給電側保護体15の絶縁性媒体151は、給電コイル11を固定できればよく、その構成材料は特に限定されない。例えば、給電側保護体15の絶縁性媒体151を、エポキシ系樹脂材料にフィラーを添加した樹脂材料で形成してもよい。この場合、エポキシ系樹脂材料による防水効果が得られる上、添加したフィラーにより給電ユニット10の強度を高めることができる。さらに、放熱性の高いフィラーを採用した場合、給電コイル11の放熱性を高めることができる。後述する受電側保護体115についても同様に構成してもよい。
【0042】
給電ユニット10は、手術室等の床Fに、給電ユニット10の給電側接地リング12及び表面保護層152と床面とが面一となるように設置される。給電側接地リング12は、表面に露出しているが、床面の平坦性は確保されているので、医療機器用移動体100Aの移動を妨げない。
【0043】
給電側マグネット19は、例えば、給電ユニット10における給電コイル11の中央に配置される。給電側マグネット19は、磁気吸引力により医療機器用移動体100Aの位置合わせを行う位置決め部として機能する。受電側マグネット119及び給電側マグネット19は、他に外力が作用していない状態で、給電ユニット10から所定の範囲内にある医療機器用移動体100Aを移動でき、かつ、医療機器用移動体100Aをその場に保持できる程度の磁気吸引力を発揮する。
【0044】
給電側マグネット19は、受電側マグネット119との間で所定の磁気吸引力が発揮されればよい。給電側マグネット19は、永久磁石を用いることができる。また、給電側マグネット19は、希土類磁石であってもよい。給電側マグネット19に、希土類磁石を用いることで、フェライト磁石に比較して強力な磁力が得られるので、小型化を図ることができる。給電側マグネット19は、例えば、ネオジム磁石が用いられる。
【0045】
図4Aは、受電ユニット110の断面図であり、
図4Bは、受電ユニット110を受電側筐体113の開口端側から見た図である。
図4A、
図4Bに示すように、受電ユニット110は、構成自体は給電ユニット10とほぼ同様である。受電ユニット110の説明のうち、給電ユニット10と同一又は対応する構成要素については、簡単に説明する。
【0046】
受電ユニット110は、受電コイル111、受電側接地リング112、受電側筐体113、受電側磁気シールド114及び受電側マグネット119等を備える。
【0047】
受電コイル111は、電線を同一平面上に所定の巻数で巻線した円環状の渦巻き型コイルである。受電コイル111の形状は、典型的には、給電コイル11の形状と同じである。受電コイル111の両端部には、受電ケーブル116の電力線の端子金具(図示略)が接続される。受電コイル111と受電ケーブル116の電力線との接続は、例えば半田付けにより行われる。
【0048】
受電側筐体113は、凹部113aを有する有底筒体であり、例えば、円筒形状を有する。受電側筐体113は、凹部113aに、受電コイル111及び受電側磁気シールド114を収容する。
【0049】
受電側筐体113は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料で形成される。受電側筐体113は、例えば、受電ケーブル116の接地線の端子金具(図示略)に接続される。この場合、受電側筐体113は、外部への電磁波の放射及び外部からの電磁波の入射を防止する電磁シールドとして機能する。
【0050】
なお、受電ユニット110の電磁シールドを別途設ける場合、受電側筐体113は、繊維強化プラスチック樹脂(FRP)などの樹脂材料で形成されてもよい。この場合、誘導加熱による受電側筐体113の発熱を防止することができ、さらには、FRPのフィラーとして熱伝導性のよいものを採用して、受電側筐体113の放熱性を向上させることもできる。
【0051】
受電側接地リング112は、導電性を有する材料で形成され、受電側筐体113の凹部113aの開口に対応する環形状(例えば、円環形状)を有する。受電側接地リング112は、表面が露出する状態で、凹部113aの開口に沿って配置される。受電側接地リング112は、給電ユニット10から受電ユニット110に給電するとき、給電側接地リング12と接触し、接地される。本実施の形態では、受電側接地リング112は、金属製の受電側筐体113と接合されており、受電側筐体113を介して受電ケーブル116の接地線が接地される。この場合、受電側接地リング112は、全体として環形状を呈していればよく、部分的に分断されていてもよい。
【0052】
受電側接地リング112と受電側筐体113は、同種材料で形成されてもよいし、異種材料で形成されてもよい。
【0053】
受電側接地リング112と受電側筐体113とを同種材料で形成する場合、すなわち、受電側筐体113の一部が受電側接地リング112となる場合、部品点数が少なくなるので、受電ユニット110の製造工程が簡素化され、製造コストを低減することができる。
