(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154188
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】床版架設機移動方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20241023BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067887
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】白水 晃生
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA13
2D059DD02
2D059DD06
2D059GG39
2D059GG41
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】 工期短縮に資する床版架設機移動方法を提供する。
【解決手段】 本発明の床版架設機移動方法は、扛上降下装置を床版架設機を支持可能な位置に設置する工程と、扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、持ち上げた床版架設機よりも低い位置に軌条を設置する工程と、床版架設機の荷重を軌条に預ける工程と、軌条上の床版架設機を橋軸直角方向に移動させる工程と、移動後の床版架設機を支持可能な位置に扛上降下装置を設置する工程と、扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、軌条を撤去する工程と、持ち上げた床版架設機を所定位置に降ろす工程を備えた方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版架設機を橋軸直角方向に移動させる床版架設機移動方法であって、
前記床版架設機を扛上及び降下させる扛上降下装置を、当該床版架設機を支持可能な位置に設置する工程と、
前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、
持ち上げた床版架設機よりも低い位置に軌条を設置する工程と、
持ち上げた床版架設機を降ろして、当該床版架設機の荷重を前記軌条に預ける工程と、
前記軌条上の床版架設機を橋軸直角方向に移動させる工程と、
移動後の床版架設機を支持可能な位置に前記扛上降下装置を設置する工程と、
前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、
前記軌条を撤去する工程と、
持ち上げた前記床版架設機を所定位置に降ろす工程を備えた、
ことを特徴とする床版架設機移動方法。
【請求項2】
床版架設機を橋軸直角方向に移動させる床版架設機移動方法であって、
前記床版架設機を扛上及び降下させる扛上降下装置を、当該床版架設機を支持可能な位置に設置する工程と、
前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、
持ち上げた床版架設機よりも低い位置に台車を設置する工程と、
持ち上げた床版架設機を降ろして、当該床版架設機の荷重を前記台車に預ける工程と、
前記台車上の床版架設機を橋軸直角方向に移動させる工程と、
移動後の床版架設機を支持可能な位置に前記扛上降下装置を設置する工程と、
前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、
前記台車を撤去する工程と、
持ち上げた前記床版架設機を所定位置に降ろす工程を備えた、
ことを特徴とする床版架設機移動方法。
【請求項3】
床版架設機を橋軸直角方向に移動させる床版架設機移動方法であって、
前記床版架設機を扛上及び降下させる扛上降下装置を、当該床版架設機を支持可能な位置に設置する工程と、
前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、
持ち上げた床版架設機に移動車輪を取り付ける工程と、
持ち上げた床版架設機を降ろして、当該床版架設機に取り付けた移動車輪を接地させる工程と、
前記移動車輪を取り付けた床版架設機を橋軸直角方向に移動させる工程と、
移動後の床版架設機を支持可能な位置に前記扛上降下装置を設置する工程と、
