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特開2024-154211橋梁点検方法および橋梁点検システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154211
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】橋梁点検方法および橋梁点検システム
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067925
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 信彰
(72)【発明者】
【氏名】北 慎一郎
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059AA05
2D059EE03
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】点検作業員が離れた場所から効率よく適切な遠隔点検を行える橋梁点検方法および橋梁点検システムを提供する。
【解決手段】橋梁10に設置されてカメラ31で橋梁10の下面側を撮影可能な点検台車20と、点検台車20と通信可能でカメラ31で撮影した画像を記憶可能な記憶装置41と、記憶装置41に記憶された画像およびカメラ31で撮影された画像を表示可能な表示装置51と、を用い、準備作業として、現場作業員2が点検台車20を操作し、カメラ31で橋梁10の下面側を撮影し、準備画像Ipとして記憶装置41に記憶しておき、点検作業として、点検作業員3が表示装置51を目視し、表示装置51に準備画像Ipを表示させつつ、点検に必要な追加画像Isについて点検台車20を操作する現場作業員2に指示してカメラ31で追加画像Isを撮影させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に設置され、かつカメラで前記橋梁の下面側を撮影可能な点検台車と、
前記点検台車と通信可能で前記カメラで撮影した画像を記憶可能な記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された画像および前記カメラで撮影された画像を表示可能な表示装置と、を用い、
準備作業として、現場作業員が前記点検台車を操作し、前記カメラで前記橋梁の下面側を撮影し、準備画像として前記記憶装置に記憶しておき、
点検作業として、点検作業員が前記表示装置を目視し、前記表示装置に前記準備画像を表示させつつ、点検に必要な追加画像について前記点検台車を操作する現場作業員に指示して前記カメラで前記追加画像を撮影させる、橋梁点検方法。
【請求項2】
橋梁に設置され、かつカメラで前記橋梁の下面側を撮影可能な点検台車と、
前記点検台車と通信可能で前記カメラで撮影した準備画像を記憶可能な記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記準備画像および前記カメラで撮影された前記橋梁の下面側の追加画像を表示可能な表示装置と、
前記表示装置を目視する点検作業員から前記点検台車を操作する現場作業員へ指示を伝達可能な通信装置と、を有する、橋梁点検システム。
【請求項3】
前記準備画像は、前記橋梁の下面側の指定撮影点における360度の全周画像と、前記指定撮影点から撮影した前記全周画像上の指定点の拡大画像と、を含み、
前記全周画像には前記拡大画像を示すアイコンが埋め込まれている、請求項2に記載の橋梁点検システム。
【請求項4】
前記点検台車が、
前記橋梁上を走行可能な台車本体と、
前記台車本体に支持されて前記橋梁の側面に沿って前記橋梁の下面側まで延びる垂直アームと、
前記垂直アームに支持されて前記橋梁の下面側に沿って延びる水平アームと、
前記水平アームに沿って走行可能な走行台車と、
前記走行台車に支持されたカメラと、
前記カメラで撮影した画像を外部に送信する通信装置と、
前記水平アームの前記走行台車とは反対側に設置されたバランス装置と、を有する、請求項2または請求項3に記載の橋梁点検システム。
【請求項5】
前記走行台車は、前記カメラとして、前記指定撮影点における360度の全周画像を撮影可能な全周カメラと、前記指定撮影点から撮影した前記全周画像上の指定点の拡大画像を撮影可能な高解像度カメラと、を装着可能である、請求項4に記載の橋梁点検システム。
【請求項6】
前記バランス装置は、前記垂直アームに対する前記水平アームの重量バランスを補償する固定バランサと、前記走行台車の位置に応じて前記水平アームに沿って移動可能な移動バランサと、を有する、請求項4に記載の橋梁点検システム。
【請求項7】
前記水平アームは、前記走行台車の走行経路に沿った給電電極を有し、
前記走行台車は、前記給電電極に摺接する集電電極と、前記給電電極からの電力で前記走行台車を駆動するモータと、を有する、請求項4に記載の橋梁点検システム。
【請求項8】
前記垂直アームは、前記台車本体からの操作で伸縮可能な電動式のテレスコピック構造を有し、
前記水平アームは、複数の軸材を連結して形成され、前記台車本体からの手動操作で前記垂直アームを中心に水平面内を旋回可能である、請求項4に記載の橋梁点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋梁点検方法および橋梁点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路に用いられる橋梁においては、その安全性を確保するため、省令などで近接目視による定期的な点検が義務付けられている。橋梁の点検の際には、十分な知識技能をもつ点検作業員により、損傷の認定ないし補修の要否などの診断までが要求される。
