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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154190
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】内燃機関及び内燃機関の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/02 20060101AFI20241023BHJP
   F02D 41/34 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F02D23/02 B
F02D41/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067891
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 大育
【テーマコード(参考)】
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AA02
3G092AB01
3G092BA01
3G092BA03
3G092BB02
3G092BB03
3G092FA01
3G092FA24
3G301HA01
3G301HA02
3G301JA01
3G301JA02
3G301JA21
3G301LB02
3G301MA11
3G301MA18
3G301PA01Z
(57)【要約】
【課題】適切な燃焼性能を確保することが可能な内燃機関及び内燃機関の制御方法を提供する。
【解決手段】内燃機関は、ピストンを有するシリンダと、シリンダに接続される吸気ポート及び排気ポートと、吸気ポートを開閉する吸気弁及び排気ポートを開閉する排気弁と、吸気ポートに燃料を噴射する噴射部と、噴射部による燃料の噴射量を制御する制御部とを備え、制御部は、吸気行程における吸気ポート内の燃料の濃度が時間的に均一になるように噴射部の動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン及びシリンダを有する本体部と、
前記シリンダに接続される吸気ポート及び排気ポートと、
前記吸気ポートを開閉する吸気弁及び前記排気ポートを開閉する排気弁と、
前記吸気ポートに燃料を噴射する噴射部と、
前記噴射部による前記燃料の噴射量を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、吸気行程における前記吸気ポート内の前記燃料の濃度が時間的に均一になるように前記噴射部の動作を制御する
内燃機関。
【請求項2】
前記吸気行程における前記吸気ポート内の空気流量を取得する空気流量取得部を更に備え、
前記制御部は、前記空気流量取得部により取得される前記空気流量に応じて、前記噴射部の動作を制御する
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記空気流量取得部は、前記吸気ポート内の空気流量を計測する流量センサを含む
請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記空気流量取得部は、前記吸気ポート内と前記シリンダ内との差圧を計測する給気圧センサ及び筒内圧センサを含む
請求項2に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記吸気行程における前記吸気ポートの空気流量の履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記履歴情報に応じて、前記噴射部の動作を制御する
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記制御部は、前記履歴情報と運転条件とに基づいて前記燃料の噴射量を推定し、推定結果に基づいて前記噴射部の動作を制御する
請求項5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記運転条件は、回転数、負荷、吸気圧力、吸気温度、空気過剰率及び吸気行程が開始されてからの経過時間のうち少なくとも1つを含む
請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記本体部は、複数設けられ、
複数の前記本体部のそれぞれに前記吸気ポート、前記排気ポート及び前記噴射部が設けられ、
複数の前記噴射部は、それぞれ前記吸気弁からの距離が等しくなる位置に配置される
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項9】
ピストンを有するシリンダと、
前記シリンダに接続される吸気ポート及び排気ポートと、
前記吸気ポートを開閉する吸気弁及び前記排気ポートを開閉する排気弁と、
