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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154170
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20241023BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20241023BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20241023BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
B60R16/02 622
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067855
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】飯島 彬友
(72)【発明者】
【氏名】大橋 平
(72)【発明者】
【氏名】吉元 隆一郎
【テーマコード(参考)】
5G333
5G363
【Fターム(参考)】
5G333AA09
5G333AB16
5G333CB18
5G333DA03
5G333EA02
5G333EB08
5G363AA01
5G363AA16
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネスをグロメットに挿通して車両内に配策する場合でも、ワイヤーハーネスが、予め設計された配策経路からずれるのを抑えて、配策経路の設計時に、作業者の負担を抑えることができるグロメットを提供する。
【解決手段】グロメット30は、インナー部材31を備える。インナー部材31は、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに係止される。インナー部材31は、第1分割体50及び第2分割体60から構成される。第1分割体50及び第2分割体60は、ワイヤーハーネス20の周囲に配置された状態で組み付けられている。インナー部材31は、ワイヤーハーネス20に対向する内周面41cに、ワイヤーハーネス20を保持する第1突部47及び第2突部48を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに設けられた貫通孔に装着されるグロメットであって、
前記貫通孔に挿通されて、前記貫通孔の縁部に係止されるインナー部材と、
前記インナー部材に取り付けられて、ワイヤーハーネスを挿通可能な弾性材料からなる挿通部を有するアウター部材と、
を備え、
前記挿通部は、前記ワイヤーハーネスに固定される固定部位を有し、
前記インナー部材は、複数の分割体から構成され、
前記複数の分割体は、前記ワイヤーハーネスの周囲に配置された状態で組み付けられており、
前記インナー部材は、前記ワイヤーハーネスに対向する内周面に、前記ワイヤーハーネスを保持する複数の突部を有するグロメット。
【請求項2】
各突部は、前記ワイヤーハーネスに対向する頂部を有し、
前記ワイヤーハーネスの長さ方向に垂直な断面視において、各突部の頂部は、前記ワイヤーハーネスの外装部材の外周面に沿うように形成されている請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記ワイヤーハーネスの外装部材が、環状の山部及び環状の谷部が前記ワイヤーハーネスの長さ方向に沿って交互に並んだ蛇腹形状に形成されている場合、前記複数の突部は、隣接する山部の間に入り込んで、前記ワイヤーハーネスを保持する請求項1に記載のグロメット。
【請求項4】
前記ワイヤーハーネスの外装部材が、環状の山部と環状の谷部とが、前記ワイヤーハーネスの長さ方向に沿って交互に並んだ蛇腹形状に形成されていない場合、前記複数の突部は、前記外装部材に圧接して、前記ワイヤーハーネスを保持する請求項1に記載のグロメット。
【請求項5】
前記複数の突部は、前記ワイヤーハーネスの周方向及び長さ方向に沿って、前記インナー部材の内周面に設けられる請求項1に記載のグロメット。
【請求項6】
前記インナー部材が、一対の分割体から構成される場合、一方の分割体は、他方の分割体の被係合部に係合する係合部が設けられた一端と、前記他方の分割体の係合部に係合される被係合部が設けられた他端とを有する請求項1に記載のグロメット。
【請求項7】
前記インナー部材が、一対の分割体から構成される場合、一方の分割体は、他方の分割体とヒンジで結合された一端と、前記他方の分割体の係合部に係合される被係合部が設けられた他端とを有する請求項1に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内にて、車室の内外にわたってワイヤーハーネスを配策する場合、ワイヤーハーネスは、車室の内外を仕切る車体パネルに設けられた貫通孔に貫通される。
【0003】
この場合、ワイヤーハーネスの保護、防水などを目的として、ワイヤーハーネスを、貫通孔に装着したグロメットに挿通させる構成が知られている。
【0004】
特許文献1には、弾性材料を用いて構成されて、車室外から車室内に押し込まれて貫通孔に装着されるグロメットが開示されている。当該グロメットでは、ワイヤーハーネスの挿通部分の一部が、蛇腹状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-43676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、ワイヤーハーネスは、周辺部品と干渉しないように、予め設計された配策経路に沿って車両内に配置される。
【0007】
しかしながら、ワイヤーハーネスがグロメットに挿通されて固定されている場合、グロメットは弾性材料を用いて構成されているため、ワイヤーハーネスの剛性が高いと、ワイヤーハーネスの長さ方向に沿った応力がグロメットに掛かり、グロメットが変形する可能性がある。
【0008】
例えば、ワイヤーハーネスの挿通部分の一部が、蛇腹状に構成されている場合、ワイヤーハーネスの長さ方向に沿った応力がグロメットに掛かると、グロメットの蛇腹状に構成された部分が伸縮する可能性がある。グロメットの蛇腹状に構成された部分が収縮して、ワイヤーハーネスが、車室内側に押し込まれる場合、ワイヤーハーネスの車室内側の配策経路が大きく膨らむとともに、ワイヤーハーネスの車室外側の配策経路が直線的になる。
