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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154189
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/17 20200101AFI20241023BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20241023BHJP
   H05B 45/38 20200101ALI20241023BHJP
   H05B 45/375 20200101ALI20241023BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20241023BHJP
【FI】
H05B47/17
H05B47/105
H05B45/38
H05B45/375
H05B45/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067889
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木所 孝元
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克磨
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273AA09
3K273BA02
3K273BA07
3K273BA23
3K273BA30
3K273CA02
3K273CA04
3K273CA12
3K273CA25
3K273DA02
3K273DA08
3K273EA14
3K273EA25
3K273EA36
3K273FA03
3K273FA14
3K273FA26
3K273FA27
3K273FA32
3K273FA41
3K273GA03
3K273GA12
3K273GA14
3K273GA25
(57)【要約】
【課題】本開示は照明装置に関し、光源に流れる電流に基づきスイッチング素子を動作させることができる照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の照明装置は、光源部50と、コイルL2とスイッチング素子Q2を有し、スイッチング素子Q2により光源部50を駆動するための電力を生成する回路と、スイッチング素子Q2を制御する制御部42とを備える。制御部42は、調光率に応じて決定される時間スイッチング素子Q2をオンにし、コイルL2に流れる電流を上昇させる処理と、スイッチング素子Q2をオフにし、コイルL2に流れる電流が0となるタイミングを検出する処理と、該タイミングに基づき、調光率に応じて決定される動作モードにてスイッチング素子Q2を動作させる処理と、を実行するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
コイルとスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子により前記光源部を駆動するための電力を生成する回路と、
前記スイッチング素子を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
調光率に応じて決定される時間スイッチング素子をオンにし、前記コイルに流れる電流を上昇させる処理と、
前記スイッチング素子をオフにし、前記コイルに流れる電流が0となるタイミングを検出する処理と、
前記タイミングに基づき、調光率に応じて決定される動作モードにて前記スイッチング素子を動作させる処理と、
を実行するように構成される、照明装置。
【請求項2】
前記動作モードは、臨界モードおよび不連続モードを含む、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記調光率が100%の場合は、前記臨界モードにおいて前記スイッチング素子を動作させる、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、前記調光率および前記動作モードによらず同じである、請求項1から3いずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、記憶部をさらに備え、調光率100%で前記光源部を点灯している間の前記スイッチング周波数を記憶部に記憶させる記憶処理をさらに実行し、100%