前記吸気ポートに燃料を噴射する噴射部と
を備える内燃機関の制御方法であって、
吸気行程における前記吸気ポート内の前記燃料の濃度が時間的に均一になるように前記噴射部の動作を制御する
内燃機関の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関及び内燃機関の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸気ポート内に燃料を噴射する噴射部を有する内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-133491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の内燃機関では、噴射部から噴射される燃料の噴射量が吸気行程において一定である。しかしながら、吸気行程では、吸気バルブの開度に応じて吸気ポート内の空気流量が変動するため、吸気ポート内の燃料の濃度が時間的に変化する。この場合、シリンダ内に供給される燃料の濃度分布が時間的にばらつくため、シリンダ内での燃料濃度分布が空間的にばらつき、燃焼性能が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、適切な燃焼性能を確保することが可能な内燃機関及び内燃機関の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関は、ピストンを有するシリンダと、前記シリンダに接続される吸気ポート及び排気ポートと、前記吸気ポートを開閉する吸気弁及び前記排気ポートを開閉する排気弁と、前記吸気ポートに燃料を噴射する噴射部と、前記噴射部による前記燃料の噴射量を制御する制御部とを備え、前記制御部は、吸気行程における前記吸気ポート内の前記燃料の濃度が時間的に均一になるように前記噴射部の動作を制御する。
【0007】
本開示に係る内燃機関の制御方法は、ピストンを有するシリンダと、前記シリンダに接続される吸気ポート及び排気ポートと、前記吸気ポートを開閉する吸気弁及び前記排気ポートを開閉する排気弁と、前記吸気ポートに燃料を噴射する噴射部とを備える内燃機関の制御方法であって、吸気行程における前記吸気ポート内の前記燃料の濃度が時間的に均一になるように前記噴射部の動作を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、適切な燃焼性能を確保することが可能な内燃機関及び内燃機関の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る内燃機関の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、制御部の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、記憶部に記憶される噴射量マップの一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る内燃機関による吸気行程での吸気ポート20内の燃料の濃度の時間変化の一例を示す図である。
図5図5は、比較例に係る内燃機関における吸気行程での吸気ポート内の燃料の濃度の時間変化の一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る内燃機関の他の例を模式的に示す図である。
図7図7は、記憶部に記憶される噴射量マップの他の例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る内燃機関の他の例を模式的に示す図である。
図9図9は、記憶部に記憶される噴射量マップの他の例を示す図である。
図10図10は、気筒が複数設けられた内燃機関の例を示す図である。
図11図11は、内燃機関を制御する制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る内燃機関及び内燃機関の制御方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る内燃機関の一例を模式的に示す図である。図1に示す内燃機関100は、燃料の燃焼を動力とするエンジンであり、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガスエンジンなどが挙げられる。内燃機関100の用途は任意であり、例えば、車両用や船舶用、発電機用、産業用などであってもよいし、固定された設備用であってもよい。内燃機関100は、本体部10と、吸気ポート20と、排気ポート30と、噴射部40と、制御部50とを備える。
【0012】
