(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154265
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】粉体成形物の製造装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/32 20060101AFI20241023BHJP
B65G 65/40 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B65G65/32 B
B65G65/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068010
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】591017869
【氏名又は名称】東洋精鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】半田 充
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 稜介
【テーマコード(参考)】
3F075
【Fターム(参考)】
3F075BA01
3F075BA02
3F075CB11
3F075CB12
3F075CB13
3F075CB14
3F075CB16
3F075CD02
3F075CD08
3F075CD14
3F075DA01
3F075DA08
(57)【要約】
【課題】 粉体成形物を意図した形状に成形し易くする。
【解決手段】 製造装置は、成形室34とプッシャ44と開閉装置を備える。成形室は、バインダと粉体を収容可能な収容空間34aと、収容空間の一端に設けられてバインダと粉体とが投入される投入口34bと、収容空間の他端に設けられてバインダと粉体が圧縮成形された粉体成形物を排出する排出口34cと、を備える。プッシャは、投入口から成形室内に進退動可能とされ、収容空間に収容されたバインダと粉体とを圧縮する。開閉装置は、排出口を開閉する装置であり、排出口を開閉可能な扉体39と、扉体を移動させる第1の移動機構41を備える。第1の移動機構は、扉体が排出口を閉じる閉位置と、扉体が排出口を開く開位置と、に扉体を移動させる。粉体成形物の成形後に扉体が閉位置から開位置に移動するときに、扉体と粉体成形物との間にせん断力を生じさせる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダと粉体を収容可能な収容空間と、前記収容空間の一端に設けられて前記バインダと前記粉体とが投入される投入口と、前記収容空間の他端に設けられて前記バインダと前記粉体が圧縮成形された粉体成形物を排出する排出口と、を備えた成形室と、
前記投入口から前記成形室内に進退動可能とされ、前記収容空間に収容された前記バインダと前記粉体とを圧縮するプッシャと、
前記排出口を開閉する開閉装置と、を備え、
前記開閉装置は、
前記排出口を開閉可能な扉体と、
前記扉体が前記排出口を閉じる閉位置と、前記扉体が前記排出口を開く開位置と、に前記扉体を移動させる第1の移動機構と、を備え、
前記開閉装置は、前記粉体成形物の成形後に前記扉体が前記閉位置から前記開位置に移動するときに、前記扉体と前記粉体成形物との間にせん断力を生じさせるように構成されている、粉体成形物の製造装置。
【請求項2】
前記扉体は、前記収容空間の軸線と直交する方向に移動可能となっており、
前記扉体が前記軸線と直交する方向に移動することで、前記扉体が前記閉位置と前記開位置との間を移動する、請求項1に記載の粉体成形物の製造装置。
【請求項3】
前記扉体は、前記成形室の前記排出口側の端面に当接する当接面と、前記当接面の反対側に位置する非当接面と、を備える板状部材であり、
前記開閉装置は、
前記扉体の前記非当接面に当接する押圧部材と、
前記閉位置に位置する前記扉体の前記非当接面に当接する当接位置と、前記閉位置に位置する前記扉体の前記非当接面に当接しない非当接位置と、に前記押圧部材を移動させる第2の移動機構と、をさらに備えており、
前記扉体が前記開位置から前記閉位置に移動すると共に、前記押圧部材が前記非当接位置から前記当接位置に移動することで、前記押圧部材が前記扉体を前記成形室の排出口側の端面に向かって押圧するように構成されている、請求項2に記載の粉体成形物の製造装置。
【請求項4】
前記開閉装置は、前記扉体と前記成形室の排出口側の端面との間に配置され、前記扉体の前記当接面と前記成形室の排出口側の端面との間をシールするシール部材をさらに備えている、請求項3に記載の粉体成形物の製造装置。
【請求項5】
前記プッシャは、前記軸線周りに所定の角度範囲で回動可能とされており、
前記粉体成形物の成形後に前記成形室から前記プッシャを退動させるときに、前記プッシャは前記軸線周りに回動した後に前記成形室から退動するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉体成形物の製造装置。
【請求項6】
前記成形室の収容空間の内面と前記プッシャの間にはクリアランスが形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉体成形物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、粉体(例えば、金属粉塵、ガラス粉塵、樹脂粉塵等)から粉体成形物を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で発生する粉体としては、例えば、ショットピーニング装置から排出される粉塵等が挙げられる。これらの粉体は、有価物として回収して再利用することが検討されているが、現状では廃棄物として廃棄されている。粉体を再利用又は廃棄する場合のいずれにおいても、工場等で発生した粉体は発生元において回収され、再利用や廃棄するための処理場まで運搬しなければならない。