(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154254
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】運転計画作成装置、運転計画作成方法、運転計画作成プログラム及び水素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241023BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241023BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 120
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067989
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】小熊 祐司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】稲村 彰信
(72)【発明者】
【氏名】梶倉 翔
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】受電装置に提供される電力を所望の態様にするとともに電力システムに要求される目的を達成させることが可能な運転計画を作成する。
【解決手段】第1エネルギー源(太陽光発電装置)から得た第1電力と、第2エネルギー源(外部系統)から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成装置1は、第1エネルギー源から第1電力として電力システムに供給される電力供給の予測値を指定する予測値指定部11と、電力システムの運用に関し、第1電力を示す項及び第2電力を示す項を含み、第1電力及び第2電力を区別して扱う制約条件を指定する制約条件指定部12と、電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部13と、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、電力システムのための運転計画を得る最適化計算部15と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成装置であって、
前記電力システムは、受電装置を含み、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記電力システムに供給される電力供給の予測値を指定する予測値指定部と、
前記電力システムの運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定する制約条件指定部と、
前記電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部と、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記電力システムのための運転計画を得る最適化計算部と、を備える、運転計画作成装置。
【請求項2】
前記制約条件指定部は、前記制約条件である第1制約条件を指定し、
前記第1制約条件は、前記受電装置に供給する電力として前記第1電力のみを設定する、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項3】
前記制約条件指定部は、前記制約条件である第2制約条件を指定し、
前記第2制約条件は、前記受電装置に供給する電力の合計値に対する前記第1電力の割合を指定する、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項4】
前記受電装置は、前記第1電力を消費するものであり、
前記制約条件指定部は、前記受電装置が消費する電力の合計値に対する前記第1電力の消費割合又は前記受電装置が消費する前記第1電力の消費量を指定する、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項5】
前記受電装置は、前記第1電力を消費するものであり、
前記目的関数指定部は、前記受電装置が消費する電力の合計値に対する前記第1電力の消費割合又は前記受電装置が消費する前記第1電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数を、前記目的関数として設定する、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項6】
前記受電装置は、前記第1電力を消費するものであり、
前記最適化計算部は、前記受電装置が消費する電力の合計値に対する前記第1電力の消費割合又は前記受電装置が消費する前記第1電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数について、前記消費割合又は前記消費量を最大化する問題を最適化問題として解く、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項7】
前記受電装置は、前記第1電力を貯蔵するものであり、
前記制約条件指定部は、前記受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する前記第1電力の貯蔵割合又は前記受電装置が貯蔵する前記第1電力の貯蔵量を指定する、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項8】
前記受電装置は、前記第1電力を貯蔵するものであり、
前記目的関数指定部は、前記受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する前記第1電力の貯蔵割合又は前記受電装置が貯蔵する前記第1電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数を、前記目的関数として設定する、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項9】
前記受電装置は、前記第1電力を貯蔵するものであり、
前記最適化計算部は、前記受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する前記第1電力の貯蔵割合又は前記受電装置が貯蔵する前記第1電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数について、前記貯蔵割合又は前記貯蔵量を最大化する問題を最適化問題として解く、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項10】
前記目的関数指定部は、前記目的関数である第1目的関数を指定し、
前記第1目的関数は、前記電力システムの電力需要を満たすために前記第2エネルギー源から得る前記第2電力の最小化を前記電力システムに要求される目的とする、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項11】
前記目的関数指定部は、前記目的関数である第2目的関数を指定し、
前記第2目的関数は、少なくとも前記第1電力を受けた結果、前記受電装置が出力する成果物の最大化を前記電力システムに要求される目的とする、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項12】
前記目的関数指定部は、前記目的関数である第3目的関数を指定し、
前記第3目的関数は、前記電力システムを運用するコストの最小化、前記電力システムの運用による利益の最大化及び前記電力システムの運用により排出される二酸化炭素の量の最小化のうち少なくとも一つを目的とする、請求項1~3の何れか一項に記載の運転計画作成装置。
【請求項13】
前記目的関数指定部は、前記第1電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を第1の数式により設定し、前記第2電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を前記第1の数式とは異なる第2の数式により設定する、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項14】
前記第1エネルギー源は、再生可能エネルギーに基づく前記第1電力を出力する、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項15】
前記電力システムは、前記受電装置として水電解装置を含む、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項16】
前記電力システムは、前記受電装置として蓄電池を含む、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項17】
前記運転計画に基づいて、前記運転計画を表示させるための表示情報を生成する最適化結果出力部をさらに備え、
前記最適化結果出力部は、前記受電装置に供給される電力について、前記第1電力と前記第2電力とが区別可能な態様で示す、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項18】
前記第1電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴わない電力である、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項19】
前記第2電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴う電力である、請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項20】
第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成方法であって、
前記電力システムは、受電装置を含み、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記電力システムに供給される電力供給の予測値を指定することと、
前記電力システムの運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、
前記電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部と、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記電力システムのための運転計画を得ることと、を有する、運転計画作成方法。
【請求項21】
第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成プログラムであって、
前記電力システムは、受電装置を含み、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記電力システムに供給される電力供給の予測値を指定することと、