未満の調光率で前記光源部を点灯する場合においては、前記記憶部に記憶されたスイッチング周波数にて前記スイッチング素子を動作させる、請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記スイッチング周波数の標準値を前記記憶部に記憶させる処理をさらに実行し、前記記憶処理が実行される前に100%未満の調光率で前記光源部を点灯する場合においては、前記スイッチング周波数の前記標準値にて前記スイッチング素子を動作させる、請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記記憶処理は一定間隔で実行され、前記制御部は、100%未満の調光率で前記光源部を点灯する場合においては、前記記憶部に記憶されたスイッチング周波数のうち最新のスイッチング周波数にて、前記スイッチング素子を動作させる、請求項5に記載の照明装置。
【請求項8】
前記回路は、交流電圧を直流電圧に変換する昇圧回路と、前記昇圧回路が出力した直流電圧から、光源部を駆動する電力を生成する降圧回路とを含み、
前記降圧回路は前記コイルと前記スイッチング素子を含み、
前記昇圧回路は第二のコイルと第二のスイッチング素子を含み、
前記制御部は、
前記第二のスイッチング素子を所定時間オンにし、前記第二のコイルに流れる電流を上昇させる処理と、
前記第二のスイッチング素子をオフにし、前記第二のコイルに流れる電流が0となるタイミングを検出する処理と、
前記第二のコイルに流れる電流が0となるタイミングに基づき、前記調光率に応じて決定される前記動作モードにて前記第二のスイッチング素子を動作させる処理と、
をさらに実行するように構成される、請求項1から3いずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電源に接続されて中間電圧を出力する昇圧回路と、スイッチング素子を有する降圧回路と、降圧回路のスイッチング素子を低周波でPWM制御する主制御回路とを備える照明装置が開示されている。そこでは、直流電源の入力電圧が、光源部に出力される出力電圧よりも大きい場合と小さい場合とで昇圧回路または降圧回路の動作を切り替えることで光源部を調光する。これにより、回路を複雑化することなく、LEDの色の変化を抑えつつ光源部を調光することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-110061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源部に流れる電流値は、調光率に応じて変化するため、スイッチング素子の安定制御の観点から、該電流値に応じた動作モードでスイッチング素子を動作させることが望ましい。しかしながら、上述の方法では、光源部に流れる電流に基づくスイッチング素子の制御がなされていない。
【0005】
本開示は上述の問題を解決するため、光源に流れる電流に基づきスイッチング素子を動作させることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は、
光源部と、
コイルとスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子により前記光源部を駆動するための電力を生成する回路と、
前記スイッチング素子を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
調光率に応じて決定される時間スイッチング素子をオンにし、前記コイルに流れる電流を上昇させる処理と、
前記スイッチング素子をオフにし、前記コイルに流れる電流が0となるタイミングを検出する処理と、
前記タイミングに基づき、調光率に応じて決定される動作モードにて前記スイッチング素子を動作させる処理と、
を実行するように構成される、照明装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様によれば、光源に流れる電流に基づきスイッチング素子を動作させることができる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施の形態1に係る、照明装置の回路構成図である。
図2】光源部を全光で点灯させる場合における、L2電圧及びL2電流の波形である。
図3】光源部を調光率50%で点灯させる場合における、L2電圧及びL2電流の波形である。
