(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154244
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】イオン注入装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H01J37/317 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067977
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】岩波 悠太
(72)【発明者】
【氏名】阪本 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤本 龍吾
(72)【発明者】
【氏名】橋野 義和
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB03
5C101DD03
5C101DD29
5C101EE35
5C101EE69
5C101FF02
5C101FF46
5C101FF52
5C101FF56
5C101GG13
5C101GG15
5C101GG33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イオン注入の処理時間を短縮し生産効率を高める。
【解決手段】基板Wを保持した基板ホルダ21が、(1)基板WがイオンビームIBを横切る領域を所定の注入速さで通過する動作と、(2)基板Wが前記領域を通過した後第一速度変化でイオンビームIBの一部を遮る位置で停止する第一停止動作と、向きを変えて第二速度変化により注入速さで前記領域に達する第一進行動作を含む第一往復動作と、(3)基板Wが前記領域を通過した後基板ホルダ21がイオンビームIBを抜けきった計測可能位置U又はこれより遠い位置で停止する第二停止動作と、向きを変えて注入速さで前記領域に達する第二進行動作を含む第二往復動作を行い、注入速さで進行した後第一速度変化で計測可能位置Uに停止するより短い時間で第二停止動作を行う、又は計測可能位置Uから第二速度変化で注入速さに達し注入速さを維持して前記領域に達するより短い時間で第二進行動作を行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームの進行方向と交差する所定のスキャン方向に沿って往復移動可能な基板ホルダと、
前記イオンビームの進行経路上にあるビーム測定器とを備え、
前記基板ホルダが、
(1)前記基板ホルダに保持された基板が前記イオンビームを横切る領域を前記スキャン方向に通過する間、所定の注入速さで移動する注入動作と、
(2)前記基板が前記領域を通過した後、第一の速度変化によって、前記基板ホルダが前記イオンビームの少なくとも一部を遮る第一の停止位置で停止する第一の停止動作と、
前記第一の停止位置から向きを反転させて進行し始め、前記第一の停止位置から第二の速度変化によって前記注入速さで前記領域に到達する第一の進行動作と、を含む第一の往復動作と、
(3)前記基板が前記領域を通過した後、前記イオンビームに対して前記第一の停止位置より遠い位置にあり、前記基板ホルダが前記イオンビームを遮らない第二の停止位置で停止する第二の停止動作と、
前記第二の停止位置から向きを反転させて進行し始め、前記注入速さで前記領域に到達する第二の進行動作と、を含む第二の往復動作と、
を行うイオン注入装置であって、
前記第二の停止位置が、前記基板ホルダが前記領域を前記スキャン方向に移動していき、前記イオンビームを抜けきった位置である計測可能位置と同じ位置、又は前記イオンビームに対して前記計測可能位置より遠い位置であり、
前記基板ホルダが、前記第二の往復動作において、
(i)前記第二の停止動作を、前記基板ホルダが前記注入速さで進行した後に前記第一の速度変化によって前記計測可能位置で停止するのに要する時間より短い所要時間で行う、又は、
(ii)前記第二の進行動作を、前記基板ホルダが前記計測可能位置から前記第二の速度変化で前記注入速さに到達した後に前記注入速さを維持した状態で前記領域に到達するのに要する時間より短い所要時間で行う、
ように動作するイオン注入装置。
【請求項2】
前記第二の停止動作における前記基板ホルダの速さの最大値が前記注入速さよりも大きい、請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記第二の進行動作における前記基板ホルダの速さの最大値が前記注入速さよりも大きい、請求項1に記載のイオン注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハやガラス基板等の基板にイオンビームを照射して、基板へのイオン注入を行うイオン注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のイオン注入装置としては、特許文献1に示されるものがある。このイオン注入装置は、イオン源から引き出されたイオンビームに対して被処理面が向くように基板を保持する基板ホルダと、イオンビームの進行経路上において基板ホルダよりも進行方向の前方に配置され、イオンビームのビーム電流を測定する測定器を備えている。
