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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154251
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/02 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
F04B49/02 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067986
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】岩邊 和也
(72)【発明者】
【氏名】沖村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】弓達 陽治
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕貴
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA04
3H145AA12
3H145AA24
3H145AA33
3H145AA42
3H145AA44
3H145BA19
3H145CA02
3H145CA03
3H145DA05
3H145DA09
3H145EA13
3H145EA32
3H145GA02
(57)【要約】
【課題】指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができるポンプシステムを提供する。
【解決手段】ポンプシステムは、可変容量形の液圧ポンプと、レギュレータと、開度制御弁と、開度制御弁の上流圧を計測する第1圧力センサと、開度制御弁の下流圧を計測する第2圧力センサと、ポンプ特性に従って液圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、開度制御弁の開度を所定開度に固定する計測条件下でレギュレータに出力する指令信号を変えることによって、互いに異なる複数の指令信号において第1圧力センサ及び第2圧力センサによって上流圧及び下流圧を夫々検出させ、上流圧及び下流圧に基づいて算出される開度制御弁の前後差圧と開度制御弁の開度とに基づいて液圧ポンプから吐出される実吐出流量を指令信号毎に算出し、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルを作成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出容量を変更できる可変容量形の液圧ポンプと、
入力される指令信号に応じて前記液圧ポンプの吐出容量を変えるレギュレータと、
前記液圧ポンプに接続され、開度を変えられる開度制御弁と、
前記液圧ポンプから前記開度制御弁に流れる作動液の液圧である上流圧を計測する第1圧力センサと、
前記開度制御弁から流れる作動液の液圧である下流圧を計測する第2圧力センサと、
指令吐出流量と指令信号との関係を示すポンプ特性に従って前記液圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記開度制御弁の開度を所定開度に固定する計測条件下で前記レギュレータに出力する指令信号を変えることによって、互いに異なる複数の指令信号において前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサによって上流圧及び下流圧を夫々検出させ、検出される上流圧及び下流圧に基づいて算出される前記開度制御弁の上流側及び下流側の差圧と前記開度制御弁の開度に基づいて前記液圧ポンプから吐出される実吐出流量を指令信号毎に算出し、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて指令吐出流量を補正する補正テーブルを作成する、ポンプシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、差圧と開度とに基づいて実吐出流量を算出する際に流量係数を用いており、
流量係数は、前記制御装置において差圧の状態に応じて設定されている、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、差圧と開度とに基づいて実吐出流量を算出する際に流量係数を用いており、
流量係数は、前記制御装置において開度の状態に応じて設定されている、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、指令吐出流量を補正する補正テーブルを各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量との差分に基づいて作成する、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項5】
計測条件は、前記液圧ポンプの回転数が、指令信号毎に予め設定された回転数であることを含む、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記開度制御弁は、開度を所定開度に固定する第1位置、前記液圧ポンプと前記タンクとの間を遮断する第2位置、及びストローク量に応じて開度を変える第3位置に夫々移動可能な弁体を有し、
前記制御装置は、第1計測条件において第1補正テーブルを取得すべく前記弁体を第1位置に保持する、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項7】
前記弁体は、開度を所定開度である第1開度より大きい第2開度に固定する第4位置に移動することができ、
前記制御装置は、第2計測条件において第2補正テーブルを取得すべく、前記弁体を第4位置にて保持する、請求項6に記載のポンプシステム。
【請求項8】
前記開度制御弁は、アンロード弁であって、
前記液圧ポンプは、作動液を供給する液圧回路にポンプ通路を介して接続され、
前記アンロード弁は、前記ポンプ通路であって前記液圧回路より上流側に接続される、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項9】
前記開度制御弁は、優先弁であり、
前記液圧ポンプは、複数のアクチュエータに接続され、
前記優先弁は、前記複数のアクチュエータのうちの1つに優先的に流す、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項10】
前記開度制御弁は、流量制御弁であり、
前記液圧ポンプは、前記流量制御弁を介してアクチュエータに接続され、
前記流量制御弁は、前記アクチュエータに流れる作動液の流れを制御する、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項11】
前記制御装置は、入力される指令吐出流量を作成された補正テーブルに基づいて補正し、補正された指令吐出流量とポンプ特性とに基づいて出力すべき指令信号を算出する、請求項1乃至10の何れか1つに記載のポンプシステム。
【請求項12】
吐出容量を変更できる可変容量形の液圧ポンプと、
入力される指令信号に応じて前記液圧ポンプの吐出容量を変えるレギュレータと、
前記液圧ポンプとタンクとの間に配置され、開度を変えられるアンロード弁と、
前記液圧ポンプから前記アンロード弁に流れる作動液の液圧を計測する第1圧力センサと、
指令吐出流量と指令信号との関係を示すポンプ特性に従って前記液圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記アンロード弁の開度を所定開度に固定する計測条件下で前記レギュレータに出力する指令信号を変えることによって、互いに異なる複数の指令信号において前記第1圧力センサで液圧を検出させ、検出される各液圧に基づいて算出される前記アンロード弁の上流側及び下流側の差圧と前記アンロード弁の開度に基づいて前記液圧ポンプから吐出される実吐出流量を指令信号毎に算出し、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて指令吐出流量を補正する補正テーブルを作成する、ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量形の液圧ポンプの指令吐出流量を補正するための補正テーブルを作成するポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量形の液圧ポンプでは、指令吐出流量と電流指令値との関係を示すポンプ特性(いわゆる、I-Q特性)に従って電流指令値を出力することによって、指令吐出流量の作動液が吐出される。他方、液圧ポンプでは、電流指令値に対して吐出される作動液の流量に関してポンプ毎にばらつきがある。それ故、液圧ポンプでは、電流指令値に対して指令吐出流量の作動液が吐出されるようにポンプ特性が較正される。ポンプ特性を較正するシステムとして、例えば特許文献1のような較正システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-190443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の較正システムは、多段的に電流指令値を変化させながら各電流指令値におけるポンプ圧を測定し、基準指令値における仕様上のポンプ流量と測定されたポンプ圧と基づいてポンプ制御テーブル、即ちポンプ特性を較正している。