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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154215
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ホーンアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/15 20060101AFI20241023BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20241023BHJP
   H01Q 13/02 20060101ALI20241023BHJP
   H01Q 3/04 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H01Q19/15
H01Q13/22
H01Q13/02
H01Q3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067930
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】荒井 瞳子
(72)【発明者】
【氏名】野呂 崇徳
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 裕三
(72)【発明者】
【氏名】三浦 庸平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 俊也
(72)【発明者】
【氏名】笠原 康汰
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA07
5J020BC12
5J020DA03
5J021AA01
5J021AB05
5J021AB07
5J021DA04
5J021DA05
5J021GA02
5J021HA04
5J021HA09
5J021JA07
5J045AA21
5J045AB05
5J045DA01
5J045DA04
5J045FA08
5J045HA01
5J045MA01
5J045NA01
5J045NA07
(57)【要約】
【課題】奥行きを短くしても、良好な垂直面指向性を得ることが可能なホーンアンテナを提供する。
【解決手段】ホーン3が、階段状で、各段の開口幅が導波管2側から開口側に行くに従って大きくなるように形成されているボックスホーンであり、導波管2側に設けられ、基本モードを放射する第一段のボックス31と、第一段のボックスの開口側に設けられ、基本モード及び高次モードを放射する第二段のボックス32及び第三段のボックス33とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管とホーンとを備え、前記ホーンの基端部が前記導波管と連結されているホーンアンテナであって、
前記ホーンは、
断面が略階段状で、各段の開口幅が前記導波管側から開口側に行くに従って大きくなるように形成されているボックスホーンであり、
前記導波管側に設けられ、基本モードを放射する第一のボックスと、
前記第一のボックスの前記開口側に設けられ、前記基本モード及び高次モードを放射する複数の第二のボックスと、を有する、
ことを特徴とするホーンアンテナ。
【請求項2】
前記導波管は、断面が略四角形の筒状で、前面部に複数のスロットが形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のホーンアンテナ。
【請求項3】
前記導波管と前記ホーンとが一体的に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のホーンアンテナ。
【請求項4】
前記複数の第二のボックスのうち前記開口側の前記第二のボックスを前記第一のボックスに対してオフセットし、または、前記ホーンを回動させてチルト角が調節される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のホーンアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホーンアンテナに関し、特に、奥行きを短くすることを可能にしたホーンアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
ホーンアンテナでは、所望の垂直面指向性を得ることが求められており、従来、ホーンの開口を徐々に広げることで、その要求に対応していた。すなわち、従来のホーンアンテナは、図5に示すように、導波管102の高さ方向の中心面を中心に、上下方向に広がるホーン103が設けられている。そして、ホーン103の開口を徐々に広げることで、基本モードを効率良く放射させ、所望の垂直面指向性を得ていた。しかし、所望の垂直面指向性を得るためには、ホーン103の奥行が長くなり、延いては、導波管102及びホーン103をレドームで覆ったレーダアンテナ101全体の奥行も長くなる。
【0003】