【0003】
このイオン注入装置では、基板を保持した基板ホルダが一方向に沿って往復移動するのに伴って基板の被処理面にイオンビームが照射されるイオン注入処理工程が実行される。このイオン注入処理工程は、基板ホルダが移動する向きを反転させる際に、基板ホルダがイオンビームの一部を遮る位置で停止するように基板ホルダを移動させる第一のイオン注入処理工程と、基板ホルダがイオンビームを遮らない位置で停止するように基板ホルダを移動させる第二のイオン注入処理工程から成る。第二のイオン注入処理工程においては、イオンビームが遮られることなく測定器に到達し、測定器によってイオンビームのビーム電流が測定される。
【0004】
このイオン注入処理工程においては、第一のイオン注入処理工程が複数回、例えば三回実施される度に、第二のイオン注入処理工程が一回実施される。このイオン注入装置は、イオンビームのビーム電流が測定されない第一のイオン注入処理工程において、基板ホルダを、イオンビームを抜けきらない位置で停止させて折り返すように移動させることで、イオン注入処理工程に要する時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記した特許文献1に示すようなイオン注入装置においては、イオン注入処理の全体にかかる時間をより一層短縮し、生産効率をさらに高めたいという要望がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、イオン注入処理の全体にかかる時間をより一層短縮し、生産効率をさらに高めることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討した結果、本発明者は、特許文献1に示す従来のイオン注入装置では、基板ホルダの移動する向きを反転させる前後の動作が、第一のイオン注入処理工程においても第二のイオン注入処理工程においても、同一の速度変化で行われていることに着目した。そして本発明者は、基板ホルダを往復させる動作に要する時間に短縮の余地があることを見出し、本発明に想到したのである。
【0009】
すなわち本発明に係るイオン注入装置は、イオンビームの進行方向と交差する所定のスキャン方向に沿って往復移動可能な基板ホルダと、前記イオンビームの進行経路上にあるビーム測定器とを備え、前記基板ホルダが、(1)前記基板ホルダに保持された基板が前記イオンビームを横切る領域を前記スキャン方向に通過する間、所定の注入速さで移動する注入動作と、(2)前記基板が前記領域を通過した後、第一の速度変化によって、前記基板ホルダが前記イオンビームの少なくとも一部を遮る第一の停止位置で停止する第一の停止動作と、前記第一の停止位置から向きを反転させて進行し始め、前記第一の停止位置から第二の速度変化によって前記注入速さで前記領域に到達する第一の進行動作と、を含む第一の往復動作と、(3)前記基板が、前記領域を通過した後、前記イオンビームに対して前記第一の停止位置より遠い位置にあり、前記基板ホルダが前記イオンビームを遮らない第二の停止位置で停止する第二の停止動作と、前記第二の停止位置から向きを反転させて進行し始め、前記注入速さで前記領域に到達する第二の進行動作と、を含む第二の往復動作と、を行うイオン注入装置であって、前記第二の停止位置が、前記基板ホルダが前記領域を前記スキャン方向に移動していき、前記イオンビームを抜けきった位置である計測可能位置と同じ位置、又は前記イオンビームに対して前記計測可能位置より遠い位置であり、前記基板ホルダが、前記第二の往復動作において、(i)前記第二の停止動作を、前記基板ホルダが前記注入速さで進行した後に前記第一の速度変化によって前記計測可能位置で停止するのに要する時間より短い所要時間で行う、又は、(ii)前記第二の進行動作を、前記基板ホルダが前記計測可能位置から前記第一の速度変化で前記注入速さに到達した後に前記注入速さを維持した状態で前記領域に到達するのに要する時間より短い所要時間で行う、ように動作する。
【0010】
この構成によれば、第二の往復動作では、基板ホルダは、計測可能位置と同じ位置、又はイオンビームに対して計測可能位置から遠い位置にある第二の停止位置で停止し、移動する向きを変える。つまり、基板ホルダが、第二の停止位置にあるとき、イオンビームは基板ホルダに遮られることなくビーム測定器に到達し、イオンビームの状態が測定される。そして、第二の停止動作が、基板ホルダが所定の注入速さで進行した後に第一の速度変化によって計測可能位置で停止するのに要する時間より短い所要時間で行われる、又は、第二の進行動作が、基板が計測可能位置から第一の速度変化で注入速さに到達した後に注入速さを維持した状態で基板がイオンビームを横切る領域に到達するのに要する時間より短い所要時間で行われる。したがって、イオンビームの状態を測定する際に、基板がイオンビームを横切る領域の外側で基板ホルダが往復移動するに要する時間が従来と比較して短縮される。つまり、イオン注入処理の全体にかかる時間を大幅に短縮し、生産効率を高めることができる。
【0011】