シリンダ11は、例えば円筒状である。ピストン12は、シリンダ11に摺動可能な状態で配置(挿入)されている。ピストン12は、不図示のクランクシャフト等に連結されており、シリンダ11内でシリンダ11の円筒の軸に平行な方向に摺動する。本体部10は、シリンダ11とピストン12とで閉じられた空間が形成され、この領域が燃料を燃焼する空間(燃焼空間)となる。点火プラグ15は、シリンダ11内に配置される。点火プラグ15は、火花点火する着火装置であり、火花点火することで、シリンダ11内に噴射された混合ガスを燃焼させる。
【0013】
吸気弁13は、吸気ポート20とシリンダ11との連結部に配置され、吸気ポート20の開閉を切り換える弁である。本体部10は、吸気弁13を開くことで吸気ポート20からシリンダ11に後述する混合ガスが供給され、閉じることで吸気ポート20からシリンダ11に混合ガスを供給しない状態とする。排気弁14は、排気ポート30とシリンダ11との連結部に配置され、排気ポート30の開閉を切り換える弁である。本体部10は、排気弁14を開くことでシリンダ11内の空気が排気ポート30に排出し、閉じることでシリンダ11内の空気を排気ポート30から排出しない状態とする。
【0014】
吸気ポート20および排気ポート30は、シリンダ11に連結した配管である。吸気ポート20は、給気部21に接続される。給気部21は、吸気ポート20に空気を供給する。吸気ポート20には、噴射部40が設けられる。噴射部40は、燃料を噴射する噴射口41を有する。噴射口41は、吸気ポート20内に配置される。噴射部40は、噴射口41から吸気ポート20内に燃料を噴射する。吸気ポート20は、噴射部40から噴射された燃料と空気とを混合した混合ガスを案内してシリンダ11に供給する。排気ポート30は、シリンダ11内の空気を外部に排出する。
【0015】
吸気ポート20には、流量センサ61が設けられる。流量センサ61は、吸気ポート20内の空気流量を検出して、検出結果を制御部50に出力する。本実施形態において、流量センサ61は、吸気ポート20内の空気流量を取得する空気流量取得部60として設けられる。
【0016】
本体部10は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を行う4サイクルエンジンである。本体部10は、吸気行程として、吸気弁13を開いて混合ガスがシリンダ11内に給気する。その後、本体部10は、圧縮工程として、ピストン12を上死点側(シリンダ11の上面側)に移動させ、シリンダ11とピストン12とで構成される空間の体積を小さくする。
【0017】
本体部10は、膨張工程として、点火プラグ15で火花点火を行い、シリンダ11内の燃料ガスに着火し、シリンダ11内とシリンダ11と繋がっているシリンダ11内の燃料ガスを燃焼させる。つまりシリンダ11内の燃料ガスを燃焼させる。本体部10は、シリンダ11内の燃料ガスを燃焼させることでシリンダ11内の空気を膨張させ、ピストン12に下死点側に向かう圧力を加える。その後、本体部10は、排気行程として、排気弁14を開き、シリンダ11内の空気を排気ポート30から排出する。本体部10は、排気行程が終了したら、再び吸気行程に進み、上記処理を繰り返す。また、本体部10は、1サイクルでピストン12を2回上下動(上下方向に2往復)させる。
【0018】
制御部50は、内燃機関100の各部の動作を制御する。制御部50は、点火プラグ15による点火のタイミング、噴射部40の動作等を制御する。
【0019】
図2は、制御部50の一例を示す機能ブロック図である。図2に示すように、制御部50は、通信部51と、入出力部52と、処理部53と、記憶部54とを有する。通信部51は、外部機器との間で有線又は無線による通信を行うための通信インタフェースを有する。入出力部52は、外部機器との間で入出力を行うための入出力インタフェースを有する。処理部53は、各種の情報処理を行う。処理部53は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。
【0020】
記憶部54は、各種プログラム、データ等の情報を記憶する。記憶部54は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを含む。記憶部54は、例えば、吸気ポート20の空気流量と、噴射部40から噴射する燃料の噴射量との関係を示す噴射量マップを記憶する。
【0021】
図3は、記憶部54に記憶される噴射量マップの一例を示す図である。図3に示すように、噴射量マップM1は、吸気ポート20の空気流量がR1、R2、R3、…である場合に、それぞれ噴射部40から噴射する燃料の噴射量J1、J2、J3、…を示すデータである。噴射量マップM1において、空気流量R1、R2、R3、…に対応する噴射量J1、J2、J3、…については、後述するように、吸気行程における吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に均一になるように予め設定される。なお、空気流量R1、R2、R3、…は、例えば単位時間あたりに吸気ポート20を通過する空気の体積とすることができる。また、噴射量J1、J2、J3、…は、例えば単位時間あたりに噴射部40から噴射される燃料の体積とすることができる。