【0009】
このように、グロメットが変形する場合、ワイヤーハーネスが、予め設計した配策経路からずれることが懸念される。このため、ワイヤーハーネスをグロメットに挿通して車両内に配策する場合、作業者は、上述した事象も想定して配策経路を設計する必要があるため、作業者の負担が増大していた。
【0010】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、ワイヤーハーネスをグロメットに挿通して車両内に配策する場合でも、ワイヤーハーネスが、予め設計された配策経路からずれるのを抑えて、配策経路の設計時に、作業者の負担を抑えることができるグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様に係るグロメットは、車体パネルに設けられた貫通孔に装着される。前記グロメットは、前記貫通孔に挿通されて、前記貫通孔の縁部に係止されるインナー部材と、前記インナー部材に取り付けられて、ワイヤーハーネスを挿通可能な弾性材料からなる挿通部を有するアウター部材と、を備える。前記挿通部は、前記ワイヤーハーネスに固定される固定部位を有し、前記インナー部材は、複数の分割体から構成され、前記複数の分割体は、前記ワイヤーハーネスの周囲に配置された状態で組み付けられており、前記インナー部材は、前記ワイヤーハーネスに対向する内周面に、前記ワイヤーハーネスを保持する複数の突部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤーハーネスをグロメットに挿通して車両内に配策する場合でも、ワイヤーハーネスが、予め設計された配策経路からずれるのを抑えて、配策経路の設計時に、作業者の負担を抑えることができるグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係るグロメットにワイヤーハーネスを挿通して車両内に配策した状態の一例を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態に係るグロメットの斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、本実施形態に係るインナー部材の分解斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係るインナー部材の正面図である。
図6図6は、本実施形態に係るグロメットを車体パネルに取り付けた状態を示す図である。
図7図7は、図6のVII-VII線に沿った要部断面図である。
図8図8は、比較例に係るグロメットを車体パネルに取り付けた状態を示す図である。
図9図9は、比較例に係るグロメットを車体パネルに取り付けた状態を示す図である。
図10図10は、比較例に係るグロメットにワイヤーハーネスを挿通して車両内に配策した状態の一例を示す概略図である。
図11図11は、本実施形態の第1変形例に係るグロメットの要部断面図である。
図12図12は、本実施形態の第2変形例に係るグロメットの要部断面図である。
図13図13は、本実施形態の第3変形例に係るグロメットの要部断面図である。
図14A図14Aは、本実施形態の第4変形例に係るインナー部材の正面図である。
図14B図14Bは、本実施形態の第4変形例に係るインナー部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本実施形態に係るグロメットについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。また、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0015】
[車両内のワイヤーハーネスの配策]
最初に、車両1内のワイヤーハーネス20の配策について説明する。図1は、グロメット30にワイヤーハーネス20を挿通して車両1内に配策した状態の一例を示す概略図である。図1に示すように、車両1内では、予め設計された配策経路Aに沿って、車室3の内部及び外部にわたって、ワイヤーハーネス20が配策されている。
【0016】
ワイヤーハーネス20は、電線束21及び外装部材23を有する。電線束21は、複数の電線を束ねて形成されており、外装部材23で覆われている。ワイヤーハーネス20は、車室3の内部の固定点5a及び車室3の外部の固定点5bで、車両1内に固定されている。
【0017】
本実施形態では、ワイヤーハーネス20の外装部材23として、コルゲートチューブが使用される。ワイヤーハーネス20の外装部材23として、コルゲートチューブが使用される場合、外装部材23は、後述するように、環状の山部25a及び環状の谷部25bが、ワイヤーハーネス20の長さ方向に沿って交互に並んだ蛇腹形状に形成されている(図7参照)。なお、図1では、外装部材23の山部25a及び谷部25bの図示は省略されている。
【0018】
車両1内にて、車室3の内部及び外部は、車体パネル7によって仕切られる。車体パネル7には、貫通孔9が設けられている。ワイヤーハーネス20は、貫通孔9に装着されたグロメット30に挿通されることにより、車体パネル7を貫通している。車体パネル7の車室3の外部側の表面には、貫通孔9の第1縁部9aが存在する。車体パネル7の車室3の内部側の表面には、貫通孔9の第2縁部9bが存在する。
【0019】
グロメット30は、後述するように、車体パネル7の貫通孔9に挿通されて、貫通孔9に固定される。グロメット30は、固定部材100により、ワイヤーハーネス20に固定される。固定部材100として、例えば、締結バンド、テープなどが使用される。このような構成により、グロメット30は、ワイヤーハーネス20を保護するとともに、車室3の外部から車室3の内部に水が浸入するのを防いでいる。
【0020】
[グロメットの全体構成]
次に、グロメット30の構成を説明する。図2は、グロメット30の斜視図である。図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。図4は、グロメット30のインナー部材31の分解斜視図である。図5は、グロメット30のインナー部材31の正面図である。なお、図5では、インナー部材31によるワイヤーハーネス20の保持を説明するために、ワイヤーハーネス20の外装部材23における山部25aの頂部25a1及び谷部25bの底部25b1を二点鎖線で示している。
