(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154208
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】脱気装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/19 20060101AFI20241023BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067919
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 英樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EC21
2C056EC49
2C056EC51
2C056FA13
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB16
2C056KB37
2C056KB40
2C056KC02
2C056KD02
(57)【要約】
【課題】減圧による脱気装置の性能低下を抑制することを目的とする。
【解決手段】脱気装置40は、液体に溶存した空気を減圧雰囲気下で除去する脱気装置40であって、液体を貯留する液体タンク(例えば、インクタンク32)と、液体タンクの異なる位置を連通させる循環流路47と、循環流路47を通して液体を循環させる循環装置(例えば、循環ポンプ67)と、循環装置を収容する容器80と、液体タンク内と容器内を減圧する減圧装置と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に溶存した空気を減圧雰囲気下で除去する脱気装置であって、
液体を貯留する液体タンクと、
前記液体タンクの異なる位置を連通させる循環流路と、
前記循環流路を通して液体を循環させる循環装置と、
前記循環装置を収容する容器と、
前記液体タンク内と前記容器内を減圧する減圧装置と、を備えることを特徴とする脱気装置。
【請求項2】
前記減圧装置は、
前記液体タンク内を減圧する第1減圧装置と、
前記容器内を減圧する第2減圧装置と、を含み、
前記第2減圧装置は、前記第1減圧装置による前記液体タンク内の減圧と並行して前記容器内を減圧することを特徴とする請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
前記第1減圧装置によって減圧された前記液体タンク内と、前記第2減圧装置によって減圧された前記容器内と、の気圧差が30kPa以下であることを特徴とする請求項2に記載の脱気装置。
【請求項4】
前記容器は、前記液体タンクと連通しており、
前記減圧装置は、前記液体タンク又は前記容器に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の脱気装置。
【請求項5】
前記循環装置内の流路の少なくとも一部は、可撓性を有する部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項6】
前記循環装置は、ペリスタポンプ又はダイヤフラムポンプであることを特徴とする請求項5に記載の脱気装置。
【請求項7】
請求項1に記載の脱気装置と、
前記脱気装置により脱気された液体をシートに吐出する記録ヘッドと、を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱気装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、インクの溶存気体量が多くなると、記録ヘッドの内部で気泡が発生して吐出不良を起こすおそれがある。そこで、従来、インクの溶存気体量を減らす技術が検討されている。例えば、特許文献1、2では、インクタンク内を減圧した状態でインクタンクのインクを攪拌することでインクを脱気する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-162821号公報
【特許文献2】特開2019-142189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載の脱気装置では、インクタンク内のインクが撹拌されて液面付近でインクが脱気される。しかしながら、撹拌子がインクタンクの底部に位置することから、インク容量が大きくなると、溶存気体量が少ない液面付近のインクと溶存気体量が多い底面付近のインクが入れ替わり難くなって脱気効率が低下する。また、減圧によって脱気装置の性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、減圧による脱気装置の性能低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る脱気装置は、液体に溶存した空気を減圧雰囲気下で除去する脱気装置であって、液体を貯留する液体タンクと、前記液体タンクの異なる位置を連通させる循環流路と、前記循環流路を通して液体を循環させる循環装置と、前記循環装置を収容する容器と、前記液体タンク内と前記容器内を減圧する減圧装置と、を備える。
