(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154255
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】蓄電装置、及び、蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20241023BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241023BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20241023BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20241023BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241023BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20241023BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M4/02 Z
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067990
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB04
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC10
5H028CC19
5H028HH01
5H028HH03
5H028HH06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ12
5H029BJ17
5H029CJ03
5H029HJ01
5H029HJ03
5H029HJ08
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA03
5H050GA03
5H050HA01
5H050HA03
5H050HA07
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】負極活物質層の周縁部の厚みが厚くなるのを抑制できる蓄電装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニット100を備え、複数の電極ユニット100のそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔110の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔110の他方の面に形成された負極活物質層130とを有し、負極活物質層130は、積層方向から見て正極活物質層120よりもサイズが大きく、負極活物質層130は、周縁部131が、中央部132よりも、集電箔110の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、
前記負極活物質層は、前記積層方向から見て前記正極活物質層よりもサイズが大きく、
前記負極活物質層は、周縁部が、中央部よりも、前記集電箔の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低い
蓄電装置。
【請求項2】
前記周縁部は、前記積層方向から見て、前記負極活物質層のうちの前記正極活物質層から突出する部位であり、
前記負極活物質層は、前記周縁部の内側で前記周縁部と隣り合う位置に配置される内側部を有し、
前記周縁部は、前記内側部よりも、前記活物質の質量が少なく、かつ、前記活物質の密度が低い
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記負極活物質層は、前記積層方向と直交し、かつ、互いに直交する2方向の端部における前記周縁部が、前記中央部よりも、前記活物質の質量が少なく、かつ、前記活物質の密度が低い
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置の製造方法であって、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、
前記蓄電装置の製造方法は、
前記負極活物質層を、前記積層方向から見て前記正極活物質層よりもサイズが大きく、かつ、周縁部が、中央部よりも、前記集電箔の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なくなるように前記集電箔に配置することと、
前記負極活物質層及び前記正極活物質層を同時にプレスすることで、前記負極活物質層を、前記周縁部が、前記中央部よりも、活物質の密度が低くなるように形成することと、を含む
蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
前記負極活物質層を前記集電箔に配置する際には、前記負極活物質層を前記集電箔の前記他方の面に配置した後に、前記正極活物質層を前記集電箔の前記一方の面に配置する
請求項4に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置、及び、蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集電箔の両面に活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)が形成された電極ユニットを備える蓄電装置が知られている。例えば、特許文献1には、複合集電体の一方の面上に正極活物質層を有し、他方の面上に負極活物質層を有するバイポーラ電極ユニットを備えるシート電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のような構成の蓄電装置では、一般的に、集電箔に形成された活物質層のうち負極活物質層の方が正極活物質層よりもサイズが大きい。このため、集電箔の一方の面に正極活物質層を形成し、集電箔の他方の面に負極活物質層を形成した後にプレスすると、負極活物質層の周縁部の厚みが厚くなってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、負極活物質層の周縁部の厚みが厚くなるのを抑制できる蓄電装置、及び、蓄電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記負極活物質層は、前記積層方向から見て前記正極活物質層よりもサイズが大きく、前記負極活物質層は、周縁部が、中央部よりも、前記集電箔の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低い。