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  • 特開-動力伝達機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154230
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】動力伝達機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/029 20120101AFI20241023BHJP
【FI】
F16H57/029
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067959
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川井 考生
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AB01
3J063AC01
3J063BB02
3J063BB03
3J063CB17
3J063CB41
(57)【要約】
【課題】軸部に生じた錆に触れることでシール部材のシール機能が低下することを抑制する。
【解決手段】軸部12は、歯車部11に一体形成されている第1軸部31と、歯車部11とは別体の第2軸部32と、を有し、シール部材17は、第2軸部32の外周面32cを支持し、第2軸部32は、第1軸部31と接続される第1端部41と、第1端部41とは反対側に位置するとともにエンコーダ22と接続される第2端部42と、を有し、ハウジング13には、第2軸部32及びエンコーダ22の少なくとも一方が挿通される挿通孔13hが形成され、第2軸部32のうち、少なくともシール部材17によって支持される支持部52から第2端部42側は、防錆性を有する防錆部50である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された動力を伝達対象に伝達する動力伝達機構であって、
前記動力が入力されることによって回転する金属製の歯車部と、
前記歯車部と共に回転する金属製の軸部と、
前記軸部に接続されるとともに、前記軸部の回転速度を検出するエンコーダと、
前記歯車部及び前記軸部を収容するとともに、内部に潤滑油が保持されたハウジングと、
前記ハウジングと前記軸部との間をシールするシール部材と、を備え、
前記軸部は、前記歯車部に一体形成されている第1軸部と、前記歯車部とは別体の第2軸部と、を有し、
前記シール部材は、前記第2軸部の外周面を支持し、
前記第2軸部は、前記第1軸部と接続される第1端部と、前記第1端部とは反対側に位置するとともに前記エンコーダと接続される第2端部と、を有し、
前記ハウジングには、前記第2軸部及び前記エンコーダの少なくとも一方が挿通される挿通孔が形成され、
前記第2軸部のうち、少なくとも前記シール部材によって支持される支持部から前記第2端部側は、防錆性を有する防錆部であることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項2】
前記第1軸部及び前記第1端部のうち、一方は被圧入部を有し、他方は前記被圧入部に圧入される圧入部を有し、
前記圧入部が前記被圧入部に圧入されることにより、前記第1軸部と前記第1端部とが接続される、請求項1に記載の動力伝達機構。
【請求項3】
前記第1端部は前記圧入部を有し、
前記第1軸部は前記被圧入部を有する、請求項2に記載の動力伝達機構。
【請求項4】
前記防錆部は、前記第2軸部がめっき層で覆われることによって形成されており、
前記防錆部は、前記圧入部を含まない、請求項3に記載の動力伝達機構。
【請求項5】
前記防錆部は、前記第2軸部がめっき層で覆われることによって形成されている、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の動力伝達機構。
【請求項6】
前記ハウジングの外部から前記挿通孔を覆うカバー部材を備える、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の動力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達機構は、入力された動力を伝達対象に伝達するものである。動力伝達機構は、例えば、金属製の歯車部と、金属製の軸部と、ハウジングと、シール部材と、を備える。歯車部は、動力が入力されることによって回転する。軸部は、歯車部と共に回転する。ハウジングは、歯車部及び軸部を収容するとともに、内部に潤滑油が保持されている。シール部材は、ハウジングと軸部との間をシールする。