【0007】
前記減圧装置は、前記液体タンク内を減圧する第1減圧装置と、前記容器内を減圧する第2減圧装置と、を含み、前記第2減圧装置は、前記第1減圧装置による前記液体タンク内の減圧と並行して前記容器内を減圧してもよい。
【0008】
前記第1減圧装置によって減圧された前記液体タンク内と、前記第2減圧装置によって減圧された前記容器内と、の気圧差が30kPa以下であってもよい。
【0009】
前記容器は、前記液体タンクと連通しており、前記減圧装置は、前記液体タンク又は前記容器に接続されていてもよい。
【0010】
前記循環装置内の流路の少なくとも一部は、可撓性を有する部材で形成されていてもよい。
【0011】
前記循環装置は、ペリスタポンプ又はダイヤフラムポンプであってもよい。
【0012】
また、本発明に係るインクジェット記録装置は、前記脱気装置と、前記脱気装置により脱気された液体をシートに吐出する記録ヘッドと、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、減圧による脱気装置の性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るインク供給構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る脱気装置を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る脱気装置の動作の全体を示す流れ図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る脱気装置の減圧工程の動作を示す流れ図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る脱気装置の脱気工程の動作を示す流れ図である。
【
図7】減圧条件と流量比率との関係を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態の変形例に係るインク供給構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態のインクジェット記録装置1について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1を示す模式図である。説明の便宜上、
図1における紙面前側をインクジェット記録装置1の正面側(前側)とし、左右の向きはインクジェット記録装置1を正面から見た方向を基準として説明する。各図に付される矢印L、R、U、Loは、それぞれインクジェット記録装置1の左側、右側、上側、下側を示している。
【0016】
インクジェット記録装置1は、インクジェット式の各記録ヘッド21から記録媒体としてのシートSに向けてインクを吐出して印刷する。インクジェット記録装置1は、各種機器が収容された箱型形状のハウジング10を備えている。ハウジング10の下部にはシートSがセットされる給紙カセット11が収容され、ハウジング10の右側面にはシートSが手差しでセットされる手差しトレイ12が設置されている。ハウジング10の左側面の上側には、記録済みのシートSが積載される排紙トレイ13が設置されている。
【0017】
ハウジング10内の右側部には、給紙カセット11からハウジング10中央の記録ヘッド21に向けてシートSを搬送する第1搬送経路14が形成されている。第1搬送経路14の上流には給紙カセット11のシート束からシートSを取り出す第1給紙部15が設けられ、第1搬送経路14の下流にはシートSの送り出しタイミングを調整するレジストローラー18が設けられている。また、第1搬送経路14の下流には手差しトレイ12の給紙経路16が合流しており、給紙経路16には手差しトレイ12のシート束からシートSを取り出す第2給紙部17が設けられている。
【0018】
レジストローラー18の下流には搬送装置22と色毎(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の記録ヘッド21が設置されている。レジストローラー18は、シートSのスキューを矯正して、各記録ヘッド21によるインクの吐出動作に合わせて搬送装置22にシートSを送り出す。ハウジング10には記録ヘッド21毎にインクコンテナ31及びインクタンク32が設けられている。各インクコンテナ31のインクがインクタンク32に一時的に貯留され、必要に応じてインクが脱気されて、インクタンク32から記録ヘッド21にインクが供給される。
【0019】
搬送装置22は、各記録ヘッド21の下方に設置された複数の張架ローラー23に搬送ベルト24を巻き掛けて構成されている。搬送装置22の下流には、シートSのインクを乾燥する乾燥装置25が設けられている。乾燥装置25の下流には、インクの乾燥によってシートSに生じたカールを矯正するデカール装置26が設けられている。デカール装置26の下流には、排紙トレイ13に向けてシートSを搬送する第2搬送経路27が形成されている。第2搬送経路27の下流には、排紙トレイ13に記録済みのシートSを排出する排紙部28が設けられている。
【0020】