従来、橋梁の下面側については、点検作業員が足場組みやロープ吊り下げによって点検箇所に接近することが必要であった。これに対し、カメラ等で点検箇所を撮影する橋梁点検装置が開発されている。
【0003】
特許文献1の橋梁点検装置では、橋梁の側縁に配置した点検台車から橋梁の側面に沿って橋桁の下方に水平アームを降ろし、この水平アームに装着した走行台車に設置したカメラで橋梁の下面側を撮影している。このような装置によれば、例えばドローンによる撮影のような周囲の樹木などによる飛行障害などの不都合を回避できる。
特許文献2の橋梁点検装置では、特許文献1と同様な水平アームを用いるとともに、その先端に飛翔体(ドローン)を装着し、このドローンに設置したカメラで橋梁の下面側を撮影している。特許文献1の装置では片持ち荷重となる水平アームの撓み、とくに走行台車の位置により変動する撓みが避けられないのに対し、特許文献2の装置ではドローンの揚力により水平アームの撓みを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-14942号公報
【特許文献2】特開2020-133269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような橋梁点検装置により、画像による橋梁の下面側の遠隔点検が可能になり、橋梁の下面側の点検箇所へ点検作業員が赴く必要性を解消できている。
ただし、画像による遠隔点検では、点検箇所の画像の移動やズーム調整を状況に応じて点検装置を適宜操作する必要がある。このため、点検作業員は、橋梁上の点検装置を操作するべく現場まで赴くことが必須であり、橋梁までの往復に相当な時間を要する。そこで、限られた人的資源を効率的に活用するべく、点検作業員が橋梁点検の現場へ赴くことなく、離れた場所から適切な点検を可能とすることが求められていた。
【0006】
本発明の目的は、点検作業員が離れた場所から効率よく適切な遠隔点検を行える橋梁点検方法および橋梁点検システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の橋梁点検方法は、橋梁に設置され、かつカメラで前記橋梁の下面側を撮影可能な点検台車と、前記点検台車と通信可能で前記カメラで撮影した画像を記憶可能な記憶装置と、前記記憶装置に記憶された画像および前記カメラで撮影された画像を表示可能な表示装置と、を用い、準備作業として、現場作業員が前記点検台車を操作し、前記カメラで前記橋梁の下面側を撮影し、準備画像として前記記憶装置に記憶しておき、点検作業として、点検作業員が前記表示装置を目視し、前記表示装置に前記準備画像を表示させつつ、点検に必要な追加画像について前記点検台車を操作する現場作業員に指示して前記カメラで前記追加画像を撮影させる。
【0008】
本発明の橋梁点検システムは、橋梁に設置され、かつカメラで前記橋梁の下面側を撮影可能な点検台車と、前記点検台車と通信可能で前記カメラで撮影した準備画像を記憶可能な記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記準備画像および前記カメラで撮影された前記橋梁の下面側の追加画像を表示可能な表示装置と、前記表示装置を目視する点検作業員から前記点検台車を操作する現場作業員へ指示を伝達可能な通信装置と、を有する。
【0009】
このような本発明においては、現場作業員が橋梁上に点検台車を設置して操作することで、橋梁の下面側をカメラで撮影し、表示装置に表示することができる。点検作業員は、遠隔地にある表示装置により、橋梁の下面側の目視点検を行うことができる。
橋梁の下面側の画像としては、予め現場作業員が点検台車を操作し、橋梁の下面側の指定箇所、例えば経験的に目視が頻繁な点検部位などについて、点検作業員の指示を待たずに撮影を行い、準備画像として記憶しておく(準備作業)。
点検作業員による点検作業では、点検作業員が表示装置に準備画像を表示させて目視点検を行う。ここで、準備画像では確認が十分でない点検部位などがあれば、現場作業員に指示を送り、現場作業員が点検台車を操作して追加画像を撮影する。撮影された追加画像は表示装置に表示され、点検作業員による目視点検を受けることができる(点検作業)。
従って、本発明においては、現場の点検台車の操作は現場作業員が行い、点検作業員は目視点検および追加画像の指示を伝達することで、遠隔地から適切な目視点検を行うことができる。とくに、予め現場作業員が準備画像を準備しておくことで、点検作業員による目視点検を効率よく行うことができる。
【0010】
本発明の橋梁点検システムにおいて、前記準備画像は、前記橋梁の下面側の指定撮影点における360度の全周画像と、前記指定撮影点から撮影した前記全周画像上の指定点の拡大画像と、を含み、前記全周画像には前記拡大画像を示すアイコンが埋め込まれていることが好ましい。
このような本発明においては、点検作業員は、拡大画像により点検部位の詳細な目視点検ができるとともに、全周画像により橋梁の下面側の全体的な配置が視認でき、拡大画像に撮影された複数の点検部位の相対的な位置関係などが把握できる。そして、全周画像に埋め込まれたアイコンにより所望の点検部位の拡大画像を迅速に開くことができ、操作性を向上できる。
さらに、現場作業員が追加画像の撮影などで走行台車を移動させる際には、点検作業員が全周画像を目視しつつ指示を行うこともでき、この点でも作業効率を向上できる。
【0011】
