(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154180
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ガスタービン制御装置、ガスタービン制御方法、及び、ガスタービン制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F02C 9/40 20060101AFI20241023BHJP
F23R 3/36 20060101ALI20241023BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20241023BHJP
F02C 9/28 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F02C9/40 A
F23R3/36
F02C7/22 A
F02C9/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067875
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡介
(72)【発明者】
【氏名】川上 朋
(72)【発明者】
【氏名】松本 照弘
(72)【発明者】
【氏名】盛下 光寛
(57)【要約】
【課題】混焼可能な燃焼器を備えるガスタービンにおいて、混合率の制御精度を適切に確保することにより、フラッシュバックの発生を防止する。
【解決手段】本願は、第1燃料、及び、第1燃料より単位体積当たりの熱量が低い第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御装置に関する。本装置は、混合管における前記混合燃料の流量に基づいて混合燃料の上限混合率を算出し、混合燃料の混合率が上限混合率を超えないように混合管に供給される第2燃料の流量を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御装置であって、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出するための上限値混合率算出部と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御するための流量制御部と、
を備える、ガスタービン制御装置。
【請求項2】
前記上限混合率は、前記混合管に対して供給される前記第2燃料の流量変動量に基づいて見積もられる最大混合率より大きい、請求項1に記載のガスタービン制御装置。
【請求項3】
前記上限混合率算出部は、前記燃焼器に供給される燃焼用空気の流量が増加するに従って前記上限混合率が増加するように前記上限混合率を算出する、請求項1又は2に記載のガスタービン制御装置。
【請求項4】
前記混合管に供給される前記第2燃料の流量変動量を算出するための流量変動量算出部を更に備え、
前記流量変動量算出部は、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量が減少するに従って、前記第2燃料の流量変動量が増加するように、前記流量変動量を算出し、
前記上限混合率算出部は、前記流量変動量に基づいて前記上限混合率を算出する、請求項1又は2に記載のガスタービン制御装置。
【請求項5】
前記流量制御部は、前記ガスタービンの回転数が定格回転数より低い場合、前記回転数が定格回転数に達する定格運転時に対応する際の第1目標混合率より低い第2目標混合率になるように、前記第2燃料の流量を制御する、請求項1又は2に記載のガスタービン制御装置。
【請求項6】
前記回転数が前記定格回転数に向けて上昇する場合、前記上限混合率は前記回転数の増加に従って増加する、請求項1又は2に記載のガスタービン制御装置。
【請求項7】
前記混合燃料は、前記ガスタービンの起動時に前記第1燃料及び前記第2燃料を含む、請求項1又は2に記載のガスタービン制御装置。
【請求項8】
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御方法であって、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出する工程と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御する工程と、
を備える、ガスタービン制御方法。
【請求項9】
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御プログラムであって、
コンピュータ装置を用いて、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出する工程と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御する工程と、