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置の製造方法であって、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記蓄電装置の製造方法は、前記負極活物質層を、前記積層方向から見て前記正極活物質層よりもサイズが大きく、かつ、周縁部が、中央部よりも、前記集電箔の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なくなるように前記集電箔に配置することと、前記負極活物質層及び前記正極活物質層を同時にプレスすることで、前記負極活物質層を、前記周縁部が、前記中央部よりも、活物質の密度が低くなるように形成することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明における蓄電装置等によれば、負極活物質層の周縁部の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る蓄電装置が有する電極ユニットの構成を示す斜視図及び断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における製造工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、蓄電パックの構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、蓄電パックの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記負極活物質層は、前記積層方向から見て前記正極活物質層よりもサイズが大きく、前記負極活物質層は、周縁部が、中央部よりも、前記集電箔の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低い。
【0011】
これによれば、蓄電装置において、集電箔に形成された負極活物質層の周縁部の活物質の質量(集電箔の表面における単位面積あたりの活物質の質量)は、負極活物質層の中央部の活物質の質量よりも少ない。さらに、負極活物質層の周縁部の活物質の密度は、負極活物質層の中央部の活物質の密度よりも低い。つまり、正極活物質層よりもサイズが大きい負極活物質層の周縁部に配置する活物質量を中央部に配置する活物質量よりも少なくして負極活物質層をプレスすることで、負極活物質層の周縁部において、中央部よりも、活物質の質量が少なくなり、かつ、活物質の密度が低くなる。これにより、負極活物質層の周縁部の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0012】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記周縁部は、前記積層方向から見て、前記負極活物質層のうちの前記正極活物質層から突出する部位であり、前記負極活物質層は、前記周縁部の内側で前記周縁部と隣り合う位置に配置される内側部を有し、前記周縁部は、前記内側部よりも、前記活物質の質量が少なく、かつ、前記活物質の密度が低い、としてもよい。
【0013】
負極活物質層のうちの正極活物質層から突出する部位(はみ出た部分)が、厚みが厚くなることが多い。このため、負極活物質層において、正極活物質層から突出する周縁部の活物質の質量を、周縁部の内側の内側部の活物質の質量よりも少なくし、かつ、周縁部の活物質の密度を内側部の活物質の密度よりも低くする。これにより、負極活物質層において、正極活物質層から突出する周縁部(はみ出た部分)の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0014】
(3)上記(1)または(2)に記載の蓄電装置において、前記負極活物質層は、前記積層方向と直交し、かつ、互いに直交する2方向の端部における前記周縁部が、前記中央部よりも、前記活物質の質量が少なく、かつ、前記活物質の密度が低い、としてもよい。
【0015】
これによれば、負極活物質層のうちの2方向の端部における周縁部の活物質の質量を、中央部の活物質の質量よりも少なくし、かつ、周縁部の活物質の密度を、中央部の活物質の密度よりも低くする。これにより、負極活物質層の当該2方向の端部において、周縁部の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0016】
(4)本発明の一態様に係る蓄電装置の製造方法は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置の製造方法であって、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記蓄電装置の製造方法は、前記負極活物質層を、前記積層方向から見て前記正極活物質層よりもサイズが大きく、かつ、周縁部が、中央部よりも、前記集電箔の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なくなるように前記集電箔に配置することと、前記負極活物質層及び前記正極活物質層を同時にプレスすることで、前記負極活物質層を、前記周縁部が、前記中央部よりも、活物質の密度が低くなるように形成することと、を含む。
【0017】
これによれば、蓄電装置の製造方法において、負極活物質層を、周縁部が中央部よりも活物質の質量が少なくなるように集電箔に配置し、負極活物質層及び正極活物質層を同時にプレスして、負極活物質層を、周縁部が中央部よりも活物質の密度が低くなるように形成する。これにより、負極活物質層の周縁部の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0018】
(5)上記(4)に記載の蓄電装置の製造方法において、前記負極活物質層を前記集電箔に配置する際には、前記負極活物質層を前記集電箔の前記他方の面に配置した後に、前記正極活物質層を前記集電箔の前記一方の面に配置する、としてもよい。
【0019】
正極活物質層よりもサイズが大きい負極活物質層を集電箔に配置する際に、正極活物質層が集電箔に配置されていないと、負極活物質層のうちの正極活物質層からはみ出た部分には正極活物質層の受けがないことになる。この場合、負極活物質層を集電箔に配置する際に、当該はみ出た部分の量が安定しない(多くなる)おそれがある。このため、負極活物質層を集電箔に配置した後に、正極活物質層を集電箔に配置する。これにより、より安定した状態で、負極活物質層を集電箔に配置できるため、負極活物質層の周縁部における負極活物質の配置量の調整が容易になる。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置及びその製造方法について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0021】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の長手方向、または、蓄電装置の一対の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の一対の長側面の対向方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の厚み方向、複数の電極ユニットの積層方向、集電箔及び活物質層の積層方向、一対のエンド部材の並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0022】
以下の説明において、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。単にX軸方向という場合は、X軸プラス方向及びX軸マイナス方向の双方向またはいずれか一方の方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行であるとは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0023】