本発明の橋梁点検システムにおいて、前記点検台車は、前記橋梁上を走行可能な台車本体と、前記台車本体に支持されて前記橋梁の側面に沿って前記橋梁の下面側まで延びる垂直アームと、前記垂直アームに支持されて前記橋梁の下面側に沿って延びる水平アームと、前記水平アームに沿って走行可能な走行台車と、前記走行台車に支持されたカメラと、前記カメラで撮影した画像を外部に送信する通信装置と、前記水平アームの前記走行台車とは反対側に設置されたバランス装置と、を有することが好ましい。
このような本発明においては、橋梁上の台車本体から垂直アームを介して橋梁の下面側に水平アームを配置したのち、走行台車に支持されたカメラで点検箇所の画像を撮影し、通信装置で外部へ送信可能である。この際、走行台車が水平アームに沿って走行させることで、カメラの撮影範囲を拡大できる。また、バランス装置で走行台車の重量バランスをとることができ、バランス装置を走行台車の位置に応じて調整可能とすることで、垂直アームないし水平アームによる安定支持が可能となり、各々の構造の簡素化が図れる。
【0012】
本発明の橋梁点検システムにおいて、前記走行台車は、前記カメラとして、前記指定撮影点における360度の全周画像を撮影可能な全周カメラと、前記指定撮影点から撮影した前記全周画像上の指定点の拡大画像を撮影可能な高解像度カメラと、を装着可能であることが好ましい。
このような本発明においては、橋梁の下面側の指定撮影点における360度の全周画像と、指定撮影点から撮影した前記全周画像上の指定点の拡大画像と、を撮影することができる。この際、全周カメラと高解像度カメラとを交互に装着すれば、全周カメラと高解像度カメラとを同時に装着した場合に比べて走行台車の重量を軽減し、水平アームおよびバランス装置の負担を軽減できる。
【0013】
本発明の橋梁点検システムにおいて、前記バランス装置は、前記垂直アームに対する前記水平アームの重量バランスを補償する固定バランサと、前記走行台車の位置に応じて前記水平アームに沿って移動可能な移動バランサと、を有することが好ましい。
このような本発明においては、変動しない水平アームのバランス用の固定バランサを分離することで、走行台車の位置に応じた変動に対応が必要な移動バランサを小型化および軽量化できる。
【0014】
本発明の橋梁点検システムにおいて、前記水平アームは、前記走行台車の走行経路に沿った給電電極を有し、前記走行台車は、前記給電電極に摺接する集電電極と、前記給電電極からの電力で前記走行台車を駆動するモータと、を有することが好ましい。
このような本発明においては、移動が頻繁な走行台車の駆動をモータで行うことができ、作業性を向上できる。一方、モータへの給電に水平アームの給電電極とこれに摺接する集電電極を用いることで、電源ケーブルを走行台車の移動に従って引き回す際に生じる絡まりなどの不都合を防止できる。
【0015】
本発明の橋梁点検システムにおいて、前記垂直アームは、前記台車本体からの操作で伸縮可能な電動式のテレスコピック構造を有し、前記水平アームは、複数の軸材を連結して形成され、前記台車本体からの手動操作で前記垂直アームを中心に水平面内を旋回可能であることが好ましい。
このような本発明においては、垂直アームの伸縮および水平アームの旋回により、橋梁上の台車本体に支持されて橋梁の下面側に沿った水平アームを効率的に設置できる。この際、負荷が比較的大きな垂直アームの伸縮は電動式としつつ、負荷が比較的小さな水平アームの旋回は手動機構を用いることで、点検台車を軽量化および構造簡素化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、点検作業員が離れた場所から効率よく適切な遠隔点検を行える橋梁点検方法および橋梁点検システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の橋梁点検システムの一実施形態を示す模式図。
図2】前記実施形態の指定撮影点の配置を示す平面図。
図3】前記実施形態の全周画像および部分画像を示す模式図。
図4】前記実施形態の部分画像およびアイコンを示す模式図。
図5】前記実施形態の拡大画像を示す模式図。
図6】前記実施形態における点検手順を示すフローチャート。
図7】前記実施形態の点検台車を示す側面図。
図8】前記実施形態の点検台車を示す正面図。
図9】前記実施形態の点検台車を示す平面図。
図10】前記実施形態の上アームの伸長動作を示す模式図。
図11】前記実施形態の垂直アームの伸長動作を示す模式図。
図12】前記実施形態の水平アームの旋回動作を示す模式図。
図13】前記実施形態の水平アームの分解状態を示す模式図。
図14】前記実施形態の水平アームの連結状態を示す模式図。
図15】前記実施形態の水平アームの内部構造を示す断面図。
図16】前記実施形態の走行台車を示す斜視図。
図17】前記実施形態の走行台車を示す正面図。
図18】前記実施形態の走行台車を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔橋梁点検システム〕
図1において、橋梁点検システム1は、本発明にもとづいて橋梁10の下面側を点検するものである。
橋梁点検システム1においては、点検する橋梁10がある現場へ現場作業員2を派遣するとともに、橋梁10上に点検台車20を設置する。
【0019】
点検台車20は、詳細は後述するが、台車本体21、ポスト22、上アーム23、垂直アーム24、および水平アーム25を有する。台車本体21は橋梁10の歩道11に配置され、ポスト22および上アーム23で橋梁10の高欄12を跨いで垂直アーム24が橋梁10の下面側まで延長されている。水平アーム25は、垂直アーム24の下端部に支持され、橋梁10の下面側に沿って橋梁10の幅方向に延長されている。
