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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154201
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】監視方法および監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20241023BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20241023BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H04N7/18 D
B66C13/00 D
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067909
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤山 映
(72)【発明者】
【氏名】宮本 憲都
(72)【発明者】
【氏名】田淵 朝人
【テーマコード(参考)】
2D015
5C054
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB06
2D015HA03
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE02
5C054FC12
5C054FE14
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】撮影装置による撮影範囲を変更した場合にも、撮影領域に対して予め設定したチェック対象エリアを区画する境界枠を、撮影画像データに対して正確な位置に表示できる監視方法および監視システムを提供する。
【解決手段】
演算装置3に、区画用標識5の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルを記憶させておく。撮影領域40には複数の区画用標識5を配設し、撮影装置2により複数の区画用標識5を撮影する。演算装置3により、撮影装置2から入力された撮影画像データ10と標識検出モデルとに基づいて、撮影画像データ10でのそれぞれの区画用標識5の位置を検出し、その検出データに基づいて撮影画像データ10での隣り合う区画用標識5どうしを線Lで結ぶことによりチェック対象エリア12を区画する境界枠13を作成し、その境界枠13を管理画像データ11に表示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置による撮影によって取得した撮影領域の撮影画像データを演算装置に入力し、前記演算装置により前記撮影画像データにチェック対象エリアを表示した管理画像データをモニタに表示する監視方法において、
前記演算装置には、区画用標識の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルを予め記憶させておき、
前記撮影領域には複数の前記区画用標識を配設して、前記撮影装置により前記撮影領域とともに複数の前記区画用標識を撮影し、
前記演算装置により、前記撮影装置から入力された前記撮影画像データと前記標識検出モデルとに基づいて、前記撮影画像データでのそれぞれの前記区画用標識の位置を検出し、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの隣り合う前記区画用標識どうしを線で結ぶことにより前記チェック対象エリアを区画する境界枠を作成し、その作成した前記境界枠を前記管理画像データに表示することを特徴とする監視方法。
【請求項2】
前記境界枠を作成する演算処理では、前記演算装置によって検出したそれぞれの前記区画用標識の前記撮影画像データでの座標点を算出して、その算出した複数の前記区画用標識の座標点どうしの中心点を算出し、前記中心点とそれぞれの前記区画用標識の座標点を結ぶベクトルをそれぞれ算出して、前記中心点から予め設定した所定方向に延在する基準直線とそれぞれの前記ベクトルとのなす角度を算出し、前記なす角度が小さい順、または、前記なす角度が大きい順に、隣り合う前記区画用標識の座標点どうしを線で結び、前記なす角度が最も小さい前記区画用標識の座標点と前記なす角度が最も大きい前記区画用標識の座標点とを線で結ぶことにより前記境界枠を作成する請求項1に記載の監視方法。
【請求項3】
前記演算装置には、複数種類の前記区画用標識の画像データをそれぞれ教師データとして機械学習された前記標識検出モデルを予め記憶させておき、
前記撮影領域には複数種類の前記区画用標識をそれぞれ複数配設して、前記撮影装置により複数種類の前記区画用標識を撮影し、
前記演算装置により、前記撮影装置から入力された前記撮影画像データと前記標識検出モデルとに基づいて、前記区画用標識の種類毎にそれぞれ前記境界枠を作成し、その作成した前記区画用標識の種類毎の前記境界枠をそれぞれ前記管理画像データに表示する請求項1または2に記載の監視方法。
【請求項4】
前記演算装置には、除外用標識の画像データを教師データとして機械学習された前記標識検出モデルを予め記憶させておき、
前記撮影領域に複数の前記除外用標識を配設して、前記撮影装置により複数の前記除外用標識を撮影し、
前記演算装置により、前記撮影装置から入力される前記撮影画像データと前記標識検出モデルとに基づいて、前記撮影画像データでのそれぞれの前記除外用標識の位置を検出し、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの隣り合う前記除外用標識どうしを線で結ぶことにより前記チェック対象エリアから除外する除外範囲を区画する境界枠を作成し、その作成した前記除外範囲を区画する境界枠の枠内を除外した前記チェック対象エリアを前記管理画像データに表示する請求項1または2に記載の監視方法。
【請求項5】
撮影領域を撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって取得された撮影画像データが入力される演算装置と、前記演算装置に通信可能に接続されたモニタとを備えて、前記演算装置により前記撮影画像データにチェック対象エリアが表示された管理画像データがモニタに表示される監視システムにおいて、
前記演算装置には、区画用標識の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルが予め記憶されていて、
前記撮影領域には複数の前記区画用標識が配設され、前記撮影装置により前記撮影領域とともに複数の前記区画用標識が撮影され、