それ故、特許文献1の較正システムでは、種々の電流指令値に対してポンプ流量を較正することができる。他方、特許文献1の較正システムでは、仕様上のポンプ流量に基づいてポンプ特性を較正しているので、ポンプ流量に関してポンプ毎にばらつきがある場合、実際に流れるポンプ流量と指令吐出流量との間に差異が生じる。指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができるポンプシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明のポンプシステムは、吐出容量を変更できる可変容量形の液圧ポンプと、入力される指令信号に応じて前記液圧ポンプの吐出容量を変えるレギュレータと、前記液圧ポンプに接続され、開度を変えられる開度制御弁と、前記液圧ポンプから前記開度制御弁に流れる作動液の液圧である上流圧を計測する第1圧力センサと、前記開度制御弁から流れる作動液の液圧である下流圧を計測する第2圧力センサと、指令吐出流量と指令信号との関係を示すポンプ特性に従って前記液圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記開度制御弁の開度を所定開度に固定する計測条件下で前記レギュレータに出力する指令信号を変えることによって、互いに異なる複数の指令信号において前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサによって上流圧及び下流圧を夫々検出させ、検出される上流圧及び下流圧に基づいて算出される前記開度制御弁の上流側及び下流側の差圧と前記開度制御弁の開度に基づいて前記液圧ポンプから吐出される実吐出流量を指令信号毎に算出し、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて指令吐出流量を補正する補正テーブルを作成するものである。
【0007】
第1の発明に従えば、開度制御弁の差圧及び開度に基づいて演算される実吐出流量が指令信号毎に算出される。そして、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルが作成される。それ故、制御装置は、補正テーブルを用いて補正した指令吐出流量に応じて指令信号を出力させることによって、指令吐出流量に応じた流量の作動液を液圧ポンプから実際に吐出させることができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0008】
第2の発明のポンプシステムは、吐出容量を変更できる可変容量形の液圧ポンプと、入力される指令信号に応じて前記液圧ポンプの吐出容量を変えるレギュレータと、前記液圧ポンプとタンクとの間に配置され、開度を変えられるアンロード弁と、前記液圧ポンプから前記アンロード弁に流れる作動液の液圧を計測する第1圧力センサと、指令吐出流量と指令信号との関係を示すポンプ特性に従って前記液圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アンロード弁の開度を所定開度に固定する計測条件下で前記レギュレータに出力する指令信号を変えることによって、互いに異なる複数の指令信号において前記第1圧力センサで液圧を検出させ、検出される各液圧に基づいて算出される前記アンロード弁の上流側及び下流側の差圧と前記アンロード弁の開度に基づいて前記液圧ポンプから吐出される実吐出流量を指令信号毎に算出し、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて指令吐出流量を補正する補正テーブルを作成するものである。
【0009】
第2の発明に従えば、アンロード弁の差圧と開度とに基づいて演算される実吐出流量が指令信号毎に算出される。そして、各信号値に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルが作成される。それ故、制御装置は、指令吐出流量に応じた流量の作動液を液圧ポンプから実際に吐出させることができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1及び第2の発明によれば、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のポンプシステムを備える液圧駆動システムを示す回路図である。
図2図1の制御装置が実行する吐出流量制御及び補正テーブル作成方法の手順を示すフローである。
図3図1のポンプシステムによって較正されるポンプ特性を示すグラフである。
図4】第2実施形態のポンプシステムを備える液圧駆動システムを示す回路図である。
図5図4のポンプシステムによって較正されるポンプ特性示すグラフである。
図6】第3実施形態のポンプシステムを備える液圧駆動システムを示す回路図である。
図7】第4実施形態のポンプシステムを備える液圧駆動システムを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る第1乃至第4実施形態のポンプシステム1,1A~1Cについて前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するポンプシステム1,1A~1Cは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
[第1実施形態]
<ポンプシステム>
図1に示すポンプシステム1は、例えば液圧機械(図示せず)に備わっている。液圧機械は、例えば液圧ショベル及び液圧クレーン等の建設車両及びリフト等の産業車両等の作業車両である。なお、液圧機械は、作業車両に限定されず、農業機械、船舶、水素関連機械、及び医療機械等であってもよい。液圧機械は、少なくとも1つのアクチュエータ2と、ポンプシステム1を含む液圧駆動システム3とを備えている。アクチュエータ2は、例えば液圧シリンダ及び液圧モータ等である。アクチュエータ2は、例えば油圧ショベルにおいて、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータ、及び走行モータ等である。液圧駆動システム3は、アクチュエータ2に対して作動液(例えば、作動油)を給排する。これにより、アクチュエータ2が作動し、液圧機械は種々の作業を行うことができる。このような機能を有する液圧駆動システム3は、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、液圧回路13と、アンロード弁14と、2つの圧力センサ15,16と、操作装置17と、制御装置18とを備えている。そして、ポンプシステム1は、少なくとも、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、アンロード弁14と、2つの圧力センサ15,16と、制御装置18とを含んで構成されている。
【0014】
液圧ポンプ11は、駆動源(例えば、エンジン又は電動機)10によって回転駆動される。液圧ポンプ11は、回転駆動されることによってポンプ通路11aに作動液を吐出する。液圧ポンプ11は、可変容量形のポンプである。本実施形態において、液圧ポンプ11は、可変容量形の斜板ポンプであって、斜板11bを傾動させることによって吐出容量を変える。なお、液圧ポンプ11は、可変容量形の斜軸ポンプであってもよく、吐出容量を変えることができ且つ作動液を吐出できるポンプであればよい。
【0015】
レギュレータ12は、入力される指令信号(より詳細に説明すると、指令信号の信号値)に応じて液圧ポンプ11の吐出容量を変える。なお、指令信号は、本実施形態において電流信号である。但し、指令信号は、電流信号に限定されず、電圧信号、又はCAN信号であってもよい。レギュレータ12は、例えばサーボピストン12aと電磁比例弁12bとを含んでいる。サーボピストン12aは、斜板11bに接続されている。サーボピストン12aは、入力されるパイロット圧に応じた位置に移動する。そして、サーボピストン12aは、移動することによって斜板11bを傾動させる。これにより、斜板11bの傾転角が変わり、液圧ポンプ11の吐出容量が傾転角に応じた容量、即ち入力されるパイロット圧に応じた容量に調整される。
【0016】
電磁比例弁12bは、指令信号に応じたパイロット圧を出力する。より詳細に説明すると、電磁比例弁12bは、例えばパイロットポンプ20と、タンク19と、レギュレータ12に接続されている。電磁比例弁12bは、パイロットポンプ20及びタンク19に夫々繋がる通路の開度を調整することによって、指令信号に応じたパイロット圧をサーボピストン12aに出力する。サーボピストン12aは、パイロット圧に応じた位置へと移動する。これにより、液圧ポンプ11の吐出容量が変わる。即ち、レギュレータ12は、指令信号に応じて液圧ポンプ11の吐出容量を変える。なお、電磁比例弁12bは、指令信号に応じたパイロット圧を出力できるものであれば、前述するようなものに限定されない。
【0017】
液圧回路13は、液圧ポンプ11及び少なくとも1つのアクチュエータ2に夫々接続されている。より詳細に説明すると、液圧回路13は、ポンプ通路11aを介して液圧ポンプ11に接続されている。そして、液圧回路13は、液圧ポンプ11から吐出される作動液をアクチュエータ2に導く。また、液圧回路13は、液圧ポンプ11からアクチュエータ2に流れる作動液の流れを制御する。液圧回路13は、例えばリリーフ弁や制御弁等の種々の弁を備えており、種々の弁を作動させることによって作動液の流れを制御する。
【0018】
