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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154253
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】液圧回転機械
(51)【国際特許分類】
   F03C 1/253 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
F03C1/253
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067988
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】小松 賢司
(72)【発明者】
【氏名】駒田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】奥中 勇太
(72)【発明者】
【氏名】井波 悠
【テーマコード(参考)】
3H084
【Fターム(参考)】
3H084AA08
3H084AA16
3H084AA43
3H084BB07
3H084BB16
3H084CC02
3H084CC33
3H084CC40
3H084CC56
3H084CC70
(57)【要約】
【課題】シリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる液圧回転機械を提供する。
【解決手段】液圧回転機械は、ケーシングと、軸部材と、軸部材が相対回転不能に挿通され、軸線方向一端側にあるボア形成面において複数のシリンダボアが開口するシリンダブロックと、弁板と、斜板と、摺動面上にシューを介して配置され且つシリンダブロックの各々に挿入され、摺動面上を回転軸線まわりに回転することによってシリンダボアを往復運動する複数のピストンと、シューを斜板に押え付ける押え板と、付勢部材の付勢力を受けて押え板を斜板に向かって押付けるブッシュと、シリンダブロックのボア形成面とブッシュとの間に介在し、シリンダブロックと連動して回転することによって受ける遠心力に応じた押付力でシリンダブロックを弁板に向かって押付ける押付け部材とを備える、液圧回転機械。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、
所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、
前記軸部材が相対回転不能に挿通され、軸線方向一端側にあるボア形成面において複数のシリンダボアが開口し、且つ軸線方向他端にシリンダポートが開口するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、
ケーシング内に配置され、前記軸部材に対して傾斜し且つ前記シリンダブロックの一端面に対向する摺動面を有する斜板と、
前記摺動面上にシューを介して配置され且つ前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記摺動面上を回転軸線まわりに回転することによって前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、
前記シューを前記斜板に押え付ける押え板と、
前記シリンダブロックの軸線方向一方側に配置され、付勢部材の付勢力を受けて前記押え板を前記斜板に向かって押付けるブッシュと、
前記ボア形成面と前記ブッシュとの間に介在し、前記シリンダブロックと連動して回転することによって受ける遠心力に応じた押付力で前記シリンダブロックを前記弁板に向かって押付ける押付け部材とを備える、液圧回転機械。
【請求項2】
前記押付け部材は、前記ブッシュに形成される傾斜面に摺接する摺接面を有し、遠心力によって径方向外方に拡径するように変形し、
前記傾斜面及び前記摺接面の各々は、径方向外方に進むにつれて前記シリンダブロックに近づくように傾斜する、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項3】
前記押付け部材は、前記ボア形成面に形成される傾斜面に摺接する摺接面を有し、遠心力によって径方向外方に拡径するように変形し、
前記傾斜面及び前記摺接面の各々は、径方向外方に進むにつれて前記ブッシュに近づくように傾斜する、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項4】
前記押付け部材は、環状に形成され、且つ周方向に分割可能な複数の分割体によって構成されている、請求項2又は3に記載の液圧回転機械。
【請求項5】
前記押付け部材は、前記シリンダブロックの前記ボア形成面を覆うように形成されている、請求項4に記載の液圧回転機械。
【請求項6】
前記付勢部材は、コイルばねであって、
前記シリンダブロックには、前記ボア形成面において複数のばね収容孔が開口しており、
前記複数のばね収容孔には、前記コイルばねが夫々挿入され、
前記押付け部材には、前記ばね収容孔の各々に対応する位置にばね挿通孔が夫々形成され、