【0003】
また、特許文献1にはエンコーダが開示されている。エンコーダに軸部が接続されることによって、エンコーダは軸部の回転速度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-50768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動力伝達機構にエンコーダを採用する場合、エンコーダを軸部に接続させるために、ハウジングには、軸部及びエンコーダの少なくとも一方が挿通される挿通孔が形成される。この際、軸部に空気が接触すると、空気中に含まれる水蒸気が軸部に付着することにより、軸部に錆が生じるおそれがある。軸部に錆が生じると、錆にシール部材が接することによってシール部材のシール機能が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する動力伝達機構は、入力された動力を伝達対象に伝達する動力伝達機構であって、前記動力が入力されることによって回転する金属製の歯車部と、前記歯車部と共に回転する金属製の軸部と、前記軸部に接続されるとともに、前記軸部の回転速度を検出するエンコーダと、前記歯車部及び前記軸部を収容するとともに、内部に潤滑油が保持されたハウジングと、前記ハウジングと前記軸部との間をシールするシール部材と、を備え、前記軸部は、前記歯車部に一体形成されている第1軸部と、前記歯車部とは別体の第2軸部と、を有し、前記シール部材は、前記第2軸部の外周面を支持し、前記第2軸部は、前記第1軸部と接続される第1端部と、前記第1端部とは反対側に位置するとともに前記エンコーダと接続される第2端部と、を有し、前記ハウジングには、前記第2軸部及び前記エンコーダの少なくとも一方が挿通される挿通孔が形成され、前記第2軸部のうち、少なくとも前記シール部材によって支持される支持部から前記第2端部側は、防錆性を有する防錆部であることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、軸部のうち、空気が接触することで空気中に含まれる水蒸気が付着する部分にて、水蒸気の付着による錆が生じにくくなる。したがって、軸部に生じた錆に触れることでシール部材のシール機能が低下することを抑制できる。
【0008】
動力伝達機構において、前記第1軸部及び前記第1端部のうち、一方は被圧入部を有し、他方は前記被圧入部に圧入される圧入部を有し、前記圧入部が前記被圧入部に圧入されることにより、前記第1軸部と前記第1端部とが接続されていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、仮に第1軸部及び第1端部のうち、一方に雌ねじを設け、他方に雄ねじを設けることで第1軸部と第1端部とを嵌合させる場合と比較して、軸部の回転時に、第1軸部と第1端部とが互いに位置ずれしにくい。したがって、第1軸部と第1端部とを好適に接続できる。
【0010】
動力伝達機構において、前記第1端部は前記圧入部を有し、前記第1軸部は前記被圧入部を有してもよい。
動力伝達機構において、前記防錆部は、前記第2軸部がめっき層で覆われることによって形成されており、前記防錆部は、前記圧入部を含まなくてもよい。
【0011】
上記構成によれば、仮に圧入部がめっき層で覆われていると、被圧入部に圧入部が圧入される際に、被圧入部との摩擦によって圧入部からめっき層が剥がれるおそれがあるが、そうしためっき層の剥がれが上記構成では生じない。したがって、圧入部と被圧入部との圧入精度の低下を抑制できる。
【0012】
動力伝達機構において、前記防錆部は、前記第2軸部がめっき層で覆われることによって形成されていてもよい。
上記構成によれば、仮に、第1軸部も含めた軸部をめっき層で覆う場合、歯車部の噛み合い精度を保持するために歯車部をマスキングするなどしてめっき加工を行う必要があるが、歯車部は形状が複雑であるためにマスキング作業が困難である。上記構成によれば、そうしたマスキング作業を省略できるため、めっき層の形成作業を簡略化できる。
【0013】
動力伝達機構において、ハウジングの外部から前記挿通孔を覆うカバー部材を備えていてもよい。
上記構成によれば、動力伝達機構の設置位置によって、ハウジングの外部からハウジングに被水する場合であっても、そうした被水による水分が挿通孔を介してハウジングの内部に浸入することをカバー部材によって抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、軸部に生じた錆に触れることでシール部材のシール機能が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態における動力伝達機を示す模式図である。