前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、
前記移動車輪を床版架設機から撤去する工程と、
持ち上げた前記床版架設機を所定位置に降ろす工程を備えた、
ことを特徴とする床版架設機移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版架設機の移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁やトンネル等、高度経済成長期に集中的に整備されてきた建設インフラの老朽化が進む近年、安全と安心を確保できるインフラの維持管理が求められている。
【0003】
たとえば、車両が走行する道路橋の床版においては、融雪剤の散布や交通荷重の増大による影響などによって多くの損傷が発生し、そのまま放置しておくと抜け落ち等が発生するおそれがあることから、このような現場では床版の更新工事を行う必要がある。
【0004】
床版の更新工事を行う際には道路を通行止めにする必要があるが、利用者の視点に立ち、通行止めの期間を可能な限り短くすることが望まれる。
【0005】
ところが、床版の撤去や架設をするためにクレーンやトラック等の重機を用いる場合、重機が載る部分の主桁の補強が必要になることがあり、この補強工事に要する時間が工期短縮の妨げとなっていた。
【0006】
従来、床版更新工事を行うにあたり、重機の載荷が不要で主桁を補強する必要がない方法として、リフターと架設梁と吊り荷機構を備えた揚重装置を用いる方法(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1の方法では主桁の補強が不要であるため、工期の短縮を図ることができる。ところが、前記揚重装置は橋軸直角方向への移動ができず、別車線の工事を行う際には揚重装置の解体と再度の組立てが必要であり、工期短縮の観点で改善の余地が残されていた。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は工期短縮に資する床版架設機移動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の床版架設機移動方法は、床版架設機を橋軸直角方向に移動させる方法であって、前記床版架設機を扛上及び降下させる扛上降下装置を、当該床版架設機を支持可能な位置に設置する工程と、前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、持ち上げた床版架設機よりも低い位置に軌条を設置する工程と、持ち上げた床版架設機を降ろして、当該床版架設機の荷重を前記軌条に預ける工程と、前記軌条上の床版架設機を橋軸直角方向に移動させる工程と、移動後の床版架設機を支持可能な位置に前記扛上降下装置を設置する工程と、前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、前記軌条を撤去する工程と、持ち上げた前記床版架設機を所定位置に降ろす工程を備えた方法である。
【0011】
本発明の床版架設機移動方法は、床版架設機を橋軸直角方向に移動させる方法であって、前記床版架設機を扛上及び降下させる扛上降下装置を、当該床版架設機を支持可能な位置に設置する工程と、前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、持ち上げた床版架設機よりも低い位置に台車を設置する工程と、持ち上げた床版架設機を降ろして、当該床版架設機の荷重を前記台車に預ける工程と、前記台車上の床版架設機を橋軸直角方向に移動させる工程と、移動後の床版架設機を支持可能な位置に前記扛上降下装置を設置する工程と、前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、前記台車を撤去する工程と、持ち上げた前記床版架設機を所定位置に降ろす工程を備えた方法とすることもできる。
【0012】