回収した粉体を発生元から処理場まで運搬するときの取扱いを容易にするため、回収した粉体を固形化する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示の技術では、研削加工機から排出されるクーラントを含んだ研削スラッジを濾過することで濃縮スラッジとし、その濃縮スラッジを圧搾することで固形化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示する技術では、成形室内に配置した粉体を加圧して固形化し、固形化した粉体成形物を成形室外に排出する。粉体成形物を成形室外に排出するためには、粉体成形物と成形室の内周面から剥離しなければならない。しかしながら、粉体は大きな圧力により加圧されて粉体成形物となるため、粉体成形物と成形室の内周面(詳細には、成形圧力を受ける受圧面)との間に大きな摩擦力が発生する。このため、粉体成形物を受圧面からそのまま引き離そうとすると、粉体成形物の一部が引き千切られて受圧面に残り、粉体成形物を意図した形状に成形できないという問題があった。本明細書は、粉体成形物を意図した形状に成形し易くする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する粉体成形物の製造装置は、成形室と、プッシャと、開閉装置と、を備えている。成形室は、バインダと粉体を収容可能な収容空間と、収容空間の一端に設けられてバインダと粉体とが投入される投入口と、収容空間の他端に設けられてバインダと粉体が圧縮成形された粉体成形物を排出する排出口と、を備える。プッシャは、投入口から成形室内に進退動可能とされ、収容空間に収容されたバインダと粉体とを圧縮する。開閉装置は、排出口を開閉する装置であり、排出口を開閉可能な扉体と、扉体を移動させる第1の移動機構と、を備える。第1の移動機構は、扉体が排出口を閉じる閉位置と、扉体が排出口を開く開位置と、に扉体を移動させる。開閉装置は、粉体成形物の成形後に扉体が閉位置から開位置に移動するときに、扉体と粉体成形物との間にせん断力を生じさせるように構成されている。
【0006】
上記の製造装置では、扉体を閉位置とした状態(すなわち、排出口を閉じた状態)で、投入口から成形室内にバインダと粉体が投入される。次いで、投入されたバインダと粉体は、投入口から進退動するプッシャによって圧縮されて粉体成形物となる。次いで、扉体が閉位置から開位置に移動することで排出口を開放し、粉体成形物が排出口より排出される。この際、成形圧力を受ける扉体と粉体成形物の間にせん断力が発生するため、粉体成形物は扉体から離れやすくなる。これによって、粉体成形物を意図した形状に成形し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施例に係る製造装置の全体構成を示す図。
【
図5】圧縮装置の成形部の動作を説明するための図であり、(a)は成形部が成形位置に位置する状態を示し、(b)は成形部が粉体供給位置に位置する状態を示し、(c)は成形部が粉体成形物排出位置に位置する状態を示し、(d)は成形部がバインダ投入位置に位置する状態を示している。
【
図6】圧縮装置の成形部に設けられる開閉装置の動作を説明するための図であり、シャッタ板が開いた状態を示す図。
【
図7】圧縮装置の成形部に設けられる開閉装置の動作を説明するための図であり、シャッタ板が閉じた状態を示す図。
【
図8】成形室へバインダと粉体を投入した状態を模式的に示す図。
【
図9】成形室に投入されたバインダと粉体を圧縮する圧縮機構の構成を説明するための図(圧縮前の状態)。
【
図10】成形室に投入されたバインダと粉体を圧縮する圧縮機構の構成を説明するための図(圧縮後の状態)。
【
図11】圧縮機構に設けられた回転止め機構の構成を説明するための図。
【
図12】成形室に投入されたバインダと粉体を圧縮している状態を拡大して示す図。
【
図13】成形室から粉体成形物を排出する排出機構を説明するための図。
【
図14】粉体成形物を乾燥する乾燥装置の構成を模式的に示す図。
【
図15】乾燥させた粉体成形物を回収する回収装置の構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
本明細書に開示する粉体成形物の製造装置では、扉体は、収容空間の軸線と直交する方向に移動可能となっていてもよい。扉体が軸線と直交する方向に移動することで、扉体が閉位置と開位置との間を移動するようにしてもよい。このような構成によると、簡易な構成で扉体と粉体成形物の間にせん断力を発生させることができる。
【0010】
本明細書に開示する粉体成形物の製造装置では、扉体は、成形室の排出口側の端面に当接する当接面と、当接面の反対側に位置する非当接面と、を備える板状部材であってもよい。開閉装置は、扉体の非当接面に当接する押圧部材と、押圧部材を移動させる第2の移動機構と、をさらに備えていてもよい。第2の移動機構は、閉位置に位置する扉体の非当接面に当接する当接位置と、閉位置に位置する扉体の非当接面に当接しない非当接位置と、に押圧部材を移動させてもよい。扉体が開位置から閉位置に移動すると共に押圧部材が非当接位置から当接位置に移動することで、押圧部材が扉体を成形室の排出口側の端面に向かって押圧するように構成されていてもよい。このような構成によると、押圧部材で扉体を押圧することで、扉体に作用する成形圧を好適に受けることができる。
【0011】
本明細書に開示する粉体成形物の製造装置では、開閉装置は、扉体と前記成形室の排出口側の端面との間に配置され、扉体の当接面と成形室の排出口側の端面との間をシールするシール部材をさらに備えていてもよい。このような構成によると、成形室内に投入されるバインダが成形室外に流出することを抑制することができる。
【0012】
本明細書に開示する粉体成形物の製造装置では、プッシャは、軸線周りに所定の角度範囲で回動可能とされていてもよい。粉体成形物の成形後に成形室からプッシャを退動させるときに、プッシャは軸線周りに回動した後に成形室から退動するように構成されていてもよい。このような構成によると、粉体成形物からプッシャを引き離すときに、プッシャと粉体成形物の間にせん断力を発生させることができる。これによって、成形圧力を受けるプッシャから粉体成形物が離れやすくなり、粉体成形物を意図した形状に成形し易くなる。
【0013】