【0054】
一方、受電側接地リング112と受電側筐体113とを異種材料で形成する場合、それぞれの機能を実現するために適した材料を選定することができる。例えば、受電側筐体113にアルミニウム系金属材料、受電側接地リング112に導電性とばね性の高い銅合金材料を適用することで、受電側筐体113の軽量化を図りつつ、接地抵抗を効率よく低減することができる。この場合の、銅合金材料としては、例えば、ベリリウム銅合金材料を用いることができる。また、受電側接地リング112の表面には、耐食性を高めるためにNi等からなるめっき層を形成してもよい。
【0055】
受電側接地リング112は、表面に凹凸構造を有していることが好ましい。給電ユニット10は床面に設置され、給電側接地リング12は外気に曝されるので、給電側接地リング12の表面に経時的に酸化皮膜が形成される虞がある。受電側接地リング112の表面に凹凸構造が形成されている場合、給電側接地リング12と受電側接地リング112が接触するときに、給電側接地リング12に形成された酸化皮膜が受電側接地リング112の凹凸構造によって破壊されるので、良好な電気的導通を確保する上で有用である。なお、受電側接地リング112における接触面積は、受電側接地リング112を含む接地経路における接地抵抗が10Ω以下となるように確保される。
【0056】
また、受電側接地リング112は、表面に、バネ構造を有することが好ましい。この場合、受電ユニット110と給電ユニット10とが接触するときに、受電側接地リング112のバネ構造が加圧されて弾性変形する。これにより、バネ構造により付勢された給電側接地リング12と受電側接地リング112とが確実に接触し、接地不良が防止されるので、電気的導通を確保する上で有用である。バネ構造には、例えば、受電側接地リング112の周方向において等間隔で配置される板バネ(いわゆるシールドフィンガー(商品名))を適用することができる。
【0057】
受電側磁気シールド114は、受電コイル111の、給電コイル11に対向する面を除く外面を覆うように配置される。受電側磁気シールド114は、例えば、フェライト等の磁性材料で形成される。受電側磁気シールド114を設けることにより、磁気抵抗の低い通路が形成されるので、結果として受電コイル111の性能(Q値)が高まり、漏れ磁束が少なくなる。したがって、効率よく磁力線を集束して電力伝送効率を向上できるとともに、ノイズの発生を抑制することができる。また、金属製の受電側筐体113の発熱を抑制することができる。
【0058】
受電側磁気シールド114の給電コイル11と対向する面における開口の形状は、給電側磁気シールド14と、給電コイル11に対向する面において対称に構成される。すなわち、位置決めされた状態で、受電側磁気シールド114の開口と給電側磁気シールド14の開口との隙間が少ない状態で合わさるので、非接触給電時における磁気の漏れを抑制することができる。
【0059】
受電側保護体115は、受電側筐体113の凹部113aに受電コイル111及び受電側磁気シールド114を固定する。受電側保護体115は、例えば、エポキシ系樹脂材料等の絶縁性材料で形成される。
【0060】
受電側筐体113の凹部113aに受電コイル111及び受電側磁気シールド114を配置した状態で、絶縁性材料を充填し、硬化させて受電側保護体25を形成することで、受電コイル111及び受電側磁気シールド114は、凹部113aに固定される。受電側保護体115は、受電側接地リング112の端面よりも凹んで形成される。
【0061】
受電側マグネット119は、例えば、受電ユニット110における受電コイル111の中央に配置される。受電側マグネット119は、給電側マグネット19とは着磁方向が逆であり、磁気吸引力により医療機器用移動体100Aの位置合わせを行う位置決め部として機能する。受電側マグネット119及び給電側マグネット19は、外力が作用していない状態で医療機器用移動体100Aを移動できる程度の磁気吸引力を発揮する。受電側マグネット119は、給電側マグネット19との間で所定の磁気吸引力が発揮されればよい。受電側マグネット119は、給電側マグネット19と同様に構成される。
【0062】
図5は、非接触給電システム1Aの使用状態を示す図である。
【0063】
図5に示すように、給電ユニット10から受電ユニット110に給電を行う場合、給電コイル11と受電コイル111が対向するように、医療機器用移動体100Aが移動される。ユーザーは、床Fに露出している環状の給電側接地リング12を目印として医療機器用移動体100Aを移動させる。
【0064】