本発明の床版架設機移動方法は、床版架設機を橋軸直角方向に移動させる方法であって、前記床版架設機を扛上及び降下させる扛上降下装置を、当該床版架設機を支持可能な位置に設置する工程と、前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、持ち上げた床版架設機に移動車輪を取り付ける工程と、持ち上げた床版架設機を降ろして、当該床版架設機に取り付けた移動車輪を接地させる工程と、前記移動車輪を取り付けた床版架設機を橋軸直角方向に移動させる工程と、移動後の床版架設機を支持可能な位置に前記扛上降下装置を設置する工程と、前記扛上降下装置によって床版架設機を持ち上げる工程と、前記移動車輪を床版架設機から撤去する工程と、持ち上げた前記床版架設機を所定位置に降ろす工程を備えた方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、床版架設機を解体することなく橋軸直角方向へ移動できるため、床版架設機の解体が必要な従来の方法に比べて工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)(b)は床版架設機移動方法の概要の説明図。
【
図2】(a)は床版架設機の一例を示す斜視図、(b)は扛上降下装置の一例を示す斜視図、(c)は扛上降下装置の他例を示す斜視図。
【
図3】(a)~(d)は軌条を用いて床版架設機を橋軸直角方向へ移動する場合の手順の一例を示す正面図。
【
図4】(a)~(c)は軌条を用いて床版架設機を橋軸直角方向へ移動する場合の手順の一例を示す正面図。
【
図5】(a)~(c)は軌条を用いて床版架設機を橋軸直角方向へ移動する場合の手順の一例を示す正面図。
【
図6】(a)~(d)は
図3(a)~(d)に対応する側面図。
【
図7】(a)~(c)は
図4(a)~(c)に対応する側面図。
【
図8】(a)~(c)は
図5(a)~(c)に対応する側面図。
【
図9】(a)~(d)は台車を用いて床版架設機を橋軸直角方向へ移動する場合の手順の一例を示す正面図。
【
図10】(a)~(c)は台車を用いて床版架設機を橋軸直角方向へ移動する場合の手順の一例を示す正面図。
【
図11】(a)~(c)は台車を用いて床版架設機を橋軸直角方向へ移動する場合の手順の一例を示す正面図。
【
図12】(a)~(d)は
図9(a)~(d)に対応する側面図。
【
図13】(a)~(c)は
図10(a)~(c)に対応する側面図。
【
図14】(a)~(c)は
図11(a)~(c)に対応する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。
図1(a)(b)に示すように、本発明の床版架設機移動方法は、床版架設機10を解体することなく、橋軸直角方向に移動する方法である。説明の便宜上、床版架設機移動方法の説明に先立ち、床版架設機移動方法によって移動される床版架設機10の一例について説明する。
【0016】
[床版架設機]
一例として
図2(a)に示す床版架設機10は、橋軸方向に間隔をあけて配置される複数の支持架構11と、複数の支持架構11に亘って架設される架設梁12を備えている。
図2(a)では支持架構11が四つの場合を一例としているが、支持架構11は四つより多くても少なくても良い。
【0017】
各支持架構11は、橋軸直角方向に間隔をあけて配置された二本の支柱11a、11bを備えている。二本の支柱11a、11bは、両者の間に水平に架設された繋ぎ梁11cによって繋がれている。二本の支柱11a、11bの間であって、繋ぎ梁11cの下側には、トラックやクレーン車などが通過できる通路Aが確保してある。支柱11a、11b及び繋ぎ梁11cは、H型鋼等で構成することができる。
【0018】
前記架設梁12は橋軸方向に長い部材である。架設梁12はH型鋼などで構成することができる。この実施形態では、架設梁12として、間隔をあけて平行に配置された二本のH型鋼を用いている。架設梁12は複数(この実施形態では四つ)の支持架構11の繋ぎ梁11cの下側に配置され、各支持架構11の繋ぎ梁11cに固定されている。
【0019】
ここで説明した床版架設機10の構成は一例であり、床版架設機10の構成はこれ以外であってもよい。
【0020】
[床版架設機移動方法]
次に、床版架設機移動方法の一例について説明する。ここでは、軌条Rを用いて床版架設機10を移動する方法、及び、台車Tを用いて床版架設機10を移動する方法について説明する。
【0021】
-軌条を用いる場合の例-
軌条Rを用いる場合、たとえば、次の手順で床版架設機10を橋軸直角方向に移動することができる。