本明細書に開示する粉体成形物の製造装置では、成形室の収容空間の内面とプッシャの間にはクリアランスが形成されていてもよい。このような構成によると、バインダ及び粉体を圧縮する際に粉体内の空気を排出することができ、粉体内へバインダを好適に浸透させることができる。
【実施例0014】
図面を参照して、実施例に係る粉体成形物の製造装置10について説明する。
図1に示すように製造装置10は、バインダ及び粉体を投入する投入装置12と、投入されたバインダ及び粉体を圧縮成形する圧縮装置14と、成形された粉体成形物を乾燥させる乾燥装置16と、乾燥された粉体成形物を回収する回収装置18を備えている。以下、各装置12,14,16,18について説明する。
【0015】
投入装置12は、粉体を供給する粉体供給装置20(
図2に図示)と、バインダを供給するバインダ供給装置25(
図3に図示)を備えている。
図2に示すように粉体供給装置20は、粉体を一時的に貯蔵するホッパ22と、ホッパ22の下端に設けられたスクリュウコンベア21を備えている。
【0016】
ホッパ22は、上端及び下端が解放された漏斗形状を有しており、その内部に粉体を一時的に貯蔵する。ホッパ22の上端の開口部は、粉体の投入口として機能する。ホッパ22の下端の開口部は、粉体の排出口として機能する。スクリュウコンベア21は、ホッパ22の下端の開口部に接続されている。ホッパ22の下端の開口部から排出される粉体は、スクリュウコンベア21に供給される。スクリュウコンベア21は、図示しないモータによって駆動され、ホッパ22から供給される粉体を粉体供給口24まで移送する。スクリュウコンベア21のモータの駆動量(すなわち、駆動速度及び駆動時間)は、図示しない制御装置によって制御される。スクリュウコンベア21のモータの駆動量が制御されることで、スクリュウコンベア21は所望の容量(体積)の粉体を移送するようになっている。スクリュウコンベア21の先端には、粉体供給口24が設けられている。スクリュウコンベア21により移送された粉体は、粉体供給口24から排出される。後述するように、粉体供給口24の下方には圧縮装置14が位置決め可能となっている。粉体供給口24の下方に圧縮装置14が位置決めされた状態でスクリュウコンベア21が駆動することで、粉体供給装置20から圧縮装置14に粉体が供給される。
【0017】
ここで、ホッパ22の側面にはバイブレータ23が取付けられている。バイブレータ23は、ホッパ22の側面を振動させ、ホッパ22内で粉体のブリッジが発生することを防止する。これによって、粉体供給装置20から圧縮装置14に粉体を安定して供給することを可能としている。すなわち、ホッパ22内で粉体のブリッジが発生すると、ホッパ22内の粉体がホッパ下端の開口部より排出されず、スクリュウコンベア21が駆動していても粉体が供給されないことになる。一方、バイブレータ23によって粉体のブリッジの発生を防止することで、安定してホッパ22の下端からスクリュウコンベア21に粉体が排出される。その結果、スクリュウコンベア21の駆動量に応じた容量(体積)の粉体を圧縮装置14に供給することを可能としている。
【0018】
なお、本実施例の製造装置で処理する粉体としては、例えば、ショットピーニング処理により発生する粉塵(例えば、工場において発生する金属粉塵やガラス粉塵、インフラ補修において発生する塗料を含む粉塵等)や、塗膜剥しのために実施されるブラスト処理で発生する樹脂粉塵等が挙げられる。これらの粉塵は、油分や水分を含まない乾燥した状態の粉塵であり、粉塵同士が絡まない形状(例えば、粒状)を有している。このため、これらの粉塵に圧力を作用させただけでは、成形物を成形することができない。そこで、本実施例では、バインダを利用して、これらの粉塵から粉体成形物を成形している。
【0019】
また、本実施例の製造装置10で処理する粉体は、粒径が揃っている必要はなく、粒径の大きな粉体と粒径の小さな粉体とが混在した状態であってもよい。なお、粒径が小さすぎるとバインダが浸透し難く、また、粒径が大きすぎると粉体の隙間にバインダが保持できないことがあり得る。このため、粉塵成形物を安定して成形するためには、適切な粒径の粉体の比率が高くなるように調整することが好ましい。具体的には、(粉体の主成分の密度)/(粉体の嵩密度)の比が3.0以上に調整されていることが好ましい。
【0020】
図3に示すようにバインダ供給装置25は、バインダを一時的に貯留する貯留タンク26と、貯留タンク26に接続されたチューブポンプ27と、を有する。貯留タンク26は、その上端にバインダ供給口26aが設けられ、その下端にバインダ排出口26bが設けられている。バインダ供給口26aから貯留タンク26内にバインダが供給され、貯留タンク内のバインダはバインダ排出口26bより排出される。バインダ排出口26bには供給管29の供給管入口29aが接続され、供給管29の供給管出口29bにはバインダ供給口28が設けられている。供給管29の供給管入口29aと供給管出口29bの間にはチューブポンプ27が配置されている。
【0021】
チューブポンプ27は、回転するローラによって弾性のあるチューブを押圧して変形させることで、貯留タンク26内のバインダをチューブポンプ27内に吸引し、チューブポンプ27内のバインダをバインダ供給口28に向かって吐出する。チューブポンプ27内のローラの駆動量(すなわち、駆動速度及び駆動時間)は、図示しない制御装置によって制御される。チューブポンプ27内のローラの駆動量が制御されることで、チューブポンプ27は所望の容量(体積)のバインダを吐出するようになっている。
【0022】
チューブポンプ27は、バインダの搬送経路(すなわち、チューブ内)に機械部品(例えば、羽根車等)がない。このため、バインダの搬送経路へバインダが固着することによるポンプの停止や故障の発生を抑制することができる。また、チューブポンプ27のメンテナンスが必要となったときは、チューブ交換のみで対応することができる。本実施例ではバインダの搬送にチューブポンプ27を用いたが、チューブポンプ以外のポンプ(例えば、ダイヤフラム式のポンプ等)を用いることもできる。
【0023】