前記コイルばねの各々は、前記ばね挿通孔を夫々貫通して前記ブッシュに当接している、請求項5に記載の液圧回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーシングに軸支される軸部材にシリンダブロックが相対回転不能に結合される液圧回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧回転機械の一例として、例えば特許文献1の液圧ポンプが知られている。液圧ポンプでは、ケーシングに軸支される軸部材がシリンダブロックに相対回転不能に結合されている。他方、軸部材は、シリンダブロックと一体的に回転することによって撓む。軸部材の撓みに対してシリンダブロックが追従しないようにするために、シリンダブロックは軸部材にスプライン結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-85381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液圧ポンプでは、ピストンに作用する圧力及び遠心力等によってシリンダブロックに転倒モーメントが作用することによって軸部材が撓む。そして、軸部材が撓んだ状態で回転することによってシリンダブロックが振れ回る。ピストンに作用する圧力及び遠心力が大きくなると、シリンダブロックの振れ回りが大きくなる。そうすると、シリンダブロックが弁板から乖離する。これにより、作動液の漏れが大きくなるので、吐出効率が低下する。
【0005】
そこで本開示は、シリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる液圧回転機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、前記軸部材が相対回転不能に挿通され、軸線方向一端側にあるボア形成面において複数のシリンダボアが開口し、且つ軸線方向他端にシリンダポートが開口するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、ケーシング内に配置され、前記軸部材に対して傾斜し且つ前記シリンダブロックの一端面に対向する摺動面を有する斜板と、前記摺動面上にシューを介して配置され且つ前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記摺動面上を回転軸線まわりに回転することによって前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シューを前記斜板に押え付ける押え板と、前記シリンダブロックの軸線方向一方側に配置され、付勢部材の付勢力を受けて前記押え板を前記斜板に向かって押付けるブッシュと、前記ボア形成面と前記ブッシュとの間に介在し、前記シリンダブロックと連動して回転することによって受ける遠心力に応じた押付力で前記シリンダブロックを前記弁板に向かって押付ける押付け部材とを備える。
【0007】
本開示の液圧回転機械に従えば、押付け部材は、シリンダブロックの一端面とブッシュとの間に介在する。そして、押付け部材は、シリンダブロックと連動して回転することによって受ける遠心力に応じた押付力でシリンダブロックを弁板に向かって押付ける。それ故、シリンダブロックの回転速度に応じた荷重でシリンダブロックを弁板に押付けることができる。これにより、シリンダブロックの回転速度が大きくなってもシリンダブロックが弁板から引き離されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の液圧回転機械によれば、シリンダブロックが弁板から乖離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る液圧回転機械を示す断面図である。
図2図1の液圧回転機械の領域Xを拡大して示す拡大断面図である。
図3図1の液圧回転機械の遠心力板を示す左側面図である。
図4図3の遠心力板を切断線VI-VIで切断して示す断面図である。
図5図1の液圧回転機械の遠心力板の動きを示す拡大断面図である。
図6】本開示の他の実施形態に係る液圧回転機械の遠心力板を示す左側面図である。
図7】本開示の他の実施形態に係る液圧回転機械の遠心力板を示す左側面図である。
図8】本開示の更に他の実施形態に係る液圧回転機械の領域Xに対応する部分を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態の液圧回転機械1について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧回転機械1は、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0011】
<液圧回転機械>
図1に示す液圧回転機械1は、ショベルやクレーン等の建設機械、フォークリフト等の産業機械、トラクター等の農業機械、及びプレス機等の油圧機械等、種々の機械に備わっている。液圧回転機械1は、例えば斜板形液圧回転機械であって、液圧ポンプ及び液圧モータの少なくとも一方として機能する。本実施形態において、液圧回転機械1は、可変容量形の斜板形液圧ポンプである。但し、液圧回転機械1は、固定容量形の斜板形液圧ポンプであってよい。液圧回転機械1は、図示しない駆動源(例えば電動機、エンジン、又はその両方であって、本実施形態では電動機)により駆動されることによって作動液(油及び水等の液体)を吐出する。液圧回転機械1は、ケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12と、弁板13と、複数のピストン14と、斜板15と、押え板16と、ブッシュ17と、遠心力板18と、レギュレータ19と、を備えている。