水平アーム25には走行台車30が支持され、走行台車30にはカメラ31が支持されている。カメラ31は、橋梁10の下面側にある橋桁および支承部分などの構造体13を撮影可能である。走行台車30は水平アーム25に沿って走行可能であり、走行台車30の移動によりカメラ31の撮影点を選択可能である。水平アーム25の走行台車30とは反対側には、水平アーム25およびカメラ31を含む走行台車30に対して重量バランスをとるためのバランス装置26が設置されている。
点検台車20には、現場作業員2により操作される制御装置27が設置されているとともに、制御装置27には通信装置28が接続されている。カメラ31で撮影された画像は、現場作業員2の操作により外部へ送信可能である。
【0020】
橋梁点検システム1は、橋梁10がある現場から離れた事業所に、画像サーバ40および表示装置51を有する。
画像サーバ40は、現場にある点検台車20の通信装置28から受信したカメラ31の画像を記憶する記憶装置41と、記憶された画像に対して所定の画像処理を行う画像処理装置42と、を有する。
表示装置51は、事業所の会議室50に設置され、橋梁10の点検資格を有する点検作業員3により目視可能である。
前述した画像サーバ40は、事業所の会議室50がある建物に設置されてもよく、離れた場所に設置されてもよく、外部のクラウドサービスを利用してもよい。
橋梁点検システム1において、現場と事業所との間は通信装置52で接続されている。通信装置52は、汎用のネットワーク会議システムで構成され、点検作業員3と現場作業員2とが相互に画像付きで通話可能である。
【0021】
記憶装置41に記憶されて表示装置51に表示される画像としては、点検作業員3による目視点検に先立って作成される準備画像Ipと、点検作業員3による目視点検の際にカメラ31で撮影される追加画像Isと、がある。
図2に示すように、準備画像Ipまたは追加画像Isとして撮影されるカメラ31の画像は、それぞれ橋梁10の下面側に配置された指定撮影点に配置された状態で撮影される。指定撮影点としては、構造体13の間など橋梁10の下面側の比較的広い空間の中央などが好適であり、例えば指定撮影点V1~V10が指定される。
【0022】
準備画像Ipは、橋梁10の下面側の指定撮影点における360度の全周画像IRと、全周画像IR上に表示される構造体13を拡大した状態で撮影した拡大画像ICと、を含む。
全周画像IRは、指定撮影点V1~V10にカメラ31として360度の全周撮影が可能なカメラを配置し、橋梁10の下面側、とくに構造体13を全周撮影して得られる。
拡大画像ICは、指定撮影点V1~V10にカメラ31として高解像度カメラを配置し、構造体13の細部を拡大撮影して得られる。
【0023】
図3において、全周画像IRは、360度全周分が記憶装置41に記憶されるが、表示装置51では画面表示性能に応じて、全周画像IRの一部分である部分画像IDが表示される。表示装置51に表示される部分画像IDは、点検作業員3の操作により全周画像IRの全範囲から選択可能である。
【0024】
図4に示すように、全周画像IRには、その拡大画像ICを示すアイコンIR1(例えばアイコン「P1」「P2」「P3」)、および他の指定撮影点を示すアイコンIR2(例えばアイコン「V1」「V2」「V3」)が埋め込まれている。
アイコンIR1は、表示装置51の操作装置を点検作業員が操作していずれか(例えばアイコン「P1」)を選択することで、アイコン「P1」に対応する拡大画像ICが表示される。
【0025】
図5において、拡大画像ICは、元の全周画像IRの指定撮影点から橋梁10の構造体13の細部を拡大した高解像度画像であり、点検作業員3による目視点検に利用できる十分な画像品質を有する。
拡大画像ICは元の全周画像IRに重ね合わせて表示され、周囲には元の全周画像IRが残っており、拡大画像で隠されていない全周画像の任意の部位を選択することで元の全周画像IR(図4参照)に復帰する。ここで、周囲に表示されている他のアイコンIR1を選択することで、そのアイコンIR1に対応する拡大画像ICが表示される。
一方、拡大画像ICの周囲または元の全周画像IRにおいて、他の指定撮影点を示すアイコンIR2(例えばアイコン「V1」~「V3」)を選択することで、対応する指定撮影点から撮影した全周画像IRに切り替えることができる。
【0026】
以上のように、本実施形態の橋梁点検システム1は、橋梁10に設置されてカメラ31で橋梁10の下面側を撮影可能な点検台車20と、点検台車20と通信可能でカメラ31で撮影した準備画像を記憶可能な記憶装置41と、記憶装置41に記憶された準備画像およびカメラ31で撮影された橋梁10の下面側の追加画像を表示可能な表示装置51と、表示装置51を目視する点検作業員3から点検台車20を操作する現場作業員2へ指示を伝達可能な通信装置52と、を有する。
なお、表示装置51に表示される画像は、現場作業員2の手元のタブレットなどの携帯端末や、後述する点検台車20の操作盤上のモニタにも表示され、現場作業員2は点検作業員3が点検作業中に目視する画像を同時に共有することができる。
【0027】
〔橋梁点検方法〕
本実施形態においては、前述した橋梁点検システム1(橋梁10に設置されてカメラ31で橋梁10の下面側を撮影可能な点検台車20と、点検台車20と通信可能でカメラ31で撮影した画像を記憶可能な記憶装置41と、記憶装置41に記憶された画像およびカメラ31で撮影された画像を表示可能な表示装置51と、を有する)を用い、次のような2段階の手順で橋梁10の下面側の目視検査を行う。
先ず、準備作業として、現場作業員2が点検台車20を操作し、カメラ31で橋梁10の下面側を撮影し、準備画像Ipとして記憶装置41に記憶しておく。