図2図2は、実施形態における動力伝達機構を示す断面図である。
図3図3は、変更例における動力伝達機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、動力伝達機構を減速機に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の動力伝達機構は、例えば、車両に搭載される。
<動力伝達機構の基本構成>
図1に示すように、動力伝達機構10は、歯車部11と、軸部12と、ハウジング13と、を備える。歯車部11及び軸部12は、金属製である。動力伝達機構10は、例えば複数の歯車部11を備える。複数の歯車部11は互いに噛み合っている。軸部12の軸線が延びる方向を軸方向Xともいう。軸部12は、歯車部11から軸方向Xに延びている。軸部12は、歯車部11と共に回転する。ハウジング13の内部には内部空間S1が区画形成されている。歯車部11及び軸部12は内部空間S1に位置する。これにより、ハウジング13は、歯車部11及び軸部12を収容する。ハウジング13の内部に潤滑油が保持されている。なお、ハウジング13の内部は潤滑油で満たされていてもよい。
【0017】
複数の歯車部11のうち、1つの歯車部11には、入力軸14が接続されている。複数の歯車部11のうち、入力軸14が接続されない1つの歯車部11には、出力軸15が接続されている。入力軸14及び出力軸15は、ハウジング13の内部と外部との間で延びている。
【0018】
入力軸14の両端のうち、歯車部11に接続される端部とは反対側の端部は、モータ16に接続されている。モータ16の駆動に伴って、入力軸14は回転する。すなわち、入力軸14を介して、モータ16から歯車部11に動力が入力される。入力軸14の回転に伴って、入力軸14が接続された歯車部11が回転する。この歯車部11の回転が、他の歯車部11に伝達されることにより、出力軸15が接続された歯車部11が回転する。これにより、歯車部11の回転が出力軸15を介して伝達対象に伝達される。こうして歯車部11は、動力が入力されることによって回転する。動力伝達機構10は、入力された動力を伝達対象に伝達する。なお、伝達対象としては、例えば、不図示の車両の駆動輪が挙げられる。
【0019】
図2に示すように、動力伝達機構10は、軸受18を備える。軸受18は、例えば円筒状である。軸受18は、ハウジング13の内部に位置するとともに、ハウジング13の内面に保持されている。軸受18は、軸部12を回転可能に支持する。
【0020】
<ハウジングの挿通孔>
ハウジング13には挿通孔13hが形成されている。挿通孔13hは、ハウジング13を貫通する孔である。挿通孔13hには軸部12が挿通されている。
【0021】
<シール部材>
動力伝達機構10は、シール部材17を備える。シール部材17は、例えば円環状である。シール部材17は、ハウジング13と軸部12との間をシールする。詳細には、シール部材17は、ハウジング13の内面のうち、挿通孔13hを区画する部分と、軸部12の外面と、に接する。シール部材17によるシールにより、ハウジング13の内部の潤滑油が挿通孔13hを介してハウジング13の外部に漏れることが抑制されている。
【0022】
本実施形態における動力伝達機構10は、取付板21を備える。取付板21はハウジング13の外面に沿って設けられている。取付板21は、例えば平板状である。取付板21は、不図示の固定部材によってハウジング13に固定されている。取付板21には、貫通孔21hが形成されている。貫通孔21hは、例えば、ハウジング13における挿通孔13hよりも小さい。貫通孔21hと挿通孔13hとが軸方向Xにおいて互いに対向するように、取付板21はハウジング13に取り付けられている。
【0023】
貫通孔21hには軸部12が挿通されている。軸部12は、ハウジング13の挿通孔13h及び取付板21の貫通孔21hを介して、ハウジング13の内部と外部との間で延びている。
【0024】
<エンコーダ>
動力伝達機構10は、エンコーダ22を備える。エンコーダ22は、軸部12に接続される。詳細には、エンコーダ22は接続部23を有する。接続部23は、例えば、軸方向Xにおいて開口する有底筒状である。この接続部23の内部には、軸方向Xにおける軸部12の両端部のうち、歯車部11とは反対側の端部が挿入されている。接続部23と接続部23に挿入された軸部12の端部とには、接続部23の外部から支持部材24が貫通している。これにより、接続部23は、軸部12と一体的に回転可能となっている。エンコーダ22は、軸部12の回転速度を検出する。エンコーダ22によって検出された回転速度は、不図示の制御装置に出力される。制御装置は、例えば、回転速度に基づいて車両の速度を推定する。