【0022】
制御部50では、処理部53においてプロセッサが各種プログラムを読み出してメモリに展開することで、上記各部の機能に対応した情報処理を実行する。各種プログラムとしては、例えば通信部51が受信したプログラム、記憶部54に記憶されたプログラム、外部の記録媒体に記録されたプログラム等が挙げられる。制御部50は、各種の情報処理を実行する情報処理装置(コンピュータ)として機能する。なお、制御部50とは異なる他の情報処理装置が各種プログラムを実行してもよいし、制御部50と他の情報処理装置とが協働して各種プログラムを実行してもよい。
【0023】
本実施形態において、制御部50は、吸気行程における吸気ポート内の燃料の濃度が時間的に均一になるように噴射部40の動作を制御する。この場合、制御部50は、流量センサ61により検出される吸気ポート20内の空気流量に応じて、噴射部40の動作を制御する。具体的には、制御部50は、流量センサ61により検出される吸気ポート20内の空気流量の検出結果を取得し、記憶部54に記憶される噴射量マップM1に基づいて当該検出結果に対応する燃料の噴射量を求める。制御部50は、求めた噴射量が目標値となるように噴射部40における燃料の噴射量を制御する。
【0024】
図4は、本実施形態に係る内燃機関100による吸気行程での吸気ポート20内の燃料の濃度の時間変化の一例を示す図である。図4には、吸気行程での吸気弁13の移動量、吸気ポート20内の空気流量の時間変化、吸気ポート20内の燃料流量の時間変化を対応付けて示している。なお、吸気ポート20内の燃料流量は、例えば単位時間あたりに吸気ポート20を通過する燃料の体積とすることができる。燃料流量は、噴射部40から噴射される燃料の噴射量(単位時間当たりの体積)に対応する値である。
【0025】
図4に示すように、吸気行程では、時間の経過に伴って吸気弁13が徐々に開放され、ピーク位置に到達した後に徐々に閉塞される。この吸気弁13の移動に対応するように、吸気ポート20内の空気流量は、吸気弁13の開度が大きくなるにつれて大きくなり、吸気弁13の開度が小さくなるにつれて小さくなる。
【0026】
本実施形態では、このように空気流量が変化する場合において、制御部50は、吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に均一になるように、噴射部40から噴射される燃料の噴射量を制御する。つまり、制御部50は、吸気ポート20内の空気流量の増加に伴って吸気ポート20内の燃料流量が増加し、吸気ポート20内の空気流量の減少に応じて吸気ポート20内の燃料流量が減少するように、噴射部40から噴射される燃料の噴射量を制御する。
【0027】
図5は、比較例に係る内燃機関における吸気行程での吸気ポート内の燃料の濃度の時間変化の一例を示す図である。図5には、図4と同様に、吸気行程での吸気弁の移動量、吸気ポート内の空気流量の時間変化、吸気ポート内の燃料流量の時間変化を対応付けて示している。
【0028】
図5に示す比較例では、図4に示す場合と同様に、吸気行程において、時間の経過に伴って吸気弁が徐々に開放され、ピーク位置に到達した後に徐々に閉塞される。この吸気弁の移動に対応するように、吸気ポート内の空気流量は、吸気弁の開度が大きくなるにつれて大きくなり、吸気弁の開度が小さくなるにつれて小さくなる。
【0029】
一方、図5に示す比較例では、吸気行程において、吸気ポート20内の燃料流量が一定となるように制御している。この場合、吸気ポート20内の空気流量が大きくなるにつれて吸気ポート20内の燃料の濃度が減少し、吸気ポート20内の空気流量が小さくなるにつれて吸気ポート20内の燃料の濃度が増加する。このため、吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に変化する。この場合、シリンダ11内に供給される混合ガスの燃料の濃度が時間的に変化し、燃焼性能に影響する。
【0030】
これに対して、本実施形態では、吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に均一になるように制御するため、シリンダ11内に供給される混合ガスの燃料の濃度が時間的に均一となり、適切な燃焼性能が確保される。本実施形態において、制御部50は、1サイクル中に非定常に変化する空気流量に合わせて、噴射部40から噴射される燃料の噴射量を制御する。このため、吸気ポート20内の空気流速に応じて、リアルタイムで吸気ポート20内の燃料流量を調整することができる。
【0031】
図6は、本実施形態に係る内燃機関の一例を模式的に示す図である。図6に示す内燃機関100Aは、上記した内燃機関100と同様に、本体部10と、吸気ポート20と、排気ポート30と、噴射部40と、制御部50とを備える。内燃機関100Aは、空気流量取得部として、空気流量取得部60として、流量センサ61に代えて、給気圧センサ62と、筒内圧センサ63とを有する点で上記した内燃機関100とは異なっている。給気圧センサ62は、吸気ポート20に供給する空気の圧力を検出し、検出結果を制御部50に出力する。筒内圧センサ63は、シリンダ11内の圧力を検出し、検出結果を制御部50に出力する。