(1)床版架設機10を扛上及び降下させる扛上降下装置20を、床版架設機10を支持可能な位置に設置する(
図3(a)及び
図6(a))。
(2)設置した扛上降下装置20によって、床版架設機10を持ち上げる(
図3(b)及び
図6(b))。
(3)持ち上げた床版架設機10よりも低い位置に、必要な本数の軌条Rを設置する(
図3(c)及び
図6(c))。
(4)持ち上げた床版架設機10を降ろして、床版架設機10の荷重を軌条Rに預ける(
図3(d)及び
図6(d))。
(5)軌条Rを利用して、軌条Rに載せた床版架設機10を橋軸直角方向に移動させる(
図4(a)及び
図7(a))。
(6)移動後の床版架設機10を支持可能な位置に扛上降下装置20を設置する(
図4(b)及び
図7(b))。
(7)設置した扛上降下装置20によって、床版架設機10を持ち上げる(
図4(c)及び
図7(c))。
(8)前記(3)で設置した軌条Rを撤去する(
図5(a)及び
図8(a))。
(9)持ち上げた床版架設機10を降ろし、支柱11a、11bを接地させる(
図5(a)及び
図8(a))。
(10)以上(1)~(9)によって、床版架設機10の橋軸直角方向への移動が完了する(
図5(c)及び
図8(c))。
【0022】
前記(1)の工程で設置する扛上降下装置20としては、たとえば、
図2(b)に示すようなジャッキを備えた門構を用いることができる。扛上降下装置20は床版架設機10を扛上及び降下させられるものであれば、その構成は問わず、たとえば、既存のジャッキなどを用いることもできる。
【0023】
扛上降下装置20として既存のジャッキを用いる場合、たとえば、
図2(c)のように、支柱11a、11bにブラケット30を設けると共に、当該ブラケット30の下側にジャッキを設置し、当該ジャッキのストロークを伸ばしてブラケット30に支持させることによって、床版架設機10を扛上降下させることができる。
【0024】
なお、ブラケット30は扛上降下の際に支柱11a、11bに設けることも、あらかじめ支柱11a、11bに設けておく(支柱11a、11bの一部として構成する)こともできる。いずれの場合も、扛上降下装置20の設置台数に特に制限はない。
【0025】
扛上降下装置20の設置位置は、架設梁12の下側等、床版架設機10を支持可能な位置であればよい。具体的には、橋軸方向に隣接する支持架構11の間や各支持架構11の支柱の間等に設置することができる。
【0026】
この実施形態では、橋軸方向に隣接する支持架構11の間の架設梁12の下側に一体ずつ扛上降下装置20を設置しているが、
図2(c)のように支柱11a、11bにブラケット30を設ける場合、各ブラケット30の下側に(ブラケット30毎に)ジャッキを設置することができる。
【0027】
前記(2)の工程では、架設梁12の下側に設置した扛上降下装置20を動作させ、支柱11a、11bが設置面から離れる位置まで床版架設機10を持ち上げる。これにより、床版架設機10の荷重が扛上降下装置20に預けられ、床版架設機10がその位置(扛上位置)で支持される。
【0028】
前記(3)の工程では、持ち上げられた床版架設機10の下側、具体的には、各支持架構11の下側から移動先(たとえば、隣の車線)に向けて一又は二以上の軌条Rを設置する。軌条Rは、たとえば、各支持架構11につき一列ずつ設置する。なお、軌条Rの長さや本数は移動距離に応じて適宜設定すればよい。また、軌条Rの構造は、H型鋼や線路に用いるレールでもよい。
【0029】
前記(4)の工程では、扛上降下装置20で持ち上げた床版架設機10を軌条Rの上に降ろし、床版架設機10の荷重を軌条Rに預ける。
【0030】
前記(5)の工程では、軌条Rに載せた床版架設機10を軌条Rに沿って橋軸直角に移動させる。移動方法としては、床版架設機10に水平ジャッキを取り付け、その水平ジャッキにより軌条Rに反力をとって移動させる方法、軌条R上に台車を設けたり、あるいは摩擦係数の小さな板を載せて床版架設機10にワイヤーを取り付け、そのワイヤーをジャッキやチルホールやウィンチやレバーブロック(登録商標)で引っ張ることによって移動させる方法等が挙げられる。床版架設機10はこれら以外の方法で移動させることもできる。
【0031】
前記(6)の工程では、移動後の床版架設機10を支持するため、扛上降下装置20を移動後の床版架設機10を支持できる位置、たとえば、架設梁12の下側に設置する。