ユーザーにより、医療機器用移動体100Aが、給電ユニット10の所定の範囲内に位置合わせされた後、給電側マグネット19及び受電側マグネット119の磁気吸引力により、給電コイル11と受電コイル111が鉛直方向に正対するように、精度よく位置合わせが行われる。
【0065】
医療機器用移動体100Aの位置合わせが行われ、受電ユニット110が下降して床Fに接触すると、給電側接地リング12と受電側接地リング112が接触し、給電側接地リング12及び給電側筐体13を介して、受電側接地リング112は接地される。受電側接地リング112は、受電側筐体113を介して受電ケーブル116の接地線に接続されており、受電ケーブル116の接地線は、電源供給部130を介して、医療機器200の電源ケーブルの接地線に接続されているので、医療機器200は保護接地される。
【0066】
なお、給電ユニット10は、可搬型の給電設備として、床面に設置されてもよい。この場合、給電ユニット10は、床面から突出することになるが、例えば、脚部121の張出し長さやキャスター121aの外径を大きくするなどして受電ユニット110の下方の空間を十分に大きくし、給電設備を跨いで医療機器用移動体100Aが移動できるようにすることで、医療機器用移動体100Aの移動によって受電ユニット110と給電ユニット10とを対向させることができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
図6は、第2の実施の形態に係る医療機器用非接触給電システム1Bの一例を示す図である。医療機器用非接触給電システム1Bは、医療機器用移動体100B及び給電ユニット10を備える。第1の実施の形態の医療機器用非接触給電システム1A、医療機器用移動体100Aと同一又は対応する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0068】
第2の実施の形態では、給電時に、給電コイル11と受電コイル111とが水平方向に離間した状態で対向するように、医療機器用移動体100Bの位置合わせが行われる。
【0069】
具体的には、ポール122に受電ユニット設置台125が取り付けられ、この受電ユニット設置台125に受電ユニット110が設置されている。受電ユニット110は、受電コイル111のコイル面が水平方向を向くように、受電ユニット設置台125に設置される。受電ユニット110の設置高さは、給電ユニット10の設置高さに適合するように調整される。
【0070】
給電ユニット10は、給電コイル11のコイル面が水平方向を向くように、例えば、壁W等の構造体に埋設される。この場合、給電ユニット10は、給電側接地リング12及び表面保護層152と壁面とが、できるだけ面一となるように設置される。なお、給電ユニット10の給電側接地リング12及び表面保護層152は、壁面から所定の距離突出して設置されてもよい。
【0071】
給電ユニット10から受電ユニット110に給電を行う場合、給電コイル11と受電コイル111が対向するように、医療機器用移動体100が移動される。ユーザーは、壁面に露出している環状の給電側接地リング12を目印として医療機器用移動体100Bを移動させる。
【0072】
ユーザーにより、医療機器用移動体100Bが、給電ユニット10の所定の範囲内に位置合わせされた後、給電側マグネット19及び受電側マグネット119の磁気吸引力により、給電コイル11と受電コイル111が鉛直方向に正対するように、精度よく位置合わせが行われる。
【0073】
医療機器用移動体100Bの位置合わせが行われると、給電側接地リング12と受電側接地リング112が接触し、給電側接地リング12及び給電側筐体13を介して、受電側接地リング112は接地される。受電側接地リング112は、受電側筐体113を介して受電ケーブル116の接地線に接続されており、受電ケーブル116の接地線は、電源供給部113を介して、医療機器200の電源ケーブルの接地線に接続されているので、医療機器200は保護接地される。
【0074】
[第3の実施の形態]
図7は、第3の実施の形態に係る医療機器用非接触給電システム1Cの一例を示す図である。医療機器用非接触給電システム1Cは、医療機器用移動体100C及び給電ユニット10を備える。第1の実施の形態の医療機器用非接触給電システム1A、医療機器用移動体100Aと同一又は対応する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0075】
第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、給電時に、給電コイル11と受電コイル111とが鉛直方向に離間した状態で対向するように、医療機器用移動体100Cの位置合わせが行われるが、給電ユニット10が受電ユニット110の鉛直上方に位置する点が異なる。
【0076】