前記電力システムの運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、
前記電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定することと、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記電力システムのための運転計画を得ることと、をコンピューターに実行させる、運転計画作成プログラム。
【請求項22】
第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する水素製造システムを用いて水素を製造する方法であって、
前記水素製造システムは、少なくとも前記第1電力を利用して水素を得る水素製造部を備え、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記水素製造部に供給される電力供給の予測値を指定することと、
前記水素製造部の運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、
前記水素製造部に要求される目的を定式化した目的関数を指定することと、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記水素製造部のための運転計画を得ることと、を有する、水素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転計画作成装置、運転計画作成方法、運転計画作成プログラム及び水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるマイクログリッドは、エネルギーを供給する要素とエネルギーを消費する要素と、を含む。エネルギーを供給する要素には、再生可能エネルギーをエネルギー源とするものがある。また、エネルギーを供給する要素には、非再生可能エネルギーをエネルギー源とするものもある。さらに、エネルギーを消費して成果物を得る要素として、水電解装置がある。水電解装置で生成された水素は、水電解装置と同じ敷地に設置されたガスタービン発電機器等において化石燃料の代わりに使用されることがある。また、水電解装置で生成された水素は、水電解装置から離れた場所に設置されたガスタービン発電機器等において化石燃料の代わりに使用されることもある。
【0003】
これらの水素の利用形態は、化石燃料の使用によるCO2排出の抑制を企図したものである。その意味で、水電解装置で生成される水素は、再生可能エネルギー由来であることが求められる。なお、CO2排出を伴わない水素、つまり再生可能エネルギーや原子力エネルギーを由来とする水素は「グリーン水素」と称されることがある。一方、再生可能エネルギーや原子力エネルギーを由来とせず、化石燃料などを由来とする水素は「ブラック水素」と称されることがある。
【0004】
特許文献1~4は、再生可能エネルギーと水電解装置を組み合わせたマイクログリッドの運転に関する技術を開示する。
【0005】
特許文献1は、再生可能エネルギーと水素製造装置を備えたエネルギーシステムに対する計画支援装置を提供する。特許文献2は、エネルギーシステム全体での余剰電力を用いて水素を製造する経済的な運用方法を提供する。特許文献3は、複数のエネルギー供給源からエネルギーを蓄積する際に、エネルギー供給源を識別できる技術を提供する。特許文献4は、再生可能エネルギーと非再生可能エネルギーを区別した市場取引システムを提供する。例えば、特許文献4の段落0043には再生可能エネルギーと非再生可能エネルギーとを区別した蓄電池充放電に関する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-94118号公報
【特許文献2】特開2022-170429号公報
【特許文献3】特開2021-108536号公報
【特許文献4】特開2022-176535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクログリッドに例示される電力システムに供給される電力は、再生可能エネルギーに由来する電力と、再生可能エネルギーに由来しない電力と、を含むことがある。そうすると、水電解装置が生成する水素を「グリーン水素」と称するためには、再生可能エネルギーに由来する電力と再生可能エネルギーに由来しない電力とのいずれの電力が水電解装置に供給されたかが重要である。
【0008】
特許文献1及び特許文献2では、水素の製造に用いる電力が再生可能エネルギーであるか否かは考慮していない。水素を経済的に生成する運用を考えたとき、化石燃料由来の電力の貢献が大きくなる可能性も否定できない。水素生成に用いられた電力のうち、化石燃料由来の電力の比率が大きい場合、CO2排出量削減に寄与しない。さらには、化石燃料から電力を生成し、その電力を用いて水素を生成し、そしてその水素を用いて電力を得るというエネルギー変換プロセスを想定すると、これらの変換の過程でエネルギーのロスが生じる。その結果、最終的な発電電力あたりの排出CO2量が逆に増加する可能性がある。したがって、水素を化石燃料の代替として用いることを考えた場合、特許文献1及び特許文献2のように水素を経済的に生成するという仕組みだけでは不十分である。
【0009】
さらには、水電解装置には、所望の量の水素を製造することも要求される。
【0010】
特許文献3及び特許文献4を利用すれば、再生可能エネルギーと再生可能エネルギーでないエネルギーを識別して蓄電池に選択的に充電できる。さらに、特許文献3及び特許文献4を利用すれば、再生可能エネルギーとそうでないエネルギーを識別して蓄電池から選択的に放電できる。したがって、水電解装置で利用する電力が再生可能エネルギー由来であることを計算上保証できる。しかし、特許文献3の段落0002、0004、0005にも記載されているように、特許文献3の技術は、電力の流れの可視化及び識別を目的としている。つまり、特許文献3の技術では、時間軸を考慮した運転計画の最適化はなされない。特許文献4は、再生可能エネルギーと非再生可能エネルギーの具体的な蓄電池の充放電方法については言及していない。よって、特許文献3、4の技術が水電解装置を含む電力システムに適用された場合、必要な量の水素の製造が達成されないという問題が生じる。
【0011】
本発明は、受電装置に提供される電力を所望の態様にするとともに電力システムに要求される目的を達成させることが可能な運転計画を作成する運転計画作成装置、運転計画作成方法、運転計画作成プログラム及び水素を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態は、第1エネルギー源から得た第1電力と、第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成装置であって、電力システムは、受電装置を含み、第1エネルギー源から第1電力として電力システムに供給される電力供給の予測値を指定する予測値指定部と、電力システムの運用に関し、第1電力を示す項及び第2電力を示す項を含み、第1電力及び第2電力を区別して扱う制約条件を指定する制約条件指定部と、電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部と、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、電力システムのための運転計画を得る最適化計算部と、を備える。
【0013】
本発明の別の形態は、第1エネルギー源から得た第1電力と、第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成方法であって、電力システムは、受電装置を含み、第1エネルギー源から第1電力として電力システムに供給される電力供給の予測値を指定することと、電力システムの運用に関し、第1電力を示す項及び第2電力を示す項を含み、第1電力及び第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定することと、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、電力システムのための運転計画を得ることと、を有する。
【0014】
本発明のさらに別の形態は、第1エネルギー源から得た第1電力と、第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成プログラムであって、電力システムは、受電装置を含み、第1エネルギー源から第1電力として電力システムに供給される電力供給の予測値を指定することと、電力システムの運用に関し、第1電力を示す項及び第2電力を示す項を含み、第1電力及び第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部と、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、電力システムのための運転計画を得ることと、をコンピューターに実行させる。
【0015】
運転計画作成装置、運転計画作成方法及び運転計画作成プログラムは、電力システムの運用に関し、第1電力を示す項及び第2電力を示す項を含み、第1電力及び第2電力を区別して扱う制約条件を指定する。そして、電力供給の予測値、制約条件及び電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を解く。その結果、受電装置に提供される電力を所望の態様にするとともに電力システムに要求される目的を達成させることが可能な運転計画を得ることができる。
【0016】
上記の運転計画作成装置において、制約条件指定部は、制約条件である第1制約条件を指定し、第1制約条件は、受電装置に供給する電力として第1電力のみを設定してもよい。この構成によれば、受電装置に提供される電力の態様として、受電装置に第1電力のみを供給するという態様を実現できる。
【0017】
上記の運転計画作成装置において、制約条件指定部は、制約条件である第2制約条件を指定し、第2制約条件は、受電装置に供給する電力の合計値に対する第1電力の割合を指定してもよい。この構成によれば、受電装置に提供される電力の態様として、受電装置に所望の割合の第1電力を供給するという態様を実現できる。
【0018】
上記の運転計画作成装置において、受電装置は、第1電力を消費するものであり、制約条件指定部は、受電装置が消費する電力の合計値に対する第1電力の消費割合又は受電装置が消費する第1電力の消費量を指定してもよい。この構成によれば、第1電力の消費割合又は第1電力の消費量を所望の値とする運転計画を得ることができる。
【0019】
上記の運転計画作成装置において、受電装置は、第1電力を消費するものであり、目的関数指定部は、受電装置が消費する電力の合計値に対する第1電力の消費割合又は受電装置が消費する第1電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数を、目的関数として設定してもよい。この構成によれば、第1電力の消費割合又は第1電力の消費量を所望の態様とする目的関数を得ることができる。
【0020】
