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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154172
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/026 20160101AFI20241023BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20241023BHJP
   H02K 5/02 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H02K11/026
H02K5/00 B
H02K5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067859
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 倖也
(72)【発明者】
【氏名】内村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】高口 泰明
(72)【発明者】
【氏名】礒 幸義
(72)【発明者】
【氏名】川田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】田村 匡隆
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA11
5H605BB05
5H605BB09
5H605CC01
5H605DD01
5H605DD36
5H605GG06
5H611BB01
5H611BB03
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】電気ノイズの外部への放出が抑えられ、かつ組み立て性を損なわずにケースの樹脂化にも対応可能とする。
【解決手段】アーマチュアコア25を収容するモータケース21と、回転軸24の軸方向において、アーマチュアコア25が固定された部分よりも整流子26が固定される側に配置され、かつモータケース21と対向するギヤケース31と、回転軸24の軸方向において、モータケース21とギヤケース31との間に設けられ、カーボンブラシ27を含む整流子26の径方向外側を覆い、電気ノイズの外部への放出を抑える中間ケース40と、を有する。カーボンブラシ27の整流子26への摺接で発生する電気ノイズが、中間ケース40の外部に放出されるのを抑制できる。中間ケース40をモータケース21とギヤケース31との間に設けるだけで良く、組み立て性を損なわずにギヤケース31の樹脂化にも対応できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定されたアーマチュアコアと、
前記アーマチュアコアと並ぶように前記回転軸に固定された整流子と、
前記整流子の外周部に摺接されるブラシと、
を備えたモータ装置であって、
前記アーマチュアコアを回転自在に収容する第1ケースと、
前記回転軸の軸方向において、前記アーマチュアコアが固定された部分よりも前記整流子が固定される側に配置され、かつ前記第1ケースと対向する第2ケースと、
前記回転軸の軸方向において、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に設けられ、かつ前記ブラシを含む前記整流子の径方向外側を覆い、電気ノイズの外部への放出を抑える第3ケースと、
を有するモータ装置。
【請求項2】
前記第1ケースには、前記回転軸の軸方向と交差する方向に突出され、かつ第1ねじ穴を備えた鍔部が設けられ、
前記第2ケースには、前記回転軸の軸方向において前記第1ケースに向けて突出され、かつ雌ねじを備えた柱状部が設けられ、
前記第3ケースには、前記柱状部が内側に入り込む筒状壁部、および第2ねじ穴を有するとともに前記柱状部が突き当てられる底壁部が設けられ、
前記第1ケース,前記第2ケースおよび前記第3ケースは、前記第1ねじ穴および前記第2ねじ穴に挿通されかつ前記雌ねじにねじ止めされた雄ねじにより、互いに固定されている、
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記第2ケースは樹脂製であり、前記第3ケースはアルミニウム製である、
請求項1または請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ装置において、
前記回転軸には、ウォームギヤが設けられ、
前記第2ケースには、前記ウォームギヤおよび前記ウォームギヤに噛み合わされて前記回転軸の回転速度を減速するウォームホイールが収容されている、
モータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付きのモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるモータ装置には、例えば、特許文献1に記載されたリヤワイパモータがある。特許文献1に記載されたリヤワイパモータは、アーマチュアを収容するモータハウジングと、ウォームホイールおよび運動変換機構を収容するギヤハウジングとを備えている。これらのモータハウジングおよびギヤハウジングは、一対の固定ネジにより互いに固定されている。
【0003】
モータハウジングは、磁性体である鋼板をプレス加工して形成されている。また、ギヤハウジングは、軽量化のためにプラスチック等の樹脂材料を射出成形して形成されている。そして、ギヤハウジングに設けられるブラシホルダ収容部の内側には、コンミテータおよび複数のブラシが配置されている。
【0004】
すなわち、電気ノイズの発生源が、樹脂製のブラシホルダ収容部の内側に収容されている。そこで、電気ノイズが、樹脂製のブラシホルダ収容部を透過してその内側から外側に放出されることを抑制するために、ブラシホルダ収容部が2つの金属部材で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-187759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術では、複雑な形状の2つの金属部材を必要とするばかりか、モータハウジングおよびギヤハウジングを固定する際に、それぞれの金属部材に設けられた合計4つの挟持爪を、モータハウジングとギヤハウジングとの間に確実に挟まれるように位置決めをする必要があった。そして、それぞれの挟持爪をモータハウジングとギヤハウジングとの間に挟んだ状態で、一対の固定ネジをそれぞれねじ止めする必要があった。
【0007】
本発明の目的は、電気ノイズの外部への放出を抑えることができ、かつ組み立て性を損なわずにケースの樹脂化にも対応可能なモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
モータ装置の一態様では、回転軸と、前記回転軸に固定されたアーマチュアコアと、前記アーマチュアコアと並ぶように前記回転軸に固定された整流子と、前記整流子の外周部に摺接されるブラシと、を備えたモータ装置であって、前記アーマチュアコアを回転自在に収容する第1ケースと、前記回転軸の軸方向において、前記アーマチュアコアが固定された部分よりも前記整流子が固定される側に配置され、かつ前記第1ケースと対向する第2ケースと、前記回転軸の軸方向において、前記第1ケースと前記第2ケースとの間に設けられ、かつ前記ブラシを含む前記整流子の径方向外側を覆い、電気ノイズの外部への放出を抑える第3ケースと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転軸の軸方向において、第1ケースと第2ケースとの間に第3ケースを設けるだけで、電気ノイズの外部への放出を抑えることができる。また、組み立て性を損なわずにケースの樹脂化にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】リヤワイパモータを出力軸側から見た斜視図である。
図2】リヤワイパモータをブラケットカバー側から見た斜視図である。
図3】ブラケットカバーを外した状態のリヤワイパモータの平面図である。
図4】中間ケースおよびブラシホルダをモータケース側から見た斜視図である。
図5】中間ケースおよびブラシホルダをギヤケース側から見た斜視図である。
図6】モータケース,ギヤケースおよび中間ケースの分解斜視図である。
図7】モータケース,ギヤケースおよび中間ケースの固定構造を説明する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1はリヤワイパモータを出力軸側から見た斜視図を、図2はリヤワイパモータをブラケットカバー側から見た斜視図を、図3はブラケットカバーを外した状態のリヤワイパモータの平面図を、図4は中間ケースおよびブラシホルダをモータケース側から見た斜視図を、図5は中間ケースおよびブラシホルダをギヤケース側から見た斜視図を、図6はモータケース,ギヤケースおよび中間ケースの分解斜視図を、図7はモータケース,ギヤケースおよび中間ケースの固定構造を説明する部分拡大断面図をそれぞれ示している。
【0013】
<リヤワイパモータの概要>
図1ないし図3に示されるリヤワイパモータ10は、自動車等の車両の後方に設けられたリヤハッチ(図示せず)に搭載されるものである。リヤワイパモータ10は、本発明におけるモータ装置に相当する。リヤワイパモータ10は、モータ部20,ギヤ部30および中間ケース40を備えている。
【0014】