を実行可能である、ガスタービン制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン制御装置、ガスタービン制御方法、及び、ガスタービン制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電プラントでは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する手段として、発電効率の向上や化石燃料以外の水素などの燃料を積極的に利用することが検討されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような混焼運転を行うガスタービンでは、混合燃料の燃焼速度と、燃焼器に供給される燃焼用空気の流量とのバランスを考慮して、フラッシュバック(逆火)の発生を回避可能に設定される目標値になるように混合率を制御する必要がある。ここで二酸化炭素の排出量を削減するためには、天然ガスのような第1燃料に対して、単位体積当たりの熱量が比較的低い第2燃料(水素)の混合率を高めることが望ましい。しかしながら、水素は着火エネルギーが小さく、燃焼速度が速いため、水素の混合率を高めると、フラッシュバック(火炎の逆流)等を生じる可能性が高まってしまう。
【0005】
特に、ガスタービンの起動時のようにガスタービンの回転数が比較的低い段階では、燃焼器に供給される燃焼用空気の流量が混合燃料に対して相対的に少なくなるため、燃焼速度が優勢となり、フラッシュバックが発生する可能性が高くなる。また第2燃料を供給するための供給ラインには第2燃料の流量を調整・計測するための流量調整弁や流量計が配置されるが、燃焼器に供給される燃料流量が少なくなると、この供給ラインを流れる第2燃料の流量が低下することで、これらの流量調整弁や流量計の仕様レンジを下回ることがある。すると、流量調整弁の制御精度や流量計の計測精度が低下し、制御対象となる混合率の変動量が増加し、目標値を超えることによりフラッシュバックが発生してしまうおそれがある。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、混焼可能な燃焼器を備えるガスタービンにおいて、混合率の制御精度を適切に確保することにより、フラッシュバックの発生を防止可能なガスタービン制御装置、ガスタービン制御方法、及び、ガスタービン制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン制御装置は、上記課題を解決するために、
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御装置であって、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出するための上限値混合率算出部と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御するための流量制御部と、
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン制御方法は、上記課題を解決するために、
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御方法であって、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出する工程と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御する工程と、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン制御プログラムは、上記課題を解決するために、
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御プログラムであって、
コンピュータ装置を用いて、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出する工程と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御する工程と、
を実行可能である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、混焼可能な燃焼器を備えるガスタービンにおいて、混合率の制御精度を適切に確保することにより、フラッシュバックの発生を防止可能なガスタービン制御装置、ガスタービン制御方法、及び、ガスタービン制御プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るガスタービンの概略構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るガスタービン制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2の上限混合率算出部の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3の基本上限混合率算出部で用いられる第1関数を示す図である。
【
図5】
図3の流量変動量算出部で用いられる第2関数を示す図である。
【
図6】
図2のガスタービン制御装置によって制御されるガスタービンの回転数及び混合率の時間的変化の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
まず
図1を参照して、本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン制御装置の制御対象であるガスタービンについて説明する。
