(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154220
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】キトサン及びサリチル酸又はその誘導体を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241023BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20241023BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20241023BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/368
A61K8/92
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023067935
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 侑市
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
(72)【発明者】
【氏名】新美 類
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真介
(72)【発明者】
【氏名】山本 麻理子
(72)【発明者】
【氏名】島谷 満
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC122
4C083AC231
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC261
4C083AC271
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC331
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC811
4C083AD321
4C083AD322
4C083BB01
4C083BB11
4C083CC02
4C083CC07
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】環境に適合性の成分を含みながら、界面活性剤の力を借りることを減らした又は界面活性剤の力を借りない、油及び水を含む、安定性の組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)キトサン類から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物、(c)水、及び(d)油を含む組成物であって、界面活性剤を含まない、又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含む、組成物に関する。本発明による組成物は、界面活性剤を一切含まない又は少量の界面活性剤しか含まないが、油及び水を含んでも安定性であり、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キトサン類から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物、
(c)水、並びに
(d)油
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用組成物であって、
界面活性剤を含まない、又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含む、組成物。
【請求項2】
(a)カチオン性ポリマーが、分子量が20,000超のキトサン類から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
サリチル酸の誘導体が、式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、水素、又は飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状脂肪族炭化水素基、又はアルコキシ、エステル若しくはケトキシ基、又は少なくとも1つの共役若しくは非共役二重結合を有する不飽和基を表し、これらの基は、1~22個の炭素原子を含有してよく、任意選択により、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、遊離形態の又は1~6個の炭素原子を有する酸によってエステル化されているヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、
R
2は、ヒドロキシル基又は式(II):
【化2】
(式中、
R
4は、飽和脂肪族炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有するアルケニル基を表す)
のエステル基を表し、
R
3は、水素又は1~30個の炭素原子を有し、任意選択により1つ以上の上記置換基を含有する飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪族炭化水素基を表す]
によって表される化合物から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(b)化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して、50質量%~99質量%、好ましくは60質量%~97質量%、より好ましくは70質量%~95質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(d)油が、植物油、合成エステル油、及びこれらの混合物から、好ましくは植物油から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物中の(d)油の量が、組成物の総質量に対して、1質量%~50質量%、好ましくは3質量%~45質量%、より好ましくは5質量%~40質量%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(e)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、好ましくは1種の一価の非ポリマー有機酸又はその塩、より好ましくは1種の一価のカルボン酸又はその塩、更により好ましくは乳酸又はその塩を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(e)一価の非ポリマー酸又はその塩の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
(f)少なくとも1種の脂肪酸を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(f)脂肪酸が、C4~C26、好ましくはC6~C24、より好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
組成物中の(f)脂肪酸の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
組成物のpHが、3~8、好ましくは3~7.5、より好ましくは3~7である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質に、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させてケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサンとサリチル酸又はその誘導体とを含む組成物、並びに該組成物を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に適合性の化粧料の配合は、環境問題を考慮して設計及び開発されたものであり、世界的な課題を満たすための主要な目標になっている。
【0003】
したがって、これらの環境問題に対処するための、より持続可能な組成物、調製方法及び成分を提案することが必須である。
【0004】
この文脈において、特に再生可能な原料及び/又は良好な自然指数を有する材料及び/又は天然起源の材料、より具体的には植物起源の材料の使用を促進し、一方で石油化学起源の化合物の使用を減少することによって、より良好なカーボンフットプリントを有する新規の化粧用組成物を開発することが重要である。
【0005】