上記の運転計画作成装置において、受電装置は、第1電力を消費するものであり、最適化計算部は、受電装置が消費する電力の合計値に対する第1電力の消費割合又は受電装置が消費する第1電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数について、消費割合又は消費量を最大化する問題を最適化問題として解いてもよい。この構成によれば、第1電力の消費割合又は第1電力の消費量を最大化する運転計画を得ることができる。
【0021】
上記の運転計画作成装置において、受電装置は、第1電力を貯蔵するものであり、制約条件指定部は、受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する第1電力の貯蔵割合又は受電装置が貯蔵する第1電力の貯蔵量を指定してもよい。この構成によれば、第1電力の貯蔵割合又は第1電力の貯蔵量を所望の値とする運転計画を得ることができる。
【0022】
上記の運転計画作成装置において、受電装置は、第1電力を貯蔵するものであり、目的関数指定部は、受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する第1電力の貯蔵割合又は受電装置が貯蔵する第1電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数を、目的関数として設定してもよい。この構成によれば、第1電力の貯蔵割合又は第1電力の貯蔵量を所望の態様とする目的関数を得ることができる。
【0023】
上記の運転計画作成装置において、受電装置は、第1電力を貯蔵するものであり、最適化計算部は、受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する第1電力の貯蔵割合又は受電装置が貯蔵する第1電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数について、貯蔵割合又は貯蔵量を最大化する問題を最適化問題として解いてもよい。この構成によれば、第1電力の貯蔵割合又は第1電力の貯蔵量を最大化する運転計画を得ることができる。
【0024】
上記の運転計画作成装置において、目的関数指定部は、目的関数である第1目的関数を指定し、第1目的関数は、電力システムの電力需要を満たすために第2エネルギー源から得る第2電力の最小化を電力システムに要求される目的としてよい。この構成によれば、電力システムの電力需要を満たすために第2エネルギー源から得る第2電力を最小化する運転計画を得ることができる。
【0025】
上記の運転計画作成装置において、目的関数指定部は、目的関数である第2目的関数を指定し、第2目的関数は、少なくとも第1電力を受けた結果、受電装置が出力する成果物の最大化を電力システムに要求される目的としてよい。この構成によれば、受電装置が出力する成果物を最大化する運転計画を得ることができる。
【0026】
上記の運転計画作成装置において、目的関数指定部は、目的関数である第3目的関数を指定し、第3目的関数は、電力システムを運用するコストの最小化、電力システムの運用による利益の最大化及び電力システムの運用により排出される二酸化炭素の量の最小化のうち少なくとも一つを目的としてよい。この構成によれば、電力システムを運用するコストの最小化、電力システムの運用による利益の最大化及び電力システムの運用により排出される二酸化炭素の量の最小化のうち少なくとも一つを達成する運転計画を得ることができる。
【0027】
上記の運転計画作成装置において、目的関数指定部は、第1電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を第1の数式により設定し、第2電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を第1の数式とは異なる第2の数式により設定してよい。この構成によっても、電力システムに要求される目的を達成させることが可能な運転計画を得ることができる。
【0028】
上記の運転計画作成装置において、第1エネルギー源は、再生可能エネルギーに基づく第1電力を出力してよい。この構成によれば、第1電力をいわゆるグリーン電力とすることができる。
【0029】
上記の運転計画作成装置において、電力システムは、受電装置として水電解装置を含んでよい。この構成によれば、電力システムは水素を製造することができる。
【0030】
上記の運転計画作成装置において、電力システムは、受電装置として蓄電池を含んでいよい。この構成によれば、電力システムは電力を蓄える機能を奏することができる。
【0031】
上記の運転計画作成装置において、運転計画に基づいて、運転計画を表示させるための表示情報を生成する最適化結果出力部をさらに備え、最適化結果出力部は、受電装置に供給される電力について、第1電力と第2電力とが区別可能な態様で示してよい。この構成によれば、第1電力と第2電力とが区別可能な態様で運転計画を提示することができる。
【0032】
上記の運転計画作成装置において、第1電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴わない電力であってもよい。この構成によれば、第1電力をいわゆるグリーン電力とすることができる。
【0033】
上記の運転計画作成装置において、第2電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴う電力であってもよい。この構成によれば、第1電力をいわゆるブラック電力とすることができる。
【0034】
本発明のさらに別の形態は、第1エネルギー源から得た第1電力と、第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する水素製造システムを用いて水素を製造する方法であって、水素製造システムは、少なくとも第1電力を利用して水素を得る水素製造部を備え、第1エネルギー源から第1電力として水素製造部に供給される電力供給の予測値を指定することと、水素製造部の運用に関し、第1電力を示す項及び第2電力を示す項を含み、第1電力及び第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、水素製造部に要求される目的を定式化した目的関数を指定することと、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、水素製造部のための運転計画を得ることと、を有する。
【0035】
この水素を製造する方法によれば、水素製造部に提供される電力を所望の態様にするとともに水素システムに要求される目的を達成させることが可能な運転計画に基づいて稼働させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、受電装置に提供される電力を所望の態様にするとともに電力システムに要求される目的を達成させることが可能な運転計画を作成する運転計画作成装置、運転計画作成方法、運転計画作成プログラム及び水素を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、実施形態の運転計画作成装置によって得た運転計画が適用されるマイクログリッドを示す図である。
【
図2】
図2は、運転計画作成装置の機能的な構成を示す図である。
【
図3】
図3は、運転計画作成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の運転計画作成装置が実行する運転計画作成方法のフロー図である。
【
図5】
図5(a)は、需給計画策定問題のための記号の定義(全体)の意味を示す表である。
図5(b)は、需給計画策定問題のための記号の定義(系統)の意味を示す表である。
図5(c)は、需給計画策定問題のための記号の定義(電力需要)の意味を示す表である。
図5(d)は、需給計画策定問題のための記号の定義(水素需要)の意味を示す表である。
図5(e)は、需給計画策定問題のための記号の定義(太陽光発電)の意味を示す表である。
【
図6】
図6(a)は、需給計画策定問題のための記号の定義(蓄電池)の意味を示す表である。
図6(b)は、需給計画策定問題のための記号の定義(水電解装置)の意味を示す表である。
【
図7】
図7は、実施形態の運転計画作成装置によって得た運転計画が適用されるマイクログリッドの別の例示を示す図である。
【
図8】
図8は、計算例に用いた数値例をまとめて示す表である。
【
図9】
図9は、グリーン電力の需給バランスの推移を示すグラフである。
【
図10】
図10は、ブラック電力の需給バランスの推移を示すグラフである。
【
図11】
図11は、電力需要を賄うグリーン電力/ブラック電力の内訳の推移を示すグラフである。
【
図12】
図12は、蓄電池の充放電電力の推移を示すグラフである。
【
図13】
図13は、蓄電池の充電残量の推移を示すグラフである。
【
図14】
図14は、運転計画作成装置によって得た運転計画が適用されるシステムの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0039】
図1に、マイクログリッド2(電力システム、水素製造システム)の構成例を示す。マイクログリッド2は外部系統3に接続される。マイクログリッド2は、太陽光発電装置21(第1エネルギー源)、蓄電池22(受電装置)、水電解装置23(受電装置、水素製造装置)、電力需要24を含む。つまり、マイクログリッド2は、水素を製造可能な水素製造システムである。
【0040】
図1は、電力の流れをグリーン電力(第1電力)とブラック電力(第2電力)に分けて図示する。グリーン電力は発電に際してCO
2の排出を伴わない電力である。ブラック電力はCO
2の排出を伴う電力である。
【0041】
マイクログリッド2は、グリーン電力のためのグリーン電力線LGと、ブラック電力のためのブラック電力線LBと、を含む。グリーン電力線LGには、太陽光発電装置21に接続されたグリーン枝線LG1と、蓄電池22に接続されたグリーン枝線LG2と、水電解装置23に接続されたグリーン枝線LG3と、電力需要24に接続されたグリーン枝線LG4と、がそれぞれ接続されている。ブラック電力線LBには、外部系統3に接続されたブラック枝線LB1と、蓄電池22に接続されたブラック枝線LB2と、電力需要24に接続されたブラック枝線LB4と、がそれぞれ接続されている。
【0042】
グリーン電力の生成源は、太陽光発電装置21のみである。外部系統3(第2エネルギー源)から受電する電力は、ブラック電力として扱う。
【0043】
蓄電池22は、グリーン電力とブラック電力の両方を充電可能であると共に放電も可能である。電力需要24は、グリーン電力のみを充当してよいし、ブラック電力のみを充当してもよい。また、電力需要24は、グリーン電力及びブラック電力の両方を充当してもよい。水素を生成する水電解装置23は、グリーン電力のみを充当可能であるとする。
【0044】
マイクログリッド2の運転計画の最適化とは、第1に各時間帯においてマイクログリッド2に発生する電力の需要を満たすことをいう。さらに、マイクログリッド2の運転計画の最適化とは、第2に計画期間を通じて必要な量の水素を製造すること、という制約を満たしつつ、受電コストを最小化することをいう。マイクログリッド2の運転計画の最適化は、上記第1の目的及び第2の目的の少なくとも一方が達成されることにより満たされるものとしてよい。
【0045】
マイクログリッド2の構成は、