中間ケース40は、回転軸24(図3参照)の軸方向において、モータ部20とギヤ部30との間に挟まれるようにして設けられている。そして、モータ部20,中間ケース40およびギヤ部30は、一対の第1固定ねじS1により互いに固定されている。ここで、図1ないし図3では、中間ケース40を見易くするために、当該中間ケース40を網掛けで示している。
【0015】
<モータ部の詳細>
図3に示されるように、モータ部20は、ブラシ付きの電動モータとなっている。モータ部20は、その外郭を形成するモータケース21を有しており、当該モータケース21は、磁性体である鋼板をプレス加工することで有底筒状に形成されている。なお、モータケース21は、本発明における第1ケースに相当する。
【0016】
具体的には、モータケース21は、回転軸24の軸方向に延びる筒状本体部21aと、筒状本体部21aの軸方向一側(図3の右側)に設けられる鍔部21bと、筒状本体部21aの軸方向他側(図3の左側)に設けられる段付きの段状底部21cと、を備えている。ここで、モータケース21の軸方向一側、つまり鍔部21bが設けられる側は開口され、モータケース21の軸方向他側、つまり段状底部21cが設けられる側は閉塞されている。
【0017】
鍔部21bは、モータケース21の径方向外側(図3の上下方向)に突出するようにして設けられている。すなわち、鍔部21bは、回転軸24の軸方向と交差する方向に突出されている。また、鍔部21bには、図6に示されるように、一対の第1固定ねじS1が挿通される第1ねじ穴21dが設けられている。具体的には、一対の第1ねじ穴21dは、回転軸24を中心に対向配置され、かつ回転軸24の軸方向に貫通している。
【0018】
ここで、回転軸24の軸方向において、鍔部21bのギヤケース31側には、中間ケース40のモータ側突き当て面41a(図4および図6参照)が突き当てられる第1突き当て面21eが設けられている。これにより、モータケース21および中間ケース40が互いに密着されて、モータケース21および中間ケース40の内側に埃等が進入することが抑制される。
【0019】
図3に示されるように、モータケース21の内側には、略瓦状に形成された合計4つのマグネット22(図3では2つのみ示す)が固定されている。これらのマグネット22は、例えばフェライト磁石であり、モータケース21の周方向に等間隔(90度間隔)で配置されている。ただし、より強い磁力を発生可能なネオジム磁石等を用いることもできる。
【0020】
そして、それぞれのマグネット22の内側には、微小隙間(エアギャップ)を介して、アーマチュア23を形成するアーマチュアコア25が回転自在に収容されている。つまり、モータケース21は、アーマチュアコア25を回転自在に収容している。
【0021】
アーマチュア23は、回転軸24と、当該回転軸24に固定されたアーマチュアコア25と、を備えている。具体的には、アーマチュアコア25の回転中心に、丸鋼棒からなる回転軸24の軸方向他側(図3の左側)が、圧入等により固定されている。
【0022】
また、回転軸24の軸方向におけるアーマチュアコア25の近傍には、略円柱形状に形成された整流子26が固定されている。つまり、整流子26は、アーマチュアコア25と並ぶように回転軸24に固定されている。より具体的には、整流子26は、回転軸24の軸方向における略中央部に固定され、かつアーマチュアコア25よりも回転軸24の軸方向一側(図3の右側)に配置されている。
【0023】
ここで、本実施の形態では、アーマチュアコア25は合計10個のスロット(図示せず)を備えている。言い換えれば、アーマチュアコア25は合計10個のティース(図示せず)を備えている。そして、アーマチュアコア25のそれぞれのティースには、所定の巻き方および所定の巻数でコイルCLが巻装されている。つまり、モータ部20は、4極10スロット型のブラシ付きの電動モータとなっている。
【0024】
なお、それぞれのコイルCLのコイル端は、整流子26を形成する合計10個セグメント(図示せず)にそれぞれ電気的に接続されている。ただし、モータ部20のセグメント数やスロット数は、上述のような10個に限らず、リヤワイパモータ10に必要とされるトルク特性等(仕様等)に応じて、任意に変更することが可能である。
【0025】
整流子26の外周部には、合計10個のセグメント(整流子片)が設けられ、これらのセグメントには、一対のカーボンブラシ27(図4参照)が摺接するようになっている。これらのカーボンブラシ27は、ブラシホルダ80(図4および図5参照)に移動自在に設けられ、一対のカーボンブラシ27には、ブラシホルダ80の近傍に配置されたコネクタユニット60(図3参照)から駆動電流が供給される。なお、カーボンブラシ27は、本発明におけるブラシに相当する。
【0026】