【0012】
<ケーシング>
ケーシング10には、軸部材11、シリンダブロック12、弁板13、複数のピストン14、斜板15、押え板16、ブッシュ17、遠心力板18、及びレギュレータ19が収容されている。より詳細に説明すると、ケーシング10には、収容空間21が形成されている。軸部材11、シリンダブロック12、弁板13、複数のピストン14、斜板15、斜板15、押え板16、ブッシュ17、遠心力板18、及びレギュレータ19は、収容空間21に収容されている。また、収容空間21は、開口21aを有している。開口21aは、ケーシング10の軸線方向一方側の端面(即ち、軸線方向一端面)にて開口している。なお、軸線方向は、所定の軸線L1が延在する方向である。
【0013】
ケーシング10には、吸入路22と、吐出路23とが形成されている。流入路の一例である吸入路22には、作動液が導かれる。他方、流出路の一例である吐出路23には、作動液が吐出される。吸入路22及び吐出路23は、例えばケーシング10において収容空間21の軸線方向他方側に形成されている。そして、吸入路22及び吐出路23は、収容空間21の軸線方向他方側の端面(即ち、軸線方向他端面)において開口している。
【0014】
<軸部材>
軸部材11は、回転軸線の一例である軸線L1まわりに回転可能にケーシング10に軸支されている。軸部材11は、軸線L1に沿って延在している。軸部材11は、ケーシング10を貫通しており、その軸線方向一方側の部分が開口21aからケーシング10外に突き出ている。軸部材11の軸線方向一方側の部分には、駆動源(図示せず)が連結されている。軸部材11は、駆動源によって軸線L1まわりに回転駆動される。なお、軸部材11は、駆動源に直接連結されているものに限定されず、駆動源に減速機等を介して間接的に連結されていてもよい。
【0015】
<シリンダブロック>
シリンダブロック12には、軸部材11が相対回転不能に挿通されている。より詳細に説明すると、シリンダブロック12は、大略円筒状に形成されている。即ち、シリンダブロック12は、その軸線L1に沿って形成される挿通孔12aを有している。挿通孔12aには、軸部材11が挿通されている。そして、シリンダブロック12と軸部材11とが相対回転不能にスプライン結合されている。これにより、シリンダブロック12は、軸線L1まわりに軸部材11と一体的に回転する。
【0016】
また、シリンダブロック12には、ボア形成面12eに複数のシリンダボア12cが形成されている。ボア形成面12eは、軸線方向一端面の一部分であって、以下の通りである。即ち、シリンダブロック12は、内周縁に突出部12fを有している。突出部12fは、大略筒状に形成され、内周縁から軸線方向一方に突出している。そして、シリンダブロック12の軸線方向一端面において、突出部12fより径方向外方部分がボア形成面12eと成っている。複数のシリンダボア12cは、ボア形成面12eにおいて、軸部材11の周り(即ち、軸線L1の周り)に周方向に互いに間隔をあけて配置されている。シリンダブロック12には、例えば9つのシリンダボア12cが形成されている。但し、前述するシリンダボア12cの数は一例に過ぎず、8つ以下であってもよく、また10個以上であってもよい。
【0017】
更に、シリンダブロック12には、軸線方向他端に複数のシリンダポート12dが開口している。複数のシリンダポート12dは、シリンダボア12cに夫々繋がっている。より詳細に説明すると、各シリンダポート12dは、シリンダボア12cの各々に対応させて形成されており、対応するシリンダボア12cに繋がっている。即ち、シリンダブロック12には、シリンダボア12cと同数のシリンダポート12dが形成されている。シリンダポート12dは、シリンダブロック12の軸線方向他端面にて開口している。そして、シリンダブロック12は、軸線方向他端面を収容空間21の軸線方向他端面に対向させるようにして収容空間21に収容されている。
【0018】
<弁板>
弁板13は、シリンダブロック12の軸線方向他端が摺動するようにケーシング10に固定されている。より詳細に説明すると、弁板13は、収容空間21の軸線方向他端面とシリンダブロック12との間に介在している。具体的に説明すると、弁板13は、収容空間21の軸線方向他端面に固定されている。弁板13には、シリンダブロック12の軸線方向他端面が押付けられている。そして、シリンダブロック12は、弁板13上を摺動するように軸線L1まわりに回転する。
【0019】
