(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154268
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
F16F9/32 L
F16F9/32 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068014
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 竣矢
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直也
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC13
3J069CC15
3J069EE28
3J069EE80
(57)【要約】
【課題】軸長を延長させることなくフリクション機能を付与することが可能な緩衝器を提供する。
【解決手段】摩擦部材31は、ピストン5(ピストン部のピストン本体)の他端側に設けられた減衰弁13(ピストン部の減衰力発生機構)に隣接して設けられるベース部32と、該ベース部32の外周縁部に設けられる摺接部33とを有し、摺接部33をシリンダ壁面2cに摺接させることでフリクション機能を付与するようにしたので、ピストンロッド20の軸長、延いては緩衝器1の全長を延長することなく、緩衝器1にフリクション機能を付与することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダ内を第1室と第2室とに区画するピストン本体と該ピストン本体の移動に伴い減衰力を発生する減衰力発生機構とを有するピストン部と、前記シリンダの他端側開口を閉塞するロッドガイドと、一端側が前記ピストン部に連結され、他端側が前記ロッドガイドに挿通されて前記シリンダの外部へ延出されるピストンロッドと、前記ピストンロッドに摺接され、前記第1室と外部とをシールするシール部材と、前記ピストン部と隣接して設けられる摩擦部材とを備え、前記摩擦部材は、前記ピストンロッドが挿通される軸穴が設けられ、前記ピストン部に当接される円板状のベース部と、該ベース部の外周に設けられ、前記シリンダに摺接される摺接部とを有することを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記ピストン部には、前記第1室と前記第2室とを連通する伸び側通路及び縮み側通路が設けられ、前記ベース部には、該ベース部の一端側と他端側とを連通する連通路が設けられ、前記連通路の流路面積は、前記伸び側通路の流路面積よりも大きく、かつ前記縮み側通路の流路面積よりも大きく設定されることを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緩衝器であって、
前記ピストンロッドは、前記シール部材が摺接される第1軸部と、該第1軸部よりも小径で前記摩擦部材の軸穴に挿通される第2軸部と、前記第1軸部と前記第2軸部との間に設けられ、前記摩擦部材が当接される環状の当接面とを有し、前記摩擦部材には、前記当接面と前記第2軸部との境界部を逃がすための環状の逃げ部が形成されることを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
請求項2に記載の緩衝器であって、
前記連通路は、前記ベース部の一方の端面に形成されて径方向へ延びる溝部と、該溝部と前記ベース部の他方の端面とを連通する穴部とを有することを特徴とする緩衝器。
【請求項5】
請求項2に記載の緩衝器であって、
前記連通路は、第1連通路と第2連通路とを含み、前記第1連通路は、前記ベース部の他端側の面に形成されて径方向へ延びる第1溝部と、該第1溝部と前記ベース部の一端側の面とを連通する第1穴部とを有し、前記第2連通路は、前記ベース部の一端側の面に形成されて径方向へ延びる第2溝部と、該第2溝部と前記ベース部の他端側の面とを連通する第2穴部とをを有し、前記第1溝部と前記第2溝部とは、前記ベース部の周方向に互い違いに配置されることを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンロッドのストロークに対してフリクション機能を付与することにより車両の操安性と乗り心地とを向上させるようにした緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストン8との間で減衰力弁9を挟む補助板11よりも上側に配置された摩擦部材25をシリンダ2の壁面に摺接させることにより、ピストンロッド5の運動にフリクション機能を付与するようにした液圧緩衝器1が開示されている(発明の実施の形態28、以下「従来の緩衝器」と称する)。従来の緩衝器では、高周波振動を含む広範な振動が低減され、車両の操安性と乗り心地とを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の緩衝器の摩擦部材をフリクション機能を持たない緩衝器に適用する場合、当該摩擦部材を補助板(ワッシャ)とバンプストップラバーとの間に配置するため、摩擦部材の軸長(ピストンロッドの軸線方向長さ)の分だけピストンロッドが長くなる。その結果、緩衝器は、全長が長くなり、車両のサスペンション装置に配置する際に全長の制限がある場合、車両への組み付けが困難となる。