開度制御弁の一例であるアンロード弁14は、液圧ポンプ11とタンク19との間に配置される。そして、アンロード弁14は、液圧ポンプ11とタンク19との間の開度(以下、「アンロード弁14の開度」という)を変えられる。より詳細に説明すると、アンロード弁14は、ポンプ通路11aにおいて液圧回路13より上流側に接続されている。なお、アンロード弁14は、ポンプ通路11aにおいて液圧回路13より下流側に接続されてもよい。アンロード弁14は、液圧ポンプ11から吐出される作動液をタンク19に排出させることによって、液圧ポンプ11をアンロード状態にする。本実施形態において、アンロード弁14は、3位置のスプール弁である。即ち、アンロード弁14は、弁体であるスプール14aを有している。スプール14aは、入力されるポジション信号に応じて第1乃至第3位置A1~A3の何れかに移動する。スプール14aは、中立位置でもある第1位置A1において、アンロード弁14の開度を第1開度に固定する。また、スプール14aは、第2位置において、液圧ポンプ11とタンク19との間を遮断する。更に、スプール14aは、第3位置A3において、アンロード弁14の開度をストローク量に応じて変える。なお、アンロード弁14は、3位置のスプール弁に限定されず、2位置のスプール弁であってもよく4位置以上のスプール弁であってもよい。
【0019】
第1圧力センサ15は、液圧ポンプ11からアンロード弁14に流れる作動液の液圧である上流圧(例えば、液圧ポンプ11の吐出圧)を計測する。本実施形態において、第1圧力センサ15は、ポンプ通路11aに接続されている。より詳細に説明すると、第1圧力センサ15は、ポンプ通路11aにおいてアンロード弁14より上流側に接続されている。そして、第1圧力センサ15は、ポンプ通路11aを流れる作動液の圧力を上流圧として計測する。
【0020】
第2圧力センサ16は、アンロード弁14から流れる作動液の液圧である下流圧(本実施形態においてタンク圧)を計測する。より詳細に説明すると、第2圧力センサ16は、タンク通路19aに接続されている。タンク通路19aは、アンロード弁14とタンク19とを繋ぐ通路である。第2圧力センサ16は、タンク通路19aを流れる作動液の圧力、即ちタンク圧を下流圧として計測する。
【0021】
操作装置17は、アクチュエータ2を操作するための装置である。操作装置17は、例えば操作具である操作レバー17aを少なくとも1つ以上含んでいる。操作装置17は、操作レバー17aの傾倒量(即ち、操作量)に応じた操作指令を出力する。本実施形態において、操作装置17は、例えば電気式ジョイスティックである。なお、操作装置17は、操作レバー17aを含む操作弁であってもよい。この場合、操作装置17は、操作弁から出力されるパイロット圧を圧力センサ(図示せず)で検出し、検出されたパイロット圧力に応じた指令信号を出力する。また、操作具は、操作ペダルであってもよく、操作量に応じた操作指令を出力するものであればその形態は問わない。
【0022】
制御装置18は、第1圧力センサ15から液圧ポンプ11の吐出圧(即ち、アンロード弁14の上流圧)を取得し、第2圧力センサ16からタンク圧(即ち、アンロード弁14の下流圧)を取得する。また、制御装置18は、操作装置17からの指令信号に応じて、駆動源10、レギュレータ12、液圧回路13、及びアンロード弁14を制御する。
【0023】
より詳細に説明すると、制御装置18は、図2の吐出容量制御のフローに示されるようにレギュレータ12を制御する。即ち、操作装置17が操作されると、操作装置17から制御装置18に操作指令が入力される。そうすると、制御装置18は、操作指令に応じて液圧ポンプ11から吐出すべき流量である指令吐出流量を算出する。そして、制御装置18は、後述する補正テーブルと指令吐出流量とに基づいて補正流量を算出する。そして、制御装置18は、補正流量に基づいて指令吐出流量を補正する。更に、制御装置18は、図3に示すポンプ特性と補正後の指令吐出流量とに基づいてレギュレータ12に与える指令信号を算出する。そして、制御装置18は、レギュレータ12に指令信号を出力することによって、レギュレータ12を制御する、即ち液圧ポンプ11の吐出容量を制御する。なお、ポンプ特性は、指令信号と指令吐出流量との関係を示す関数(又はテーブル)である。本実施形態において、制御装置18には、ポンプ特性が事前に計測する等して予め記憶されている。より詳細に説明すると、ポンプ特性は、予め定められる回転数である基本回転数で液圧ポンプ11を回転させた状態で計測することによって設定される。
また、制御装置18は、アンロード弁14にポジション信号を出力する。そうすると、スプール14aの位置及びストローク量が制御される。これにより、液圧ポンプ11からタンク19に排出される作動液の排出量が制御される、また、制御装置18は、液圧回路13に制御指令を出力する。これにより、液圧ポンプ11からアクチュエータ2に流れる作動液の流れが制御される。更に、制御装置18は、駆動源10を制御する。これにより、液圧ポンプ11の回転速度が調整される。
【0024】
更に、制御装置18は、前述の通り、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、アンロード弁14と、2つの圧力センサ15,16と共にポンプシステム1を構成している。制御装置18は、それらの構成と共に補正テーブルを作成することができる。即ち、制御装置18は、後で詳述する補正テーブル作成方法を実施することによって補正テーブルを作成する。補正テーブルは、各指令吐出流量に対して補正すべき(例えば、加減算すべき)補正流量を示すテーブルである。本実施形態において、補正流量は、指令吐出流量と実吐出流量との差分である。実吐出流量は、液圧駆動システム3において、レギュレータ12に指令信号を出力した際に液圧ポンプ11から実際に吐出される流量である。
【0025】
なお、制御装置18は、図示しないメモリ及びプロセッサを含んでいる。メモリは、2つの圧力センサ15,16の検出結果を記憶する。また、メモリは、前述するポンプ特性及び補正テーブルを記憶すると共に、レギュレータ12、液圧回路13、及びアンロード弁14の動作を制御したり補正テーブル作成方法を実施したりすべく種々のプログラムを記憶している。そして、プロセッサは、メモリに記憶されるプログラムを実行することによって、レギュレータ12、液圧回路13、及びアンロード弁14を作動させ、また補正テーブル作成方法を実施する。
【0026】
<補正テーブル作成方法>
ポンプシステム1では、制御装置18が補正テーブル作成方法を実行することによって補正テーブルが作成される。そして、制御装置18は、補正テーブル作成方法で作成される補正テーブルを用いて指令吐出流量を補正することによって、液圧ポンプ11から所望の流量の作動液を吐出させることができる。以下では、補正テーブル作成方法が説明される。
補正テーブル作成方法が実行されると、制御装置18は、計測条件下でレギュレータ12に出力する指令信号を変える(即ち、指令信号の信号値を変える)。これにより、制御装置18は、互いに異なる複数の指令信号において第1圧力センサ15及び第2圧力センサ16の各々で上流圧及び下流圧を夫々検出させる。ここで、計測条件には、アンロード弁14の開度を第1開度に固定することが含まれる。また、本実施形態において、計測条件には、液圧ポンプ11の回転数が指令信号毎に予め設定された較正用回転数であることが更に含まれる。それ故、制御装置18は、駆動源10を制御することによって、液圧ポンプ11の回転数を指令信号に応じた較正用回転数に調整する。なお、較正用回転数は、例えば傾転角が大きくなる程小さく設定され、傾転角が小さくなる程大きく設定される。これにより、較正時において適度な流量の作動液を液圧ポンプ11から吐出させることができる。
【0027】
次に、制御装置18は、上流圧及び下流圧の各々に基づいてアンロード弁14の前後差圧を算出する。前後差圧は、アンロード弁14の上流側及び下流側の差圧である。制御装置18は、前後差圧とアンロード弁14の開度とに基づいて液圧ポンプ11から吐出される実際の吐出流量、即ち実吐出流量を指令信号毎に算出する。そして、制御装置18は、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルを作成する。
以下では、図2のフローを参照しながら補正テーブル作成方法が更に詳細に説明される。ポンプシステム1では、補正テーブルを作成すべく、互いに異なる複数の指令信号(以下、「較正用指令信号」という)が制御装置18に記憶されている。そして、ポンプシステム1では、計測条件下で複数の較正用指令信号(例えば、図3の指令信号I1~I4参照)が夫々出力されて上流圧及び下流圧が検出される。その間、アンロード弁14のスプール14aが第1位置A1にて保持される。これにより、アンロード弁14の開度が第1開度に固定される。
【0028】
また、本実施形態において、計測条件には、液圧ポンプ11の回転数が指令信号毎に予め設定された回転数であることが含まれる。それ故、制御装置18は、較正用指令信号と液圧ポンプ11の回転速度(本実施形態において、回転数)との関係を示す較正用回転数テーブルを記憶している。制御装置18は、出力する較正用指令信号と較正用回転数テーブルとに基づいて駆動源10に回転数指令を出力する。これにより、駆動源10が制御され、液圧ポンプ11の回転数が較正用指令信号に応じた回転数に調整される。更に、本実施形態では、液圧ポンプ11から吐出される作動液の全流量がアンロード弁14を流れるようにすべく、計測条件に液圧回路13の各制御弁(図示せず)が閉じられることが含まれる。それ故、制御装置18は、計測条件を満たすべく液圧回路13の各制御弁(図示せず)を制御する。