乾燥装置25の下方には、記録ヘッド21をクリーニングするメンテナンスユニット35と、記録ヘッド21をキャッピングするキャップユニット36とが設けられている。メンテナンスユニット35にはスキージ状のワイピングブレードが設けられており、ワイピングブレードによって記録ヘッド21のノズル面に残ったインクが掻き取られる。キャップユニット36にはヘッドキャップが設けられており、ヘッドキャップが記録ヘッド21のノズル面に被せられる。ヘッドキャップによりノズル内のインクの乾燥が抑制される。ヘッドキャップ内に洗浄液などの液体を貯めておくことでノズル内のインクの乾燥を、より抑制してもよい。
【0021】
また、インクジェット記録装置1には、装置全体を統括制御する制御装置38が設けられている。制御装置38は、プロセッサによって構成されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって構成されてもよい。プロセッサで構成される場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶装置によって構成されている。
【0022】
画像記録時には、第1給紙部15、第2給紙部17によってそれぞれ給紙カセット11、手差しトレイ12からシートSが取り出されてレジストローラー18に送られる。インクの吐出タイミングに合わせて、レジストローラー18から搬送ベルト24にシートSが送られて、各記録ヘッド21から脱気済みのインクが吐出されてシートSの表面にカラー画像が記録される。乾燥装置25によってシートSが乾燥され、デカール装置26によってシートSのカールが矯正される。第2搬送経路27を通って排紙部28にシートSが搬送されて、排紙部28によって記録済みのシートSが排紙トレイ13に排出される。
【0023】
ところで、インクタンク32内でインクの液面が空気に触れて空気の溶解が進行し、インク内の気泡によって記録ヘッド21のノズルが目詰まりする場合がある。このため、インク内の溶存気体量を適切に抑えることが望まれている。例えば、中空糸フィルターの周囲を減圧した状態で、中空糸フィルターにインクを通すことで、中空糸の壁面から減圧側に空気が移動して脱気する方法が提案されている。この方法では、高価な中空糸フィルターが必要になると共に定期的な交換作業が必要になってコストが増加する。
【0024】
また、ノズルの目詰まりを防止するために、インクタンク32内を大気圧以下に減圧した状態で、撹拌子によってインクを撹拌して脱気する方法(以下、撹拌脱気方式と称する)が提案されている。撹拌脱気方式ではインクタンク32内の撹拌子に外部から磁力が加えられて、磁力によって撹拌子が回転してインクタンク32内のインクが撹拌される。インクの深さやタンク径が大きい場合にはインクが撹拌され難くなって脱気効率が低下する。撹拌子の回転数を高くすれば撹拌され易くなるが、撹拌子の回転数が高くなり過ぎると脱調現象が生じると共に撹拌子の回転音も大きくなる。そこで、本実施形態では、以下に示される循環脱気方式が採用されている。
【0025】
[脱気装置]
図2は、本実施形態に係るインク供給構造を示す模式図である。
図3は、本実施形態に係る脱気装置40を模式的に示す断面図である。本実施形態に係るインクジェット記録装置1にはインクの色毎にインク供給構造が設けられているが、これらのインク供給構造の構成は同一であるため、ここでは1つのインク供給構造について説明する。
【0026】
[インクタンク]
インクタンク32は、上下方向を軸方向とする筒状の側壁部32Wと、側壁部32Wの下端部を塞ぐ底部32Bと、側壁部32Wの上端部を塞ぐ蓋体部32Cと、を有する。側壁部32Wの内面の水平断面は、円形が望ましい。側壁部32Wと底部32Bは、一体的に形成されていることが望ましい。
【0027】
[補給流路]
補給流路41は、インクコンテナ31とインクタンク32とに連通している。補給流路41の一端部は、インクタンク32の側壁部32Wの液面よりも下方の箇所に接続されている。補給流路41には、補給ポンプ61と補給バルブ51が設けられている。
【0028】
[大気開放流路]
大気開放流路43は、蓋体部32Cに接続され、インクタンク32の上部空間34に連通している。大気開放流路43には、大気開放バルブ53が設けられている。
【0029】
[減圧流路]
減圧流路42は、蓋体部32Cに接続され、インクタンク32の上部空間34に連通している。減圧流路42には、減圧ポンプ62と減圧バルブ52が設けられている。
【0030】
[供給流路]
供給流路44は、インクタンク32と記録ヘッド21とに連通している。供給流路44の一端部は、インクタンク32の底部32Bに接続されている。供給流路44には、供給バルブ54と供給ポンプ64が設けられている。
【0031】
[回収流路]
回収流路45は、インクタンク32と記録ヘッド21に連通している。回収流路45の一端部は、インクタンク32の側壁部32Wに接続されている。回収流路45には、回収バルブ55が設けられている。
【0032】
[バイパス流路]
供給流路44には、供給バルブ54と供給ポンプ64を迂回するバイパス流路46が設けられている。バイパス流路46には、バイパスバルブ56が設けられている。