このように、アーマチュアコア25に巻装されたコイルCLとコネクタユニット60とは、一対のカーボンブラシ27および整流子26を介して電気的に接続されている。これにより、コイルCLのそれぞれに順次電磁力が発生して、ひいてはアーマチュアコア25および回転軸24(アーマチュア23)が、所定の回転方向に所定の駆動トルクで回転される。
【0027】
図3に示されるように、回転軸24の軸方向一側は、モータケース21の開口部分(図3の右側)から、その外部に突出されている。そして、回転軸24のモータケース21から突出された部分は、中間ケース40およびギヤ部30を形成するギヤケース31の内側に、回転自在に収容されている。具体的には、回転軸24に固定された整流子26が、中間ケース40の内側に配置され、回転軸24の軸方向一側の先端部分が、ギヤケース31の内側に配置されている。
【0028】
ギヤケース31の内側に配置される回転軸24の先端部には、ウォームギヤ28(詳細図示せず)が一体に設けられている。ウォームギヤ28は、回転軸24の回転に伴いギヤケース31の内側で回転される。そして、ウォームギヤ28は螺旋状に形成され、ウォームホイール33のギヤ歯33aに噛み合わされている。
【0029】
ウォームギヤ28およびウォームホイール33は、減速機構SDを形成している。すなわち、ウォームホイール33は、回転軸24(ウォームギヤ28)の回転速度を減速するもので、ウォームギヤ28よりも減速された状態で回転される。その後、減速して高トルク化された回転力は、ギヤケース31の内側に収容された運動変換機構70に伝達される。
【0030】
<ギヤ部の詳細>
図1および図3に示されるように、ギヤ部30は、その外郭を形成するギヤケース31を備えている。ギヤケース31は、回転軸24の軸方向において、アーマチュアコア25が固定された部分よりも整流子26が固定される側(図3の右側)に配置され、かつモータケース21と対向している。そして、ギヤケース31は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで略皿状に形成され、皿状底部31aおよび側壁部31bを備えている。
【0031】
また、ギヤケース31には第1開口部31cが形成され、当該第1開口部31cは、ブラケットカバー50(図1および図2参照)によって閉塞されている。なお、ギヤケース31は、本発明における第2ケースに相当し、樹脂製となっている。
【0032】
ここで、ブラケットカバー50は、鋼板をプレス加工等することで略板状に形成され、合計3つの固定脚51が一体に設けられている。ブラケットカバー50は、合計4つの第2固定ねじS2により、ギヤケース31に固定されている。また、それぞれの固定脚51には、ゴム等の弾性材料からなるクッション部材52が装着されている。これにより、リヤワイパモータ10を、クッション部材52を介してリヤハッチ等の内側に固定可能となっている。よって、リヤワイパモータ10とリヤハッチ等との間での振動の伝達が抑制される。
【0033】
さらに、回転軸24の軸方向において、ギヤケース31のモータケース21との対向部分には、中間ケース40に隣接してコネクタ収容部32が一体に設けられている。そして、コネクタ収容部32には、コネクタユニット60が収容されている。ここで、コネクタユニット60はプラスチック等の樹脂材料からなり、当該コネクタユニット60には、複数の導電部材CM1が装着されている。
【0034】
それぞれの導電部材CM1の長手方向一側には、車両側に設けられる外部コネクタの接続端子(図示せず)が電気的に接続される。これに対し、それぞれの導電部材CM1の長手方向他側には、ブラシホルダ80に装着された導電体CM2(図4および図5参照)や、コンタクトプレート(図示せず)が電気的に接続されている。なお、コンタクトプレートは、ウォームホイール33に装着されたリレープレート(図示せず)上を摺接して、リヤワイパモータ10を基準状態となるように自動で停止させるためのものである。
【0035】
ギヤケース31の内側には、減速機構SDを形成するウォームホイール33が回転自在に収容されている。ウォームホイール33は、プラスチック等の樹脂材料からなり、ウォームホイール33の外周部分には、ウォームギヤ28が噛み合わされるギヤ歯33aが一体に設けられている。そして、ウォームホイール33の回転中心は、丸鋼棒からなるホイール軸33b(図1および図3参照)の先端側に回動自在に装着されている。また、ホイール軸33bの基端側は、図1に示されるように、ギヤケース31の皿状底部31aに一体に設けられた第1ボス部31dに圧入により固定されている。
【0036】
さらに、図1に示されるように、ギヤケース31には、丸綱棒からなる出力軸34を回転自在に支持する第2ボス部31eが設けられている。具体的には、第2ボス部31eは、回転軸24の軸方向と交差する方向において、第1ボス部31dよりも回転軸24から離れた位置に配置されている。そして、出力軸34の基端側はギヤケース31の内側に収容され、出力軸34の先端側はギヤケース31の外側に配置されている。なお、出力軸34の先端部分には、ワイパアームの基端部(図示せず)が固定される。