(実施の形態)
[1 蓄電装置10の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置10の全般的な説明を行う。
図1は、本実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る蓄電装置10の内部構成を示す断面図である。具体的には、
図2は、
図1の蓄電装置10を、II-II線を通るYZ平面で切断した場合の断面図である。
図2は、蓄電装置10が備える各構成要素を示している。
図3は、本実施の形態に係る蓄電装置10が有する電極ユニット100の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、
図3の(a)は、電極ユニット100の外観を示す斜視図である。
図3の(b)は、
図3の(a)の電極ユニット100を、IIIb-IIIb線を通るYZ平面で切断した場合の構成を示す断面図である。
図3では、説明の便宜のため、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0024】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置である。本実施の形態における蓄電装置10は、略直方体形状を有している。具体的には、蓄電装置10は、バイポーラ電池である。蓄電装置10は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0025】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置10は、複数の電極ユニット100と、エンドユニット101及び102と、複数のセパレータ140と、一対のエンド部材300と、を備えている。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102のそれぞれは、平面視で矩形状の板状部位であり、Z軸方向に積層されている。本実施の形態での平面視とは、積層方向(Z軸方向)から見た場合のことをいう。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102が積層される方向(Z軸方向)を、積層方向とも称する。セパレータ140は、複数の電極ユニット100、エンドユニット101及び102のそれぞれの間に配置される。一対のエンド部材300は、積層方向(Z軸方向)において、複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102の両側に配置される。本実施の形態では、エンドユニット101とエンドユニット102との間に、2つの電極ユニット100が積層方向に積層されているが、電極ユニット100が積層される数は特に限定されない。電極ユニット100、エンドユニット101及びエンドユニット102等の平面視の形状も特に限定されない。
【0026】
[1.1 電極ユニット100の説明]
以下に、
図3も用いて、電極ユニット100の構成について、詳細に説明する。電極ユニット100は、1枚の集電箔の両面に活物質層が形成された1単位のユニットである。複数の電極ユニット100のそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔110の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔110の他方の面に形成された負極活物質層130と、シール部210と、を有している。本実施の形態では、電極ユニット100の厚み(積層方向の厚み)は、135μm~190μm程度である。
【0027】
集電箔110は、平面視が矩形状である板状部材である。集電箔110は、金属箔である。
図3に示すように、集電箔110は、積層方向(Z軸方向)に並ぶ2つの金属層111及び112を有している。金属層111及び112は、平面視で同じ大きさかつ同じ形状を有する板状の部位である。以下では、金属層111及び112のうちの、正極活物質層120が形成される金属層111を正極金属層111とも称し、負極活物質層130が形成される金属層112を負極金属層112とも称する。正極金属層111は、集電箔110のうちのZ軸プラス方向に位置する金属層であり、負極金属層112は、集電箔110のうちのZ軸マイナス方向に位置する金属層である。つまり、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112が互いに接続(接触または接合)された状態で、正極金属層111及び負極金属層112が積層方向に積層されて形成されている。正極金属層111及び負極金属層112は、一方が金属箔であり、他方が当該金属箔にメッキされるメッキ層でもよい。または、正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔でもよい。正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔の場合、集電箔110は、2つの金属箔同士が接合されて形成されたクラッド材等であってもよいし、2つの金属箔同士が接合されることなく接続(接触)した状態で2つの金属箔を有していてもよい。
【0028】
正極金属層111の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属またはそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスから、正極金属層111の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。正極金属層111の形態としては、メッキ層でもよいが、加工性、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極金属層111としては、アルミニウム箔が好ましい。負極金属層112の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属またはそれらの合金が用いられ、これらの中でも、銅または銅合金が用いられるのが好ましい。負極金属層112の形態としては、メッキ層または箔(銅箔)が挙げられ、銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。集電箔110の厚み(積層方向の厚み)は、20μm~30μm程度である。正極金属層111の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~20μm程度であり、負極金属層112の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~15μm程度である。
【0029】