前記演算装置により、前記撮影装置から入力された前記撮影画像データと前記標識検出モデルとに基づいて、前記撮影画像データでのそれぞれの前記区画用標識の位置が検出され、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの隣り合う前記区画用標識どうしを線で結ぶことにより前記チェック対象エリアを区画する境界枠が作成され、その作成された前記境界枠が前記管理画像データに表示される構成であることを特徴とする監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視方法および監視システムに関し、さらに詳しくは、監視に使用する撮影装置を移動させた場合や撮影装置のズーム倍率を変更した場合にも、撮影領域に対して予め設定したチェック対象エリアを区画する境界枠を、撮影装置によって取得される撮影画像データに対して正確な位置に表示できる監視方法および監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場などの監視に使用する装置やシステムが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の作業機械の警報装置では、作業機械の上部旋回体に設置したビデオカメラ(撮影装置)により上部旋回体の後方を撮影し、ビデオカメラによって取得した撮影画像データに警報エリア(チェック対象エリア)を表示した管理画像データをモニタに表示させる構成になっている。この警報装置では、作業機械の運転手が、撮影画像データが表示されるモニタを見ながら、上下調整ボリュームと左右調整ボリュームとを用いてモニタ上で警報エリアを区画する境界枠の位置と大きさを設定する構成にしている。
【0003】
特許文献1に記載の発明では、監視中にビデオカメラを移動させることやビデオカメラのズーム倍率を変更することは想定しておらず、固定されたビデオカメラによって取得される一定の撮影範囲に対して、モニタの画面を基準にして警報エリアの境界枠を設定している。そのため、監視中にビデオカメラの移動やズーム倍率の変更により、ビデオカメラによる撮影範囲が変化した場合には、モニタに表示される撮影範囲は変わるが、モニタ上に表示される警報エリアを区画する境界枠の位置と大きさは変化しない状態になる。そのため、ビデオカメラによる撮影範囲を変化させる場合には、撮影領域に対する警報エリアを区画する境界枠を、撮影画像データに対して正確な位置に表示させることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9―125466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、監視に使用する撮影装置を移動させた場合や撮影装置のズーム倍率を変更した場合にも、撮影領域に対して予め設定したチェック対象エリアを区画する境界枠を、撮影装置によって取得される撮影画像データに対して正確な位置に表示できる監視方法および監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の監視方法は、撮影装置による撮影によって取得した撮影領域の撮影画像データを演算装置に入力し、前記演算装置により前記撮影画像データにチェック対象エリアを表示した管理画像データをモニタに表示する監視方法において、前記演算装置には、区画用標識の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルを予め記憶させておき、前記撮影領域には複数の前記区画用標識を配設して、前記撮影装置により前記撮影領域とともに複数の前記区画用標識を撮影し、前記演算装置により、前記撮影装置から入力された前記撮影画像データと前記標識検出モデルとに基づいて、前記撮影画像データでのそれぞれの前記区画用標識の位置を検出し、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの隣り合う前記区画用標識どうしを線で結ぶことにより前記チェック対象エリアを区画する境界枠を作成し、その作成した前記境界枠を前記管理画像データに表示することを特徴とする。
【0007】
本発明の監視システムは、撮影領域を撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって取得された撮影画像データが入力される演算装置と、前記演算装置に通信可能に接続されたモニタとを備えて、前記演算装置により前記撮影画像データにチェック対象エリアが表示された管理画像データがモニタに表示される監視システムにおいて、前記演算装置には、区画用標識の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルが予め記憶されていて、前記撮影領域には複数の前記区画用標識が配設され、前記撮影装置により前記撮影領域とともに複数の前記区画用標識が撮影され、前記演算装置により、前記撮影装置から入力された前記撮影画像データと前記標識検出モデルとに基づいて、前記撮影画像データでのそれぞれの前記区画用標識の位置が検出され、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの隣り合う前記区画用標識どうしを線で結ぶことにより前記チェック対象エリアを区画する境界枠が作成され、その作成された前記境界枠が前記管理画像データに表示される構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮影領域に複数の区画用標識を配設することで、撮影領域に対してチェック対象エリアを区画する境界枠を設定し、撮影装置により撮影領域とともに複数の区画用標識を撮影する。演算装置には区画用標識の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルを予め記憶させておくことで、演算装置により、撮影装置から入力された撮影画像データと標識検出モデルとに基づいて、撮影画像データでのそれぞれの区画用標識の位置を検出できる。その検出データに基づいて撮影画像データでの隣り合う区画用標識どうしを線で結ぶことによりチェック対象エリアを区画する境界枠を作成できる。そして、その作成した境界枠を管理画像データに表示する構成にすることで、監視中に撮影装置を移動させた場合や撮影装置のズーム倍率を変更した場合にも、撮影領域に対して予め設定したチェック対象エリアを区画する境界枠を、撮影画像データに対して正確な位置に表示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態の監視システムを使用して、クレーンによる荷役作業の監視を行っている状況を側面視で例示する説明図である。
図2図1の撮影装置によって取得した撮影画像データを例示する説明図である。
図3図1のモニタに表示される管理画像データを例示する説明図である。
図4図3のチェック対象エリアを区画する境界枠を作成するプロセスを例示する説明図である。
図5】撮影領域に2種類の区画用標識を配設して、撮影画像データに2つのチェック対象エリアを表示した管理画像データを例示する説明図である。
図6】撮影領域に区画用標識と除外用標識を配設して、撮影画像データに除外範囲を設けたチェック対象エリアを表示した管理画像データを例示する説明図である。
