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特開2024-154196位置検出システム及びナビゲーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154196
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】位置検出システム及びナビゲーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20241023BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20241023BHJP
   G01S 19/49 20100101ALI20241023BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/0969
G01S19/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067902
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】大槻 幸平
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋治
(72)【発明者】
【氏名】米田 憲二
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 翼
(72)【発明者】
【氏名】石澤 貴訓
(72)【発明者】
【氏名】安田 敦
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5J062
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB02
2F129BB20
2F129BB21
2F129BB22
2F129BB26
2F129BB49
2F129BB64
2F129BB66
5H181AA01
5H181CC12
5H181CC27
5J062BB01
5J062CC07
5J062FF04
(57)【要約】
【課題】衛星測位誤差の影響を可及的に抑制しつつ、自律航法と衛星測位とを併用した測位を行う「位置検出システム及びナビゲーションシステム」を提供する。
【解決手段】自車の左右方向の座標軸であるLX軸と前後方向の座標軸であるLY軸を持つ、自律航法による測位位置を原点とする自動車に固定したローカル座標系のLX軸方向の自律航法による測位位置の誤差分散LδAxと衛星測位位置(Lsx、Lsy)の誤差分散LδSxと、1以下の調整係数Gxを用いて、衛星測位寄与度Kx=Gx・{LδAx/(LδSx + LδAx)}を算定し、Ly軸方向の自律航法による測位位置の誤差分散LδAyと衛星測位位置の誤差分散LδSyと、1以下の調整係数Gyを用いて、衛星測位寄与度Ky=Gy・{LδAy/(LδSy + LδAy)}を設定し、ローカル座標系上の自車位置(Lcx、Lcy)をLcx=Kx・Lsx、Lcy=Ky・Lsyより算定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を検出する位置検出システムであって、
世界座標系上で自律航法により前記移動体の位置を自律航法測位位置として測位する自律航法測位手段と、
世界座標系上で衛星測位により前記移動体の位置を衛星測位位置として測位する衛星測位手段と、
世界座標系上の前記移動体の位置を算定移動体位置として算定する位置算定部とを有し、
前記移動体の左右方向の座標を表す第1軸と前記移動体の前後方向の座標を表す第2軸を持つ、前記移動体に固定された二次元の直交座標系であるローカル座標系として、
前記位置算定部は、
前記ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第1軸方向の誤差の分布幅の前記衛星測位位置の前記第1軸方向の誤差の分布幅に対する比が大きくなるほど大きくなるように第1衛星測位寄与度を算定し、前記ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第2軸方向の誤差の分布幅の前記衛星測位位置の前記第2軸方向の誤差の分布幅に対する比が大きくなるほど大きくなるように第2衛星測位寄与度を算定する衛星測位寄与度算定手段と、
ローカル座標系上の前記移動体の前記第1軸の座標を移動体第1軸座標とし前記第2軸の座標を移動体第2軸座標として、前記第1衛星測位寄与度が大きいほどよりローカル座標系上の前記衛星測位位置の前記第1軸の座標に近づき、前記第1衛星測位寄与度が小さいほどローカル座標系上の前記自律航法測位位置の前記第1軸の座標に近づくように前記移動体第1軸座標を算定し、前記第2衛星測位寄与度が大きいほどよりローカル座標系上の前記衛星測位位置の前記第2軸の座標に近づき、前記第2衛星測位寄与度が小さいほどローカル座標系上の前記自律航法測位位置の前記第2軸の座標に近づくように前記移動体第2軸座標を算定する移動体ローカル座標算定手段と、