正極活物質層120は、集電箔110の一方の表面(Z軸プラス方向の面)に形成された正極の活物質層である。具体的には、正極活物質層120は、正極金属層111上(正極金属層111の外面(Z軸プラス方向の面))に形成されている。正極活物質層120は、正極金属層111の形状に応じて、平面視で正極金属層111よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。平面視でサイズが小さいとは、XY平面の面積が小さいことをいう。以下についても同様である。正極活物質層120の厚み(積層方向の厚み)は、70μm~100μm程度である。
【0030】
正極活物質層120は、正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。正極活物質としては、LiM1O2(M1はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等の層状リチウム遷移金属酸化物、LiM22O4(M2はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のスピネル型リチウム遷移金属酸化物、LiM3PO4、LiM3SiO4、LiM3BO3(M3はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のポリアニオン化合物等が挙げられる。正極活物質として、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層120に含有される導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛などが挙げられる。バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。
【0031】
負極活物質層130は、集電箔110の他方の表面(Z軸マイナス方向の面)に形成された負極の活物質層である。具体的には、負極活物質層130は、負極金属層112上(負極金属層112の外面(Z軸マイナス方向の面))に形成されている。負極活物質層130は、負極金属層112の形状に応じて、平面視で負極金属層112よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。負極活物質層130は、平面視で正極活物質層120よりもサイズが大きく形成されている。平面視でサイズが大きいとは、XY平面の面積が大きいことをいう。以下についても同様である。つまり、負極活物質層130のXY平面の面積は、正極活物質層120のそれよりも大きい。負極活物質層130の厚み(積層方向の厚み)は、45μm~60μm程度である。
【0032】
負極活物質層130は、負極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層120と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属または半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物または半金属酸化物;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0033】
シール部210は、正極活物質層120または負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部210は、正極活物質層120及び負極活物質層130の全周に亘って正極活物質層120及び負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部210は、集電箔110の外周部を覆うように、集電箔110の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部210は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材により形成されている。
【0034】
隣り合う2つの電極ユニット100が有するシール部210同士は、互いに接続されている。当該シール部210同士は、一体的に連続して形成されることで、互いに接続されていてもよいし、シール部210同士がヒートシール(熱溶着)、超音波溶着、レーザ溶着、または、接着剤等によって接合されることで、互いに接続されていてもよい。これにより、シール部210は、当該2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120及び当該2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の周囲に配置され、当該2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にはシール部210が設けられる。つまり、2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にシール部210が連続的に設けられ、集電箔110同士の間がシールされる。
【0035】
複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側には、電解質層(図示省略)が形成されている。電解質層は、本実施の形態では、非水系の液体状の電解質(電解液)であるが、固体状の電解質(固体電解質)、または、ゲル状の電解質等でもよい。これら電解質としては、適宜公知のものを使用できる。電解液(非水電解質)としては、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものを用いることができる。非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートなどを挙げることができる。電解質塩としては、リチウム塩が好ましい。上記リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)等の無機リチウム塩を挙げることができる。
【0036】
[1.2 エンドユニット101及び102の説明]
次に、エンドユニット101及び102の構成について、詳細に説明する。エンドユニット101は、複数の電極ユニット100のZ軸マイナス方向の端部に配置される。エンドユニット102は、複数の電極ユニット100のZ軸プラス方向の端部に配置される。エンドユニット101及び102は、複数の電極ユニット100をZ軸方向で挟み込む部位である。
【0037】
エンドユニット101は、少なくとも、正極金属層111と、正極金属層111のZ軸プラス方向の面に形成された正極活物質層120と、シール部220と、を有している。エンドユニット101が有する正極金属層111及び正極活物質層120は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110の正極金属層111及び正極活物質層120と同様の構成を有している。
【0038】
シール部220は、正極活物質層120の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部220は、正極活物質層120の全周に亘って正極活物質層120の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部220は、正極金属層111及びエンド部材300の外周部を覆うように、正極金属層111及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部220は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0039】