図1に示すものとは別に、多くの変形例が挙げられる。たとえば、外部系統3に接続されていない(離島のような)マイクログリッドであってもよい。外部系統3に接続されている場合であっても、受電電力がグリーン電力であることが保証されている場合、受電電力をグリーン電力とみなしてもよい。受電電力が一定の比率でグリーン電力とブラック電力が混在したものとしてもよい。例えば、総受電電力量のうち20%分の非化石証書を購入するなどしてグリーン電力:20%、ブラック電力:80%などとしてもよい。また、運転計画の最適化において、上記比率を決定してもよい。例えば、運転計画の最適化において、受電電力のうち何%をグリーン電力とするかを決定してもよい。
【0046】
再生可能エネルギー発電装置である太陽光発電装置21に代えて、風力発電装置や水力発電装置を適用してもよい。再生可能エネルギー発電装置は、これらの発電装置の組み合わせであってもよい。その他、グリーン電力の供給源としては、地熱発電装置やバイオマス発電装置、CO2フリーの燃料を消費して発電する発電機(燃料電池など)が例示できる。また、発電機の発電電力は、一定の比率でグリーン電力とブラック電力が混在すると設定していてもよい。
【0047】
ブラック電力の供給源としては、外部系統3が例示できる。さらに、ブラック電力の供給源としては、ガスタービンやガスエンジンなど化石燃料を消費する機器も例示できる。
【0048】
なお、実際にはCO2の排出がゼロではない電源に対して、炭素税を支払うなどをしてグリーン電力をみなすことも可能である。すなわち、発電に際して実際にCO2の排出がある又はないと、グリーン電力/ブラック電力の区別は厳密に等価である必要はない。
【0049】
蓄電池22は、その方式に特に制限はない。例えば、蓄電池22の例示として、一般型の二次電池である鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、全固体電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池(エジソン電池)、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、コバルトチタンリチウム二次電池が挙げられる。液循環型の二次電池として、レドックス・フロー電池、亜鉛・塩素電池及び亜鉛・臭素電池が挙げられる。メカニカルチャージ型の二次電池として、アルミニウム・空気電池、空気亜鉛電池及び空気・鉄電池が挙げられる。高温動作型の二次電池として、ナトリウム・硫黄電池(NAS電池)及びリチウム・硫化鉄電池が挙げられる。電子トラップ型の蓄電池として、半導体二次電池が挙げられる。
【0050】
また、蓄電池(二次電池)は、電力の充電及び/又は放電が可能な機器の総称である。蓄電池22の直流を交流に変換するPCSや、蓄電池22の残量を監視する装置も、蓄電池22に含まれるとする。蓄電池22は、同様な機能を持つコンデンサーやフライホイール、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)設備、揚水発電設備、電気を一時的に熱として蓄えて必要な時に熱から電気に再変換する蓄熱発電設備などのエネルギー貯蔵装置に置き換えることもできる。
【0051】
グリーン電力、ブラック電力の流れについてもバリエーションがある。たとえば蓄電池22へのブラック電力の充電を禁止してもよい。水電解装置23に一定の率までのブラック電力の充当を許容してもよい。
【0052】
水電解装置23に関してもその方式は限定されない。水電解装置23は、アルカリ型水電解装置であってもよい。水電解装置23は、高分子膜型水電解装置であってもよい。
【0053】
マイクログリッド2の運用目的に関しても受電コスト最小化のほか、水素製造量の最大化、水素製造の効率最大化、水素製造コストの最小化、受電量の最小化、エネルギー自給率の最大化、発電電力抑制量最小化などのバリエーションを考えてよい。
【0054】
[運転計画作成装置]
図2に、運転計画作成装置1(運転計画作成部)の構成例を示す。運転計画作成装置1は、マイクログリッド2が含むエネルギー機器(群)の最適な運転計画を求める。運転計画作成装置1が出力する運転計画によれば、水電解装置23に提供される電力を所望の態様にすることとして、水電解装置23にグリーン電力を供給し、ブラック電力を供給しないという態様を実現できる。さらに、運転計画作成装置1が出力する運転計画によれば、マイクログリッド2に所望の動作を実行させることとして、水電解装置23に所望量の水素を製造させるという態様を実現できる。
【0055】
なお、水電解装置23に提供される電力を所望の態様にするということには、水電解装置23にグリーン電力のみを供給する態様が含まれる。実施形態では、水電解装置23にグリーン電力のみを供給する態様を例に説明するが、これに限定されることはない。水電解装置23にグリーン電力とブラック電力との両方を供給する態様も含まれる。後者の場合には、水電解装置23に供給される電力のうち、グリーン電力が占める割合を所定の割合よりも大きくすることが含まれる。換言すると、後者の場合には、水電解装置23に供給される電力のうち、ブラック電力が占める割合を所定の割合よりも小さくすることが含まれる。このような別の例示については、変形例として適宜説明を加える。
【0056】
図2に示すように、マイクログリッド2は、機能的な構成要素として予測値指定部11と、制約条件指定部12と、目的関数指定部13と、機器特性データベース14と、最適化計算部15と、最適化結果出力部16と、を備える。
【0057】
予測値指定部11は、計画期間(典型的には直近1日、3日、7日など)の各時間帯(30分刻みなど)に対応する電力需要24の予測値や再生可能エネルギー発電電力予測値を指定できる。なお、電力需要の変動が小さい場合は、電力需要24の予測値を過去の1か月の平均値に設定する、といったように、何らかの固定値を予測値としてもよい。再生可能エネルギーも、地熱発電など変動が小さい場合は、何らかの固定値を予測値としてもよい。また、予測値は気象予報データや過去の実績データを基に、統計的手法や人工知能技術を用いて算出してもよい。このほか、マイクログリッド2が備える電力使用機器の運転計画等から電力需要24をあらかじめ計画できる場合、計画値を予測値としてもよい。
【0058】
なお、本実施形態でいう「指定」とは、運転計画作成装置1を使用するユーザーがキーボードなどの入力機器を用いて入力すること、記録媒体又は通信回線などを介して運転計画作成装置1を構成するコンピューター100が情報を受け入れること、さらに、コンピューター100が受け入れた情報を利用してコンピューター100がさらに情報を生成すること、を含む。
【0059】
制約条件指定部12および目的関数指定部13は、ファイルの読み込みやユーザーの画面上からの入力操作によって、制約条件及び目的関数を指定する。制約条件指定部12は、たとえば各エネルギー機器が発電する電力の上下限値又は蓄電池22の充電残量の上下限値などを指定できる。目的関数指定部13は、電力料金単価などを指定することで最適化における目的関数を間接的に指定できる。機器特性データベース14は、最適化対象とするエネルギー機器のモデル及び/又はエネルギー機器のパラメータを格納する。機器特性データベース14は、たとえば効率に関する数式やそのパラメータを格納する。
【0060】
最適化計算部15は、以下に例示されるパラメータをもとに、各種制約条件を満足させたうえで、所定の目的関数を最大化及び/又は最小化する需給計画を求める。需給計画とは、各時刻におけるエネルギー需要に対する各機器の負荷配分をいう。
予測値指定部11で指定された予測値。
制約条件指定部12で指定された制約条件。
目的関数指定部13で指定された目的関数。
機器特性データベース14に格納されたエネルギー機器モデルとそのパラメータ。
【0061】
最適化結果出力部16は、最適化計算部15で求めた需給計画を画面及び/又はファイルなど適当な方法で出力する。
【0062】
「予測値指定部11」「制約条件指定部12」「目的関数指定部13」で指定する情報は、運転計画作成装置1の適用対象やその状況により異なる。たとえば、エネルギー機器として発電機を含む場合、「制約条件指定部12」は、起動停止に関する制約や効率カーブに関する情報を指定してよい。「目的関数指定部13」は、燃料費の情報を指定してよい。このほか、上述の実施形態では電力料金単価を既知のものとして「目的関数指定部13」によって指定している。需給状況に応じて電力料金単価が変化する場合は、予測部にて電力料金単価を予測し、その結果を用いてもよい。
【0063】
運転計画作成装置1は、典型的には単一の計算機において実現される。しかし、運転計画作成装置1は、たとえば各構成要素を別の計算機上に配置するなど、その形態については自由度がある。計算機の構成の相違によって、運転計画作成装置1が奏する効果は変わらない。
【0064】
図2は運転計画作成装置1の機能図である。ただし、運転計画作成装置1が意図する機能(運転計画作成機能)のみを記載している。そのほかの機能、例えば、水電解装置23、蓄電池22の状態監視機能、運転指令機能、トレンドデータの保存機能、デマンド監視機能については省略している。運転計画作成装置1と各装置の通信は、アナログ信号やイーサネット(登録商標)などの有線通信でもよいし、無線通信でもよい。また、通信のプロトコルは、modbus/TCPやECHONET Lite(登録商標)でもよい。
【0065】
図3を参照して、運転計画作成装置1のハードウェア構成について説明する。コンピューター100は、CPU(Central Processing Unit)であるプロセッサ101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、外部通信部104と、操作部105と、出力部106とを有する。運転計画作成装置1は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1または複数のコンピューター100によって構成される。
【0066】
運転計画作成装置1が複数のコンピューター100によって構成される場合には、これらのコンピューター100はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの運転計画作成装置1が構築される。
【0067】
プロセッサ101は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶部102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶部103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶部103は、一般的に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。運転計画作成装置1を構成する各部の少なくとも一部は、補助記憶部103によって実現される。例えば、