【0037】
図3に示されるように、ウォームホイール33と出力軸34との間には、ウォームホイール33の回転運動を揺動運動に変換して出力軸34を揺動させる運動変換機構70が設けられている。運動変換機構70は、減速機構SDとともにギヤケース31の内側に収容されている。運動変換機構70は、運動変換部材71と、ピニオンギヤ72と、連結プレート73とを備えている。そして、ピニオンギヤ72は、出力軸34の基端側に固定され、出力軸34とともに揺動される。
【0038】
運動変換部材71は、基端側に本体部71aを有し、先端側にセクタギヤ71bを備えている。本体部71aは、ウォームホイール33の軸心、つまりホイール軸33bからオフセットされた位置にある第1連結軸P1に回動自在に連結されている。一方、セクタギヤ71bはピニオンギヤ72に噛み合わされ、セクタギヤ71bの軸心には、第2連結軸P2が固定されている。ここで、第1連結軸P1には樹脂キャップCPが装着され、当該樹脂キャップCPはブラケットカバー50の内側に摺接する。これにより、第1連結軸P1は、ブラケットカバー50に対してスムーズに移動可能となっている。
【0039】
連結プレート73は、運動変換部材71およびピニオンギヤ72のブラケットカバー50側(図3の手前側)に重なるように設けられている。連結プレート73の長手方向一端側は、セクタギヤ71bの軸心に固定された第2連結軸P2に回動自在に連結され、連結プレート73の長手方向他端側は、出力軸34の基端側に回動自在に連結されている。これにより、連結プレート73は、第2連結軸P2と出力軸34との間の距離を一定に保ち、ピニオンギヤ72とセクタギヤ71bとの噛み合いを保持する。
【0040】
連結プレート73のブラケットカバー50側(図3の手前側)には、当該ブラケットカバー50の内側に摺接する樹脂スペーサ74が設けられている。樹脂スペーサ74は、連結プレート73の上に重なるように、連結プレート73と略同様の形状に形成されている。これにより、運動変換機構70のブラケットカバー50に対するスムーズな動作を可能としている。
【0041】
また、図6に示されるように、ギヤケース31のコネクタ収容部32には、第2開口部32aが形成されている。第2開口部32aは、回転軸24(図3参照)の軸方向においてモータケース21側(図6の左側)を向いている。さらに、コネクタ収容部32には、第2開口部32aを囲うようにして第2突き当て面32bが設けられている。第2突き当て面32bは、回転軸24の軸方向においてモータケース21の第1突き当て面21eと対向しており、中間ケース40のギヤ側突き当て面41b(図5参照)が突き当てられる。これにより、ギヤケース31および中間ケース40が互いに密着されて、ギヤケース31および中間ケース40の内側に埃等が進入することが抑制される。
【0042】
また、コネクタ収容部32の第2突き当て面32bには、一対の柱状部35が一体に設けられている。これらの柱状部35は、略円柱状に形成され、回転軸24の軸方向において、モータケース21に向けて所定の高さで突出されている。一対の柱状部35の中心部分には、第1固定ねじS1がねじ結合される雌ねじ35aがそれぞれ設けられている。そして、一対の雌ねじ35aは、回転軸24の軸方向において、モータケース21に設けられた第1ねじ穴21dと対向している。すなわち、一対の雌ねじ35aは、回転軸24を中心に対向配置され、かつ回転軸24の軸方向に延びている。
【0043】
さらに、一対の柱状部35の先端部分(図6の左側の部分)には、中間ケース40に設けられた一対の底壁部42a(図5および図7参照)にそれぞれ突き当てられる第3突き当て面35bが設けられている。なお、第3突き当て面35bは、雌ねじ35aを囲うようにして、環状に形成されている。
【0044】
<中間ケース>
図3および図6に示されるように、回転軸24の軸方向において、モータケース21とギヤケース31との間には、中間ケース40が設けられている。中間ケース40は、溶融されたアルミニウム材料を射出成形等することで、中空の略オーバル形状に形成されている。つまり、中間ケース40は、アルミニウム製となっている。なお、中間ケース40は、本発明における第3ケースに相当する。
【0045】
図4および図5に示されるように、中間ケース40は、中空本体部41と、当該中空本体部41に一体に設けられた一対の筒状固定部42と、を備えている。具体的には、一対の筒状固定部42は、回転軸24(図3参照)を中心に対向配置され、かつ回転軸24の軸方向に延びている。なお、筒状固定部42は、本発明における筒状壁部に相当する。
【0046】