【0029】
制御装置18は、全ての計測条件を満すと、計測条件下において何れかの較正用指令信号をレギュレータ12に出力する。これにより、液圧ポンプ11の吐出容量が較正用指令信号に応じた容量に制御される。そして、液圧ポンプ11から作動液が吐出される。そうすると、制御装置18は、2つの圧力センサ15,16で検出される上流圧及び下流圧に基づいてアンロード弁14の前後差圧を算出する。そして、制御装置18は、前後差圧とアンロード弁14の第1開度とに基づいてアンロード弁14を流れる作動液の流量(即ち、液圧ポンプ11の実吐出流量)を算出する。液圧ポンプ11の実吐出流量を算出する際、本実施形態において流量係数αが用いられ、制御装置18は、例えば以下に示す式(1)に基づいて液圧ポンプ11の実吐出流量Qを推定する。
【数1】
ここで、Qは、実吐出流量である。Aはアンロード弁14の開口面積である。ΔPはアンロード弁14の前後差圧である。流量係数αは、制御装置18によって前後差圧ΔPの状態に応じて設定される。より詳細に説明すると、制御装置18は、アンロード弁14の前後差圧ΔPに加えてアンロード弁14の開口面積に応じた流量係数αとの関係を示す流量係数テーブルを記憶している。制御装置18は、前後差圧ΔPと流量係数テーブルとに基づいて流量係数αを決定する。なお、流量係数テーブルは、事前(例えば、製造時等)に計測することによって設定されるテーブルであり、制御装置18に予め記憶されている。
【0030】
また、制御装置18は、推定された実吐出流量を回転数で補正することによって補正吐出流量を算出する(図3の補正吐出流量Q1~Q4)。より詳細に説明すると、制御装置18は、液圧ポンプ11を基本回転数で回転させたときの吐出流量に換算した補正吐出流量を算出する。具体的に説明すると、制御装置18は、実吐出流量に対して駆動源10の実回転数を除算すると共に基本回転数を乗算する。なお、駆動源10には、回転数センサ10aが設けられている。制御装置18は、回転数センサ10aによって実回転数を取得する。また、基本回転数は、前述の通り、規定のポンプ特性を計測する際に設定された一定の回転数である。
【0031】
更に、制御装置18は、補正吐出流量を算出すると、ポンプ特性に基づいて出力した較正用指令信号に対する指令吐出流量を算出する(図3の指令吐出流量q1~q4)。そして、制御装置18は、指令吐出流量と補正吐出流量との差分である補正流量を算出する(図3の補正流量C1~C4参照)。そして、制御装置18は、指令吐出流量と補正流量とを対応付けて記憶する。
【0032】
制御装置18は、全ての較正用指令信号に関して補正流量が算出され且つ補正吐出流量が対応付けて記憶されるまで、較正用指令信号に関して補正流量の算出及び記憶を繰り返し行う。そして、全ての較正用指令信号に関して補正流量が算出され且つ対応付けて記憶されると、制御装置18は、記憶される指令吐出流量と補正流量との関係に基づいて補正テーブルを作成する。より詳細に説明すると、制御装置18は、各指令吐出流量とそれらに対応させて記憶される補正流量とに基づいて指令吐出流量(図3の指令吐出流量q1~q4参照)に対する補正流量(図3の補正流量C1~C4参照)を示す補正テーブルを作成する。
制御装置18は、補正テーブルを用いて以下のようにレギュレータ12を制御する。即ち、制御装置18は、図2に示すように操作装置17から制御装置18に操作指令が入力されると、操作指令に基づいて指令吐出流量を算出する。また、制御装置18は、補正テーブルに基づいて指令吐出流量を補正する。より詳細に説明すると、制御装置18は、指令吐出流量と補正テーブルとに基づいて補正流量を算出する。そして、制御装置18は、補正流量に基づいて指令吐出流量を補正する。制御装置18は、例えば指令吐出流量に補正流量を減算(又は加算)する。その後、制御装置18は、補正された指令吐出流量とポンプ特性とに基づいてレギュレータ12に出力すべき指令信号を算出する。そして、制御装置18は、指令信号をレギュレータ12に出力する。これにより、ポンプシステム1では、液圧ポンプ11から指令吐出流量に応じた流量の作動液を吐出させることができる。
【0033】
本実施形態のポンプシステム1において、アンロード弁14の前後差圧及び開度に基づいて演算される実吐出流量が指令信号毎に算出される。そして、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルが作成される。それ故、制御装置18は、補正テーブルを用いて補正した指令吐出流量に応じて指令信号を出力させることによって、指令吐出流量に応じた流量の作動液を液圧ポンプ11から実際に吐出させることができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態のポンプシステム1において、流量係数αが制御装置18において前後差圧の状態に応じて設定されている。それ故、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0035】
更に、本実施形態のポンプシステム1において、制御装置18は、補正テーブルを各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量との差分に基づいて作成する。それ故、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0036】
更に、本実施形態のポンプシステム1において、液圧ポンプ11の回転数が指令信号毎に予め設定された回転数であることを計測条件が含んでいる。回転数を予め定められた回転数に保持することによって、回転数の変動に伴って液圧ポンプ11から吐出される作動液の流量が変動することを抑えることができる。これにより、液圧ポンプ11の吐出圧の変動を抑制することができるので、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0037】
更に、本実施形態のポンプシステム1において、制御装置18が第1計測条件を満たすべく第1位置A1にアンロード弁14のスプール14aを保持する。それ故、アンロード弁14の開度を第1開度に維持することが容易である。これにより、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0038】
更に、本実施形態のポンプシステム1において、アンロード弁14は、ポンプ通路11aであって液圧回路13より上流側に接続される。それ故、液圧ポンプ11からアンロード弁14に流れる作動液に生じる圧力損失の影響を受けにくくすることができるので、アンロード弁14の前後差圧を精度よく算出することができる。これにより、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0039】
更に、本実施形態のポンプシステム1において、入力される指令吐出流量を補正テーブルに基づいて補正し、補正された指令吐出流量とポンプ特性とに基づいて出力すべき指令信号を制御装置18が算出する。それ故、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0040】
[第2実施形態]
<ポンプシステム>
第2実施形態のポンプシステム1Aは、図4に示すように第1実施形態のポンプシステム1と構成が類似している。従って、第2実施形態のポンプシステム1Aの構成については、主に第1実施形態のポンプシステム1と異なる構成について説明し、同一の構成については同じ符号を付してその説明が省略される。後で説明する、第3及び第4実施形態のポンプシステム1B,1Cについても、その他の実施形態と異なる点が主に説明され、同一の構成については同一の符号を付して説明が省略される。
【0041】
第2実施形態のポンプシステム1Aは、液圧駆動システム3Aに備わっている。液圧駆動システム3Aは、少なくとも1つのアクチュエータ2と、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、液圧回路13と、アンロード弁14Aと、2つの圧力センサ15,16と、操作装置17と、制御装置18Aとを備えている。そして、ポンプシステム1Aは、少なくとも、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、アンロード弁14Aと、2つの圧力センサ15,16と、制御装置18Aとを含んで構成されている。
【0042】
開度制御弁の一例であるアンロード弁14Aは、4位置のスプール弁である。即ち、スプール14aは、入力されるポジション信号に応じて第1乃至第4位置A1~A4の何れかに移動する。スプール14aは、第4位置A4において、アンロード弁14の開度を第2開度に固定する。本実施形態において、第4位置A4は、第3位置A3にあるスプール14aを更にストロークさせた位置である。第2開度は、第1開度より大きい開口面積に設定されている。
【0043】
また、制御装置18Aは、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、アンロード弁14Aと、2つの圧力センサ15,16と共に補正テーブルを作成する。即ち、制御装置18Aは、後で詳述する補正テーブル作成方法を実施することによって補正テーブルを作成する。
【0044】
<補正テーブル作成方法>