シール部220は、エンドユニット101に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部220とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット101の正極金属層111と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部220の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0040】
エンドユニット102は、少なくとも、集電箔110と、集電箔110のZ軸マイナス方向の面に配置された負極活物質層130と、シール部230と、を有している。エンドユニット102が有する集電箔110及び負極活物質層130は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110及び負極活物質層130と同様の構成を有している。
【0041】
シール部230は、負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部230は、負極活物質層130の全周に亘って負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部230は、集電箔110及びエンド部材300の外周部を覆うように、集電箔110及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部230は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0042】
シール部230は、エンドユニット102に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部230とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット102の集電箔110と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部230の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0043】
このように、シール部210、220及び230が互いに接続されて、シール部材200が構成される。シール部材200は、正極金属層111、負極金属層112、正極活物質層120、負極活物質層130、セパレータ140、及び、エンド部材300の全ての全周を囲うように配置され、これらと外部との間をシールする筒状(四角筒状)の部材である。
【0044】
[1.3 セパレータ140及びエンド部材300の説明]
セパレータ140は、樹脂からなる微多孔性のシートである。セパレータ140は、電極ユニット100同士の間、エンドユニット101と電極ユニット100との間、及び、エンドユニット102と電極ユニット100との間に、それぞれ配置される。具体的には、セパレータ140は、正極活物質層120と負極活物質層130との間に配置される。セパレータ140の材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ140として、これらの多孔質樹脂フィルムの表面にフィラーを含む層を形成した多層のフィルムであってもよい。セパレータ140は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが大きい矩形状に形成されている。本実施の形態では、セパレータ140のサイズは、平面視で集電箔110のそれよりも小さいが、平面視で集電箔110よりもサイズが大きくてもよい。セパレータ140の厚み(積層方向の厚み)は、15μm~20μm程度である。
【0045】
エンド部材300は、複数の電極ユニット100よりも、蓄電装置10における積層方向(Z軸方向)の端部に配置される部材である。本実施の形態では、一対のエンド部材300が、蓄電装置10の最もZ軸マイナス方向端部及び最もZ軸プラス方向端部に配置される。一対のエンド部材300は、エンドユニット101及び102(が有する正極金属層111)に接続される。これにより、一対のエンド部材300は、その間に位置する複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102等を、積層方向(Z軸方向)の両側から挟み込む。エンド部材300は、平板状の部材(エンドプレート)である。エンド部材300は、他の導電部材(バスバー、冷却板等。図示せず)を介して、他の蓄電装置10が有する他のエンド部材300と電気的に接続される。エンド部材300は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材等で形成されている。エンド部材300は、正極金属層111と接続されるため、アルミニウムなど、正極金属層111と同じ材質で形成されるのが好ましい。エンド部材300の厚み(積層方向の厚み)は、0.5mm~3mm程度である。蓄電装置10は、エンド部材300の外側(Z軸方向の外側)に他の導電部材を有していてもよい。
【0046】
以上の構成において、セパレータ140と、セパレータ140をZ軸方向で挟む正極活物質層120及び負極活物質層130と、これらをZ軸方向で挟む正極金属層111及び負極金属層112とを、1つの蓄電素子と称してもよい。この場合、蓄電装置10は、Z軸方向に積層された複数の蓄電素子がZ軸方向において一対のエンド部材300で挟まれ、これらの周囲がシール部材200で囲われた構成を有する蓄電素子群であるとも言える。
【0047】
[2 負極活物質層130の説明]
次に、電極ユニット100が有する負極活物質層130の構成について、さらに詳細に説明する。
【0048】
図3に示すように、負極活物質層130のうちの負極活物質層130の周縁(外周縁)を含む領域であって、当該周縁から幅0.5mm以上3mm以下の領域(外周部)を、周縁部131と称する。周縁部131は、負極活物質層130の周囲(負極活物質層130のX軸プラス方向端部、X軸マイナス方向端部、Y軸プラス方向端部、及び、Y軸マイナス方向端部の全周)を囲うように配置される環状(四角環状)の部位である。負極活物質層130のうちの、平面視で負極活物質層130の中央に位置する部位を、中央部132と称する。中央部132は、平面視で、負極活物質層130の中心を含む所定領域内の部位である。当該所定領域は、負極活物質層130の中心をその中心とし、X軸方向において負極活物質層130の長さの1/3~1/2の範囲内、かつ、Y軸方向において負極活物質層130の長さの1/3~1/2の範囲内に位置する領域である。
【0049】
負極活物質層130は、周縁部131が、中央部132よりも、集電箔110の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低い。つまり、集電箔110の表面に形成されている負極活物質層130を、平面視で、集電箔110の表面における単位面積ごとに区切って、区切られたそれぞれの部位について、負極活物質層130に含まれる負極活物質の質量及び密度を比較する。この場合に、周縁部131に位置する当該区切られた部位に含まれる負極活物質の質量が、中央部132に位置する当該区切られた部位に含まれる負極活物質の質量よりも少ない。かつ、周縁部131に位置する当該区切られた部位に含まれる負極活物質の密度が、中央部132に位置する当該区切られた部位に含まれる負極活物質の密度よりも低い。活物質の質量は、比較対象の部位をそれぞれ取り出して、計測することで比較する。活物質の密度は、比較対象の部位をそれぞれ取り出して、アルキメデス法により計測することで比較する。