図7】クレーンによって吊り下げている吊具と吊荷にそれぞれ別々の種類の区画用標識を配設して、吊具の範囲と吊荷の範囲をそれぞれチェック対象エリアとして撮影画像データに表示した管理画像データを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の監視方法および監視システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示する本発明の監視システム1は、建設現場などの監視に使用するシステムである。この実施形態では、監視システム1を使用して、クレーン20によって吊体23(吊具24および吊荷25)を吊上げて移動させる荷役作業を監視する場合を例示する。本発明の監視システム1は、クレーン20による荷役作業に限らず、他にも建設現場の様々な作業の監視に使用できる。本発明の監視システム1は、建設現場での監視に限らず、他にも様々なシチュエーションの監視に使用することができる。
【0012】
図1および図2に例示するように、監視システム1は、撮影領域40を撮影する撮影装置2と、撮影装置2によって取得された撮影画像データ10が入力される演算装置3と、演算装置3に通信可能に接続されたモニタ4a、4bとを備えている。監視システム1では、さらに、複数の区画用標識5を使用する。この実施形態の監視システム1は、さらに、演算装置3に通信可能に接続された警告手段7を有している。
【0013】
撮影領域40は監視の対象となる領域であり、本発明では撮影領域40の一部の範囲を、監視においてチェックを行う対象となるチェック対象エリア12として設定する。本発明では撮影領域40に対してチェック対象エリア12を区画する境界枠13を設定する。
【0014】
具体的には例えば、クレーン20による荷役作業の監視を行う場合には、吊体23を吊り上げているときに玉掛作業等を行う人30が待機する面や、吊体23を着床させる面などが撮影領域40となる。撮影領域40は地面に限らず、陸上の建造物や船舶、水上構造体などの床面を撮影領域40とすることもできる。例えば、陸地や船舶に配置されている置荷の上面や、吊荷25を着床させる運搬機の荷台の上面などを撮影領域40とすることもできる。水上の監視を行う場合には、例えば、水面を撮影領域40とすることもできる。
【0015】
この実施形態では、玉掛作業等を行う人30が待機する地面を撮影領域40とし、クレーン20による荷役作業において吊体23を移動させる可能性があり、人30が侵入することが比較的危険な警戒エリアをチェック対象エリア12として設定している。この実施形態では、撮影領域40が平坦面である場合を例示しているが、例えば、起伏や溝部などがある面を撮影領域40とすることもできる。
【0016】
撮影装置2には例えば、動画を撮影可能なデジタルカメラなどが使用される。撮影装置2は、例えば、撮影領域40の上方に配置される。撮影領域40には複数の区画用標識5が配設される。それぞれの区画用標識5は、チェック対象エリア12を区画する境界枠13とする位置に配設される。複数の区画用標識5は互いに間隔をあけて配設される。この実施形態では、平面視で六角形状の境界枠13とする六ヶ所の角部にそれぞれ区画用標識5が配設されている。撮影領域40に配設する区画用標識5の数や配置は、撮影領域40に対して設定するチェック対象エリア12の境界枠13の形状や大きさに応じて適宜決定できる。
【0017】
この監視システム1では、撮影装置2により、撮影領域40とともに、撮影領域40に配設されている複数の区画用標識5が撮影される。この実施形態では、クレーン20が備えている傾動可能なブーム21の先端部21aに撮影装置2が設置されている。ブーム21の先端部21aから吊り下げられた吊ワイヤ22の下端には吊体23(吊具24、吊荷25)が設けられている。なお、以下の説明での吊体23は、吊具24に吊荷25を吊下げていない状態では吊具24を示し、吊具24に吊荷25を吊下げている状態では吊具24および吊荷25を示している。
【0018】
この実施形態の撮影装置2の撮影方向は下向きに設定され、下方に位置する吊体23とその周辺領域(撮影領域40)が撮影される構成になっている。図1では、撮影装置2による撮影範囲を一点鎖線で示している。この実施形態のように、撮影装置2をクレーン20のブーム21の先端部21aに設置する場合には、ブーム21の上下方向の傾斜角度が変更された場合にも、撮影装置2による撮影方向が下向きに維持される構成にするとよい。この実施形態では、ブーム21の先端部21aに撮影装置2の撮影方向を下向きに維持する回動機構2aが設けられている。ブーム21の先端部21aに既設のクレーンカメラが設けられている場合には、そのクレーンカメラを撮影装置2として使用することもできる。既設のクレーンカメラとは別に撮影装置2を追設することもできる。
【0019】
撮影装置2の設置位置や撮影装置2による撮影方向は、撮影領域40とともに撮影領域40に配設されている複数の区画用標識5を撮影できる構成であれば特に限定されない。例えば、撮影装置2を建物や柱、船の構造体などに設置することができる。また、例えば、撮影装置2を搭載したドローンなどの飛行体を撮影領域40の上方に飛行(ホバリング)させた状態にして、飛行体に搭載した撮影装置2によって撮影領域40とともに複数の区画用標識5を撮影する構成にすることもできる。
【0020】
図2は、撮影装置2によって取得される撮影画像データ10を例示している。撮影装置2によって所定の撮影周期毎に撮影画像データ10が取得され、撮影装置2によって取得された撮影画像データ10は、演算装置3に逐次入力される。この実施形態では、撮影装置2によって取得された撮影画像データ10が、演算装置3に無線通信で送信される構成になっている。例えば、撮影装置2と演算装置3とが有線で通信可能に接続された構成にすることもできる。なお、図中の撮影画像データ10では、吊ワイヤ22を省略している。
【0021】
区画用標識5は、板状部材やシート状部材に目印となる図形や文字が付されたものである。区画用標識5は、厚さが1mm以上50mm以下の薄い部材で構成するとよい。図2に例示するように、この実施形態では平面視で四角形状の区画用標識5を使用している。この実施形態の区画用標識5は、四角を十字に四分割した図形が付されていて、その図形の隣り合う区画どうしは異なる色で彩色されている。区画用標識5の形状や図形のデザイン、色彩などはこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、区画用標識5は、円形を十字に四分割したデザインなどにすることもできる。
【0022】
区画用標識5は、撮影領域40に存在する人30や人30が身に着ける装備品(ヘルメットや帽子など)と識別できる色彩やデザインにすることが好ましい。区画用標識5の色彩は、例えば、黒色と黄色の組み合わせや、黒色と赤色の組み合わせにするとよい。区画用標識5の実寸の大きさ(直径の実寸法或いは縦横の実寸法)は特に限定されないが、例えば、200mm~500mm程度である。区画用標識5として公知の対空標識を用いることもできる。
【0023】