次に、点検作業として、点検作業員3が表示装置51を目視し、表示装置51に準備画像Ipを表示させつつ、点検に必要な追加画像Isについて点検台車20を操作する現場作業員2に指示してカメラ31で追加画像Isを撮影させる。
【0028】
図6に、準備作業および点検作業の具体的手順を示す。
準備作業においては、現場作業員2が橋梁10上に点検台車20を設置し、制御装置27を操作して台車本体21からポスト22、上アーム23、垂直アーム24を展開し、橋梁10の下面側に水平アーム25を配置する(手順S11)。
【0029】
次に、カメラ31として全周カメラを装着し、指定された撮影点(指定撮影点)から橋梁10の下面側の構造体13について360度の全周画像IRを撮影し、通信装置28から画像サーバ40へと送信する(手順S12)。
1つの指定撮影点で撮影ができたら、走行台車30を水平アーム25に沿って移動させることで、カメラ31を橋梁10の幅方向に移動させる。また、台車本体21を橋梁10の歩道11上を移動させることで、カメラ31を橋梁10の延伸方向(車両が走行する方向)に移動させる。これらの指定撮影点の移動および撮影の繰返しにより、全ての指定撮影点からの全周画像IRが記憶装置41に記憶される。
【0030】
次に、カメラ31を高解像度カメラに交換し、全周撮影の際と同様にカメラ31を指定撮影点の各々に順次移動させつつ、各撮影点から構造体13の指定箇所(撮影が必要と指定された箇所)の拡大画像ICを順次撮影し、通信装置28から画像サーバ40へと送信する(手順S13)。
カメラ31の交換は、現場作業員2が制御装置27を操作して垂直アーム24および水平アーム25を橋梁10の上面側へ引き上げて行う。
これらの指定撮影点の移動および撮影の繰返しにより、全ての指定撮影点からの構造体13の指定箇所の拡大画像ICが記憶装置41に記憶される。
【0031】
なお、カメラ31(全周カメラと高解像度カメラ)の交換は、前述のように全ての指定撮影点(例えばV1~V10)を全周カメラで撮影したのち、水平アーム25を橋梁10上まで引き上げて高解像度カメラに交換し、改めて全ての指定撮影点V1~V10を撮影する方式に限らない。例えば、全周カメラで橋梁10の幅方向に並ぶ指定撮影点V1~V5を撮影し、水平アーム25を引き上げて高解像度カメラに交換して指定撮影点V1~V5を撮影した後、台車本体21を移動させて高解像度カメラで指定撮影点V6~V10を撮影し、水平アーム25を引き上げて全周カメラに交換して指定撮影点V6~V10を撮影してもよい。このように、カメラ31の交換は、指定撮影点の全周画像の撮影および拡大画像の撮影の間に適宜行えばよい。ただし、水平アーム25を引き上げる作業が必要なので、カメラ31の交換が少なくなる工程を選択することが好ましい。
【0032】
記憶装置41に、全ての指定撮影点(図2参照)について所期の全周画像IRおよび拡大画像ICが得られたら、画像編集の担当者が全周画像IRを編集し、拡大画像ICを埋め込んでアイコンIR1,IR2(図4参照)に関連付けしていく。全周画像IRおよび拡大画像ICを含む準備画像が作成される(手順S21)。
【0033】
準備画像が作成できたら、点検作業員3による点検作業を行う。
点検作業員3は、準備画像のうち点検箇所が写された全周画像IRを表示装置51に表示させ、さらに拡大画像ICを表示させて目視点検を行う(手順S22)。
点検作業員3は、準備画像に準備された画像では十分確認できない箇所などがあるかを判定し、必要であれば現場作業員2に追加画像の撮影を指示する(手順S23)。
現場作業員2は、点検台車20を操作し、カメラ31で指示された箇所の拡大画像ICを撮影し、追加画像として画像サーバ40へ送信する(手順S14)。
送信された追加画像は記憶装置41に記憶され、点検作業員3は追加された拡大画像ICを検討し、さらに追加が必要であればその旨を現場作業員2に指示する。一方、追加が必要なければ、点検作業員3は点検結果報告書を作成し(手順S24)、現場作業員2にも点検作業の終了を通知する。
点検作業の終了通知を受けたら、現場作業員2は、点検台車20を操作してカメラ31、走行台車30および水平アーム25を引き上げ、これらを台車本体21に格納し、橋梁10から撤収する。これにより橋梁10の点検を完了することができる。
【0034】
〔点検台車〕
前述した通り、橋梁点検システム1の点検台車20は、橋梁10上を走行可能な台車本体21と、台車本体21に支持されて橋梁10の側面に沿って橋梁10の下面側まで延びる垂直アーム24と、垂直アーム24に支持されて橋梁10の下面側に沿って延びる水平アーム25と、水平アーム25に沿って走行可能な走行台車30と、走行台車30に支持されたカメラ31と、カメラ31で撮影した画像を外部に送信する通信装置28と、水平アーム25の走行台車30とは反対側に設置されたバランス装置26と、を有する。
【0035】
図7図8、および図9には、点検台車20が示されている。
台車本体21は、エンジンで自走可能な車両であり、両側に走行用のクローラ211を有する。台車本体21の幅は橋梁10の歩道11に設置可能な1m程度とされ、車道部分を占有しないため交通規制や車線規制が不要であり、作業時間の自由度を確保できる。
台車本体21には、現場作業員2が着座可能なシート212および現場作業員2が操作可能な操作盤213が設置されている。
操作盤213は、現場作業員2による点検台車20の操縦および各種操作を受け付けるものであり、前述した制御装置27および通信装置28、あるいは走行台車30およびカメラ31についても、この操作盤213から操作可能である。
【0036】
台車本体21には、前述した水平アーム25、垂直アーム24、上アーム23を支持するポスト22が設置されている。