図1は一実施形態に係るガスタービン1の概略構成を示す図である。
【0014】
ガスタービン1は、圧縮空気を生成するための圧縮機3、圧縮機3で生成された圧縮空気と燃料とを混焼することで燃焼ガスを生成するための燃焼器2、燃焼器2に燃料を供給する燃料供給系統4、及び、燃焼ガスによって駆動されるタービン6を備える。圧縮機3及びタービン6は、一軸に連結されている。このような構成を有するガスタービン1では、燃焼器2には、圧縮機3により圧縮された圧縮空気、及び、燃料供給系統4から供給される燃料が供給され、これらが混合燃焼されて、燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、タービン6に流入し、タービン6を駆動するための動力として機能する。
【0015】
燃料供給系統4は、燃焼器2に供給される燃料として、第1燃料F1及び第2燃料F2が混合された混合燃料を取り扱う。第2燃料F2は第1燃料F1に比べて燃焼速度が大きい燃料である。また第2燃料F2は第1燃料F1に比べて、単位体積当たりの熱量が低い燃料である。本実施形態では、第1燃料F1は液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)であり、第2燃料F2は水素ガスである。
【0016】
第1燃料F1は、第1燃料供給源7に接続された第1燃料供給ライン8を介して供給される。第1燃料供給ライン8には、第1燃料F1の流量を検出するための流量計10が設けられる。
【0017】
第2燃料F2は、第2燃料供給源14に接続された第2燃料供給ライン16を介して供給される。第2燃料供給ライン16には、第2燃料F2の流量を検出するための流量計15、第2燃料F2の流量を調整するための第1流量調整弁18が設けられる。
【0018】
第1燃料供給ライン8及び第2燃料供給ライン16は、下流側で互いに合流して混合管22に接続される。第1燃料F1及び第2燃料F2は、第1燃料供給ライン8及び第2燃料供給ライン16の合流点25で合流することで混合され、当該混合された燃料(以下、適宜「混合燃料Fm」と称する)は混合管22によって送られる。
尚、混合管22には、混合燃料Fmの流量を調整するための第2流量調整弁26が設けられる。
【0019】
混合管22の下流側は、詳細な図示は省略するが、燃焼器2が備える複数の燃料噴射ノズルに分岐して接続される。これらの燃料噴射ノズルは、混合管22から供給される混合燃料Fmと、圧縮機3から供給される燃焼用空気とを予混合して燃焼室に噴射して火炎を形成可能な、予混合式の燃料噴射ノズルである。
【0020】
続いて上記構成を有するガスタービン1を制御するためのガスタービン制御装置100について説明する。ガスタービン制御装置100は、ガスタービン1を制御するためのコントロールユニットであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0021】
図2は一実施形態に係るガスタービン制御装置100の機能的構成を示すブロック図である。ガスタービン制御装置100は、混合率取得部102と、目標混合率設定部104と、上限混合率算出部106と、流量制御部108とを備える。
【0022】
混合率取得部102は、混合燃料Fmにおける第2燃料F2の混合率Rを取得するための構成である。本実施形態では、混合率取得部102は、第1燃料供給ライン8に配置された流量計10で計測される第1燃料F1の流量計測値、及び、第2燃料供給ライン16に配置された流量計15で計測される第2燃料F2の流量計測値を取得し、これらの流量計測値に基づいて混合率Rを演算的に算出することにより取得するように構成される。
【0023】
尚、混合率取得部102は、外部から混合率Rの演算結果を取得してもよいし、流量計10,15の計測結果を取得して混焼率取得部104自身が混合率Rの演算を行うことにより混合率Rを取得してもよい。
【0024】
目標混合率設定部104は、混合率Rに関する目標値(目標混合率Rt)を設定するための構成である。後述するように、ガスタービン制御装置100は、混合率Rが目標混合率Rtになるように第2燃料F2の流量制御を行う。このとき、制御対象となる第2燃料F2の流量は、制御精度に対応して少なからず変動する。この第2燃料F2の流量変動量Vは、第2燃料F2や燃焼用空気の流量に依存するため、混合率Rもまた少なからず変動する。目標混合率Rtは、このような混合率Rの変動成分も加味して最大混合率Rmを見積もり(すなわち、目標混合率Rtになるように混合率Rの制御を行った場合に、制御精度に対応する変動成分を加味した実際の混合率Rの最大値(最大混合率Rm)を見積もり)、当該最大混合率Rmが上限混合率Rlを超えないように、目標混合率Rtを設定する。
【0025】
上限混合率算出部106は、上限混合率Rlを算出するための構成である。上限混合率Rlは、フラッシュバックの発生リスクが基準値以下となる混合率Rに対応する上限閾値である。ここで上限混合率算出部106による上限混合率Rlの算出手法について具体的に説明する。
【0026】
図3は
図2の上限混合率算出部106の内部構成を示すブロック図である。この例では、上限混合率算出部106は、燃焼用空気流量取得部110と、基本上限混合率算出部112と、第2燃料流量取得部114と、流量変動量算出部116とを備える。