広く知られているように、特定の化粧用組成物及び他の任意の組成物は、これらに限定されないがW/O、O/W、W/O/W及びO/W/Oを含めたエマルションの形態で存在する。大抵の場合、エマルション形態を安定化するために乳化剤又は界面活性剤が必須である。しかしながら、一部の界面活性剤には、皮膚への刺激等の潜在的な問題がありうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
環境に適合性の成分を含みながら、界面活性剤の力を借りることを減らした又は界面活性剤の力を借りない、油及び水を含む、安定性の組成物が必要とされている。
【0008】
したがって、本発明の第1の目的は、組成物が界面活性剤を一切含まない又は少量しか含まない場合であっても、油及び水を含む安定性の組成物を提供することである。
【0009】
加えて、本発明の第2の目的は、少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記の目的は、
(a)キトサン類から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物、
(c)水、並びに
(d)油
を含む、組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用組成物であって、
界面活性剤を含まない、又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含む、組成物によって達成することができる。
【0011】
(a)カチオン性ポリマーは、分子量が20,000超のキトサン類から選択することができる。
【0012】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってよい。
【0013】
サリチル酸の誘導体は、式(I):
【0014】
【0015】
[式中、
R1は、水素、又は飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状脂肪族炭化水素基、又はアルコキシ、エステル若しくはケトキシ基、又は少なくとも1つの共役若しくは非共役二重結合を有する不飽和基を表し、これらの基は、1~22個の炭素原子を含有してよく、任意選択により、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、遊離形態の又は1~6個の炭素原子を有する酸によってエステル化されているヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、
R2は、ヒドロキシル基又は式(II):
【0016】
【0017】
(式中、
R4は、飽和脂肪族炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有するアルケニル基を表す)
のエステル基を表し、
R3は、水素又は1~30個の炭素原子を有し、任意選択により1つ以上の上記置換基を含有する飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪族炭化水素基を表す]
によって表される化合物から選択することができる。
【0018】
本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0019】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~99質量%、好ましくは60質量%~97質量%、より好ましくは70質量%~95質量%であってもよい。
【0020】
(d)油は、植物油、合成エステル油、及びこれらの混合物から、好ましくは植物油から選択されてもよい。
【0021】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~50質量%、好ましくは3質量%~45質量%、より好ましくは5質量%~40質量%であってもよい。
【0022】
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩、好ましくは1種の一価の非ポリマー有機酸又はその塩、より好ましくは1種の一価のカルボン酸又はその塩、更により好ましくは乳酸又はその塩を更に含んでもよい。
【0023】
本発明による組成物中の(e)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0024】
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種の脂肪酸を更に含んでもよい。
【0025】
(f)脂肪酸は、C4~C26、好ましくはC6~C24、より好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択されうる。
【0026】
本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0027】
本発明による組成物のpHは、3~8、好ましくは3~7.5、より好ましくは3~7であってもよい。
【0028】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、
該組成物を乾燥させてケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
鋭意検討の結果、本発明者らは、組成物が界面活性剤を一切含まない又は少量しか含まない場合であっても、油及び水を含み、且つ少なくとも1種の環境に適合性の成分を含むことができる、安定性の組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0030】
そのため、本発明による組成物は、
(a)キトサン類から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物、
(c)水、並びに
(d)油
を含み、
界面活性剤を含まない、又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含む。
【0031】
本発明による組成物は、界面活性剤を一切含まない又は少量の界面活性剤しか含まないが、油及び水を含んでも安定性である。
【0032】
(a)キトサン類から選択されるカチオン性ポリマーは、(a)カチオン性ポリマーのアミノ基と(b)化合物のカルボキシ基との間のイオン相互作用により、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される化合物と錯体を形成することができる。
【0033】
上記のイオン相互作用は、(a)カチオン性ポリマーと(d)油との間の親和性を強化することができる。そのため、上記の錯体は、(d)油と(c)水との間の界面上に効果的に存在することができ、高分子界面活性剤のように作用することができる。そのため、(c)水中の(d)油又は(d)油中の(c)水の分布は、安定性であることができる。
【0034】
キトサン類は天然資源から得ることができるため、(a)カチオン性ポリマーは環境に適合性の成分である。したがって、本発明による組成物は、環境に適合性の成分を含むことができる。
【0035】
加えて、成分(b)~(d)並びに成分(e)及び(f)は、植物等の再生可能な材料及び/又は生分解性材料を起源とすることができる。したがって、本発明による組成物は、環境に適合性とすることができる。
【0036】
本発明による組成物が界面活性剤を含まない又は少量の界面活性剤しか含まないため、本発明による組成物の刺激を少なくできる。
【0037】
本発明による組成物は、(c)水を含む水性相を含んでいてもよい。
【0038】
本発明による組成物は、(d)油を含む脂肪相を含んでいてもよい。本発明による組成物が(f)少なくとも1種の脂肪酸を含む場合、(f)脂肪酸は脂肪相中に存在しうる。
【0039】
脂肪相は、水性相中に分散されていてもよい。この場合、脂肪相は不連続相であり、一方で水性相は連続相である。そのため、本発明による組成物は、O/W(水中油型)の形態であってもよい。
【0040】
本発明による組成物は、比較的多量の(d)油を含む場合であっても安定性である。そのため、本発明による組成物は、比較的多量の(d)油を含むことができる。
【0041】
本発明による組成物は、長期間にわたって安定性である。換言すれば、本発明による組成物の相分離を、長期間にわたって防止することができる。
【0042】
したがって、本発明による組成物を、長期間にわたり、保存することができる。
【0043】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0044】
[組成物]
(カチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。