【0005】
本発明は、軸長を延長させることなくフリクション機能を付与することが可能な緩衝器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダ内を第1室と第2室とに区画するピストン本体と該ピストン本体の移動に伴い減衰力を発生する減衰力発生機構とを有するピストン部と、前記シリンダの他端側開口を閉塞するロッドガイドと、一端側が前記ピストン部に連結され、他端側が前記ロッドガイドに挿通されて前記シリンダの外部へ延出されるピストンロッドと、前記ピストンロッドに摺接され、前記第1室と外部とをシールするシール部材と、前記ピストン部と隣接して設けられる摩擦部材とを備え、前記摩擦部材は、前記ピストンロッドが挿通される軸穴が設けられ、前記ピストン部に当接される円板状のベース部と、該ベース部の外周に設けられ、前記シリンダに摺接される摺接部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸長を延長させることなくフリクション機能を付与することが可能な緩衝器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る緩衝器の縦断面図である。
【
図3】第1実施形態の説明図であって、摩擦部材の平面図(他端側から見た図)である。
【
図4】第2実施形態の説明図であって、
図2に対応させた図である。
【
図5】第2実施形態の説明図であって、摩擦部材の平面図(他端側から見た図)である。
【
図6】第3実施形態の説明図であって、摩擦部材の平面図(一端側から見た図)である。
【
図7】第3実施形態の説明図であって、
図2に対応させた図である。
【
図8】第3実施形態の説明図であって、摩擦部材の平面図(他端側から見た図)である。
【
図9】第3実施形態の説明図であって、摩擦部材の平面図(一端側から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に示されるように、緩衝器1は、アウタチューブ3の内側にシリンダ2が設けられた複筒構造をなし、シリンダ2とアウタチューブ3との間にはリザーバ4が形成される。シリンダ2内には、該シリンダ2内をシリンダ上室2A(第1室)とシリンダ下室2B(第2室)との2室に区画するピストン5(ピストン部のピストン本体)が摺動可能に嵌装される。
【0010】
緩衝器1は、下端側(一端側)の第2軸部22がピストン5に連結され、上端側(他端側)の第1軸部21がシリンダ上室2Aを通過してシリンダ2の外部へ延出するピストンロッド20を有する。ピストンロッド20は、第2軸部22が第1軸部21よりも小径であり、同軸の第1軸部21と第2軸部22との間には、後述する摩擦部材31が当接される環状の当接面23が形成される。
【0011】
緩衝器1は、シリンダ2の上端部開口(他端側開口)を閉塞するロッドガイド6を有する。ロッドガイド6には、ピストンロッド20の第1軸部21が挿通される。ロッドガイド6の上端面に形成された環状のシート部7には、内周縁部にオイルシール8が固着されたワッシャ9が当接される。オイルシール8は、ピストンロッド20の第1軸部21に摺接され、シリンダ上室2Aと外部とをシールする。ピストンロッド20には、バンプストップラバー26が設けられる。バンプストップラバー26は、ピストンロッド20の第1軸部21の下端部に形成された環状溝27に嵌着されたストッパ28によって受けられる。
【0012】
図1又は
図2に示されるように、ピストン5には、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとを連通する伸び側通路10及び縮み側通路11が設けられる。伸び側通路10及び縮み側通路11には、減衰弁12及び減衰弁13(ピストン部の減衰力発生機構)が設けられる。ピストンロッド20の第2軸部22には、ナット24が取り付けられ、該ナット24を締め付けることにより、ナット24とピストンロッド20の当接面23との間に設けられたピストン部品(当接面23側から順に摩擦部材31、減衰弁13、ピストン5、減衰弁12、ワッシャ25)に軸力が付与される。
【0013】
図1に示されるように、シリンダ2の下端部(一端部)には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを区画するベースバルブ14が設けられる。ベースバルブ14には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを連通する伸び側通路15及び縮み側通路16が設けられる。伸び側通路15には、リザーバ4側からシリンダ下室2B側への作動流体の流通を許容する逆止弁17が設けられる。縮み側通路16には、シリンダ下室2B側の圧力が設定圧力に達したときに開弁してシリンダ下室2B側の圧力をリザーバ4側へ逃すディスクバルブ18が設けられる。なお、作動流体として、シリンダ2内には油液が封入され、リザーバ4内には油液及びガスが封入される。