図4】光源部を調光率1%で点灯させる場合における、L2電圧及びL2電流の波形である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施の形態に係る照明装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1に係る、照明装置の回路構成図である。
【0011】
入力部10は、入力端子を介して電源から交流電圧ACを受け付ける。なお、交流電圧ACを供給する電源は例えば商用電源である。
【0012】
整流部20は、入力部10が受け付けた交流電圧ACを全波整流し、脈流電圧を生成する。整流部20はたとえばダイオードブリッジDBにより実現される。整流部20の出力端子にはコンデンサC1が接続される。コンデンサC1により、整流部20で全波整流された脈流電圧を平滑化することができる。
【0013】
コンデンサC1の両端電圧は、昇圧回路40の動作電源となる。
【0014】
入力検出回路30は、コンデンサC1、およびコンデンサC1に並列に接続された抵抗R1と抵抗R2からなる直列回路を備える。入力検出回路30では、抵抗R1と抵抗R2により抵抗分割された回路の中点が、制御部42のP3端子に接続されている。これにより制御部42は、入力部10が受け付けた交流電圧ACに基づく電圧を検出することができる。
【0015】
昇圧回路40は、交流電圧AC由来の脈流電圧を、後述する降圧回路60に適した直流電圧となるよう昇圧し、コンデンサC2を充電する。昇圧回路40は、例えば昇圧チョッパ回路により実現されるが、これに限定されない。
【0016】
昇圧回路40は、コイルL1、スイッチング素子Q1、およびダイオードD1を備える。
【0017】
スイッチング素子Q1は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等である。スイッチング素子Q1は、ドライバ45による制御に応答し、昇圧回路40内の電圧のスイッチングを行う。スイッチング素子Q1のソース端子には抵抗R3、ドレイン端子にはコイルL1、ゲート端子にはドライバ45がそれぞれ接続される。抵抗R3に発生する電圧は制御部42のP4端子に入力される。これにより、オンの状態のスイッチング素子Q1に流れる電流値を抵抗R3の両端電圧として検出することができる。
【0018】
コイルL1の2次側は制御部42のP5端子に入力される。P5端子にはコイルL1の1次側と2次側の巻き数比分の電圧(以降、L1電圧と称する)が入力される。
【0019】
昇圧回路40は、入力部10が受け付けた交流電圧ACの力率を高効率化する力率改善回路として機能する。そこでは、スイッチング素子Q1をオンにする信号の期間を交流電圧ACの周期に対して一定となるようにスイッチング制御を行う。すなわち、スイッチング電流の平均値が交流電圧ACの位相に一致するように制御を行う。
【0020】
抵抗R5、抵抗R6は、コンデンサC2の両端に設けられ、コンデンサC2に充電される直流電圧を分圧する。分圧された電圧は制御部42のP1端子により検出される。これにより、制御部42は、コンデンサC2に充電される直流電圧が一定となるようにスイッチング素子Q1を制御することができる。以降では、コンデンサC2の両端に充電される直流電圧をV1とする。
【0021】
降圧回路60は、MOSFET等のスイッチング素子Q2、コイルL2、ダイオードD2を備える。降圧回路60は、コンデンサC2に充電された直流電圧V1に対してスイッチング制御を行い、PWM等の高周波電圧を生成する。コンデンサC3は、降圧回路60と並列に接続され、降圧回路60が出力する高周波電圧を平滑化することで直流電圧を生成する。降圧回路60とコンデンサC3により生成される直流電圧を光源部50に供給することで、光源部50を点灯させることができる。降圧回路60は、例えばバックコンバータ回路により実現されるが、これに限定されない。
【0022】
コイルL2の2次側は制御部42のP6端子に入力される。P6端子にはコイルL2の1次側と2次側の巻き数比分の電圧(以降、L2電圧と称する)が入力される。これにより、制御部42はL2電圧に基づき、コイルL2の1次側に流れるスイッチング電流(以降、L2電流と称する)がゼロになったタイミングを検出することができる。このタイミングに基づき、制御部42は後述する3つのモードでスイッチング素子Q2を動作させることができる。
【0023】