この実施形態では、区画用標識5を地面に直接載置している場合を例示しているが、例えば、撮影領域40にある備品や設備に区画用標識5を付設することもできる。例えば、区画用標識5をカラーコーン(登録商標)などに付設した状態で撮影領域40に配設することもできる。水上の監視を行う場合には、例えば、水上に係留した浮体(ブイなど)に区画用標識5を付設することで、水上に区画用標識5を配設することもできる。
【0024】
演算装置3には、コンピュータ等を用いる。この実施形態では、クレーン20の操縦室に演算装置3を配置しているが、演算装置3の配置は特に限定されず他の位置に配置することもできる。演算装置3には、区画用標識5の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルが予め記憶されている。この標識検出モデルは、撮影装置2から入力された撮影画像データ10でのそれぞれの区画用標識5の座標位置を検出するためのコンピュータプログラムである。
【0025】
演算装置3には、教師データとして、区画用標識5の多数の画像データが記憶されている。区画用標識5の特徴を人工知能(AI)に機械学習させることで、撮影画像データ10での区画用標識5の座標位置を検出する標識検出モデルを生成することが可能である。演算装置3による機械学習の手法としては、例えば、ディープラーニングや、ニュートラルネットワーク、回帰、クラスタリング、パターンマッチングなどが例示できる。
【0026】
図3に例示するように、演算装置3は、予め記憶されている標識検出モデルと、撮影装置2から入力された撮影画像データ10とに基づいて、撮影画像データ10でのそれぞれの区画用標識5の位置(座標位置)を検出する。この実施形態の演算装置3は、撮影画像データ10において区画用標識5として検出した検出枠B(所謂、バウンディングボックス)の中心の座標点Pを、撮影画像データ10での区画用標識5の座標位置として算出する構成になっている。図中では、区画用標識5として検出した検出枠Bを太い破線の四角枠で示している。
【0027】
演算装置3は、さらに、撮影画像データ10でのそれぞれの区画用標識5の位置の検出データに基づいて、撮影画像データ10での隣り合う区画用標識5(座標点P)どうしを線Lで結ぶことによりチェック対象エリア12を区画する境界枠13を作成する。そして、演算装置3は、その作成した境界枠13を撮影画像データ10に表示した管理画像データ11を生成する。そして、演算装置3は、その生成した管理画像データ11をそれぞれのモニタ4a、4bに表示する構成になっている。
【0028】
この実施形態では、演算装置3によって作成した境界枠13の枠内をチェック対象エリア12として管理画像データ11に表示する場合を例示している。例えば、演算装置3によって作成した境界枠13の枠外をチェック対象エリア12として管理画像データ11に表示する構成にすることもできる。
【0029】
演算装置3によってチェック対象エリア12を区画する境界枠13を作成するプロセスを、図4を参照してより具体的に説明する。なお、図4では図の見やすさを考慮して区画用標識5を省略している。
【0030】
図4に例示するように、演算装置3は、予め記憶されている標識検出モデルと、撮影装置2から入力された撮影画像データ10とに基づいて、複数の区画用標識5のそれぞれの、撮影画像データ10での2次元の座標点Pn(xn、yn)を算出する。この実施形態では、撮影領域40に配設されている6つの区画用標識5のそれぞれの座標点P1(x1、y1)~P6(x6、y6)を算出している。
【0031】
次いで、演算装置3は、その算出した複数の区画用標識5の座標点Pn(xn、yn)どうしの中心点C(xc、yc)の座標位置を算出する。中心点CのX座標はそれぞれの区画用標識5の座標点P(P1~P6)のX座標の合計値を、配設している区画用標識5の数で割ることで算出する。即ち、この実施形態のように、撮影領域40に6つの区画用標識5が配設されている場合には、中心点CのX座標はxc=(x1+x2+x3+x4+x5+x6)/6の数式で算出する。同様に、中心点CのY座標はそれぞれの区画用標識5の座標点P(P1~P6)のY座標の合計値を、配設している区画用標識5の数で割ることで算出する。即ち、この実施形態では、中心点CのY座標はyc=(y1+y2+y3+y4+y5+y6)/6の数式で算出する。
【0032】
次いで、演算装置3は、中心点C(xc、yc)とそれぞれの区画用標識5の座標点Pn(xn、yn)を結ぶベクトルV(V1~V6)をそれぞれ算出する。次いで、中心点C(xc、yc)から予め設定した所定方向に延在する基準直線RとそれぞれのベクトルV(V1~V6)とのなす角度D(D1~D6)を算出する。そして、なす角度Dが小さい順、または、なす角度Dが大きい順に、隣り合う区画用標識5の座標点Pn(xn、yn)どうしを線L(L1~L5)で結ぶ。最後に、なす角度D(D1)が最も小さい区画用標識5の座標点P1(x1、y1)となす角度D(D6)が最も大きい区画用標識5の座標点P6(x6、y6)とを線L(L6)で結ぶことにより境界枠13を作成する。なお、この実施形態では、中心点C(xc、yc)から左方向に延在する基準直線Rを例示しているが、基準直線Rの延在する方向は他の方向に設定することもできる。
【0033】
演算装置3によって生成された管理画像データ11は、モニタ4a、4bに逐次表示される。この実施形態では、演算装置3が生成した管理画像データ11が、クレーン20の操縦室に設置されたモニタ4aに送信される構成になっている。また、演算装置3によって生成された管理画像データ11は、クレーン20による荷役作業を監視する管理者が使用する管理装置に送信され、管理装置のモニタ4bに管理画像データ11が表示される構成になっている。演算装置3により、撮影装置2による撮影周期毎に境界枠13を作成する演算処理が行われて管理画像データ11が逐次生成されることで、撮影装置2によって撮影されたリアルタイムの撮影画像データ10にチェック対象エリア12を区画する境界枠13が表示された管理画像データ11が、モニタ4a、4bに表示された状態になる。
【0034】
なお、この監視システム1は、クレーン20の操縦室のモニタ4aまたは管理装置のモニタ4bのいずれかのみに管理画像データ11が表示される構成にすることもできる。また、この監視システム1は、操縦室のモニタ4aや管理装置のモニタ4b以外のモニタに管理画像データ11が表示される構成にすることもできる。
【0035】
管理画像データ11では、チェック対象エリア12を区画する境界枠13を視認し易くするために、境界枠13が背景となる撮影領域40と識別できる色で表示される構成にするとよい。また、管理画像データ11では、チェック対象エリア12の範囲を視認し易くするために、チェック対象エリア12が背景となる撮影領域40と識別できる色で表示される構成にするとよい。
【0036】
この実施形態の監視システム1では、さらに、演算装置3に人30の画像データを教師データとして機械学習された人検出モデルが記憶されている。この実施形態では、演算装置3に、人30の画像データとして、撮影領域40で作業を行う人30の画像データが記憶されている。演算装置3は、人検出モデルと撮影画像データ10とに基づいて、撮影画像データ10での人30の有無と、人30が存在する場合にはその人30の位置(座標位置)を検出し、その検出結果を管理画像データ11に表示する構成になっている。図3では、人30として検出した検出枠Bを破線で示している。
