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特開2024-154225蓄電装置の製造方法、及び、蓄電装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154225
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】蓄電装置の製造方法、及び、蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241023BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241023BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067950
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ17
5H029CJ03
5H029CJ05
5H029CJ13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造時の作業性を向上できる蓄電装置の製造方法及び蓄電装置を提供する。
【解決手段】積層方向に積層された複数の電極ユニット100を備える蓄電装置の製造方法であって、複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔の一方の面に形成された正極活物質層111と、集電箔の他方の面に形成された負極活物質層130と、正極活物質層または負極活物質層の周囲に配置されるシール部210、220と、を有し、蓄電装置の製造方法は、複数の電極ユニットのそれぞれが有するシール部の内側に、同時に電解質層150を形成する電解質層形成工程を含む。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置の製造方法であって、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、前記正極活物質層または前記負極活物質層の周囲に配置されるシール部と、を有し、
前記蓄電装置の製造方法は、
前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側に、同時に電解質層を形成する電解質層形成工程を含む
蓄電装置の製造方法。
【請求項2】
前記電解質層形成工程では、前記複数の電極ユニットを電解質中に浸漬することで、前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側に同時に電解質層を形成する
請求項1に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項3】
前記電解質層形成工程では、前記複数の電極ユニットを電解質中に浸漬中に、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士を接続する
請求項2に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項4】
前記電解質層形成工程では、前記複数の電極ユニットのうちの少なくとも1つの電極ユニットが有する前記シール部と前記正極活物質層または前記負極活物質層との間の空間に、余剰の電解質層を配置する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
前記電解質層形成工程の後に、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士を接合する接合工程をさらに含み、
前記接合工程では、前記2つの電極ユニットが有する前記シール部を前記積層方向に圧縮する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項6】
前記電解質層形成工程の後に、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士を接合する接合工程をさらに含み、
前記接合工程では、前記2つの電極ユニットのうちの一方の電極ユニットのシール部の外側に、他方の電極ユニットのシール部を配置して、シール部同士を接合する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項7】
積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の周囲に配置されるシール部と、を有し、
前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側には、電解質層が形成されており、
前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットは、前記シール部同士が接合されている
蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の製造方法、及び、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電極板及び封止部材に囲われた領域に電解液を滴下することによって電極ユニットに電解液を注液する注液工程と、電解液の注液後の電極ユニットに対して電解液の注液前の別の電極ユニットを積層する積層工程と、を含む蓄電モジュールの製造方法が開示されている。当該蓄電モジュールの製造方法では、注液工程及び積層工程を繰り返し実施することによって、積層体を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-82450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄電装置の製造方法では、電極ユニットに電解液を注液して他の電極ユニットを積層する工程を繰り返し実施する必要があるため、作業に手間と時間とを要する。このため、蓄電装置の製造時の作業性を向上できる方法が望まれる。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、製造時の作業性を向上できる蓄電装置の製造方法、及び、蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置の製造方法であって、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、前記正極活物質層または前記負極活物質層の周囲に配置されるシール部と、を有し、前記蓄電装置の製造方法は、前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側に、同時に電解質層を形成する電解質層形成工程を含む。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の周囲に配置されるシール部と、を有し、前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側には、電解質層が形成されており、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットは、前記シール部同士が接合されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明における蓄電装置の製造方法等によれば、製造時の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
図3図3は、実施の形態に係る蓄電装置が有する電極ユニットの構成を示す斜視図及び断面図である。
図4図4は、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における配置工程を示す断面図である。
図5B図5Bは、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における電解質層形成工程(浸漬工程)を示す断面図である。
図5C図5Cは、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における電解質層形成工程(積層工程)を示す断面図である。
図5D図5Dは、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における引揚工程を示す断面図である。
図5E図5Eは、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における接合工程を示す断面図である。
図6図6は、実施の形態の変形例1に係る2つの電極ユニットが有するシール部の構成を示す断面図である。
図7図7は、実施の形態の変形例2に係る2つの電極ユニットが有するシール部の構成を示す断面図である。
図8図8は、実施の形態の変形例3に係る2つの電極ユニットが有するシール部の構成を示す断面図である。
図9図9は、実施の形態の変形例4に係る2つの電極ユニットが有するシール部の構成を示す断面図である。