抵抗R4には降圧回路60が出力するバックコンバータ電流(すなわちL2電流)が流れる。バックコンバータ電流は抵抗R4において電圧へと変換され、制御部42のP2端子に入力される。これにより、制御部42は、抵抗R4に発生する電圧が一定となるようにスイッチング素子Q2を制御することができる。すなわち、バックコンバータ電流の平均値が一定となるように定電流制御を実施することができる。バックコンバータ電流の平均値は光源部50に流れる電流(LED電流とも呼ばれる)に等しいことから、このことは、光源部50に流れる電流についても、一定となるように制御されていることを意味する。
【0024】
ドライバ45は、スイッチング制御用のドライバである。ドライバ45は、制御部42から送信される信号に基づき、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2をそれぞれ駆動させる。ドライバ45は、制御部42よりも高い電圧を出力することができるため、ドライバ45を介することで、制御部42から直接スイッチング素子Q1を駆動するよりも安定的にスイッチング制御を行うことができる。
【0025】
制御電源回路部43は、コンデンサC2の両端電圧を降圧する。この降圧された電圧をさらにコンデンサC4で平滑化することでドライバ45の制御電源が生成される。以降では、制御電源回路部43とコンデンサC4により生成されるドライバ45の制御電源を電圧V2とする。例えば、電圧V2は15Vである。なお制御電源回路部43は、例えばバックコンバータ回路などの降圧コンバータ回路でもよく、フライバック回路などの昇降圧コンバータでもよい。
【0026】
降圧回路部44は電圧V2をさらに降圧し、制御部42の動作電源電圧を生成する。動作電源電圧は例えば5Vである。動作電源電圧は、制御部42のVDD端子に入力される。
【0027】
制御部42はマイコン、またはマイコンとドライバを含む複合ICである。もしくは、DSP(Digital Signal Processor)等の演算装置で構成することもできる。
【0028】
制御部42は、コンデンサC2に充電される直流電圧V1をP1端子から検出し、当該直流電圧が一定になるようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御において、制御部42は、スイッチング素子Q1を制御するための信号をVg1端子からドライバ45に対して送信する。
【0029】
なお、スイッチング素子Q1をオンにする信号の期間を一定にしながら、且つ、フィードバック制御を行う必要があるため、フィードバック周期は交流由来電圧の周期よりも遅くする必要がある。
【0030】
さらに、制御部42は、抵抗R4に発生する電圧が一定になるように、スイッチング素子Q2を制御するための信号をVg2端子からドライバ45に対して送信する。これにより、上述の降圧回路60の定電流制御を実現することができる。
【0031】
制御部42は、P6端子に入力された、上述のL2電圧に基づき、コイルL2の1次側に流れるスイッチング電流(上述のL2電流)がゼロになったタイミングを検出する。さらに、制御部42は、このタイミングに基づき、3つの動作モードのいずれかでスイッチング素子Q2を動作させる。ここで、3つの動作モードとは、L2電流が流れている状態でスイッチング素子Q2をオンにする連続モード、L2電流が0になった後、所定の休止時間後にスイッチング素子Q2をオンにする不連続モード、L2電流が0になると同時にスイッチング素子Q2をオンにする臨界モードである。なお、3つの動作モードのうちどのモードでスイッチング素子Q2を動作させるかは、調光率に応じて決定される。
【0032】
なお、バックコンバータ電流(すなわちL2電流)の平均値が光源部50に流れる電流に等しいことは上述の通りである。したがって、L2電流に基づきスイッチング素子Q2を制御することは、光源部50に流れる電流に基づきスイッチング素子Q2を制御することに相当する。
【0033】
同様に、制御部42は、P5端子に入力された、上述のL1電圧に基づき、コイルL1の1次側に流れるスイッチング電流(以降、L1電流と称する)がゼロになったタイミングを検出する。制御部42は、このタイミングに基づき、調光率に応じて、上述の3つの動作モードのいずれかでスイッチング素子Q1を動作させる。
【0034】
光源部50は、複数のLED光源が直列に接続された構造を有する。光源部50は、降圧回路60とコンデンサC3により生成される直流電圧を受け付ける。これにより、LED光源が点灯する。なお、光源はLEDに限らず、白熱灯などでもよい。また、光源の数は複数なくともよく、一つ以上あればよい。
【0035】