【0033】
[循環流路]
循環流路47は、インクタンク32のインクの底面付近と液面付近とに連通している。循環流路47は、インクタンク32から循環流路47へとインクが流出する流出口71と、循環流路47からインクタンク32へとインクが流入する流入口72と、を有する。インクタンク32の底部32Bに流出口71が接続され、インクタンク32の側壁部32Wの液面付近の箇所に流入口72が接続されている。つまり、流出口71よりも流入口72が高い位置に位置している。循環流路47には循環ポンプ67が設けられている。循環ポンプ67によって循環流路47を経由してインクが循環される。
【0034】
[循環ポンプ]
循環ポンプ67として使用可能なポンプとしては、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ等の非容積式ポンプ、ベーンポンプ、ギアポンプ、ネジポンプ、ペリスタポンプ(チューブポンプ)等の容積式の回転ポンプ、ピストンポンプ、ブランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ等の容積式の往復ポンプが知られている。このうち、非容積式ポンプ、ペリスタポンプ以外の回転ポンプ、ダイヤフラムポンプ以外の往復ポンプは、インクタンク32を減圧した場合の減圧の影響を受けにくいという利点がある。一方、ペリスタポンプとダイヤフラムポンプは、減圧の影響を受けやすいが、安価であるという利点がある。本実施形態では、循環ポンプ67として、ペリスタポンプ又はダイヤフラムポンプを採用する。減圧の影響に対する対策については、後述する。
【0035】
なお、一般的には、循環脱気方式の循環流路47の中に記録ヘッド21が含まれるように構成してもよいが、本実施形態では、循環流路47の中に記録ヘッド21は含まれていない。つまり、循環流路47は、記録ヘッド21にインクを供給する経路とは別に設けられている。記録ヘッド21が循環流路47の中に含まれないことで、脱気する際の減圧で、記録ヘッド21のノズル内に形成されているメニスカスが破壊されて、外部の空気が記録ヘッド21内に入ってくる可能性を少なくできる。
【0036】
[制御装置]
補給ポンプ61、減圧ポンプ62、供給ポンプ64、循環ポンプ67及び補給バルブ51、減圧バルブ52、大気開放バルブ53、供給バルブ54、回収バルブ55、バイパスバルブ56は、制御装置38によって制御される。制御装置38には、インクの放置時間に応じて脱気動作の要否を判定する判定部39が設けられている。判定部39によってインクの脱気が不要と判定された場合には脱気動作が実行されない。インクの放置によって空気が再溶解していても、許容時間内であれば脱気することなくインクを使用できる。
【0037】
[気圧計]
インクタンク32には、インクタンク32の上部空間34内の気圧を計測する気圧計33が設けられている。制御装置38は、気圧計33から気圧データを取得する。
【0038】
次に、脱気装置40の基本的な動作について説明する。ここでは、待機状態を初期状態として説明する。
【0039】
[待機状態]
待機状態においては、補給バルブ51、減圧バルブ52、供給バルブ54が閉じられ、大気開放バルブ53、回収バルブ55、バイパスバルブ56が開かれている。インクタンク32にはインクが貯留されており、大気開放された上部空間34の空気に液面が触れることで時間経過に伴ってインクに空気が溶解していく。
【0040】
待機状態において、制御装置38の判定部39は、脱気の要否を判定する。例えば、制御装置38にはタイマーが設けられ、タイマーによってインクの放置時間が計時されている。インクの溶存気体量は、気圧、インクの温度、前回印刷時からの経過時間等の1つ又は複数のパラメータから推定可能である。このため、判定部39には各パラメータとインクの溶存気体量との対応関係を示す変換情報が記憶されており、各パラメータに基づいてインクの溶存気体量が推定される。また、判定部39にはインクの溶存気体量と許容時間の対応関係を示す変換情報が記憶されており、インクの溶存気体量に基づいて許容時間が設定される。許容時間は、インクを放置していても脱気せずに印刷が許容される時間である。なお、各パラメータとインクの溶存気体量の対応関係を示す変換情報やインクの溶存気体量と許容時間の対応関係を示す変換情報には、マップデータ、ルックアップテーブル、変換式等が用いられる。これらマップデータ、ルックアップテーブル、変換式は、事前に実験的、経験的、理論的に求められたものが使用される。
【0041】
インクの放置時間が許容時間内である場合には、酸素飽和度が低いため、判定部39は、脱気が不要と判定する。インクの放置時間が許容時間を超えた場合には、酸素飽和度が高いため、判定部39は、脱気が必要と判定する。脱気が必要な場合、制御装置38は、下記の減圧工程と脱気工程を実行する。
【0042】
[減圧工程]
減圧工程においては、制御装置38は、補給バルブ51、大気開放バルブ53、供給バルブ54、回収バルブ55、バイパスバルブ56を閉鎖し、減圧バルブ52を開放し、減圧ポンプ62を駆動する。すると、インクタンク32の上部空間34から空気が吸い出されて上部空間34が減圧される。制御装置38は、気圧計33が示す上部空間34の気圧が目標値(例えば、-50[kPa])に到達すると減圧ポンプ62を停止させる。