【0037】
この実施形態の監視システム1では、さらに、演算装置3は、人30の検出データに基づいて、管理画像データ11においてチェック対象エリア12内に人30が存在するか否かを判定し、チェック対象エリア12内に人30が存在していると判定した場合には、警告手段7に対して警告を発する指示を送信する構成になっている。
【0038】
警告手段7は、監視を行う管理者やクレーン20の操縦者、チェック対象エリア12に侵入している人30などに対して、警告を発する手段である。警告手段7としては、警報器や警告灯、携帯用端末(腕時計や携帯電話など)等が例示できる。演算装置3から送信された警告を発する指示を警告手段7が受信すると、警告手段7によってチェック対象エリア12内に人30が存在することを示す警告が発生する構成になっている。
【0039】
この実施形態では、警告手段7として、クレーン20に警報器が設置されていて、警告として警告音が発生する構成になっている。例えば、撮影領域40で作業を行う人30が警告手段7として携帯用端末を携帯し、演算装置3から送信された警告を発する指示を携帯用端末が受信すると、その携帯用端末から警告音が発生する構成や携帯用端末が振動する構成にすることもできる。例えば、演算装置3により、チェック対象エリア12内に存在する人30が携帯する携帯用端末のみに警告を発する指示が送信される構成にすることもできる。なお、本発明の監視システム1において、前述した人30を検出する機能や、チェック対象エリア12内に人30が存在している場合に警告を発する機能は必須の構成ではなく、必要に応じて任意に設けることができる。
【0040】
次に、この監視システム1を使用した監視方法を説明する。
【0041】
事前準備作業として、演算装置3に、教師データとして、使用する区画用標識5の多数の画像データを記憶させ、区画用標識5の特徴を人工知能に機械学習させることで標識検出モデルを生成する。生成した標識検出モデルは演算装置3に記憶させておく。この実施形態のように、監視システム1によって撮影領域40に存在する人30を検出する場合には、演算装置3に、教師データとして、人30に関する多数の画像データを記憶させておき、人30の特徴を人工知能に機械学習させることで人検出モデルを生成する。生成した人検出モデルは演算装置3に記憶させておく。
【0042】
また、撮影領域40を撮影する撮影装置2をセッティングする。図1に例示するように、この実施形態では、クレーン20のブーム21の先端部21aに撮影装置2を設置している。既設のクレーンカメラを撮影装置2として使用する場合には、前述した撮影装置2をセッティングする作業は不要である。例えば、ドローンなどの飛行体に搭載した撮影装置2によって撮影領域40を撮影する構成にする場合には、飛行体に撮影装置2を設置する。
【0043】
図2に例示するように、撮影領域40には複数の区画用標識5を配設する。それぞれの区画用標識5は、チェック対象エリア12を区画する境界枠13とする位置に配設する。以上により、監視システム1の事前準備作業は完了する。
【0044】
撮影領域40の監視を行う際には、撮影装置2により撮影領域40とともに撮影領域40に配設されている複数の区画用標識5を撮影する。撮影装置2によって取得された撮影画像データ10は、演算装置3に逐次入力する。
【0045】
演算装置3により、予め記憶されている標識検出モデルと、撮影装置2から入力された撮影画像データ10とに基づいて、撮影画像データ10でのそれぞれの区画用標識5の位置を検出し、その検出データに基づいて撮影画像データ10での隣り合う区画用標識5どうしを線Lで結ぶことによりチェック対象エリア12を区画する境界枠13を作成する。そして、演算装置3により、その作成した境界枠13を撮影画像データ10に表示した管理画像データ11を生成する。この実施形態では、演算装置3により、作成した境界枠13の枠内をチェック対象エリア12として撮影画像データ10に表示する管理画像データ11を生成している。そして、演算装置3により、その生成した管理画像データ11をそれぞれのモニタ4a、4bに送信して、モニタ4a、4bに管理画像データ11を表示させる。
【0046】
クレーン20の操縦者はモニタ4aに表示される管理画像データ11を視認することで、チェック対象エリア12とその近傍の状況を監視しながら、クレーン20の操縦を行う。管理者は管理装置のモニタ4bに表示される管理画像データ11を視認しながらクレーン20による荷役作業の監視を行う。
【0047】
この実施形態では、さらに、演算装置3により、予め記憶されている人検出モデルと、撮影装置2から入力された撮影画像データ10とに基づいて、撮影画像データ10での人30の有無と人30が存在する場合にはその人30の位置を検出し、管理画像データ11においてチェック対象エリア12内に人30が存在するか否かを判定する。そして、演算装置3により、チェック対象エリア12内に人30が存在していると判定した場合には、警告手段7に対して警告を発する指示を送信する。警告手段7が、演算装置3から送信された警告を発する指示を受信すると、チェック対象エリア12内に人30が存在することを示す警告が発せられる。チェック対象エリア12内に人30が存在しない状態になると、演算装置3から警告手段7に対して警告を発する指示の送信は終了し、警告手段7による警告が終了する。
【0048】
このように、本発明によれば、撮影領域40に複数の区画用標識5を配設することで、撮影領域40に対してチェック対象エリア12を区画する境界枠13を設定し、撮影装置2により撮影領域40とともに複数の区画用標識5を撮影する。演算装置3には標識検出モデルを予め記憶させておくことで、演算装置3により、撮影装置2から入力された撮影画像データ10と標識検出モデルとに基づいて、撮影画像データ10でのそれぞれの区画用標識5の位置を検出できる。その検出データに基づいて撮影画像データ10での隣り合う区画用標識5どうしを線Lで結ぶことによりチェック対象エリア12を区画する境界枠13を作成できる。そして、その作成した境界枠13を管理画像データ11に表示する構成にすることで、監視中に撮影装置2を移動させた場合や撮影装置2のズーム倍率を変更した場合にも、撮影領域40に対して予め設定したチェック対象エリア12を、撮影画像データ10に対して正確な位置に表示することが可能になる。
【0049】
従来のようなモニタの画面を基準にしてチェック対象エリア(警報エリア)の境界枠を設定する方法では、監視中に撮影装置による撮影範囲を変える場合には、その都度、撮影装置の新たな撮影範囲に合わせてモニタ上でチェック対象エリアの境界枠の位置やサイズを設定し直す必要があった。それに対して、本発明では、演算装置3により、撮影領域40に配設している複数の区画用標識5を基準にして、チェック対象エリア12を区画する境界枠13を作成するので、監視中に撮影装置2による撮影範囲を変えた場合にも、前述した従来のモニタ上で境界枠を設定し直す作業が不要であり、管理画像データ11において撮影領域40に対して設定したチェック対象エリア12の境界枠13を正確な位置に正確な大きさで表示することが可能になる。本発明では、撮影装置2の撮影範囲を変更しながらチェック対象エリア12を監視することが可能になるので、当業者にとっては非常に有用である。