ポスト22は、門型枠状に組まれた鋼材で構成され、内側には一対の昇降部材221が支持されている。昇降部材221には、図示省略した手動式の駆動機構が接続され、現場作業員2が操作することにより昇降可能である。
上アーム23は、伸縮可能なテレスコピック構造の軸状部材であり、一対がそれぞれポスト22の昇降部材221に水平に支持されている。上アーム23には、図示省略した手動式の駆動機構が接続され、現場作業員2が操作することにより伸縮可能である。
ポスト22の昇降部材221の昇降および上アーム23の伸縮により、垂直アーム24および水平アーム25は、台車本体21の上面から高欄12を超えて橋梁10の外側まで移動可能である。
【0037】
垂直アーム24は、垂直方向に延びる伸縮可能なテレスコピック構造の軸状部材であり、一対の上アーム23の先端部間に回転自在に支持されている。
水平アーム25は、水平方向に延びる梁状部材であり、垂直アーム24の下端に支持され、垂直アーム24の回転により水平面内で旋回可能である。
垂直アーム24には、図示しない電動式の駆動機構が設置され、現場作業員2が操作盤213を操作することで垂直アーム24を伸縮可能である。垂直アーム24が伸長した際には、下端に支持された水平アーム25を橋梁10の下面側に保持可能である。
垂直アーム24には、ハンドル241、フレキシブルワイヤ242、チェン243、およびスプロケット244を含む手動式の駆動機構が接続され、現場作業員2がハンドル241を操作することで垂直アーム24を回転させ、水平アーム25を橋梁10の下面側で旋回可能である。
【0038】
図10図11、および図12には、橋梁10上の点検台車20から上アーム23および垂直アーム24を伸長させて水平アーム25を橋梁10の下面側に配置する手順が示されている。
点検を実施する際には、点検台車20を橋梁10の歩道11上に搬入する(図10のA部およびB部参照)。ここで、点検台車20を歩道11上に固定するとともに、垂直アーム24の下端に水平アーム25を橋梁10の延伸方向(車両が走行する方向)に沿った状態で支持する。
次に、ポスト22の昇降部材221を上昇させ、垂直アーム24ないし水平アーム25を橋梁10の高欄12より高い位置まで吊り上げた後、上アーム23を伸長させ、垂直アーム24ないし水平アーム25を高欄12の外側に移動させる(図10のC部参照)。
続いて、垂直アーム24を伸長させ、橋梁10の側面に沿って水平アーム25を下降させ、水平アーム25を橋梁10の下面側の構造体13より低い位置に保持する(図11のA部およびB部参照)。
次に、水平アーム25を、橋梁10に沿った方向から橋梁10の幅方向に延びるように90度旋回させる(図12のA部およびB部参照)。
これにより、水平アーム25が橋梁10の下面側に沿って保持され、水平アーム25に支持された走行台車30のカメラ31により、橋梁10の下面側の構造体13の撮影が可能な状態(図1の状態)となる。
【0039】
〔バランス装置〕
水平アーム25は、垂直アーム24を基準に一方の側が長く延長され、当該長い部分に走行台車30が設置されているとともに、反対側にも延びており、当該反対側にはバランス装置26が設置されている。
図12において、バランス装置26は、固定バランサ261と移動バランサ262とを有する。
固定バランサ261は、水平アーム25に内蔵された鋼製ブロックなどで構成され、水平アーム25のうち走行台車30が走行する側の重量と釣り合うように調整されている。
移動バランサ262は、走行台車30と同様な走行機構を有し、水平アーム25に沿って移動可能である。移動バランサ262は、点検台車20の制御装置27により制御され、走行台車30が水平アーム25に沿って移動した際に、支点である垂直アーム24に対して走行台車30と釣り合う位置へと移動される。
例えば、図12では、走行台車30が水平アーム25の先端に近い位置、つまり垂直アーム24から最も離れた位置であるため、移動バランサ262も垂直アーム24から離れた端部に移動される。一方、図11のB部では、走行台車30が垂直アーム24に最も近い位置にあるため、移動バランサ262も垂直アーム24に近い位置に移動される。
【0040】
〔水平アーム〕
図13図14、および図15には、点検台車20の水平アーム25が示されている。
点検台車20では長尺の水平アーム25を用いるが、現場搬入あるいは撤収の利便性を考慮して、水平アーム25は分割式とされている。
図13および図14において、垂直アーム24の下端にはアーム部材250が溶接され、その片側には3本のアーム部材251,252,253が接続され、反対側にはアーム部材254が接続されている。各アーム部材251~254は、いずれも最大長さが2m程度とされ、点検台車20に載置して搬送可能である。
アーム部材250~254の連結部には、ジョイント部材255が用いられている。
【0041】
図15において、アーム部材250~254は、それぞれCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)製の成型材あるいはアルミニウム合金製の押出材であり、各々は断面形状において上下2段に区画され、下側の区画256は閉じた矩形断面の筒状とされ、ジョイント部材255はこの区画256に嵌め込まれている。
アーム部材250~254の端部には、それぞれ両側にフランジ257が形成され、各々のボルト締結によりアーム部材250~254どうしの連結が行われる。
一方、アーム部材250~254の上側の区画258は、上面側が開いた筒状とされ、この区画258は走行台車30およびバランス装置26の移動バランサ262の走行レールとして利用される。さらに、アーム部材250~254の上面の片側には、走行台車30および移動バランサ262に給電するための給電電極259が配置されている。