また、弁板13には、吸入ポート13a及び吐出ポート13bが夫々形成されている。流入側ポートの一例である吸入ポート13aは、吸入路22に繋がっている。流出側ポートの一例である吐出ポート13bは、吐出路23に繋がっている。そして、吸入ポート13a及び吐出ポート13bの各々には、シリンダポート12dを介して各シリンダボア12cが接続されている。各シリンダボア12cは、シリンダブロック12が回転することによって吸入ポート13a及び吐出ポート13bに交互接続される。吸入ポート13aは、接続されるシリンダポート12dを介して各シリンダボア12cに吸入路22の作動液を導く。また、吐出ポート13bは、接続されるシリンダポート12dを介してシリンダボア12cから吐出路23に作動液を吐出させる。
【0020】
<ピストン>
複数のピストン14は、シリンダブロック12のシリンダボア12cの各々に挿入されている。即ち、液圧回転機械1には、シリンダボア12cと同数のピストン(本実施形態において、9つのピストン)14が備わっている。そして、ピストン14の各々は、各シリンダボア12cにおいて往復運動する。吸入路22から吸入ポート13a及びシリンダポート12dを介してシリンダボア12cに作動液が吸入され、またシリンダボア12cからシリンダポート12d及び吐出ポート13bを介して吐出路23に作動液が吐出される。また、ピストン14の先端部分には、摺動回転可能にシュー24が取り付けられている。
【0021】
<斜板>
斜板15は、シリンダブロック12の軸線方向一方側に間隔をあけて配置されている。斜板15は、摺動面15aを有している(図2も参照)。摺動面15aは、軸部材11に対して傾斜し、且つシリンダブロック12の軸線方向一端面(より詳細に説明すると、ボア形成面12e)に対向している。摺動面15aには、複数のシュー24が当接しており、斜板15は、複数のシュー24を軸線方向一方側から支持している。複数のシュー24は、摺動面15a上を軸線L1まわりに摺動回転する。それ故、シリンダブロック12が回転すると、ピストン14がシリンダボア12cを往復運動する。また、斜板15は、軸線L1に直交する軸線L2まわりに傾倒することができる。即ち、斜板15は、傾転角を変えることができる。それ故、ピストン14のストローク量を変えることができる。これにより、各シリンダボア12cから吐出される作動液の量、即ち吐出量を変えることができる。
【0022】
<押え板>
押え板16は、複数のシュー24を斜板15に押え付ける。これにより、押え板16は、複数のシュー24を摺動面15a上に保持させる。より詳細に説明すると、押え板16は、円環状の板部材であって、軸部材11に径方向に間隔をあけて外挿されている。押え板16には、各シュー24に対応する位置に貫通孔16aが形成されており、貫通孔16aの各々にシュー24が挿通されている。また、シュー24の軸線方向他端部には、フランジ24aが形成されている。押え板16は、挿通されるシュー24のフランジ24aを摺動面15aに押付けることによって、複数のシュー24を摺動面15a上に保持させる。
【0023】
<ブッシュ>、
ブッシュ17は、シリンダブロック12の軸線方向一方側に配置されるように軸部材11に軸線方向に相対移動可能に外挿されている。また、ブッシュ17は、付勢部材の一例であるコイルばね25の付勢力を受けて押え板16を斜板15に向かって押付けている。ブッシュ17について更に詳細に説明すると、ブッシュ17は、大略円筒状に形成されている。ブッシュ17は、軸線方向一方側部分を軸部材11に外挿させ、軸部材11とスプライン結合されている。これにより、ブッシュ17は、相対回転不能であって軸線方向に移動可能に軸部材11に外挿されている。また、ブッシュ17は、軸線方向他端側部分をシリンダブロック12の突出部12fに軸線方向に移動可能に外挿させている。これにより、ブッシュ17は、軸線L1に沿って移動するように突出部12fによって案内される。
【0024】
また、ブッシュ17は、いわゆる球面ブッシュであって、軸線方向一端に部分球面部17aを有している。部分球面部17aは、押え板16の内周縁部分に摺動可能に嵌まり込んでいる。そして、押え板16は、斜板15と共に傾転するように部分球面部17a上を摺動する。
【0025】
更に、ブッシュ17は、前述のとおりコイルばね25の付勢力を受けている。コイルばね25は、例えば圧縮コイルばねであって、シリンダブロック12に設けられている。より詳細に説明すると、シリンダブロック12には、突出部12fの周りに複数のばね収容孔12gが周方向に間隔をあけて形成されている。ばね収容孔12gの各々には、コイルばね25が軸線方向一端側部分を突き出させた状態で収容されている。コイルばね25は、軸線方向一端をブッシュ17の軸線方向他端に当接させてブッシュ17を押え板16に向かって付勢している。これにより、ブッシュ17は、コイルばね25の付勢力を受けて押え板16を斜板15に向かって押付ける。
【0026】
更に、ブッシュ17には、図2に示すように軸線方向一端に傾斜面17bが形成されている。本実施形態において、傾斜面17bは、ブッシュ17の軸線方向一端面であって内周縁部分に形成されている。傾斜面17bは、径方向外方に進むにつれてシリンダブロック12に近づくように傾斜している。本実施形態において、傾斜面17bは、軸線方向一方に向かうにつれて先細りのテーパ状に形成されている。
【0027】
<遠心力板>