【0050】
本発明では、撮影領域40に複数の区画用標識5を配設していることで、撮影領域40に存在している人30も、チェック対象エリア12の境界枠13として設定されている位置を把握できるというメリットもある。また、撮影領域40に対して複数の区画用標識5を配設するので、実際に現場で撮影領域40の状況を確認しつつ、チェック対象エリア12の境界枠13を所望の位置に設定できる。さらに、本発明では、配設する区画用標識5の数や配置を変えることで、様々な形状や広さのチェック対象エリア12(境界枠13)を簡易に設定できる。チェック対象エリア12の形状や広さを変更する場合にも、区画用標識5の配置を変えるだけでよいため、非常に利便性が高い。また、本発明の監視システム1は、既存のクレーン20やその他の既存の建設機械などにも簡易に適用することができるので非常に汎用性が高い。
【0051】
厚さが1mm以上50mm以下の区画用標識5を使用すると、撮影画像データ10に写る区画用標識5の影の範囲が狭くなるので、標識検出モデルによる区画用標識5の検出精度を高めるには有利になる。なお、50mmよりも厚い区画用標識5を使用した場合にも、標識検出モデルによって区画用標識5を検出することは可能である。
【0052】
この実施形態のように、演算装置3により、予め記憶された人検出モデルと撮影画像データ10とに基づいて、撮影画像データ10での人30の有無や人30の位置を検出して、その検出結果を管理画像データ11に表示する構成にすると、監視を行う管理者やクレーン20の操縦者が、チェック対象エリア12内やチェック対象エリア12の近傍に存在する人30を見落とすリスクを低減するにはより有利になる。
【0053】
この実施形態のように、演算装置3により、管理画像データ11においてチェック対象エリア12内に人30が存在するか否かを判定し、チェック対象エリア12内に人30が存在していると判定した場合に、警告手段7に対して警告を発する指示を送信する構成にすると、チェック対象エリア12内に存在している人30やクレーン20の操縦者などに対して、チェック対象エリア12内に人30が存在していることをより確実に認識させることができる。それ故、撮影領域40に存在する人30の安全を確保するにはより有利になる。
【0054】
この実施形態では採用していないが、例えば、演算装置3により、人検出モデルと撮影画像データ10とに基づいて、検出した人30の位置座標を算出し、その人30が存在する位置座標を管理画像データ11に数値で表示する構成にすることもできる。この構成にすると、撮影領域40に存在する人30の位置をより正確に把握し易くなる。また、例えば、演算装置3により、人検出モデルと撮影画像データ10とに基づいて、管理画像データ11においてチェック対象エリア12内に存在する人30の数と、チェック対象エリア12外に存在する人30の数とをそれぞれカウントして表示する構成にすることもできる。この構成にすると、撮影領域40に多数の人30が存在する場合にも、その状況をより把握し易くなる。
【0055】
なお、この実施形態のように、人30が侵入することが危険な警戒エリアをチェック対象エリア12として設定する場合には、監視システム1が警告手段7を備えていることが好ましいが、監視システム1において警告手段7は必須の構成ではなく、必要に応じて任意に設けることができる。警告手段7を備えていない場合にも、クレーン20の操縦者や管理者が、モニタ4a、4bに表示される管理画像データ11を確認し、チェック対象エリア12内に人30が存在することを把握した際に、その人30に対して、無線機(トランシーバー)等で吊体23から離れるように指示を出すことで、吊体23周辺の警戒エリア(チェック対象エリア12)に人30が入ることを防止できる。
【0056】
本発明の監視システム1は例えば、演算装置3に、監視対象とする車両や建設機械などの物体の画像データを教師データとして機械学習された物体検出モデルを記憶させておき、物体検出モデルと撮影画像データ10とに基づいて、撮影画像データ10での対象とする物体の有無と、物体が存在する場合にはその物体の位置(座標位置)を検出し、その検出結果を管理画像データ11に表示する構成にすることもできる。
【0057】
クレーン20がブーム21を旋回させて、いずれかの区画用標識5が撮影装置2の撮影範囲から外れた場合や、区画用標識5の上に吊体23が重なった場合には、撮影領域40に配設している区画用標識5のいずれかが撮影画像データ10に含まれずに、標識検出モデルで検出できない状況になる場合がある。そのような場合の対策として、本発明の監視システム1では、例えば、演算装置3に予め撮影領域40に配設している区画用標識5の数を入力しておき、撮影装置2から入力された撮影画像データ10において予め入力されている数の区画用標識5が検出されない場合、即ち、撮影画像データ10に写っていない区画用標識5がある場合には、管理画像データ11にチェック対象エリア12の境界枠13を正確に表示できないことを示す通知が表示される構成にすることもできる。なお、前述した機能は、必要に応じて任意に設けることができる。
【0058】
図5に例示するように、本発明では、例えば、複数種類の区画用標識5(第一の区画用標識5f、第二の区画用標識5s)を使用して、撮影領域40に複数のチェック対象エリア12(第一のチェック対象エリア12f、第二のチェック対象エリア12s)を設定する構成にすることもできる。
【0059】
図5に例示するように、この実施形態では、第一のチェック対象エリア12fを区画する境界枠13fの設定に使用する複数の第一の区画用標識5fと、第二のチェック対象エリア12sを区画する境界枠13sの設定に使用する複数の第二の区画用標識5sをそれぞれ撮影領域40に配設している。そして、撮影装置2により撮影領域40とともに複数種類の区画用標識5(5f、5s)を撮影する構成にしている。
【0060】
この実施形態の第一の区画用標識5fは、四角を十字に四分割した図形を有し、その図形の隣り合う区画どうしが異なる色で彩色されたデザインになっている。第二の区画用標識5sは、四角を2本の対角線で四分割した図形を有し、その図形の隣り合う区画どうしが異なる色で彩色されたデザインになっている。
【0061】
この実施形態では、演算装置3に、複数種類の区画用標識5(5f、5s)の画像データをそれぞれ教師データとして機械学習された、区画用標識5を種類毎に検出できる標識検出モデルが予め記憶されている。この実施形態のように、複数種類の区画用標識5を使用する場合には、演算装置3に区画用標識5の種類毎の別々の標識検出モデルが記憶されている構成にしてもよいし、演算装置3に複数種類の区画用標識5を種類毎に検出できるひとつの標識検出モデルが記憶されている構成にしてもよい。
【0062】