図10図10は、実施の形態の変形例5に係る2つの電極ユニットが有するシール部の構成を示す断面図である。
図11図11は、実施の形態の変形例6に係る蓄電装置の製造方法における配置工程を示す断面図である。
図12A図12Aは、実施の形態の変形例7に係る蓄電装置の製造方法における配置工程を示す断面図である。
図12B図12Bは、実施の形態の変形例7に係る蓄電装置の製造方法における電解質層形成工程を示す断面図である。
図12C図12Cは、実施の形態の変形例7に係る蓄電装置の製造方法における引揚工程を示す断面図である。
図12D図12Dは、実施の形態の変形例7に係る蓄電装置の製造方法における接合工程を示す断面図である。
図13図13は、実施の形態の変形例8に係る蓄電装置の製造方法における電解質層形成工程を示す断面図である。
図14図14は、蓄電パックの構成を示す断面図である。
図15図15は、蓄電パックの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置の製造方法であって、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、前記正極活物質層または前記負極活物質層の周囲に配置されるシール部と、を有し、前記蓄電装置の製造方法は、前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側に、同時に電解質層を形成する電解質層形成工程を含む。
【0011】
これによれば、蓄電装置の製造方法において、複数の電極ユニットのそれぞれが有するシール部の内側に、同時に電解質層を形成する。これにより、複数の電極ユニットに順々に電解質層を配置していくのではなく、複数の電極ユニットに同時に電解質層を配置できるため、蓄電装置の製造時の作業性を向上できる。
【0012】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置の製造方法において、前記電解質層形成工程では、前記複数の電極ユニットを電解質中に浸漬することで、前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側に同時に電解質層を形成する、としてもよい。
【0013】
これによれば、蓄電装置の製造方法において、複数の電極ユニットを電解質中に浸漬してそれぞれのシール部の内側に同時に電解質層を形成することで、容易に、複数の電極ユニットに同時に電解質層を配置できる。
【0014】
(3)上記(2)に記載の蓄電装置の製造方法において、前記電解質層形成工程では、前記複数の電極ユニットを電解質中に浸漬中に、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士を接続する、としてもよい。
【0015】
これによれば、蓄電装置の製造方法において、複数の電極ユニットを電解質中に浸漬中に隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士を接続することで、複数の電極ユニットのそれぞれに電解質層を配置した状態でシール部同士を接続できる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれかひとつに記載の蓄電装置の製造方法において、前記電解質層形成工程では、前記複数の電極ユニットのうちの少なくとも1つの電極ユニットが有する前記シール部と前記正極活物質層または前記負極活物質層との間の空間に、余剰の電解質層を配置する、としてもよい。
【0017】
これによれば、蓄電装置の製造方法において、電極ユニットが有するシール部と正極活物質層または負極活物質層との間の空間に余剰の電解質層を配置することで、使用に伴って電解質が減少した場合でも、電解質を補給できる。
【0018】
(5)上記(1)から(4)のいずれかひとつに記載の蓄電装置の製造方法は、前記電解質層形成工程の後に、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士を接合する接合工程をさらに含み、前記接合工程では、前記2つの電極ユニットが有する前記シール部を前記積層方向に圧縮する、としてもよい。
【0019】
これによれば、蓄電装置の製造方法において、2つの電極ユニットが有するシール部を積層方向に圧縮することで、2つの電極ユニットが有する活物質層同士を近付けることができる。これにより、電解質層の厚さを薄くできるため、電解質層に起因する抵抗を低減できる。
【0020】
(6)上記(1)から(5)のいずれかひとつに記載の蓄電装置の製造方法は、前記電解質層形成工程の後に、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士を接合する接合工程をさらに含み、前記接合工程では、前記2つの電極ユニットのうちの一方の電極ユニットのシール部の外側に、他方の電極ユニットのシール部を配置して、シール部同士を接合する、としてもよい。
【0021】
これによれば、蓄電装置の製造方法において、一方の電極ユニットのシール部の外側に他方の電極ユニットのシール部を配置してシール部同士を接合することで、シール部同士を位置決めできるため、容易に、シール部同士を配置して接合できる。
【0022】
(7)本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の周囲に配置されるシール部と、を有し、前記複数の電極ユニットのそれぞれが有する前記シール部の内側には、電解質層が形成されており、前記複数の電極ユニットのうち隣り合う2つの電極ユニットは、前記シール部同士が接合されている。
【0023】
これによれば、蓄電装置において、複数の電極ユニットのそれぞれが有するシール部の内側に電解質層が形成され、隣り合う2つの電極ユニットのシール部同士が接合されていることで、シール部同士の間から電解質層を配置して、シール部同士を接合できた構成である。このため、この構成によれば、複数の電極ユニットに容易に電解質層を配置できるため、蓄電装置の製造時の作業性を向上できる。
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置の製造方法、及び、蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0025】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の長手方向、または、蓄電装置の一対の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の一対の長側面の対向方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の厚み方向、複数の電極ユニットの積層方向、集電箔及び活物質層の積層方向、一対のエンド部材の並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0026】
以下の説明において、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。単にX軸方向という場合は、X軸プラス方向及びX軸マイナス方向の双方向またはいずれか一方の方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行であるとは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0027】
(実施の形態)
[1 蓄電装置10の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置10の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電装置10の内部構成を示す断面図である。具体的には、図2は、図1の蓄電装置10を、II-II線を通るYZ平面で切断した場合の断面図である。図2は、蓄電装置10が備える各構成要素を示している。図3は、本実施の形態に係る蓄電装置10が有する電極ユニット100の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、図3の(a)は、電極ユニット100の外観を示す斜視図である。図3の(b)は、図3の(a)の電極ユニット100を、IIIb-IIIb線を通るYZ平面で切断した場合の構成を示す断面図である。
【0028】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置である。本実施の形態における蓄電装置10は、略直方体形状を有している。具体的には、蓄電装置10は、バイポーラ電池である。蓄電装置10は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0029】