ポンプシステム1Aでは、制御装置18Aが補正テーブル作成方法を実行することによって第1及び第2補正テーブルが作成される。なお、第1補正テーブル及び第2補正テーブルは、何れから作成されてもよい。以下では、まず第1補正テーブルの作成について説明する。制御装置18Aは、基本的に第1実施形態の補正テーブル作成方法と同様の方法で第1補正テーブルを作成する(図5の補正吐出流量Q11~Q14及び補正流量C11~C14参照)。即ち、制御装置18Aは、前述する計測条件である第1計測条件下で複数の指令信号毎に上流圧及び下流圧を検出し、上流圧及び下流圧に基づいて第1補正テーブルを作成する。
【0045】
他方、制御装置18Aが第1ポンプ特性の作成に関して実行する補正テーブル作成方法は、以下の点で第1実施形態の補正テーブル作成方法と異なる。即ち、制御装置18Aは、前後差圧ΔPに加えてアンロード弁14Aの開度の状態に応じて流量係数αを設定する。より詳細に説明すると、制御装置18Aは、アンロード弁14の開度毎(本実施形態において第1開度及び第2開度毎)に異なる流量係数テーブルを記憶している。そして、制御装置18Aは、第1開度に関する流量係数テーブルである第1流量係数テーブルとアンロード弁14Aの前後差圧ΔPに基づいて流量係数αを決定する。そして、制御装置18Aは、前述する式(1)に基づいてアンロード弁14Aを流れる作動液の流量(即ち、液圧ポンプ11の実吐出流量)を推定する。なお、式(1)において、Aは、アンロード弁14Aの開度が第1開度であるときの開口面積である。
【0046】
次に、第2補正テーブルの作成について説明される。制御装置18Aは、第2計測条件下で、互いに異なる複数の指令信号において第1圧力センサ15及び第2圧力センサ16の各々で上流圧及び下流圧を夫々検出させる。第2計測条件には、アンロード弁14Aの開度を第2開度に固定することが含まれる。それ故、制御装置18Aは、スプール14aを第4位置A4に移動させることによってアンロード弁14の開度を第2開度に保持する。また、本実施形態において、第2計測条件には、液圧ポンプ11の回転数が前述する較正用回転数であることが更に含まれる。それ故、制御装置18は、駆動源10を制御することによって液圧ポンプ11の回転数を指令信号に応じた較正用回転数に調整する。更に、第2計測条件には、液圧回路13の各制御弁(図示せず)が閉じられることが含まれる。それ故、制御装置18Aは、計測条件を満たすべく液圧回路13の各制御弁(図示せず)を制御する。
【0047】
次に、制御装置18Aは、第2計測条件下で検出された上流圧及び下流圧の各々に基づいてアンロード弁14Aの前後差圧を算出する。制御装置18Aは、前後差圧とアンロード弁14Aの第2開度とに基づいて液圧ポンプ11の実吐出流量を指令信号毎に算出する。そして、制御装置18は、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて第2補正テーブルを作成する。
【0048】
以下では、第2ポンプ特性に関する補正テーブル作成方法について更に詳細に説明するが、第1ポンプ特性に関する補正テーブル作成方法と同様に、第1実施形態の補正テーブル作成方法とフローが類似している。従って、第2ポンプ特性に関する補正テーブル作成方法について、主に第1実施形態の補正テーブル作成方法と異なる点が以下で説明される。ポンプシステム1では、第2計測条件下で複数の較正用指令信号の各々を出力して上流圧及び下流圧を検出すべく、制御装置18Aがアンロード弁14Aのスプール14aを第4位置A4に移動させる。これにより、アンロード弁14Aの開度が第2開度になる。また、制御装置18Aは、液圧ポンプ11の実吐出流量を式(1)に基づいて推定する際、第2開度に関する流量係数テーブルとアンロード弁14の前後差圧とに基づいて流量係数αを決定する。また、式(1)において、Qは、アンロード弁14Aを流れる作動液の推定流量(即ち、液圧ポンプ11の推定吐出流量)である。また、Aは、アンロード弁14Aの開度が第2開度であるときの開口面積であり、ΔPはアンロード弁14Aの前後差圧である。そして、制御装置18Aは、実吐出流量に基づいて補正吐出流量を算出し、指令吐出流量と補正吐出流量とに基づいて補正流量を算出する(図5の指令吐出流量q1~q4、補正吐出流量Q21~Q24、及び補正流量C21~C24参照)。その後、制御装置18Aは、全ての較正用指令信号に関して補正流量が算出され且つ補正流量が対応付けて記憶されると、記憶される指令吐出流量と補正流量との関係に基づいて第2補正テーブルを作成する。
【0049】
制御装置18Aは、第1及び第2補正テーブルを用いて以下のようにレギュレータ12を制御する。即ち、制御装置18は、図2に示すように操作装置17から制御装置18Aに操作指令が入力されると、操作指令に基づいて指令吐出流量を算出する。更に、制御装置18Aは、指令吐出流量を補正すべく第1及び第2補正テーブルの何れを用いるか選択する。そして、制御装置18Aは、選択された補正テーブルを用いて指令吐出流量を補正する。例えば、指令吐出流量が所定の流量より小さい場合、制御装置18Aは、第1補正テーブルを選択する。そして、制御装置18Aは、指令吐出流量と第1補正テーブルとに基づいて補正流量を算出する。他方、指令吐出流量が所定の流量より大きい場合、制御装置18Aは、第2補正テーブルを選択する。そして、制御装置18Aは、指令吐出流量と第2補正テーブルとに基づいて補正流量を算出する。制御装置18Aは、第1又は第2補正テーブルに基づいて補正流量を算出すると、制御装置18は、補正流量に基づいて指令吐出流量を補正する。そして、制御装置18Aは、ポンプ特性と指令吐出流量とに基づいてレギュレータ12に出力すべき指令信号を算出する。これにより、ポンプシステム1では、液圧ポンプ11から指令吐出流量に応じた流量の作動液を吐出させることができる。
【0050】
本実施形態のポンプシステム1Aにおいて、流量係数αが制御装置18Aにおいて差圧に加えて開度の状態に応じて設定されている。それ故、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態のポンプシステム1Aにおいて、制御装置18Aは、第1計測条件と異なる第2計測条件下において第2補正テーブルを取得すべく、スプール14aを第4位置にて保持する。それ故、互いに異なる開度で補正テーブルを夫々作成することができる。これにより、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
その他、第2実施形態のポンプシステム1Aは、第1実施形態のポンプシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0052】
[第3実施形態]
<ポンプシステム>
第3実施形態のポンプシステム1Bは、図6に示すように液圧駆動システム3Bに備わっている。液圧駆動システム3Bは、アクチュエータ2と、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、液圧回路13Bと、アンロード弁14と、圧力センサ15Bと、操作装置17と、制御装置18Bとを備えている。本実施形態において、液圧駆動システム3Bには、複数のアクチュエータ2が備わっており、各アクチュエータ2は、液圧ポンプ11に並列するように接続されている。また、複数のアクチュエータ2には、アクチュエータ2Bが含まれる。アクチュエータ2Bは、例えば液圧モータであって、本実施形態において走行用液圧モータ2Bである。走行用液圧モータ2Bは、液圧機械に備わる走行装置(例えばクローラ及びタイヤ)を駆動する。走行用液圧モータ2Bは、他のアクチュエータ2と並列するように液圧ポンプ11に接続されている。即ち、走行用液圧モータ2Bは、他のアクチュエータ2と並列するようにポンプ通路11aに接続されている。また、液圧回路13Bは、走行用液圧モータ2Bに流れる作動液の流量を制御すべく、少なくとも以下のように構成されている。
【0053】
即ち、液圧回路13Bは、優先弁21と、走行用制御弁22と、走行用圧力センサ16Bとを少なくとも備えている。開度制御弁の一例である優先弁21は、ポンプ通路11aに接続されている。優先弁21は、走行用制御弁22を介して走行用液圧モータ2Bに接続されている。そして、優先弁21は、走行用液圧モータ2Bに対して他のアクチュエータ2に作動液を優先的に流す。より詳細に説明すると、優先弁21は、例えば開口制御弁であって、液圧ポンプ11と走行用液圧モータ2Bとを連通している。そして、優先弁21は、入力される開度信号に応じた位置にスプール21aを絞り位置へと移動させる。これにより、液圧ポンプ11と走行用液圧モータ2Bとの間の通路を絞ることができ、絞ることによって他のアクチュエータ2に作動液を優先的に流すことができる。
【0054】
走行用制御弁22は、優先弁21及び走行用液圧モータ2Bに接続される。そして、走行用制御弁22は、入力される走行指令信号に応じてスプール22aを動かす。これにより、走行用制御弁22は、走行用液圧モータ2Bへの作動液の流れ(即ち、流れる方向及び流量)を制御する。
【0055】
第2圧力センサの一例である走行用圧力センサ16Bは、優先弁21の下流側に設けられている。より詳細に説明すると、走行用圧力センサ16Bは、優先弁21と走行用制御弁22との間に接続されている。そして、走行用圧力センサ16Bは、優先弁21の下流側の液圧、即ち優先弁21の下流圧を検出する。
【0056】