チューブポンプ27から吐出されたバインダは、供給管29の供給管出口29bに設けられたバインダ供給口28から圧縮装置14に供給(投入)される。後述するように、バインダ供給口28の下方には圧縮装置14が位置決め可能となっている。バインダ供口28の下方に圧縮装置14が位置決めされた状態でチューブポンプ27が駆動することで、バインダ供給装置25から圧縮装置14にバインダが供給される。本実施例では、バインダ供給口28は、粉体供給口24とは別の位置に設けられている。このため、圧縮装置14は、粉体供給口24とバインダ供給口28の間を移動可能となっている。
【0024】
なお、本実施例で用いられるバインダとしては、例えば、珪酸ソーダ(いわゆる、水ガラス)を用いることができる。珪酸ソーダ(バインダ)は水に溶かして使用され、その水分量を調整することで粘度が調整されている。具体的には、バインダの粘度は粉体の特性(例えば、粉体の主成分の密度/嵩密度等)に応じて調整されている。バインダの粘度を粉体の特性に応じて調整することで、圧縮装置14でバインダと粉体を圧縮したときに、バインダを粉体の全体に浸透させることができる。すなわち、バインダの粘度が大きすぎると、圧縮したときにバインダが粉体の全体に浸透せず、局所的にバインダ溜りが発生すると共にバインダが浸透しない部分が発生し、粉体を所望の形状に成形することができない。一方、バインダの粘度が小さすぎると、圧縮によってバインダを粉体の全体に浸透させることはできるが、粉体が所望の形状を維持することができない。バインダの粘度を粉体の特性に応じて調整することで、バインダを粉体全体に浸透させることができ、かつ、圧縮成形後に所望の形状を維持することができる。
【0025】
上述したように、本実施例の製造装置10では、粉体供給装置20とバインダ供給装置25によって、粉体とバインダが別々に圧縮装置14に供給(投入)される。このため、粉体供給装置20から供給される粉体の量(体積)と、バインダ供給装置25から供給されるバインダの量(体積)のそれぞれを所望の量に制御することができる。これによって、粉体全体にバインダを浸透させることができ粉体を所望の形状に成形できると共に、バインダが過多となることによる粉体成形物の軟化を防止して所望の強度を得ることができる。すなわち、粉体の量に対してバインダの量が少ないと、バインダが粉体全体に浸透せず所望の形状に成形することができない。一方、粉体に対してバインダの量が多いと、粉体成形物が軟化して機械的強度が低下する。粉体の量とバインダの量のそれぞれを精度よく制御することで、粉体成形物の成形性と機械的強度の両者を両立することができる。
【0026】
また、本実施例の製造装置10では、粉体供給口24とバインダ供給口28が別々の位置に設けられ、粉体供給装置20の粉体供給経路とバインダ供給装置25のバインダ供給経路とが別々に設けられている。これによって、粉体の供給量を精度よく制御することができる。すなわち、粉体供給経路とバインダ供給経路とが同一経路となると、供給経路にバインダが付着すると、これにより粉体の供給量が減少する。粉体供給経路とバインダ供給経路が別々に設けられることで、バインダの付着による粉体の供給量の減少が防止され、粉体の供給量を精度よく制御することができる。
【0027】
次に、圧縮装置14について説明する。圧縮装置14は、粉体供給装置20とバインダ供給装置25から粉体及びバインダが供給される成形部(
図4~7に図示)と、成形部に供給された粉体及びバインダを圧縮する圧縮機構(
図9~11に図示)と、成形部で成形された粉体成形物を排出する排出機構(
図13に図示)を備えている。以下、成形部と圧縮機構と排出機構のそれぞれについて説明する。
【0028】
図4,5に示すように成形部は、本体フレーム31と、本体フレーム31上に配置されるベース32と、ベース32を本体フレーム31に対してX方向及びY方向に移動させる移動機構(37,38等)と、ベース32上に設置された成形室34と、を備えている。本体フレーム31は、平面視が略矩形状に形成されている。本体フレーム31には、成形室34で圧縮成形された粉体成形物Wを排出するための排出口31aが形成されている(
図13参照)。
【0029】
ベース32は、本体フレーム31の上面に移動可能に支持されている。ベース32は、平面視が略矩形状の板材であり、平面視したときに本体フレーム31よりも小さな面積を有している。すなわち、ベース32のX方向の寸法は本体フレーム31のX方向の寸法より小さく、ベース32のY方向の寸法は本体フレーム31のY方向の寸法より小さくされている。このため、ベース32は、本体フレーム31上においてX方向及びY方向に移動可能となっている。これによって、ベース32は、成形室34に供給された粉体及びバインダを圧縮する位置(
図5(a)に示す位置)と、成形室34に粉体を供給する位置(
図5(b)に示す位置)と、成形室34にバインダを供給する位置(
図5(d)に示す位置)と、成形室34から粉体成形物Wを排出する位置(
図5(c)に示す位置)と、に移動することができる。したがって、上記した粉体供給装置20の粉体供給口24は、
図5(b)に示す成形室34の上方に配置される。また、上記したバインダ供給装置25のバインダ供給口28は、
図5(d)に示す成形室34の上方に配置される。圧縮機構(
図9~11に図示)は、
図5(a)に示す成形室34の上方に配置される。排出機構(
図13に図示)は、
図5(c)に示す成形室34の上方に配置される。なお、ベース32にも、成形室34で圧縮成形された粉体成形物Wを排出するための排出口32aが形成されている(
図13参照)。
【0030】
ここで、ベース32を本体フレーム31に対して移動させる移動機構(37,38等)について説明する。