回転軸24の軸方向において、中空本体部41のモータケース21側には、モータケース21の第1突き当て面21eに突き当てられるモータ側突き当て面41a(図4参照)が設けられている。一方、回転軸24の軸方向において、中空本体部41のギヤケース31側には、ギヤケース31の第2突き当て面32bに突き当てられるギヤ側突き当て面41b(図5参照)が設けられている。
【0047】
また、一対の筒状固定部42は、図5に示されるように、中空本体部41の内側に向けて開口しており、筒状固定部42の軸方向と交差する方向の断面形状は、略C字形状となっている。そして、それぞれの筒状固定部42の軸方向におけるモータ側突き当て面41a側の部分には、底壁部42aが設けられている。底壁部42aは、筒状固定部42のモータケース21側を閉塞しており、それぞれの底壁部42aには、一対の第1固定ねじS1が挿通される第2ねじ穴42bが設けられている。
【0048】
ここで、筒状固定部42の内側には、ギヤケース31に設けられた一対の柱状部35(図6参照)が入り込む。そして、筒状固定部42の底壁部42aには、柱状部35の第3突き当て面35bが突き当てられる。すなわち、底壁部42aは、リヤワイパモータ10を組み立てた状態において、モータケース21の鍔部21bと、ギヤケース31の柱状部35との間に挟持される。
【0049】
このように、ギヤケース31と中間ケース40との接続部分に、所謂インロー構造を採用している。すなわち、回転軸24の軸方向および径方向の双方向において、中間ケース40をギヤケース31に対して容易に位置決め可能となっている。これにより、リヤワイパモータ10の組み立て作業性を向上させている。なお、底壁部42aが鍔部21bと柱状部35との間に挟持された状態では、中間ケース40のモータ側突き当て面41aは、鍔部21bの第1突き当て面21eに密着され、中間ケース40のギヤ側突き当て面41bは、コネクタ収容部32の第2突き当て面32bに密着される。
【0050】
なお、図3に示されるように、回転軸24の軸方向における中空本体部41の長さ寸法(厚み寸法)L1は、中空本体部41の内側にブラシホルダ80の略全体を収容できる寸法となっている。具体的には、中空本体部41の長さ寸法L1は、整流子26の軸方向寸法L2よりも若干大きくなっている(L1>L2)。これにより、図3に示されるように、中空本体部41の内側に、整流子26および一対のカーボンブラシ27(電気ノイズの発生源)が隠されるように収容される。つまり、中間ケース40は、一対のカーボンブラシ27を含む整流子26の径方向外側を覆っている。
【0051】
したがって、一対のカーボンブラシ27が整流子26に摺接することで発生し、かつ整流子26の径方向外側に放出される電気ノイズは、アルミニウム製の中間ケース40を透過することがない。よって、リヤワイパモータ10の作動により発生する電気ノイズが、リヤワイパモータ10の近傍に配置される電子機器等(カーオーディオ等)に悪影響を与えることが抑制される。このように、中間ケース40は、電気ノイズの外部(リヤワイパモータ10の外部)への放出を抑える機能を有している。
【0052】
ここで、ブラシホルダ80は、図4および図5に示されるように、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで略平板状に形成されたホルダ本体81を備えている。ホルダ本体81は、中空本体部41の形状に倣って略オーバル形状に形成され、モータ側対向面81a(図4参照)およびギヤ側対向面81b(図5参照)を有している。また、ホルダ本体81の中心部分には、回転軸24に固定された整流子26が挿通される整流子挿通孔82が設けられている。
【0053】
さらに、図4に示されるように、モータ側対向面81aには、一対のブラシケース83が一体に設けられている。これらのブラシケース83の内側には、カーボンブラシ27が移動自在に収容されている。具体的には、カーボンブラシ27は、整流子26に対して径方向に移動自在となっている。また、一対のブラシケース83は、整流子挿通孔82の周方向に90度間隔で配置されている。
【0054】
さらに、モータ側対向面81aには、サーモスタット84が設けられている。このサーモスタット84は、モータ部20の高負荷運転時等において、当該モータ部20を過熱から保護するものである。サーモスタット84は、整流子挿通孔82の周方向において、一対のブラシケース83の間に配置されている。
【0055】
これに対し、ギヤ側対向面81bには、第1チョークコイルCC1およびバリスタ85が設けられている。また、モータ側対向面81a側とギヤ側対向面81b側とを跨ぐようにして、第2チョークコイルCC2が設けられている。つまり、第2チョークコイルCC2は、回転軸24の軸方向に延びている。なお、第1,第2チョークコイルCC1,CC2およびバリスタ85は、電気回路上を流れる電流ノイズを消去するものである。