【0027】
燃焼用空気流量取得部110は、圧縮機3から燃焼器2に供給される燃焼用空気の流量Laを取得するための構成である。燃焼用空気の流量Laは、基本上限混合率算出部112に入力される。基本上限混合率算出部112は、燃焼用空気の流量Laに対応する基本上限混合率Rbを算出する。燃焼用空気の流量Laと基本上限混合率Rbとの関係は、
図4に例示されるように、第1関数fx1として予め用意される。
【0028】
図4は
図3の基本上限混合率算出部112で用いられる第1関数fx1を示す図である。第1関数fx1は、燃焼用空気の流量Laが増加するに従って、基本上限混合率Rbが増加するように規定される。燃焼器2の燃焼室における火炎形成面の位置は、燃焼器2に供給される燃焼用空気の下流側に向かう流れと、燃焼室における混合燃料Fmの上流側に向かう燃焼速度とのバランスによって決定される。例えばガスタービン1の始動時のように回転数が少ない運転状態では、燃焼用空気の流量Laが少ないため、後者が優勢となり、フラッシュバック(逆火)の発生リスクが増大する。そのため、
図4に示すように、燃焼用空気の流量Laが少なくなるに従って、基本上限混合率Rbを小さくすることにより、混合燃料Fmの燃焼速度を抑え、フラッシュバックの発生リスクを低減できる。
【0029】
図3に戻って、第2燃料流量取得部114は、第2燃料F2の流量Lを取得するための構成である。第2燃料F2の流量Lは、第2燃料供給ライン16に設けられた流量計15の検出値として取得される。第2燃料F2の流量Lは、流量変動量算出部116に入力される。流量変動量算出部116は、第2燃料F2の流量Lに対応する流量変動量Vを算出する。第2燃料F2の流量Lと流量変動量Vとの関係は、
図5に例示されるように、第2関数fx2として予め用意される。
【0030】
図5は
図3の流量変動量算出部116で用いられる第2関数fx2を示す図である。第2関数fx2は、第2燃料流量ライン16を流れる第2燃料F2の流量Lが減少するに従って、第2燃料F2の流量変動量Vが増加するように規定される。より具体的には、このような第2関数fx2は、第2燃料供給ライン16に設けられた流量計15、及び、流量調整弁18の仕様に基づいて決定される。
【0031】
ここで第2燃料供給ライン16に設けられる流量計15や流量調整弁18は、取り扱い可能な流量レンジが予め仕様として規定されている。例えば、流量計15は、所知の計測精度を得られる流量レンジ(第1流量L1以上(L≧L1))が予め仕様として規定されており、当該流量レンジ以下になると計測精度が悪化してしまう。また流量調整弁18は、制御信号に対して所定の開度の調整精度が得られる流量レンジ(第2流量L2以上(L≧L2))が予め仕様として規定されており、流量レンジ以下になると制御信号に対する開度の調整精度が悪化してしまう。
【0032】
図5に例示される第2関数fx2では、流量変動量Vが、流量計15及び流量調整弁18に関する流量レンジに対応するように、段階的に変化することが示されている。具体的には、第2燃料F2の流量Lが第1流量L1以上では、流量計15及び流量調整弁18の各流量レンジの範囲内であるため、流量変動量Vは良好な値V1となる。それに対して流量Lが減少して第1流量L1未満となると、流量計15に対応する流量レンジの範囲外となるため、流量変動量VがV2に増加する。更に流量Lが減少して第2流量L2未満となると、流量計15に加えて流量調整弁18の流量レンジの範囲外となるため、流量変動量VはV3に増加する。
【0033】
尚、
図5では一例として、流量計15の流量レンジを規定する第1流量L1が、流量調整弁18の流量レンジを規定する第2流量L2より大きい場合を示しているが、その大小関係は限定されない。また第2燃料供給ライン16に配置される構成として、流量計15及び流量調整弁18を例示しているが、当該構成の種類や数もまた、これに限定されない。
【0034】
上限混合率算出部106では、このように基本上限混合率算出部112で算出された基本上限混合率算出部112で算出された基本上限混合率Rbに、流量変動量算出部116で算出された流量変動量Vを掛け合わせることで、上限混合率Rlが算出される。
【0035】
図2に戻って、流量制御部108は、第2燃料F2の流量を制御するための構成である。流量制御部108による第2燃料F2の流量制御は、上限混合率算出部106で算出された上限混合率Rlを超えない範囲において、混合率取得部102で取得される混合率R(実測値)と、目標混合率Rtとの偏差ΔRが小さくなるように行われる。本実施形態では、流量制御部108は、第2燃料供給ライン16に設けられた流量調整弁18の開度を制御対象としており、偏差ΔRが小さくなるように、流量調整弁18に対する制御信号として、開度指令値Pを出力する。
【0036】
続いて上記構成を有するガスタービン制御装置100によるガスタービン1の制御例について説明する。
図6は
図2のガスタービン制御装置100によって制御されるガスタービン1の回転数N及び混合率Rの時間的変化の一例を示すタイムチャートである。
尚、
図6では、ガスタービン1の回転数Nを、低回転数(N=N1)から定格回転数Nmaxまで昇速する場合における制御例が示されている。
【0037】