図5に示すように移動機構は、一対のガイド31bに案内されるスライダ36と、スライダ36を駆動するX方向エアシリンダ38と、スライダ36に取付けられたY方向エアシリンダ37と、を有している。一対のガイド31bは、本体フレーム31に固定され、本体フレーム31のX方向に伸びる一対の辺に沿ってX方向に伸びている。スライダ36は、一対のガイド31bの一方に案内される支持部36bと、一対のガイド31bの他方に案内される支持部36cと、支持部36b、36cに連結された本体部36aと、を備えている。スライダ36は、ガイド31bに案内されてX方向に移動可能となっている。スライダ36の本体部36aには、X方向エアシリンダ38のロッドの先端が固定されている。X方向エアシリンダ38のシリンダ本体は、本体フレーム31に固定されている。したがって、X方向エアシリンダ38がロッドを進退動することで、スライダ36がガイド31bに案内されてX方向に移動することができる。スライダ36の一対の支持部36b,36cの間には、Y方向エアシリンダ37が配置されている。Y方向エアシリンダ37は、両ロッドタイプのエアシリンダであり、一方のロッドがスライダ36の一方の支持部36bに固定され、他方のロッドがスライダ36の他方の支持部36cに固定されている。このため、Y方向エアシリンダ37を駆動することで、Y方向エアシリンダ37のシリンダ本体がY方向に移動する。Y方向エアシリンダ37のシリンダ本体にはベース32が固定されている。このため、Y方向エアシリンダ37のシリンダ本体がY方向に移動することで、ベース32がY方向に移動する。したがって、X方向エアシリンダ38とY方向エアシリンダ37を駆動することで、ベース32を所望の位置(すなわち、
図5(a),(b),(c),(d)に示す位置)に移動させることができる。
【0031】
なお、上述したように、成形室34はベース32上に固定され、ベース32が本体フレーム31の上面を移動する。ベース32と本体フレーム31との間の摩擦力が大きくなると、ベース32のスムーズな移動が阻害される。特に、本体フレーム31の上面に粉体が飛散すると、ベース32と本体フレーム31との間の摩擦力を増大させ、ベース32の移動自体が困難となる。そこで、
図4に示すように、本実施例では、成形室34を複数個(本実施例では4個(
図4では2個を図示))のフリーベアリング33により支持する。フリーベアリング33は、粉体排出機能(いわゆる、ごみ排出穴付きベアリング)を有している構造が好ましく、圧縮ばね35を介してベース32に固定されている。成形室34で粉体成形物Wを成形するとき以外は、成形室34に本体フレーム31に向かって大きな力が作用することはない。このため、圧縮ばね35によってベース32が持ち上げられ、ベース32と本体フレーム31の間には隙間が形成される。このため、ベース32と本体フレーム31の間に作用する摩擦力が低減され、ベース32は本体フレーム31上を小さな力で移動することができる。一方、成形室34で粉体成形物Wを成形するときは、成形室34に大きな力が作用する。したがって、成形室34に作用する圧力が圧縮ばね35のばね力より大きくなると、ベース32が下降して本体フレーム31に当接する。これによって、粉体成形物Wを成形するときに成形室に作用する最大圧力は、フリーベアリング33ではなくベース32によって受けることとなる。このため、フリーベアリング33によって本体フレーム31の上面が変形してしまう等の不具合が発生することを防止することができる。
【0032】
次に、成形室34について説明する。
図6,7に示すように、成形室34は円筒状の部材であり、その内部にバインダ及び粉体を収容する収容空間34aが形成されている。収容空間34aの上端には投入口34bが設けられ、収容空間34aの下端には排出口34cが設けられる。投入口34aは、バインダ及び粉体が投入される投入口として機能する。排出口34cは、成形室34から粉体成形物Wを排出する排出口として機能する。このため、成形室34は、排出口34cがベース32の排出口32aの上方に位置するように、ベース32に対して設置されている。これによって、排出口34cから排出された粉体成形物Wは、ベース32の排出口32a及び本体フレーム31の排出口31aを通って圧縮装置14の外部に排出することができる。
【0033】
上述したように成形室34の下端には排出口34cが設けられている。このため、成形室34の収容空間34aにバインダと粉体を収容するためには、成形室34の排出口34cを閉じなければならない。本実施例では、成形室34の排出口34cを開閉するためにシャッタ装置を設けている。シャッタ装置は、ベース32と成形室34の間に配置されている。シャッタ装置は、シャッタ板39と、シャッタ板39の下方に配置される押圧板40と、シャッタ板39を駆動するエアシリンダ41と、押圧板40を駆動するエアシリンダ42を備えている。
【0034】
シャッタ板39は、排出口34cよりも大きな平面積を有する板状部材である。シャッタ板39は、成形室34の軸線方向(すなわち、鉛直方向)に対して直交方向(すなわち、水平方向)に移動可能とされている。シャッタ板39は、エアシリンダ41によって駆動され、排出口34cを開放する位置(
図6に示される位置)と、排出口34cを閉じる位置(
図7に示される位置)とに移動可能となっている。シャッタ板34が排出口34cを閉じると、シャッタ板34の上面にバインダと粉体が接触することになる。
【0035】
押圧板40は、シャッタ板39より小さな平面積を有する板状部材である(具体的には、X方向の寸法がシャッタ板39の約1/2、Y方向の寸法はシャッタ板39と略同一となっている(
図6参照))。一方、押圧板40は、シャッタ板39の板厚(Z方向の寸法)よりも大きな厚みを有する。このため、押圧板40の機械的強度はシャッタ板39の機械的強度より高くされている。押圧板40は、シャッタ板39と同様に、成形室34の軸線方向(すなわち、鉛直方向)に対して直交方向(すなわち、水平方向)に移動可能とされている。押圧板40は、エアシリンダ42によって駆動され、排出口34cを閉じる位置にあるシャッタ板39の下面に当接する位置(
図7に示す位置)と、シャッタ板39の下面に当接不能な位置(
図6に示す位置)とに移動可能となっている。
【0036】
図6に示すように、シャッタ板39が排出口34cを開放する位置にあり、また、押圧板40がシャッタ板39の下面に当接不能な位置にあると、シャッタ板39と押圧板40は、成形室34の排出口34cを挟んで互いに対向する位置にある。
図6~8から明らかなように、シャッタ板39の上面は、成形室34の軸線方向に直交する水平面である一方で、シャッタ板39の下面は、シャッタ板39の上面に対してわずかに傾斜する傾斜面となっている。具体的には、シャッタ板39の下面は、押圧板40に近づくほど上方に位置するように直線状に傾斜している。別言すると、押圧板40に近づくほどシャッタ板39の板厚が薄くなるように、シャッタ板39の下面が傾斜している。一方、押圧板40の下面は、成形室34の軸線方向に直交する水平面である一方で、押圧板40の上面は、シャッタ板39に近づくほど下方に位置するように直線状に傾斜している。すなわち、シャッタ板39に近づくほど押圧板40の板厚が薄くなるように、押圧板40の上面が傾斜している。