【0014】
図2又は
図3に示されるように、摩擦部材31は、ピストン5の上側(他端側)の減衰弁13(ピストン部)に隣接して設けられる円板形のベース部32と、該ベース部32の外周縁部に設けられる摺接部33とを有する。該摺接部33は、フッ素系ゴム材料、ニトリルゴム材料等の弾性ゴム材料が適用され、ベース部32の外周縁部に固着(加硫接着)される。摺接部33とシリンダ2の内壁面2c(以下「シリンダ壁面2c」と称する)とのフリクション(摺動抵抗)は、オイルシール8とピストンロッド20の第1軸部21との摺動抵抗よりも大きく設定される。
【0015】
ベース部32には、ピストンロッド20の第2軸部22が挿通される軸穴34と、ベース部32のピストン5側(一端側)の端面35とバンプストップラバー26側(他端側)の端面36とを連通する複数個(第1実施形態では「6個」)の連通路37とが設けられる。連通路37は、ベース部32を軸穴34の軸線に沿う方向(
図2における「上下方向」、以下「軸線方向」と称する)へ貫通する断面形状が一定(第1実施形態では「円形」)の穴によって形成される。
【0016】
連通路37は、軸穴34の周囲に等間隔(第1実施形態では「60°間隔」)で配置される。複数個の連通路37の総流路面積(S1)は、ピストン5に設けられた伸び側通路10の総流路面積(S2)よりも大きく設定され(S1>S2)、かつピストン5に設けられた縮み側通路11の総流路面積(S3)よりも大きく設定される(S1>S3)。
【0017】
ベース部32には、ピストンロッド20の当接面23と第2軸部22との境界部29を逃がすための逃げ部38が形成される。該逃げ部38は、軸穴34の端面36側(他端側)の開口縁部を面取りすることで形成される。
【0018】
次に、第1実施形態の作用を説明する。
ここで、緩衝器1は、車両(自動車)のサスペンション装置(図示省略)に組み付けられ、ピストンロッド20の突出側端部(他端部)が車体側に固定され、アウタチューブ3に接合されたブラケット(図示省略)が車輪側に固定される。
【0019】
ピストンロッド20の伸び行程時には、シリンダ上室2Aの油液(作動流体)が、摩擦部材31の連通路37、ピストン5の伸び側通路10、及び減衰弁12を経由してシリンダ下室2Bへ流れる。このとき、減衰弁12が開弁されることにより、バルブ特性の減衰力が発生する。また、ピストンロッド20がシリンダ2内から突出した体積分の油液が、リザーバ4からベースバルブ14の伸び側通路15を通り、さらに逆止弁17を開弁させてシリンダ下室2Bへ流れる。
【0020】
ピストンロッド20の縮み行程時には、シリンダ下室2Bの油液が、ピストン5の縮み側通路11、減衰弁13、及び摩擦部材31の連通路37を経由してシリンダ上室2Aへ流れる。このとき、減衰弁13が開弁されることにより、バルブ特性の減衰力が発生する。また、ピストンロッド20がシリンダ2内へ突入した体積分の油液が、シリンダ下室2Bからベースバルブ14の縮み側通路16を通り、さらにディスクバルブ18を開弁させてリザーバ4へ流れる。
【0021】
第1実施形態では、ピストンロッド20に固定された摩擦部材31の摺接部33をシリンダ壁面2cに摺接させたので、ピストンロッド20の伸縮時にシリンダ2とピストンロッド20とが軸線方向に相対移動すると、摺接部33がシリンダ壁面2cに対して摺動し、ピストンロッド20の運動に対してフリクション機能を付与することができる。当該フリクション機能は、ピストン5の移動速度(以下「ピストン速度」と称する)が微低速のとき又は振幅が大きいときの低周波振動を減衰させる。
【0022】
他方、フリクション機能は、摺接部33を軸線方向へ粘弾性変形させることにより、ピストン速度に対してフリクションの立ち上がりを若干遅らせるように作用する。これにより、ピストンロッド20の伸縮が切り替わるとき、摺接部33の粘弾性力によって緩衝器1の動ばね定数が大きくなり、ピストン5の振幅が微小であるときの高周波振動を減衰させることができる。なお、ピストン速度に対するフリクションの立ち上がりは、摺接部33の剛性を調節することで制御することができる。
【0023】
ここで、従来の緩衝器では、ピストンとの間で減衰力弁を挟む補助板(第1実施形態における「ベース部32」に相当)よりも上側に配置した摩擦部材を、シリンダ壁面に摺接させてピストンロッドの運動にフリクション機能を付与していたので、摩擦部材の軸長分だけ、フリクション機能を持たない緩衝器に対してピストンロッドが長くなる。その結果、従来の緩衝器では、フリクション機能を持たない緩衝器に対してピストンロッドの延長分だけ全長が長くなり、車両のサスペンション装置に配置する際に全長の制限がある場合、車両への組み付けが困難となる。
【0024】