前記移動体第1軸座標と前記移動体第2軸座標により示されるローカル座標系上の位置を、世界座標系上の位置に座標変換し、前記算定移動体位置とする座標変換手段とを有することを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の位置検出システムであって、
過去直近に所定距離を前記移動体が移動した間の、ローカル座標系上の前記自律航法測位位置の第1軸方向の変動幅が、第2軸方向の変動幅に比べ所定程度小さいときに、当該所定程度小さくないときよりも、前記第2衛星測位寄与度が小さくなるように当該第2衛星測位寄与度を調整する第2衛星測位寄与度調整手段を有することを特徴とする位置検出システム。
【請求項3】
請求項1記載の位置検出システムであって、
前記衛星測位がマルチパスの影響を所定レベル以上強く受ける環境であるマルチパス環境にあるかどうかを検出するマルチパス環境検出手段と、
マルチパス環境にないときに、世界座標系上の前記移動体の位置を、前記位置算定部の前記算定移動体位置の算定とは異なる方式で算出する位置算出部とを有し
前記位置算定部は、マルチパス環境にあるときに、前記算定移動体位置の算定を行うことを特徴とする位置検出システム。
【請求項4】
請求項1記載の位置検出システムであって、
前記誤差の分布幅として誤差分散を用い、
前記衛星測位寄与度算定手段は、
ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第1軸方向の誤差分散をLδAx、前記衛星測位位置の前記第1軸方向の誤差分散をLδSxとして、
LδAx/(LδSx + LδAx)
に比例するように前記第1衛星測位寄与度を算定し、
ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第2軸方向の誤差分散をLδAy、前記衛星測位位置の前記第2軸方向の誤差分散をLδSyとして、
LδAy/(LδSy + LδAy)
に比例するように前記第2衛星測位寄与度を算定することを特徴とする位置検出システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の位置検出システムであって、
前記移動体は自動車であり、当該位置検出システムは前記自動車に搭載されていることを特徴とする位置検出システム。
【請求項6】
請求項5記載の位置検出システムを備えたナビゲーションシステムであって、
前記位置算定部が算定した算定移動体位置に基づいて、前記自動車の現在位置を特定する現在位置特定手段と、
前記現在位置特定手段が特定した現在位置を地図上に表した画面を生成し表示するナビゲーション画面提示手段とを有することを特徴とするナビゲーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体において自律航法による測位と衛星測位とを併用して現在位置を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体において自律航法による測位と衛星測位とを併用して位置を検出する技術としては、自律航法による測位によって求めた現在位置を、所定の契機で衛星測位によって求めた測位位置に修正する技術(たとえば、特許文献1)や、衛星測位による計測結果を観測量とし自律航法による計測結果を制御入力とするカルマンフィルタによって現在位置を推定する技術(たとえば、特許文献2)等が知られている。
【0003】
また、本出願に関連する技術として、自律航法による測位位置の誤差楕円を移動モデルを用いて算出する技術(たとえば、特許文献3)や、自律航法による測位位置の誤差を、衛星測位による計測結果と自律航法による測位結果を入力とするカルマンフィルタによって算出する技術(たとえば、特許文献4)が知られている。
【0004】
また、本出願に関連する技術として、衛星測位の疑似距離や航法データから衛星測位によって求めた測位位置の誤差楕円を算出する技術(たとえば、特許文献5、6)が知られている。
また、本出願に関連する技術として、衛星測位の疑似距離に基づいてマルチパスを検出する技術(たとえば、特許文献7)や、現在位置と地図情報に基づいて現在マルチパスが発生する環境にあるかどうかを検出する技術(たとえば、特許文献8)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-230772号公報
【特許文献2】特開2012-215491号公報
【特許文献3】特開2008-20365号公報