特許文献1には、ボックスホーンが接続された平面型アンテナが開示されている。このアンテナを用いれば、薄型でありながら、高い利得と広い帯域が得られる、と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-508173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、アンテナの奥行と指向性の関係について何ら検討されていない。
【0006】
そこで本発明は、奥行きを短くしても、良好な垂直面指向性を得ることが可能なホーンアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、導波管とホーンとを備え、前記ホーンの基端部が前記導波管と連結されているホーンアンテナであって、前記ホーンは、断面が略階段状で、各段の開口幅が前記導波管側から開口側に行くに従って大きくなるように形成されているボックスホーンであり、前記導波管側に設けられ、基本モードを放射する第一のボックスと、前記第一のボックスの前記開口側に設けられ、前記基本モード及び高次モードを放射する複数の第二のボックスと、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のホーンアンテナであって、前記導波管は、断面が略四角形の筒状で、前面部に複数のスロットが形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のホーンアンテナであって、前記導波管と前記ホーンとが一体的に形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のホーンアンテナであって、前記複数の第二のボックスのうち前記開口側の前記第二のボックスを前記第一のボックスに対してオフセットし、または、前記ホーンを回動させてチルト角が調節される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ホーンの形状を階段状とすることにより発生する高次モードを積極的に利用することによって、従来のフレアタイプのホーンアンテナよりも短い奥行で、所望の垂直面指向性を得ることが可能となる。また、ホーンの形状を階段状とすることにより、断面係数が大きくなり、ホーンアンテナの強度が上がるため、補強部材を減らしてコストを削減することが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、導波管狭壁面側に設けられた各スロット孔の傾斜角度、切込み深さ、幅、及び配置を調整することにより周波数特性を調整し、所望の水平面指向性を得ることが可能となる。
【0013】
請求項3の発明によれば、導波管とホーンとが一体的に形成されるので、導波管部分とホーン部分を別部品とし、ホーンの板金を基端部から導波管に沿って延長し、ホーンで導波管を挟み込んで固定する場合に生じる両者間の「隙間」(組立誤差)が発生せず、組立誤差による水平面指向性の劣化を回避することが可能となる。また、導波管とホーとの組立作業が不要となり、部品点数を減らしてコストを削減することが可能となる。
【0014】
請求項4の発明によれば、ビームのチルト角を調節できるので、所望の垂直面指向性を得ることが可能となる。また、導波管の高さ方向の中心面を中心として、上側のホーンと下側のホーンが非対称となるため、奇数の高次モードだけでなく、偶数の高次モードが発生し、それらの複数の高次モードを重ね合わせて所望の垂直面指向性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の第一の実施の形態に係るレーダアンテナの概略構成を示す側面図である。
図2図1のレーダアンテナの成形方法による第一の変形例を示す図(a)と、第二の変形例を示す図(b)と、第三の変形例を示す図(c)である。
図3】この発明の実施の形態2に係るレーダアンテナの概略構成を示す側面図(a)と、実施の形態3に係るレーダアンテナの概略構成を示す側面図(b)と、実施の形態4に係るレーダアンテナの概略構成を示す側面図(c)である。
図4】実施の形態2に係るレーダアンテナの概略構成を示す側面図(a)と、その垂直面指向性を示す図(b)である。
図5】従来のレーダアンテナの概略構成を示す側面図(a)と、その垂直面指向性を示す図(b)である。
図6】この発明の実施の形態2と実施の形態3を組み合わせたレーダアンテナを示す図(6a)とその特性を示す図(6a-1~6a-2)、並びに、図6aのレーダアンテナをさらに改良したレーダアンテナの概略構成を示す図(6b)とその特性を示す図(6b-1~6b-2)である。
図7】この発明の好ましい形態に係るレーダアンテナの概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。下記の実施の形態では、この発明に係るホーンアンテナが船舶に搭載されるレーダアンテナである場合を例に挙げて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係るレーダアンテナ(ホーンアンテナ)1の概略構成を示す側面図である。このレーダアンテナ1は、導波管2とホーン3を備え、ホーン3の基端部が導波管2と連結されている。このレーダアンテナ1は、ホーンの断面が階段状で、各段の開口幅が導波管2側から開口側に行くに従って大きくなるように形成されているボックスホーンである点で従来のレーダアンテナと異なる。なお、この実施の形態では、レーダアンテナ1が船舶に搭載される場合を想定しているので、図1におけるレーダアンテナ1の上側が空、下側が海であるとする。