押付け部材の一例である遠心力板18は、図2にも示すようにシリンダブロック12のボア形成面12eとブッシュ17との間に介在する。また、遠心力板18は、シリンダブロック12と連動して回転することによって遠心力を受ける。そして、遠心力板18は、遠心力に応じた押付力でシリンダブロック12を弁板13に向かって押付ける。より詳細に説明すると、遠心力板18は、図3に示すように円環状の板部材である。遠心力板18は、図1に示すように軸部材11の周りに配置されている。本実施形態において、遠心力板18は、シリンダブロック12の突出部12fに外挿されている。また、遠心力板18は、図2に示すように軸線方向一端の内周縁部分を傾斜面17bに対向させている。また、遠心力板18は、軸線方向他端面全体でシリンダブロック12のボア形成面12eを覆っている。このようにして、遠心力板18は、ボア形成面12eと傾斜面17bとの間に介在している。
【0028】
また、遠心力板18には、図4に示すように複数のピストン挿通孔18a及び複数のばね挿通孔18bが形成されている。複数のピストン挿通孔18aの各々は、シリンダボア12cの各々に対応する位置に夫々形成されている(図1及び2も参照)。ピストン挿通孔18aの孔径は、ピストン14の外径より大径に形成されており、ピストン挿通孔18aの各々に各ピストン14が挿通されている。また、複数のばね挿通孔18bの各々は、図1に示すようにばね収容孔12gの各々に対応する位置に夫々形成されている。ばね挿通孔18bの孔径は、コイルばね25の外径より大径に形成されており、コイルばね25の各々は、ばね挿通孔18bを夫々貫通してブッシュ17に当接している。これにより、ブッシュ17は、シリンダボア12cに設けられるコイルばね25によって付勢されている。
【0029】
また、遠心力板18は、図5に示すように摺接面18cを有している。摺接面18cは、ブッシュ17の傾斜面17bに対応させて形成されており、傾斜面17b上を径方向に摺動するようになっている。本実施形態において、摺接面18cは、遠心力板18の内周縁部分に形成されている。そして、摺接面18cは、傾斜面17bと同様に、径方向外方に進むにつれてシリンダブロック12に近づくように傾斜している。本実施形態において、摺接面18cは、軸線方向一方に向かうにつれて先細りのテーパ状に形成されている。そして、摺接面18c及び傾斜面17bは、例えば互いに同一のテーパ角で形成されている。
【0030】
また、遠心力板18は、周方向に分割可能な構造になっている(図3参照)。本実施形態において、遠心力板18は、周方向に等分するように3つの板部18dに分割可能に構成されている。即ち、分割体の一例である板部18dの各々は、軸線方向に見て扇状に形成されている。これにより、板部18dの各々が回転時に作用する遠心力によって径方向外側に引っ張られるので、遠心力板18が拡径するように変形する。
【0031】
<レギュレータ>
図1に示すレギュレータ19は、斜板15を軸線L2まわりに回動させることによって斜板15の傾転角を変える。より詳細に説明すると、レギュレータ19は、図示しないサーボピストンが連結部材19bを介して斜板15と連結されている。そして、レギュレータ19は、入力される信号(例えば、パイロット圧)に応じてサーボピストンを動かす。これにより、斜板15の傾転角が調整される。
【0032】
<液圧回転機械の動作>
図1に示す液圧回転機械1は、以下のように動作する。即ち、駆動源(図示せず)が軸部材11を駆動することによって、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転する。そうすると、シリンダポート12dの接続先が吸入ポート13a及び吐出ポート13bの間で切り替わる。また、シリンダブロック12が回転することによって、複数のピストン14が斜板15上を軸線L1まわりに回転する。これにより、各ピストン14がシリンダボア12cを往復運動する。そうすると、吸入ポート13aを介してシリンダボア12cに作動液が吸引され、その後シリンダボア12cから吐出ポート13bに作動液が吐出される。このようにして、液圧回転機械1は、作動液を吐出する。なお、液圧回転機械1では、レギュレータ19によって斜板15の傾転角が調整される。そうすると、ピストン14のストローク量が調整される。これにより、液圧回転機械1の吐出量を調整することができる。
【0033】
また、液圧回転機械1では、シリンダブロック12が回転する際、シリンダブロック12と一緒に遠心力板18が回転する。そうすると、遠心力板18に遠心力(径方向外方に向かう力)が作用する。これにより、各板部18dが径方向外方に変位し、遠心力板18が拡径するように変形する(図5の矢印A参照)。そうすると、遠心力板18の摺接面18cが傾斜面17bに当たる。摺接面18c及び傾斜面17bは、共に径方向外方に進むにつれてシリンダブロック12に向かって傾倒するように傾斜している。それ故、遠心力板18が変形することによって、摺接面18cが傾斜面17b上を径方向外方に摺動する(図5の二点鎖線参照)。これにより、遠心力板18は、摺接面18cにおいて傾斜面17bから反力を受けてシリンダブロック12のボア形成面12eに押付けられ、更にシリンダブロック12が弁板13に押付けられる(図1も参照)。
【0034】
遠心力板18に作用する遠心力は、シリンダブロック12の回転速度に応じて大きくなる。また、遠心力が大きくなれば大きくなるほど、摺接面18cが