図1及び図2に示すように、蓄電装置10は、複数の電極ユニット100と、エンドユニット101及び102と、複数のセパレータ140と、一対のエンド部材300と、を備えている。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102のそれぞれは、平面視で矩形状の板状部位であり、Z軸方向に積層されている。本実施の形態での平面視とは、積層方向(Z軸方向)から見た場合のことをいう。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102が積層される方向(Z軸方向)を、積層方向とも称する。セパレータ140は、複数の電極ユニット100、エンドユニット101及び102のそれぞれの間に配置される。一対のエンド部材300は、積層方向(Z軸方向)において、複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102の両側に配置される。本実施の形態では、エンドユニット101とエンドユニット102との間に、2つの電極ユニット100が積層方向に積層されているが、電極ユニット100が積層される数は特に限定されない。電極ユニット100、エンドユニット101及びエンドユニット102等の平面視の形状も特に限定されない。
【0030】
[1.1 電極ユニット100の説明]
以下に、図3も用いて、電極ユニット100の構成について、詳細に説明する。電極ユニット100は、1枚の集電箔の両面に活物質層が形成された1単位のユニットである。複数の電極ユニット100のそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔110の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔110の他方の面に形成された負極活物質層130と、シール部210と、を有している。本実施の形態では、電極ユニット100の厚み(積層方向の厚み)は、135μm~190μm程度である。
【0031】
集電箔110は、平面視が矩形状である板状部材である。集電箔110は、金属箔である。図3に示すように、集電箔110は、積層方向(Z軸方向)に並ぶ2つの金属層111及び112を有している。金属層111及び112は、平面視で同じ大きさかつ同じ形状を有する板状の部位である。以下では、金属層111及び112のうちの、正極活物質層120が形成される金属層111を正極金属層111とも称し、負極活物質層130が形成される金属層112を負極金属層112とも称する。正極金属層111は、集電箔110のうちのZ軸プラス方向に位置する金属層であり、負極金属層112は、集電箔110のうちのZ軸マイナス方向に位置する金属層である。つまり、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112が互いに接続(接触または接合)された状態で、正極金属層111及び負極金属層112が積層方向に積層されて形成されている。正極金属層111及び負極金属層112は、一方が金属箔であり、他方が当該金属箔にメッキされるメッキ層でもよい。または、正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔でもよい。正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔の場合、集電箔110は、2つの金属箔同士が接合されて形成されたクラッド材等であってもよいし、2つの金属箔同士が接合されることなく接続(接触)した状態で2つの金属箔を有していてもよい。
【0032】
正極金属層111の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属またはそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスから、正極金属層111の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。正極金属層111の形態としては、メッキ層でもよいが、加工性、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極金属層111としては、アルミニウム箔が好ましい。負極金属層112の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属またはそれらの合金が用いられ、これらの中でも、銅または銅合金が用いられるのが好ましい。負極金属層112の形態としては、メッキ層または箔(銅箔)が挙げられ、銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。集電箔110の厚み(積層方向の厚み)は、20μm~30μm程度である。正極金属層111の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~20μm程度であり、負極金属層112の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~15μm程度である。
【0033】
正極活物質層120は、集電箔110の一方の表面(Z軸プラス方向の面)に形成された正極の活物質層である。具体的には、正極活物質層120は、正極金属層111上(正極金属層111の外面(Z軸プラス方向の面))に形成されている。正極活物質層120は、正極金属層111の形状に応じて、平面視で正極金属層111よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。平面視でサイズが小さいとは、XY平面の面積が小さいことをいう。以下についても同様である。正極活物質層120の厚み(積層方向の厚み)は、70μm~100μm程度である。
【0034】
正極活物質層120は、正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。正極活物質としては、LiM1O(M1はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等の層状リチウム遷移金属酸化物、LiM2(M2はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のスピネル型リチウム遷移金属酸化物、LiM3PO、LiM3SiO、LiM3BO(M3はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のポリアニオン化合物等が挙げられる。正極活物質として、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層120に含有される導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛などが挙げられる。バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。
【0035】
負極活物質層130は、集電箔110の他方の表面(Z軸マイナス方向の面)に形成された負極の活物質層である。具体的には、負極活物質層130は、負極金属層112上(負極金属層112の外面(Z軸マイナス方向の面))に形成されている。負極活物質層130は、負極金属層112の形状に応じて、平面視で負極金属層112よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。負極活物質層130は、平面視で正極活物質層120よりもサイズが大きく形成されている。平面視でサイズが大きいとは、XY平面の面積が大きいことをいう。以下についても同様である。つまり、負極活物質層130のXY平面の面積は、正極活物質層120のそれよりも大きい。負極活物質層130の厚み(積層方向の厚み)は、45μm~60μm程度である。
【0036】
負極活物質層130は、負極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層120と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属または半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物または半金属酸化物;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0037】
シール部210は、正極活物質層120または負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部210は、正極活物質層120及び負極活物質層130の全周に亘って正極活物質層120及び負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部210は、集電箔110の外周部を覆うように、集電箔110の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部210は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材により形成されている。