【0025】
<カバー部材>
動力伝達機構10は、カバー部材25を備える。カバー部材25は、軸方向Xに開口する有底筒状のカバー本体26と、カバー本体26の開口端から延びるフランジ部27と、を有する。カバー本体26の開口は、貫通孔21hの開口よりも大きい。カバー本体26の開口は、軸方向Xにおいて取付板21の貫通孔21hと対向する。フランジ部27は、軸方向Xからみて環状をなす平板である。フランジ部27は、軸方向Xにおける取付板21の両端面のうち、ハウジング13とは反対側の端面に沿うように延びている。フランジ部27は、例えば、複数のボルト部材28によって取付板21に取り付けられている。これにより、カバー部材25は、取付板21に取り付けられている。
【0026】
<収容空間>
カバー部材25と取付板21とで、カバー部材25の内部に収容空間S2が区画形成されている。この収容空間S2、取付板21の貫通孔21h、及びハウジング13の挿通孔13hは、この順で軸方向Xに並んでいる。貫通孔21h及び挿通孔13hを介して、収容空間S2はハウジング13の内部空間S1と連通している。カバー部材25は、ハウジング13の外部から取付板21の貫通孔21hを覆っている。これにより、カバー部材25は、ハウジング13の外部から挿通孔13hを覆う。
【0027】
本実施形態においては、エンコーダ22の全体が収容空間S2に位置する。すなわち、エンコーダ22の全体がハウジング13の外部に位置する。軸方向Xにおける軸部12の両端部のうち、歯車部11とは反対側の端部は、取付板21の貫通孔21hから収容空間S2に延びている。そのため、収容空間S2にて、軸部12の端部は接続部23に挿入されている。
【0028】
<軸部>
軸部12は、第1軸部31と、第2軸部32と、を有する。第1軸部31は、歯車部11に一体形成されている。そのため、第1軸部31は、例えば、歯車部11と同じ金属から形成されている。第1軸部31は、歯車部11から軸方向Xに延びる略円柱状である。軸受18は、第1軸部31の外周面31cを支持する。第1軸部31の全体がハウジング13の内部に位置する。軸方向Xにおける第1軸部31の両端のうち、歯車部11側の端部を第1端31aともいい、第1端31aとは反対側の端部を第2端31bともいう。第1端31aは、軸部12の歯車部11側の端部に相当する。第1軸部31の軸線は、軸部12の軸線に相当する。
【0029】
第1軸部31は、被圧入部34を有する。被圧入部34は、第1軸部31の第2端31bに開口するとともに、第1軸部31の内部に形成された円柱状の穴である。被圧入部34は、第1軸部31の第2端31bから、第2端31bと第1端31aとの間の部分まで軸方向Xに延びている。
【0030】
第2軸部32は、歯車部11とは別体である。第2軸部32は、例えば、金属製である。第2軸部32は、歯車部11及び第1軸部31と同じ金属から形成されていてもよいし、歯車部11及び第1軸部31とは異なる金属から形成されていてもよい。軸方向Xにおける歯車部11と第2軸部32との間には、第1軸部31が介在している。第2軸部32は、第1端部41と、第2端部42と、を有する。第2端部42は、第1端部41とは反対側に位置する。軸方向Xにおける第2軸部32の一端に第1端部41が位置し、他端に第2端部42が位置する。
【0031】
第2軸部32は、本体軸部43を有する。本体軸部43は、軸方向Xにおける第1端部41と第2端部42との間に位置する。本体軸部43は、軸方向Xに延びる円柱状である。本体軸部43の径方向における寸法は、例えば、ハウジング13の挿通孔13hの径方向の寸法よりも小さく、かつ取付板21の貫通孔21hの径方向の寸法よりも小さい。
【0032】
本体軸部43は、挿通孔13hの内部を介して、ハウジング13の内部と取付板21の貫通孔21hの内部との間で延びている。すなわち、挿通孔13hには、第2軸部32が挿通される。軸方向Xにおける本体軸部43の両端のうち、一端は第1軸部31の先端と接しており、他端は取付板21の貫通孔21hの内部に位置する。
【0033】
第1端部41は、軸方向Xにおける本体軸部43の端部から軸方向Xに延びる円柱状である。第1端部41の径方向における寸法は、例えば、本体軸部43の径方向における寸法よりも小さく、かつ第1軸部31の被圧入部34の径方向の寸法と同じ大きさである。
【0034】