具体的には、ポール122の最上部に受電ユニット110が設置されている。受電ユニット110は、受電コイル111のコイル面が鉛直方向を向くように設置される。
【0077】
給電ユニット10は、給電コイル11のコイル面が鉛直方向を向くように、例えば、給電スタンド20に設置される。また、給電ユニット10は、天井等の構造体に埋設されてもよい。
【0078】
受電ユニット110及び給電ユニット10の少なくとも一方は、昇降可能に構成される。すなわち、受電ユニット110及び給電ユニット10は、互いに離間した状態で医療機器用移動体100Cの位置合わせを行うことができ、位置合わせ後に両者が接触して保護接地をとりつつ給電可能となっている。
【0079】
給電ユニット10から受電ユニット110に給電を行う場合、給電コイル11と受電コイル111が対向するように、医療機器用移動体100Cが移動される。このとき、受電ユニット110の上面は、給電ユニット10の下面よりも低い位置に設定されている。ユーザーは、給電ユニット10の環状の給電側接地リング12を目印として医療機器用移動体100Cを移動させる。
【0080】
ユーザーにより、医療機器用移動体100Cが、給電ユニット10の所定の範囲内に位置合わせされた後、給電側マグネット19及び受電側マグネット119の磁気吸引力により、給電コイル11と受電コイル111が鉛直方向に正対するように、精度よく位置合わせが行われる。
【0081】
医療機器用移動体100Cの位置合わせが行われ、給電ユニット10に対して受電ユニット110が接触すると、給電側接地リング12と受電側接地リング112が接触し、給電側接地リング12及び給電側筐体13を介して、受電側接地リング112は接地される。受電側接地リング112は、受電側筐体113を介して受電ケーブル116の接地線に接続されており、受電ケーブル116の接地線は、電源供給部113を介して、医療機器200の電源ケーブルの接地線に接続されているので、医療機器200は保護接地される。
【0082】
[変形例]
上記の実施の形態では、磁気吸引力を利用した位置決め部の一例として、給電側マグネット19及び受電側マグネット119を利用しているか、給電側マグネット19及び受電側マグネット119のうちの一方は、マグネットが吸引可能な磁化されていない磁性体で構成されてもよい。
【0083】
また、医療機器用移動体100のポール122、脚部121又はキャスター121aを把持可能な把持体(例えば、一部に切欠きを設けた円筒体)を給電スポットの周囲の壁面に設けて、把持体にポール122、脚部121又はキャスター121aを嵌め込むことで医療機器用移動体100の位置決めを行ってもよい。
【0084】
さらに、第2の実施の形態及び第3の実施の形態においては、受電ユニット110と給電ユニット10の接触面に、互いに嵌合可能な凹凸構造を設けて、凹凸構造を嵌め合わせて構造的に位置決めが行われるようにしてもよい。なお、第1の実施の形態においては、受電ユニット110と給電ユニット10の接触面に、互いに嵌合可能な凹凸構造を設けると、医療機器用移動体100やその他の移動体をスムーズに移動させることができなくなる虞があるので、実施の形態で示したように、磁気吸引力を利用して位置決めを行うのが好ましい。
【0085】
このように、実施の形態に係る非接触給電システム1A~1Cは、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0086】
すなわち、非接触給電システム1A~1Cは、医療機器200を設置可能に構成された移動体本体部120、移動体本体部120に一体的に固定される受電ユニット110、及び、受電ユニット110からの電力を医療機器200に対して供給可能な電源供給部130を有する医療機器用移動体100と、受電ユニット110に対して非接触で給電する給電ユニット10と、を備える。受電ユニット110及び給電ユニット10は、それぞれ、電力の伝送に用いられる受電コイル111、給電コイル11と、受電コイル111、給電コイル11を収容する凹部113a、13aを有する受電側筐体113、給電側筐体13と、接地線に接続され、表面が露出する状態で凹部113a、13aの開口に沿って配置される受電側接地リング112、給電側接地リング12(接地部)と、を有し、受電ユニット110受電コイル111と給電ユニット10の給電コイル11とが対向する状態で、電力の伝送が行われる。
【0087】
また、医療機器用移動体100A~100Cは、医療機器200を設置可能に構成された移動体本体部120と、移動体本体部120に一体的に固定される受電ユニット110と、受電ユニット110からの電力を医療機器200に対して供給可能な電源供給部130と、を備え、受電ユニット110は、電力の伝送に用いられる受電コイル111と、受電コイル111を収容する凹部113aを有する筐体113と、接地線に接続され、表面が露出する状態で凹部113aの開口に沿って配置される受電側接地リング112(接地部)と、を有し、受電ユニット110の受電側コイル111と給電ユニット10の給電コイル11とが対向する状態で、電力の伝送が行われる。