【0018】
導波管2は、金属製で、断面が略四角形の筒状の長尺体である。導波管2は、前面部にスロットが複数形成されている、スロット導波管であることが好ましい。すなわち、ホーン3の内側に臨む面である前面部に、前面部の長手方向に対して略垂直方向に延びる長孔状のスロットが、前面部の長手方向に複数形成されていることが好ましい。各スロットの傾斜角度、幅、切込み深さ、配置などは、所望の指向性特性及び周波数特性が得られるように設定されている。
【0019】
ホーン3は、階段状で、各段の開口幅が導波管2側から開口側に行くに従って大きくなるように形成されているボックスホーンである。このように、ホーン3を階段状の不連続に広げられた形状にすることによって基本モードから高次モードが発生し、基本モードと高次モードとが合成されることにより所望の開口分布が得られるようになるため、従来のフレアタイプのホーンアンテナよりも奥行が短くすることができる。具体的には、レーダアンテナ1のホーン3の開口幅を従来のレーダアンテナ101と同じ2.8λ0とする場合に、本発明のレーダアンテナ1は、従来のレーダアンテナ101の奥行4.8λ0の約3分の2となる3.2λ0にすることができる(図4及び5参照)。
【0020】
また、ホーン3を階段状の不連続に広げられた形状にすることによって、高次モードが発生する。この実施の形態では、ホーン3は3段のボックスを有するボックスホーンであり、導波管2側に設けられた第一段のボックス(第一のボックス)31が基本モードを放射し、第一段のボックスの開口側に設けられた第二段のボックス(第二のボックス)32が基本モード及び3次モードを放射し、第二段のボックス32の開口側に設けられた第三段のボックス(2つめの第二のボックス)33が基本モードと3次モードと5次モードを放射する。ここで「ボックス」とは、上側ホーン3と下側ホーン3によって囲まれた、導波管2の長手方向に伸びる空間であって、かつ、階段状のホーン3の段差部と角部(不連続部)で区切られた空間のことをいう。なお、後述するように、ホーン3の各ボックスの垂直断面は、導波管2の高さ方向の中心面に平行であっても、テーパー状であっても良い。
【0021】
第二のボックスの数は2つに限定されるものではない。第二のボックスは、1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。レーダアンテナ1の開口幅を従来のレーダアンテナと同程度としつつ、奥行を短くする場合には、基本モード、3次モード及び5次モードを放射する3段のボックスホーンとすることが好ましい。
【0022】
また、複数の第二のボックスが放射する高次モードは、3次モードや5次モードに限定されない。一般的に、ホーン3が導波管2の高さ方向の中心面を中心として上下対称に形成されている場合には、奇数の高次モードが発生し、上下非対称に形成されている場合には、奇数の高次モードに加えて偶数の高次モードが発生する。従って、後述するように、第三段のボックス33を第一段のボックス31に対してオフセットしたり、ホーン3を導波管2との連結部を中心として回動させたりして、ホーン3を上下非対称に形成した場合には、基本モード、3次モード及び5次モードに加えて、2次モードと4次モードも発生する。
【0023】
高次モードの発生比率は、各段を形成するボックスの高さ(開口幅)の比率によって決まる。例えば、5次モードの発生比率は、第二段のボックス32の高さ(開口幅)と第三段のボックス33の高さ(開口幅)との比率によって決まる。このように、高次モードの発生比率や高次モードと基本モードの発生比率を適宜調整することにより、レーダアンテナ1の垂直面指向性を所望の値とすることが可能となる。
【0024】
図2は、図1のレーダアンテナ1の成形方法による変形例を示す図(a)~(c)である。第一の変形例(a)は、板金で製造されたホーン3とスロットを有する導波管2とを別部品とし、両者を溶接により連結するか、又は、ホーン3の板金を基端部から導波管2に沿って延長し、ホーン3で導波管2を挟み込むことにより連結しており、導波管2のスロットから給電されるようになっている。第二の変形例(b)は、ホーン3とスロットを有する導波管2とが押出成形により一体的に形成されており、導波管2のスロットから給電されるようになっている。第三の変形例(c)は、板金で製造されたホーン3の基端部が導波管2と溶接等の手段により連結され、ホーン3の一番外側の角部が切り離されて別部品として形成されたものであり、導波管2から給電されるようになっている。
【0025】