このように構成される液圧駆動システム3Bでは、ポンプシステム1Bが以下のように構成されている。即ち、ポンプシステム1Bは、少なくとも、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、優先弁21と、2つの圧力センサ15B,16Bと、制御装置18Bとを含んで構成されている。なお、第1圧力センサ15Bは、ポンプ通路11aに接続されており、そして、第1圧力センサ15Bは、ポンプ通路11aを流れる作動液の圧力を優先弁21の上流圧として計測する。第1圧力センサ15Bは、必ずしもポンプ通路11aに接続されている必要はなく、優先弁21の上流圧を検出できればよい。
【0057】
また、制御装置18Bは、優先弁21に開度信号を出力することによって、優先弁21の開度を制御する。そして、制御装置18Bは、優先弁21の開度を制御することによって、走行用液圧モータ2B及び他のアクチュエータ2の何れに液圧ポンプ11の作動液を導くか制御する。また、制御装置18Bは、走行用制御弁22に走行指令信号を出力する。これにより、制御装置18Bは、走行用液圧モータ2Bへの作動液の流れを制御する。
【0058】
このような機能を有する制御装置18Bは、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、優先弁21と、2つの圧力センサ15B,16Bと共に補正テーブルを作成する。即ち、制御装置18Bは、後で詳述する補正テーブル作成方法を実施することによって補正テーブルを作成する。
【0059】
<補正テーブル作成方法>
ポンプシステム1Bでは、制御装置18Bが補正テーブル作成方法を実行することによって補正テーブルが作成される。より詳細に説明すると、制御装置18Bは、計測条件下で以下の検出を行う。即ち、制御装置18Bは、互いに異なる複数の指令信号において第1圧力センサ15及び走行用圧力センサ16Bによって、優先弁21の上流圧及び下流圧をa夫々検出させる。計測条件には、優先弁21の開度を所定開度に固定することが含まれる。また、本実施形態において、計測条件には、液圧ポンプ11の回転数が指令信号に応じた較正用回転数であることが更に含まれる。それ故、制御装置18Bは、優先弁21を開位置にて保持すると共に、駆動源10を制御することによって液圧ポンプ11の回転数を指令信号に応じた較正用回転数に調整する。
【0060】
次に、制御装置18Aは、計測条件下で検出された上流圧及び下流圧の各々に基づいて優先弁21の前後差圧を算出する。制御装置18Bは、前後差圧と優先弁21の所定開度とに基づいて液圧ポンプ11の実吐出流量を指令信号毎に算出する。そして、制御装置18は、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルを作成する。
【0061】
以下では、補正テーブル作成方法について更に詳細に説明するが、第1実施形態の補正テーブル作成方法とフローが類似している。従って、本実施形態の補正テーブル作成方法について、主に第1実施形態の補正テーブル作成方法と異なる点が以下で説明される。ポンプシステム1Bでは、制御装置18Bが優先弁21を開位置にて保持することによって、優先弁21の開度を所定開度に固定する。本実施形態において、制御装置18Bは、例えば優先弁21の開度を全開状態にする。そして、制御装置18Bは、駆動源10を制御することによって液圧ポンプ11の回転数を較正用指令信号に応じた回転数に調整する。更に、本実施形態では、計測条件には、走行用制御弁22以外の液圧回路13Bの各制御弁(図示せず)が閉じられると共に走行用制御弁22を全開にすることが含まれる。これにより、液圧ポンプ11から吐出される作動液の全流量が優先弁21を流れる。制御装置18は、全流量を優先弁21に流すべく、液圧回路13Bの各制御弁(図示せず)を制御する。
【0062】
制御装置18Bは、計測条件が満たされると、計測条件下において複数の較正用指令信号の何れかをレギュレータ12に出力する。そうすると、制御装置18Bは、2つの圧力センサ15B,16Bで検出される上流圧及び下流圧に基づいて優先弁21の前後差圧ΔPを算出する。そして、制御装置18Bは、前後差圧ΔPと優先弁21の第1開度とに基づいて優先弁21を流れる作動液の流量(即ち、液圧ポンプ11の実吐出流量)Qを算出する。制御装置18Bは、例えば前述する式(1)に基づいて液圧ポンプ11の実吐出流量を推定する。なお、制御装置18Bは、優先弁21の前後差圧ΔPと流量係数αとの関係を示す流量係数テーブルを記憶しており、前後差圧ΔPと流量係数テーブルとに基づいて流量係数αを決定する。なお、Aは、優先弁21の開度が所定開度である際の開口面積である。
【0063】
その後、制御装置18Bは、推定された実吐出流量を回転数で補正することによって補正吐出流量を算出する。また、制御装置18Bは、較正用指令信号及びポンプ特性に基づいて指令吐出流量を算出し、指令吐出流量と補正吐出流量とに基づいて補正流量を算出する。そして、制御装置18Bは、指令吐出流量と補正流量とを対応付けて記憶する。
【0064】
制御装置18Bは、全ての較正用指令信号に関して補正流量が算出され且つ補正流量が対応付けて記憶されると、記憶される指令吐出流量と補正流量との関係に基づいて補正テーブルを作成する。そして、制御装置18Bは、第1実施形態の制御装置18と同様に補正テーブルによって補正される指令吐出流量に基づいて指令信号を算出し、その指令信号を出力する。これにより、液圧ポンプ11から指令吐出流量に応じた流量の作動液を吐出させることができる。
【0065】
本実施形態のポンプシステム1Bにおいて、アンロード弁14,14Aと同様に、優先弁21によってもポンプ特性を較正することができる。従って、優先弁21を備えるポンプシステム1Bにおいて、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0066】
その他、第3実施形態のポンプシステム1Bは、第1実施形態のポンプシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0067】
[第4実施形態]
<ポンプシステム>
第4実施形態のポンプシステム1Cは、図7に示すように液圧駆動システム3Cに備わっている。液圧駆動システム3Cは、アクチュエータ2と、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、液圧回路13Cと、アンロード弁14と、圧力センサ15Cと、操作装置17と、制御装置18Cとを備えている。本実施形態において、液圧駆動システム3Cには、複数のアクチュエータ2が備わっており、各アクチュエータ2は、液圧ポンプ11に並列するように接続されている。また、複数のアクチュエータ2には、アクチュエータ2Cが含まれる。アクチュエータ2Cは、例えば液圧モータであって、本実施形態において旋回用液圧モータ2Cである。旋回用液圧モータ2Cは、例えばショベルやクレーン等に備わる旋回体を旋回させる。旋回用液圧モータ2Cは、他のアクチュエータ2と並列するように液圧ポンプ11に接続されている。即ち、旋回用液圧モータ2Cは、他のアクチュエータ2と並列するようにポンプ通路11aに接続されている。また、液圧回路13Cは、旋回用液圧モータ2Cに流れる作動液の流量を制御すべく、少なくとも以下のように構成されている。
【0068】
即ち、液圧回路13Cは、旋回用制御弁22Cと、旋回用圧力センサ16Cとを少なくとも備えている。開度制御弁の一例である旋回用制御弁22Cは、ポンプ通路11a及び旋回用液圧モータ2Cに接続される。即ち、液圧ポンプ11は、旋回用制御弁22Cを介して旋回用液圧モータ2Cに接続されている。そして、旋回用制御弁22Cは、旋回用液圧モータ2Cに流れる作動液の流れを制御する。より詳細に説明すると、旋回用制御弁22Cは、入力される旋回指令信号に応じてスプール22Caを動かす。そうすると、旋回用液圧モータ2Cと液圧ポンプ11との接続状態が切換えられる。これにより、旋回用液圧モータ2Cに流れる作動液の流れ方向が制御される。また、旋回用制御弁22Cは、流量制御弁であって、スプール22Caを動かすことによって旋回用制御弁22Cの開度を変えることができる。これにより、旋回用液圧モータ2Cに流れる作動液の流量が制御される。更に、旋回用制御弁22Cには、位置センサ22Cbが設けられている。位置センサ22Cbは、例えばストロークセンサであり、スプール22Caの位置(又はストローク量)を検出する。
【0069】
第2圧力センサの一例である旋回用圧力センサ16Cは、旋回用制御弁22Cの下流側に設けられている。より詳細に説明すると、旋回用圧力センサ16Cは、旋回用液圧モータ2Cの何れか一方のポートと旋回用制御弁22Cとの間に接続されている。そして、旋回用圧力センサ16Cは、旋回用制御弁22Cの下流側の液圧、即ち旋回用制御弁22Cの下流圧を検出する。なお、旋回用圧力センサ16Cの各々が旋回用液圧モータ2Cの各ポートと旋回用制御弁22Cとの間に接続されていてもよい。
【0070】
このように構成される液圧駆動システム3Cでは、ポンプシステム1Cは以下の構成を備えている。即ち、ポンプシステム1Cは、少なくとも、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、旋回用制御弁22Cと、2つの圧力センサ15C,16Cと、制御装置18Cとを含んで構成されている。なお、第1圧力センサ15Cは、ポンプ通路11aに接続されている。そして、第1圧力センサ15Cは、旋回用制御弁22Cに流れる作動液の圧力、即ち旋回用制御弁22Cの上流圧を計測する。なお、第1圧力センサ15Cは、必ずしもポンプ通路11aと旋回用制御弁22Cとを繋ぐ通路に接続されていなくてもよく、旋回用制御弁22Cの上流圧を検出できればよい。
【0071】