【0045】
(a)カチオン性ポリマーのタイプに限定はない。2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのカチオン性ポリマー、又は異なるタイプのカチオン性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0046】
カチオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。(a)カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gでもよい。
【0047】
(a)カチオン性ポリマーは、キトサン類から選択される。
【0048】
キトサンは、20,000超、好ましくは50,000超、より好ましくは80,000超の分子量(Da)を有することが好ましい。換言すれば、(a)カチオン性ポリマーは、高分子量キトサンである。
【0049】
キトサンの分子量(Da)は、1,000,000未満、好ましくは500,000未満、より好ましくは300,000未満であってもよい。
【0050】
そのため、キトサンの分子量(Da)は、20,000超且つ1,000,000未満、好ましくは50,000超且つ500,000未満、より好ましくは80,000超且つ300,000未満であってもよい。
【0051】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。分子量は、例えば、ASTM D5296-19に従って、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定又は決定することができる。
【0052】
キトサンは、自然界で非常に希少である。キトサンは、シロアリの女王等の特定の昆虫の外骨格中及び特定の部類の菌類である接合菌綱の細胞壁中でのみ報告されている。
【0053】
キトサンは、キチンの脱アセチル化によって得ることができる。キチンは、β型結合(1,4)によって一緒に連結された幾つかのN-アセチル-D-グルコサミン単位から構成された多糖である。
【0054】
キトサンの理想的な化学構造は、グリコシド結合(1→4)によって結合されたβ-D-グルコサミンモノマーの配列である。
【0055】
本発明による「キトサン」は、構成単位N-アセチル-D-グルコサミン及びD-グルコサミンから形成される任意のコポリマーであって、そのアセチル化度が90%未満、好ましくは80%未満、好ましくは70%未満、好ましくは60%未満、好ましくは50%未満である、任意のコポリマーを意味する。キトサンは、β型結合(1,4)により一緒に連結されているグルコサミン糖単位(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン単位(アセチル化単位)からなり、ポリ(N-アセチル-D-グルコサミン)-ポリ(D-グルコサミン)タイプのポリマーである。
【0056】
より好ましくは、キトサンのアセチル化度は、40%以下、好ましくは35%以下、好ましくは25%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下である。
【0057】
アセチル化度は、全単位の数に対するアセチル化単位の百分率であり、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)又は強塩基による滴定法によって決定することができる。
【0058】
本発明のキトサンは、好ましくは、菌類起源から調製された多糖である。特に、キトサンは、安全且つ豊富な食料又はバイオテクノロジーによる菌類起源[マッシュルーム(Agaricus bisporus)若しくはクロコウジカビ(Aspergillus niger)等]から抽出及び精製される。
【0059】
本発明のキトサンは、好ましくは、子嚢菌綱(Ascomycete)タイプの菌類、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)及び/又は担子菌類(Basidiomycete fungus)、具体的にはシイタケ(Lentinula edodes)及び/又はマッシュルーム(Agaricus bisporus)の菌糸体に由来する。好ましくは、菌類はクロコウジカビ(Aspergillus niger)である。
【0060】
キトサンは、遺伝子組み換え生物(GMO:Genetically Modified Organisms)起源のものであってもよいが、好ましくは非GMO起源のものである。
【0061】
本発明によるキトサンは、天然であり、すなわち、修飾されていない。特に、一切の化学修飾を含有しない。
【0062】
キトサンの一調製方法は、WO03/068824に記載のものである。
【0063】
好ましくは、本発明において使用されるキトサンは、粉末の形態である。Kitozyme社により名称Kiosmetine又はKionutrime、例えばKiosmetine-CSH及びKiosmetine Pで市販されている。
【0064】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0065】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0066】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってよい。
【0067】
[サリチル酸及びその誘導体]
本発明による組成物は、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物を含む。2種以上の(b)化合物が使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
サリチル酸は、以下の化学式によって表される化合物である。
【0069】
【0070】
サリチル酸の誘導体は、次式(I)で表される化合物又はその塩から選択することができる:
【0071】
【0072】
[式中、
R1は、水素、又は飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状脂肪族炭化水素基、又はアルコキシ、エステル若しくはケトキシ基、又は少なくとも1つの共役若しくは非共役二重結合を有する不飽和基を表し、これらの基は、1~22個の炭素原子を含有してよく、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、及び遊離形態の又は1~約6個の炭素原子を有する酸によってエステル化されているヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、
R2は、ヒドロキシル基又は式(II):
【0073】
【0074】
(式中、
R4は、飽和脂肪族炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有するアルケニル基を表す)
のエステルを表し、
R3は、水素、又は2から30個の炭素原子を有し、任意選択により1つ以上の上に列挙したもの等の置換基を含有する飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪族炭化水素基を表す]。
【0075】
R3として、2から30個の炭素原子を含有するアルキル基及びアルケニル基が好適であり、これらは任意選択により置換される。
【0076】
好ましい置換基は、ヒドロキシル基である。
【0077】
R3が水素の場合、式(I)の化合物の塩、特に塩基との反応によって得られる塩を使用することができる。好適な塩基としては、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム及びカリウム)、水酸化アンモニウム、第一級、第二級、第三級又は環状有機アミン等の有機塩基、及びアミノ酸が挙げられる。塩基の具体例としては、グリシン、タウリン、アラニン、バリン、システイン、トリヒドロキシメチルアミノメタン(TRISTA)及びトリエタノールアミンが挙げられる。
【0078】
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物は、式(I)の誘導体を使用して調製される(式中、R1は、少なくとも4個の炭素原子を含有する)。例えば、R1は、4から11個の炭素原子を有する飽和直鎖状アルキル基又はアルコキシ基であってもよい。
【0079】