前記イオン注入装置の具体的態様の一つとして、前記第二の停止動作における前記基板ホルダの速さの最大値が前記注入速さよりも大きいものが挙げられる。
【0012】
また、前記イオン注入装置の具体的態様の一つとして、前記第二の進行動作における前記基板ホルダの速さの最大値が前記注入速さよりも大きいものが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、イオン注入処理の全体にかかる時間をより一層短縮し、生産効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態のイオン注入装置の構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態の基板ホルダの動きをイオンビームの進行方向から視た図。
【
図3】同実施形態の基板ホルダの注入動作を説明する図であり、経過時間と基板ホルダの位置との関係を示す図。
【
図4】同実施形態の基板ホルダの第一の往復動作を説明する図であり、基板ホルダの位置と速度との関係を示す図。
【
図5】同実施形態の基板ホルダの第二の往復動作を説明する図であり、基板ホルダの位置と速さとの関係を示す図。
【
図6】同実施形態の基板ホルダの従来のオーバースキャン往復動作を説明する図であり、基板ホルダの位置と速さとの関係を示す図。
【
図7】同実施形態の基板ホルダの第一の停止動作、第二の停止動作、および従来のオーバースキャン往復動作の停止動作における時間と速さとの関係を示す図。
【
図8】同実施形態の基板ホルダの第一の進行動作、第二の進行動作、および従来のオーバースキャン往復動作の進行動作における時間と速さとの関係を示す図。
【
図9】同実施形態における第二の往復動作における時間と基板ホルダの位置との関係を示す図。
【
図10】同実施形態における一枚の基板を処理する間の時間と基板ホルダの位置との関係を示す図。
【
図11】他の実施形態の第二の停止動作における時間と基板ホルダの速さとの関係を示す図。
【
図12】他の実施形態の第二の進行動作における時間と基板ホルダの速さとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るイオン注入装置100の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態のイオン注入装置100は、
図1に示すように、ターゲットである基板Wに、イオンビームIBを照射させてイオン注入をするためのものである。具体的にこのイオン注入装置100は、イオンビームIBが引き出されるイオン源1と、引き出されたイオンビームIBに対して被処理面を向けるように基板Wを保持するとともに、当該保持した基板WをイオンビームIBに対して移動させる基板駆動装置2と、基板Wに照射されるイオンビームIBの状態を測定するビーム測定器3とを備えている。イオン源1から基板駆動装置2までのイオンビームIBの経路(ビームライン)は、図示しない真空容器によって囲まれており、イオン注入時は真空雰囲気に保たれる。本実施形態におけるイオン注入装置100は、半導体製造工程で使用される装置であり、基板Wは円盤形状のウェーハである。
【0017】
イオン源1は、例えば、イオン化ガスが導入されるプラズマ生成容器(図示しない)と、プラズマ生成容器内に電子を供給する電子供給手段(図示しない)と、電子供給手段からの電子を捕捉する磁場をプラズマ生成容器内に形成する電磁石(図示しない)とを備えるものである。このイオン源1では、プラズマ生成容器内に供給されたイオン化ガスと電子からプラズマが生成され、そのプラズマに含まれるイオンが、プラズマ生成容器に形成したイオン引出口からイオンビームIBとして引き出される。イオン源1から引き出されて基板Wに照射されるイオンビームIBは、その進行方向に直交する一方向(ここでは
図1の紙面の表裏方向)の長さ(イオンビームIBの長さ)が、当該一方向及び進行方向に直交する方向の長さ(イオンビームIBの幅)よりも十分に大きいリボン状をなしている。また基板Wに照射されるときのイオンビームIBの長さは、基板Wの長さよりも若干大きい。
【0018】
基板駆動装置2は、引き出されたイオンビームIBに対して被処理面が向くように基板Wを保持するとともに、イオンビームIBの進行方向(具体的には照射方向)に対して交差する所定のスキャン方向Dに沿って往復移動可能に構成された基板ホルダ21と、基板ホルダ21の動作を制御する動作制御部22とを備えている。このスキャン方向Dは、イオンビームIBの幅方向(換言すれば長さ方向に直交する方向)と一致するように設定されている。そして基板ホルダ21は、スキャン方向Dに沿って設けられたレール(図示しない)に乗せられて、スキャン方向Dに沿って往復移動を繰り返す。この基板ホルダ21の往復移動と、イオンビームIBがリボン状をしていることとによって、基板Wの被処理面の全面にイオンビームIBを照射させてイオン注入を行うことができる。
【0019】
この基板ホルダ21は、スキャン方向Dにおける長さが基板Wの長さよりも大きいものである。具体的に基板ホルダ21は、