傾斜面17bから受ける軸線方向の荷重も大きくなる。そうすると、遠心力板18はより大きな荷重でシリンダブロック12のボア形成面12eに押付けられ、更にシリンダブロック12を弁板13に押し付けることができる。これにより、シリンダブロック12の回転速度が大きくなった際にシリンダブロック12が弁板13から乖離することを抑制することができる。特に、遠心力板18は、径方向に延在し、シリンダブロック12のボア形成面12eを覆うように形成されている。それ故、遠心力板18の重量が確保されているので、シリンダブロック12の回転速度が大きくなった際により大きな荷重でシリンダブロック12を弁板13に押付けることができる。それ故、シリンダブロック12が弁板13から乖離することを更に抑制することができる。そうすると、弁板13とシリンダブロック12との間から作動液が漏れることが抑制されるので、液圧回転機械1の吐出効率が低下することを抑制することができる。
【0035】
また、遠心力板18が変形すると、ブッシュ17の傾斜面17bは、摺接面18cから遠心力に応じた押付力を受ける。それ故、ブッシュ17は、付勢力に押付け力を加えた荷重によって押え板16を斜板15に向かって押付ける。これにより、回転速度が上昇した際、より大きな押付け力でシュー24を斜板15に押付けることができる。従って、シュー24が斜板15から浮くことを抑制することができる。
【0036】
本実施形態の液圧回転機械1において、遠心力板18は、シリンダブロック12の一端面とブッシュ17との間に介在する。そして、遠心力板18は、シリンダブロック12と連動して回転することによって受ける遠心力に応じた押付力でシリンダブロック12を弁板13に向かって押付ける。それ故、シリンダブロック12の回転速度に応じた荷重でシリンダブロック12を弁板13に押付けることができる。これにより、シリンダブロック12の回転速度が大きくなってもシリンダブロック12が弁板13から引き離されることを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の液圧回転機械1において、傾斜面17b及び摺接面18cの各々が径方向外方に進むにつれてシリンダブロック12に近づくように傾斜している。それ故、遠心力板18が拡径するように変形することによって、遠心力板18が傾斜面17b上を径方向外方に摺動する。これにより、遠心力板18は、遠心力を受けるとシリンダブロック12に向かって押付けられるので、遠心力に応じた押付力でシリンダブロック12を弁板13に向かって押付けることができる。従って、シリンダブロック12の回転速度を大きくしてもシリンダブロック12が弁板13から引き離されることを抑制することができる。
【0038】
また、遠心力板18が変形すると、ブッシュ17の傾斜面17bは摺接面18cから遠心力に応じた押付力を受ける。それ故、ブッシュ17は、付勢力に押付力を加えた荷重によって押え板16を斜板15に向かって押付ける。これにより、シリンダブロック12の回転速度を大きくしても大きな押付け力でシュー24を斜板15に押付けることができる。
【0039】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、遠心力板18は、環状に形成される且つ周方向に分割可能な3つの板部18dによって構成されている。それ故、遠心力板18に遠心力が作用すると、各板部18dが径方向外側に引っ張られ、遠心力板18が拡径するように変形する。これにより、シリンダブロック12が回転して遠心力板18に遠心力が作用すると、摺接面18cが傾斜面17b上を径方向外方に摺動する。そうすると、遠心力板18がシリンダブロック12に押し付けられるので、遠心力板18がシリンダブロック12を弁板13に押付けることができる。これにより、シリンダブロック12が弁板13から引き離されることを抑制することができる。
【0040】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、遠心力板18は、シリンダブロック12のボア形成面12eを覆うように形成されている。それ故、遠心力板18の重量を大きくすることができる。これにより、遠心力板18に作用する遠心力を大きくすることができるので、より大きな押付力でシリンダブロック12を弁板13に向かって押付けることができる。
【0041】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、コイルばね25は、遠心力板18のばね挿通孔18bを貫通してブッシュ17に当接している。それ故、コイルばね25は、ブッシュ17を直接付勢しているので、ブッシュ17を押え板16に押付ける力を確保することができる。
【0042】
<その他の実施形態について>
本実施形態の液圧回転機械1は、斜板形の液圧ポンプを一例として挙げて説明されているが、前述の通り斜板形の液圧モータであってもよい。また、遠心力板18は、必ずしも3つの板部18dに分割されるものに限定されず、2つ又は4つ以上の板部18dに分割されてもよい。例えば、図6に示すように遠心力板18Aは、シリンダボア12cと同数、本実施形態において9つの板部18Adに分割されてもよい。また、遠心力板18は、必ずしもボア形成面12e全体を覆うように形成されている必要はない。