受信部70は、調光率などの照明条件を含む調光信号を外部の機器から受け付け、当該調光信号を制御部42のP7端子に入力する。制御部42においては、調光信号に基づき降圧回路60のスイッチング素子Q2を制御し、光源部50に流れるLED電流を調整する。これにより、受け付けた照明条件で光源部50を点灯することができる。
【0036】
このように本実施形態においては、制御部42が、コイルL2の1次側に流れるスイッチング電流がゼロになったタイミングを検出し、該タイミングに基づき、調光率に応じて決定される動作モードでスイッチング素子Q2を動作させる。これにより、安定したスイッチング制御を実現できる。
【0037】
〈変形例〉
なお、図1においては、光源部50を駆動する回路が昇圧回路40と降圧回路60の組み合わせである場合を説明した。しかしながら、コイルL2とスイッチング素子Q2を有し、スイッチング素子Q2のオンとオフにより光源部50を駆動する電力信号を生成する回路であれば種類は問わない。
【0038】
なお、受信部70が外部の機器から受け付ける調光信号は、調光率を含まなくともよく、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2の動作モードを指示するような信号であっても構わない。なお、調光率は、必ずしも外部機器から受け付けなくともよい。例えば、受信部70が調光信号を受け付けない場合は、制御部42が光源部50を全光で点灯させるように設定しておいてもよい。
【0039】
図2から図4は、本開示の実施の形態2に係る、照明装置100の調光率と、スイッチング素子Q2のスイッチング動作を説明する図である。図2は、光源部50を全光(調光率100%)で点灯させる場合における、L2電圧及びL2電流の波形である。全光点灯時において、制御部42は、スイッチング素子Q2を最大時間オンにすることより、L2電流を最大まで上昇させる。
【0040】
スイッチング素子Q2を最大時間オンにした後、制御部42は、スイッチング素子Q2をオフにする。さらに、制御部42は、P6端子で検出されるL2電圧をモニタし、L2電圧が立下がるタイミングを検出する。これにより、L2電流が0となるタイミングを検出することができる。
【0041】
ここで、全光点灯時においては、照明装置100の消費電力が最大となり、発熱も大きくなることから、上述の3つの動作モードのうち効率が最大の臨界モードでスイッチング素子Q2を動作させることが望ましい。
【0042】
そこで、制御部42は、L2電流が0となるタイミングで、再びスイッチング素子Q2をオンにする。これに伴い、再びL2電流が上昇を開始する。制御部42がこれらのスイッチング操作を繰り返すことにより、臨界モードにより、スイッチング素子Q2を動作させることができる。
【0043】
なお、図2では、周波数が50kHz、オンとオフのデューティ比が2対1の場合の、臨界モードにおけるL2電圧及びL2電流の波形が示されている。しかしながら、周波数及びデューティ比の値は一例であり、照明装置100の使用用途にあわせて決定することができる。
【0044】
図3は、光源部50を調光率50%で点灯させる場合における、L2電圧及びL2電流の波形である。図3に示すように、調光率50%では、光源部50の点灯に必要なL2電流値が全光の場合よりも小さい。すなわち、L2電流を0からピークに上昇させるためにスイッチング素子Q2をオンする時間、またL2電流をピークから0にするためにスイッチング素子Q2をオフする時間が、全光の場合よりも短い。したがって、調光率50%の場合に、スイッチング素子Q2を臨界モードでスイッチング動作させることは、スイッチング周波数を全光の場合よりも高くしなければならないことを意味する。
【0045】
スイッチング周波数を高くするとノイズが発生しやすくなる。さらには、スイッチング素子Q2の制御が不安定となり、照明にちらつきを発生させ、使用者に不快感を与える恐れがある。スイッチング周波数を高くしないため、調光率50%の場合においては、スイッチング素子Q2を不連続モードで動作させることが望ましい。なお、不連続モードにすることで、コイルL2のピーク電流は増加するが、該ピーク電流が全光の場合のピーク電流よりも大きくなることはないため、大きな問題にはならない。
【0046】
不連続モードの場合も、制御部42は、臨界モードの場合と同様に、スイッチング素子Q2を所定時間オンにした後、L2電圧が立下がるタイミングを検出し、L2電流が0となるタイミングを検出する。しかしながら、不連続モードの場合は、制御部42はL2電流が0となった後、すぐにはスイッチング素子Q2をオンにせず、所定の休止時間の後にスイッチング素子Q2をオンにする。制御部42がこれらのスイッチング操作を繰り返すことで、スイッチング素子Q2を不連続モードで動作させることができる。