図2に示すデータベースは、補助記憶部103によって実現されてもよい。運転計画作成装置1を構成する各部の少なくとも一部は、外部通信部104によって実現されてもよい。操作部105は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び、音声入力用マイクなどにより構成される。出力部106は、ディスプレイ及びプリンタなどにより構成される。例えば、運転計画作成装置1は、運転計画等をディスプレイ等に表示してもよい。
【0068】
補助記憶部103は、予め、運転計画作成プログラムP1及び処理に必要なデータを格納している。運転計画作成プログラムP1は、運転計画作成装置1の各機能要素をコンピューター100に実行させる。例えば、運転計画作成プログラムP1は、プロセッサ101又は主記憶部102によって読み込まれ、プロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、外部通信部104、操作部105、及び出力部106の少なくとも1つを動作させる。例えば、運転計画作成プログラムP1は、主記憶部102及び補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。
【0069】
運転計画作成プログラムP1は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。運転計画作成プログラムP1は、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0070】
[運転計画作成方法及び運転計画作成プログラム]
図4に、運転計画作成装置1の動作手順を示す。
図4に示すステップS1~S6の動作の一部又は全部は、
図3に示すコンピューター100の補助記憶部103に保存された運転計画作成プログラムP1によって実行される。運転計画作成プログラムP1がコンピューター100のプロセッサ101によって実行されることによって、
図2に示す機能構成が実現される。
【0071】
運転計画作成方法は、予測値を指定する動作(ステップS1)と、制約条件を指定する動作(ステップS2)と、目的関数を指定する動作(ステップS3)と、機器特性を読み込む動作(ステップS4)と、最適化計算の実行(ステップS5)と、最適化計算の結果を出力する動作(ステップS6)と、を含む。
【0072】
予測値を指定する動作(ステップS1)は、予測値指定部11が実行する。制約条件を指定する動作(ステップS2)は、制約条件指定部12が実行する。目的関数を指定する動作(ステップS3)は、目的関数指定部13が実行する。機器特性を読み込む動作(ステップS4)は、機器特性データベース14が実行する。最適化計算の実行(ステップS5)は、最適化計算部15が実行する。最適化計算の結果を出力する動作(ステップS6)は、最適化結果出力部16が実行する。各ステップにおける具体的な動作は、上述の運転計画作成装置1の説明において述べたとおりである。
【0073】
なお、ステップS1~ステップS4に示す処理は互いに独立している。つまり、ステップS1~ステップS4に示す処理は、かならずしも
図4のとおりの順に実行される必要はない。たとえばステップS1~ステップS4の処理は、ステップS1、S2、S3、S4の順に実行してもよい。ステップS1~ステップS4の処理は、ステップS4、S3、S2、S1の順に実行してもよい。ステップS1~ステップS4の処理は、並列に実施してもよい。
【0074】
ステップS1、S2、S3、S4の処理で得られた運転計画は、たとえばマイクログリッド2の翌日の運転計画として用いてもよい。運転計画は、当日の修正計画として用いてもよい。最新の予測値を反映して都度計画を修正することで、太陽光発電電力及び/又は電力の需要の予測誤差に対して頑健な運転が可能となる。
【0075】
運転計画作成装置1は、「ステップS6:最適化計算実行」における最適化問題の定式化を工夫することで従来技術の問題点を解決している。以降の説明で使用する記号は、
図5及び
図6に示す表のとおり定義する。
【0076】
初期充電残量は、グリーン電力のブラック電力の内訳が既知のとき、その内訳どおりに設定する。既知でない場合はたとえばすべてブラック電力とすることにより保守的な評価が可能となる。
【0077】
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)、
図5(d)、
図6(a)及び
図6(b)の各表に示す記号の定義のもとで、需給計画策定問題を以下のとおり定式化する。
【0078】
[制約条件]
式(1)、(2)は、需給バランスに関する。式(1)は、ブラック電力の需要と供給は一致することを定義する。式(2)は、グリーン電力の需要と供給は一致することを定義する。
【数1】
【数2】
【0079】
式(3)は、外部系統3に関する。式(3)は、外部系統3からは受電のみが可能であり、売電(逆潮流)はできないことを定義する。
【数3】
【0080】
式(4)は、電力需要24に関する。式(4)は、電力の需要がブラック電力とグリーン電力により賄われることを定義する。
【数4】
【0081】
式(5)は、水素需要に関する。式(5)は、水素需要が水電解装置23で生成される水素により賄われることを定義する。
【数5】
【0082】
なお、水素需要は、需要と供給とが必ずしも一致することを要しない。例えば、水素の供給が水素の需要を上回る場合には、水素を廃棄するという選択肢も取り得る。水素の需要と供給とが一致することを要しない場合には、式(5)は、式(5A)に置き換えることもできる。
【数6】
【0083】
式(6)~式(9)は、蓄電池22に関する。式(6)~式(9)は、充電と放電は同時にはできず、充電電力と放電電力は非負かつ規定の上限値以下であることを定義する。
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【0084】
式(10)及び式(11)は、充放電ダイナミクスに関する。
【数11】
【数12】
【0085】
式(12)は、充電残量の上限及び下限の制約に関する。
【数13】
【0086】
式(13)及び式(14)は、水電解装置23に関する。式(13)は、入力電力と水素生成速度との関係を定義する。式(14)は、停止中及び起動中の入力電力に関する。
【数14】
【数15】
【0087】
[目的関数]
式(15)は、目的関数である。式(15)は、受電コストの最小化を定義する。
【数16】
【0088】
以上の制約条件、目的関数の定義のもとで、マイクログリッド2の運転計画最適化問題を以下のとおり定義する。
【数17】
【0089】
最適化問題(PG)を解くことで、必要な電力需要24を満たしつつ、グリーン電力のみを用いつつ水素を生成し、かつ受電コストを最小に抑えた運用計画が得られる。最適化問題(PG)は混合整数計画問題とよばれる問題クラスに属しており、分枝限定法を用いて厳密な最適解を求めることができる。
【0090】
[制約条件および目的関数の変形例]
最適化問題の定式化自体にも豊富な変形例があり、たとえば設備の構成(機器の種類や数)に応じた変形のほか、運用上要求される各種制約条件として時間帯別の受電上限値や水電解装置23の最短・最長連続運転時間を考慮できるようにしてもよい。
【0091】
目的関数としてはコスト最小化のほか、水素製造量の最大化、受電量の最小化、排出CO2量最小化などのバリエーションを考えてよい。
【0092】
水素製造量を最大化する場合には式(5)で記述される等式制約条件を除外するかわりに、同式左辺(下記式)を目的関数とすればよい。ただしこの場合、最適化問題は最大化問題として解く必要がある。
【数18】
【0093】
つまり、目的関数指定部13は、少なくともグリーン電力を受けた結果、水電解装置23が出力する成果物の最大化をマイクログリッド2に要求される目的として設定する目的関数を指定してもよい。この構成によれば、マイクログリッド2に要求される目的として、水電解装置23が出力する水素製造量の最大化を設定することができる。
【0094】
受電量の最小化を目的とするには、式(15)においてコスト係数(c
k)を除いた下記式を目的関数とすればよい。
【数19】
【0095】
排出CO
2量の最小化を目的とするには、式(15)においてコスト係数(c
k)を適当なCO
2排出係数(g
k[t-CO
2・kWh])に変えた(下記式)を目的関数とすればよい。
【数20】
【0096】
また、発電機を含む構成の場合、目的関数には燃料費に関する項を含んでもよい。さらに、これら複数の目的関数の加重和を考えてもよい。また、発電機を含む構成において排出CO2量の最小化を考える場合、発電機と受電電力に対して異なるCO2排出係数を適用してもよい。
【0097】
[グリーン電力とブラック電力の区別の制約に関する変形例1]
グリーン電力とブラック電力の区別をより厳しくしてもよい。本実施形態では水電解装置23を運転する時刻に相応のグリーン電力が供給されていればよいものと仮定した。つまり、本実施形態では、ある時刻においてマイクログリッド2に供給される電力はグリーン電力のブラック電力の両方を含むことを許容している。これに対して、水電解装置23を運転する時刻において、マイクログリッド2の水電解装置23と電力需要24に供給される電力の全量をグリーン電力とする制約を設けてもよい。このことを実現するには、式(17)に示す0-1変数を導入し、式(18)及び式(19)に示す制約を追加すればよい。
【数21】
【数22】
【数23】
【0098】
式(18)は、供給電力の全量をグリーン電力とする場合(zk
Green=1)にはブラック電力から電力需要24への充当がゼロでなければならないことを示している。式(19)は水電解装置23を起動する時刻(zk
Ely=1)には、供給電力の全量をグリーン電力としなければならない(zk
Green=1)ことを示している。
【0099】
つまり、制約条件指定部12は、水電解装置23に供給する電力としてグリーン電力のみを設定する限定制約条件を指定してもよい。限定制約条件は、所定の時刻においてマイクログリッド2への供給電力をすべてグリーン電力とする場合に、マイクログリッド2、は外部系統3からブラック電力の提供を受けないとする条件(式(18))と、所定の時刻に含まれる水電解装置23が稼働する時刻において、水電解装置23は、グリーン電力のみを受けるとする条件(式(19))と、を含む。この構成によれば、水電解装置23に提供される電力の態様として、水電解装置23にグリーン電力のみを供給するという態様を実現できる。
【0100】
[グリーン電力とブラック電力の区別の制約に関する変形例2]
逆に、グリーン電力とブラック電力の区別に関する制約を若干緩めてもよい。たとえば水素の生成にブラック電力を用いることを許容しつつ、グリーン電力の比率あるいはグリーン電力の量を一定以上とする制約を設けてもよい。グリーン電力の比率あるいはグリーン電力の量自体を目的関数として最大化してもよい。このような条件のもとで最適化を行うことで、水素の単位生成量あたりのCO
2排出量を最小化あるいは一定値以下にすることができる。この場合、
図7に示すように、マイクログリッド2Aは、水電解装置23にブラック電力を供給するブラック枝線LB3をさらに備える。そして、式(1)~式(16)で表される最適化問題に関する式を以下の通り修正する。
【0101】
ブラック電力の需要と供給は一致することを定義する式(1)を、式(20)のように修正する。
【数24】
【0102】
水素需要は水電解装置23で生成される水素により賄われることを定義する式(5)を、式(21)のように修正する。