式(I)の誘導体(式中、R2はヒドロキシルであり、R3は水素である)には、5-n-オクタノイルサリチル酸(CTFA名:カプリロイルサリチル酸)、5-n-デカノイルサリチル酸、5-n-ドデカノイルサリチル酸、5-n-オクチルサリチル酸、5-n-ヘプチルオキシサリチル酸、5-tert-オクチルサリチル酸、5-ブトキシサリチル酸、5-エトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸、5-プロポキシサリチル酸、5-メチルサリチル酸、5-エチルサリチル酸及び5-プロピルサリチル酸(任意選択により塩基で処理されていてもよい)が挙げられる。
【0080】
R1が水素を表し、R2がヒドロキシル基を表す場合、式(I)の誘導体はサリチル酸エステルである。好ましい化合物としては、ドデシル、ヘキサデシル、ステアリル、セチル、ミリスチル、リノレイル、オクチル、オレイル及びトリデシルアルコール等の脂肪族アルコールのエステル、又はブチル、プロピル及びエチルアルコールのエステル、又はプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール若しくはグリセロール等のポリオールのエステル、又はこれらのエステルの混合物が挙げられる。具体例としては、サリチル酸セチル、サリチル酸ドデシル及びサリチル酸トリデシルが挙げられる。
【0081】
本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0082】
本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0083】
本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0084】
(水)
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0085】
(c)水は、本発明による組成物中の連続相であってもよい水性相を構成することができる。
【0086】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってもよい。
【0087】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下であってもよい。
【0088】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~99質量%、好ましくは60質量%~97質量%、より好ましくは70質量%~95質量%であってもよい。
【0089】
(油)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の油を含む。2種以上の油が使用される場合、それらは、同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
(d)油は、本発明による組成物中の分散相又は不連続相であってもよい脂肪相を構成することができる。
【0091】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品に一般に使用されるものを、単独で又はそれらを組み合わせて使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0092】
(d)油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油;植物油若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油;又はそれらの混合物であってもよい。
【0093】
(d)油は、植物又は動物起源の油等の生物資源由来の油、化学物質由来の、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪族アルコール等の非生物資源由来の油、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0094】
植物油の例として、例えば、アプリコット油、亜麻仁油、カメリア油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、ベニバナ油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0095】
動物油の例として、例えば、スクアレン及びスクアランを挙げることができる。
【0096】
合成油の例として、アルカン油、例えば、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油、並びに人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0097】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一価酸又は多価酸と、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一価アルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、エステルの炭素原子の総数は10以上である。
【0098】
好ましくは、一価アルコールのエステルの場合、本発明のエステルが誘導されるアルコール及び酸のうちの少なくとも1種は、分枝状である。
【0099】
一価酸と一価アルコールとのモノエステルの中で、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0100】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、並びにモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルもまた、使用することができる。
【0101】
特に以下:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール及びジイソノナン酸ジエチレングリコールを挙げることができる。
【0102】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の、糖エステル及びジエステルを使用することができる。用語「糖」が、アルデヒド又はケトン官能基ありの又はなしの、少なくとも4個の炭素原子を含む、幾つかのアルコール官能基を含有する、酸素を保持する炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖とすることができる。
【0103】
挙げることができる好適な糖の例には、スクロース(又はショ糖)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特に、アルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0104】
脂肪酸の糖エステルは、とりわけ、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状の飽和若しくは不飽和C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル又はエステルの混合物を含む群から選択されうる。これらの化合物は、不飽和である場合、1から3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有することができる。
【0105】
この変形形態によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物から選択することもできる。
【0106】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ油脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えば、特に、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルでもよい。
【0107】
より具体的には、モノエステル及びジエステル、特に、スクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0108】
挙げることができる例は、ジオレイン酸メチルグルコースである、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品である。
【0109】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸2-エチルヘキシル/カプリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0110】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0111】