【0047】
なお、スイッチング制御の安定化の観点から、スイッチング周波数は、臨界モードと不連続モードとで同じであることがより好ましい。これにより、スイッチング周波数を調光率に応じて調整する必要がなくなる。さらには、スイッチング素子Q2のオン時間、および休止時間などを調光率に応じて都度設定する必要もなくなる。
【0048】
なお、図3では、周波数が50kHz、オンとオフのデューティ比が1対1の場合の、不連続モードにおけるL2電圧及びL2電流の波形が示されているが、周波数及びデューティ比の値は一例である。また、オフの時間には休止時間も含まれている。休止時間においては、L2電圧に自由振動がみられる。
【0049】
図4は、光源部50を調光率1%で点灯させる場合における、L2電圧及びL2電流の波形である。調光率1%では、光源部50の点灯に必要なL2電流値が調光率50%の場合よりもさらに小さい。したがって、調光率1%の場合も、調光率50%の場合と同様に、スイッチング素子Q2を不連続モードで動作させることが望ましい。制御部42が行うスイッチング操作は調光率50%の場合の説明と同様であるのでここでは省略する。また、図4では、周波数が50kHz、オンとオフのデューティ比が1対5の場合の、不連続モードにおけるL2電圧及びL2電流の波形が示されているが、周波数及びデューティ比の値は一例である。
【0050】
なお、上述では、調光率が50%および1%である場合に、スイッチング素子Q2を不連続モードで動作させることを説明した。しかしながら、調光率の値はこれらに限定されない。100%未満のあらゆる調光率において、スイッチング素子Q2を不連続モードで動作させることで、スイッチング周波数が全光の場合よりも高くなることを防ぐことができる。
【0051】
以上説明したように、制御部42は、調光率が100%の場合には臨界モードでスイッチング素子Q2を動作させる。一方、調光率が100%未満の場合には、スイッチング素子Q2を不連続モードで動作させる。これにより、安定したスイッチング制御を実現できる。
【0052】
本開示の技術は、例えば、照明装置100が複数のLEDを備え、複数のLEDに流れる電流値を制御して発光させる場合に特に有効である。近年、色温度の異なる複数のLEDを調色して発光させる照明器具、または色そのものが異なる複数のLEDを混ぜ合わせて発光させる照明器具が増えている。本開示の技術を適用することで安定したスイッチング制御が可能となり、複数のLEDに流れる電流を細かく制御することができる。これにより、意図した通りの照明色を忠実に表現することが可能となる。
【0053】
〈変形例〉
なお、上述では、全光の場合にはスイッチング素子Q2を臨界モードで動作させ、調光率が100%未満の場合には不連続モードで動作させることを説明した。しかしながら、調光率に応じてスイッチング素子Q2の動作モードを変更する制御であればよく、例えば、調光率50%までは臨界モードを採用し、調光率50%未満では不連続モードを採用してもよい。
【0054】
ただし、連続モードではスイッチング素子Q2がオンの時にもダイオードD2に逆電流が流れて損失が増加することに留意されたい。この点から、全光点灯時はスイッチング素子Q2を臨界モードまたは不連続モードで動作させることが望ましい。特に、臨界モードで動作させることで、コイルL2のピーク電流を不連続モードの場合よりも抑えることができ、コイルL2を小型化し、コストダウンすることが可能となる。
【0055】
なお、スイッチング周波数を、臨界モードと不連続モードとで同じにするため、全光点灯時におけるスイッチング周波数を、制御部の記憶部に記憶させてもよい。制御部が記憶部を参照することで、調光率が100%未満の場合においても全光点灯時と同じスイッチング周波数にてスイッチング素子Q2を動作させることができる。また、制御部42にスイッチング周波数を一定間隔で記憶させることで、調光率が100%未満から全光に変更されたなどの場合でも、制御部42において全光点灯時のスイッチング周波数を正確に把握することができる。また周囲の温度変化、および経年劣化等によりLEDの特性が変化した場合でも、制御部42において最新のスイッチング周波数を参照することができる。
【0056】
さらには、スイッチング周波数の標準値を制御部42に、あらかじめ記憶させてもよい。これにより、制御部42が全光点灯時のスイッチング周波数を記憶する前に調光率100%未満で光源部50を点灯させる場合であっても、該標準値にてスイッチング素子Q2を動作させることができる。