【0043】
押付け部材は、例えば図7に示す遠心力板18Bのように構成されてもよい。即ち、遠心力板18Bの各板部18Bdは、ボア形成面12eにおいて突出部12f周りであってシリンダボア12cより径方向内側を覆うように形成される。更に、押付け部材は、必ずしも遠心力板18のように環状に形成されている必要はない。例えば、押付け部材は、複数の板部を周方向に互いに間隔をあけて配置するような構造であってもよく、遠心力に応じた押付力でシリンダブロック12を弁板13に向かって押付けるような構造であればよい。
【0044】
更に、液圧回転機械は、図8に示すように構成されてもよい。即ち、液圧回転機械1Cでは、シリンダブロック12Cに傾斜面12hが形成されている。傾斜面12hは、ボア形成面12eに形成されている。本実施形態において、傾斜面12hは、ボア形成面12eであって突出部12f周り(即ち、内周縁部分)に形成されている。傾斜面12hは、径方向外方に進むにつれてブッシュ17に近づくように傾斜している。本実施形態において、傾斜面12hは、軸線方向他方に向かうにつれて先細りのテーパ状に形成されている。
【0045】
また、液圧回転機械1Cでは、遠心力板18Cの摺接面18cが傾斜面12hに対応させて形成されており、傾斜面12h上を径方向に摺動するようになっている。本実施形態において、摺接面18cは、遠心力板18の内周縁部分に形成されている。そして、摺接面18cは、傾斜面12hと同様に、径方向外方に進むにつれてブッシュ17に近づくように傾斜している。本実施形態において、摺接面18cは、軸線方向他方に向かうにつれて先細りのテーパ状に形成されている。そして、摺接面18c及び傾斜面12hは、例えば互いに同一のテーパ角で形成されている。
このように構成されている液圧回転機械1Cでは、遠心力板18Cが拡径するように変形すると、傾斜面12hが摺接面18cによって押される。それ故、18Cは、遠心力に応じた押付力でシリンダブロック12を弁板13に向かって押付ける。これにより、シリンダブロック12の回転速度を大きくしてもシリンダブロック12が弁板13から引き離されることを抑制することができる。
【0046】
また、遠心力板18Cは、拡径するように変形することによって傾斜面12h上を径方向外方に摺動する。これにより、遠心力板18Cは、ブッシュ17に向かって押し付けられる。従って、ブッシュ17は、付勢力に押付力を加えた荷重によって押え板16を斜板15に向かって押付けるので、シリンダブロック12の回転速度を大きくしても大きな押付け力でシュー24を斜板15に押付けることができる。
【0047】
なお、液圧回転機械1,1Cでは、ブッシュ17及びシリンダブロック12の各々に傾斜面17b,12hが夫々形成されているが、ブッシュ17及びシリンダブロック12の両方に傾斜面17b,12hが夫々形成されていてもよい。この場合、遠心力版には、傾斜面17b,12hに夫々対応する位置に摺接面18cが形成される。
【0048】
<例示的な実施形態>
第1の局面における液圧回転機械は、作動液が導かれる流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されているケーシングと、所定の回転軸線まわりに回転可能に前記ケーシングに軸支されている軸部材と、前記軸部材が相対回転不能に挿通され、軸線方向一端側にあるボア形成面において複数のシリンダボアが開口し、且つ軸線方向他端にシリンダポートが開口するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの軸線方向他端が摺動するように前記ケーシングに固定され、前記流入路に繋がる流入側ポートと前記流出路に繋がる流出側ポートとが形成されている弁板と、ケーシング内に配置され、前記軸部材に対して傾斜し且つ前記シリンダブロックの一端面に対向する摺動面を有する斜板と、前記摺動面上にシューを介して配置され且つ前記シリンダブロックの各々に挿入され、前記摺動面上を回転軸線まわりに回転することによって前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、前記シューを前記斜板に押え付ける押え板と、前記シリンダブロックの軸線方向一方側に配置され、付勢部材の付勢力を受けて前記押え板を前記斜板に向かって押付けるブッシュと、前記ボア形成面と前記ブッシュとの間に介在し、前記シリンダブロックと連動して回転することによって受ける遠心力に応じた押付力で前記シリンダブロックを前記弁板に向かって押付ける押付け部材とを備えるものである。
【0049】
上記局面に従えば、押付け部材は、シリンダブロックの一端面とブッシュとの間に介在する。そして、押付け部材は、シリンダブロックと連動して回転することによって受ける遠心力に応じた押付力でシリンダブロックを弁板に向かって押付ける。それ故、シリンダブロックの回転速度に応じた荷重でシリンダブロックを弁板に押付けることができる。これにより、シリンダブロックの回転速度が大きくなってもシリンダブロックが弁板から引き離されることを抑制することができる。
【0050】