炭化水素油は、以下から選択されうる:
- 直鎖状又は分枝状、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例は、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンが挙げられる。
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、流動パラフィン、流動石油ゼリー、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、及びスクアラン。
【0112】
炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱油(例えば流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、及びデセン/ブテンコポリマー;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0113】
脂肪族アルコールにおける「脂肪族」という用語は、比較的多数の炭素原子を含むことを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても、不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0114】
脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和の、直鎖状及び分枝状基から選択される)を有しうる。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル基及びC12~C20アルケニル基から選択されうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0115】
脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0116】
脂肪族アルコールが飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。
【0117】
したがって、脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和C6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C6~C30アルコール、より好ましくは直鎖状又は分枝状の、飽和C12~C20アルコールから選択することができる。
【0118】
用語「飽和脂肪族アルコール」は、本明細書では、長鎖の脂肪族飽和炭素鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪族アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状の飽和C6~C30脂肪族アルコールの中で、直鎖状又は分枝状の飽和C12~C20脂肪族アルコールが、好ましくは使用されうる。任意の直鎖状又は分枝状の飽和C16~C20脂肪族アルコールを、より好ましくは使用することができる。分枝状C16~C20脂肪族アルコールを、更により好ましくは使用することができる。
【0119】
飽和脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えばセテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪族アルコールとして使用することができる。
【0120】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中で使用される脂肪族アルコールは、好ましくは、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選択される。
【0121】
植物又は動物起源の油等の生物資源由来の油、より好ましくは植物油を使用することが好ましい。
【0122】
植物又は動物起源の油には、炭化水素油が含まれうる。
【0123】
植物由来の炭化水素油の好ましい例としては、例えば、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、スクアラン、ヘミスクアラン等の直鎖状又は分枝状炭化水素を挙げることができる。
【0124】
(d)油は、植物油、合成エステル油、及びこれらの混合物から、好ましくは植物油から選択されることが好ましい。
【0125】
好ましい実施形態において、(d)油は、複数の(a)カチオン性ポリマー又は(a)カチオン性ポリマーと(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される化合物との錯体によって取り囲まれていてもよく、或いは(d)油は、(a)カチオン性ポリマー又は上記の錯体によって形成されたカプセルの中空内に存在してもよい。換言すれば、(d)油は、(a)カチオン性ポリマー若しくは上記の錯体によって覆われていてもよく、又は(a)カチオン性ポリマー及び上記の錯体によって形成されたカプセルは、カプセルの中空内に(d)油を含む。
【0126】
(a)カチオン性ポリマー若しくは上記の錯体によって取り囲まれた又は(a)カチオン性ポリマー若しくは上記の錯体によって形成されたカプセルの中空内に存在する(d)油は、皮膚等のケラチン物質と直接接触することができない。したがって、(d)油がべたつく又は油っぽい使用感を有する場合であっても、本発明による組成物は、べたつく又は油っぽい使用感をもたらさないと考えられる。
【0127】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0128】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下でもよい。
【0129】
本発明による組成物中の(d)油の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~50質量%、好ましくは3質量%~45質量%、より好ましくは5質量%~40質量%であってもよい。
【0130】
(一価の非ポリマー酸又はその塩)
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸又はその塩を含んでもよい。2種以上の一価の非ポリマー酸又はその塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの一価の非ポリマー酸若しくはその塩の組合せを使用することができる。
【0131】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリアクリル酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0132】
用語「塩」は、本明細書では、一価の非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、一価の非ポリマー酸と、塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0133】
(e)一価の非ポリマー酸又はその塩の分子量が、1000未満、好ましくは500以下、より好ましくは100以下であることが好ましい。
【0134】
(e)一価の非ポリマー酸又はその塩は、(c)水によって形成される水性相中に含まれうる。(e)一価の非ポリマー酸又はその塩は、水性相に対する(a)カチオン性ポリマーの溶解を促進することができる。
【0135】
(e)一価の非ポリマー酸又はその塩は、一価の有機又は無機酸及びその塩、好ましくは一価の有機酸及びその塩、より好ましくは一価のカルボン酸及びその塩から選択されうる。
【0136】
一価の非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる単一の酸基を有する。
【0137】
一価の非ポリマー酸は、ヒドロキシ酸、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸から選択されうる。アルファ-ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸及びグリコール酸を挙げることができる。
【0138】
一価の非ポリマー酸は、一価の非ポリマー有機酸、好ましくは一価のカルボン酸、より好ましくは乳酸であってもよい。
【0139】