初期状態を示す時刻t1では、ガスタービン1の回転数Nは初期値N1にある。初期値N1は比較的低い回転数であるため、燃焼用空気の流量Laもまた比較的小さくなる。このとき、所定の目標混合率Rtを実現するために、第2燃料F2の流量もまた比較的小さくなるが、第2燃料供給ライン16に配置された流量計15や流量調整弁18の制御性低下に伴い、第2燃料F2の流量変動量Vが大きくなる。
図6に示すように、このような流量変動量Vに対応するように混合率Rの変動量V´もまた大きくなる。流量制御部108は、混合率Rに変動量V´を加味した最大混合率まで変動することを考慮して、最大混合率が上限混合率Rlを超えないように、目標混合率Rtが設定される。その結果、
図6に示すように、時刻t1では、変動量V´を有する混合率Rが上限混合率Rlを超えることなく、回転数Nが低い場合においてもフラッシュバックの発生を効果的に防止できる。
【0038】
回転数Nは時刻t1から次第に増加し、時刻t4において定格回転数Nmaxに達する。その過程において、第2燃料F2の流量Lが第2値L2に到達する時刻t2では、
図5を参照して前述したように第2燃料F2の流量変動量Vがステップ状に減少することに対応するように、上限混合率Rlがステップ状に増加する。また第2燃料F2の流量Lが第1値L1に到達する時刻t3では、
図5を参照して前述したように第2燃料F2の流量変動量Vがステップ状に減少することに対応するように、上限混合率Rlがステップ状に更に増加する。このように第2燃料F2の流量Lが時間とともに増加すると、混合率Rの変動量V´は次第に減少する。そして時刻t4では、回転数Nが定格回転数Nmaxに到達し、目標混合率Rtが最終的な目標値である第2値Rt2に設定される。
【0039】
このように回転数Nが低い場合には、目標混合率Rtが第1値Rt1に設定されることにより、上限混合率Rlを超えないように混合率Rが低く抑えられることで、フラッシュバックの発生が防止される。一方で、回転数Nが高くなった場合には、目標混合率Rtを第1値Rt1から所定のレートで第2値Rt2に増加させる。高い回転数Nではフラッシュバックの発生リスクが小さいため上限混合率Rlも高くなり、目標混合率Rtを大きく設定することができる。
【0040】
以上説明したように上記各実施形態によれば、混合燃料Fmの混合率Rが上限混合率Rlを超えない範囲で、第2燃料F2の流量制御が行われる。上限混合率Rlは混合管22における混合燃料Fmの流量に基づいて算出されることにより、第2燃料F2の流量制御によっての混合率Rが上限混合率Rlを超えない範囲に抑えられることで、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【0041】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0042】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0043】
(1)一態様に係るガスタービン制御装置は、
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御装置であって、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出するための上限値混合率算出部と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御するための流量制御部と、
を備える。
【0044】
上記(1)の態様によれば、混合燃料の混合燃料が上限混合率を超えない範囲で、第2燃料の流量制御が行われる。上限混合率は混合管における混合燃料の流量に基づいて算出されることにより、第2燃料の流量制御によって混合燃料の混合率が上限混合率を超えない範囲に抑えられることで、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【0045】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記上限混合率は、前記混合管に対して供給される前記第2燃料の流量変動量に基づいて見積もられる最大混合率より大きい。
【0046】
上記(2)の態様によれば、上限混合率は、第2燃料の流量変動量から見積もられた最大混合率より大きく設定される。これにより、第2燃料の流量変動量が大きな場合であっても、その流量変動量を加味して見積もられた最大混合率が上限混合率を超えないように第2燃料の流量制御が行われることで、フラッシュバックの発生を好適に防止できる。
【0047】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記上限混合率算出部は、前記燃焼器に供給される燃焼用空気の流量が増加するに従って前記上限混合率が増加するように前記上限混合率を算出する。
【0048】
上記(3)の態様によれば、燃焼用空気の流量が増加するに従って上限混合率が増加するように算出される。これにより、燃焼用空気の流量が小さいことでフラッシュバックの発生リスクが大きくなる状況では、上限混合率を小さく算出することで、好適にフラッシュバックの発生を防止できる。