【0037】
ここで、シャッタ板39の下面の角度と押圧板40の上面の角度は、シャッタ板39及び押圧板40を
図7に示す位置に移動させたときに、押圧板40がシャッタ板39を成形室34の端面に向けて押圧するように調整されている。すなわち、シャッタ板39が排出口34cを閉じる位置のとき、押圧板40がシャッタ板39の下面に当接する位置(すなわち、
図7に示す位置)に移動すると、押圧板40はシャッタ板39の下面とベース32の上面の間に楔の様に打ち込まれる。これによって、シャッタ板39が成形室34の下端面に押し付けられることになる。成形室34の下端面にはシール部材43(
図7参照)が配置されており、シャッタ板39がシール部材43を押圧することになる。これによって、成形室34の下端面とシャッタ板39との隙間がシールされ、収容空間34a内のバインダが収容空間34aから流出することを好適に抑制することができる。また、シャッタ板39によって、粉体成形物Wを成形するときの圧縮力を好適に受けることができる。
【0038】
次に、成形室34に供給された粉体及びバインダを圧縮する圧縮機構について説明する。
図9~11に示すように、圧縮機構は、プッシャ部材44と、プッシャ部材44を駆動するモータ45と、モータ45の回転運動をプッシャ部材44の進退動作に変換する変換機構(46,47,48,49,50等)によって構成されている。
【0039】
プッシャ部材44は、円柱状の部材であり、成形室34の収容空間34aに対応した外形状を有している。プッシャ部材44の外径は、収容空間34aの内径よりもわずかに小さくされている。このため、プッシャ部材44が収容空間34aに挿入されたときに、プッシャ部材44と収容空間34aの内面との間には隙間(クリアランス)が形成される。このクリアランスは、例えば、0.05~0.1mm程度とされる。クリアランが設けられることで、バインダ及び粉体をプッシャ部材44で圧縮成形するときに、バインダ及び粉体内の空気を成形室34外に逃すことができる。これにより、バインダを粉体の全体に浸透させ易くなる。また、収容空間34aの内面に付着した粉体による摩擦力の増大を抑制し、プッシャ部材44を小さな力で進退動作をさせることができる。
【0040】
変換機構(46,47,48,49,50等)は、モータ45の出力軸に連結される回転軸46と、回転軸46の回転を伝達する歯車47,48と、歯車47,48によって回転が伝達されるナット50と、ナット50に螺合するボールねじ49と、を備えている。
【0041】
回転軸46の一端はモータ45の出力軸に接続され、回転軸46の他端にはエンコーダ52が接続されている。エンコーダ52は、回転軸46の回転量を検出する。本実施例では、エンコーダ52で検出される回転軸46の回転量に基づいてモータ45を駆動することで、プッシャ部材44を成形室34(収容空間34)内の所定の位置で停止する。これによって、バインダと粉体に適切な圧縮力を作用させることができ、所望の機械的強度を有する粉体成形物Wを成形することを可能としている。
【0042】
なお、エンコーダ52の検出結果に基づいてモータ45の回転速度を調整することで、プッシャ部材44の移動速度を制御するようにしてもよい。例えば、粉体の特性(例えば、粒度、嵩密度等)と、バインダの粘度とに応じてプッシャ部材44の移動速度を制御する。これによって、粉体内へのバインダの浸透速度が適切となり、粉体の全体にバインダを浸透させることができる。
【0043】
また、上記の実施例では回転軸46にエンコーダ52を接続したが、このような形態には限られない。例えば、モータ45にサーボモータを使用し、サーボモータのエンコーダによってモータ45の回転量を検出してもよい。この場合、モータの回転量に応じてモータの駆動を停止することで、プッシャ部材44を所望の位置で停止させることができる。
【0044】
あるいは、
図10に示すように、本体フレーム31にロードセル58を設置し、ロードセル58によって成形室34に作用する圧縮力を検知してもよい。そして、圧縮力が設定値となったときにモータ45を停止するようにしてもよい。これらの形態であっても、粉体成形物Wを適切な圧縮力で成形することができる。
【0045】
回転軸46には歯車47が固定されており、歯車47は歯車48と噛合している。歯車48にはナット50が取付けられており、ナット50はボールねじ49と螺合している。ナット50は、ナット50が回転することによるラジアル荷重と、ボールねじ49の軸力(すなわち、プッシャ部材44が粉体成形物Wを成形するときの圧縮力)によるスラスト荷重を受けることができるように構成されている。具体的には、スラスト荷重を受ける軸受け側のフランジ53はベース51(本体フレーム31に固定)に固定されており、ラジアル荷重を受けるフランジ側のフランジ54が歯車48に固定されており、ナット50が定位置で回転するように構成されている。ボールねじ49には、回転止め機構55が設けられており、所定の角度範囲でのみ回転が可能となっている。ボールねじ49の回転が回転止め機構55で規制されることで、ボールねじ49が上下方向に進退動することになる。ボールねじ49の先端には、プッシャ部材44が取付けられている。このため、ボールねじ49の進退動作によって、プッシャ部材44は成形室34に対して進退動作をし、成形室34内のバインダと粉体を圧縮成形することができる。
【0046】
ここで、上記した回転止め機構55について説明する。
図11に示すように、回転止め機構55は、ボールねじ49の外周面に取付けられたフランジ56aと、フランジ56aの外周面に突設された突起56bと、フランジ56aの外周面に配置された回転止め57によって構成されている。フランジ56aは、円盤状の部材であり、ボールねじ49と一体となって回転する。突起56bは、フランジ56aの円周上の一か所に設けられており、フランジ56a(すなわち、ボールねじ49)と一体となって回転する。回転止め57は、フランジ56aとは別体として設けられ、本体フレーム31側に固定されている。したがって、ボールねじ49が回転しても、回転止め57は回転しない。回転止め57には、突起56bが左側から当接する面(