【0050】
具体的には、負極活物質層130は、積層方向(Z軸方向)と直交し、かつ、互いに直交する2方向の端部における周縁部131が、中央部132よりも、活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低い。つまり、負極活物質層130は、X軸方向及びY軸方向の端部における周縁部131が、中央部132よりも、負極活物質の質量が少なく、かつ、負極活物質の密度が低い。本実施の形態では、負極活物質層130は、X軸プラス方向、X軸マイナス方向、Y軸プラス方向、及び、Y軸マイナス方向の全ての端部(全周)において、周縁部131が、中央部132よりも、負極活物質の質量が少なく、かつ、負極活物質の密度が低い。負極活物質層130のX軸方向端部における周縁部131は、Y軸方向の一端から他端までに亘って、上記条件(中央部132よりも負極活物質の質量が少なく密度が低い)を満たすのが好ましいが、Y軸方向の一端から他端までの一部が上記条件を満たしていなくてもよい。負極活物質層130のY軸方向端部における周縁部131についても同様である。
【0051】
本実施の形態では、周縁部131は、積層方向(Z軸方向)から見て、負極活物質層130のうちの正極活物質層120から突出する部位である。つまり、周縁部131は、負極活物質層130のうちの、正極活物質層120からX軸プラス方向に突出する部位と、正極活物質層120からX軸マイナス方向に突出する部位と、正極活物質層120からY軸プラス方向に突出する部位と、正極活物質層120からY軸マイナス方向に突出する部位と、からなる環状(四角環状)の部位である。本実施の形態では、周縁部131の幅(正極活物質層120からの突出量)は、2~3mm程度である。
【0052】
周縁部131の内側で周縁部131と隣り合う位置に配置される部位を、内側部133と称する。内側部133は、正極活物質層120からX軸プラス方向に突出する周縁部131に対しては、当該周縁部131のX軸マイナス方向に当該周縁部131と隣り合って配置される。内側部133は、正極活物質層120からX軸マイナス方向に突出する周縁部131に対しては、当該周縁部131のX軸プラス方向に当該周縁部131と隣り合って配置される。Y軸方向についても同様である。このように、内側部133は、Z軸方向から見て、周縁部131の内側(内方)に周縁部131と隣り合って配置される環状(四角環状)の部位である。周縁部131は、Z軸方向において正極活物質層120と対向しないのに対し、内側部133は、Z軸方向において正極活物質層120と対向している。つまり、中央部132は、Z軸方向において正極活物質層120の中央部と対向し、内側部133は、Z軸方向において正極活物質層120の端部(外周部)と対向する。
【0053】
負極活物質層130において、周縁部131は、内側部133よりも、活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低い。つまり、負極活物質層130のX軸プラス方向端部において、周縁部131は、内側部133よりも、負極活物質の質量が少なく、かつ、負極活物質の密度が低い。負極活物質層130のX軸マイナス方向端部、Y軸プラス方向端部、及び、Y軸マイナス方向端部についても同様である。このように、負極活物質層130のX軸方向及びY軸方向の全ての端部(全周)において、周縁部131は内側部133よりも負極活物質の質量が少なく密度が低い。負極活物質層130のX軸方向端部における周縁部131は、Y軸方向の一端から他端までに亘って、上記条件(内側部133よりも負極活物質の質量が少なく密度が低い)を満たすのが好ましいが、Y軸方向の一端から他端までの一部が上記条件を満たしていなくてもよい。負極活物質層130のY軸方向端部における周縁部131についても同様である。
【0054】
負極活物質層130において、周縁部131における負極活物質の質量は、中央部132及び内側部133における負極活物質の質量の0.1倍以上0.9倍以下であるのが好ましく、0.3倍以上0.7倍以下であるのがより好ましく、0.5倍程度であるのがさらに好ましい。周縁部131における負極活物質の密度は、中央部132及び内側部133における負極活物質の密度の0.1倍以上0.9倍以下であるのが好ましく、0.3倍以上0.7倍以下であるのがより好ましく、0.5倍程度であるのがさらに好ましい。
【0055】
[3 蓄電装置10の製造方法の説明]
次に、蓄電装置10の製造方法について、説明する。
図4は、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。具体的には、
図4は、蓄電装置10の製造方法のうちの電極ユニット100の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。
図5は、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における製造工程を示す断面図である。具体的には、
図5の(a)は、蓄電装置10の製造方法(電極ユニット100の製造方法)における配置工程のうちの第一配置工程を示し、
図5の(b)は、蓄電装置10の製造方法(電極ユニット100の製造方法)における配置工程のうちの第二配置工程を示している。
図5の(c)は、蓄電装置10の製造方法(電極ユニット100の製造方法)におけるプレス工程を示している。
図5は、
図3の(b)に対応する図であり、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0056】
まず、負極活物質層130を、積層方向から見て正極活物質層120よりもサイズが大きく、かつ、周縁部131が、中央部132よりも、集電箔110の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なくなるように集電箔110に配置する配置工程を行う。配置工程では(負極活物質層130を集電箔110に配置する際には)、負極活物質層130を集電箔110の他方の面に配置した後に、正極活物質層120を集電箔110の一方の面に配置する。
【0057】
具体的には、
図4のS102及び
図5の(a)に示すように、配置工程のうちの第一配置工程として、集電箔110を準備し、負極活物質層130を集電箔110の他方の面(Z軸マイナス方向の面)に配置する。この際、負極活物質層130の周縁部131が中央部132よりも集電箔110の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なくなるように、負極活物質層130を集電箔110に配置する。
【0058】