【0043】
[脱気工程]
減圧工程が終了すると、制御装置38は、脱気工程を実行する。脱気工程においては、制御装置38は、補給バルブ51、減圧バルブ52、大気開放バルブ53、供給バルブ54、回収バルブ55、バイパスバルブ56を閉鎖し、所定時間、循環ポンプ67を駆動する。循環ポンプ67を駆動すると、循環流路47を通じてインクタンク32内のインクが循環する。インクタンク32の溶存気体量が多い底面付近のインクが流出口71を通じて循環流路47に流出し、循環流路47内のインクが流入口72を通じてインクタンク32内の液面付近に向けて流入する。インクの液面が減圧雰囲気下に晒されて、液面付近のインクに溶存した空気が除去される。溶存気体量が少ない液面付近のインクと溶存気体量が多い底面付近のインクがスムーズに入れ替えられて脱気効率が向上する。また、撹拌脱気方式とは異なり、インクの深さやタンク径に影響を受けることがなく、撹拌子の回転音よりも循環ポンプ67の駆動音が抑えられて静音性が高められる。
【0044】
[ヘッド循環工程]
ヘッド循環工程は、脱気工程の前又は後に行われてもよく、独自のタイミングで行われてもよい。ヘッド循環工程においては、制御装置38は、補給バルブ51、減圧バルブ52、バイパスバルブ56を閉じ、大気開放バルブ53、供給バルブ54、回収バルブ55を開き、供給ポンプ64を駆動する。すると、供給流路44を通じてインクタンク32から記録ヘッド21にインクが供給され、回収流路45を通じて記録ヘッド21からインクタンク32にインクが回収される。記録ヘッド21とインクタンク32の間でインクが循環されることで、記録ヘッド21内で粘度が増加したインクが入れ替えられると共に記録ヘッド21から気泡が除去される。
【0045】
[印刷工程]
記録ヘッド21による印刷動作時には、補給バルブ51、減圧バルブ52、供給バルブ54が閉じられ、大気開放バルブ53、バイパスバルブ56、回収バルブ55が開かれる。つまり、印刷動作時には、インクタンク32は、大気解放されて、大気圧となっている。印刷動作時には、インクタンク32は、実質的な脱気が生じるような減圧をされない。記録ヘッド21からインクが吐出される度に、バイパス流路46、回収流路45を通じてインクタンク32から記録ヘッド21にインクが供給される。インクの入れ替え動作時や印刷動作時等の途中でインクが補給される場合がある。このインクの補給動作時には補給バルブ51が開かれて補給ポンプ61が駆動する。補給ポンプ61の駆動によって補給流路41を通じてインクコンテナ31からインクタンク32にインクが補給される。
【0046】
なお、
図1等は模式的に描かれており、実際には、記録ヘッド21は、インクタンク32より上方に配置されている。記録ヘッド21内のインクには、インクタンク32内のインクとの水頭差により負圧が加わっており、その負圧により、記録ヘッド21のノズルにはメニスカスが形成されている。記録ヘッド21からインクが吐出された後、インクの表面張力がメニスカスの表面積を減らすように働き、それによって生じる負圧によって、インクタンク32から記録ヘッド21に、減った分のインクが引き込まれる。なお、回収バルブ55を閉じて、記録ヘッド21へのインク供給を、バイパス流路46からだけにしてもよい。
【0047】
また、記録ヘッド21とインクタンク32とが繋がった状態で、インクタンク32を実質的な脱気が起きるほど減圧すると、ノズルのメニスカスが破壊されるおそれがある。メニスカスが破壊されなかったとしても、ノズル内のメニスカスの形状が、インクタンク32が大気解放されているときと変わり、インクの吐出特性が変わるおそれがある。本実施形態では、印刷動作時には、インクタンク32は、実質的な脱気が生じるような減圧をされないので、記録ヘッド21のノズル内のメニスカスは、破壊されることはなく、また、形状が変わって、吐出特性が変わることもない。
【0048】
さて、前述のとおり、循環ポンプ67としてペリスタポンプ又はダイヤフラムポンプを採用した場合、減圧の影響を受けやすいという問題がある。
【0049】
例えば、ペリスタポンプの場合、ペリスタポンプ内の流路は、シリコーンゴム等で形成された可撓性を有するチューブを含み、チューブを複数のローラーでしごくことで送液する。減圧ポンプ62によってインクタンク32内を減圧した場合、流路内の気圧が低下するため、流路が狭窄して循環性能が低下するおそれがある。
【0050】
また、ダイヤフラムポンプの場合、ダイヤフラムポンプ内の流路は、シリコーンゴム等で形成された可撓性を有するダイヤフラムを含み、ダイヤフラムを斜板等で往復運動させることで送液する。減圧ポンプ62によってインクタンク32内を減圧した場合、流路内の気圧が低下するため、流路が狭窄して循環性能が低下するおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態に係る脱気装置40は、以下に示す手法で減圧による循環性能の低下を抑制する。本実施形態に係る脱気装置40は、液体に溶存した空気を減圧雰囲気下で除去する脱気装置40であって、液体を貯留する液体タンク(例えば、インクタンク32)と、液体タンクの異なる位置を連通させる循環流路47と、循環流路47を通して液体を循環させる循環装置(例えば、循環ポンプ67)と、循環装置を収容する容器80と、液体タンク内と容器80内を減圧する減圧装置と、を備える。