本発明による組成物中の(e)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってもよい。
【0140】
本発明による組成物中の(e)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0141】
本発明による組成物中の(e)一価の非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってもよい。
【0142】
(脂肪酸)
本発明による組成物は、(f)少なくとも1種の脂肪酸を含んでもよい。2種以上の脂肪酸が使用される場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0143】
用語「脂肪酸」は、本明細書では、長鎖の脂肪族炭素鎖を有するカルボン酸を意味する。
【0144】
(f)脂肪酸は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有する。(f)脂肪酸は、最大26個の炭素原子、好ましくは最大24個の炭素原子、より好ましくは最大22個の炭素原子を含んでもよい。(f)脂肪酸は、C4~C26脂肪酸、より好ましくはC6~C24脂肪酸、更により好ましくはC8~C22脂肪酸から選択されることが好ましい。
【0145】
(f)脂肪酸は、飽和又は不飽和、直鎖状又は分岐状の脂肪酸から選択されうる。そのため、(f)脂肪酸は、C4~C26、好ましくはC6~C24、より好ましくはC8~C22飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択されうる。
【0146】
不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸として、一価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸又は多価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸を使用してもよい。不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸の不飽和部分として、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を挙げることができる。
【0147】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、イソステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びリグノセリン酸(C24)を挙げることができる。
【0148】
不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、エライジン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、エルカ酸(C22)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる。
【0149】
(f)脂肪酸は、C8~C18飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から、より好ましくは、カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0150】
(f)脂肪酸は、その遊離酸の形態又はその塩の形態であってもよい。脂肪酸の塩として、無機塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、並びに有機塩、例えばアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩等)及びアミン塩(トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等)を挙げることができる。単一のタイプの脂肪酸塩又は異なるタイプの脂肪酸塩の組合せを使用してもよい。更に、遊離酸の形態の1種以上の脂肪酸と、塩の形態の1種以上の脂肪酸との組合せを使用することができ、1種以上のタイプの塩を使用することもできる。
【0151】
本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でよい。
【0152】
一方で、本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下でもよい。
【0153】
したがって、本発明による組成物中の(f)脂肪酸の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲であってもよい。
【0154】
(pH)
本発明による組成物のpHは、3~8、好ましくは3~7.5、より好ましくは3~7であってもよい。
【0155】
pH3~8で、(a)カチオン性ポリマー又は(a)カチオン性ポリマーと(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される化合物との錯体は非常に安定性でありうる。したがって、本発明による組成物は、3~8のpH下で非常に安定性でありうる。
【0156】
本発明による組成物のpHは、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される化合物又は(e)一価の非ポリマー酸若しくはその塩以外の、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。本発明による組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することもできる。
【0157】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用してもよい。
【0158】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0159】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0160】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びその誘導体、ジアミン及びその誘導体、ポリアミン及びその誘導体、塩基性アミノ酸及びその誘導体、塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体、塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0161】
有機アルカリ剤の例として、アルカノールアミン、例えば、モノ-、ジ-及びトリエタノールアミン、並びにイソプロパノールアミン、尿素、グアニジン及びそれらの誘導体、塩基性アミノ酸、例えばオルニチン、並びにジアミン、例えば、以下の構造:
【0162】
【0163】
(式中、Rは、ヒドロキシル基又はC1~C4アルキル基で任意選択により置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)で記載され、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができるものを挙げることができる。
【0164】
アルカリ剤は、これらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0165】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用してもよい。
【0166】
酸としては、化粧料中で一般に使用される任意の無機又は有機酸、好ましくは無機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価の酸を使用してもよい。塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。
【0167】
酸は、これらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0168】
(任意選択の成分)
本発明による組成物は、前述の成分に加えて、化粧品に典型的に用いられる任意選択の成分、具体的には、例えば(a)カチオン性ポリマー以外の合成ポリマーに由来する親水性又は親油性増粘剤、揮発性又は不揮発性有機溶媒、アニオン性ポリマー、両性ポリマー、β-グルカン等の非イオン性ポリマー、(d)油以外のシリコーン及びシリコーン誘導体、(a)カチオン性ポリマー又は(d)油以外の動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0169】