具体的には、周縁部131の方が中央部132よりも集電箔110へ配置する(塗布する)量が少なくなるように、負極活物質層130を集電箔110に配置する。つまり、周縁部131の全周において、中央部132よりも集電箔110への塗布量が少なくなるように、負極活物質層130を集電箔110に配置する。負極活物質の塗工に際しては、ダイヘッドにテーパーシムを用いて塗工することで、塗工時の進行方向両端部の負極活物質量を少なくでき、間欠塗工することで、進行方向途中での負極活物質量を少なくできる。この結果、
図5の(a)に示すように、周縁部131の方が中央部132よりも、Z軸方向における厚みが薄くなる。本実施の形態では、周縁部131は、外側に向かうほど(負極活物質層130の外縁(外周縁)に向かうほど)Z軸方向における厚みが薄くなるように、Z軸マイナス方向の面が傾斜した形状となる。
【0059】
次に、
図4のS104及び
図5の(b)に示すように、配置工程のうちの第二配置工程として、第一配置工程後、正極活物質層120を集電箔110の一方の面(Z軸プラス方向の面)に配置する。具体的には、第一配置工程において集電箔110に負極活物質層130を配置して乾燥させた後に、Z軸方向から見て負極活物質層130が正極活物質層120よりもサイズが大きくなるように、集電箔110に正極活物質層120を配置する。これにより、負極活物質層130が、積層方向から見て正極活物質層120よりもサイズが大きくなるように集電箔110に配置された状態となり、周縁部131が、積層方向から見て正極活物質層120から突出する。
【0060】
次に、
図4のS106及び
図5の(c)に示すように、プレス工程として、負極活物質層130及び正極活物質層120を同時にプレスすることで、負極活物質層130を、周縁部131が、中央部132よりも、活物質の密度が低くなるように形成する。具体的には、負極活物質層130の中央部132及び周縁部131がプレスされる際に、厚みの厚い中央部132の方が周縁部131よりも多く圧縮される。これにより、中央部132の方が周縁部131よりも負極活物質の密度が高くなる(周縁部131の方が中央部132よりも負極活物質の密度が低くなる)。言い換えると、中央部132及び周縁部131がほぼ同じ厚みに圧縮されることで、塗布量が少なかった周縁部131の方が中央部132よりも負極活物質の密度が低くなる。
【0061】
これにより、負極活物質層130において、周縁部131が、中央部132よりも、集電箔110の表面における単位面積あたりの活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低くなる。同様に、負極活物質層130において、周縁部131が、内側部133よりも、活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低くなる。つまり、負極活物質層130において、積層方向(Z軸方向)と直交し、かつ、互いに直交する2方向の端部における周縁部131が、中央部132及び内側部133よりも、活物質の質量が少なく、かつ、活物質の密度が低くなる。
【0062】
このように、蓄電装置10の製造方法(電極ユニット100の製造方法)は、配置工程(第一配置工程及び第二配置工程)とプレス工程とを含む。配置工程(第一配置工程及び第二配置工程)において、負極活物質層130の端部(周縁部131を含む部分)は、Z軸マイナス方向の面が直線状(平面状)に傾斜しているが、曲線状(曲面状)に傾斜してもよい。プレス工程の後(電極ユニット100の製造後)は、複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とをセパレータ140を挟んで積層方向に積層し、一対のエンド部材300で挟み込むことで、蓄電装置10を製造する。
【0063】
[4 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10によれば、集電箔110に形成された負極活物質層130において、周縁部131の活物質の質量(集電箔110の表面における単位面積あたりの活物質の質量)は、中央部132の活物質の質量よりも少ない。さらに、周縁部131の活物質の密度は、中央部132の活物質の密度よりも低い。つまり、正極活物質層120よりもサイズが大きい負極活物質層130の周縁部131に配置する活物質量を、中央部132に配置する活物質量よりも少なくして、負極活物質層130をプレスする。これにより、負極活物質層130の周縁部131において、中央部132よりも、活物質の質量が少なくなり、かつ、活物質の密度が低くなる。したがって、負極活物質層130の周縁部131の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0064】
具体的には、以下の通りである。負極活物質層130のうちの正極活物質層120からはみ出た部分には正極活物質層120の受けがないため、負極活物質層130を集電箔110に配置(塗布)する際に、当該はみ出た部分の量(塗布量)が安定しない(多くなる)おそれがある。負極活物質層130をプレスする際には、当該はみ出た部分には正極活物質層120が対向していないため、当該はみ出た部分を十分にプレスできないおそれもある。この結果、当該はみ出た部分の厚みが厚くなり、電極ユニット100を積層する際に集電箔110及びセパレータ140に大きな圧力が加わったり、集電箔110に歪が生じしわが発生して積層が困難になったりする等の不具合が生じるおそれがある。このしわにより、電極ユニット100を積層した際にシール部210の厚みが不均一になったり、シール部210と集電箔110との間に隙間ができて電解液がリークしたりするおそれがある。
【0065】
このため、負極活物質層130の周縁部131を、中央部132よりも、活物質量を少なくしてプレスする。これにより、負極活物質層130の周縁部131が、中央部132よりも、単位面積あたりの活物質の質量が少なくなり、かつ、活物質の密度が低くなるため、負極活物質層130の周縁部131の厚みが厚くなるのを抑制できる。負極活物質層130のプレスによって、負極活物質層130が配置される箇所と負極活物質層130が配置されない箇所との間で応力差が生じ、ひずみが発生して、しわが形成されるという問題もあった。これに対しても、負極活物質層130の周縁部131を、活物質の質量を少なくし、かつ、活物質の密度を低くすることで、当該ひずみが徐々に緩和されるため、しわの発生を抑制できる。
【0066】
負極活物質層130のうちの正極活物質層120から突出する部位(はみ出た部分)が、厚みが厚くなることが多い。このため、負極活物質層130において、正極活物質層120から突出する周縁部131の活物質の質量を、周縁部131の内側の内側部133の活物質の質量よりも少なくし、かつ、周縁部131の活物質の密度を内側部133の活物質の密度よりも低くする。これにより、負極活物質層130において、正極活物質層120から突出する周縁部131(はみ出た部分)の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0067】
負極活物質層130のうちの2方向(X軸方向及びY軸方向)の端部における周縁部131の活物質の質量を、中央部132の活物質の質量よりも少なくし、かつ、周縁部131の活物質の密度を、中央部132の活物質の密度よりも低くする。これにより、負極活物質層130の当該2方向の端部において、周縁部131の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0068】