図2に示すように、引き出されたイオンビームIBに対して対向する対向面211を有しており、この対向面211内に基板Wが載置される基板載置領域211aが設定されている。イオンビームIBの進行方向から視て、基板載置領域211aは対向面211の外周縁よりも内側に設定されている。言い換えれば、対向面211において、基板Wが載置されない余剰領域211bが基板載置領域211aを取り囲んで存在している。なお、各図では基板ホルダ21の構成を簡略化しており、本明細書において基板ホルダ21とは、基板Wとともに移動する装置全体(図示しない部品を含む)を意味し、余剰領域211bとは、基板ホルダ21の対向面211において基板Wが載置されていない領域の全体を意味する。つまり、余剰領域211bは、基板ホルダ21の、基板Wを保持した基板ホルダ21がイオンビームIBをスキャン方向Dに横切った際に、基板Wに隠されることなくイオンビームIBが照射される領域である。
【0020】
本実施形態の基板ホルダ21の移動動作は動作制御部22により制御されている。動作制御部22は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス等を備えた、汎用乃至専用のコンピュータであり、そのメモリに記憶させた所定のプログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させることにより、基板ホルダ21を搬送させる駆動機構(図示しない)に制御信号を出力して基板ホルダ21の移動動作を制御する機能を発揮する。
【0021】
ビーム測定器3は、基板Wに照射されるイオンビームIBのビーム電流やビーム形状を測定するためのものである。このビーム測定器3は、イオンビームIBの進行経路上において、基板ホルダ21よりも進行方向の前方に配置されている。イオンビームIBの幅方向から視て、ビーム測定器3は、その中心位置をイオンビームIBの幅方向の中心位置に一致させて配置されている。具体的にこのビーム測定器3は、例えばイオンビームIBの長さ方向に沿って配置された複数のファラデーカップを備える構成とされている。
【0022】
また本実施形態では、イオン源1と基板駆動装置2との間には、イオン源1から引き出されたイオンビームIBの質量分離を行う質量分離手段4が設けられている。質量分離手段4は、質量分離磁石41と分離スリット42とを有している。質量分離磁石41は、イオンビームIBをその厚さ方向に曲げて所望のイオンを選別して導出するものである。分離スリット42は、質量分離磁石41の下流側に設けられており、質量分離磁石41と協働することにより、上記した所望のイオンを選別して通過させるものである。
【0023】
基板ホルダ21の動作を説明する。
図3~
図6はそれぞれ、後述する基板ホルダ21の注入動作、第一の往復動作、第二の往復動作、および従来のオーバースキャン往復動作における基板ホルダ21の動作を示している。基板ホルダ21は、スキャン方向Dにおける、余剰領域211bの一方側の先端部である一側端部21aと、他方側の先端部である他側端部21bを有する。これ以降、基板ホルダ21の位置とは一側端部21aの位置を指すものとする。
【0024】
図3(a)に示すように、基板ホルダ21はまず、位置Pで停止した状態から、他側端部21bから一側端部21aに向かう方向に動き始め、所定の注入速さV
0に到達した後、
図3(b)に示すように、基板WがイオンビームIBを横切り始める位置である位置Qに到着する。その後、基板ホルダ21は一定の注入速さV
0で移動し、
図3(c)に示すように、基板WがイオンビームIBを横切り切った位置である位置Rに到着する。これ以降、基板WがイオンビームIBを横切る領域、つまり、基板Wが
図3(b)に示す位置から
図3(c)に至る間に通過する領域を注入領域という。
【0025】
(注入動作)
基板ホルダ21は、位置Qから位置Rに至る間、および、位置Rから位置Qに至る間、所定の注入速さV0で移動する。本実施形態においては、この基板ホルダ21が、位置Qから位置Rに到達する動作、および、位置Rから位置Qに到達する動作を注入動作という。つまり、基板ホルダ21は、基板ホルダ21に保持された基板Wが注入領域をスキャン方向Dに沿った一方向に通過する間、所定の注入速さV0で移動する注入動作を行う。
【0026】
(第一の往復動作)
基板ホルダ21は、
図4(a)に示すように、基板Wが注入領域を抜けきった直後、つまり、位置Rに到達した直後に減速を開始し、第一の速度変化によって、
図4(b)に示す第一の停止位置Sで停止する。本実施形態においては、基板ホルダ21が、位置Rから第一の停止位置Sに至る動作を第一の停止動作という。
【0027】
基板ホルダ21は、第一の停止動作に引き続き、第一の停止位置Sから向きを変えて進行し始め、基板WがイオンビームIBを横切り始める直前、つまり、位置Rに到達する直前に注入速さV
0に到達し、位置Rを注入速さV
0で通過する。本実施形態においては、この基板ホルダ21が第一の停止位置Sから位置Rに至る動作を第一の進行動作という。
また、
図4(b)に示すように、基板ホルダ21が第一の停止位置Sにあるとき、余剰領域211bの一部がイオンビームIBを遮っている。
【0028】