制御装置18Cは、旋回用制御弁22Cに旋回指令信号を出力する。これにより、制御装置18Cは、旋回用液圧モータ2Cへの作動液の流れを制御する。また、制御装置18Cは、位置センサ22Cbからスプール22Caの位置を取得する。
【0072】
また、制御装置18Cは、液圧ポンプ11と、レギュレータ12と、旋回用制御弁22Cと、2つの圧力センサ15C,16Cと共にポンプ特性を較正することができる。即ち、制御装置18Cは、後で詳述する補正テーブル作成方法を実施することによって補正テーブルを作成する。
【0073】
<補正テーブル作成方法>
ポンプシステム1Cでは、制御装置18Cが補正テーブル作成方法を実行することによって複数の補正テーブルが作成される。より詳細に説明すると、制御装置18Cは、基本的に第2実施形態の補正テーブル作成方法と同様の方法で複数のポンプ特性を作成する。即ち、旋回用制御弁22Cの開度が互いに異なる複数の計測条件下で以下の検出を行う。即ち、制御装置18Cは、互いに異なる複数の指令信号において、第1圧力センサ15C及び旋回用圧力センサ16Cによって旋回用制御弁22Cの上流圧及び下流圧を夫々検出させる。なお、各計測条件には、液圧ポンプ11の回転数が指令信号に応じた較正用回転数であることが更に含まれる。それ故、制御装置18Cは、互いに異なる旋回指令信号を出力することによって旋回用制御弁22Cの開度を変えると共に、駆動源10を制御することによって液圧ポンプ11の回転数を指令信号に応じた較正用回転数に調整する。
【0074】
次に、制御装置18Cは、各計測条件下で検出された上流圧及び下流圧の各々に基づいて旋回用制御弁22Cの前後差圧を算出する。制御装置18Cは、検出時の計測条件における旋回用制御弁22Cの開度と前後差圧とに基づいて液圧ポンプ11の実吐出流量を指令信号毎に算出する。そして、制御装置18は、各計測条件に対して各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルを作成する、即ち旋回用制御弁22Cの開度毎の補正テーブルを作成する。
【0075】
以下では、補正テーブル作成方法について更に詳細に説明するが、第1実施形態の補正テーブル作成方法とフローが類似している。従って、本実施形態の補正テーブル作成方法について、主に第1実施形態の補正テーブル作成方法と異なる点が以下で説明される。ポンプシステム1Cでは、制御装置18Cが複数の計測条件の何れかの計測条件を選択し、更に選択された計測条件(以下、「選択計測条件」という)を満たすべく旋回用制御弁22Cの開度を制御する。この際、制御装置18Cは、位置センサ22Cbの検出結果を参照することによって、旋回用制御弁22Cの開度を選択計測条件に応じた開度に維持する。また、制御装置18Cは、駆動源10を制御することによって液圧ポンプ11の回転数を較正用指令信号に応じた回転数に調整する。更に、本実施形態では、制御装置18Cは、旋回用制御弁22C以外の液圧回路13Cの各制御弁(図示せず)を閉じる。
【0076】
制御装置18Cは、選択計測条件が満たされると、選択計測条件下において複数の較正用指令信号の何れかをレギュレータ12に出力する。そうすると、制御装置18Cは、2つの圧力センサ15C,16Cで検出される上流圧及び下流圧に基づいて旋回用制御弁22Cの前後差圧ΔPを算出する。そして、制御装置18Cは、前後差圧ΔPと旋回用制御弁22Cの開度とに基づいて旋回用制御弁22Cを流れる作動液の流量(即ち、液圧ポンプ11の実吐出流量)Qを算出する。より詳細に説明すると、制御装置18Cは、例えば前述する式(1)に基づいて液圧ポンプ11の実吐出流量を推定する。なお、制御装置18Cは、旋回用制御弁22Cの開度毎に設定される旋回用制御弁22Cの前後差圧ΔPと流量係数αとの関係を示す流量係数テーブルを記憶している。制御装置18Cは、旋回指令信号と、前後差圧ΔPと、流量係数テーブルとに基づいて流量係数αを決定する。
【0077】
その後、制御装置18Cは、推定された実吐出流量を回転数で補正することによって補正吐出流量を算出する。また、制御装置18Cは、較正用指令信号及びポンプ特性に基づいて指令吐出流量を算出し、指令吐出流量と補正吐出流量とに基づいて補正流量を算出する。そして、制御装置18Cは、指令吐出流量と補正吐出流量と対応付けて記憶する。制御装置18Cは、全ての較正用指令信号に関して補正流量が算出され且つ補正流量が対応付けて記憶されると、記憶される指令吐出流量と補正流量との関係に基づいて補正テーブルを作成する。
【0078】
同様に、制御装置18Cは、各計測条件下において上流圧及び下流圧を検出し、検出される上流圧及び下流圧に基づいて補正テーブルを作成する。全ての計測条件において補正テーブルが作成されると、補正テーブル作成方法が終了する。そして、制御装置18Cは、指令吐出流量に応じて複数の補正テーブルの何れかを選択し、選択される補正テーブルによって指令吐出流量を補正する。そして、制御装置18Cは、補正された指令吐出流量とポンプ特性とに基づいてレギュレータ12に出力すべき指令信号を算出する。これにより、ポンプシステム1では、液圧ポンプ11から指令吐出流量に応じた流量の作動液を吐出させることができる。
【0079】
本実施形態のポンプシステム1Cにおいて、アンロード弁14,14Aと同様に、旋回用制御弁22Cによってもポンプ特性を較正することができる。また、旋回用制御弁22Cを備えるポンプシステム1Cにおいて、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0080】
また、本実施形態のポンプシステム1Cにおいて、制御装置18Cは、旋回用制御弁22Cの開度が互いに異なる複数の計測条件下で検出される上流圧及び下流圧に基づいてポンプ特性が較正されることによって複数のポンプ特性を作成する。それ故、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0081】
その他、第4実施形態のポンプシステム1Cは、第1実施形態のポンプシステム1と同様の作用効果を奏する。
【0082】
<その他の実施形態>
第1実施形態のポンプシステム1は、アンロード弁14とタンク19との間に接続される第2圧力センサ16を備えているが、必ずしも第2圧力センサ16を備えている必要はない。この場合、ポンプシステム1において、アンロード弁14の下流圧は、予め定められるタンク圧に設定される。これにより、ポンプシステム1と同様の作用効果を奏しつつ、部品点数を削減することができる。なお、第2実施形態のポンプシステム1Aでも同様である。
【0083】
第1乃至第4実施形態のポンプシステム1,1A~1Cは、ポンプ特性を作成しているが、必ずしもポンプ特性を作成する必要はない。また、第1乃至第4実施形態のポンプシステム1,1A~1Cでは、レギュレータ12はサーボピストン12aと電磁比例弁12bとによって構成されているが、そのような構成に限定されない。例えば、サーボピストン12aが直動モータ等によって駆動されるような構成であってもよい。その場合、直動モータに指令信号を入力することによって吐出容量が変更される。また、第4実施形態のポンプシステム1Cにおいて、旋回用制御弁22Cがパイロット式のスプール弁で構成されているが、スプール22Caをボールねじ等で精度よく移動させる電気式のスプール弁であってもよい。この場合、旋回用制御弁22Cは、位置センサ22Cbを備えていなくてもよい。
【0084】
更に、第1乃至第4実施形態のポンプシステム1,1A~1Cでは、開度制御弁としてアンロード弁14,14A、優先弁21、及び旋回用制御弁22Cが挙げられてる。しかし、開度制御弁は、開度を切換えることができる弁であればよく、前述する弁に限定されない。また、流量係数αは、前後差圧の状態に応じて設定されているが、固定値であってもよい。更に、流量係数αは、前後差圧及び開度に加えて外気温又は作動液の温度の状態に応じて設定されてもよい。更に、計測条件には、液圧ポンプ11の回転数が信号毎に予め定められた回転数にすることが含まれているが、液圧ポンプ11の回転数が固定されていてもよい。更に、アンロード弁14,14Aが接続されている位置もまた、必ずしもポンプ通路11aに限定されず、第1圧力センサ15によって液圧ポンプ11の吐出圧が検出又は推定できる場所であればよい。
【0085】
<例示的な実施形態>
第1の局面におけるポンプシステムは、吐出容量を変更できる可変容量形の液圧ポンプと、入力される指令信号に応じて前記液圧ポンプの吐出容量を変えるレギュレータと、前記液圧ポンプに接続され、開度を変えられる開度制御弁と、前記液圧ポンプから前記開度制御弁に流れる作動液の液圧である上流圧を計測する第1圧力センサと、前記開度制御弁から流れる作動液の液圧である下流圧を計測する第2圧力センサと、指令吐出流量と指令信号との関係を示すポンプ特性に従って前記液圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記開度制御弁の開度を所定開度に固定する計測条件下で前記レギュレータに出力する指令信号を変えることによって、互いに異なる複数の指令信号において前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサによって上流圧及び下流圧を夫々検出させ、検出される上流圧及び下流圧に基づいて算出される前記開度制御弁の上流側及び下流側の差圧と前記開度制御弁の開度に基づいて前記液圧ポンプから吐出される実吐出流量を指令信号毎に算出し、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて指令吐出流量を補正する補正テーブルを作成するものである。
【0086】