【0032】
前記(2)の工程と同様、この実施形態では、架設梁12の下側に扛上降下装置20を設置している。なお、扛上降下装置20には、前記(2)の工程で用いた扛上降下装置20を用いることができる。
【0033】
前記(7)の工程では、架設梁12の下側に設置した扛上降下装置20によって、床版架設機10を設置面から離れる位置まで持ち上げる。これにより、床版架設機10の荷重が扛上降下装置20に預けられ、床版架設機10が扛上位置で支持される。
【0034】
前記(8)の工程では、設置した軌条Rを撤去する。具体的には、支持架構11の支柱11a、11bの下側から軌条Rを取り出し、取り出した軌条Rを支持架構11と干渉しない位置に移動する。
【0035】
前記(9)の工程では、扛上降下装置20で持ち上げた床版架設機10を降ろす。具体的には、門構をジャッキダウンし、床版架設機10を移動先に設置する。
【0036】
-台車を用いる場合の例-
次に台車Tを用いて床版架設機10を橋軸直角方向に移動する場合について説明する。台車Tを用いる場合、たとえば、次の手順で床版架設機10を橋軸直角方向に移動することができる。
(1)床版架設機10を扛上及び降下させる扛上降下装置20を、床版架設機10を支持可能な位置に設置する(
図9(a)及び
図12(a))。
(2)設置した扛上降下装置20によって、床版架設機10を持ち上げる(
図9(b)及び
図12(b))。
(3)持ち上げた床版架設機10よりも低い位置に台車Tを設置する(
図9(c)及び
図12(c))。
(4)持ち上げた床版架設機10を降ろして、床版架設機10の荷重を台車Tに預ける(
図9(d)及び
図12(d))。
(5)台車Tを利用して台車Tに載せた床版架設機10を橋軸直角方向に移動させる(
図10(a)及び
図13(a))。
(6)移動後の床版架設機10を支持可能な位置に扛上降下装置20を設置する(
図10(b)及び
図13(b)))。
(7)設置した扛上降下装置20によって床版架設機10を持ち上げる(
図10(c)及び
図13(c))。
(8)台車Tを撤去する(
図11(a)及び
図14(a))。
(9)持ち上げた床版架設機10を所定位置に降ろし、支柱11a、11bを接地させる(
図11(b)及び
図14(b))。
(10)以上(1)~(9)によって、床版架設機10の橋軸直角方向への移動が完了する(
図11(c)及び
図14(c))。
【0037】
前記(1)の工程で設置する扛上降下装置20には、たとえば、
図2(b)に示すようなジャッキを備えた門構を用いることができる。扛上降下装置20は床版架設機10を扛上及び降下させられるものであれば、その構成は問わず、たとえば、既存のジャッキなどを用いることもできる。
【0038】
扛上降下装置20として既存のジャッキを用いる場合、たとえば、
図2(c)のように、支柱11a、11bにブラケット30を設けると共に、当該ブラケット30の下側にジャッキを設置し、当該ジャッキのストロークを伸ばしてブラケット30に支持させることによって、床版架設機10を扛上降下させることができる。
【0039】
なお、ブラケット30は扛上降下の際に支柱11a、11bに設けることも、あらかじめ支柱11a、11bに設けておく(支柱11a、11bの一部として構成する)こともできる。いずれの場合も、扛上降下装置20の設置台数に特に制限はない。
【0040】
扛上降下装置20の設置位置は、架設梁12の下側等、床版架設機10を支持可能な位置であればよい。具体的には、橋軸方向に隣接する支持架構11の間や各支持架構11の支柱11a、11bの間等に設置することができる。
【0041】
この実施形態では、橋軸方向に隣接する支持架構11の間の架設梁12の下側に一体ずつ扛上降下装置20を設置しているが、
図2(c)のように支柱11a、11bにブラケット30を設ける場合、各ブラケット30の下側に(ブラケット30毎に)ジャッキを設置することができる。
【0042】
前記(2)の工程では、架設梁12の下側に設置した扛上降下装置20を動作させ、支柱11a、11bが設置面から離れる位置まで床版架設機10を持ち上げる。これにより、床版架設機10の荷重が扛上降下装置20に預けられ、床版架設機10がその位置(扛上位置)で支持される。
【0043】