【特許文献4】特開平868654号公報
【特許文献5】特開2002-328157号公報
【特許文献6】特開2016-75646号公報
【特許文献7】特開2002-328157号公報
【特許文献8】特開2019-203710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動体において自律航法による測位と衛星測位とを併用して現在位置を検出する場合、マルチパスが発生する環境であるマルチパス環境下にあると衛星測位の誤差が拡大し、衛星測位を併用して検出される現在位置の誤差も大きくなる。
一方、マルチパス環境下にある期間は、自律航法による測位のみを用いて現在位置を検出するものとすると、衛星測位の誤差の影響は排除することができるが、自律航法による測位の誤差が累積し、検出される現在位置の誤差が漸増的に拡大してしまう。
そこで、本発明は、衛星測位の誤差の影響を可及的に抑制しつつ、自律航法による測位と衛星測位とを併用した測位を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、移動体の位置を検出する位置検出システムに、世界座標系上で自律航法により前記移動体の位置を自律航法測位位置として測位する自律航法測位手段と、世界座標系上で衛星測位により前記移動体の位置を衛星測位位置として測位する衛星測位手段と、世界座標系上の前記移動体の位置を算定移動体位置として算定する位置算定部とを設けたものである。
【0008】
ここで、前記移動体の左右方向の座標を表す第1軸と前記移動体の前後方向の座標を表す第2軸を持つ、前記移動体に固定された二次元の直交座標系であるローカル座標系として、前記位置算定部は、前記ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第1軸方向の誤差の分布幅の前記衛星測位位置の前記第1軸方向の誤差の分布幅に対する比が大きくなるほど大きくなるように第1衛星測位寄与度を算定し、前記ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第2軸方向の誤差の分布幅の前記衛星測位位置の前記第2軸方向の誤差の分布幅に対する比が大きくなるほど大きくなるように第2衛星測位寄与度を算定する衛星測位寄与度算定手段を備えている。
【0009】
また、前記位置算定部は、ローカル座標系上の前記移動体の前記第1軸の座標を移動体第1軸座標とし前記第2軸の座標を移動体第2軸座標として、前記第1衛星測位寄与度が大きいほどよりローカル座標系上の前記衛星測位位置の前記第1軸の座標に近づき、前記第1衛星測位寄与度が小さいほどローカル座標系上の前記自律航法測位位置の前記第1軸の座標に近づくように前記移動体第1軸座標を算定し、前記第2衛星測位寄与度が大きいほどよりローカル座標系上の前記衛星測位位置の前記第2軸の座標に近づき、前記第2衛星測位寄与度が小さいほどローカル座標系上の前記自律航法測位位置の前記第2軸の座標に近づくように前記移動体第2軸座標を算定する移動体ローカル座標算定手段を備えている。
【0010】
また、前記位置算定部は、前記移動体第1軸座標と前記移動体第2軸座標により示されるローカル座標系上の位置を、世界座標系上の位置に座標変換し、前記算定移動体位置とする座標変換手段を備えている。
ここで、この位置検出システムには、過去直近に所定距離を前記移動体が移動した間の、ローカル座標系上の前記自律航法測位位置の第1軸方向の変動幅が、第2軸方向の変動幅に比べ所定程度小さいときに、当該所定程度小さくないときよりも、前記第2衛星測位寄与度が小さくなるように当該第2衛星測位寄与度を調整する第2衛星測位寄与度調整手段を設けてもよい。
【0011】
また、このような位置検出システムに、前記衛星測位がマルチパスの影響を所定レベル以上強く受ける環境であるマルチパス環境にあるかどうかを検出するマルチパス環境検出手段と、マルチパス環境にないときに、世界座標系上の前記移動体の位置を、前記位置算定部の前記算定移動体位置の算定とは異なる方式で算出する位置算出部とを設け、前記位置算定部において、マルチパス環境にあるときに、前記算定移動体位置の算定を行うようにしてもよい。
【0012】
また、以上の位置検出システムにおいて、前記誤差の分布幅として誤差分散を用い、前記衛星測位寄与度算定手段において、ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第1軸方向の誤差分散をLδAx、前記衛星測位位置の前記第1軸方向の誤差分散をLδSxとして、
LδAx/(LδSx + LδAx)
に比例するように前記第1衛星測位寄与度を算定し、
ローカル座標系上における前記自律航法測位位置の前記第2軸方向の誤差分散をLδAy、前記衛星測位位置の前記第2軸方向の誤差分散をLδSyとして、
LδAy/(LδSy + LδAy)