【0056】
<組み立て手順>
次に、以上のように形成されたリヤワイパモータ10の組み立て手順、特に、モータケース21,ギヤケース31および中間ケース40の接続手順について、図6および図7を用いて詳細に説明する。
【0057】
なお、図6および図7では、モータケース21,ギヤケース31,中間ケース40および一対の第1固定ねじS1のみを示している。
【0058】
先ず、図6の矢印M1に示されるように、中間ケース40をギヤケース31に臨ませる。具体的には、中間ケース40のギヤ側突き当て面41bを、コネクタ収容部32の第2突き当て面32bに臨ませる。その後、ギヤケース31に設けられた一対の柱状部35を、中間ケース40に設けられた一対の筒状固定部42の内側にそれぞれ差し込む。そして、一対の柱状部35の第3突き当て面35bを、筒状固定部42の底壁部42aにそれぞれ突き当てる。
【0059】
これにより、中間ケース40のギヤ側突き当て面41bが、コネクタ収容部32の第2突き当て面32bに突き当てられて、中間ケース40がギヤケース31に対して位置決めされる。また、中間ケース40の一対の第2ねじ穴42bが、一対の柱状部35の雌ねじ35aに対して、それぞれ回転軸24(図3参照)の軸方向において対向される。このとき、中間ケース40およびギヤケース31は、互いにインロー構造で組み付けられるため、回転軸24の軸方向および径方向の双方向において、ずれることなく正確に位置決めされる。
【0060】
次に、図6の矢印M2に示されるように、モータケース21を中間ケース40に臨ませる。具体的には、モータケース21の第1突き当て面21eを、中間ケース40のモータ側突き当て面41aに臨ませる。このとき、モータケース21の一対の第1ねじ穴21dと、中間ケース40の一対の第2ねじ穴42bとを、それぞれ回転軸24の軸方向において互いに対向するように位置決めする。
【0061】
その後、図6の矢印M3に示されるように、一対の第1固定ねじS1を、第1ねじ穴21dおよび第2ねじ穴42bのそれぞれに挿通し、図示しない締結工具(十字ねじ回し等)を用いて、柱状部35の雌ねじ35aにねじ止めする。このとき、中間ケース40はギヤケース31に対してインロー構造により位置決めされているので、作業者等はモータケース21の中間ケース40に対する位置決めのみをすれば良い(組み立て性向上)。
【0062】
これにより、図7に示されるように、中間ケース40の底壁部42aが、モータケース21の鍔部21bとギヤケース31の柱状部35との間に挟まれて、第1突き当て面21eとモータ側突き当て面41a,底壁部42aと第3突き当て面35b,ギヤ側突き当て面41bと第2突き当て面32bが、それぞれ面と面で密着される。よって、モータケース21,ギヤケース31および中間ケース40の軸方向および径方向へのがたつきが抑えられた状態となり、それぞれの接続作業が完了する。
【0063】
このように、モータケース21,ギヤケース31および中間ケース40は、第1ねじ穴21dおよび第2ねじ穴42bに挿通され、かつ雌ねじ35aにねじ止めされた第1固定ねじS1により、互いに固定されている。なお、第1固定ねじS1は、本発明における雄ねじに相当する。
【0064】
ここで、モータケース21と中間ケース40との間および中間ケース40とギヤケース31との間に、例えば、液状のシール剤(図示せず)をそれぞれ塗布するようにしても良い。これにより、リヤワイパモータ10の防水性および防塵性をより向上させることが可能となる。
【0065】
以上詳述したように、本実施の形態に係るリヤワイパモータ10によれば、アーマチュアコア25を回転自在に収容するモータケース21と、回転軸24の軸方向において、アーマチュアコア25が固定された部分よりも整流子26が固定される側に配置され、かつモータケース21と対向するギヤケース31と、回転軸24の軸方向において、モータケース21とギヤケース31との間に設けられ、かつカーボンブラシ27を含む整流子26の径方向外側を覆い、電気ノイズの外部への放出を抑える中間ケース40と、を有する。
【0066】
したがって、カーボンブラシ27が整流子26に摺接することで発生する電気ノイズが、中間ケース40の外部に放出されることを抑制できる。よって、リヤワイパモータ10の近傍に配置される電子機器等(カーオーディオ等)に悪影響を与えることを抑制できる。また、中間ケース40を、モータケース21とギヤケース31との間に設けるだけで良いので、組み立て性を損なうことなく、ギヤケース31の樹脂化にも対応することができる。
【0067】