【0021】
図2及び図3に示すように、グロメット30は、インナー部材31及びアウター部材33を備える。インナー部材31は、合成樹脂などの樹脂材料からなる。インナー部材31は、グロメット30を車体パネル7の貫通孔9に挿通固定するとともに、グロメット30に挿通されたワイヤーハーネス20を保持する。アウター部材33は、ゴムなどの弾性材料からなる。アウター部材33は、インナー部材31に組み付けられて、インナー部材31と車体パネル7の貫通孔9との間をシールする。
【0022】
[インナー部材の構成]
次に、インナー部材31の構成を説明する。図2図4に示すように、インナー部材31は、筒部41、鍔部43、第1係止爪45,45、第2係止爪46,46、第1突部47、及び第2突部48を備える。
【0023】
筒部41は、略楕円筒状に形成されており、第1開口端41a及び第2開口端41bを有する。第1開口端41aは、筒部41の軸方向における、アウター部材33側とは反対側に位置する。インナー部材31は、第1開口端41aで外部に開口する。第2開口端41bは、筒部41の軸方向における、アウター部材33側に位置する。なお、筒部41は、略楕円筒状に形成されることに限定されず、円筒状、多角筒状に形成されてもよい。
【0024】
筒部41の軸方向は、ワイヤーハーネス20が挿通される方向に対応する。このため、インナー部材31がワイヤーハーネス20を保持している状態において、筒部41の軸方向(中心軸Cを含む)は、インナー部材31内における、ワイヤーハーネス20の長さ方向に対応する。同様に、インナー部材31がワイヤーハーネス20を保持している状態において、筒部41の周方向は、インナー部材31内における、ワイヤーハーネス20の周方向に対応する。
【0025】
筒部41の内周面41cで囲まれた空間は、ワイヤーハーネス20を挿通可能な大きさに設定されている。筒部41の外周面41dは、車体パネル7の貫通孔9の内周面9c(図1参照)に沿うように形成されている。なお、貫通孔9の内周面9cで囲まれた空間は、筒部41を挿通可能な大きさに設定されている。
【0026】
筒部41は、第1筒壁凸部41e、第2筒壁凸部41f、第1筒壁凹部41g、及び第2筒壁凹部41hから構成される。第1筒壁凸部41e及び第2筒壁凸部41fは、筒部41の第1開口端41aに向けて突出しており、筒部41の中心軸Cを挟んで、互いに対向するように配置されている。第1筒壁凹部41g及び第2筒壁凹部41hは、筒部41の第2開口端41bに向けて窪んでおり、筒部41の中心軸Cを挟んで、互いに対向するように配置されている。
【0027】
筒部41の周方向において、第1筒壁凸部41eの両端には、それぞれ、第1筒壁凹部41gの一端、及び第2筒壁凹部41hの一端が連接されている。同様に、筒部41の周方向において、第2筒壁凸部41fの両端には、それぞれ、第1筒壁凹部41gの他端、及び第2筒壁凹部41hの他端が連接されている。
【0028】
このため、筒部41の内周面41cは、第1筒壁凸部41eの内壁面、第1筒壁凹部41gの内壁面、第2筒壁凸部41fの内壁面、及び第2筒壁凹部41hの内壁面から構成される。同様に、筒部41の外周面41dは、第1筒壁凸部41eの外壁面、第1筒壁凹部41gの外壁面、第2筒壁凸部41fの外壁面、及び第2筒壁凹部41hの外壁面から構成される。このような構成により、筒部41の第1開口端41aは、2箇所で凹んでいる。
【0029】
筒部41の第2開口端41b側の外周面41dには、鍔部43が設けられている。鍔部43は、略楕円環状に形成されて、筒部41の中心軸Cから離れる方向(外方)に、外周面41dから突出する。鍔部43は、グロメット30を車体パネル7に取り付けた状態において、後述するアウター部材33のシール部位74を車体パネル7の貫通孔9の第1縁部9aに押し付ける。
【0030】
筒部41の外周面41dには、第1係止爪45,45及び第2係止爪46,46が設けられている。第1係止爪45,45は、第1筒壁凸部41eの外壁面に設けられている。第2係止爪46,46は、第2筒壁凸部41fの外壁面に設けられている。第1係止爪45,45は、それぞれ、筒部41の中心軸Cを挟んで、第2係止爪46,46に対向している。第1係止爪45,45及び第2係止爪46,46は、鍔部43と、車体パネル7の貫通孔9の第1縁部9aとの間に、アウター部材33のシール部位74を挟み込んだ状態で、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに係止される。
【0031】
第1筒壁凸部41eの外壁面には、間隔を空けて、切欠部41e1,41e1が形成されている。第1係止爪45,45は、それぞれ、切欠部41e1,41e1に設けられている。第1係止爪45,45の各々は、支持部45a及び突出片45bを有する。支持部45aは、切欠部41e1における、筒部41の第1開口端41a近傍に設けられる。突出片45bは、支持部45aに連接されて、筒部41の第2開口端41bに向かって、筒部41の中心軸Cから離れる方向(外方)に突出する。このような構成により、突出片45bは、外力により、筒部41の中心軸Cに近付く方向(内方)及び筒部41の中心軸Cから離れる方向(外方)に変位に可能である。
【0032】
突出片45bの先端には、鍔部43に対向する係止面45cが形成されている。筒部41の軸方向における、鍔部43と突出片45bの係止面45cとの間の距離は、後述するアウター部材33のシール部位74の厚さと、車体パネル7の厚みとの合計よりも小さくなるように設定されている。
【0033】
第2筒壁凸部41fの外壁面には、間隔を空けて、切欠部41f1,41f1が形成されている。第2係止爪46,46は、それぞれ、切欠部41f1,41f1に設けられている。第2係止爪46,46の各々は、支持部46a及び突出片46bを有する。支持部46aは、切欠部41f1における、筒部41の第1開口端41a近傍に設けられる。突出片46bは、支持部46aに連接されて、筒部41の第2開口端41bに向かって、筒部41の中心軸Cから離れる方向(外方)に突出する。このような構成により、突出片46bは、外力により、筒部41の中心軸Cに近付く方向(内方)及び筒部41の中心軸Cから離れる方向(外方)に変位可能である。
【0034】