このように、基板ホルダ21は、注入動作に引き続き、基板Wが注入領域を通過した後、第一の速度変化によって、基板ホルダ21がイオンビームIBの少なくとも一部を遮る第一の停止位置Sで停止する第一の停止動作を行う。そして、基板ホルダ21は、第一の停止位置Sから向きを反転させて進行し始め、第一の停止位置Sから第二の速度変化によって注入速さV0で基板Wが再び注入領域に到達する第一の進行動作を行う。本実施形態においては、この基板ホルダ21が、第一の停止動作および第一の進行動作によって、位置Rと第一の停止位置Sの間を折り返して移動する動作を第一の往復動作という。
【0029】
第一の往復動作においては、基板ホルダ21の一部がイオンビームIBを遮っており、ビーム測定器3はイオンビームIBのビーム電流を計測できない。正確には、本実施形態のイオン注入装置100は、イオンビームIBのビーム電流を計測しない場合には、基板ホルダ21の進行方向を反転させるのに要する時間を短縮するため、基板ホルダ21を、基板ホルダ21がイオンビームIBの少なくとも一部を遮る第一の停止位置Sで停止させる第一の往復動作を行っている。
なお、本実施形態においては、基板ホルダ21が第一の停止位置Sにあるとき、基板ホルダ21はイオンビームIBの一部のみを遮っているが、全域を遮るものであってもよい。
【0030】
また、イオンビームIBのビーム電流を計測する場合、基板ホルダ21は、イオンビームIBに対して第一の停止位置Sより遠い位置にあり、イオンビームIBを遮らない位置まで移動して停止する必要がある。このときの基板ホルダ21の往復動作が後述する第二の往復動作である。
【0031】
(第二の往復動作)
第二の往復動作において、基板ホルダ21は、注入動作に引き続き、
図5(a)に示すように、基板Wが注入領域を抜けきった後、所定の速度変化を行った後、
図5(b)に示すように第二の停止位置Tで停止する。本実施形態においては、この基板ホルダ21が、位置Rから第二の停止位置Tに至る動作を第二の停止動作という。
【0032】
基板ホルダ21は、第二の停止動作に引き続き、第二の停止位置Tから向きを変えて進行し始め、基板WがイオンビームIBを横切り始める直前、つまり、位置Rに到達する直前に所定の注入速さV0に到達し、位置Rを注入速さV0で通過する。本実施形態においては、基板ホルダ21が第二の停止位置Tから位置Rに至る動作を第二の進行動作という。
【0033】
このように、基板ホルダ21は、注入動作に引き続き、基板Wが注入領域を通過した後、イオンビームIBに対して第一の停止位置Sより遠い位置にあり、基板ホルダ21がイオンビームIBを遮らない第二の停止位置Tで停止する第二の停止動作と、第二の停止位置Tから向きを反転させて進行し始め、注入速さV0で注入領域に到達する第二の進行動作と、を含む第二の往復動作を行う。
【0034】
図5(b)に示すように、基板ホルダ21が第二の停止位置Tにあるとき、基板ホルダ21はイオンビームIBを遮っていない。つまり、基板ホルダ21が第二の停止位置Tにあるとき、イオンビームIBは基板ホルダ21に遮られることなくその全域がビーム測定器3に到達し、ビーム測定器3ではイオンビームIBのビーム電流が測定される。このように、イオンビームIBのビーム電流を測定するために、第一の往復動作よりも遠い位置で停止させて折り返す往復動作をオーバースキャン往復動作ともいう。
【0035】
(従来のオーバースキャン往復動作)
図6は、従来のオーバースキャン往復動作を示している。
従来、オーバースキャン往復動作を短時間で行うため、基板ホルダ21は、基板ホルダ21がイオンビームIBを抜けきった直後の位置で停止するように動作していた。より詳細には、
図6(b)に示すように、従来のオーバースキャン動作では、基板ホルダ21は、基板ホルダ21の他側端部21bがイオンビームIBを横切った直後に停止する位置であり、ビーム測定器3でのイオンビームIBの測定がはじめて可能となる計測可能位置Uで停止していた。
このとき、動作制御部22が基板ホルダ21の移動動作を制御させて基板ホルダ21を停止させるが、動作制御部22は、第一の停止動作と同様の制御で基板ホルダ21を停止させていた。つまり、従来のオーバースキャン往復動作における停止動作において、基板ホルダ21は、基板ホルダ21を注入速さV
0から第一の速度変化と同一の速度変化によって停止していた。
【0036】
また、従来のオーバースキャン往復動作の進行動作では、基板ホルダ21が進行方向を反転させ、計測可能位置Uから再び注入速さV0に到達して基板Wを注入領域に進入させるように動作していたが、このとき、基板ホルダ21を停止状態から注入速さV0に到達する際の速度変化は第二の速度変化と同一であった。
【0037】
本実施形態におけるイオン注入装置100の動作制御部22は、基板ホルダ21が第二の往復動作に要する時間が、従来のオーバースキャン往復動作に要する時間と比較して短くなるように基板ホルダ21を動作させる。そのために、例えば、基板ホルダ21が第二の往復動作における第二の停止位置Tにいる時間を、基板ホルダ21が従来のオーバースキャン往復動作における計測可能位置Uにある時間より短くなるようにしてもよい。しかしながら、基板ホルダ21が計測可能位置Uにある時間は一瞬、あるいは非常に短い期間であるため、基板ホルダ21が停止する時間を短縮させることによってオーバースキャン往復動作に要する時間を短縮することは難しい場合が多い。