【0038】
隣り合う2つの電極ユニット100が有するシール部210同士は、互いに接合されて、接合部400が形成されている。接合部400は、当該シール部210同士がヒートシール(熱溶着)、超音波溶着、レーザ溶着、または、接着剤等によって接合されて形成された部位である。これにより、シール部210は、当該2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120及び当該2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の周囲に配置され、当該2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にはシール部210が設けられる。つまり、2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にシール部210が連続的に設けられ、集電箔110同士の間がシールされる。
【0039】
複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側には、電解質層150が形成されている。電解質層150は、少なくとも電解質を含む層である。本実施の形態では、電解質層150は液体状(電解液)であるが、固体状(固体電解質)、または、ゲル状等でもよい。これら電解質としては、適宜公知のものを使用できる。電解液(非水電解質)としては、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものを用いることができる。非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートなどを挙げることができる。電解質塩としては、リチウム塩が好ましい。上記リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)、LiN(SOCF)等の無機リチウム塩を挙げることができる。
【0040】
[1.2 エンドユニット101及び102の説明]
次に、エンドユニット101及び102の構成について、詳細に説明する。エンドユニット101は、複数の電極ユニット100のZ軸マイナス方向の端部に配置される。エンドユニット102は、複数の電極ユニット100のZ軸プラス方向の端部に配置される。エンドユニット101及び102は、複数の電極ユニット100をZ軸方向で挟み込む部位である。
【0041】
エンドユニット101は、少なくとも、正極金属層111と、正極金属層111のZ軸プラス方向の面に形成された正極活物質層120と、シール部220と、を有している。エンドユニット101が有する正極金属層111及び正極活物質層120は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110の正極金属層111及び正極活物質層120と同様の構成を有している。
【0042】
シール部220は、正極活物質層120の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部220は、正極活物質層120の全周に亘って正極活物質層120の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部220は、正極金属層111及びエンド部材300の外周部を覆うように、正極金属層111及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部220は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0043】
シール部220は、エンドユニット101に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接合されて、接合部400が形成されている。シール部220とシール部210との接合は、上述のシール部210同士の接合と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット101の正極金属層111と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部220の内側には、上述の電解質層150が形成されている。
【0044】
エンドユニット102は、少なくとも、集電箔110と、集電箔110のZ軸マイナス方向の面に配置された負極活物質層130と、シール部230と、を有している。エンドユニット102が有する集電箔110及び負極活物質層130は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110及び負極活物質層130と同様の構成を有している。
【0045】
シール部230は、負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部230は、負極活物質層130の全周に亘って負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部230は、集電箔110及びエンド部材300の外周部を覆うように、集電箔110及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部230は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0046】
シール部230は、エンドユニット102に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接合されて、接合部400が形成されている。シール部230とシール部210との接合は、上述のシール部210同士の接合と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット102の集電箔110と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部230の内側には、上述の電解質層150が形成されている。
【0047】
このように、シール部210、220及び230が互いに接合されて、シール部材200が構成される。シール部材200は、正極金属層111、負極金属層112、正極活物質層120、負極活物質層130、セパレータ140、及び、エンド部材300の全ての全周を囲うように配置され、これらと外部との間をシールする筒状(四角筒状)の部材である。
【0048】
[1.3 セパレータ140及びエンド部材300の説明]
セパレータ140は、樹脂からなる微多孔性のシートである。セパレータ140は、電極ユニット100同士の間、エンドユニット101と電極ユニット100との間、及び、エンドユニット102と電極ユニット100との間に、それぞれ配置される。具体的には、セパレータ140は、正極活物質層120と負極活物質層130との間に配置される。セパレータ140の材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ140として、これらの多孔質樹脂フィルムの表面にフィラーを含む層を形成した多層のフィルムであってもよい。セパレータ140は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが大きい矩形状に形成されている。本実施の形態では、セパレータ140のサイズは、平面視で集電箔110のそれよりも小さいが、平面視で集電箔110よりもサイズが大きくてもよい。セパレータ140の厚み(積層方向の厚み)は、15μm~20μm程度である。
【0049】
エンド部材300は、複数の電極ユニット100よりも、蓄電装置10における積層方向(Z軸方向)の端部に配置される部材である。本実施の形態では、一対のエンド部材300が、蓄電装置10の最もZ軸マイナス方向端部及び最もZ軸プラス方向端部に配置される。一対のエンド部材300は、エンドユニット101及び102(が有する正極金属層111)に接続される。これにより、一対のエンド部材300は、その間に位置する複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102等を、積層方向(Z軸方向)の両側から挟み込む。エンド部材300は、平板状の部材(エンドプレート)である。エンド部材300は、他の導電部材(バスバー、冷却板等。図示せず)を介して、他の蓄電装置10が有する他のエンド部材300と電気的に接続される。エンド部材300は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材等で形成されている。エンド部材300は、正極金属層111と接続されるため、アルミニウムなど、正極金属層111と同じ材質で形成されるのが好ましい。エンド部材300の厚み(積層方向の厚み)は、0.5mm~3mm程度である。蓄電装置10は、エンド部材300の外側(Z軸方向の外側)に他の導電部材を有していてもよい。
【0050】