突出片46bの先端には、鍔部43に対向する係止面46cが形成されている。筒部41の軸方向における、鍔部43と突出片46bの係止面46cとの間の距離は、アウター部材33のシール部位74の厚さと、車体パネル7の厚みとの合計よりも小さくなるように設定されている。
【0035】
筒部41の内周面41cには、第1突部47及び第2突部48が設けられている。具体的には、第1筒壁凹部41g及び第2筒壁凹部41hの内壁面には、それぞれ、第1突部47及び第2突部48が設けられている。なお、第1突部47の両端は、第1筒壁凹部41gに連接する第1筒壁凸部41eの内壁面及び第2筒壁凸部41fの内壁面に設けられている。第1突部47は、第1筒壁凹部41gの内壁面のみに設けられてもよい。同様に、第2突部48の両端は、第2筒壁凹部41hに連接する第1筒壁凸部41eの内壁面及び第2筒壁凸部41fの内壁面に設けられている。第1突部47は、第1筒壁凹部41gの内壁面のみに設けられてもよい。なお、突部の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0036】
第1突部47及び第2突部48は、筒部41の中心軸Cを挟んで、互いに対向している。第1突部47及び第2突部48の各々は、筒部41の内周面41cから、筒部41の中心軸Cに近付く方向(内方)に突出する。第1突部47及び第2突部48の各々の先端部は、筒部41の中心軸Cに近付くにつれて、先細るように形成されている。第1突部47及び第2突部48は、グロメット30にワイヤーハーネス20が挿通された状態において、ワイヤーハーネス20を保持する。
【0037】
[インナー部材における分割体の構成]
次に、インナー部材31における第1分割体50及び第2分割体60の構成を説明する。図4に示すように、インナー部材31は、筒部41の周方向において、第1分割体50及び第2分割体60に分割されている。なお、分割体の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0038】
第1分割体50は、筒部41の周方向において、筒部41を分割した一方の筒部分割体51と、鍔部43を分割した一方の鍔部分割体53とを備える。筒部分割体51は、筒部41の周方向において、第1筒壁凸部41eを分割した一方の第1筒壁凸部分割体51aと、第2筒壁凸部41fを分割した一方の第2筒壁凸部分割体51bとを含む。筒部分割体51は、第1筒壁凸部分割体51a、第1筒壁凹部41g、及び第2筒壁凸部分割体51bから構成される。また、筒部分割体51には、一方の第1係止爪45、一方の第2係止爪46、及び第1突部47が設けられている。
【0039】
第2分割体60は、筒部41の周方向において、筒部41を分割した他方の筒部分割体61と、鍔部43を分割した他方の鍔部分割体63とを備える。筒部分割体61は、筒部41の周方向において、第1筒壁凸部41eを分割した他方の第1筒壁凸部分割体61aと、第2筒壁凸部41fを分割した他方の第2筒壁凸部分割体61bとを含む。筒部分割体61は、第1筒壁凸部分割体61a、第2筒壁凹部41h、及び第2筒壁凸部分割体61bから構成される。また、筒部分割体61には、他方の第1係止爪45、他方の第2係止爪46、及び第2突部48が設けられている。
【0040】
このように、第1分割体50及び第2分割体60は同じ形状を有している。
【0041】
図4に示すように、第1分割体50において、筒部分割体51の一端には、係合部55が形成されており、かつ、筒部分割体51の他端には、被係合部57が形成されている。具体的には、係合部55は、第1筒壁凸部分割体51aの端面51a1に設けられており、かつ、被係合部57は、第2筒壁凸部分割体51bの端面51b1に設けられている。
【0042】
係合部55は、突出片55aを有する。突出片55aは、端面51a1から離れる方向に、端面51a1から突出する。被係合部57は、収容室57a及び突出面57bを有する。収容室57aは、端面51b1に設けられる。突出面57bは、収容室57a内に設けられて、収容室57aの内部に突出する。
【0043】
第2分割体60において、筒部分割体61の一端には、係合部65が形成されており、かつ、筒部分割体61の他端には、被係合部67が形成されている。具体的には、係合部65は、第2筒壁凸部分割体61bの端面61b1に設けられており、かつ、被係合部67は、第1筒壁凸部分割体61aの端面61a1に設けられている。
【0044】
係合部65は、突出片65aを有する。突出片65aは、端面61b1から離れる方向に、端面61b1から突出する。被係合部67は、収容室67a及び突出面67bを有する。収容室67aは、端面61a1に設けられる。突出面67bは、収容室67a内に設けられて、収容室67aの内部に突出する。
【0045】
第1分割体50及び第2分割体60を組み付ける場合、係合部55は被係合部67に係合され、かつ、係合部65は被係合部57に係合される。具体的には、係合部55の突出片55aが被係合部67の収容室67aに挿入され、かつ、係合部65の突出片65aが被係合部57の収容室57aに挿入される。
【0046】
突出片55aは、収容室67aに挿入されると、突出面67bにより、突出面67bと反対側に変位する。突出片55aは、突出面67bを超えるまで、収容室67aに挿入されると、元の状態に戻って、突出面67bに係止される。
【0047】
同様に、突出片65aは、収容室57aに挿入されると、突出面57bにより、突出面57bと反対側に変位する。突出片65aは、突出面57bを超えるまで、収容室57aに挿入されると、元の状態に戻って、突出面57bに係止される。
【0048】
これにより、第1分割体50及び第2分割体60を組み付けることができる。
【0049】
図5に示すように、ワイヤーハーネス20の周囲に第1分割体50及び第2分割体60を配置して組み付けた状態において、第1突部47の頂部47a及び第2突部48の頂部48aは、ワイヤーハーネス20に対向する。頂部47a,48aの各々は、筒部41の中心軸Cに垂直な断面視において、ワイヤーハーネス20の外装部材23の外周面に沿うように形成されている。
【0050】
例えば、ワイヤーハーネス20の外装部材23として使用されるコルゲートチューブの山部25a及び谷部25bが円環状に形成されている場合、頂部47a,48aは、筒部41の中心軸Cに垂直な断面視において、円弧状に形成されている。頂部47a,48aは、筒部41の中心軸Cに垂直な断面視において、山部25aの頂部25a1と谷部25bの底部25b1との間に位置する。