これら3つの変形例の中でも、導波管2とホーン3を別部品とした場合に導波管2とホーン3との間に生じ得る「隙間」(組立誤差)が生じない点で、第二の変形例(b)が好ましい。これにより、第二の変形例(b)は、水平面指向性の劣化を回避できる。また、第二の変形例(b)は、一体的に形成されるので、組立作業が不要であり、部品点数が少なく、コストを削減することが可能となる点でも好ましい。なお、第三の変形例(c)において、ホーン3の一部を切り離したことによって生ずる「隙間」は、水平面指向性の劣化の原因とならないことが確認されている。
【0026】
なお、レーダアンテナ1の成形方法によるバリエーションは、上記の3つの変形例に限定されるものではない。例えば、第一の変形例(a)と第二の変形例(b)に用いられるスロットを有する導波管2は、スロットが形成されていない導波管2であっても良い。その場合、導波管2から給電される。また、第三の変形例(c)に用いられる導波管2は、スロットを有する導波管2であっても良く、その場合、スロットから給電される。さらに、第三の変形例(c)に用いられる導波管2とホーン3は、押出成形により一体的に形成されていても良い。
【0027】
以上説明した通り、この実施の形態に係るレーダアンテナ1によれば、ホーン3の形状を階段状とすることにより発生する高次モードを積極的に利用することによって、従来のフレアタイプのホーンアンテナよりも短い奥行で、所望の垂直面指向性を得ることが可能となる。また、ホーン3を階段状とすることで、断面係数が大きくなり、レーダアンテナ1の強度が上がるため、補強部材を減じてコストを削減することが可能となる。
【0028】
また、この実施の形態に係るレーダアンテナ1において、導波管2にスロットが形成されている場合には、導波管狭壁面側に設けられた各スロット孔の傾斜角度、切込み深さ、幅、及び配置を調整することにより周波数特性を調整し、所望の水平面指向性を得ることが可能となる。
【0029】
さらに、この実施の形態に係るレーダアンテナ1において、導波管2とホーン3とを一体的に形成する場合には、導波管2とホーン3を別部品として組立てた場合に生じ得る両者間の「隙間」(組立誤差)が発生せず、組立誤差による水平面指向性の劣化を回避することが可能となる。また、一体的に形成される場合、組み立て作業が不要となるとともに、部品点数も減じて、コストを削減することが可能となる。
【0030】
(実施の形態2)
図3(a)及び図4(a)は、この実施の形態に係るレーダアンテナ1の概略構成を示す側面図である。
【0031】
この実施の形態に係るレーダアンテナ1は、下側ホーン3の略水平方向の長さが、上側ホーン3の略水平方向の長さよりも長く設定されている点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0032】
図3(a)及び図4(a)のレーダアンテナ1では、下側ホーン3の略水平方向の長さを上側ホーンの略水平方向の長さよりも長く設定されている。これにより、海側への不要放射が抑制され、海側での垂直面指向性において、サイドローブを抑制し、所望のサイドローブレベル特性を得ることが可能となる。換言すれば、この実施の形態は、海側での所望の垂直面指向性を得るために、下側ホーン3の略水平方向の長さを上側ホーン3の略水平方向の長さよりも長く設定したものである。
【0033】
下側ホーン3の略水平方向の長さを上側ホーンの略水平方向の長さよりも長く設定すると、図4(b)に示す通り、海側のサイドローブレベルを約-30dB未満に下げることができる。ここで、図4(b)において、空側ではサイドローブが高いところが発生するが、船舶レーダにおいては、空側でのサイドローブは一般に許容されるため、運用上の問題はない。
【0034】
(実施の形態3)
図3(b)は、この実施の形態に係るレーダアンテナ1の概略構成を示す側面図である。
【0035】
この実施の形態に係るレーダアンテナ1は、開口側の第三段のボックス33を第一段のボックス31に対して高さ方向でオフセットさせている点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0036】
図3(b)のレーダアンテナ1では、第三段のボックス33が第一段のボックス31に対して高さ方向でオフセットされている。具体的には、第三段のボックス33の高さ方向の中心が、第一段のボックス31の高さ方向の中心より下側に配置されている。これにより、ビームのチルト角を調整することができ、その結果として所望の垂直面指向性を得ることが可能となる。換言すれば、この実施の形態は、所望の垂直面指向性を得るために、第三段のボックス33を第一段のボックス31に対してオフセットして、ビームのチルト角を調整したものである。
【0037】
(実施の形態4)
図3(c)は、この実施の形態に係るレーダアンテナ1の概略構成を示す側面図である。
【0038】
この実施の形態に係るレーダアンテナ1は、ホーン3を導波管2との連結部を中心として回動させている点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0039】