に比例するように前記第2衛星測位寄与度を算定してもよい。
【0013】
また、前記移動体を自動車とし、当該位置検出システムを前記自動車に搭載してもよい。
また、この自動車に搭載した位置検出システムに加え、前記位置算定部が算定した算定移動体位置に基づいて、前記自動車の現在位置を特定する現在位置特定手段と、前記現在位置特定手段が特定した現在位置を地図上に表した画面を生成し表示するナビゲーション画面提示手段とを設けてナビゲーションシステムを構成してもよい。
【0014】
以上のような位置検出システムによれば、移動体の左右方向と前後方向とのそれぞれについて、その方向についての自律航法による測位位置の誤差と衛星測位による測位位置の誤算との関係に適合した割合で、自律航法による測位位置と衛星測位による測位位置とを寄与させて求めた位置を移動体の位置として算出できる。すなわち、衛星測位の誤差が小さい方向については衛星測位の寄与する割合を高め、衛星測位の誤差が大きい方向については衛星測位の寄与する割合を低めて移動体の位置の算出を行うことができ、これにより、自律航法による測位と衛星測位とを併用した位置の算出を、衛星測位の誤差の影響を可及的に抑制しつつ行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、衛星測位の誤差の影響を可及的に抑制しつつ、自律航法による測位と衛星測位とを併用した測位を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態において用いるローカル座標を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る衛星測位寄与度算出処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る衛星測位寄与度算出処理の処理例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る衛星測位寄与度算出処理の処理例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るマルチパス環境下現在位置算出処理の処理結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、自動車に搭載されるナビゲーションシステムへの適用を例にとり説明する。
図1に、本実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示す。
図示するように、ナビゲーションシステムは、ナビゲーション装置1と、表示装置2と、表示装置2の表示面へのタッチを検出するタッチパネル3と、車両状態センサ4と、衛星測位を行うGNSS受信器5とを備えて構成される。
ここで、車両状態センサ4は、角加速度センサ、加速度センサ、方位センサ、車速センサなどの、車両の各種状態を検出するセンサ群である。
そして、ナビゲーション装置1は、現在位置算出部11、ルート探索部12、地図データを記憶した記憶装置13、メモリ14、制御部15、表示画面生成部16、入力装置や表示装置2を用いたGUIをユーザに提供するGUI制御部17を有する。
但し、以上のナビゲーション装置1は、ハードウエア的には、マイクロプロセッサや、メモリ14や、その他のグラフィックプロセッサやジオメトリックプロセッサ等の周辺デバイスを有する一般的な構成を備えたCPU回路であって良く、この場合、以上に示したナビゲーション装置1の各部は、マイクロプロセッサが予め用意されたプログラムを実行することにより具現化するプロセスとして実現されるものであって良い。
【0018】
さて、このような構成において、ナビゲーション装置1の現在位置算出部11は、車両状態センサ4を用いた自律航法による測位と、GNSS受信器5の衛星測位とを併用して、自動車の位置を示す自車位置等を算出する測位処理を行う。ここで、この測位処理の内容については後に詳述する。
【0019】
そして、測位処理で算出した自車位置等から、地図データとのマップマッチング等によって現在位置、現在の進行方位を決定しメモリ14に設定する。
また、制御部15は、ユーザから入力装置、GUI制御部17を介して目的地の設定を受付け、これをメモリ14にセットする。
そして、制御部15は、目的地の設定を受け付けたならば、目的地に到る誘導ルートをルート探索部12に探索させる。ルート探索部12は、必要地理的範囲の地図データを記憶装置13から読み出し、メモリ14に設定されている現在位置から目的地までの最小コストの経路を、距離最小などの所定のコストモデルに基づいて誘導ルートとして算出し、算出した誘導ルートの経路データを、メモリ14にセットする。
【0020】