【0051】
なお、ワイヤーハーネス20の周囲に第1分割体50及び第2分割体60を配置して組み付けた状態において、外装部材23の山部25a及び谷部25bの寸法が公差範囲内で基準値からずれていても、頂部47a,48aが、外装部材23の隣接する山部25a,25aの間に入りこむように設定されている。
【0052】
このような構成により、ワイヤーハーネス20の周囲に第1分割体50及び第2分割体60を配置して組み付けた状態において、第1突部47及び第2突部48は、ワイヤーハーネス20の外装部材23における、隣接する山部25a,25aの間に確実に入り込む。このため、インナー部材31は、ワイヤーハーネス20を保持することができる。
【0053】
[アウター部材の構成]
次に、アウター部材33の構成を説明する。図2及び図3に示すように、アウター部材33は、インナー部材31に組み付けられる。アウター部材33は、挿通部71及びシール部73を備える。
【0054】
挿通部71は、挿通部位81、固定部位83、及び連通部位85から構成される。挿通部位81は、略楕円筒状に形成されており、第1開口端81a及び第2開口端81bを有する。第1開口端81aは、挿通部位81の軸方向における、インナー部材31側に位置する。第2開口端81bは、挿通部位81の軸方向における、固定部位83側に位置する。なお、挿通部位81は、略楕円筒状に形成されることに限定されず、円筒状、多角筒状に形成されてもよい。
【0055】
挿通部位81の軸方向は、ワイヤーハーネス20が挿通される方向に対応する。挿通部位81が変位していない状態において、挿通部位81の中心軸は、インナー部材31の筒部41の中心軸Cに一致する。挿通部位81の内周面81cで囲まれた空間は、ワイヤーハーネス20を挿通可能な大きさに設定されている。挿通部位81の外周面81dは、蛇腹状に形成されている。
【0056】
固定部位83は、略楕円筒状に形成されており、第1開口端83a及び第2開口端83bを有する。第1開口端83aは、固定部位83の軸方向における、挿通部位81側に位置する。第1開口端83aの開口面は、第2開口端81bの開口面よりも小さい。第2開口端83bは、固定部位83の軸方向における、挿通部位81側とは反対側に位置する。アウター部材33は、第2開口端83bで外部に開口する。なお、固定部位83は、略楕円筒状に形成されることに限定されず、円筒状、多角筒状に形成されてもよい。
【0057】
固定部位83の軸方向は、ワイヤーハーネス20が挿通される方向に対応する。固定部位83が変位していない状態において、固定部位83の中心軸は、インナー部材31の筒部41の中心軸Cに一致する。固定部位83の内周面83cで囲まれた空間は、ワイヤーハーネス20を挿通可能な大きさに設定されている。固定部位83の外周面83dの一部には、固定部材100を巻き付け可能である。
【0058】
連通部位85は、挿通部位81と固定部位83との間に位置する。連通部位85は、挿通部位81の第2開口端81bと、固定部位83の第1開口端83aとを連通する。
【0059】
グロメット30にワイヤーハーネス20を挿通した状態で、固定部位83に固定部材100を巻き付けることにより、アウター部材33は、ワイヤーハーネス20に固定される。これにより、アウター部材33とワイヤーハーネス20との間の隙間を介して、車室3の外部から車室3の内部に水が浸入するのを防ぐことができる。
【0060】
シール部73は、基部73a、折返し部73b、第1突起73c、及び第2突起73dを有する。基部73aは、略楕円環状に形成されて、挿通部位81の第1開口端81aの外周面から、挿通部位81の中心軸から離れる方向(外方)に突出する。折返し部73bは、基部73aに連接し、基部73aから折り返される。インナー部材31の鍔部43は、基部73a及び折返し部73bによって完全に覆われる。
【0061】
第1突起73cは、略楕円環状に形成されて、第1係止爪45,45及び第2係止爪46,46に向けて、挿通部位81の中心軸から離れる方向に広がるように、折返し部73bから突出する。第2突起73dは、第1突起73cよりも挿通部位81の中心軸に近い位置に形成されている。第2突起73dは、略楕円環状に形成されて、第1係止爪45,45及び第2係止爪46,46に向けて、折返し部73bから突出する。第2突起73dの突出長は、第1突起73cの突出長よりも小さい。
【0062】
折返し部73b、第1突起73c、及び第2突起73dはシール部位74を構成する。シール部位74は、グロメット30を車体パネル7に取り付けた状態において、インナー部材31の鍔部43と、車体パネル7の貫通孔9の第1縁部9aとの間に挟み込まれる。なお、シール部位74の厚さは、挿通部位81の中心軸に沿った、折返し部73bの厚さと第1突起73cの厚さとの合計に等しい。
【0063】
[グロメット30の取付]
次に、グロメット30の取付を説明する。最初に、グロメット30にワイヤーハーネス20を挿通する方法を説明する。
【0064】
最初に、インナー部材31の第1分割体50及び第2分割体60を、ワイヤーハーネス20の周囲に配置する。この状態で、第1分割体50の第1突部47及び第2分割体60の第2突部48を、ワイヤーハーネス20の外装部材23における、所望の隣接する山部25a,25aの間に入り込ませつつ、第1分割体50及び第2分割体60を組み付ける。具体的には、第1分割体50の係合部55を、第2分割体60の被係合部67に係合させるとともに、第2分割体60の係合部65を、第1分割体50の被係合部57に係合させる。これにより、インナー部材31は、ワイヤーハーネス20を保持する。
【0065】
次に、ワイヤーハーネス20をアウター部材33に挿通して、アウター部材33をインナー部材31に組み付ける。具体的には、アウター部材33のシール部73の折返し部73bを、インナー部材31の鍔部43を完全に覆うように折り返して、アウター部材33をインナー部材31に取り付ける。最後に、アウター部材33の固定部位83の外周面83dに固定部材100を巻き付けて、ワイヤーハーネス20をアウター部材33に固定する。これにより、ワイヤーハーネス20は、グロメット30に挿通される。
【0066】