【0052】
減圧装置は、液体タンク内を減圧する第1減圧装置(例えば、減圧ポンプ62)と、容器80内を減圧する第2減圧装置(例えば、減圧ポンプ68)と、を含み、第2減圧装置は、第1減圧装置による液体タンク内の減圧と並行して容器80内を減圧する。
【0053】
具体的には、以下のとおりである。なお、インクタンク32、循環流路47、循環ポンプ67、減圧ポンプ62については前述のとおりであるから、以下では、主に、容器80、減圧ポンプ68について説明する。
【0054】
[容器、減圧ポンプ]
容器80は、循環ポンプ67を収容する。容器80は、直方体状、円筒状など、いかなる形状であってもよい。循環流路47は、容器80を貫通している。容器80には、減圧流路48と、大気開放流路49と、が接続されている。減圧流路48には、減圧バルブ58と、減圧ポンプ68と、が設けられている。大気開放流路49には、大気開放バルブ59が設けられている。容器80は、気密性を有する。容器80には、容器80内の気圧を計測する気圧計81が設けられている。制御装置38は、気圧計81から気圧データを取得する。大気開放バルブ59を閉鎖し、減圧バルブ58を開放し、減圧ポンプ68を駆動することで、容器80内が減圧される。大気開放バルブ59を開放することで、容器80内が大気に開放される。
【0055】
次に、脱気装置40の動作について説明する。
図4は、脱気装置40の動作の全体を示す流れ図である。
図5は、脱気装置40の減圧工程の動作を示す流れ図である。
図6は、脱気装置40の脱気工程の動作を示す流れ図である。
【0056】
ここでは、待機状態を初期状態として説明する。待機状態では、補給バルブ51、減圧バルブ52、供給バルブ54、減圧バルブ58が閉じられ、大気開放バルブ53、バイパスバルブ56、回収バルブ55、大気開放バルブ59が開かれている。インクタンク32にはインクが貯留されており、大気開放された上部空間34の空気に液面が触れることで時間経過に伴ってインクに空気が溶解していく。
【0057】
最初に、制御装置38は、印刷ジョブが実行中であるか否かを判定する(
図4、ステップS01)。印刷ジョブが実行中である場合には(ステップS01:YES)、制御装置38は、ステップS01の判定を繰り返す。一方、印刷ジョブが実行中でない場合には(ステップS01:NO)、制御装置38の判定部39は、脱気を実行するか否かを判定する(ステップS02)。例えば、制御装置38(
図2参照)にはタイマーが設けられ、タイマーによってインクの放置時間が計時されている。インクの溶存気体量は、気圧、インクの温度、前回印刷時からの経過時間等の1つ又は複数のパラメータから推定可能である。このため、判定部39には各パラメータとインクの溶存気体量の対応関係を示す変換情報が記憶されており、各パラメータに基づいてインクの溶存気体量が推定される。また、判定部39にはインクの溶存気体量と許容時間の対応関係を示す変換情報が記憶されており、インクの溶存気体量に基づいて許容時間が設定される。なお、許容時間は、インクを放置していても脱気せずに印刷が許容される時間である。
【0058】
インクの放置時間が許容時間内での場合には、酸素飽和度が低いので判定部39によって脱気が不要と判定されて脱気動作が実施されない。インクの放置時間が許容時間を超えた場合には、酸素飽和度が高いので判定部39によって脱気が必要と判定されて脱気動作が実施される。なお、各パラメータとインクの溶存気体量の対応関係を示す変換情報やインクの溶存気体量と許容時間の対応関係を示す変換情報には、マップデータ、ルックアップテーブル、変換式等が用いられる。これらマップデータ、ルックアップテーブル、変換式は、事前に実験的、経験的、理論的に求められたものが使用される。
【0059】
ステップS02において脱気を実行しないと判定した場合には(ステップS02:NO)、制御装置38は、ステップS01の判定を繰り返す。一方、脱気を実行すると判定した場合には(ステップS02:YES)、制御装置38は、減圧工程(ステップS03、
図5参照)を実行する。
【0060】
具体的には、制御装置38は、補給バルブ51、大気開放バルブ53、供給バルブ54、回収バルブ55、バイパスバルブ56、大気開放バルブ59を閉鎖し、減圧バルブ52、減圧バルブ58を開放し、減圧ポンプ62、減圧ポンプ68を駆動する(ステップS11)。次に、制御装置38は、気圧計33が示すインクタンク32内の気圧が所定の負圧に到達したか否かを判定する(ステップS12)。
【0061】