図11の実線の突起56bが当接する面)と、突起56bが右側から当接する面(
図11の点線の突起56bが当接する面)とを有している。したがって、突起56bが回転止め57に当接しない状態では、ナット50の回転に伴ってボールねじ49も回転することができる。一方、突起56bが回転止め57に当接すると、ボールねじ49の回転が規制され、ナット50のさらなる回転に伴ってボールねじ49が進退動することになる。
【0047】
次に、成形室34で成形された粉体成形物Wを排出する排出機構について説明する。
図13に示すように、排出機構は、成形室34の上方に配置された排出用のエアシリンダ62と、成形室34の下方に配置された保持用のエアシリンダ60を備えている。排出用エアシリンダ62は、ロッド63を備えている。排出用エアシリンダ62が作動すると、ロッド63が進退動する。保持用のエアシリンダ60は、ロッド64を備えており、ロッド64の先端には受取部が設けられている。保持用エアシリンダ60が作動すると、ロッド64が進退動する。保持用エアシリンダ60は、保持具59に取付けられている。保持具59は、ガイド部61によって、成形室34から排出される粉体成形物Wを受け取る位置(
図13の実線で示す位置)と、乾燥装置16に粉体成形物Wを受け渡す位置(
図13の点線で示す位置)との間を移動可能となっている。
【0048】
成形室34で成形された粉体成形物Wを排出するときは、まず、粉体成形物Wを受け取る位置(
図13の実線で示す位置)に保持具59を移動させる。次いで、保持用エアシリンダ60のロッド64を伸長させて、ロッド64の先端の受取部を成形室34の排出口34cの直下に移動させる。次いで、シャッタ装置を作動させて成形室34の排出口34cを開放した状態とし、排出用エアシリンダ62を作動させてロッド63を伸長させて、ロッド63の先端で粉体成形物Wを下方に押し出す。これによって、成形室34から粉体成形物Wが排出され、粉体成形物Wは保持用エアシリンダ60のロッド64の先端に受け渡される。次いで、保持用エアシリンダ60のロッド64が収縮し、粉体成形物Wを下方に移動させる。次いで、ガイド部61を駆動して、粉体成形物Wを乾燥装置16に搬送する。
【0049】
次に、粉体成形物Wを乾燥する乾燥装置16を説明する。
図14に示すように、乾燥装置16は、炉体65と、炉体65内の処理空間66に配置された複数のヒータ67を備えている。粉体成形物Wは、処理空間66の中央に配置されるようになっている。ヒータ67は、処理空間66内に配置された粉体成形物Wを取り囲むように複数配置される。本実施例では、粉体成形物Wの周囲に4か所(周方向に90°間隔)に配置されている。ただし、ヒータ67の本数は4本に限られず、例えば、4本以上の本数を配置してもよい。また、炉体65には、処理空間66内に外気を取り込むための取込口(図示省略)と、処理空間66内の空気を排気する排気口(図示省略)が設けられている。例えば、取込口は炉体65の底面壁に設けられ、排気口は炉体65の天井壁に設けることができる。排気口には排気装置が設けられ、処理空間66内の空気を強制的に排気することができる。なお、排気装置には、例えば、モータ駆動による排気ファンを用いることができ、あるいは圧縮エアを利用したエジェクタ装置を用いることもできる。エジェクタ装置を用いると、廃棄される空気の温度を低く抑えることができる。
【0050】
上記の乾燥装置16で粉体成形物Wを乾燥するときは、まず、炉体65の処理空間66内に粉体成形物Wを配置する。次いで、ヒータ67により粉体成形物Wを周囲から加熱する。これにより、粉体成形物Wの表面がヒータ67の輻射熱によって加熱され、粉体成形物Wから水分が除去される。なお、乾燥装置16による水分の除去量としては、例えば、粉体成形物Wに含まれる水分の20~50%の水分量とすることができる。粉体成形物Wから所望の水分量が除去されると、粉体成形物Wは回収装置18によって回収される。
【0051】
ここで、粉体成形物Wを乾燥するときは、炉体65の外部から取込口を介して処理空間66内に外気が取り入れられ、処理空間66内の空気は排気口から炉体65の外部に排気される。このため、炉体65の処理空間66内の空気が流動し、粉体成形物Wからの水分の除去を促進することができる。
【0052】
次に、乾燥装置16で乾燥された粉体成形物Wを回収する回収装置18について説明する。
図15に示されるように、回収装置18は、粉体成形物Wを搬送する冷却トラフ68と、冷却トラフ68で搬送された粉体成形物Wを回収コンテナ74に搬送する搬送装置(71,72,73)と、を備えている。
【0053】
図15~18に示すように、冷却トラフ68には複数の粉体成形物Wが載置可能となっている。すなわち、冷却トラフ38は、乾燥装置16で乾燥された粉体成形物Wを冷却するための所望の時間が確保される長さに設定されている。このため、冷却トラフ68には複数の粉体成形物Wが載置されている。また、冷却トラフ38には複数のストッパ69、70が配置され、ストッパ69,70により粉体成形物Wの搬送状態が調整可能となっている。例えば、
図16に示す状態では、ストッパ69,70が共に下方に移動しているため、冷却トラフ68上の粉体成形物Wが速やかに回収コンテナ74に搬送される。一方、
図17に示す状態では、ストッパ69が上方に移動し、ストッパ70が下方に移動している。このため、ストッパ69とストッパ70の間に位置する粉体成形物Wのみが回収コンテナ74に搬送される。また、
図18に示す状態では、ストッパ69が下方に移動し、ストッパ70が上方に移動している。このため、冷却トラフ68上の粉体成形物Wは回収コンテナ74に搬送されず、冷却トラフ68上に保持される。これによって、粉体成形物Wを十分に冷却することができる。
【0054】