【数25】
【0103】
水電解装置23の入力電力と水素生成速度の関係を定義する式(13)を、式(22)及び式(23)のように修正する。
【数26】
【数27】
【0104】
水電解装置23の停止中・起動中の入力電力を定義する式(14)を、式(24)のように修正する。
【数28】
【0105】
なお、式(20)~式(24)に含まれる記号は、下記の意味を有する。
【表1】
【0106】
表1に示される変数に対して制約を設けることにより上述のバリエーションは実現できる。また、これらを目的関数として組み込むことによっても上述のバリエーションは実現できる。もちろん、水素生成に用いた電力の制約・最大/最小化のほか、グリーン水素の製造量とブラック水素の製造量に対する制約を考慮してもよい。さらに、グリーン水素の製造量の最大化と、ブラック水素の製造量の最小化を考慮してもよい。
【0107】
つまり、制約条件指定部12は、水電解装置23に供給する電力としてグリーン電力及びブラック電力を設定する許容制約条件を指定してもよい。この構成によれば、水電解装置23に提供される電力の態様として、水電解装置23にグリーン電力及びブラック電力を供給するという態様を実現できる。
【0108】
例えば、マイクログリッド2に供給される電力は、グリーン電力とブラック電力を含んでおり、水電解装置23にはグリーン電力とブラック電力とを供給可能であるとする。この場合において、水素製造量の最適化のみを運転計画作成の制約及び目的とすると、水電解装置23に供給される電力は、マイクログリッド2に供給された電力におけるグリーン電力とブラック電力との比率に応じた比率のグリーン電力とブラック電力とが供給される。例えば、マイクログリッド2に供給された電力におけるグリーン電力とブラック電力との比率に応じた比率が5:5である場合には、水電解装置23に供給されたグリーン電力とブラック電力との比率も5:5であると評価される。
【0109】
これに対して、本実施形態のように水電解装置23に供給される電力に関する制約を加えることによって、水電解装置23に供給される電力におけるグリーン電力とブラック電力との比率を、マイクログリッド2に供給された電力におけるグリーン電力とブラック電力との比率に左右されることなく、独立して設定することが可能である。
【0110】
例えば、マイクログリッド2に供給された電力におけるグリーン電力とブラック電力との比率に応じた比率が5:5である場合でも、水電解装置23に供給されたグリーン電力とブラック電力との比率を9:1に設定するようなことが可能である。
【0111】
[そのほかの制約条件及び目的関数に関する変形例]
蓄電池22に貯蔵される電力に関しても、グリーン電力の比率や量が一定以上となるように制約を設けてよく、また比率や量を目的関数として最大化してもよい。また、水電解装置23や蓄電池22が複数あってもよく、それらのうち一部を対象として上述の制約や最大化を考慮してもよい。これらはいずれもこれまで述べてきた定式化の応用により、容易に混合整数計画問題の枠内で定式化できる。
【0112】
[作用効果]
運転計画作成装置1は、太陽光発電装置21から得たグリーン電力と、太陽光発電装置21とは異なる外部系統3から得たブラック電力と、を消費するマイクログリッド2に適用される。マイクログリッド2は、水電解装置23と蓄電池22の少なくとも一方を含む。運転計画作成装置1は、太陽光発電装置21からグリーン電力としてマイクログリッド2に供給される電力供給の予測値を指定する予測値指定部11と、マイクログリッド2の運用に関し、グリーン電力を示す項及びブラック電力を示す項を含み、グリーン電力及びブラック電力を区別して扱う制約条件を指定する制約条件指定部12と、マイクログリッド2に要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部13と、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、マイクログリッド2のための運転計画を得る最適化計算部15と、を備える。
【0113】
運転計画作成方法は、太陽光発電装置21から得たグリーン電力と、太陽光発電装置21とは異なる外部系統3から得たブラック電力と、を消費するマイクログリッド2に適用される。マイクログリッド2は、水電解装置23と蓄電池22の少なくとも一方を含む。運転計画作成方法は、太陽光発電装置21からグリーン電力としてマイクログリッド2に供給される電力供給の予測値を指定すること(ステップS1)と、マイクログリッド2の運用に関し、グリーン電力を示す項及びブラック電力を示す項を含み、グリーン電力及びブラック電力を区別して扱う制約条件を指定すること(ステップS2)と、マイクログリッド2に要求される目的を定式化した目的関数を指定すること(ステップS3)と、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、マイクログリッド2のための運転計画を得ること(ステップS5)と、を有する。
【0114】
運転計画作成プログラムP1は、太陽光発電装置21から得たグリーン電力と、太陽光発電装置21とは異なる外部系統3から得たブラック電力と、を消費するマイクログリッド2に適用される。マイクログリッド2は、水電解装置23と蓄電池22の少なくとも一方を含む。運転計画作成プログラムP1は、太陽光発電装置21からグリーン電力としてマイクログリッド2に供給される電力供給の予測値を指定することと、マイクログリッド2の運用に関し、グリーン電力を示す項及びブラック電力を示す項を含み、グリーン電力及びブラック電力を区別して扱う制約条件を指定することと、マイクログリッド2に要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部13と、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、マイクログリッド2のための運転計画を得ることと、をコンピューター100に実行させる。
【0115】
運転計画作成装置1、運転計画作成方法及び運転計画作成プログラムP1は、マイクログリッド2の運用に関し、グリーン電力を示す項及びブラック電力を示す項を含み、グリーン電力及びブラック電力を区別して扱う制約条件を指定する。そして、電力供給の予測値、制約条件及びマイクログリッド2に要求される目的を定式化した目的関数を解く。その結果、水電解装置23に提供される電力を所望の態様にするとともにマイクログリッド2に要求される目的を達成させることが可能な運転計画を得ることができる。
【0116】
水素を製造する方法は、太陽光発電装置21から得たグリーン電力と、太陽光発電装置21とは異なる外部系統3から得たブラック電力と、を消費する水素製造システムを用いて水素を製造する。水素製造システムは、少なくともグリーン電力を利用して水素を得る水電解装置23を備える。水素を製造する方法は、太陽光発電装置21からグリーン電力としてマイクログリッド2に供給される電力供給の予測値を指定すること(ステップS1)と、マイクログリッド2の運用に関し、グリーン電力を示す項及びブラック電力を示す項を含み、グリーン電力及びブラック電力を区別して扱う制約条件を指定すること(ステップS2)と、マイクログリッド2に要求される目的を定式化した目的関数を指定すること(ステップS3)と、電力供給の予測値、制約条件及び目的関数により定義される問題を解くことによって、マイクログリッド2のための運転計画を得ること(ステップS5)と、を有する。
【0117】
この水素を製造する方法によれば、水電解装置23と蓄電池22の少なくとも一方に提供される電力を所望の態様にするとともに水素製造システムに要求される目的を達成させることが可能な運転計画に基づいて稼働させることができる。
【0118】
制約条件指定部12は、制約条件である第1制約条件を指定する。第1制約条件は、水電解装置23と蓄電池22の少なくとも一方に供給する電力としてグリーン電力のみを設定してもよい。この構成によれば、水電解装置23に提供される電力の態様として、水電解装置23にグリーン電力のみを供給するという態様を実現できる。
【0119】
制約条件指定部12は、制約条件である第2制約条件を指定する。第2制約条件は、水電解装置23と蓄電池22の少なくとも一方に供給する電力の合計値に対するグリーン電力の割合を指定してもよい。この構成によれば、水電解装置23に提供される電力の態様として、水電解装置23に所望の割合のグリーン電力を供給するという態様を実現できる。
【0120】
水電解装置23は、グリーン電力を消費する。制約条件指定部12は、水電解装置23が消費する電力の合計値に対するグリーン電力の消費割合又は水電解装置23が消費するグリーン電力の消費量を指定してもよい。この構成によれば、グリーン電力の消費割合又はグリーン電力の消費量を所望の値とする運転計画を得ることができる。
【0121】
水電解装置23は、グリーン電力を消費する。目的関数指定部13は、水電解装置23が消費する電力の合計値に対するグリーン電力の消費割合又は水電解装置23が消費するグリーン電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数を、目的関数として設定してもよい。この構成によれば、グリーン電力の消費割合又はグリーン電力の消費量を所望の態様とする目的関数を得ることができる。
【0122】
水電解装置23は、グリーン電力を消費する。最適化計算部15は、水電解装置23が消費する電力の合計値に対するグリーン電力の消費割合又は水電解装置23が消費するグリーン電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数について、消費割合又は消費量を最大化する問題を最適化問題として解いてもよい。この構成によれば、グリーン電力の消費割合又はグリーン電力の消費量を最大化する運転計画を得ることができる。
【0123】
蓄電池22は、グリーン電力を貯蔵する。制約条件指定部12は、蓄電池22が貯蔵する電力の合計値に対するグリーン電力の貯蔵割合又は蓄電池22が貯蔵するグリーン電力の貯蔵量を指定してもよい。この構成によれば、グリーン電力の貯蔵割合又はグリーン電力の貯蔵量を所望の値とする運転計画を得ることができる。
【0124】
蓄電池22は、グリーン電力を貯蔵する。目的関数指定部13は、蓄電池22が貯蔵する電力の合計値に対するグリーン電力の貯蔵割合又は蓄電池22が貯蔵するグリーン電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数を、目的関数として設定してもよい。この構成によれば、グリーン電力の貯蔵割合又はグリーン電力の貯蔵量を所望の態様とする目的関数を得ることができる。
【0125】
蓄電池22は、グリーン電力を貯蔵する。最適化計算部15は、蓄電池22が貯蔵する電力の合計値に対するグリーン電力の貯蔵割合又は蓄電池22が貯蔵するグリーン電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数について、貯蔵割合又は貯蔵量を最大化する問題を最適化問題として解いてもよい。この構成によれば、グリーン電力の貯蔵割合又はグリーン電力の貯蔵量を最大化する運転計画を得ることができる。
【0126】