【0032】
制御部50は、給気圧センサ62の検出結果と、筒内圧センサ63の検出結果とに基づいて吸気ポート20とシリンダ11内との差圧を算出し、算出した差圧に基づいて、吸気行程における吸気ポート20の空気流量を算出する。
【0033】
図7は、記憶部54に記憶される噴射量マップの他の例を示す図である。図7に示す噴射量マップM2は、吸気ポート20とシリンダ11内との差圧と、吸気ポート20内の空気流量と、噴射部40から噴射される燃料の噴射量とが対応付けられた情報である。
【0034】
制御部50は、噴射量マップM2を用いることにより、算出された差圧に対応する空気流量を求めることができる。また、噴射量マップM2において、空気流量と噴射量とを対応付けることで、制御部50は、空気流量に対応する噴射量を求めることができる。
【0035】
図8は、本実施形態に係る内燃機関の他の例を模式的に示す図である。図8に示す内燃機関100Bは、上記した内燃機関100、100Aと同様に、本体部10と、吸気ポート20と、排気ポート30と、噴射部40と、制御部50とを備える。内燃機関100Bには、空気流量取得部60が設けられない点で、上記した内燃機関100、100Aとは異なっている。なお、空気流量取得部60として用いられない態様であれば、給気圧センサ、筒内圧センサが設けられてもよい。
【0036】
図9は、記憶部54に記憶される噴射量マップの他の例を示す図である。図9に示すように、内燃機関100Bにおいて、噴射量マップM3は、内燃機関100Bの運転条件D1、D2、D3、…と、吸気ポート20内の空気流量と、噴射部40から噴射される燃料の噴射量とが対応付けられた情報である。
【0037】
ここで、内燃機関100Bの運転条件とは、吸気行程におけるクランクシャフトの回転数、負荷、吸気ポート20内の圧力である吸気圧力、吸気ポート20内の温度である吸気温度、吸気ポート20における空気過剰率及び吸気行程が開始されてからの経過時間のうち少なくとも1つを含む。
【0038】
例えば、予め内燃機関100Bの試験運転又はシミュレーション運転を行うことにより、内燃機関100Bの運転条件と、当該運転条件に対応する吸気ポート20の空気流量とを求めることができる。このような運転条件に対応する空気流量の履歴を示す履歴情報を求め、求めた履歴情報と噴射量とを対応付けた噴射量マップM3を生成して、生成した噴射量マップM3を記憶部54に記憶させておく。
【0039】
制御部50は、吸気行程における運転条件を取得し、噴射量マップM3を用いて当該運転条件に対応する空気流量を求めることができる。また、噴射量マップM3において、空気流量と噴射量とを対応付けることで、制御部50は、空気流量に対応する噴射量を求めることができる。
【0040】
上記した内燃機関100、100A、100Bは、本体部10と、吸気ポート20と、排気ポート30と、噴射部40とを組み合わせた1つの気筒を有する構成として示しているが、この気筒が複数設けられた構成であってもよい。図10は、気筒が複数設けられた内燃機関100Cの例を示す図である。図10では、気筒が4つ設けられた構成が示されているが、この構成に限定されず、気筒が3つ以下又は5つ以上設けられた構成であっても同様の説明が可能である。また、例えば気筒が1つ又は複数設けられる場合において、少なくとも1つの気筒に吸気ポート20が2つ以上接続された構成であっても同様の説明が可能である。なお、上記したように吸気ポート20が2つ以上設けられる場合、各吸気ポート20において、各噴射部40は、各吸気弁13からの距離Lが等しくなる位置に配置される。
【0041】
図11は、上記のように構成された内燃機関100、100A、100B、100Cを制御する制御方法の一例を示すフローチャートである。図11に示すように、制御部50は、空気流量取得部により吸気ポート20内の空気流量の検出結果を取得する、又は吸気ポート20内の空気流量の履歴情報を取得する(ステップS10)。制御部50は、取得した空気流量の検出結果又は履歴情報に基づいて、噴射部40から噴射する燃料の噴射量を算出する(ステップS20)。制御部50は、算出した噴射量を目的地とするように噴射部40の動作を制御する(ステップS30)。
【0042】
以上のように、本開示の第1態様に従えば、ピストン12及びシリンダ11を有する本体部10と、シリンダ11に接続される吸気ポート20及び排気ポート30と、吸気ポート20を開閉する吸気弁13及び排気ポート30を開閉する排気弁14と、吸気ポート20に燃料を噴射する噴射部40と、噴射部40による燃料の噴射量を制御する制御部50とを備え、制御部50は、吸気行程における吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に均一になるように噴射部40の動作を制御する内燃機関が提供される。