この実施形態では、演算装置3により、撮影装置2から入力される撮影画像データ10と標識検出モデルとに基づいて、区画用標識5(5f、5s)の種類毎のそれぞれチェック対象エリア12(12f、12s)を区画する境界枠13(13f、13s)をそれぞれ作成し、その作成したそれぞれの境界枠13(13f、13s)を管理画像データ11に表示する構成になっている。図5では、それぞれのチェック対象エリア12f、12sの範囲を斜線で示している。
【0063】
このように、複数種類の区画用標識5(5f、5s)を使用すると、管理画像データ11に複数のチェック対象エリア12(12f、12s)の境界枠13(13f、13s)を表示することが可能になる。この実施形態では、複数種類の区画用標識5(5f、5s)によって設定したそれぞれのチェック対象エリア12(12f、12s)を、それぞれ別々のエリアとして管理画像データ11に表示する場合を例示している。この実施形態のように、別々のエリアとして複数のチェック対象エリア12(12f、12s)を設定して表示する場合には、それぞれのチェック対象エリア12(12f、12s)毎に、例えば、警告手段7による警告の種類を異ならせる構成にすることもできる。
【0064】
本発明では、例えば、複数種類の区画用標識5(5f、5s)によってそれぞれ設定した複数のチェック対象エリア12(12f、12s)を統合して、一つのチェック対象エリア12(12f+12s)として、管理画像データ11に表示する構成にすることもできる。前述した構成にすると、平面視で一部が凹んだ複雑な形状のチェック対象エリア12や、飛び地を有するチェック対象エリア12などを管理画像データ11に表示することが可能になる。
【0065】
例えば、単純な形状のチェック対象エリア12を設定する場合にも、比較的広いチェック対象エリア12を設定する場合には、比較的広いチェック対象エリア12を複数のチェック対象エリア12f、12sに分割して、それぞれの分割したチェック対象エリア12f、12sを別々の種類の区画用標識5f、5sを使用して設定するとよい。このようにすると、いずれかの種類の区画用標識5f、5sが撮影装置2の撮影範囲から外れた場合にも、その他の種類の区画用標識5f、5sによって設定するチェック対象エリア12f、12sは、比較的広いチェック対象エリア12(12f+12s)の一部として管理画像データ11に表示された状態を維持できる。
【0066】
なお、複数種類の区画用標識5を使用する場合には、それぞれの種類の区画用標識5は標識検出モデルで互いに識別して検出できるものであればよく、それぞれの種類の区画用標識5の形状や図形のデザイン、色彩などはこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、3種類以上の区画用標識5を使用することもできる。
【0067】
図6に例示するように、本発明では、例えば、区画用標識5と識別可能な除外用標識6を使用して、撮影領域40にチェック対象エリア12から除外する除外範囲14を設定する構成にすることもできる。
【0068】
図6に例示するように、この実施形態では、チェック対象エリア12を区画する境界枠13の設定に使用する複数の区画用標識5と、チェック対象エリア12から除外する除外範囲14を区画する境界枠15の設定に使用する複数の除外用標識6を、それぞれ撮影領域40に配設している。それぞれの除外用標識6は、除外範囲14を区画する境界枠15とする位置に配設する。この実施形態では、撮影装置2により撮影領域40とともに複数の区画用標識5と複数の除外用標識6を撮影する。
【0069】
この実施形態では、平面視でチェック対象エリア12を区画する六角形の境界枠13の内側に、除外範囲14を区画する四角形の境界枠15を設けて、チェック対象エリア12を区画する境界枠13と除外範囲14を区画する境界枠15とで区画された、環状(ドーナツ状)のチェック対象エリア12を管理画像データ11に表示する場合を例示している。
【0070】
除外用標識6は、板状部材やシート状部材に目印となる図形や文字が付されたものである。除外用標識6は、厚さが1mm以上50mm以下の薄い部材で構成するとよい。この実施形態では平面視で四角形状の区画用標識5と除外用標識6を使用している。この実施形態の除外用標識6は、中央に菱形の図形を有し、菱形の内側と外側が異なる色で彩色されたデザインになっている。
【0071】
除外用標識6の色彩は、撮影領域40で作業を行う作業者などが身に着けるヘルメットや帽子などと識別できる色彩にすることが好ましい。除外用標識6の色彩は、例えば、黒色と黄色の組み合わせや、黒色と赤色の組み合わせにするとよい。除外用標識6は区画用標識5と異なる色彩にすることが好ましい。除外用標識6の実寸の大きさS(直径の実寸法或いは縦横の寸法)は特に限定されないが、例えば、200mm~500mm程度である。除外用標識6として公知の対空標識を用いることもできる。除外用標識6の形状や図形のデザイン、色彩などは区画用標識5と識別できる構成であればこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。
【0072】
この実施形態では、演算装置3に、除外用標識6の画像データを教師データとして機械学習された標識検出モデルを予め記憶させている。この実施形態のように、除外用標識6を使用する場合には、演算装置3に区画用標識5を検出する標識検出モデルと除外用標識6を検出する標識検出モデルがそれぞれ別々に記憶されている構成にしてもよいし、演算装置3に区画用標識5と除外用標識6をそれぞれ検出できるひとつの標識検出モデルが記憶されている構成にしてもよい。
【0073】
この実施形態の演算装置3は、撮影装置2から入力される撮影画像データ10と標識検出モデルとに基づいて、撮影画像データ10でのそれぞれの除外用標識6の位置を検出し、その検出データに基づいて撮影画像データ10での隣り合う除外用標識6どうしを線Lで結ぶことによりチェック対象エリア12から除外する除外範囲14を区画する境界枠15を作成する。そして、この演算装置3は、その作成した除外範囲14の境界枠15の枠内を除外したチェック対象エリア12を管理画像データ11に表示する構成になっている。図6では、チェック対象エリア12の範囲を斜線で示している。除外範囲14の境界枠15の作成するプロセスは、前述したチェック対象エリア12の境界枠13を作成するプロセスと同じである。
【0074】
この実施形態のように、除外用標識6を使用すると、管理画像データ11に除外範囲14を設けたチェック対象エリア12を表示することが可能になる。区画用標識5によって設定するチェック対象エリア12の境界枠13と、除外用標識6によって設定する除外範囲14の境界枠15とを組み合わせることで、平面視で環状のチェック対象エリア12や、平面視で一部が凹んだ形状のチェック対象エリア12を管理画像データ11に表示することが可能になる。
【0075】
なお、この実施形態では、1種類の除外用標識6を使用する場合を例示したが、例えば、複数種類の除外用標識6を使用して、複数の除外範囲14を設定することもできる。また、例えば、複数種類の区画用標識5と複数種類の除外用標識6を使用して、複数のチェック対象エリア12と複数の除外範囲14を設定することもできる。