目的関数指定部13は、目的関数である第1目的関数を指定する。第1目的関数は、マイクログリッド2の電力需要を満たすために外部系統3から得るブラック電力の最小化をマイクログリッド2に要求される目的としてよい。この構成によれば、マイクログリッド2の電力需要を満たすために外部系統3から得るブラック電力を最小化する運転計画を得ることができる。
【0127】
目的関数指定部13は、目的関数である第2目的関数を指定する。第2目的関数は、少なくともグリーン電力を受けた結果、水電解装置23が出力する成果物の最大化をマイクログリッド2に要求される目的としてよい。この構成によれば、水電解装置23が出力する水素の量を最大化する運転計画を得ることができる。
【0128】
目的関数指定部13は、目的関数である第3目的関数を指定する。第3目的関数は、マイクログリッド2を運用するコストの最小化、マイクログリッド2の運用による利益の最大化及びマイクログリッド2の運用により排出される二酸化炭素の量の最小化のうち少なくとも一つを目的としてよい。この構成によれば、マイクログリッド2を運用するコストの最小化、マイクログリッド2の運用による利益の最大化及びマイクログリッド2の運用により排出される二酸化炭素の量の最小化のうち少なくとも一つを達成する運転計画を得ることができる。
【0129】
目的関数指定部13は、グリーン電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を第1の数式により設定する。ブラック電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を第1の数式とは異なる第2の数式により設定してよい。この構成によっても、マイクログリッド2に要求される目的を達成させることが可能な運転計画を得ることができる。
【0130】
太陽光発電装置21は、再生可能エネルギーに基づくグリーン電力を出力する。この構成によれば、グリーン電力をいわゆるグリーン電力とすることができる。
【0131】
マイクログリッド2は、受電装置として水電解装置を含む。この構成によれば、マイクログリッド2は水素を製造することができる。
【0132】
マイクログリッド2は、受電装置として蓄電池を含む。この構成によれば、マイクログリッド2は電力を蓄える機能を奏することができる。
【0133】
運転計画作成装置1は、運転計画に基づいて、運転計画を表示させるための表示情報を生成する最適化結果出力部16をさらに備える。最適化結果出力部16は、水電解装置23に供給される電力について、グリーン電力とブラック電力とが区別可能な態様で示す。この構成によれば、グリーン電力とブラック電力とが区別可能な態様で運転計画を提示することができる。
【0134】
第1電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴わない電力でる。この構成によれば、第1電力をいわゆるグリーン電力とすることができる。
【0135】
第2電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴う電力である。この構成によれば、第2電力をいわゆるブラック電力とすることができる。
【0136】
[計算例]
実施形態の運転計画作成装置1、運転計画作成方法および運転計画作成プログラムの効果を示すものとして、
図8に示した条件のもとで計算された運転計画を、
図9~
図13に示す。なお、計算例において、水電解装置23は12:00以降のみ起動可能としている。
図9はグリーン電力の需給バランスの推移を示している。
図9に示すように、水電解装置23が稼働している時間帯では、水素の製造に必要なグリーン電力が水電解装置23に充当されていることがわかる。計算例の条件において、所与の水素製造量を達成しようとすると、(水電解装置23が使用可能となる)12:00以降の太陽光発電電力だけでは不足する。これに対して、午前中に太陽光発電電力を蓄電池22に充電しておき、夕方以降(18:00~)に蓄電池22からの放電電力を利用して水電解装置23を運転する計画となっている。
【0137】
図10はブラック電力の需給バランスの推移を示している。太陽光発電装置21の発電電力のない夜間帯の電力の需要を満たすため、外部系統3からの受電というかたちでブラック電力を利用していることがわかる。
【0138】
図11は各時間帯におけるマイクログリッド2の電力の需要を賄うグリーン電力とブラック電力の内訳であり、これまでの説明どおり、日中はグリーン電力が中心に充当され、夜間はブラック電力が中心に充当されていることがわかる。
【0139】
図12と
図13はそれぞれ蓄電池22の充放電電力と充電残量の推移である。水電解装置23を夕方以降にグリーン電力を用いて運転するため、午前の段階でまずブラック電力を放電し、代わりに太陽光発電装置21で発電したグリーン電力を充電する計画となっていることがわかる。以上で述べた運転計画の傾向は、水電解装置23に充当する電力をすべてグリーン電力とする目的に対し妥当なものである。
【0140】
[変形例]
以上、本開示の運転計画作成装置1、運転計画作成方法及び運転計画作成プログラムの例示について説明した。本開示の運転計画作成装置1、運転計画作成方法及び運転計画作成プログラムは、上記の例示に限定されることなく様々な形態で実施してよい。
【0141】
実施形態の運転計画作成装置1は、受電装置の一例である水電解装置23のための運転計画を作成するものとして説明した。受電装置は、水電解装置23に限定されない。カーボンフリーそのものに付加価値があるため、グリーン電力のみを使って装置を稼働させたいというニーズは多い。例えば、受電装置は電気ボイラでもよい。受電装置はスクラップ鉄を融解する電気炉でもよい。受電装置は鉄鉱石から粗鉄を作る電解・電気精錬装置でもよい。受電装置はその他のメタネーションなどの化学プロセス装置や、圧延などの塑性加工装置、食品加工装置、蒸留装置、表面熱処理などの熱処理炉でもよい。
【0142】
運転計画作成装置1が作成する運転計画の適用先は、電力を消費する装置であれば、水電解装置23以外でもよい。運転計画の適用先は、例えば、任意の時間に実行・待機が可能な情報処理装置で、電力を消費させたい時間帯に演算処理を集中させる(電力を消費させたくない場合は待機させる)情報処理装置でもよい。情報処理装置は、ブロックチェーンのPoW(Proof of Work)を行うコンピューターでもよい。
【0143】
実施形態では蓄電池22と水電解装置23はそれぞれ1つとした。蓄電池22は、複数であってもよいし、水電解装置23も複数であってもよい。混合整数計画問題(PG)を複数台数に拡張することは容易である。また、蓄電池22のみ、水電解装置23のみという場合でも、運転計画作成装置1、運転計画作成方法および運転計画作成プログラムを適用可能である。実施形態では、蓄電池22と水電解装置23の運転計画を同時に作成した。しかし、蓄電池22と水電解装置23の運転計画を同時に作成する必要はない。例えば、蓄電池22及び水電解装置23のうち、一方の運転計画は運転計画作成装置1以外の別のシステムによって作成され、他方の運転計画は上記の数理計画法によって運転計画作成装置1が作成してもよい。
【0144】
実施形態では蓄電池22と水電解装置23はそれぞれ1つとした。蓄電池22は、複数であってもよいし、水電解装置23も複数であってもよい。混合整数計画問題(PG)を複数台数に拡張することは容易である。また、蓄電池22のみ、水電解装置23のみという場合でも、本開示の運転計画作成装置1、運転計画作成方法および運転計画作成プログラムを適用可能である。
【0145】
実施形態では
図1のように1つのマイクログリッド2内に再生可能エネルギー発電装置の例示である太陽光発電装置21、蓄電池22、水電解装置23がすべて存在した。しかし、運転計画作成装置1、運転計画作成方法及び運転計画作成プログラムによって得られる運転計画が適用されるシステムは、マイクログリッド2に限定されない。例えば、運転計画は、
図14に示すように、各設備が外部系統3を介した仮想的な接続をした電力システムにも適用できる。つまり、
図14に示すような接続形態のデバイス群を仮想的なマイクログリッド2Bとみなして、運転計画作成装置1、運転計画作成方法及び運転計画作成プログラムによって得られる運転計画を適用してよい。電力システム1Bは、発電事業者Aが所有する太陽光発電システム21Bと、事業者Bが所有する水電解装置23Bと、事業者Cが所有する蓄電池22Bと、を含む。これらの太陽光発電システム21B、水電解装置23B及び蓄電池22Bは、外部系統3を介して接続されている。つまり、各システムを所有する事業者は異なっていてもよい。このとき、各事業者間の契約は、電力市場を介した取引でも、相対取引でもよい。
【0146】
実施形態では数理計画問題を混合整数計画問題(PG)として定式化したが、特にこれに限定しない。例えば非線形計画問題として定式化してもよい。非線形計画問題を解くアルゴリズムとして、例えば、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)や粒子群最適化(Particle Swarm Optimization:PSO)を用いてもよい。非線形計画問題は大域的最適解を求めることが難しいことが知られているため、準最適解(近似解)を求める形態でもよい。
【0147】
実施形態では、水素の製造流量と電力消費量の関係式は1次式であったが、より高次の関係式でもよいし、非線形マップでもよい。
【0148】
実施形態では例えば水素高圧タンクなどの水素貯蔵については考慮しなかったが、タンク容量を考慮して、タンクの上下限制約のもと、運転計画を作成することも可能である。
【0149】
計算資源は現地にある必要はなく、クラウドでもよい。
【0150】
作成した運転計画は、運転計画のすべてもしくは一部を、作業員に対してモニター表示やランプの点灯、アラーム音、メール通知等で指示・助言してもよい。運転計画作成装置1が運転計画をもとに、該当時刻になった時に自動的に水電解装置23の運転や蓄電池22の充放電を実施してもよい。いずれか一方の装置の運転のみを行ってもよい。また運転計画の用途はこれら機器の運転操作に限られず、電力市場への入札又は電力の自己託送の申請、電力のひっ迫状況を回避するためのデマンドレスポンスの指令や応答判断等に使用されてもよい。水素製造量を管理する別のシステムに水素製造量のスケジュールを伝達してもよい。
【0151】
実施形態では外部とエネルギーを授受するシステムを便宜的に「マイクログリッド2」と呼んでいるが、その態様はかならずしも単一の工場・事業場に限定されない。たとえば複数の工場を束ねた工場団地でもよい。
【0152】
[付記]
運転計画作成装置、運転計画作成方法及び運転計画作成プログラムは、以下の構成を含む。
【0153】
本開示は、[1]「第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成装置であって、
前記電力システムは、受電装置を含み、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記電力システムに供給される電力供給の予測値を指定する予測値指定部と、
前記電力システムの運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定する制約条件指定部と、