以上の構成において、セパレータ140と、セパレータ140をZ軸方向で挟む正極活物質層120及び負極活物質層130と、これらをZ軸方向で挟む正極金属層111及び負極金属層112とを、1つの蓄電素子と称してもよい。この場合、蓄電装置10は、Z軸方向に積層された複数の蓄電素子がZ軸方向において一対のエンド部材300で挟まれ、これらの周囲がシール部材200で囲われた構成を有する蓄電素子群であるとも言える。
【0051】
[2 蓄電装置10の製造方法の説明]
次に、蓄電装置10の製造方法について、説明する。図4は、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。図5Aは、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における配置工程を示す断面図である。図5B及び図5Cは、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における電解質層形成工程を示す断面図である。具体的には、図5Bは、電解質層形成工程のうちの浸漬工程を示し、図5Bは、電解質層形成工程のうちの積層工程を示している。図5Dは、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における引揚工程を示す断面図である。図5Eは、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における接合工程を示す断面図である。
【0052】
図4に示すように、まず、電極ユニット100を配置する配置工程を行う(S102)。具体的には、図5Aに示すように、配置工程では、電極ユニット100を作成し、電極ユニット100にセパレータ140を積層して接合したものを配置する。さらに具体的には、配置工程では、電極ユニット100のシール部210にセパレータ140を接合したものを配置する。上記接合としては、ヒートシール(熱溶着)、超音波溶着、レーザ溶着、または、接着剤等による接合を例示できる。接合箇所は、セパレータ140の外周部の全周であってもよいし、セパレータ140の外周部の一部でもよい。本実施の形態では、シール部210のZ軸マイナス方向の端面にセパレータ140を接合するが、セパレータ140は、シール部210に接合された状態で、負極活物質層130には接触していない。
【0053】
具体的には、配置工程では、複数の電極ユニット100と、エンドユニット101及び102とを配置する(エンドユニット102の図示は省略)。この際、電極ユニット100と同様に、エンドユニット102(のシール部230)にもセパレータ140を接合する。シール部210のZ軸マイナス方向の端面ではなく、シール部210のZ軸プラス方向の端面にセパレータ140を接合してもよいし、シール部210の内面にセパレータ140を接合してもよい。シール部210のZ軸プラス方向の端面にセパレータ140を接合する場合、エンドユニット101(のシール部220)にセパレータ140を接合する。
【0054】
図4に戻り、次に、複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に、同時に電解質層150を形成する電解質層形成工程を行う(S104)。
【0055】
まず、図5Bに示すように、電解質層形成工程では、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬することで、複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に同時に電解質層150を形成する浸漬工程を行う。浸漬工程では、電解質151(本実施の形態では、電解液)を貯めた電解質槽20に、複数の電極ユニット100を浸漬し、複数のシール部210の内側に同時に電解質層150を形成(配置)する。具体的には、浸漬工程では、電解質槽20に、複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とを浸漬し、複数のシール部210とシール部220及び230との内側に同時に電解質層150を形成(配置)する(エンドユニット102の図示は省略)。本実施の形態では、シール部210同士の全周が離間した状態で、電解質層150を形成する。シール部210とシール部220、及び、シール部210とシール部230についても同様に、全周が離間した状態で電解質層150を形成する。
【0056】
さらに、図5Cに示すように、電解質層形成工程では、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬中に、複数の電極ユニット100のうち隣り合う2つの電極ユニット100のシール部210同士を積層して接続する積層工程を行う。積層工程では、電解質151中に配置された複数の電極ユニット100をZ軸方向に積層することで、複数の電極ユニット100が有するシール部210の全周をZ軸方向で積層して接続する(接触させて繋げる)。具体的には、積層工程では、電解質151中に配置された複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とをZ軸方向に積層することで、これらが有するシール部210、220及び230の全周をZ軸方向で積層して接続する(エンドユニット102の図示は省略)。本実施の形態では、シール部210、220及び230のうちの隣り合うシール部同士の間にセパレータ140が挟まれた状態で、当該シール部同士がZ軸方向に積層されて(重ねられて)接続される。
【0057】
これにより、シール部210、220及び230の内側に、十分な量の電解質層150が配置される。つまり、シール部210、220及び230と正極活物質層120または負極活物質層130との間の空間に、蓄電装置10が充放電を開始する時点で余剰の電解質層150が配置される。このように、電解質層形成工程では、複数の電極ユニット100のうちの少なくとも1つの電極ユニット100が有するシール部210と正極活物質層120または負極活物質層130との間の空間に、余剰の電解質層150を配置する。エンドユニット101及び102が有するシール部220及び230と正極活物質層120または負極活物質層130との間の空間についても同様に、余剰の電解質層150が配置される。
【0058】
図4に戻り、次に、複数の電極ユニット100を電解質151中から引き揚げる引揚工程を行う(S106)。図5Dに示すように、引揚工程では、Z軸方向に積層された複数の電極ユニット100を、電解質槽20から引き揚げる。具体的には、引揚工程では、Z軸方向に積層された複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とを、電解質槽20の電解質151中から引き揚げて、電解質槽20の外へ取り出す(エンドユニット102の図示は省略)。つまり、複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とは、複数のシール部210とシール部220及び230との内側に電解質層150が形成(配置)された状態で、電解質151中から引き揚げられる。この際、シール部210、220及び230のZ軸方向の厚みが少し厚く形成されていることで、セパレータ140は、正極活物質層120及び負極活物質層130には接触していない(正極活物質層120及び負極活物質層130から離れている)。
【0059】
図4に戻り、次に、複数の電極ユニット100のうち隣り合う2つの電極ユニット100のシール部210同士を接合する接合工程を行う(S108)。つまり、電解質層形成工程の後に、接合工程が行われる。図5Eに示すように、接合工程では、当該2つの電極ユニット100が有するシール部210同士を接合し、接合部400を形成する。シール部210とシール部220、及び、シール部210とシール部230についても同様に、シール部同士を接合し、接合部400を形成する(シール部230の図示は省略)。
【0060】
さらに、接合工程では、2つの電極ユニット100が有するシール部210を積層方向(Z軸方向)に圧縮しながら、当該シール部210同士を接合する。具体的には、ヒートシール(熱溶着)または超音波溶着等により、シール部210、220及び230をZ軸方向に定寸圧縮して、シール部210、220及び230を接合(溶着)する。本実施の形態では、シール部210、220及び230のそれぞれを、Z軸方向の厚みが0.5倍~0.9倍程度になるように圧縮する。接合工程では、シール部210、220及び230を、2回または3回以上に分けて圧縮してもよい。接合工程では、シール部210、220及び230の全周を圧縮し、全周を接合する。このように、シール部210、220及び230がZ軸方向に圧縮されることにより、セパレータ140と正極活物質層120及び負極活物質層130とがZ軸方向で接触する。シール部210、220及び230を圧縮した後は、シール部210、220及び230の余剰分(はみ出た部分)を削除(カット)する。
【0061】