そして、表示画面生成部16は、メモリ14にセットされた現在位置と周辺の地理的範囲である地図表示範囲の地図画像を、地図データ記録部に記憶された地図データに基づいて描画する。また、地図画像上に、メモリ14にセットされている現在位置や誘導ルートや目的地を表す図形を描画して案内画像を生成しGUI制御部17を介して表示装置2に表示する。
【0021】
以下、上述した現在位置算出部11が行う測位処理について説明する。
現在位置算出部11は、マルチパスが発生する環境であるマルチパス環境下にあるかどうかを検出するマルチパス環境検出処理を行う。
マルチパス環境下にあるかどうかの検出は、たとえば、前掲の背景技術の欄で示した技術を適用して検出してもよいし、他の手法によって検出してもよい。
また、現在位置算出部11は、マルチパス環境下にない期間は測位処理として標準測位処理を行い、マルチパス環境下にある期間は測位処理としてマルチパス環境下測位処理を行う。
標準測位処理としては、たとえば、車両状態センサ4を用いた自律航法による測位位置と、GNSS受信器5の衛星測位位置との、予め定めた重みによる重みづけ平均によって求めた位置を自車位置とする処理や、自律航法による測位位置を自車位置としつつ当該自車位置を所定の契機でGNSS受信器5の衛星測位位置に補正する処理や、車両状態センサ4の出力とGNSS受信器5の出力と自車位置とを、制御入力と観測量と状態とするカルマンフィルタによって自車位置を推定する処理などを行うことができる。
【0022】
マルチパス環境下測位処理においては、現在位置算出部11は、衛星測位寄与度(Kx、Ky)を算出し設定する衛星測位寄与度算出処理と、設定された衛星測位寄与度(Kx、Ky)を用いて自車位置(Wcx、Wcy)を算出する自車位置算出処理を行う。
ここで、このマルチパス環境下測位処理において用いるローカル座標系を図2に示す。
図示するように、ローカル座標系LX-LYは、自車に固定された二次元の直交座標系であり、LX軸は自車の左右方向の座標を表す座標軸であり、LY軸は自車の前方方向の座標を表す座標軸である。また、実空間や実空間の写像である地図上の二次元の直交座標系(経緯度座標系等)を世界座標系WX-WYとして、ローカル座標系LX-LYの原点は、車両状態センサ4を用いた自律航法によって測位した世界座標系WX-WY上の自車の位置に相当する。
【0023】
さて、現在位置算出部11は、マルチパス環境下測位処理において、直前に算出した自車位置や車両状態センサ4として備えた方位センサで検出した自車の前方の方位から、世界座標系WX-WY上の座標(Wx、Wy)からローカル座標系LX-LY上の座標(Lx、Ly)への座標変換(アフィン変換等)を行う座標変換関数Tと、座標変換関数Tとは逆にローカル座標系LX-LY上の座標(Lx、Ly)から世界座標系WX-WY上の座標(Wx、Wy)への座標変換を行う座標変換関数T-1を設定して用いる。
【0024】
また、現在位置算出部11は、マルチパス環境下測位処理において、車両状態センサ4を用いた自律航法によって世界座標系WX-WY上の自車の位置を算出すると共に、算出した位置に座標変換関数Tを施したローカル座標系LX-LY上の位置をローカル座標系自律航法測位位置(LAx、LAy)として求めて用いる。
【0025】
また、現在位置算出部11は、マルチパス環境下測位処理において、GNSS受信器5の世界座標系WX-WY上の衛星測位位置に座標変換関数Tを施したローカル座標系LX-LY上の位置をローカル座標系衛星測位位置(LSx、LSy)として求めて用いる。
また、現在位置算出部11は、マルチパス環境下測位処理において、世界座標系WX-WY上の車両状態センサ4を用いた自律航法による測位位置の誤差楕円に座標変換関数Tを施したローカル座標系LX-LY上の誤差楕円LAeから、ローカル座標系LX-LYのLX方向の誤算分散LδAxとLY方向の誤算分散LδAyとを算出して用いる。
【0026】
世界座標系WX-WY上の自律航法による測位位置の誤差楕円の算出は、たとえば、前掲の背景技術の欄で示した技術を適用して検出してもよいし、自動車が停止している際に算出された自律航法による測位位置の分散を誤差の分散として算定される誤差楕円を固定的に用いる手法などの他の手法によって検出してもよい。
【0027】
また、現在位置算出部11は、マルチパス環境下測位処理において、世界座標系WX-WY上のGNSS受信器5の誤差楕円に座標変換関数Tを施したローカル座標系LX-LY上の誤差楕円LSeから、ローカル座標系LX-LYのLX方向の誤算分散LδSxとLY方向の誤算分散LδSyを算出して用いる。
【0028】
世界座標系WX-WY上のGNSS受信器5の誤差楕円の算出は、たとえば、前掲の背景技術の欄で示した技術を適用して検出してもよいし、車両状態センサ4の出力とGNSS受信器5の出力と自車の位置とを、制御入力と観測量と状態とするカルマンフィルタにおいて算出される誤差共分散を利用する手法などの他の手法によって検出してもよい。