なお、走行レールとして利用される区画258の内側、および給電電極259の表面のうち、アーム部材250~254の連結部は、それぞれ面取り加工により引っかかりを防止され、かつ連結時には互いに段差が生じないように施工される。
【0042】
〔走行台車〕
図16図17、および図18には、カメラ31を備えた走行台車30が示されている。
走行台車30は、水平アーム25に沿って走行可能な台車本体32を有する。
台車本体32は、両側面にそれぞれ図示しない駆動モータで駆動される複数の車輪33を有する。車輪33は、交互に上方または下方へ変位して設置され、各々が水平アーム25において走行レールとされた区画258の上下の内面に転動することで、水平アーム25に沿って走行可能である。
車輪33の駆動モータを含む走行台車30の各部に電力を供給するために、水平アーム25には、区画258の底面に走行台車30の走行経路に沿って一対の給電電極259が設置されている(図15および図17参照)。台車本体32の進行方向前側および後ろ側には、それぞれ給電電極259に接触する一対の集電電極34が設置され、各々を通して走行台車30で必要となる電力を供給可能である。集電電極34は、台車本体32に対して高さを調整可能であり、弾性部材により先端を給電電極259に押圧され、先端には給電電極259の表面に転動するローラが設置されており、走行時の抵抗を軽減しつつ給電電極259との接触が常に良好に維持される。これらの給電電極259および集電電極34は、区画258の内部に収容されることで、水平アーム25の周囲の他の機器や樹木との干渉を防止でき、常に良好な接触が得られる。
【0043】
台車本体32の上面には、カメラ31を支持する支持体35が設置されている。
支持体35は、第1支柱351、昇降部材352、第2支柱353、第1アーム354、第2アーム355、およびカメラ台356を有する。
台車本体32の上面には第1支柱351が設置され、第1支柱351には片持ち式の昇降部材352が支持され、昇降部材352の先端上面には第2支柱353が設置されている。昇降部材352は、図示しない駆動機構により第1支柱351に沿って昇降可能である。
第2支柱353の上端には斜め上方へ延びる第1アーム354が接続され、第1アーム354の先端には、第1アーム354と交差する斜め上方向へ延びる第2アーム355が接続され、第2アーム355の先端にはカメラ台356が支持されている。第1アーム354は、図示しない駆動機構により、第2支柱353に沿った垂直な軸線まわりに回転自在である。第2アーム355は、図示しない駆動機構により、第2アーム355に沿った斜め上向きの軸線まわりに回転自在である。カメラ台356は、図示しない駆動機構により、水平な軸線まわりに回転自在である。
【0044】
支持体35には、カメラ台356にカメラ31が装着され、昇降部材352の第1支柱351側の端部に照明装置36が固定されている。
カメラ31としては、前述した指定撮影点(前述した図2の指定撮影点V1~V10など)における360度の全周画像IR(図3参照)を撮影可能な全周カメラと、前述した指定撮影点から撮影した全周画像IR上の指定点の拡大画像ICを撮影可能な高解像度カメラと、を交互に装着可能である。全周カメラと高解像度カメラとを同時にカメラ台356に装着してもよい。
カメラ31は、昇降部材352の昇降により高さを調整可能であり、第1アーム354の垂直軸線まわりの回転により全周360度の任意の向きに調整でき、さらに第2アーム355およびカメラ台356の回動により上下の仰角を調整可能である。
照明装置36は、白色LED(発光ダイオード)光源素子を円筒面状に配置したものであり、カメラ31による撮影に十分な光量で撮影対象を照明可能である。
支持体 なお、カメラ31および照明装置36の高さは、昇降部材352の昇降支持体のほかに、垂直アーム24を伸縮させることによっても調整できる。
【0045】
これらのカメラ31および照明装置36、支持体35の各部の駆動モータ、および車輪33の駆動モータは、それぞれ有線または無線で点検台車20の制御装置27に接続されており、走行台車30における全ての動作は、操作盤213から現場作業員2が操作可能である。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態においては、図1のように、現場作業員2が橋梁10上に点検台車20を設置して操作することで、橋梁10の下面側をカメラ31で撮影し、表示装置51に表示することができる。点検作業員3は、遠隔地にある表示装置51により、橋梁10の下面側の目視点検を行うことができる。
橋梁10の下面側の画像としては、予め現場作業員2が点検台車20を操作し、橋梁10の下面側の指定箇所、例えば経験的に目視が頻繁な点検部位などについて、点検作業員3の指示を待たずに撮影を行い、準備画像Ipとして記憶しておくことができる(準備作業)。
点検作業員3による点検作業では、点検作業員3が表示装置51に準備画像Ipを表示させて目視点検を行う。ここで、準備画像Ipでは確認が十分でない点検部位などがあれば、現場作業員2に指示を送り、現場作業員2が点検台車20を操作して追加画像Isを撮影する。撮影された追加画像Isは表示装置51に表示され、点検作業員3による目視点検を受けることができる(点検作業)。
従って、本実施形態においては、現場の点検台車20の操作は現場作業員2が行い、点検作業員3は目視点検および追加画像Isの指示を伝達することで、遠隔地から適切な目視点検を行うことができる。とくに、予め現場作業員2が準備画像Ipを準備しておくことで、点検作業員3による目視点検を効率よく行うことができる。