前記電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部と、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記電力システムのための運転計画を得る最適化計算部と、を備える、運転計画作成装置。」である。
【0154】
本開示は、[2]「前記制約条件指定部は、前記制約条件である第1制約条件を指定し、
前記第1制約条件は、前記受電装置に供給する電力として前記第1電力のみを設定する、上記[1]に記載の運転計画作成装置。」である。
【0155】
本開示は、[3]「前記制約条件指定部は、前記制約条件である第2制約条件を指定し、
前記第2制約条件は、前記受電装置に供給する電力の合計値に対する前記第1電力の割合を指定する、上記[1]に記載の運転計画作成装置。」である。
【0156】
本開示は、[4]「前記受電装置は、前記第1電力を消費するものであり、
前記制約条件指定部は、前記受電装置が消費する電力の合計値に対する前記第1電力の消費割合又は前記受電装置が消費する前記第1電力の消費量を指定する、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0157】
本開示は、[5]「前記受電装置は、前記第1電力を消費するものであり、
前記目的関数指定部は、前記受電装置が消費する電力の合計値に対する前記第1電力の消費割合又は前記受電装置が消費する前記第1電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数を、前記目的関数として設定する、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0158】
本開示は、[6]「前記受電装置は、前記第1電力を消費するものであり、
前記最適化計算部は、前記受電装置が消費する電力の合計値に対する前記第1電力の消費割合又は前記受電装置が消費する前記第1電力の消費量のうち少なくとも一方を含む関数について、前記消費割合又は前記消費量を最大化する問題を最適化問題として解く、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0159】
本開示は、[7]「前記受電装置は、前記第1電力を貯蔵するものであり、
前記制約条件指定部は、前記受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する前記第1電力の貯蔵割合又は前記受電装置が貯蔵する前記第1電力の貯蔵量を指定する、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0160】
本開示は、[8]「前記受電装置は、前記第1電力を貯蔵するものであり、
前記目的関数指定部は、前記受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する前記第1電力の貯蔵割合又は前記受電装置が貯蔵する前記第1電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数を、前記目的関数として設定する、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0161】
本開示は、[9]「前記受電装置は、前記第1電力を貯蔵するものであり、
前記最適化計算部は、前記受電装置が貯蔵する電力の合計値に対する前記第1電力の貯蔵割合又は前記受電装置が貯蔵する前記第1電力の貯蔵量のうち少なくとも一方を含む関数について、前記貯蔵割合又は前記貯蔵量を最大化する問題を最適化問題として解く、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0162】
本開示は、[10]「前記目的関数指定部は、前記目的関数である第1目的関数を指定し、
前記第1目的関数は、前記電力システムの電力需要を満たすために前記第2エネルギー源から得る前記第2電力の最小化を前記電力システムに要求される目的とする、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0163】
本開示は、[11]「前記目的関数指定部は、前記目的関数である第2目的関数を指定し、
前記第2目的関数は、少なくとも前記第1電力を受けた結果、前記受電装置が出力する成果物の最大化を前記電力システムに要求される目的とする、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0164】
本開示は、[12]「前記目的関数指定部は、前記目的関数である第3目的関数を指定し、
前記第3目的関数は、前記電力システムを運用するコストの最小化、前記電力システムの運用による利益の最大化及び前記電力システムの運用により排出される二酸化炭素の量の最小化のうち少なくとも一つを目的とする、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0165】
本開示は、[13]「前記目的関数指定部は、前記第1電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を第1の数式により設定し、前記第2電力の発生に伴う二酸化炭素の排出量を前記第1の数式とは異なる第2の数式により設定する、上記[1]~[12]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0166】
本開示は、[14]「前記第1エネルギー源は、再生可能エネルギーに基づく前記第1電力を出力する、上記[1]~[13]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0167】
本開示は、[15]「前記電力システムは、前記受電装置として水電解装置を含む、上記[1]~[14]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0168】
本開示は、[16]「前記電力システムは、前記受電装置として蓄電池を含む、上記[1]~[15]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0169】
本開示は、[17]「前記運転計画に基づいて、前記運転計画を表示させるための表示情報を生成する最適化結果出力部をさらに備え、
前記最適化結果出力部は、前記受電装置に供給される電力について、前記第1電力と前記第2電力とが区別可能な態様で示す、上記[1]~[16]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0170】
本開示は、[18]「前記第1電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴わない電力である、上記[1]~[17]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0171】
本開示は、[19]「前記第2電力は、発電に際して二酸化炭素の排出を伴う電力である、上記[1]~[18]の何れか一項に記載の運転計画作成装置。」である。
【0172】
本開示は、[20]「第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成方法であって、
前記電力システムは、受電装置を含み、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記電力システムに供給される電力供給の予測値を指定することと、
前記電力システムの運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、
前記電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定することと、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記電力システムのための運転計画を得ることと、を有する、運転計画作成方法。」である。
【0173】
本開示は、[21]「第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する電力システムに適用される運転計画作成プログラムであって、
前記電力システムは、受電装置を含み、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記電力システムに供給される電力供給の予測値を指定することと、
前記電力システムの運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、
前記電力システムに要求される目的を定式化した目的関数を指定する目的関数指定部と、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記電力システムのための運転計画を得ることと、をコンピューターに実行させる、運転計画作成プログラム。」である。
【0174】
本開示は、[22]「第1エネルギー源から得た第1電力と、前記第1エネルギー源とは異なる第2エネルギー源から得た第2電力と、を消費する水素製造システムを用いて水素を製造する方法であって、
前記水素製造システムは、少なくとも前記第1電力を利用して水素を得る水素製造部を備え、
前記第1エネルギー源から前記第1電力として前記水素製造部に供給される電力供給の予測値を指定することと、
前記水素製造部の運用に関し、前記第1電力を示す項及び前記第2電力を示す項を含み、前記第1電力及び前記第2電力を区別して扱う制約条件を指定することと、
前記水素製造部に要求される目的を定式化した目的関数を指定することと、
前記電力供給の予測値、前記制約条件及び前記目的関数により定義される問題を解くことによって、前記水素製造部のための運転計画を得ることと、を有する、水素を製造する方法。」である。
【0175】
[その他]
本開示の運転計画作成装置1、運転計画作成方法および運転計画作成プログラムによれば、CO2排出量削減のため、化石燃料の代替として再生可能エネルギーに由来する水素・水素化物を燃料として使用する技術開発が推進される。本開示の運転計画作成装置1、運転計画作成方法および運転計画作成プログラムを適用することにより、水素生成時に発生しうる本来不要なCO2排出を抑制できる。本開示の運転計画作成装置1、運転計画作成方法および運転計画作成プログラムは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13に貢献する。
・目標13:「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。」
【符号の説明】
【0176】
1 運転計画作成装置(運転計画作成部)
2,2A マイクログリッド(電力システム、水素製造システム)
3 外部系統(第2エネルギー源)
11 予測値指定部
12 制約条件指定部
13 目的関数指定部
15 最適化計算部
21 太陽光発電装置(第1エネルギー源)
22 蓄電池(受電装置)
23 水電解装置(受電装置、水素製造部)
24 電力需要
100 コンピューター
P1 運転計画作成プログラム