【0076】
図7に例示するように、本発明では、例えば、吊体23に複数の区画用標識5を配設して、撮影画像データ10での吊体23の範囲をチェック対象エリア12として管理画像データ11に表示する構成にすることもできる。
【0077】
図7に例示するように、この実施形態では、クレーン20によって吊り下げている吊具24と吊荷25にそれぞれ別々の種類の区画用標識5(5f、5s)を配設している。平面視で吊具24のそれぞれの隅部に第一の区画用標識5fを配設し、吊荷25のそれぞれの隅部に第二の区画用標識5sを配設している。吊具24や吊荷25に区画用標識5を接着する場合には、例えば、磁石や吸盤、接着剤などを用いて接着するとよい。
【0078】
この実施形態では、演算装置3により、吊具24に配設されている第一の区画用標識5fで設定している境界枠13fと、吊荷25に配設されている第二の区画用標識5sで設定している境界枠13sとをそれぞれ作成し、その作成した撮影画像データ10でのそれぞれの境界枠13f、13sの枠内を、第一のチェック対象エリア12f、第二のチェック対象エリア12sとして管理画像データ11に表示する構成にしている。
【0079】
さらにこの実施形態では、吊具24に吊荷25が吊下げられていて、演算装置3により、吊荷25に配設されている第二の区画用標識5sが検出された場合には、演算装置3により、管理画像データ11において、吊荷25の範囲を示す第二のチェック対象エリア12sの境界枠13sの外側に、吊荷25に接触するリスクがある範囲として、第二のチェック対象エリア12sの境界枠13sを予め設定した所定の倍率(例えば、2倍~5倍程度)で拡大した危険範囲16の境界枠17が表示される構成になっている。
【0080】
吊具24に吊荷25が吊下げられておらず、演算装置3により、第二の区画用標識5sが検出されない場合には、演算装置3により、管理画像データ11において、吊具24の範囲を示す第一のチェック対象エリア12fの境界枠13fの外側に、吊具24に接触するリスクがある範囲として、第一のチェック対象エリア12fの境界枠13fを予め設定した所定の倍率(例えば、2倍~5倍程度)で拡大した危険範囲16の境界枠17が表示される構成になっている。
【0081】
即ち、この実施形態では、管理画像データ11上で、吊体23が移動や動揺した際には、吊具24の範囲を示す第一のチェック対象エリア12fと、吊荷25の範囲を示す第二のチェック対象エリア12sと、吊体23の周辺の危険な範囲を示す危険範囲16とが、吊体23の動きに追従して表示される構成になっている。
【0082】
この実施形態の演算装置3はさらに、人検出モデルと撮影画像データ10とに基づいて、危険範囲16内に人30が存在するか否かを判定し、危険範囲16内に人30が存在していると判定した場合には、警告手段7に対して警告を発する指示を送信する構成になっている。
【0083】
この実施形態のように、吊体23の隅部に区画用標識5を配設して、吊体23の範囲を示すチェック対象エリア12の境界枠13を管理画像データ11に表示する構成にすると、クレーン20の操縦者や管理者が吊体23の位置や範囲をより明確に認識し易くなる。また、この実施形態のように、管理画像データ11において、吊体23の範囲を示すチェック対象エリア12の境界枠13の外側に、その境界枠13を拡大した危険範囲16の境界枠17を表示する構成にすると、吊体23の周辺の危険な範囲を示す危険範囲16を、吊体23の移動や動揺れに追従させて表示できる。それ故、吊体23と撮影領域40に存在する人30との相対的な位置関係や離間距離をより把握し易くなり、撮影領域40に存在する人30の安全を確保するにはより有利になる。
【0084】
上記で例示した実施形態では、チェック対象エリア12を区画する境界枠13の枠内をチェック対象エリア12とし、境界枠13の枠外をその他のエリアとして管理画像データ11に表示する場合を例示したが、本発明では、例えば、チェック対象エリア12を区画する境界枠13の枠外をチェック対象エリア12とし、境界枠13の枠内をその他のエリアとして管理画像データ11に表示する構成にすることもできる。
【0085】
また、上記で例示した実施形態では、本発明の監視システム1を、クレーン20による荷役作業の安全性を確保するための監視に利用する場合を例示したが、本発明の監視システム1は、他にも様々な用途で利用することができる。
【0086】
本発明の監視システム1は、例えば、荷役作業の進行状況の監視に使用することもできる。具体的には、例えば、荷役した物(例えば、荷物や土砂等)を集積するエリアの境界に複数の区画用標識5を配設して、管理画像データ11にその集積するエリアをチェック対象エリア12として表示し、監視を行う管理者は、管理画像データ11に表示されているチェック対象エリア12に荷役し終えた物の数や量などを確認することで、荷役作業の進行状況を監視することもできる。
【0087】
本発明の監視システム1は、例えば、立ち入り禁止エリアや駐車禁止エリアの監視に使用することもできる。具体的には、例えば、立ち入り禁止エリアや駐車禁止エリアの境界に複数の区画用標識5を配設して、立ち入り禁止エリアや駐車禁止エリアをチェック対象エリア12として管理画像データ11に表示することもできる。例えば、演算装置3により、管理画像データ11においてチェック対象エリア12内に人30や車両が存在するか否かを判定し、チェック対象エリア12内に人30や車両が所定時間以上滞在していると判定した場合には、警告手段7によりチェック対象エリア12内に滞在する人30や車両に対して警告を発する構成にすることもできる。
【0088】
本発明の監視システム1は、上述した用途に限定されず、他にも様々な用途で利用することができる。本発明の監視システム1は、陸上での監視に限らず、例えば、浮体などを利用して複数の区画用標識5を水上に配設することで、水上の監視に利用することもできる。
【符号の説明】
【0089】
1 監視システム
2 撮影装置
2a 回動機構
3 演算装置
4a、4b モニタ
5 区画用標識
5f 第一の区画用標識
5s 第二の区画用標識
6 除外用標識
7 警告手段
10 撮影画像データ
11 管理画像データ
12 チェック対象エリア
12f 第一のチェック対象エリア
12s 第二のチェック対象エリア
13 境界枠
13f (第一のチェック対象エリアを区画する)境界枠
13s (第二のチェック対象エリアを区画する)境界枠
14 除外範囲
15 (除外範囲を区画する)境界枠
16 危険範囲
17 (危険範囲の)境界枠
20 クレーン
21 ブーム
21a (ブームの)先端部
22 吊ワイヤ
23 吊体
24 吊具
25 吊荷
30 人
40 撮影領域
B、B1~B6 検出枠
P、P1~P6 座標点
L、L1~L6 線
C 中心点
V、V1~V6 ベクトル
R 基準直線
D、D1~D6 (基準直線とベクトルとの)なす角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7