本発明による組成物は、上記の任意選択の成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~30質量%、好ましくは0.05質量%~20質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでよい。
【0170】
本発明による組成物は、界面活性剤を含まない、又は少なくとも1種の界面活性剤を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含む。本発明による組成物が界面活性剤を含まないことが、特に好ましい。
【0171】
本発明による組成物中の合成増粘剤及び/又は有機溶媒の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であってよい。本発明による組成物が合成増粘剤又は有機溶媒のいずれも含まないことが特に好ましい。
【0172】
[調製]
本発明による組成物は、上に説明した必須成分と、必要な場合には上に説明した任意選択の成分とを混合することによって、調製することができる。
【0173】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合し、本発明による組成物を調製することができる。
【0174】
本発明による組成物は、撹拌機及びホモジナイザー等の従来の混合手段により、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。また、加熱は必要ではない場合もある。したがって、本発明による組成物の調製方法は、環境に適合性でありうる。
【0175】
[化粧用途]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法のために使用されることが好ましい。
【0176】
そのため、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってよい。
【0177】
[形態]
本発明による組成物は、任意の形態で存在しうる。
【0178】
例えば、(d)油は脂肪相を形成することができ、(c)水は水性相を形成することができ、脂肪相は、水性相中に分散されうる。そのため、水性相は連続相として機能することができ、脂肪相は分散相として機能することができる。換言すれば、本発明による組成物は、O/Wエマルション等のO/W分散体の形態であってもよい。本発明による組成物がO/W型である場合、その外相を形成する(c)水に起因して、清涼感をもたらすことができる。
【0179】
[皮膜]
本発明による組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。
【0180】
したがって、本発明はまた、好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製するための方法であって、
基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明による組成物を塗布する工程と、
該組成物を乾燥させる工程と
を含む方法にも関しうる。
【0181】
本発明による皮膜の厚さの上限は、限定されない。したがって、例えば、本発明による皮膜の厚さは、1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更により好ましくは100μm以下であってよい。
【0182】
本発明による皮膜を調製する方法が、本発明による組成物を、基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に塗布する工程と、該組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明による方法は、スピンコーティングすること又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜であっても、容易に調製することが可能である。そのため、本発明による皮膜を調製する方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに、比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0183】
本発明による皮膜が比較的厚い場合であっても、該皮膜は、依然として薄く、透明であることができ、したがって、容易に知覚され得ない。そのため、本発明による皮膜は、好ましくは化粧皮膜として使用することができる。
【0184】
基質がケラチン物質ではない場合、該基質が水溶性であることが好ましく、その理由は、基質を水で洗浄することによって本発明による皮膜を離脱させることが可能であるからである。水溶性材料の例として、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、酢酸セルロース等を挙げることができる。PVAが好ましい。
【0185】
非ケラチン基質がシートの形態にある場合、該基質は、基質シートに付着した皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明による皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基質シートの厚さは限定されないが、1μm~5mm、好ましくは10μm~1mm、より好ましくは50~500μmでもよい。
【0186】
本発明による皮膜が、非ケラチン基質から取り外し可能であることがより好ましい。取り外しの方式は限定されない。したがって、本発明による皮膜は、非ケラチン基質から剥がしてもよく、又は基質シートを水等の溶媒中に溶解することによって取り外してもよい。
【0187】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明による組成物を塗布する工程と、
前記組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される、皮膜、
並びに
(2)好ましくは0.5μm超、より好ましくは1.0μm以上、更により好ましくは1.5μm以上の厚さを任意選択により有する皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
(a)好ましくは20,000超の分子量を有するキトサン類から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物、及び
(d)油
を含み、
界面活性剤を含まない、皮膜にも関しうる。
【0188】
皮膜はまた、(e)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸若しくはその塩及び/又は(f)少なくとも1種の脂肪酸も含んでよい。
【0189】
(a)カチオン性ポリマー、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される化合物、及び(d)油、並びに(e)一価の非ポリマー酸又はその塩、及び(f)脂肪酸等の任意選択の成分に関する上記の説明は、上記の皮膜(1)及び(2)におけるものに適用することができる。
【0190】
このようにして上記で得られた皮膜は、自立性であってよい。用語「自立性」は、本明細書では、皮膜がシートの形態にあることができ、基質又は支持体の補助なしに独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。そのため、用語「自立性」は、「自己支持性」と同じ意味を有することができる。
【0191】
本発明による皮膜が疎水性であることが好ましい。
【0192】
用語「疎水性」は、本明細書では、20~40℃、好ましくは25~40℃、より好ましくは30~40℃での皮膜の水(好ましくは1リットルの体積)に対する溶解度が、皮膜の総質量に対して10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更により好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。皮膜は、水に可溶性でないことが最も好ましい。
【0193】
本発明による皮膜が疎水性である場合、皮膜は、耐水特性を有することができ、したがって、ケラチン物質の表面が例えば汗及び雨により濡れている場合であっても、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。そのため、本発明による皮膜が任意の美容効果をもたらす場合、美容効果は長時間持続することができる。
【0194】