【0038】
そこで、本実施形態におけるイオン注入装置100では、基板ホルダ21が、第二の停止動作を、従来のオーバースキャン往復動作における停止動作よりも短時間で行うように構成されている。つまり、基板ホルダ21は、(i)第二の停止動作を、基板ホルダ21が注入速さV0で進行した後に第一の速度変化によって計測可能位置Uで停止するのに要する時間より短い所要時間で行っている。
【0039】
そして、本実施形態におけるイオン注入装置100では、さらに、基板ホルダ21は、第二の進行動作を、従来のオーバースキャン往復動作における進行動作よりも短時間で行っている。つまり、基板ホルダ21は、(ii)第二の進行動作を、基板ホルダ21が計測可能位置Uから第二の速度変化で注入速さV0に到達した後に注入速さV0を維持した状態で注入領域に到達する、すなわち位置Rに到達するのに要する時間より短い所要時間で行っている。
【0040】
図7は、基板ホルダ21の第一の停止動作、第二の停止動作、および従来のオーバースキャン往復動作の停止動作における、速さと時間の関係を表すグラフである。
図7のt軸は、基板WがイオンビームIBを抜けきった、すなわち基板ホルダ21が位置Rに到達したときからの経過時間[s]を示しており、v軸は、基板ホルダ21の速さ[m/s]を示している。
【0041】
図7のA線は、基板ホルダ21が第一の停止動作を行う間の基板ホルダ21の時間と速さの関係を示している。第一の停止動作においては、基板ホルダ21は、位置Rに到達した後、第一の速度変化で減速し、T
1[s]経過時に第一の停止位置Sで停止する。つまり、A線が基板ホルダ21の第一の速度変化を示している。
なお、
図7において、A線は、一例として、第一の速度変化が直線で表される場合、すなわち基板ホルダ21が等加速度直線運動で減速する場合を示しているが、第一の速度変化はこれに限定されるものではない。
【0042】
図7の破線で表されているB線は、従来のオーバースキャン往復動作において、基板ホルダ21が停止動作を行う間の基板ホルダ21の時間と速さの関係を示している。従来のオーバースキャン往復動作の停止動作では、基板ホルダ21は、位置Rからしばらくの間、一定の注入速さV
0[m/s]で進行した後、第一の速度変化と同一の速度変化で減速し、Tm[s]経過時に計測可能位置Uで停止する。
なお、基板ホルダ21が、第一の速度変化と同一の速度変化で減速することは、
図7においては、B線の基板ホルダ21が減速することを示す領域がA線と平行になることをいう。
【0043】
図7のC線は、基板ホルダ21が第二の停止動作を行う間の基板ホルダ21の時間と速さの関係を示している。第二の停止動作においては、基板ホルダ21は、位置Rに到達した後、従来のオーバースキャン往復動作の停止動作に要する時間よりも短い時間、すなわち、Tm[s]経過するより前に、第二の停止位置Tで停止する。第二の停止位置Tは基板ホルダ21がイオンビームIBを遮らない位置である必要がある。したがって、第二の停止位置Tは、計測可能位置Uと同じ位置、またはイオンビームIBに対して計測可能位置Uより遠い位置である。
【0044】
図7のC線で表される基板ホルダ21の第二の停止動作においては、基板ホルダ21はまず注入速さV
0でわずかに移動した後に加速し始め、その後、速さV
1[m/s]に到達する。そして、速さV
1[m/s]でしばらく進行した後に減速を開始し、T
2[s]経過時に停止する。
【0045】
このように、本実施形態では、基板ホルダ21を停止させる動作であっても基板ホルダ21を一度加速させる、すなわち、第二の停止動作における基板ホルダ21の速さの最大値(上記の場合、V1[m/s])が注入速さV0[m/s]よりも大きくするように基板ホルダ21を移動させている。
【0046】
例えば、第一の停止動作が基板ホルダ21の図示されない駆動機構の仕様上の最短時間で行われている場合であっても、上述のように基板ホルダ21を一度加速させることによってオーバースキャン往復動作の停止動作に要する時間を短縮することができる。
【0047】
図7において、各A~C線とt軸およびv軸で囲まれる面積は、各動作における基板ホルダ21が位置Rに到達してから停止するまでの距離を示す。したがって、B線とt軸およびv軸で囲まれる面積は、位置Rから計測可能位置Uまでの距離を示す。また、C線とt軸およびv軸で囲まれる面積は、位置Rから第二の停止位置Tまでの距離を示す。
【0048】
本実施形態における基板ホルダ21の第二の停止動作は、従来のオーバースキャン動作における停止動作に要する時間よりも短く、かつ、計測可能位置Uと同じ位置またはイオンビームIBに対して計測可能位置Uより遠い位置で停止していればどのような移動動作であってもよい。
【0049】
つまり、基板ホルダ21の第二の停止動作は、上述した
図7のC線で表される動作に限定されず、
図7において、T
2<Tm、かつ、(B線とt軸およびv軸で囲まれる面積)≦(C線とt軸およびv軸で囲まれる面積)となる動作であればどのようなものであってもよい。
【0050】