本発明の実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法によれば、負極活物質層130を、周縁部131が中央部132よりも活物質の質量が少なくなるように集電箔110に配置する。その後、負極活物質層130及び正極活物質層120を同時にプレスして、負極活物質層130を、周縁部131が中央部132よりも活物質の密度が低くなるように形成する。これにより、負極活物質層130の周縁部131の厚みが厚くなるのを抑制できる。
【0069】
正極活物質層120よりもサイズが大きい負極活物質層130を集電箔110に配置する際に、正極活物質層120が集電箔110に配置されていないと、負極活物質層130のうちの正極活物質層120からはみ出た部分には正極活物質層120の受けがないことになる。この場合、負極活物質層130を集電箔110に配置(塗布)する際に、当該はみ出た部分の量(塗布量)が安定しない(多くなる)おそれがある。このため、負極活物質層130を集電箔110に配置した後に、正極活物質層120を集電箔110に配置する。これにより、より安定した状態で、負極活物質層130を集電箔110に配置できるため、負極活物質層130の周縁部131における負極活物質の配置量の調整が容易になる。
【0070】
[5 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0071】
上記実施の形態では、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112の複数層(2層)で形成されていることとしたが、集電箔110は、1層(1枚の金属箔)で形成されていてもよい。つまり、集電箔110は、1枚のステンレス箔等で形成され、1枚のステンレス箔等で正極金属層及び負極金属層の機能を有することにしてもよい。
【0072】
上記実施の形態では、負極活物質層130は、X軸方向両側及びY軸方向両側の全ての端部(全周)において、周縁部131が中央部132よりも負極活物質の質量が少なく密度が低いこととしたが、これには限定されない。負極活物質層130は、X軸方向において、一方側の端部においてのみ、周縁部131が中央部132よりも負極活物質の質量が少なく密度が低いことにしてもよい。Y軸方向においても同様である。負極活物質層130は、X軸方向の端部においてのみ、または、Y軸方向の端部においてのみ、周縁部131が中央部132よりも負極活物質の質量が少なく密度が低いことにしてもよい。平面視で負極活物質層130が四角形状を有していない場合には、負極活物質層130は、XY平面内のいずれかの方向の端部において、周縁部131が中央部132よりも負極活物質の質量が少なく密度が低ければよい。
【0073】
上記実施の形態では、負極活物質層130は、X軸方向両側及びY軸方向両側の全ての端部(全周)において、周縁部131が内側部133よりも負極活物質の質量が少なく密度が低いこととしたが、これには限定されない。負極活物質層130は、X軸方向において、一方側の端部においてのみ、周縁部131が内側部133よりも負極活物質の質量が少なく密度が低いことにしてもよい。Y軸方向においても同様である。負極活物質層130は、X軸方向の端部においてのみ、または、Y軸方向の端部においてのみ、周縁部131が内側部133よりも負極活物質の質量が少なく密度が低いことにしてもよい。平面視で負極活物質層130が四角形状を有していない場合には、負極活物質層130は、XY平面内のいずれかの方向の端部において、周縁部131が内側部133よりも負極活物質の質量が少なく密度が低ければよい。
【0074】
上記実施の形態では、負極活物質層130において、周縁部131が内側部133よりも負極活物質の質量が少なく密度が低いこととしたが、これには限定されない。周縁部131は、中央部132よりも負極活物質の質量が少なく密度が低ければよく、内側部133における負極活物質の質量及び密度は特に限定されない。
【0075】
上記実施の形態では、蓄電装置10の製造方法(電極ユニット100の製造方法)の配置工程において、負極活物質層130を集電箔110に配置した後に、正極活物質層120を集電箔110に配置することとしたが、これには限定されない。正極活物質層120を集電箔110に配置した後に、負極活物質層130を集電箔110に配置してもよい。正極活物質層120及び負極活物質層130を集電箔110に同時に配置してもよい。
【0076】
上記実施の形態では、全ての電極ユニット100が上記構成を有していることとしたが、いずれかの電極ユニット100が上記構成を有していなくてもよい。全ての電極ユニット100を上記方法で製造することとしたが、いずれかの電極ユニット100を上記方法で製造しなくてもよい。
【0077】
蓄電装置10は、
図6に示すような蓄電パック1に用いられてもよい。
図6は、蓄電パック1の構成を示す断面図である。
図6において、蓄電装置10の内部構成の図示は省略している。
図6に示すように、蓄電パック1は、複数の蓄電装置10が積層された蓄電装置積層体2と、導電部材3と、を備えている。この場合、蓄電パック1に含まれる少なくとも1つの蓄電装置10に対して、本発明の技術が適用されればよい。蓄電装置積層体2における隣り合う2つの蓄電装置10は、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。導電部材3は、ステンレス等の金属からなり、積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。接合には接着剤を用いてもよい。蓄電装置積層体2における複数の蓄電装置10は直列に接続されており、導電部材3を介して充放電が実施される。蓄電パック1は、積層方向(Z軸方向)に拘束されてもよく、この場合、ネジ、樹脂バンドまたは金属バンド等の拘束部材を用いることができる。蓄電装置積層体2及び導電部材3は、金属ケースまたは樹脂ケースに収容されていてもよい。
【0078】
蓄電パック1の他の例として、個々の蓄電装置10が外装体4に収容された構成を
図7に示す。
図7は、蓄電パック1aの構成を示す断面図である。
図7に示すように、本構成の蓄電装置10は、外装体4から露出した接続部分5を有している。外装体4としてラミネートフィルム等を用いることができる。隣り合う蓄電装置10の接続部分5同士が、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10の接続部分5と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。その他の構成は、上述の蓄電パック1と同様のため説明を省略する。
【0079】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、バイポーラ電池等の蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1、1a 蓄電パック
2 蓄電装置積層体
3 導電部材
4 外装体
5 接続部分
10 蓄電装置
100 電極ユニット
101、102 エンドユニット
110 集電箔
111 正極金属層(金属層)
112 負極金属層(金属層)
120 正極活物質層
130 負極活物質層
131 周縁部
132 中央部
133 内側部
140 セパレータ
200 シール部材
210、220、230 シール部
300 エンド部材