搬送装置(71,72,73)は、粉体成形物Wを載置する搬送部71と、搬送部71を上下方向に駆動する駆動装置72と、駆動装置72によって上端に搬送された粉体成形物Wを水平方向に搬送する搬送装置73を備えている。したがって、冷却トラフ68上を搬送された粉体成形物Wは、回収装置18によって回収コンテナ74内に回収される。回収コンテナ74に回収された粉体成形物Wは、所定の形状に形成されると共に機械的強度が向上しているため、その後の取扱いを容易に行うことができる。なお、粉体成形物Wを効率よく冷却するためには、冷却トラフ68上に載置されている粉体冷却物Wに向かって空気を吐出する冷却装置を設けてもよい。例えば、乾燥装置16内の空気をエジェクタ装置によって吸引して排気し、この排気を粉体成形物Wの冷却に利用してもよい。このような形態によると、追加の設備を利用することなく粉体成形物Wを効率的に冷却することができる。
【0055】
上述した製造装置10を用いて粉体成形物Wを製造する手順について説明する。まず、成形室34の排出口34cをシャッタ装置により閉じた状態とし、バインダを供給する位置(
図5(d)に示す位置)にベース32を位置決めする。次に、バインダ供給装置25を動作させ、成形室34内に所定量のバインダを供給する。成形室34にバインダが供給されると、次に、粉体を供給する位置(
図5(b)に示す位置)にベース32を移動させる。ベース32を
図5(b)に示す位置に位置決めすると、粉体供給装置20を動作させ、成形室34内に所定量の粉体を供給する。成形室34内に粉体とバインダを別々の供給経路から供給するため、成形室34内に所望の割合でバインダと粉体を供給することができる。また、バインダ及び粉体が別々に供給されるため、成形室34内ではバインダ層と粉体層とが積層された状態となる。
【0056】
次に、成形室34に供給された粉体及びバインダを圧縮する位置(
図5(a)に示す位置)にベース32を移動させ、次いで、圧縮装置を作動させる。これにより、プッシャ部材44が成形室34に向かって下降し、プッシャ部材44が成形室34内に挿入される。このため、成形室34内のバインダ層及び粉体層が圧縮され、粉体層の全体にバインダ層が浸透する。そして、プッシャ部材44がさらに下降することで、粉体層の全体にバインダが浸透した粉体成形物Wが成形される(
図12に示す状態)。
【0057】
粉体成形物Wが成形されると、まず、プッシャ部材44を上昇させるために動作させる。プッシャ部材44を動作させると、まず、プッシャ部材44は軸線周りに回転し、回転止め機構55により軸線周りの回転が停止してから、プッシャ部材44が上昇を開始する。プッシャ部材44が軸線周りに回転することで、プッシャ部材44の先端面と粉体成形物Wの間にせん断力が作用し、プッシャ部材44の表面から粉体成形物Wとが剥離する。プッシャ部材44を軸線周りに回転させることなく上昇させる場合、プッシャ部材44の表面に粉体成形物Wの一部が残り、その一部が粉体成形物Wから分離する事態が生じ得る。本実施例では、プッシャ部材44が上昇を開始する前に軸線周りに回転するため、プッシャ部材44と粉体成形物Wとの間にせん断力が作用し、プッシャ部材44の表面から粉体成形物Wが剥離している。このため、粉体成形物Wの一部がプッシャ部材44の表面に付着して残ってしまうという事態を回避することができる。
【0058】
プッシャ部材44が上昇し、プッシャ部材44が成形室34内から退動すると、次に、成形室34から粉体成形物Wを排出する位置(
図5(c)に示す位置)にベース32を移動させる。ベース32が
図5(c)に示す位置に移動すると、シャッタ装置が成形室34の排出口34cを開放する。この際、シャッタ板39が水平方向(すなわち、成形室34の軸線と直交する方向)に移動するため、シャッタ板39と粉体成形物Wの間にせん断力が発生する。このため、シャッタ板39の表面から粉体成形物Wが剥離し、粉体成形物Wの一部がシャッタ板の表面に残ってしまうという事態が回避される。
【0059】
シャッタ装置が成形室34の排出口34cを開放すると、排出機構が作動して、成形室34内の粉体成形物Wが圧縮装置14の外部に排出される。圧縮装置14の外部に排出された粉体成形物Wは、乾燥装置16において乾燥される。乾燥装置16で乾燥された粉体成形物Wは、回収装置18により回収される。
【0060】
上述した説明から明らかなように、本実施例の製造装置によると、バインダと粉体が別々に成形室34に供給される。このため、バインダを成形室34に供給する供給経路と、粉体を成形室34に供給する供給経路に不具合が発生することを抑制することができる。また、成形室34に所望の量(体積)の粉体と所望の量(体積)のバインダを供給することができるため、粉体の全体に適量のバインダが浸透し、粉体成形物Wを意図した形状に成形することができる。また、粉体成形物Wの機械的強度を所望の強度とすることができ、成形後のハンドリングを容易にすることができる。
【0061】
なお、上述した実施例では、成形室34にバインダを1回だけ投入し、成形室34に粉体を1回だけ投入し、その後にバインダ及び粉体を圧縮して粉体成形物Wを成形したが、本明細書に開示の技術はこのような形態に限られない。例えば、
図8に示すように、成形室34にバインダと粉体を交互に複数回投入してもよい。この場合、成形室34内にバインダ層W1と、粉体層W2が交互に複数積層される。このように積層してからプッシャ部材44でバインダ層W1と粉体層W2を圧縮することで、複数の粉体層W2のそれぞれにバインダが浸透し易くなり、粉体全体にバインダを浸透させることができる。また、このようにバインダ及び粉体を交互に複数回投入する場合、例えば、バインダと粉体を供給した後にプッシャ部材44を用いて比較的に小さく力でバインダ及び粉体を圧縮し、粉体層W2にバインダが浸透した仮成形物を成形してもよい。このような形態で粉体成形物Wを成形するときは、仮成形物が成形された後にバインダ及び粉体をさらに投入し、この投入したバインダ及び粉体をさらに圧縮して仮成形体を追加で成形する。以下、所定の回数だけ粉体投入とバインダ投入と仮圧縮を繰り返し、最後はプッシャ部材44により比較的に大きな力で仮成形物と最後に投入されたバインダと粉体を圧縮し、最終的な粉体成形物Wを成形する。これによって、粉体の全体にバインダを好適に浸透させることができる。
【0062】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。