これにより、複数の電極ユニット100のうち隣り合う2つの電極ユニット100は、シール部210同士が接合されて接合部400が形成された構成となる。同様に、電極ユニット100とエンドユニット101及び102とは、シール部210とシール部220及び230とが接合されて接合部400が形成された構成となる。この構成において、シール部210、220及び230の内側に電解質層150が形成(配置)される。このように、本実施の形態では、シール部210等に貫通孔(注液口)が形成されて当該貫通孔から電解質層150が注入された構成ではないため、シール部210等に貫通孔の痕(貫通孔を塞いだ痕)が形成されていない。つまり、蓄電装置10は、シール部210等に沿って延びる接合部400を有しているのであって、シール部210等に設けられた貫通孔の痕は有していない。
【0062】
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法によれば、複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に、同時に電解質層150を形成する。これにより、複数の電極ユニット100に順々に電解質層150を配置していくのではなく、複数の電極ユニット100に同時に電解質層150を配置できるため、蓄電装置10の製造時の作業性を向上できる。
【0063】
蓄電装置10の製造方法において、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬してそれぞれのシール部210の内側に同時に電解質層150を形成することで、容易に、複数の電極ユニット100に同時に電解質層150を配置できる。
【0064】
蓄電装置10の製造方法において、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬中に隣り合う2つの電極ユニット100のシール部210同士を接続することで、複数の電極ユニット100のそれぞれに電解質層150を配置した状態でシール部210同士を接続できる。
【0065】
蓄電装置10の製造方法において、電極ユニット100が有するシール部210と正極活物質層120または負極活物質層130との間の空間に余剰の電解質層150(余剰の電解液)を配置することで、使用に伴って電解質が減少した等の場合でも、電解質を補給できる。つまり、余剰の電解質層150によって、充放電により活物質層で消費した電解質を補給したり、充放電前に浸透が不十分であった電解質を補充したりでき、蓄電装置10の容量または抵抗のばらつきを低減できる。
【0066】
蓄電装置10の製造方法において、2つの電極ユニット100が有するシール部210を積層方向(Z軸方向)に圧縮することで、2つの電極ユニット100が有する活物質層同士を近付けることができる。シール部210を積層方向(Z軸方向)に圧縮することで、積層方向における蓄電装置10の厚みを薄くできる。活物質層間の距離がセパレータ140の厚さよりも大きい場合には、活物質層とセパレータ140との間に隙間が生じてしまう。電解質層150が液体(電解液)である場合、当該隙間に空気等の気体が入り込み気泡を形成し、電解質層150の抵抗を増大させるおそれがある。これに対し、シール部210を積層方向に圧縮し、活物質層間の距離をセパレータ140の厚さに近付けることで、当該気泡の形成を抑制できる。
【0067】
2つの電極ユニット100が有するシール部210同士の全周が離間した状態で、シール部210同士の間から電解質層150を配置することで、電解質層150を容易に形成できる。その後、シール部210同士の全周を接合することで、蓄電装置10を容易に製造できる。
【0068】
本発明の実施の形態に係る蓄電装置10によれば、複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に電解質層150が形成され、隣り合う2つの電極ユニット100のシール部210同士が接合されている。このため、蓄電装置10は、シール部210同士の間から電解質層150を配置して、シール部210同士を接合できた構成である。したがって、この構成によれば、複数の電極ユニット100に容易に電解質層150を配置できるため、蓄電装置10の製造時の作業性を向上できる。
【0069】
[4 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0070】
(変形例1~5)
上記実施の形態では、2つの電極ユニット100が有するシール部210同士は、Z軸方向に積層された(重ねられた)状態で接続されることとしたが、一部がY軸方向に積層された(重ねられた)状態で接続されてもよい。図6図10は、本実施の形態の変形例1~5に係る2つの電極ユニット100が有するシール部211~215の構成を示す断面図である。図6図10は、2つの電極ユニット100が有するY軸プラス方向端部のシール部211~215の構成を示している。図6図10では、セパレータ140の図示は省略している。
【0071】
変形例1~5においては、2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100のシール部の外側に、他方の電極ユニット100のシール部が配置される。つまり、蓄電装置10の製造方法において、電解質層形成工程のうちの積層工程では、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬中に、2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100のシール部の外側に、他方の電極ユニット100のシール部を配置して、シール部同士を接続する。接合工程では、2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100のシール部の外側に、他方の電極ユニット100のシール部を配置して、シール部同士を接合する。これらについて、以下に具体的に説明する。
【0072】
図6に示すように、変形例1では、シール部211は、Z軸プラス方向端部かつY軸方向外側(図6ではY軸プラス方向端部)に、Z軸プラス方向に突出する突出部211aを有している。本変形例では、突出部211aは、Z軸プラス方向から外側に少し傾斜した方向に突出する。突出部211aは、シール部211の外周の全周に亘って設けられていてもよいし、シール部211の外周の一部にしか設けられていなくてもよい。この構成において、Z軸方向に並ぶ2つのシール部211が接続されると、Z軸プラス方向のシール部211の外側に、Z軸マイナス方向のシール部211の突出部211aが配置される。このように、Z軸方向に並ぶ2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100(Z軸プラス方向の電極ユニット100)のシール部211の外側に、他方の電極ユニット100(Z軸マイナス方向の電極ユニット100)のシール部211が配置される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
図7に示すように、変形例2では、シール部212は、Z軸プラス方向端部かつY軸方向外側(図7ではY軸プラス方向端部)に、Z軸プラス方向に突出する突出部212aを有している。シール部212は、さらに、Z軸マイナス方向端部かつY軸方向内側(図7ではY軸マイナス方向端部)に、Z軸マイナス方向に突出する突出部212bを有している。突出部212a、212bは、シール部212の外周の全周に亘って設けられていてもよいし、シール部212の外周の一部にしか設けられていなくてもよい。この構成において、Z軸方向に並ぶ2つのシール部212が接続されると、Z軸プラス方向のシール部212の突出部212bの外側に、Z軸マイナス方向のシール部212の突出部212aが配置される。このように、Z軸方向に並ぶ2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100(Z軸プラス方向の電極ユニット100)のシール部212の外側に、他方の電極ユニット100(Z軸マイナス方向の電極ユニット100)のシール部212が配置される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0074】
図8に示すように、変形例3では、シール部213は、Z軸プラス方向端部かつY軸方向内側(図8ではY軸マイナス方向端部)に、Z軸プラス方向に突出する突出部213aを有している。シール部213は、さらに、Z軸マイナス方向端部かつY軸方向外側(図8ではY軸プラス方向端部)に、Z軸マイナス方向に突出する突出部213bを有している。突出部213a、213bは、シール部213の外周の全周に亘って設けられていてもよいし、シール部213の外周の一部にしか設けられていなくてもよい。この構成において、Z軸方向に並ぶ2つのシール部213が接続されると、Z軸マイナス方向のシール部213の突出部213aの外側に、Z軸プラス方向のシール部213の突出部213bが配置される。このように、Z軸方向に並ぶ2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100(Z軸マイナス方向の電極ユニット100)のシール部213の外側に、他方の電極ユニット100(Z軸プラス方向の電極ユニット100)のシール部213が配置される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