インクタンク32内の気圧が所定の負圧に到達したと判定した場合には(ステップS12:YES)、制御装置38は、減圧バルブ52を閉鎖し、減圧ポンプ62を停止させる(ステップS13)。次に、制御装置38は、気圧計81が示す容器80内の気圧が所定の負圧に到達したか否かを判定する(ステップS14)。なお、ステップS14における所定の負圧は、ステップS12における所定の負圧と等しい。後述するステップS16、ステップS18における所定の負圧も、ステップS12における所定の負圧と等しい。容器80内の気圧が所定の負圧に到達していないと判定した場合には(ステップS14:NO)、制御装置38は、ステップS14の判定を繰り返す。一方、容器80内の気圧が所定の負圧に到達したと判定した場合には(ステップS14:YES)、制御装置38は、減圧バルブ58を閉鎖し、減圧ポンプ68を停止させる(ステップS15)。
【0062】
一方、ステップS12でインクタンク32内の気圧が所定の負圧に到達していないと判定した場合には(ステップS12:NO)、制御装置38は、容器80内の気圧が所定の負圧に到達したか否かを判定する(ステップS16)。容器80内の気圧が所定の負圧に到達していないと判定した場合には(ステップS16:NO)、制御装置38は、ステップS12以降の処理を繰り返す。一方、容器80内の気圧が所定の負圧に到達したと判定した場合には(ステップS16:YES)、制御装置38は、減圧バルブ58を閉鎖し、減圧ポンプ68を停止させる(ステップS17)。
【0063】
次に、制御装置38は、気圧計33が示すインクタンク32内の気圧が所定の負圧に到達したか否かを判定する(ステップS18)。インクタンク32内の気圧が所定の負圧に到達していないと判定した場合には(ステップS18:NO)、制御装置38は、ステップS18の判定を繰り返す。一方、インクタンク32内の気圧が所定の負圧に到達したと判定した場合には(ステップS18:YES)、制御装置38は、減圧バルブ52を閉鎖し、減圧ポンプ62を停止させる(ステップS19)。
【0064】
次に、制御装置38は、脱気工程を実行する(
図4のステップS04、
図6参照)。具体的には、制御装置38は、循環ポンプ67を駆動する(ステップS21)。循環ポンプ67を駆動すると、循環流路47を通じてインクタンク32内のインクが循環される。インクタンク32の溶存気体量が多い底面付近のインクが流出口71を通じて循環流路47に流出し、循環流路47内のインクが流入口72を通じてインクタンク32内の液面付近に向けて流入する。インクの液面が減圧雰囲気下に晒されて、液面付近のインクに溶存した空気が除去される。溶存気体量が少ない液面付近のインクと溶存気体量が多い底面付近のインクがスムーズに入れ替えられて脱気効率が向上する。また、ステップS11において減圧ポンプ62と減圧ポンプ68が駆動されていたため、循環ポンプ67内の流路の内外の気圧差が抑制され、循環ポンプ67の性能低下が抑制される。
【0065】
次に、制御装置38は、循環ポンプ67の駆動を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS22)。所定時間が経過していないと判定した場合には(ステップS22:NO)、制御装置38は、循環ポンプ67を駆動したままステップS22の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過したと判定した場合には(ステップS22:YES)、制御装置38は、循環ポンプ67を停止させる(ステップS23)。脱気工程が終了すると、全てのバルブが閉鎖されているため、減圧状態が維持される。
【0066】
次に、制御装置38は、印刷ジョブを実行するか否かを判定する(
図4のステップ05)。印刷ジョブを実行しないと判定した場合には(ステップS05:NO)、制御装置38は、ステップS05の判定を繰り返す。一方、印刷ジョブを実行すると判定した場合には(ステップS05:YES)、制御装置38は、大気開放バルブ53、大気開放バルブ59を開放する(ステップS06)。循環ポンプ67内の流路の内外が大気に開放されるため、循環ポンプ67内の流路にかかる負荷が軽減される。次に、制御装置38は、印刷ジョブを実行し(ステップS07)、ステップS01以降の処理を繰り返す。
【0067】
ここで、インクタンク32の減圧と循環ポンプ67の性能との関係について説明する。前述のとおり、大気圧下でインクタンク32内を減圧した場合、循環ポンプ67内の流路の内外の気圧差により流路が狭窄し、循環ポンプ67の循環流量が低下する。そこで、大気圧下でインクタンク32内を減圧してペリスタポンプとダイヤフラムポンプとで流量を計測した。インクの粘度を7[mPa・s]、インクの温度を25[℃]、インクタンク32のタンク径を60[mm]、インクの深さを28[mm]とし、大気圧下で0から-80kPaまでインクタンク32内を減圧した。
【0068】
図7は、減圧条件と流量比率との関係を示す図である。横軸は、減圧条件、すなわちインクタンク32の気圧[kPa]であり、縦軸は、流量比率[%]である。流量比率は、減圧条件が0kPaの場合の循環ポンプ67の流量を基準(100%)とした流量の比率である。流量比率は、循環ポンプ67の性能の指標となる数値であり、流量比率が100%に近いほど、循環ポンプ67の性能低下が少ないと言える。
【0069】