図3(c)に記載されたレーダアンテナ1では、ホーン3を導波管2との連結部を中心として上方向または下方向に回動させている。これにより、ビームのチルト角を調整することができ、その結果として所望の垂直面指向性を得ることが可能となる。換言すれば、この実施の形態は、所望の垂直面指向性を得るために、ホーン3を導波管2との連結部を中心として上方向または下方向に回動させて、ビームのチルト角を調整したものである。
【0040】
なお、この実施の形態では、ホーン3の回動中心をホーン3と導波管2との連結部としているが、ホーン3の回動中心はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、下側のホーン3の端部を回動中心としてホーン3を回動しても良い。他に、ホーンの中心部を回動中心とする例も挙げられる。
【0041】
実施の形態2~4に係るレーダアンテナ1では、ホーン3が導波管2の高さ方向の中心面を中心として上下非対称に形成されている。従って、レーダアンテナ1の開口側では、基本モード、3次モード及び5次モードに加えて、2次モードと4次モードも発生している。
【0042】
本発明では、レーダアンテナ1において所望の垂直面指向性を得るために、上述の実施の形態2~4の構成を組み合わせて用いることが好ましい。
【0043】
その一例として、図6に実施の形態2の構成と実施の形態3の構成を組み合わせたレーダアンテナ1を示す。図6aに記載のレーダアンテナ1は、階段状のホーン3の基端部がスロットを有する導波管2と連結されているレーダアンテナ1であって、下側ホーン3の略水平方向の長さが、上側ホーン3の略水平方向の長さよりも長く設定されているとともに(実施の形態2の構成)、第三段のボックス33の高さ方向の中心が、第一段のボックス31の高さ方向の中心より数mm下側にオフセットされている(実施の形態3の構成)。
【0044】
図6aのレーダアンテナ1は、下側ホーン3の略水平方向の長さが、上側ホーン3の略水平方向の長さよりも長く設定されているので、垂直面指向性を示す図6a-1において、海側のサイドローブが低く、海側の不要放射が抑制されている。一方、第二段のボックス33の高さ方向の中心が、第一段のボックス31の高さ方向の中心より数mm下側にオフセットされているため、下側ホーン3の略水平方向の長さを伸長したことによって空側にずれたメインローブの中心が海側に戻っている。
【0045】
図6bのレーダアンテナ1は、図6aのレーダアンテナ1の開口幅を広げ、利得を上げる改良を施したものである。図6では、開口幅がWa1(mm)(図6aの第三段のボックス33の高さ)からWb1(mm)(図6bの第三段のボックス33の高さ)に広げられている。すなわち、Wa1<Wb1である。ここで、第三段のボックス33の高さを変更したにもかかわらず、第二段のボックス32の高さを変更しないと、高次モード(3次モード及び5次モード)の発生比率が変わってしまう。そこで、高次モードの発生比率を維持するために、図6bにおける第三段のボックス33の高さWb1と第二段のボックス32の高さWb2の比率が、図6aにおける第三段のボックス33の高さWa1と第二段のボックス32の高さWa2の比率S(S=Wa2/Wa1)と同じになるよう、図6bの第二段のボックス32を形成するホーン3の開口側の高さWb2を決定する(Wb1×S=Wb2)。その結果、図6bのホーン3の垂直断面は、第二段のボックス32の部分がテーパー状になっている。
【0046】
図6bのレーダアンテナ1は、開口幅を広げたため、ビーム幅は23度から22度へ狭まり、利得は0.1dB向上している。その一方で、第二ボックス32部分のホーン3をテーパー状に形成しているので、各高次モードの発生比率が変わらず、図6aのレーダアンテナ1と同様の垂直面指向性を有する(図6a-1と図6b-1参照)。
【0047】
図7は、この発明の好ましいレーダアンテナ1の概略構成を示す側面図である。図7のレーダアンテナ1は、実施の形態2~4の構成を組み合わせるとともに、ホーン3とスロットを有する導波管2とを押出成形により一体的に形成しているので、従来のフレアタイプのホーンアンテナよりも短い奥行で、所望の垂直面指向性を得ることができるとともに、導波管2とホーン3との間に生じ得る「隙間」(組立誤差)に起因する水平面指向性の劣化を回避できる。また、ホーン3が階段状なので、強度が高く、補強部材としての底板4の長さ(紙面奥行き方向)も削減することが可能となる。
【0048】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、レーダ用途のホーンアンテナを例に説明したが、本発明のホーンアンテナは、例えば、衛星通信、携帯基地局、マイクロ波帯又はミリ波帯の無線通信に用いられるホーンアンテナであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 レーダアンテナ(ホーンアンテナ)
2 導波管
3 ホーン
30 不連続部
31 第一段のボックス(第一のボックス)
32 第二段のボックス(第二のボックス)
33 第三段のボックス(2つめの第二のボックス)
4 底板
101 レーダアンテナ
102 導波管
103 ホーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7