【0057】
なお、上述では、制御部42が、調光率に応じてスイッチング素子Q2の動作モードを切り替えることを説明したが、同様の制御をスイッチング素子Q1に対して実施してもよい。制御部42は、P5端子に入力されたL1電圧に基づき、L1電流がゼロになったタイミングを検出することができるため、該タイミングに基づき、スイッチング素子Q1の動作モードを切り替えることが可能である。2つのスイッチング素子の動作モードを制御することで、より安定したスイッチング制御を実現できる。なお、上述したように、スイッチング素子Q1をオンにする時間は、交流電圧ACの周期に対して一定となるように制御されているため、スイッチング素子Q2の場合と異なり、調光率に応じて決定されなくともよい。
【0058】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。
【0059】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
光源部と、
コイルとスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子により前記光源部を駆動するための電力を生成する回路と、
前記スイッチング素子を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
調光率に応じて決定される時間スイッチング素子をオンにし、前記コイルに流れる電流を上昇させる処理と、
前記スイッチング素子をオフにし、前記コイルに流れる電流が0となるタイミングを検出する処理と、
前記タイミングに基づき、調光率に応じて決定される動作モードにて前記スイッチング素子を動作させる処理と、
を実行するように構成される、照明装置。
(付記2)
前記動作モードは、臨界モードおよび不連続モードを含む、付記1に記載の照明装置。
(付記3)
前記制御部は、前記調光率が100%の場合は、前記臨界モードにおいて前記スイッチング素子を動作させる、付記2に記載の照明装置。
(付記4)
前記スイッチング素子のスイッチング周波数は、前記調光率および前記動作モードによらず同じである、付記1から3いずれかに記載の照明装置。
(付記5)
前記制御部は、記憶部をさらに備え、調光率100%で前記光源部を点灯している間の前記スイッチング周波数を記憶部に記憶させる記憶処理をさらに実行し、100%未満の調光率で前記光源部を点灯する場合においては、前記記憶部に記憶されたスイッチング周波数にて前記スイッチング素子を動作させる、付記4に記載の照明装置。
(付記6)
前記制御部は、前記スイッチング周波数の標準値を前記記憶部に記憶させる処理をさらに実行し、前記記憶処理が実行される前に100%未満の調光率で前記光源部を点灯する場合においては、前記スイッチング周波数の前記標準値にて前記スイッチング素子を動作させる、付記5に記載の照明装置。
(付記7)
前記記憶処理は一定間隔で実行され、前記制御部は、100%未満の調光率で前記光源部を点灯する場合においては、前記記憶部に記憶されたスイッチング周波数のうち最新のスイッチング周波数にて、前記スイッチング素子を動作させる、付記5または6に記載の照明装置。
(付記8)
前記回路は、交流電圧を直流電圧に変換する昇圧回路と、前記昇圧回路が出力した直流電圧から、光源部を駆動する電力を生成する降圧回路とを含み、
前記降圧回路は前記コイルと前記スイッチング素子を含み、
前記昇圧回路は第二のコイルと第二のスイッチング素子を含み、
前記制御部は、
前記第二のスイッチング素子を所定時間オンにし、前記第二のコイルに流れる電流を上昇させる処理と、
前記第二のスイッチング素子をオフにし、前記第二のコイルに流れる電流が0となるタイミングを検出する処理と、
前記第二のコイルに流れる電流が0となるタイミングに基づき、前記調光率に応じて決定される前記動作モードにて前記第二のスイッチング素子を動作させる処理と、
をさらに実行するように構成される、付記1から7いずれかに記載の照明装置。
【符号の説明】
【0060】
10 入力部、20 整流部、30 入力検出回路、40昇圧回路、42 制御部、43 制御電源回路部、44 降圧回路部、45 ドライバ、50 光源部、60 降圧回路、70 受信部、100 照明装置、Q1、Q2 スイッチング素子、L1、L2 コイル、C1、C2、C3、C4 コンデンサ、R1、R2、R3、R4、R5、R6 抵抗、D1、D2 ダイオード、AC 交流電圧、DB ダイオードブリッジ
図1
図2
図3
図4