第2の局面における液圧回転機械は、第1の局面における液圧回転機械において、前記押付け部材は、前記ブッシュに形成される傾斜面に摺接する摺接面を有し、遠心力によって径方向外方に拡径するように変形し、前記傾斜面及び前記摺接面の各々は、径方向外方に進むにつれて前記シリンダブロックに近づくように傾斜する。
【0051】
上記局面に従えば、傾斜面及び摺接面の各々が径方向外方に進むにつれてシリンダブロックに近づくように傾斜している。それ故、押付け部材は、拡径するように変形することによって傾斜面上を径方向外方に摺動する。これにより、押付け部材は、シリンダブロックに向かって押付けられるので、遠心力に応じた押付力でシリンダブロックを弁板に向かって押付けることができる。これにより、シリンダブロックの回転速度を大きくしてもシリンダブロックが弁板から引き離されることを抑制することができる。
【0052】
また、押付け部材が変形すると、ブッシュの傾斜面は摺接面から遠心力に応じた押付力を受ける。それ故、ブッシュは、付勢力に押付力を加えた荷重によって押え板を斜板に向かって押付ける。これにより、シリンダブロックの回転速度を大きくしても大きな押付け力でシューを斜板に押付けることができる。
【0053】
第3の局面における液圧回転機械は、第1の局面における液圧回転機械において、前記押付け部材は、前記ボア形成面に形成される傾斜面に摺接する摺接面を有し、遠心力によって径方向外方に拡径するように変形し、前記傾斜面及び前記摺接面の各々は、径方向外方に進むにつれて前記ブッシュに近づくように傾斜する。
【0054】
上記局面に従えば、傾斜面及び摺接面の各々が径方向外方に進むにつれてブッシュに近づくように傾斜している。それ故、押付け部材は、拡径するように変形すると、遠心力に応じた押付力でシリンダブロックを弁板に向かって押付ける。これにより、シリンダブロックの回転速度を大きくしてもシリンダブロックが弁板から引き離されることを抑制することができる。
【0055】
また、押付け部材は、拡径するように変形することによって傾斜面上を径方向外方に摺動する。これにより、押付け部材は、ブッシュに向かって押し付けられる。従って、ブッシュは、付勢力に押付力を加えた荷重によって押え板を斜板に向かって押付けるので、シリンダブロックの回転速度を大きくしても大きな押付け力でシューを斜板に押付けることができる。
【0056】
第4の局面における液圧回転機械は、第2又は第3の局面における液圧回転機械において、前記押付け部材は、環状に形成され、且つ周方向に分割可能な複数の分割体によって構成されている。
【0057】
上記局面に従えば、押付け部材は、環状に形成される且つ周方向に分割可能な複数の分割体によって構成されている。それ故、押付け部材に遠心力が作用すると、各分割体が径方向外側に引っ張られ、押付け部材が拡径するように変形する。これにより、シリンダブロックが回転して押付け部材に遠心力が作用すると、摺接面が傾斜面上を径方向外方に摺動する。そうすると、押付け部材がシリンダブロックに押し付けられるので、押付け部材がシリンダブロックを弁板に押付けることができる。これにより、シリンダブロックが弁板から引き離されることを抑制することができる。
【0058】
第5の局面における液圧回転機械は、第4の局面における液圧回転機械において、前記押付け部材は、前記シリンダブロックの前記ボア形成面を覆うように形成されている。
【0059】
上記局面に従えば、押付け部材は、シリンダブロックのボア形成面を覆うように形成されている。それ故、押付け部材の重量を大きくすることができる。これにより、押付け部材に作用する遠心力を大きくすることができるので、より大きな押付力でシリンダブロックを弁板に向かって押付けることができる。
【0060】
第6の局面における液圧回転機械は、第5の局面における液圧回転機械において、前記付勢部材は、コイルばねであって、前記シリンダブロックには、前記ボア形成面において複数のばね収容孔が開口しており、前記複数のばね収容孔には、前記コイルばねが夫々挿入され、前記押付け部材には、前記ばね収容孔の各々に対応する位置にばね挿通孔が夫々形成され、前記コイルばねの各々は、前記ばね挿通孔を夫々貫通して前記ブッシュに当接している。
【0061】
上記局面に従えば、付勢部材は、押付け部材のばね挿通孔を貫通してブッシュに当接している。それ故、付勢部材は、ブッシュを直接付勢しているので、ブッシュを押さえ板に押付ける力を確保することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1A 液圧回転機械
10 ケーシング
11 軸部材
12 シリンダブロック
12c シリンダボア
12d シリンダポート
12e ボア形成面
12g ばね収容孔
12h 傾斜面
13 弁板
13a 吸入ポート(流入ポート)
13b 吐出ポート(流出ポート)
14 ピストン
15 斜板
15a 摺動面
16 押え板
17 ブッシュ
17b 傾斜面
18,18A,18B,18C 遠心力板(押付け部材)
18b ばね挿通孔
18c 摺接面
18d,18Ad,18Bd 板部(分割体)
22 吸入路(流入路)
23 吐出路(流出路)
24 シュー
25 コイルばね(付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8