また、本実施の形態に係るリヤワイパモータ10によれば、モータケース21には、回転軸24の軸方向と交差する方向に突出され、かつ第1ねじ穴21dを備えた鍔部21bが設けられ、ギヤケース31には、回転軸24の軸方向においてモータケース21に向けて突出され、かつ雌ねじ35aを備えた柱状部35が設けられ、中間ケース40には、柱状部35が内側に入り込む筒状固定部42、および第2ねじ穴42bを有するとともに柱状部35が突き当てられる底壁部42aが設けられ、モータケース21,ギヤケース31および中間ケース40は、第1ねじ穴21dおよび第2ねじ穴42bに挿通されかつ雌ねじ35aにねじ止めされた第1固定ねじS1により、互いに固定されている。
【0068】
したがって、ギヤケース31と中間ケース40との接続部分を、所謂インロー構造とすることができ、ひいては中間ケース40をギヤケース31に対して容易に位置決めすることが可能となる。よって、リヤワイパモータ10の組み立て作業性を向上させることができる。
【0069】
また、第1固定ねじS1のみにより、モータケース21,ギヤケース31および中間ケース40を互いにがたつくことなく固定することができる。したがって、これによってもリヤワイパモータ10の組み立て作業性を向上させることができる。
【0070】
さらに、本実施の形態に係るリヤワイパモータ10によれば、ギヤケース31は樹脂製であり、中間ケースはアルミニウム製である。
【0071】
これにより、電気ノイズがリヤワイパモータ10の外部に放出されることを抑制しつつ、リヤワイパモータ10の全体の軽量化を図ることが可能となる。また、例えば、ギヤケース31をアルミニウム製とした場合に比して、コスト削減を実現できる。
【0072】
また、本実施の形態に係るリヤワイパモータ10によれば、回転軸24には、ウォームギヤ28が設けられ、ギヤケース31には、ウォームギヤ28およびウォームギヤ28に噛み合わされて回転軸24の回転速度を減速するウォームホイール33が収容されている。
【0073】
これにより、小型のモータ部20であっても出力軸34の高出力化に対応することが可能となる。したがって、リヤワイパモータ10を小型軽量化することができ、ひいてはリヤワイパモータ10の小型車両等への搭載性を向上させることが可能となる。
【0074】
さらに、本実施の形態に係るリヤワイパモータ10によれば、リヤワイパモータ10を小型軽量化しつつその組み立て性を向上させることができるので、リヤワイパモータ10の製造エネルギーの省力化を図ることが可能となる。これにより、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することができる。
【0075】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、モータ装置として、リヤワイパモータ10であるものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、フロントワイパ装置,パワーウィンドウ装置,電動サンルーフ装置,電動シート装置等、他の駆動源に用いられるモータ装置にも適用することができる。
【0076】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0077】
10:リヤワイパモータ(モータ装置),20:モータ部,21:モータケース(第1ケース),21a:筒状本体部,21b:鍔部,21c:段状底部,21d:第1ねじ穴,21e:第1突き当て面,22:マグネット,23:アーマチュア,24:回転軸,25:アーマチュアコア,26:整流子,27:カーボンブラシ(ブラシ),28:ウォームギヤ,30:ギヤ部,31:ギヤケース(第2ケース),31a:皿状底部,31b:側壁部,31c:第1開口部,31d:第1ボス部,31e:第2ボス部,32:コネクタ収容部,32a:第2開口部,32b:第2突き当て面,33:ウォームホイール,33a:ギヤ歯,33b:ホイール軸,34:出力軸,35:柱状部,35a:雌ねじ,35b:第3突き当て面,40:中間ケース(第3ケース),41:中空本体部,41a:モータ側突き当て面,41b:ギヤ側突き当て面,42:筒状固定部(筒状壁部),42a:底壁部,42b:第2ねじ穴,50:ブラケットカバー,51:固定脚,52:クッション部材,60:コネクタユニット,70:運動変換機構,71:運動変換部材,71a:本体部,71b:セクタギヤ,72:ピニオンギヤ,73:連結プレート,74:樹脂スペーサ,80:ブラシホルダ,81:ホルダ本体,81a:モータ側対向面,81b:ギヤ側対向面,82:整流子挿通孔,83:ブラシケース,84:サーモスタット,85:バリスタ,CC1:第1チョークコイル,CC2:第2チョークコイル,CL:コイル,CM1:導電部材,CM2:導電体,CP:樹脂キャップ,P1:第1連結軸,P2:第2連結軸,S1:第1固定ねじ(雄ねじ),S2:第2固定ねじ,SD:減速機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7