【0029】
次に、マルチパス環境下測位処理において、繰り返しもしくは間欠的に行う衛星測位寄与度算出処理について説明する。
図3に、衛星測位寄与度算出処理の手順を示す。
図示するように、衛星測位寄与度算出処理では、まず、ローカル座標系のLY方向の使用比率Gyとローカル座標系のLX方向の使用比率Gxを算出する(ステップ302)。
使用比率Gyと使用比率Gxは、次のように算出する。
まず、図4a、bに示すように、直近の所定距離(たとえば、150m)走行する間のローカル座標系自律航法測位位置(LAx、LAy)の軌跡LTのLX方向の変動幅LDxとLY方向の変動幅LDyとを求める。
そして、LDx/LDyが1以下のときは、LDx/LDyが小さいほど使用比率Gyが小さくなるように使用比率Gyを設定する。たとえば、Gy=LDx/LDyとして、使用比率Gyを設定する。ただし、LDx/LDyが1以下であって、LDx/LDyが所定のしきい値(しきい値は、たとえば、0.02)より小さいときにGy=0、しきい値以上であるときにGy=1としてもよい。
【0030】
また、LDx/LDyが1以下のときは、使用比率Gxは所定値、たとえば、1を設定する。
また、LDx/LDyが1以上のときは、使用比率Gy、Gxに同じ値、たとえば、1を設定する。
したがって、図4aのように軌跡LTが直進する軌跡を表しているとき(LDx/LDyが小さいとき)に使用比率Gyは小さな値となる。また、また、図4bのように軌跡LTが右左折した軌跡を表しているとき(LDx/LDyが小さくないとき)に、使用比率Gyと使用比率Gxは同じく1となる。
【0031】
図3に戻り、次に、上述したローカル座標系LX-LYのLX方向の誤算分散LδAxと誤算分散LδSxと、ステップ302で算出した使用比率Gxを用いて、ローカル座標系のLX方向の衛星測位寄与度Kxを、
Kx=Gx・{LδAx/(LδSx + LδAx)}
により算定する(ステップ304)。
【0032】
したがって、自律航法による測位位置のLX方向の誤算分散LδAxが、GNSS受信器5の衛星測位位置のLX方向の誤算分散LδSxに比べ大きいときに衛星測位寄与度Kxは大きくなり、誤算分散LδAxが誤算分散LδSxにx比べ小さいときに衛星測位寄与度Kxは小さくなる。
【0033】
また、上述したローカル座標系LX-LYの誤算分散LδSyとLY方向の誤算分散LδAyと、ステップ302で算出した使用比率Gyを用いて、ローカル座標系のLY方向の衛星測位寄与度Kyを、
Ky=Gy・{LδAy/(LδSy + LδAy)}
により算定する(ステップ306)。
【0034】
したがって、自律航法による測位位置のLY方向の誤算分散LδAyが、GNSS受信器5の衛星測位位置のLY方向の誤算分散LδSyに比べ大きいときに衛星測位寄与度Kyは大きくなり、誤算分散LδAyが誤算分散LδSyに比べ小さいときに衛星測位寄与度Kyは小さくなる。
【0035】
最後に以上のように算定した衛星測位寄与度(Kx、Ky)を設定し(ステップ308)、衛星測位寄与度算出処理を終了する。
次に、マルチパス環境下測位処理において繰り返し行う自車位置算出処理でについて説明する。
自車位置算出処理では、衛星測位寄与度算出処理で設定された衛星測位寄与度(Kx、Ky)とローカル座標衛星測位位置(Lsx、Lsy)とを用いてローカル座標上の自車位置であるローカル座標自車位置(Lcx、Lcy)を、Lcx=Kx・Lsx、Lcy=Ky・Lsyにより算出する。
そして、ローカル座標から世界座標WX-WYへの座標変換を行う座標変換関数T-1により、ローカル座標自車位置(Lcx、Lcy)を世界座標WX-WY上の座標に変換し自車位置(Wcx、Wcy)とする。
ローカル座標LX-LYの原点の世界座標系WX-WY上の位置は、自律航法で測位した世界座標系WX-WY上の自車の位置であるので、自車位置Wcxは、自律航法によって測位した世界座標系WX-WY上の自車の位置を、LX軸方向について、GNSS受信器5で衛星測位した世界座標系WX-WY上の位置に、衛星測位寄与度Kx分、引きつけた位置となる。同様に自車位置Wcyは、車両状態センサ4を用いた自律航法によって測位した世界座標系WX-WY上の自車の位置を、LY方向について、GNSS受信器5で衛星測位した世界座標系WX-WY上の位置に、衛星測位寄与度Ky分、引きつけた位置となる。
以上、自車位置算出処理について説明した。
【0036】
ここで、図5は、自律航法による測位位置のローカル座標系LX-LY上の誤差楕円LAeと、GNSS受信器5のローカル座標系LX-LY上の誤差楕円LSeの例を示したものであり、図示するように、誤差楕円がLX方向に長い場合、誤差楕円から求まるLX方向の誤差分散は大きくなり、LX方向に短い場合、誤差楕円から求まるLX方向の誤差分散は小さくなる。また、誤差楕円がLY方向に長い場合、誤差楕円から求まるLY方向の誤差分散は大きくなり、LY方向に短い場合、誤差楕円から求まるLY方向の誤差分散は小さくなる。