【0049】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記混合管に供給される前記第2燃料の流量変動量を算出するための流量変動量算出部を更に備え、
前記流量変動量算出部は、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量が減少するに従って、前記第2燃料の流量変動量が増加するように、前記流量変動量を算出し、
前記上限混合率算出部は、前記流量変動量に基づいて前記上限混合率を算出する。
【0050】
上記(4)の態様によれば、第2燃料の流量が減少するに従って第2燃料の流量変動量が増加するように見積もられる。第2燃料の流量が小さい場合には、第2燃料の流量変動量が増大することでフラッシュバックの発生リスクが大きくなるが、このように見積もられる第2燃料流量変動量を加味して上限混合率を算出することにより、好適にフラッシュバックの発生を防止できる。
【0051】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記流量制御部は、前記ガスタービンの回転数が定格回転数より低い場合、前記回転数が定格回転数に達する定格運転時に対応する際の第1目標混合率より低い第2目標混合率になるように、前記第2燃料の流量を制御する。
【0052】
上記(5)の態様によれば、ガスタービンの回転数が定格回転数に達する前(昇速時)では、定格運転時より目標混合率が低くなるように第2燃料の流量制御が行われる。ガスタービンの回転数が低い場合には、第2燃料や燃焼用空気の流量が小さいことによりフラッシュバックの発生リスクが高くなるが、このように目標混合率を設定することで、フラッシュバックの発生を効果的に防止できる。
【0053】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記回転数が前記定格回転数に向けて上昇する場合、前記上限混合率は前記回転数の増加に従って増加する。
【0054】
上記(6)の態様によれば、回転数が定格回転数に向けて上昇する際に、上限混合率が増加するように第2燃料の流量制御が行われる。これにより、回転数が比較的低い場合には上限混合率を小さくすることでフラッシュバックの発生を防止できる。一方、回転数が比較的高くになるに従って上限混合率を高くすることで、目標とする混合率をフラッシュバックを回避しながら実現できる。
【0055】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記混合燃料は、前記ガスタービンの起動時に前記第1燃料及び前記第2燃料を含む。
【0056】
上記(7)の態様によれば、起動時から第1燃料及び第2燃料を含む混合燃料を燃焼するガスタービンにおいて、フラッシュバックを防止しながら、適切な混合率を管理できる。
【0057】
(8)一態様に係るガスタービン制御方法は、
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御方法であって、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出する工程と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御する工程と、
を備える。
【0058】
上記(8)の態様によれば、混合燃料の混合燃料が上限混合率を超えない範囲で、第2燃料の流量制御が行われる。上限混合率は混合管における混合燃料の流量に基づいて算出されることにより、第2燃料の流量制御によって混合燃料の混合率が上限混合率を超えない範囲に抑えられることで、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【0059】
(9)一態様に係るガスタービン制御プログラムは、
第1燃料、及び、前記第1燃料より燃焼速度が大きな第2燃料を含む混合燃料を、混合管を介して燃焼器に供給して混焼可能なガスタービンを制御するためのガスタービン制御プログラムであって、
コンピュータ装置を用いて、
前記混合管における前記混合燃料の流量に基づいて、前記混合燃料の上限混合率を算出する工程と、
前記混合燃料の混合率が前記上限混合率を超えないように、前記混合管に供給される前記第2燃料の流量を制御する工程と、
を実行可能である。
【0060】
上記(9)の態様によれば、混合燃料の混合燃料が上限混合率を超えない範囲で、第2燃料の流量制御が行われる。上限混合率は混合管における混合燃料の流量に基づいて算出されることにより、第2燃料の流量制御によって混合燃料の混合率が上限混合率を超えない範囲に抑えられることで、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【符号の説明】
【0061】
1 ガスタービン
2 燃焼器
3 圧縮機
6 タービン
7 第1燃料供給源
8 第1燃料供給ライン
10 流量計
14 第2燃料供給源
15 流量計
16 第2燃料供給ライン
18 第1流量調整弁
22 混合管
25 合流点
26 第2流量調整弁
100 ガスタービン制御装置
102 混合率取得部
104 目標混合率設定部
106 上限混合率算出部
108 流量制御部
110 燃焼用空気流量取得部
112 基本上限混合率算出部
114 第2燃料流量取得部
116 流量変動量算出部
fx1 第1関数
fx2 第2関数