第1端部41は、第1軸部31と接続される。第1端部41は、第1軸部31の被圧入部34に圧入されている。第1端部41のうち、被圧入部34に圧入される部分は、軸方向Xにおける第1端部41の先端からの一部であってもよいし、軸方向Xにおける全体であってもよい。すなわち、第1端部41は、被圧入部34に圧入される圧入部44を有する。したがって、本実施形態においては、第1軸部31及び第1端部41のうち、一方である第1軸部31は被圧入部34を有し、他方である第1端部41は圧入部44を有する。圧入部44が被圧入部34に圧入されることにより、第1軸部31と第1端部41とが接続される。
【0035】
第2端部42は、軸方向Xにおける軸部12の歯車部11とは反対側の端部に相当する。第2端部42は、軸方向Xにおける本体軸部43の第1端部41とは反対側の端部から軸方向Xに延びる円柱状である。第2端部42の径方向における寸法は、例えば、エンコーダ22の接続部23の内径よりも若干小さい。第2端部42は、取付板21の貫通孔21hの内部と収容空間S2との間で延びている。すなわち、第2端部42は、ハウジング13の外部に露出している。
【0036】
接続部23の内部には、軸方向Xにおける第2端部42の先端からの少なくとも一部が挿入されている。支持部材24によって接続部23と第2端部42とが一体的に回転可能である。これにより、第2端部42はエンコーダ22と接続される。
【0037】
<防錆部及びめっき層>
第2軸部32のうち、少なくとも一部は防錆性を有する防錆部50である。防錆部50は、第2軸部32がめっき層51で覆われることによって形成されている。めっき層51を構成する金属としては、例えば、ニッケル、クロム、銅、銀、金などが挙げられる。
【0038】
第2軸部32の外面のうち、第2端部42の外面と、本体軸部43の外面と、がめっき層51で覆われている。これにより、第2端部42及び本体軸部43が防錆部50として機能する。
【0039】
シール部材17は、めっき層51に接する。これにより、シール部材17は、第2軸部32の外周面32cを支持している。詳細には、シール部材17は、本体軸部43の径方向の外側から本体軸部43を覆うめっき層51に接する。シール部材17は、めっき層51を介して、第2軸部32の外周面32cのうちで本体軸部43に位置する部分を支持している。したがって、第2軸部32のうち、シール部材17によって支持される支持部52は、本体軸部43に位置する。なお、支持部52は、第2軸部32の外周面32cに沿って第2軸部32の周方向に延びる円環状の領域である。
【0040】
支持部52は、軸方向Xにおける本体軸部43の中央に位置する。そのため、本実施形態における第2軸部32のうち、支持部52から第2端部42側は、防錆部50である。本実施形態においては、本体軸部43の全体が防錆部50となっている。そのため、第2軸部32のうち、支持部52から第1端部41側の一部も、防錆部50となっている。
【0041】
第2軸部32の外面のうち、第1端部41の外面はめっき層51で覆われていない。そのため、第1端部41は防錆部50として機能しない。防錆部50は、圧入部44を含まない。これにより、圧入部44と被圧入部34との間にはめっき層51が介在しない。
【0042】
[実施形態の作用]
次に、実施形態の作用について説明する。
空気は、例えば、取付板21とカバー部材25のフランジ部27との間を介して、カバー部材25の外部から収容空間S2に入る。空気は、取付板21の貫通孔21hを介して、収容空間S2からハウジング13の貫通孔21hの内部に入る。シール部材17によってハウジング13と軸部12との間がシールされているため、軸部12のうち、シール部材17によって支持される支持部52よりも歯車部11側の部分には、貫通孔21hの内部に入った空気が接触しにくい。その一方で、軸部12のうち、支持部52よりも歯車部11とは反対側の部分には、上記の空気が接触することにより、空気中に含まれる水蒸気が付着する。
【0043】
実施形態における動力伝達機構10において、軸部12のうちで支持部52よりも歯車部11とは反対側の部分は、第2軸部32のうち、支持部52から第2端部42側の部分に相当する。この部分が防錆部50であるため、軸部12のうち、空気が接触する部分が防錆性を有するようになる。そのため、空気中に含まれる水蒸気は防錆部50に付着するため、水蒸気の付着による錆が軸部12に生じにくい。
【0044】
[実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)ハウジング13には、第2軸部32が挿通される挿通孔13hが形成されている。第2軸部32のうち、少なくともシール部材17によって支持される支持部52から第2端部42側は、防錆性を有する防錆部50である。そのため、軸部12のうち、空気が接触することで空気中に含まれる水蒸気が付着する部分にて、水蒸気の付着による錆が生じにくくなる。したがって、軸部12に生じた錆に触れることでシール部材17のシール機能が低下することを抑制できる。