なお、ワイヤーハーネス20をアウター部材33に挿通し、固定部材100を用いて、ワイヤーハーネス20をアウター部材33に固定した後に、ワイヤーハーネス20をインナー部材31で保持させて、アウター部材33をインナー部材31に組み付けてもよい。
【0067】
次に、グロメット30を車体パネル7の貫通孔9に挿通固定する方法を説明する。
【0068】
ワイヤーハーネス20が挿通されたグロメット30のインナー部材31を、車室3の外部から車体パネル7の貫通孔9に挿入して、車室3の内部に向けて、グロメット30を押し込む。この際、インナー部材31の第1係止爪45,45の突出片45b,45b及び第2係止爪46,46の突出片46b,46bが、貫通孔9の内周面9cに当接して、筒部41の中心軸Cに近付く方向(内方)に押し込まれる。
【0069】
突出片45b,45b及び突出片46b,46bが、貫通孔9の内周面9cを超えるまで、グロメット30が押し込まれると、突出片45b,45b及び突出片46b,46bは、弾性復帰して、筒部41の中心軸Cから離れる方向(外方)に突出し戻る。これにより、第1係止爪45,45の係止面45c,45c及び第2係止爪46,46の係止面46c,46cが、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに当接して、第1係止爪45,45及び第2係止爪46,46が、貫通孔9の第2縁部9bに係止される。
【0070】
図6は、グロメット30を車体パネル7に取り付けた状態を示す図である。なお、図6では、ワイヤーハーネス20を二点鎖線で示しており、外装部材23の山部25a及び谷部25bの図示は省略されている。第1係止爪45,45及び第2係止爪46,46が、貫通孔9の第2縁部9bに係止された状態において、図6に示すように、インナー部材31の鍔部43と、車体パネル7の貫通孔9の第1縁部9aとの間に、アウター部材33のシール部位74が挟み込まれる。これにより、インナー部材31は、グロメット30を車体パネル7の貫通孔9に挿通固定するとともに、アウター部材33は、インナー部材31と車体パネル7の貫通孔9との間をシールする。
【0071】
[グロメットによるワイヤーハーネスの保持]
次に、グロメット30によるワイヤーハーネス20の保持を説明する。図7は、図6のVII-VII線に沿った要部断面図である。図7に示すように、ワイヤーハーネス20が挿通されたグロメット30を、車体パネル7の貫通孔9に挿通固定した状態において、ワイヤーハーネス20は、グロメット30のインナー部材31に保持される。具体的には、第1突部47及び第2突部48が、ワイヤーハーネス20の外装部材23における、隣接する山部25a,25aの間に入り込む。
【0072】
上述したように、外装部材23の山部25a及び谷部25bの寸法が公差範囲内で基準値からずれていても、第1突部47の頂部47a及び第2突部48の頂部48aが、外装部材23の隣接する山部25a,25aの間に入り込むように設定されている。このため、インナー部材31は、外装部材23の山部25a及び谷部25bの寸法公差を吸収して、ワイヤーハーネス20を保持することができる。
【0073】
[比較例]
次に、比較例について説明する。図8及び図9は、グロメット300を車体パネル7に取り付けた状態を示す図である。図10は、グロメット300にワイヤーハーネス20を挿通して車両1内に配策した状態の一例を示す概略図である。なお、図8及び図9では、ワイヤーハーネス20を二点鎖線で示している。また、図8図10では、ワイヤーハーネス20の外装部材23の山部25a及び谷部25bの図示は省略されている。
【0074】
図8に示すように、グロメット30と比較して、グロメット300では、第1突部47及び第2突部48が省略されている。第1突部47及び第2突部48が省略されていることを除いて、グロメット300の構成は、グロメット30の構成と同じである。
【0075】
ワイヤーハーネス20がグロメット300に挿通されて固定されている場合、アウター部材33は弾性材料を用いて構成されている。このため、ワイヤーハーネス20の剛性が高いと、ワイヤーハーネス20の長さ方向に沿った応力がアウター部材33に掛かり、アウター部材33が変形する可能性がある。
【0076】
特に、アウター部材33の挿通部位81は蛇腹状に構成されているため、ワイヤーハーネス20の長さ方向に沿った応力がアウター部材33に掛かると、挿通部位81が伸縮する可能性がある。図9に示すように、ワイヤーハーネス20の長さ方向に沿った応力により、アウター部材33の挿通部位81が収縮する場合、ワイヤーハーネス20は、アウター部材33の固定部位83に固定されているため、挿通部位81の収縮に伴って、ワイヤーハーネス20が車室3の内部に押し込まれる。
【0077】
これにより、図10に示すように、車両1内において、ワイヤーハーネス20が、予め設計した配策経路A(二点鎖線)から配策経路B(実線)にずれて、ワイヤーハーネス20の車室3の内部側の配策経路が大きく膨らむとともに、ワイヤーハーネス20の車室3の外部側の配策経路が直線的になる。
【0078】
これに対して、グロメット30では、ワイヤーハーネス20は、第1突部47及び第2突部48を介して、車体パネル7に固定されたインナー部材31に保持されている。このため、グロメット30は、ワイヤーハーネス20の長さ方向の移動を規制して、ワイヤーハーネス20が車室3の内部に押し込まれる、又は車室3の外部に引き込まれるのを回避することができる。したがって、ワイヤーハーネス20の長さ方向に沿った応力がグロメット30に掛かっても、配策経路Aを維持することができる。
【0079】
[作用・効果]
本実施形態によれば、グロメット30は、車体パネル7に設けられた貫通孔9に装着され、インナー部材31及びアウター部材33を備える。インナー部材31は、貫通孔9に挿通されて、貫通孔9の第2縁部9bに係止される。アウター部材33は、インナー部材31に取り付けられて、ワイヤーハーネス20を挿通可能な弾性材料からなる挿通部71を有する。
【0080】
挿通部71は、ワイヤーハーネス20に固定される固定部位83を有する。インナー部材31は、複数の分割体(例えば、第1分割体50及び第2分割体60)から構成される。複数の分割体は、ワイヤーハーネス20の周囲に配置された状態で組み付けられている。インナー部材31は、ワイヤーハーネス20に対向する内周面41cに、ワイヤーハーネス20を保持する複数の突部(例えば、第1突部47及び第2突部48)を有する。