【0088】
非接触給電システム1A~1C及び医療機器用移動体100によれば、給電ユニット10に対して医療機器用移動体100を位置決めしたときに、給電側接地リング12と受電側接地リング112が接触することにより、電源供給部130に接続されている医療機器200の接地線が接地されるので、容易に医療機器200の保護接地を実現することができる。また、医療機器200に電源を供給するための電源プラグを抜き差しすることなく医療機器用移動体100を移動できるので、利便性が向上する。
【0089】
さらに、給電側接地リング12及び受電側接地リング112は、それぞれ凹部13a、113aの開口に沿って配置されている、すなわち環状に形成されているので、医療機器用移動体100を位置決めするときに、医療機器用移動体100の向きを意識せずに容易に位置決めすることができ、医療機器200の使用形態に応じて、医療機器用移動体100の向きを柔軟に変更することができる。
【0090】
したがって、医療機器200等のクラスI機器の保護接地を容易に実現することができるとともに、非接触給電システム1A~1Cの利便性が格段に向上する。
【0091】
また、非接触給電システム1A~1Cにおいて、医療機器用移動体100及び給電ユニット10は、受電ユニット110の受電コイル111と給電ユニット10の給電コイル11とが対向する状態となるように医療機器用移動体100を位置決めする受電側マグネット119、給電側マグネット19(位置決め部)を備える。これにより、磁界の漏れが少なくなるように、受電コイル111と給電コイル11が同等の大きさで形成されている場合でも、コイル同士が対向するように精度よく位置合わせを行うことができ、効率よく電力を伝送することができる。
【0092】
また、非接触給電システム1A~1Cにおいて、位置決め部は、受電側マグネット119及び給電側マグネット19の磁気吸引力により医療機器用移動体100の位置決めを行う。これにより、給電ユニット10を床Fに接地する場合など、受電ユニット110と給電ユニット10の接触面に凹凸構造を設けて嵌合させて構造的に位置決めできない場合にも、医療機器用移動体100を容易に位置決めすることができる。
【0093】
また、第1の実施の形態に係る非接触給電システム1Aにおいて、受電ユニット110は、受電コイル111及び給電コイル11が鉛直方向に対向するように移動体本体部120に固定され、医療機器用移動体100が位置決めされた状態において、給電ユニット10の鉛直上方に位置する。これにより、空間的な制限が少ない床Fに給電ユニット10を設置して、非接触給電システム1Aを構築することができる。
【0094】
また、第2の実施の形態に係る非接触給電システム1Bにおいて、受電ユニット110は、受電コイル111及び給電コイル11が、水平方向に対向するように移動体本体部120に固定されている。これにより、医療機器用移動体100の移動に伴い、受電ユニット110と給電ユニット10を接触させることができるので、受電ユニット110の構成を簡素化することができる。
【0095】
また、第3の実施の形態に係る非接触給電システム1Cにおいて、受電ユニット110は、鉛直方向に対向するように移動体本体部120に固定され、医療機器用移動体100が位置決めされた状態において、給電ユニット10の鉛直下方に位置する。これにより、空間的な制限が少ない上方の空間に給電ユニット10を設置して、非接触給電システム1Cを構築することができる。
【0096】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0097】
例えば、医療機器用移動体100の電源供給部130は、内蔵バッテリーを有していてもよい。この場合、保護接地を必要としない電子機器であれば、医療機器用移動体100を移動させるときにも使用することができる。
【0098】
また、受電ユニット110の受電側接地リング112の表面には、ワイヤーブラシ等のブラシ部を設けてもよい。これにより、給電ユニット10と受電ユニット110とを接触させたときに、給電側接地リング12の表面の汚れや酸化被膜が除去されるので、接地不良を効率よく防止することができる。
【0099】
図8は、受電ユニット110の昇降機構130の一例を示す図である。
図8に示す例では、受電ユニット110は、給電側マグネット19及び受電側マグネット119の磁気吸引力を利用して昇降するように構成されている。
【0100】