その一方で、本発明による皮膜は、8~12、好ましくは9~11のpH等のアルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、その一方で、該皮膜は、そのようなアルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0195】
本発明による皮膜は、少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性ポリマー層を含んでよい。2種以上の生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマー、又は異なるタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマーの組合せを使用することができる。
【0196】
用語「生体適合性」ポリマーは、本明細書では、ポリマーが、ポリマーと皮膚を含む生体内の細胞との間で過度な相互作用を有さず、ポリマーが、生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0197】
用語「生分解性」ポリマーは、本明細書では、例えば生体自体の代謝、又は生体内に存在しうる微生物の代謝により、ポリマーが生体内で分解されうる又は分割されうることを意味する。また、生分解性ポリマーは、加水分解によって分解されうる。
【0198】
本発明による皮膜が生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを含む場合、例えば、該皮膜は、頭皮への刺激を少なく若しくは解消することができ、且つ/又は環境の汚染を解消することができる。
【0199】
実際、本発明による皮膜は、生分解性ポリマーである、(a)キトサン類から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含むことができる。
【0200】
加えて、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーの使用により、本発明による美容シートは、皮膚によく接着することができる。
【0201】
本発明による皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特に顔の美容処置のために使用することができる。本発明による皮膜は、任意の形状又は形態にあることができる。例えば、該皮膜は、フルフェイスマスクシート、又は頬、鼻、及び目の周り等の顔の一部用のパッチとして使用することができる。
【0202】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む方法、又は
皮膚等のケラチン物質上に化粧皮膜を調製するための本発明による組成物の使用
にも関する。
【0203】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又は被覆するための非治療的美容方法を意味する。
【0204】
更に、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮脂を捕獲する、皮膚等のケラチン物質の外観にマット感をもたらす、悪臭を吸収若しくは吸着する、且つ/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護する等の美容効果を有しうる。
【0205】
加えて、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であっても、皮膚上の光反射等を変化させることによって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の化粧皮膜が毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことが可能でありうる。更に、上記の化粧皮膜は、皮膚上の表面粗さ等を変化させることによって、皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の化粧皮膜は、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物等から、バリアーとして、皮膚の表面を被覆し、皮膚を遮蔽することによって、皮膚を即座に保護することができる。
【0206】
上記の美容効果は、上記の化粧皮膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整又は制御することができる。
【0207】
上記の化粧皮膜が、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される化合物及び(d)油以外の少なくとも1種の追加の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、その追加の美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、化粧皮膜が、抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、白色化剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、該化粧皮膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の臭いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、且つ/又は皮膚を白色化することができる。
【0208】
皮膚上に塗布した後に、本発明による化粧皮膜又は美容シート上にメイクアップ化粧用組成物を塗布することもまた可能である。
【0209】
本発明はまた、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の化合物の、
(a)好ましくは20,000超の分子量を有するキトサン類から選択される少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(c)水、及び
(d)油
を含む組成物中での使用であって、組成物を安定化させるための使用にも関しうる。
【0210】
組成物はまた、(e)少なくとも1種の一価の非ポリマー酸若しくはその塩及び/又は(f)少なくとも1種の脂肪酸も含んでよい。
【0211】
(a)カチオン性ポリマー、(b)サリチル酸及びその誘導体から選択される化合物、(c)水及び(d)油、並びに(e)一価の非ポリマー酸又はその塩、及び(f)脂肪酸等の任意選択の成分に関する上記の説明は、上記の使用におけるものに適用することができる。
【実施例0212】
本発明は、実施例によって、より詳細に記載される。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0213】
(実施例1~10及び比較例1~3)
[調製]
実施例1~10及び比較例1~3による組成物のそれぞれを、表1~6に示す成分を混合して調製した。表1~6の成分の量についての数値はすべて、有効成分の「質量%」に基づく。
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
[評価]
(安定性)
実施例1~10及び比較例1~3による組成物のそれぞれを、室温で1日、透明の容器に入れて保存した。組成物の安定性を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
非常に良好: 組成物は均一だった。
良好: 組成物は均一だったが、若干のムラが観察された。
不良: 組成物は均一でなく、ムラが観察された。
非常に不良: 相分離が観察された。
【0221】
結果を表1~6に示す。
【0222】
(概略)
表1によれば、実施例1~3による組成物は安定性であったが、比較例1による組成物は不安定性であった。実施例3による組成物は、実施例1による組成物より良好な安定性を示したため、より好ましかった。
【0223】
表2は、比較的少量(20質量%)の油を含む実施例4による組成物が安定性であったことを示す。
【0224】
表3は、本発明による組成物が、比較的多量(40質量%)の油を含むことができることを示す。
【0225】
表4は、脂肪酸(オレイン酸)の添加が、本発明による組成物の安定性を改善できることを示す。
【0226】
表5は、多価アルコール(グリセリン)を本発明による組成物に添加することができることを示す。
【0227】
表6は、一価の非ポリマー酸(乳酸)又はその塩が本発明による組成物から除去されうることを示す。
【0228】
その上、本発明による組成物は、環境に適合性の成分を含む。