図9に示すように、変形例4では、シール部214は、Z軸プラス方向端部かつY軸方向内側(図9ではY軸マイナス方向端部)に、Z軸プラス方向に突出し、かつ、先端部がY軸方向外側(図9ではY軸プラス方向)に折れ曲がる突出部214aを有している。シール部214は、さらに、Z軸マイナス方向端部かつY軸方向外側(図9ではY軸プラス方向端部)に、Z軸マイナス方向に突出し、かつ、先端部がY軸方向内側(図9ではY軸マイナス方向)に折れ曲がる突出部214bを有している。突出部214a、214bは、シール部214の外周の全周に亘って設けられていてもよいし、シール部214の外周の一部にしか設けられていなくてもよい。この構成において、Z軸方向に並ぶ2つのシール部214が接続されると、Z軸マイナス方向のシール部214の突出部214aの外側に、Z軸プラス方向のシール部214の突出部214bが配置される。具体的には、当該突出部214aが当該突出部214bとZ軸方向で係り合う(接触する)ように配置される。このように、Z軸方向に並ぶ2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100(Z軸マイナス方向の電極ユニット100)のシール部214の外側に、他方の電極ユニット100(Z軸プラス方向の電極ユニット100)のシール部214が配置される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。本変形例において、突出部214aが、シール部214のY軸方向外側に配置され、かつ、先端部がY軸方向内側に折れ曲がり、突出部214bが、シール部214のY軸方向内側に配置され、かつ、先端部がY軸方向外側に折れ曲がる構成でもよい。
【0076】
図10に示すように、変形例5では、シール部215は、Z軸プラス方向端部かつY軸方向外側(図10ではY軸プラス方向端部)に、Z軸プラス方向に突出し、かつ、先端部がY軸方向内側(図10ではY軸マイナス方向)に折れ曲がる突出部215aを有している。シール部215は、さらに、Z軸マイナス方向端部かつY軸方向内側(図10ではY軸マイナス方向端部)に、Z軸マイナス方向に突出し、かつ、先端部がY軸方向外側(図10ではY軸プラス方向)に折れ曲がる突出部215bを有している。突出部215a、215bは、シール部215の外周の全周に亘って設けられていてもよいし、シール部215の外周の一部にしか設けられていなくてもよい。この構成において、Z軸方向に並ぶ2つのシール部215が接続されると、Z軸プラス方向のシール部215の突出部215bの外側に、Z軸マイナス方向のシール部215の突出部215aが配置される。具体的には、当該突出部215aが当該突出部215bにZ軸方向で挟まれ、かつ、当該突出部215bが当該突出部215aにZ軸方向で挟まれるように配置される。このように、Z軸方向に並ぶ2つの電極ユニット100のうちの一方の電極ユニット100(Z軸プラス方向の電極ユニット100)のシール部215の外側に、他方の電極ユニット100(Z軸マイナス方向の電極ユニット100)のシール部215が配置される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。本変形例において、突出部215aが、シール部215のY軸方向内側に配置され、かつ、先端部がY軸方向外側に折れ曲がり、突出部215bが、シール部215のY軸方向外側に配置され、かつ、先端部がY軸方向内側に折れ曲がる構成でもよい。
【0077】
上記変形例1~5によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、変形例1~5では、一方の電極ユニット100のシール部の外側に他方の電極ユニット100のシール部を配置してシール部同士を接合することで、シール部同士を位置決めできるため、容易に、シール部同士を配置して接合できる。一方の電極ユニット100のシール部の外側に他方の電極ユニット100のシール部を配置してシール部同士を接合することで、シール部によるシール性を向上することもできる。
【0078】
(変形例6)
上記実施の形態では、配置工程において、2つの電極ユニット100をシール部210同士の全周が離間した状態で配置し、電解質層形成工程において、当該シール部210同士の間から電解質層150を形成することとしたが、これには限定されない。図11は、本実施の形態の変形例6に係る蓄電装置10の製造方法における配置工程を示す断面図である。図11は、図5Aに対応する図である。
【0079】
図11に示すように、本変形例では、配置工程において、2つの電極ユニット100をシール部210同士の一部が接合された状態で配置する。本変形例では、2つのシール部210のY軸プラス方向端部の辺(長辺)同士を接合する。接合の手法は、上記実施の形態におけるシール部210同士の接合の場合と同様である。当該シール部210同士は、当該長辺の全長に亘って接合されてもよいし、当該長辺の一部しか接合されなくてもよい。電極ユニット100のシール部210とエンドユニット101のシール部220とは、Y軸マイナス方向端部の辺(長辺)同士を接合する。このように、複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とを、蛇腹状に折り畳まれるように、交互に反対側の端部(長辺同士)で接合する(エンドユニット102の図示は省略)。その後、電解質層形成工程において、蛇腹状の複数の電極ユニット100等を電解質151中に浸漬することで、シール部210等の内側に同時に電解質層150を形成する。
【0080】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、本変形例では、配置工程において、シール部210等の長辺同士を接合することで、複数の電極ユニット100等を安定的に保持できる。電解質層形成工程において、蛇腹状の複数の電極ユニット100等を電解質151中に浸漬することで、電極ユニット100等の位置決めが容易になり、かつ、シール部210等の内側に容易に電解質層150を形成できる。本変形例において、配置工程で、シール部210等の短辺同士を接合してもよいし、蛇腹状以外の形状で複数の電極ユニット100等を接合してもよい。
【0081】
(変形例7)
上記実施の形態では、電解質層形成工程の前に、電極ユニット100にセパレータ140を接合することとしたが、電解質層形成工程の後に、電極ユニット100にセパレータ140を接合してもよい。図12Aは、本実施の形態の変形例7に係る蓄電装置10の製造方法における配置工程を示す断面図である。図12Bは、本実施の形態の変形例7に係る蓄電装置10の製造方法における電解質層形成工程を示す断面図である。図12Cは、本実施の形態の変形例7に係る蓄電装置10の製造方法における引揚工程を示す断面図である。図12Dは、本実施の形態の変形例7に係る蓄電装置10の製造方法における接合工程を示す断面図である。図12Aは、図5Aに対応する図であり、図12Bは、図5Bに対応する図であり、図12Cは、図5Dに対応する図であり、図12Dは、図5Eに対応する図である。
【0082】
図12Aに示すように、本変形例では、配置工程において、電極ユニット100を、セパレータ140を接合することなく配置する。次に、図12Bに示すように、電解質層形成工程では、上記実施の形態における浸漬工程と同様に、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬することで、複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に同時に電解質層150を形成する。ただし、本変形例では、上記実施の形態における積層工程は行わない。次に、図12Cに示すように、引揚工程では、複数の電極ユニット100を電解質151中から引き揚げ、電極ユニット100にセパレータ140を積層して接合する。電極ユニット100にセパレータ140を接合する具体的な手法は、上記実施の形態における配置工程での手法と同様である。次に、図12Dに示すように、接合工程では、複数の電極ユニット100等をZ軸方向に積層し、複数の電極ユニット100等のシール部210等をZ軸方向に圧縮しながら接合する。本変形例の接合工程における接合の手法は、上記実施の形態の接合工程における接合の手法と同様である。
【0083】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。本変形例のように、電極ユニット100にセパレータ140を接合するタイミングは特に限定されない。本変形例において、引揚工程で電極ユニット100にセパレータ140を接合することなく、接合工程でシール部210同士等の間にセパレータ140を配置してシール部210同士等を接合してもよい。つまり、シール部210同士等を接合する前に、電極ユニット100にセパレータ140を接合しなくてもよい。