【0081】
上述した構成により、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに係止されたインナー部材31が、ワイヤーハーネス20を保持する。このため、ワイヤーハーネス20の剛性により、ワイヤーハーネス20の長さ方向に沿った応力が、グロメット30のアウター部材33に掛かる場合でも、ワイヤーハーネス20の長さ方向の移動を規制することができる。
【0082】
したがって、ワイヤーハーネス20をグロメット30に挿通して車両1内に配策する場合でも、ワイヤーハーネス20が、予め設計した配策経路Aからずれるのを抑えて、配策経路の設計時に、作業者の負担を抑えることができる。また、ワイヤーハーネス20が、予め設計した配策経路Aからずれるのを抑えることができるため、グロメット30の周辺の配策経路の設計自由度を高めることができる。
【0083】
本実施形態によれば、複数の突部(例えば、第1突部47及び第2突部48)の各々は、ワイヤーハーネス20に対向する頂部(例えば、頂部47a,48a)を有する。ワイヤーハーネスの長さ方向に垂直な断面視において、各突部の頂部は、ワイヤーハーネス20の外装部材23の外周面に沿うように形成されている。
【0084】
上述した構成により、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに係止されたインナー部材31が、ワイヤーハーネス20を確実に保持することができる。
【0085】
本実施形態によれば、ワイヤーハーネス20の外装部材23は、環状の山部25a及び環状の谷部25bがワイヤーハーネス20の長さ方向に沿って交互に並んだ蛇腹形状に形成されている。この場合、複数の突部(例えば、第1突部47及び第2突部48)は、ワイヤーハーネス20の外装部材23における、隣接する山部25a,25aとの間に入り込んで、ワイヤーハーネス20を保持する。
【0086】
上述した構成により、ワイヤーハーネス20の外装部材23の外周面が蛇腹形状に形成されている場合でも、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに係止されたインナー部材31が、ワイヤーハーネス20を保持することができる。
【0087】
本実施形態によれば、インナー部材31は、一対の分割体(例えば、第1分割体50及び第2分割体60)から構成されている。この場合、一方の分割体(例えば、第1分割体50)は、係合部(例えば、係合部55)が設けられた一端と、被係合部(例えば、被係合部57)が設けられた他端とを有する。当該係合部は、他方の分割体(例えば、第2分割体60)の被係合部(例えば、被係合部67)に係合する。当該被係合部は、他方の分割体の係合部(例えば、係合部65)に係合される。
【0088】
上述した構成により、一対の分割体を、ワイヤーハーネス20の周囲に配置させた状態で、簡易に組み付けることができる。
【0089】
[第1変形例]
上述した実施形態では、インナー部材31の複数の突部(例えば、第1突部47及び第2突部48)は、筒部41の周方向に沿って設けられたが、これに限定されない。例えば、筒部41の軸方向に沿って、複数の突部を設けてもよい。
【0090】
図11は、第1変形例に係るグロメット30aの要部断面図である。図11に示すように、グロメット30aでは、第1突部147a,147bが、筒部41の軸方向に沿って、第1筒壁凹部41gの内壁部に設けられている。なお、第1突部147a,147bの各々の両端は、第1筒壁凹部41gに連接する第1筒壁凸部41eの内壁面及び第2筒壁凸部41fの内壁面に設けられている。第1突部147a,147bは、第1筒壁凹部41gの内壁面のみに設けられてもよい。
【0091】
同様に、グロメット30aでは、第2突部148a,148bが、筒部41の軸方向に沿って、第2筒壁凹部41hの内壁部に設けられている。なお、第2突部148a,148bの各々の両端は、第2筒壁凹部41hに連接する第1筒壁凸部41eの内壁面及び第2筒壁凸部41fの内壁面に設けられている。第2突部148a,148bは、第2筒壁凹部41hの内壁面のみに設けられてもよい。
【0092】
ワイヤーハーネス20が挿通されたグロメット30aを、車体パネル7の貫通孔9に挿通固定した状態において、ワイヤーハーネス20は、グロメット30のインナー部材31に保持される。具体的には、第1突部147a及び第2突部148aが、ワイヤーハーネス20の外装部材23における、隣接する第1山部125a1と第2山部125a2との間に入り込む。同様に、第1突部147b及び第2突部148bが、ワイヤーハーネス20の外装部材23における、隣接する第2山部125a2と第3山部125a3との間に入り込む。なお、第1突部及び第2突部の各々数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0093】
本変形例によれば、複数の突部(例えば、第1突部147a,147b及び第2突部148a,148b)が、ワイヤーハーネス20の周方向及び長さ方向に沿って、インナー部材31の内周面41cに設けられる。
【0094】
上述した構成により、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに係止されたインナー部材31が、ワイヤーハーネス20をより確実に保持することができる。
【0095】
[第2変形例]
上述した第1変形例では、第1突部147b及び第2突部148bは、第1突部147a及び第2突部148aが入り込む第1谷部125b1に隣接する第2谷部125b2に入り込んだが、これに限定されない。例えば、第1突部147b及び第2突部148bは、第2谷部125b2に隣接する第3谷部125b3に入り込んでもよい。
【0096】
なお、第1谷部125b1は、第1山部125a1と第2山部125a2との間に形成されている。第2谷部125b2は、第2山部125a2と第3山部125a3との間に形成されている。
【0097】
図12は、第2変形例に係るグロメット30bの要部断面図である。図12に示すように、グロメット30bでは、第1突部147b及び第2突部148bは、第2谷部125b2に隣接する第3谷部125b3に入り込む。なお、第1突部147b及び第2突部148bは、2つ先の谷部に限定されず、3つ以上先の谷部に入り込んでもよい。
【0098】