図8は、基板ホルダ21の第一の進行動作および第二の進行動作における、速さと時間の関係を表すグラフである。
図8のt軸は、基板ホルダ21が各動作で停止した位置から進行し始めたときからの経過時間[s]を示しており、v軸は、基板ホルダ21の速さ[m/s]を示している。
【0051】
図8のD線は、基板ホルダ21が第一の進行動作を行う間の基板ホルダ21の時間と速さの関係を示している。第一の進行動作においては、基板ホルダ21は、第一の停止位置Sから、第二の速度変化で加速し、T
3[s]経過時に位置Rに到達する。つまり、D線が基板ホルダ21の第一の速度変化を示している。実際には、基板ホルダ21は、位置Rを注入速さV
0[m/s]で確実に通過させるため、位置Rのわずかに手間で注入速さV
0[m/s]に到達させる必要がある。つまり、より正確には、
図8は、各進行動作において基板ホルダ21が位置Rのわずかに手前の位置に到達するまでのグラフを表している。
なお、D線は、一例として、第二の速度変化が直線で表される場合、すなわち基板ホルダ21が等加速度運動で加速する場合を示しているが、第二の速度変化はこれに限定されるものではない。
【0052】
図8の破線で表されているE線は、従来のオーバースキャン動作において、基板ホルダ21が計測可能位置Uから位置Rに到達するまでの基板ホルダ21の時間と速さの関係を示している。従来のオーバースキャン動作における進行動作では、基板ホルダ21は、計測可能位置Uから第二の速度変化と同一の速度変化で加速して注入速さV
0[m/s]に到達し、その後、一定の注入速さV
0[m/s]で進行して位置Rに到達していた。
なお、基板ホルダ21が、第二の速度変化と同一の速度変化で加速することは、
図8においては、B線の基板ホルダ21が加速することを示す領域がD線と平行になることで表される。
【0053】
図8のF線は、基板ホルダ21が第二の進行動作を行う間の基板ホルダ21の時間と速さの関係を示している。第二の進行動作においては、基板ホルダ21は、計測可能位置Uと同じ位置、またはイオンビームIBについて計測可能位置Uより遠い位置である第二の停止位置Tから進行を開始し、従来のオーバースキャン動作の進行動作に要する時間よりも短い時間、すなわち、Tn[s]経過するより前に、位置Rに到達する。
【0054】
図8のF線で表される基板ホルダ21の第二の進行動作においては、基板ホルダ21は第二の停止位置Tから加速し始め、注入速さV
0より大きい速さV
2[m/s]に到達する。そして、速さV
2[m/s]でしばらく進行した後に減速を開始し、T
4[s]経過時に注入速さV
0[m/s]に到達する。
【0055】
このように、本実施形態のイオン注入装置100は、基板ホルダ21を進行させる動作であっても基板ホルダ21を注入速さV0より大きい速さ(上記の場合、V2[m/s])にまで加速させた後に減速させるように基板ホルダ21を移動させている。
【0056】
図8における各線とt軸および停止時刻におけるv軸と平行な直線で囲まれる面積は、基板ホルダ21が各動作で停止した位置から進行を開始してから位置Rに到達するまでの移動距離を示す。したがって、E線とt軸およびv軸に平行なt=Tnの直線で囲まれる面積は、計測可能位置Uから位置Rまでの距離を示す。また、F線とt軸およびv軸に平行なt=T4の直線で囲まれる面積は、第二の停止位置Tから位置Rまでの距離を示す。
【0057】
本実施形態における基板ホルダ21の第二の進行動作は、計測可能位置Uと同じ位置またはイオンビームIBに対して計測可能位置Uより遠い位置から進行し始め、従来のオーバースキャン動作における進行動作に要する時間よりも短い所要時間で位置Rに到達していればどのような移動動作であってもよい。
【0058】
つまり、基板ホルダ21の第二の進行動作は、上述した
図8のF線で表される動作に限定されず、
図8において、T4<Tn、かつ、(E線とt軸およびt=Tnの直線で囲まれる面積)≦(F線とt軸およびt=T4の直線で囲まれる面積)となる動作であればどのようなものであってもよい。
【0059】
本実施形態においては、基板ホルダ21は、(i)第二の停止動作を、基板Wが注入速さV0で進行した後に第一の速度変化によって計測可能位置Uで停止するのに要する時間より短い所要時間で行い、かつ、(ii)第二の進行動作を、基板ホルダ21が計測可能位置Uから第二の速度変化で注入速さV0に到達した後に注入速さV0を維持した状態で注入領域に到達する、すなわち位置Rに到達するのに要する時間より短い所要時間で行っている。
【0060】
基板ホルダ21の動作はこれに限定されず、(i)第二の停止動作を、基板ホルダ21が注入速さV0で進行した後に第一の速度変化によって計測可能位置Uで停止するのに要する時間より短い所要時間で行うか、または、(ii)第二の進行動作を、基板ホルダ21が計測可能位置Uから第二の速度変化で注入速さV0に到達した後に注入速さV0を維持した状態で注入領域に到達する、すなわち位置Rに到達するのに要する時間より短い所要時間で行うものであればよい。
【0061】
図9は、基板ホルダ21が
図7におけるC線、および
図8におけるF線によって示される速度変化によって第二の往復動作を行う間の、基板ホルダ21が位置Rを通過してからの時間と基板ホルダ21の位置との関係を表す図である。また、