【0084】
(変形例8)
上記実施の形態では、シール部210、220及び230が分離した状態で、電極ユニット100等のシール部210等の内側に同時に電解質層150を形成することとしたが、これには限定されない。図13は、本実施の形態の変形例8に係る蓄電装置10の製造方法における電解質層形成工程を示す断面図である。図13は、図5Bに対応する図である。
【0085】
図13に示すように、本変形例では、シール部材200が有するシール部210、220及び230は一体化されており、シール部材200には、貫通孔240が形成されている。貫通孔240は、シール部材200をY軸方向に貫通する貫通孔(注液口)である。本変形例では、複数(2つ)のシール部210及びシール部220に、複数(3つ)の貫通孔240が形成されている。つまり、複数の正極活物質層120のそれぞれに対応して、複数の正極活物質層120のそれぞれの側方に、複数の貫通孔240が形成されている。
【0086】
上記構成により、電解質層形成工程において、複数の貫通孔240を介して、電極ユニット100等のシール部210等の内側に同時に電解質層150を形成できる。ここで、「同時に電解質層150を形成する」とは、電極ユニット100等のシール部210等の内側に同時に電解質層150が入ることである。配置工程において、複数の貫通孔240を介してシール部210等の内側を真空引きしておくことで、電解質層形成工程において、シール部210等の内側に容易に電解質層150を形成できる。電解質層形成工程の後に引揚工程を行い、複数の貫通孔240を塞ぐことで、蓄電装置10を製造できる。シール部210等の内側を真空引きする方法としては、図13に示した容器20ごと真空容器に入れて、容器20内を真空引きする方法等が挙げられる。
【0087】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様に、複数の電極ユニット100に同時に電解質層150を配置でき、蓄電装置10の製造時の作業性を向上できる。特に、本変形例では、シール部材200に複数の貫通孔240を形成すればよいため、構成を簡素化できる。本変形例において、負極活物質層130の側方に貫通孔240を形成してもよい。貫通孔240は、シール部材200をX軸方向に貫通していてもよい。シール部材200に形成される貫通孔240の数も特に限定されない。
【0088】
(その他の変形例)
上記実施の形態では、電極ユニット100の集電箔110は、Z軸方向において、シール部210の中央部に配置されているが、シール部210のZ軸マイナス方向端部またはZ軸プラス方向端部に配置されてもよい。特に、上記変形例7では、集電箔110がシール部210のZ軸マイナス方向端部に配置される方が、シール部210の内側に、より多くの電解質層150を配置できる。
【0089】
上記実施の形態では、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112の複数層(2層)で形成されていることとしたが、集電箔110は、1層(1枚の金属箔)で形成されていてもよい。つまり、集電箔110は、1枚のステンレス箔等で形成され、1枚のステンレス箔等で正極金属層及び負極金属層の機能を有することにしてもよい。
【0090】
上記実施の形態では、電解質層形成工程において、複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102のシール部210、220及び230の内側に、同時に電解質層150を形成することとしたが、これには限定されない。2つの電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に、同時に電解質層150を形成すればよい。つまり、シール部220または230の内側に電解質層150を形成するタイミングは、特に限定されない。蓄電装置10が3つ以上の電極ユニット100を備える場合には、いずれか2つの電極ユニット100のシール部210の内側に同時に電解質層150を形成すればよい。
【0091】
上記実施の形態では、電解質層形成工程において、複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に、同時に液体の電解質層150(電解液)を形成(配置)することとしたが、ゲル状または固体状の電解質層150を同時に形成(配置)してもよい。この場合、電解質層形成工程では、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬することなく、複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側に同時に電解質層150を形成してもよい。電解質層150が電解液の場合でも、複数の電極ユニット100を電解液中に浸漬することなく、複数のシール部210に同時に電解液を注液することで、複数のシール部210の内側に同時に電解質層150を形成してもよい。
【0092】
上記実施の形態では、電解質層形成工程において、複数の電極ユニット100を電解質151中に浸漬中に隣り合うシール部210同士を積層して接続する積層工程を行うこととしたが、電解質層形成工程では積層工程を行わなくてもよい。この場合、引揚工程において、隣り合うシール部210同士を接続してもよいし、接合工程において、隣り合うシール部210同士を接続してからシール部210同士を接合してもよい。
【0093】
上記実施の形態では、電解質層形成工程において、電極ユニット100のシール部210と正極活物質層120または負極活物質層130との間の空間に、余剰の電解質層150を配置することとしたが、余剰の電解質層150は配置しなくてもよい。
【0094】
上記実施の形態では、接合工程において、電極ユニット100等が有するシール部210等をZ軸方向に圧縮することとしたが、シール部210等を圧縮することなく接合してもよい。この場合、シール部210のZ軸方向の厚みは、上記実施の形態における圧縮後のシール部210のZ軸方向の厚みと同程度にする。
【0095】
蓄電装置10は、図14に示すような蓄電パック1に用いられてもよい。図14は、蓄電パック1の構成を示す断面図である。図14において、蓄電装置10の内部構成の図示は省略している。図14に示すように、蓄電パック1は、複数の蓄電装置10が積層された蓄電装置積層体2と、導電部材3と、を備えている。この場合、蓄電パック1に含まれる少なくとも1つの蓄電装置10に対して、本発明の技術が適用されればよい。蓄電装置積層体2における隣り合う2つの蓄電装置10は、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。導電部材3は、ステンレス等の金属からなり、積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。接合には接着剤を用いてもよい。蓄電装置積層体2における複数の蓄電装置10は直列に接続されており、導電部材3を介して充放電が実施される。蓄電パック1は、積層方向(Z軸方向)に拘束されてもよく、この場合、ネジ、樹脂バンドまたは金属バンド等の拘束部材を用いることができる。蓄電装置積層体2及び導電部材3は、金属ケースまたは樹脂ケースに収容されていてもよい。
【0096】
蓄電パック1の他の例として、個々の蓄電装置10が外装体4に収容された構成を図15に示す。図15は、蓄電パック1aの構成を示す断面図である。図15に示すように、本構成の蓄電装置10は、外装体4から露出した接続部分5を有している。外装体4としてラミネートフィルム等を用いることができる。隣り合う蓄電装置10の接続部分5同士が、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10の接続部分5と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。その他の構成は、上述の蓄電パック1と同様のため説明を省略する。
【0097】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、バイポーラ電池等の蓄電装置の製造方法等に適用できる。
【符号の説明】
【0099】
1、1a 蓄電パック
2 蓄電装置積層体
3 導電部材
4 外装体
5 接続部分
10 蓄電装置
20 電解質槽
100 電極ユニット
101、102 エンドユニット
110 集電箔
111 正極金属層(金属層)
112 負極金属層(金属層)
120 正極活物質層
130 負極活物質層
140 セパレータ
150 電解質層
151 電解質
200 シール部材
210、211、212、213、214、215、220、230 シール部
211a、212a、212b、213a、213b、214a、214b、215a、215b 突出部
240 貫通孔
300 エンド部材
400 接合部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15