なお、本変形例では、第1突部147a,147bの間隔及び第2突部148a,148bの間隔が広いため、インナー部材31の筒部41において、第1筒壁凹部41g及び第2筒壁凹部41hの代わりに、第3筒壁凸部41i及び第4筒壁凸部41jを使用している。
【0099】
また、第1突部及び第2突部の各々が、筒部41の軸方向に沿って、3つ以上設けられる場合、複数の第1突部は、筒部41の軸方向において、等しい間隔又は異なる間隔で設けられてもよい。同様に、複数の第2突部は、筒部41の軸方向において、等しい間隔又は異なる間隔で設けられてもよい。
【0100】
[第3変形例]
上述した実施形態では、ワイヤーハーネス20の外装部材23として、コルゲートチューブを使用したが、これに限定されない。例えば、ワイヤーハーネス20の外装部材として、蛇腹形状に形成されていないテープ、チューブなどを使用してもよい。
【0101】
図13は、第3変形例に係るグロメット30cの要部断面図である。図13に示すように、グロメット30cでは、ワイヤーハーネス20の外装部材123として、蛇腹形状に形成されていないテープが使用される。
【0102】
本変形例では、第1突部47及び第2突部48の代わりに、第1突部47及び第2突部48よりも厚みを有する第1突部247及び第2突部248が使用される。第1突部247及び第2突部248は、例えば、ゴム材料、樹脂材料などからなる。筒部41の中心軸Cに垂直な断面視において、第1突部247と第2突部248との間の距離は、ワイヤーハーネス20の径よりも僅かに小さくなるように設計されている。なお、突部の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0103】
このような構成により、ワイヤーハーネス20の周囲に第1分割体50及び第2分割体60を配置して組み付けた状態において、第1突部247及び第2突部248は、ワイヤーハーネス20の外装部材123を圧接する。このため、インナー部材31は、ワイヤーハーネス20を保持することができる。
【0104】
なお、本変形例では、第1突部247及び第2突部248に厚みをもたせるために、インナー部材31の筒部41において、第1筒壁凹部41g及び第2筒壁凹部41hの代わりに、第3筒壁凸部41i及び第4筒壁凸部41jを使用している。
【0105】
本変形例によれば、ワイヤーハーネス20の外装部材123が、環状の山部と環状の谷部とが、ワイヤーハーネス20の長さ方向に沿って交互に並んだ蛇腹形状に形成されていない場合、複数の突部(例えば、第1突部247及び第2突部248)は、外装部材123に圧接して、ワイヤーハーネス20を保持する。
【0106】
上述した構成により、ワイヤーハーネス20の外装部材123の外周面が蛇腹形状に形成されていない場合でも、車体パネル7の貫通孔9の第2縁部9bに係止されたインナー部材31が、ワイヤーハーネス20を保持することができる。
【0107】
[第4変形例]
上述した実施形態では、インナー部材31は、第1分割体50及び第2分割体60を独立した2つの部品で構成したが、これに限定されない。例えば、インナー部材31は、第1分割体50及び第2分割体60がヒンジで繋がれた1つの部品で構成されてもよい。
【0108】
図14A及び図14Bは、第4変形例に係るインナー部材31の正面図である。なお、図14Bでは、ワイヤーハーネス20の外装部材23における山部25aの頂部25a1及び谷部25bの底部25b1を二点鎖線で示している。
【0109】
図14A及び図14Bに示すように、第1分割体50における筒部分割体51の一端は、ヒンジ400を介して、第2分割体60における筒部分割体61の他端に結合されている。なお、第1分割体50における筒部分割体51の他端には、上述した実施形態と同様に、被係合部57が形成されている。同様に、第2分割体60における筒部分割体61の一端には、上述した実施形態と同様に、係合部65が形成されている。このような構成により、インナー部材31を、樹脂成形などにより、一体成形することができる。
【0110】
なお、第1分割体50における筒部分割体51の他端が、ヒンジ400を介して、第2分割体60における筒部分割体61の一端に結合されてもよい。この場合、第1分割体50における筒部分割体51の一端には、係合部55が形成されている。同様に、第2分割体60における筒部分割体61の他端には、被係合部67が形成されている。
【0111】
ワイヤーハーネス20の周囲に第1分割体50及び第2分割体60を配置して(図14A参照)、第2分割体60の係合部65を第1分割体50の被係合部57に係合する(図14B参照)ことにより、ワイヤーハーネス20は、インナー部材31に保持される。
【0112】
本変形例によれば、インナー部材31は、一対の分割体(例えば、第1分割体50及び第2分割体60)から構成されている。この場合、一方の分割体(例えば、第1分割体50)は、他方の分割体(例えば、第2分割体60)とヒンジ400で結合された一端と、他方の分割体の係合部(例えば、係合部65)に係合される被係合部(例えば、被係合部57)が設けられた他端とを有する。
【0113】
上述した構成により、インナー部材31を、樹脂成形などにより、一体成形することができる。このため、インナー部材31を簡易に製造することができ、コストを削減することができる。
【0114】
[その他の変形例]
インナー部材31が、3つ以上の分割体で構成される場合、突部が設けられない分割体が存在してもよい。また、1つの分割体に複数の突部が設けられてもよい。
【0115】
上述した第1~4変形例のうちの2つ以上の変形例を組み合わせて、上述した実施形態に適用してもよい。
【0116】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0117】
7 車体パネル
9 貫通孔
9b 第2縁部
20 ワイヤーハーネス
23、123 外装部材
25a 山部
25b 谷部
30、30a~30c グロメット
31 インナー部材
31c 内周面
33 アウター部材
47、147a、147b、247 第1突部
47a、48a 頂部
48、148a、148b、248 第2突部
50 第1分割体
55、65 係合部
57、67 被係合部
60 第2分割体
71 挿通部
83 固定部位
400 ヒンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B