【0045】
(2)第1軸部31及び第1端部41のうち、一方である第1軸部31は被圧入部34を有し、他方である第1端部41は被圧入部34に圧入される圧入部44を有する。圧入部44が被圧入部34に圧入されることにより、第1軸部31と第1端部41とが接続される。そのため、仮に第1軸部31及び第1端部41のうち、一方に雌ねじを設け、他方に雄ねじを設けることで第1軸部31と第1端部41とを嵌合させる場合と比較して、軸部12の回転時に、第1軸部31と第1端部41とが互いに位置ずれしにくい。したがって、第1軸部31と第1端部41とを好適に接続できる。
【0046】
(3)防錆部50は、第2軸部32がめっき層51で覆われることによって形成されている。防錆部50は、圧入部44を含まない。そのため、仮に圧入部44がめっき層51で覆われていると、被圧入部34に圧入部44が圧入される際に、被圧入部34との摩擦によって圧入部44からめっき層51が剥がれるおそれがあるが、そうしためっき層51の剥がれが上記実施形態では生じない。したがって、圧入部44と被圧入部34との圧入精度の低下を抑制できる。
【0047】
(4)防錆部50は、第2軸部32がめっき層51で覆われることによって形成されている。したがって、仮に、第1軸部31も含めた軸部12をめっき層51で覆う場合、歯車部11の噛み合い精度を保持するために歯車部11をマスキングするなどしてめっき加工を行う必要があるが、歯車部11は形状が複雑であるためにマスキング作業が困難である。上記実施形態によれば、そうしたマスキング作業を省略できるため、めっき層51の形成作業を簡略化できる。
【0048】
(5)動力伝達機構10は、ハウジング13の外部から挿通孔13hを覆うカバー部材25を備える。したがって、動力伝達機構10の設置位置によって、ハウジング13の外部からハウジング13に被水する場合であっても、そうした被水による水分が挿通孔13hを介してハウジング13の内部に浸入することをカバー部材25によって抑制できる。
【0049】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0050】
図3に示すように、カバー部材25と取付板21との間にシールリング55を設けてもよい。シールリング55は、フランジ部27と取付板21との間に介在される。これにより、フランジ部27と取付板21との間を介して、カバー部材25の外部からカバー部材25の内部に空気が入りにくくなる。したがって、空気に含まれる水蒸気が軸部12に触れにくくなるため、軸部12における錆の発生をさらに抑制できる。なお、この場合の軸部12は、第1軸部31及び第2軸部32といった区別が無くてもよい。歯車部11と軸部12とは一体部材であってもよい。
【0051】
○ 動力伝達機構10から、取付板21を省略してもよい。この場合、カバー部材25はハウジング13に取り付けられてもよい。
○ 動力伝達機構10からカバー部材25を省略してもよい。この場合、エンコーダ22として防水性を有するエンコーダ22を採用してもよい。
【0052】
○ 防錆部50は圧入部44を含んでもよい。例えば、第2軸部32の全体が防錆部50であってもよい。
○ 防錆部50は、第2軸部32がめっき層51で覆われることによるものに限らない。例えば、第2軸部32の材料として、防錆性を有する材料を採用することにより、第2軸部32を防錆部50としてもよい。
【0053】
○ 第1軸部31が圧入部44を有するとともに、第1端部41が被圧入部34を有してもよい。要するに、第1軸部31及び第1端部41のうち、一方が被圧入部34を有し、他方が被圧入部34に圧入される圧入部44を有すればよい。
【0054】
○ 第1軸部31と第1端部41とは圧入以外の手段によって互いに接続されていてもよい。例えば、第1軸部31と第1端部41との接続手段としては、例えば、雌ねじと雄ねじの螺合、スプライン軸とスリーブとの嵌合などが挙げられる。
【0055】
○ 挿通孔13hには、エンコーダ22が挿通されていてもよい。挿通孔13hには、第2軸部32及びエンコーダ22の両方が挿通されていてもよい。
○ 軸受18は、第2軸部32を支持していてもよい。
【0056】
○ 動力伝達機構10は減速機に限らない。
【符号の説明】
【0057】
10…動力伝達機構、11…歯車部、12…軸部、13…ハウジング、13h…挿通孔、17…シール部材、22…エンコーダ、25…カバー部材、31…第1軸部、31c,32c…外周面、32…第2軸部、34…被圧入部、41…第1端部、42…第2端部、44…圧入部、50…防錆部、51…めっき層、52…支持部。
図1
図2
図3