前記(3)の工程では、持ち上げられた床版架設機10の下側、具体的には、各支持架構11の下側に台車Tを設置する。台車Tは、支持架構11を構成する各支柱11a、11bにつき一台ずつ設けるほか、両支柱11a、11bにつき一台設けることもできる。
【0044】
ここで設置する台車Tには、たとえば、橋軸直角方向に移動可能な車輪を備えた多軸台車や、クローラーを備えたキャタピラ型の台車などを用いることができる。
【0045】
前記(4)の工程では、扛上降下装置20で持ち上げた床版架設機10を台車Tの上に降ろし、床版架設機10の荷重を台車Tに預ける。
【0046】
前記(5)の工程では、台車Tに載せた床版架設機10を橋軸直角方向に移動させる。台車Tが自走式のものである場合はその自走機能によって、台車Tが自走式のものでない場合は、水平ジャッキやワイヤー等を用いたジャッキやチルホールあるいはレバーブロックで移動させることができる。
【0047】
前記(6)の工程では、移動後の床版架設機10を支持するため、扛上降下装置20を移動後の床版架設機10を支持できる位置、たとえば、架設梁12の下側に設置する。
【0048】
前記(2)の工程と同様、この実施形態では、架設梁12の下側に扛上降下装置20を設置している。なお、扛上降下装置20には、前記(2)の工程で用いた扛上降下装置20を用いることができる。
【0049】
前記(7)の工程では、各架設梁12の下側に設置した扛上降下装置20によって、床版架設機10を設置面から離れる位置まで持ち上げる。これにより、床版架設機10の荷重が扛上降下装置20に預けられ、床版架設機10が扛上位置で支持される。
【0050】
前記(8)の工程では、設置した台車Tを撤去する。具体的には、支持架構11の支柱11a、11bの下側から台車Tを取り出し、取り出した台車Tを支持架構11と干渉しない位置に移動する。
【0051】
前記(9)の工程では、扛上降下装置20で持ち上げた床版架設機10を降ろす。具体的には、門構をジャッキダウンし、床版架設機10を移動先に設置する。
【0052】
-変形例-
前記床版架設機移動方法では、扛上降下装置20としてジャッキを備えた門構を用いる場合を一例としているが、扛上降下装置20は床版架設機10を持ち上げて支持できるものであれば、これ以外の構成とすることもできる。
【0053】
前記台車Tを用いる方法では、床版架設機10の支柱11a、11bの下側に台車Tを設置し、その台車Tに床版架設機10の荷重を預ける場合を一例としているが、このようにする代わりに、台車Tと同様の役割を果たす移動車輪(図示しない)を支柱11a、11bの下端に取り付け、その移動車輪によって床版架設機10を橋軸直角方向に移動するようにしても良い。
【0054】
移動車輪には種々のものを用いることができるが、いずれの場合も、床版架設機10の荷重に耐えうる強度を供えたものを用いるのが好ましい。移動車輪は支柱11a、11b毎に一台設けるほか、一つの支持架構11につき一台設けるようにしても良い。
【0055】
前記床版架設機移動方法の実施形態は一例であり、この構成に限定されるものではない。本発明の床版架設機移動方法は、所期の目的を達成できる範囲で、構成の追加、省略、入れ替え等の変更を加えることができる。
【0056】
従来の揚重装置を用いる場合、その大きさや構造にもよるものの、揚重装置の解体及び組立てのそれぞれに1日程度(合計2日)かかる。これに対して、前記各実施形態の床版架設機移動方法によれば、1日あるいは半日あれば床版架設機の別区画への移動が完了するため、その分だけ工期を短縮することができる。この差が利用者に与える影響は小さくない。また、コスト面でも、従来の工法のようにすべての部材を限られた施工範囲で組み立てる場合、部材の運搬に必要な車両や組み立てに必要なクレーンを考慮すると、本工法の方が、優れている場合が多い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の床版架設機移動方法は、各種橋梁の工事に用いることができ、特に、道路橋の床版更新工事を行う際に用いる床版架設機の移動方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 床版架設機
11 支持架構
11a、11b 支柱
11c 繋ぎ梁
12 架設梁
20 扛上降下装置
30 ブラケット
A 通路
R 軌条
T 台車