図8に示す昇降機構130は、ガイド132及び付勢部材134を備える。ガイド132は、受電ユニット110の外側に配置され、受電ユニット110の移動方向を規制する。付勢部材134は、受電ユニット110とガイド132との間に介在し、受電ユニット110を、床Fから離間した基準状態で保持する。付勢部材132は、例えば、引張コイルバネである。
【0101】
位置決めされていない状態においては、付勢部材132の付勢力を利用して、受電ユニット110は床Fから離間した基準状態で保持される。医療機器用移動体100の位置合わせに伴い、給電側マグネット19と受電側マグネット119との間の磁気吸引力が増大すると、受電ユニット110がガイド132に沿って下降する。受電ユニット110は、給電側マグネット19と受電側マグネット119との磁気吸引力が弱まると、付勢部材134の復元力によってガイド132に沿って元の位置に戻る。
【0102】
なお、
図8に示す昇降機構130は、第1の実施の形態の医療機器用移動体100Aだけでなく、第2及び第3の実施の形態の医療機器用移動体100B、100Cにおいても適用することができる。
【0103】
医療機器用給電システム1A~1Cは、給電コイル11と受電コイル111との位置決め状態を解除するための図示しない解除部を備えても良い。解除部は、位置決め状態において接触している給電ユニット10と受電ユニット110を物理的に離間させ、給電側マグネット19及び受電側マグネット119の磁気吸引力を弱めて、位置決め状態を解除する。
【0104】
解除部は、例えば、給電ユニット10及び受電ユニット110の給電コイル11と受電コイル111とが対する面において、マグネットの周りに配置される。解除部は、給電ユニット10または医療機器用移動体100のいずれかに備えられる操作部を操作することにより動作するよう構成される。
【0105】
ユーザーは、操作部を操作することにより解除部を動作させて、給電ユニット10と受電ユニット110の位置決め状態を解除することができる。これにより、ユーザーは、マグネットの磁気吸引力が強い場合でも、位置決め状態を容易に解除して医療機器用移動体100A~100Cを移動させることができる。なお、解除部は、受電側ユニット110が昇降するよう構成される場合においても、用いることができる。
【0106】
解除部は、シリンダ機構などの突出機構により構成することができる。この場合、解除部である突出機構は、位置決めされた状態において、給電コイル11側および受電コイル111側の少なくとも一方から他方の面に向かって、突出機構の突出部が磁気吸引力以上の力で突出して、コイル間の距離を離す。
【0107】
また、解除部は、給電コイル11側および受電コイル111側の少なくとも一方の円周に配置される、コイルの径方向に移動可能な複数のクサビ形部材により構成されてもよい。複数のクサビ形部材は、クサビ形における先端側がコイルの中央を向いて配置される。この場合、解除部である複数のクサビ形部材は、操作部が操作されると、位置決めされたコイルの間からクサビ形部材が、コイルの径方向における中心に向かって進入していき、コイルの間の距離はクサビ形部材の進行により拡大する。
【0108】
解除部は、コイルが位置決めされた状態において、さらに医療機器用移動体100A~100Cを給電ユニット10側に押し付けた場合に、位置決めが解除されるよう構成されてもよい。
【0109】
給電ユニット10は、
図9に示すように、持ち運び可能な可動給電設備30に搭載されてもよい。可動給電設備30は、手で掴んで持ち運ぶための持ち手31と、自立するための土台32とを備える。給電ユニット10は、可動給電設備30が自立した状態で、医療機器用移動体100Bに搭載された受電コイル111と給電コイル11が対面するように配置される。可動給電設備30は、給電ユニット10の他、給電ケーブル16、給電回路17および商用電源18を含む。可動給電設備140は、例えば、ベッドの下などの空間に設置して使用される。
【0110】
また、図示を省略するが、可動給電設備30の土台32は、医療機器用移動体100Bのポール122、脚121又はキャスター121aを把持可能な把持体を有していてもよい。この場合、医療機器用移動体100Bのポール122、脚121又はキャスター121aを、土台32の把持体に嵌め込むことで、医療機器用移動体100Bが把持されて、位置決めを行うことができる。
【0111】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
1A~1C 非接触給電システム
10 給電ユニット
11 給電コイル
12 給電側接地リング
13 給電側筐体
19 給電側マグネット(位置決め部)
100A~100C 医療機器用移動体
110 受電ユニット
111 受電コイル
112 受電側接地リング
113 受電側筐体
119 受電側マグネット(位置決め部)
120 移動体本体部
130 電源供給部