図9には、従来のオーバースキャン往復動作における時間と基板ホルダ21の位置との関係が破線で示されている。
図9に示すように、第二の進行動作において、基板ホルダ21を注入速さV
0[m/s]より大きい速さV
2[m/s]に到達させることで、イオンビームIBに対して計測可能位置Uよりも遠い位置で停止することになる場合であっても、第二の往復動作に要する時間を従来のオーバースキャン往復動作よりも短縮することができる。
【0062】
また、第二の往復動作をより短時間で行うようにするため、第二の停止位置Tが計測可能位置Uと同じ位置になるように、または、第二の停止位置Tが計測可能位置Uにできるだけ近づくように基板ホルダ21を動作させるとよい。
【0063】
図10は、本実施形態のイオン注入装置100における、一枚の基板Wにイオン注入が行われる間の時間と基板ホルダ21の位置を模式的に表すグラフである。
図10は、基板ホルダ21が、第二の往復動作において第二の停止位置Tを計測可能位置Uと同じ位置で停止する場合の動作を示している。なお、
図10に示される基板ホルダ21の第一の往復動作および第二の往復動作は、
図7および
図8に示されるものとは異なっている。
【0064】
図10に示されるように、基板ホルダ21は、進行方向を変えて位置Qと位置Rの間を複数回通過する。この間、位置Qから位置Rに向かって進行した後に向きを変える動作においては、第一の停止位置Sにおいて停止して向きを変える第一の往復動作を2回行った後、第二の停止位置Tにおいて停止して向きを変える第二の往復動作を1回行う動作を繰り返している。
【0065】
本実施形態のイオン注入装置100では、第二の往復動作に要する時間を、従来のオーバースキャン往復動作に要する時間よりも短くすることで、一枚の基板Wを処理するのに要する時間を短縮している。
図10において、基板ホルダ21は、一枚の基板Wを処理する間に、第二の往復動作を三回行っている。したがって、一枚の基板Wを処理するにあたり、一回の第二の往復動作で短縮される時間の三倍の時間が短縮されることになる。
【0066】
つまり、従来のオーバースキャン往復動作に代えて、本実施形態の第二の往復動作を採用した場合には、第二の往復動作を行う回数、つまり、イオンビームIBのビーム電流を計測する回数に比例して基板Wを処理するのに要する時間が短縮される。つまり、本実施形態の第二の往復動作を採用することで、従来と比較してもイオン注入処理の全体にかかる時間をより一層短縮し、生産効率をさらに高めることができる。
【0067】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
図11は、基板ホルダ21の第二の停止動作の一変形例を示し、
図11のC線は第二の停止動作における基板ホルダ21が位置Rに到達後の時間と基板ホルダ21の位置との関係を示している。また、
図11のB線は従来のオーバースキャン往復動作の停止動作における時間と基板ホルダ21の位置との関係を示している。
図11のC線に示されるように、第二の停止動作において基板ホルダ21の速さが注入速さV
0[m/s]を超えない場合、つまり、基板ホルダ21の速さの最大値が注入速さV
0[m/s]の場合であっても、基板ホルダ21が減速を開始してから停止するまでの時間を、Bで示される従来のオーバースキャン往復動作における基板ホルダ21が減速を開始してから停止するまでの時間より短くすればよい。
【0068】
これにより、i)第二の停止動作が、基板Wが注入速さV0[m/s]で進行した後に前記第一の速度変化によって計測可能位置Uで停止するのに要する時間より短い所要時間で行われる。
【0069】
図12は、基板ホルダ21の第二の進行動作の一変形例を示し、
図12のF線は第二の進行動作における基板ホルダ21が停止した位置から位置Rに到達するまでの時間と基板ホルダ21の位置との関係を示している。また、
図12のE線は従来のオーバースキャン往復動作の進行動作における時間と基板ホルダ21の位置との関係を示している。
図12のF線に示されるように、第二の進行動作において基板ホルダ21の速さが注入速さV
0[m/s]を超えない場合、つまり、基板ホルダ21の速さの最大値が注入速さV
0[m/s]の場合であっても、基板ホルダ21が加速を開始してから注入速さV
0[m/s]に到達するまでの時間を、E線で示される従来のオーバースキャン往復動作における基板ホルダ21が加速を開始してから注入速さV
0[m/s]に到達するまでの時間より短くすればよい。
【0070】
これにより、(ii)第二の進行動作を、基板ホルダ21が計測可能位置Uから第二の速度変化で注入速さV0[m/s]に到達した後に注入速さV0[m/s]を維持した状態で注入領域に到達する、すなわち位置Rに到達するのに要する時間より短い所要時間で行うことができる。
【0071】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
100・・・イオン注入装置
1 ・・・イオン源
21 ・・・基板ホルダ
22 ・・・制御部
3 ・・・ビーム測定器
IB ・・・イオンビーム
W ・・・基板