【0047】
本実施形態の橋梁点検システム1では、準備画像Ipは、橋梁10の下面側の指定撮影点における360度の全周画像IRと、指定撮影点から撮影した全周画像IR上の指定点の拡大画像ICと、を含み、全周画像IRには拡大画像ICを示すアイコンIR1が埋め込まれているものとした。
このため、点検作業員3は、拡大画像ICにより点検部位の詳細な目視点検ができるとともに、全周画像IRにより橋梁10の下面側の全体的な配置が視認でき、拡大画像ICに撮影された複数の点検部位の相対的な位置関係などが把握できる。そして、全周画像IRに埋め込まれたアイコンIR1により所望の点検部位の拡大画像ICを迅速に開くことができ、操作性を向上できる。
さらに、現場作業員2が追加画像Isの撮影などで走行台車30を移動させる際には、点検作業員3が全周画像IRを目視しつつ指示を行うこともでき、この点でも作業効率を向上できる。
【0048】
本実施形態の点検台車20では、橋梁10上の台車本体21から垂直アーム24を介して橋梁10の下面側に水平アーム25を配置したのち、走行台車30に支持されたカメラ31で点検箇所の画像を撮影し、通信装置28で外部へ送信可能である。この際、走行台車30を水平アーム25に沿って走行させることで、カメラ31の撮影範囲を拡大できる。また、バランス装置26で走行台車30の重量バランスをとることができ、バランス装置26の移動バランサ262を走行台車30の位置に応じて調整可能とすることで、垂直アーム24ないし水平アーム25による安定支持が可能となり、各々の構造の簡素化が図れる。
【0049】
本実施形態の点検台車20において、走行台車30は、カメラ31として、指定撮影点における360度の全周画像IRを撮影可能な全周カメラと、指定撮影点から撮影した全周画像IR上の指定点の拡大画像ICを撮影可能な高解像度カメラと、を交互に装着可能とした。
このため、橋梁10の下面側の全周画像IRおよび拡大画像を撮影できるとともに、カメラ31として全周カメラと高解像度カメラとを交互に装着することで、全周カメラと高解像度カメラとを同時に装着した場合に比べて走行台車30の重量を軽減し、水平アーム25およびバランス装置26の負担を軽減できる。
【0050】
本実施形態の点検台車20において、バランス装置26は、垂直アーム24に対する水平アーム25の重量バランスを補償する固定バランサ261と、走行台車30の位置に応じて水平アーム25に沿って移動可能な移動バランサ262と、を有するものとした。
このように、変動しない水平アーム25のバランス用の固定バランサ261を分離することで、走行台車30の位置に応じた変動に対応が必要な移動バランサ262を小型化および軽量化できる。
【0051】
本実施形態の点検台車20において、水平アーム25は、走行台車30の走行経路に沿った給電電極259を有し、走行台車30は、給電電極259に摺接する集電電極34と、給電電極259からの電力で走行台車30を駆動するモータと、を有するものとした。
このため、移動が頻繁な走行台車30の駆動をモータで行うことができ、作業性を向上できる。一方、モータへの給電に水平アーム25の給電電極259とこれに摺接する集電電極34を用いることで、電源ケーブルを走行台車30の移動に従って引き回す際に生じる絡まりなどの不都合を防止できる。
【0052】
本実施形態の点検台車20において、垂直アーム24は、台車本体21からの操作で伸縮可能な電動式のテレスコピック構造を有し、水平アーム25は、複数の軸材であるアーム部材251~254を連結して形成され、台車本体21からの手動操作で垂直アーム24を中心に水平面内を旋回可能であるとした。
このため、垂直アーム24の伸縮および水平アーム25の旋回により、橋梁10上の台車本体21に支持されて橋梁10の下面側に沿った水平アーム25を効率的に設置できる。この際、負荷が比較的大きな垂直アーム24の伸縮は電動式としつつ、負荷が比較的小さな水平アーム25の旋回は手動機構を用いることで、点検台車20を軽量化および構造簡素化できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は橋梁点検方法および橋梁点検システムに利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…橋梁点検システム、2…現場作業員、3…点検作業員、10…橋梁、11…歩道、12…高欄、13…構造体、20…点検台車、21…台車本体、211…クローラ、212…シート、213…操作盤、22…ポスト、221…昇降部材、23…上アーム、24…垂直アーム、241…ハンドル、242…フレキシブルワイヤ、243…チェン、244…スプロケット、25…水平アーム、250…アーム部材、251…アーム部材、254…アーム部材、255…ジョイント部材、256…ジョイント用の区画、257…フランジ、258…走行レールである区画、259…給電電極、26…バランス装置、261…固定バランサ、262…移動バランサ、27…制御装置、28…通信装置、30…走行台車、31…カメラ、32…台車本体、33…車輪、34…集電電極、35…支持体、351…第1支柱、352…昇降部材、353…第2支柱、354…第1アーム、355…第2アーム、356…カメラ台、36…照明装置、40…画像サーバ、41…記憶装置、42…画像処理装置、50…会議室、51…表示装置、52…通信装置、IC…拡大画像、ID…部分画像、Ip…準備画像、IR…全周画像、IR1…アイコン、IR2…アイコン、Is…追加画像。
図1
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