【0043】
この構成によれば、吸気行程における吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に均一になるように噴射部40の動作が制御されるため、シリンダ11内に供給される混合ガスの燃料の濃度が時間的に均一となる。これにより、適切な燃焼性能を確保することが可能な内燃機関を提供することができる。
【0044】
本開示の第2態様に従えば、第1態様に係る内燃機関において、吸気行程における吸気ポート20内の空気流量を取得する空気流量取得部60を更に備え、制御部50は、空気流量取得部60により取得される空気流量に応じて、噴射部40の動作を制御する。この構成によれば、空気流量を適切に取得することができるため、吸気行程における吸気ポート20内の燃料の濃度を高精度に制御することができる。
【0045】
本開示の第3態様に従えば、第2態様に係る内燃機関において、空気流量取得部60は、吸気ポート20内の空気流量を計測する流量センサ61を含む。この構成によれば、空気流量を適切に取得することができる。
【0046】
本開示の第4態様に従えば、第2態様に係る内燃機関において、空気流量取得部60は、吸気ポート20内とシリンダ11内との差圧を計測する給気圧センサ62及び筒内圧センサ63を含む。この構成によれば、空気流量を適切に取得することができる。
【0047】
本開示の第5態様に従えば、第1態様に係る内燃機関において、吸気行程における吸気ポート20の空気流量の履歴を示す履歴情報を記憶する記憶部54を更に備え、制御部50は、記憶部54に記憶される履歴情報に応じて、噴射部40の動作を制御する。この構成によれば、履歴情報に応じて噴射部40の動作を制御することにより、吸気行程における吸気ポート20内の燃料の濃度を高精度に制御することができる。
【0048】
本開示の第6態様に従えば、第5態様に係る内燃機関において、制御部50は、履歴情報と運転条件とに基づいて燃料の噴射量を推定し、推定結果に基づいて噴射部40の動作を制御する。この構成によれば、履歴情報と運転条件とに基づいて燃料の噴射量を推定することで、空気流量を取得することなく燃料の噴射量を推定することができる。従って、空気流量を取得する際のセンサの精度に関わらず、燃料の噴射量を推定することができる。
【0049】
本開示の第7態様に従えば、第6態様に係る内燃機関において、運転条件は、回転数、負荷、吸気圧力、吸気温度、空気過剰率及び吸気行程が開始されてからの経過時間のうち少なくとも1つを含む。この構成によれば、各種の運転条件に基づいて燃料の噴射量を推定することができる。
【0050】
本開示の第8態様に従えば、第1態様に係る内燃機関において、本体部10は、複数設けられ、複数の本体部10のそれぞれに吸気ポート20、排気ポート30及び噴射部40が設けられ、複数の噴射部40は、それぞれ本体部10の吸気弁13からの距離が等しくなる位置に配置される。したがって、いわゆる複数の気筒が設けられる場合に、各気筒について適切かつ同程度の燃焼性能を確保することが可能となる。
【0051】
本開示の第9態様に従えば、ピストン12を有するシリンダ11と、シリンダ11に接続される吸気ポート20及び排気ポート30と、吸気ポート20を開閉する吸気弁及び排気ポート30を開閉する排気弁と、吸気ポート20に燃料を噴射する噴射部40とを備える内燃機関の制御方法であって、吸気行程における吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に均一になるように噴射部40の動作を制御する内燃機関の制御方法が提供される。
【0052】
この構成によれば、吸気行程における吸気ポート20内の燃料の濃度が時間的に均一になるように噴射部40の動作が制御されるため、シリンダ11内に供給される混合ガスの燃料の濃度が時間的に均一となる。これにより、内燃機関において、適切な燃焼性能を確保することができる。
【0053】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 本体部
11 シリンダ
12 ピストン
13 吸気弁
14 排気弁
15 点火プラグ
20 吸気ポート
21 給気部
30 排気ポート
40 噴射部
41 噴射口
50 制御部
51 通信部
52 入出力部
53 処理部
54 記憶部
60 空気流量取得部
61 流量センサ
62 給気圧センサ
63 筒内圧センサ
100,100A,100B,100C 内燃機関
M1,M2,M3 噴射量マップ
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
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図11