上記局面に従えば、開度制御弁の差圧及び開度に基づいて演算される実吐出流量が指令信号毎に算出される。そして、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルが作成される。それ故、制御装置は、補正テーブルを用いて補正した指令吐出流量に応じて指令信号を出力させることによって、指令吐出流量に応じた流量の作動液を液圧ポンプから実際に吐出させることができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0087】
第2の局面におけるポンプシステムは、第1の局面におけるポンプシステムにおいて、前記制御装置は、差圧と開度とに基づいて実吐出流量を算出する際に流量係数を用いており、流量係数は、前記制御装置において差圧の状態に応じて設定されている。
【0088】
上記局面に従えば、流量係数が制御装置において差圧の状態に応じて設定されている。それ故、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0089】
第3の局面におけるポンプシステムは、第1又は2の局面におけるポンプシステムにおいて、前記制御装置は、差圧と開度とに基づいて実吐出流量を算出する際に流量係数を用いており、流量係数は、前記制御装置において開度の状態に応じて設定されている。
【0090】
上記局面に従えば、流量係数が制御装置において差圧に加えて開度の状態に応じて設定されている。それ故、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0091】
第4の局面におけるポンプシステムは、第1乃至3の何れかの局面におけるポンプシステムにおいて、前記制御装置は、指令吐出流量を補正する補正テーブルを各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量との差分に基づいて作成する。
【0092】
上記局面に従えば、補正テーブルを各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量との差分に基づいて作成する。それ故、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0093】
第5の局面におけるポンプシステムは、第1乃至4の何れかの局面におけるポンプシステムにおいて、前記液圧ポンプの回転数が、指令信号毎に予め設定された回転数であることを含む。
【0094】
上記局面に従えば、液圧ポンプの回転数が指令信号毎に予め定められた回転数であることを計測条件が含んでいる。回転数を予め定められた回転数に保持することによって、回転数の変動に伴って液圧ポンプから吐出される作動液の流量が変動することを抑えることができる。これにより、液圧ポンプの吐出圧の変動を抑制することができるので、実吐出流量を高い精度で算出することができる。それ故、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0095】
第6の局面におけるポンプシステムは、第1乃至5の何れかの局面におけるポンプシステムにおいて、前記開度制御弁は、開度を所定開度に固定する第1位置、前記液圧ポンプと前記タンクとの間を遮断する第2位置、及びストローク量に応じて開度を変える第3位置に夫々移動可能な弁体を有し、前記制御装置は、第1計測条件において第1補正テーブルを取得すべく前記弁体を第1位置に保持する。
【0096】
上記局面に従えば、制御装置は、第1計測条件下を満たすべく開度を所定開度に固定する第1位置に開度制御弁の弁体を保持する。それ故、開度制御弁の開度を所定開度に維持することが容易である。これにより、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0097】
第7の局面におけるポンプシステムは、第6の局面におけるポンプシステムにおいて、前記弁体は、開度を所定開度である第1開度より大きい第2開度に固定する第4位置に移動することができ、前記制御装置は、第2計測条件において第2補正テーブルを取得すべく、前記弁体を第4位置にて保持する。
【0098】
上記局面に従えば、制御装置は、第1計測条件と異なる第2計測条件下において第2補正テーブルを取得すべく、弁体を第4位置にて保持する。それ故、互いに異なる開度で補正テーブルを夫々作成することができる。これにより、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0099】
第8の局面におけるポンプシステムは、第1乃至5の何れかの局面におけるポンプシステムにおいて、前記開度制御弁は、アンロード弁であって、前記液圧ポンプは、作動液を供給する液圧回路にポンプ通路を介して接続され、前記アンロード弁は、前記ポンプ通路であって前記液圧回路より上流側に接続される。
【0100】
上記局面に従えば、開度制御弁は、アンロード弁であって、アンロード弁はポンプ通路であって液圧回路より上流側に接続される。それ故、液圧ポンプからアンロード弁に流れる作動液に生じる圧力損失の影響を受けにくくすることができるので、アンロード弁の前後差圧を精度よく算出することができる。これにより、より精度高く実吐出流量を算出することができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異をより抑えることができる。
【0101】
第9の局面におけるポンプシステムは、第1乃至5の何れかの局面におけるポンプシステムにおいて、前記開度制御弁は、優先弁であり、前記液圧ポンプは、複数のアクチュエータに接続され、前記優先弁は、前記複数のアクチュエータのうちの1つに優先的に流す。
【0102】
上記局面に従えば、開度制御弁は、優先弁である。優先弁の差圧によってポンプ特性を較正することができる。従って、優先弁を備えるポンプシステムにおいて、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0103】
第10の局面におけるポンプシステムは、第1乃至5の何れかの局面におけるポンプシステムにおいて、前記開度制御弁は、流量制御弁であり、前記液圧ポンプは、前記流量制御弁を介してアクチュエータに接続され、前記流量制御弁は、前記アクチュエータに流れる作動液の流れを制御する。
【0104】
上記局面に従えば、開度制御弁は、流量制御弁である。流量制御弁の差圧によってポンプ特性を較正することができる。従って、流量制御弁を備えるポンプシステムにおいて、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0105】
第11の局面におけるポンプシステムは、第1乃至10の何れかの局面におけるポンプシステムにおいて、前記制御装置は、入力される指令吐出流量を作成された補正テーブルに基づいて補正し、補正された指令吐出流量とポンプ特性とに基づいて出力すべき指令信号を算出する。
【0106】
上記局面に従えば、入力される指令吐出流量を補正テーブルに基づいて補正し、補正された指令吐出流量とポンプ特性とに基づいて出力すべき指令信号を制御装置が算出する。それ故、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【0107】
第12の局面におけるポンプシステムは、吐出容量を変更できる可変容量形の液圧ポンプと、入力される指令信号に応じて前記液圧ポンプの吐出容量を変えるレギュレータと、前記液圧ポンプとタンクとの間に配置され、開度を変えられるアンロード弁と、前記液圧ポンプから前記アンロード弁に流れる作動液の液圧を計測する第1圧力センサと、指令吐出流量と指令信号との関係を示すポンプ特性に従って前記液圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アンロード弁の開度を所定開度に固定する計測条件下で前記レギュレータに出力する指令信号を変えることによって、互いに異なる複数の指令信号において前記第1圧力センサで液圧を検出させ、検出される各液圧に基づいて算出される前記アンロード弁の上流側及び下流側の差圧と前記アンロード弁の開度に基づいて前記液圧ポンプから吐出される実吐出流量を指令信号毎に算出し、各指令信号に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて指令吐出流量を補正する補正テーブルを作成するものである。
【0108】
上記局面に従えば、アンロード弁の差圧と開度とに基づいて演算される実吐出流量が指令信号毎に算出される。そして、各信号値に対する指令吐出流量と実吐出流量とに基づいて補正テーブルが作成される。それ故、制御装置は、指令吐出流量に応じた流量の作動液を液圧ポンプから実際に吐出させることができる。従って、指令吐出流量と実際に流れるポンプ流量との間に生じる差異を抑えることができる。
【符号の説明】
【0109】
1,1A~1C ポンプシステム
2 アクチュエータ
2B 走行用液圧モータ(アクチュエータ)
2C 旋回用液圧モータ(アクチュエータ)
11 液圧ポンプ
11a ポンプ通路
12 レギュレータ
13 液圧回路
14,14A アンロード弁(開度制御弁)
15,15B,15C 第1圧力センサ
16 第2圧力センサ
16B 走行用圧力センサ(第2圧力センサ)
16C 旋回用圧力センサ(第2圧力センサ)
18,18A~18C 制御装置
19 タンク
21 優先弁(開度制御弁)
22C 旋回用制御弁(開度制御弁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7