図7より、ペリスタポンプの場合、減圧条件が0から-30kPaまでは、流量比率が60%以上確保されている。一方、ダイヤフラムポンプの場合、減圧条件が0から-40kPaまでは、流量比率が80%以上確保されている。また、実際の循環ポンプ67は、内外気圧差が30kPa以内で所期の性能が発揮されるように設計されている場合が多い。これらのことから、循環ポンプ67の内外気圧差が30kPa以下であれば、減圧による循環ポンプ67の性能低下を効果的に抑制することができる。なお、本実施形態では、インクタンク32とともに容器80を減圧することで循環ポンプ67の内外気圧差が実質的に生じない状態を実現するから、減圧による循環ポンプ67の性能低下を抑制する効果を最大化することができる。
【0070】
以上説明した本実施形態に係る脱気装置40によれば、液体に溶存した空気を減圧雰囲気下で除去する脱気装置40であって、液体を貯留する液体タンク(例えば、インクタンク32)と、液体タンクの異なる位置を連通させる循環流路47と、循環流路47を通して液体を循環させる循環装置(例えば、循環ポンプ67)と、循環装置を収容する容器80と、液体タンク内と容器80内を減圧する減圧装置と、を備える。この構成によれば、循環装置内の流路の内外が減圧されることで流路内外の気圧差が抑制されるから、減圧による流路の狭窄が抑制される。よって、減圧による脱気装置40の性能低下を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る脱気装置40によれば、液体タンク内を減圧する第1減圧装置(例えば、減圧ポンプ62)と、容器80内を減圧する第2減圧装置(例えば、容器減圧ポンプ68)と、を含み、第2減圧装置は、第1減圧装置による液体タンク内の減圧と並行して容器80内を減圧する。液体タンクと容器80を別々のタイミングで減圧すると、循環装置内の流路に狭窄や膨張が生じ、長期にわたって流路の狭窄と膨張が繰り返されると、流路を構成する部材が劣化するおそれがある。本実施形態によれば、液体タンクと容器80を平行して減圧するから、循環装置内の流路に狭窄や膨張が生じにくくなり、流路を形成する部材の劣化を抑制することができる。また、液体タンクと容器80を短時間で減圧することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る脱気装置40によれば、第1減圧装置によって減圧された液体タンク内と、第2減圧装置によって減圧された容器80内と、の気圧差が30kPa以下である。この構成によれば、循環装置の性能低下を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る脱気装置40によれば、循環装置内の流路の少なくとも一部は、可撓性を有する部材で形成されている。この構成によれば、循環装置内の流路を形成する可撓性を有する部材に係る負荷を軽減することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る脱気装置40によれば、循環装置は、ペリスタポンプ又はダイヤフラムポンプである。この構成によれば、ペリスタポンプ内の流路を形成するチューブや、ダイヤフラムポンプ内の流路を形成するダイヤフラムにかかる負荷を軽減することができる。
【0075】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、脱気装置40と、脱気装置40により脱気された液体をシートSに吐出する記録ヘッド21と、を備えている。この構成によれば、気泡の発生による画質の低下を抑制することができる。
【0076】
上記実施形態は以下のように変形されてもよい。
【0077】
図8は、上記実施形態の変形例に係るインク供給構造を示す模式図である。本変形例では、容器80は、液体タンク(インクタンク32)と連通しており、減圧装置(減圧ポンプ62)は、液体タンク又は容器80に接続されている。具体的には、容器80とインクタンク32とは減圧流路48で連通している。減圧バルブ52を開放し、減圧ポンプ62を駆動することで、インクタンク32内と容器内80とが並行して減圧される。本変形例によれば、1つの減圧装置で液体タンクと容器80を減圧することができるから、コストを軽減することができる。また、1つの減圧装置で液体タンクと容器80が等しい気圧に減圧されるから、気圧の制御が容易である。
【0078】
上記実施形態では、インクジェット記録装置1に脱気装置40が設けられた例が示されたが、脱気装置40は半導体の製造分野、ディスプレイの製造分野等の他分野で使用される装置にも適用可能である。すなわち、インク以外の薬液、電解液、液状樹脂、接着剤、溶剤、潤滑油、液状食品、美容液等の脱気にも適用可能である。
【0079】
上記実施形態では、減圧装置として減圧ポンプ62、減圧ポンプ68が例示されたが、減圧装置はインクタンク32内を減圧可能な装置であればよく、例えば減圧装置はエジェクターでもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 インクジェット記録装置
21 記録ヘッド
32 インクタンク(液体タンク)
40 脱気装置
47 循環流路
62 減圧ポンプ(第1減圧装置、減圧装置)
67 循環ポンプ(循環装置)
62 減圧ポンプ(第2減圧装置、減圧装置)
80 容器
S シート