【0037】
また、一般的には、自律航法による測位位置は、比較的精度よく速度を検出できる車速センサを用いて測位される自動車の進行方向についての誤算分散LδAyが小さく、自律航法においては誤差が蓄積される方位を用いて測位される自動車の左右方向についての誤算分散LδAxが大きくなる。
【0038】
また、一般的には、GNSS受信器5による衛星測位位置の誤算分散は、自動車の進行方向についての誤算分散LδSyが、自動車の左右方向についての誤算分散LδSxに比べ大きくなる傾向がある。
すなわち、自律航法による測位位置の誤差とGNSS受信器5による衛星測位位置の誤算との関係は、自動車の進行方向と左右方向とで異なる。
そして、以上のマルチパス環境下測位処理では、上述のように、自動車の左右方向に相当するLX方向についての自律航法による測位位置の誤算分散LδAxとGNSS受信器5による衛星測位位置の誤算分散LδSxとの大小の関係に応じて衛星測位寄与度Kxを設定し、車両状態センサ4を用いた自律航法によって測位した自車の位置を、自動車の左右方向(LX方向)について、衛星測位寄与度Kxに応じた割合、GNSS受信器5で衛星測位した位置に引きつけている。また、自動車の進行方向に相当するLY方向についての自律航法による測位位置の誤算分散LδAyとGNSS受信器5による衛星測位位置の誤算分散LδSyとの大小の関係に応じて衛星測位寄与度Kyを設定し、車両状態センサ4を用いた自律航法によって測位した自車の位置を、自動車の進行方向(LY方向)について、衛星測位寄与度Kyに応じた割合、GNSS受信器5で衛星測位した位置に引きつけている。
【0039】
したがって、自動車の進行方向と左右方向とのそれぞれについて、その方向についての自律航法による測位位置の誤差とGNSS受信器5による衛星測位位置の誤算との関係に適合した割合で、自律航法による測位位置とGNSS受信器5による衛星測位位置とを寄与させた位置を自車位置として算出できる。すなわち、衛星測位の誤差が小さい方向については衛星測位位置の寄与する割合を高め、衛星測位の誤差が大きい方向については衛星測位位置の寄与する割合を低めて自車位置の算出を行うことができ、これにより、自律航法による測位と衛星測位とを併用した自車位置の算出を、衛星測位の誤差の影響を可及的に抑制しつつ行うことができる。
【0040】
また、以上のマルチパス環境下測位処理では、上述のように、使用比率Gyによって、使用比率Gyを乗じて算出する衛星測位寄与度Kyを、自車が一定方向に直進しているときには衛星測位寄与度Kyが小さくなるように設定している。
このようにすることにより、マルチパス環境下において顕著となる、GNSS受信器5による衛星測位位置の大きな進行方向の遅れの、自車位置の算出への影響を抑制することができる。
以上より、マルチパス環境下測位処理を行うことにより、車両状態センサ4を用いた自律航法による測位位置とGNSS受信器5の衛星測位位置との、予め定めた重みによる重みづけ平均によって求めた位置を自車位置とする測位処理を行った場合には、GNSS受信器5の衛星測位位置が遅れ、図6aに示すように真の走行軌跡P1に対して自車位置の走行軌跡P2が短くなってしまうように現在位置が算出されてしまう高架下等のマルチパス環境下においても、図6bに示すように、比較的に真の走行軌跡P1に近い自車位置の走行軌跡P2が得られる現在位置がより誤差の少なく算出されることが期待できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、以上の実施形態は、衛星測位寄与度算出処理において、使用比率Gyと使用比率Gxを用いずに、
Kx=LδAx/(LδSx + LδAx)
Ky=LδAy/(LδSy + LδAy)
により、衛星測位寄与度Kx、衛星測位寄与度Kyを算出するようにしてもよい。
【0042】
また、両状態センサを用いた自律航法による測位位置とGNSS受信器5の衛星測位位置の誤差の評価に誤差分散LδAx、LδAy、LδSx、LδSyを用いたが、これは誤差分散に代えて標準偏差などの、誤差の分布幅を表す他の指標を用いて行ってもよい。
また、以上の実施形態は自動車に限らず、任意の移動体の位置の算出に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…ナビゲーション装置、2…表示装置、3…タッチパネル、4…車両状態センサ、5…GNSS受信器、11…現在位置算出部、12…ルート探索部、13…記憶装置、14…メモリ、15…制御部、16…表示画面生成部、17…GUI制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6