これに対し、第1実施形態では、摩擦部材31は、ピストン5(ピストン部のピストン本体)の他端側に設けられた減衰弁13(ピストン部の減衰力発生機構)に隣接して設けられるベース部32と、該ベース部32の外周縁部に設けられる摺接部33とを有し、摺接部33をシリンダ壁面2cに摺接させることでフリクション機能を付与するように構成した。換言すれば、従来の緩衝器における補助板(ワッシャ)の外周縁部に摺接部33を設けて摩擦部材31を構成した。
第1実施形態によれば、ピストンロッド20の軸長、延いては緩衝器1の全長を延長することなく、緩衝器1にフリクション機能を付与することが可能であり、フリクション機能を持たない緩衝器への適用が容易である。
第1実施形態では、部品点数を増やすことなく緩衝器1にフリクション機能を付与することが可能であり、組立工数の増加に伴う製造コストの上昇を抑止することができる。
第1実施形態では、連通路37の総流路面積を、ピストン5に設けられた伸び側通路10の総流路面積よりも大きく設定し、かつピストン5に設けられた縮み側通路11の総流路面積よりも大きく設定したので、摩擦部材31がピストン5の伸び側通路10及び縮み側通路11を流れる油液に影響を及ぼす(抵抗になる)ことを抑えることができ、フリクション機能を付与したことによる減衰力特性の変化を抑制することが可能である。
第1実施形態では、摩擦部材31(ベース部32)の軸穴34の他端側(当接面23側)の開口縁部を面取りすることで逃げ部38を形成したので、ピストンロッド20の当接面23と第2軸部22との境界部29に形成される、機械加工に伴う刃先Rやばり等が残る部分を逃がすことができる。これにより、摩擦部材31に、従来の緩衝器における補助部材(ワッシャ)の機能を持たせることが可能であり、部品点数の増加並びにこれに伴うピストンロッド20の軸長の延長を回避することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、
図4乃至
図6を参照して第2実施形態を説明する。
なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。第1実施形態では、摩擦部材31のベース部32を軸線方向へ貫通する円形断面の穴を形成して該穴を連通路37とした。
【0026】
これに対し、第2実施形態における摩擦部材41の連通路42は、ベース部32の上側(他端側)の端面36を径方向(
図4における「左右方向」)へ延出する溝部43と、該溝部43とベース部32の下側(一端側)の端面35とを連通する穴部44とによって構成される。溝部43は、該溝部43の延出方向(径方向)に垂直な平面による断面が長方形に形成される。穴部44は、軸線方向に垂直な平面による断面が半円形に形成され、該半円の頂部がベース部32の外周面45に接するように配置される。
【0027】
連通路42は、軸穴34の周囲に等間隔(第2実施形態では「60°間隔」)で配置される。また、連通路42の総流路面積(S1)は、ピストン5に設けられた伸び側通路10の総流路面積(S2)よりも大きく設定され(S1>S2)、かつピストン5に設けられた縮み側通路11の総流路面積(S3)よりも大きく設定される(S1>S3)。なお、第2実施形態における連通路42の流路面積は、穴部44の流路面積(開口面積)に等しい。
【0028】
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
第2実施形態では、伸び行程時に、摩擦部材31よりも上側(ピストン5側とは反対側)の油液を連通路42の溝部43によって径方向外側へ案内することにより、油液を連通路42の穴部44へ流れやすくする、延いては摩擦部材31がピストン5の伸び側通路10を流れる油液に影響を及ぼす(抵抗になる)ことを抑えることができ、フリクション機能を付与したことによる減衰力特性の変化を抑制することが可能である。
なお、第2実施形態では、溝部43の断面形状を長方形としたが、例えば端面36側に開口する半円形とすることができる。また、穴部44の断面形状を半円形に形成したが、例えば円形とすることができる。
【0029】
(第3実施形態)
次に、
図7乃至
図9を参照して第3実施形態を説明する。
なお、第1又は第2実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。第2実施形態では、ベース部32の上側(他端側)の端面36を径方向へ延出する溝部43(第1溝部)と、該溝部43とベース部32の下側(一端側)の端面35とを連通する穴部44(第1穴部)とを有する連通路42(第1連通路)を、軸穴34の周囲に等間隔(第2実施形態では「60°間隔」)で配置することで摩擦部材41を構成した。
【0030】
これに対し、第3実施形態では、第2実施形態における連通路42(第1連通路)を軸穴34の周囲に等間隔(第3実施形態では「120°間隔」)で配置するとともに、ベース部32の下側(一端側)の端面35を径方向へ延出する溝部53(第2溝部)と、該溝部53とベース部32の上側(他端側)の端面36とを連通する穴部54(第2穴部)とを有する連通路52(第2連通路)を、軸穴34の周囲に等間隔(第3実施形態では「120°間隔」)で配置することで摩擦部材51を構成した。
【0031】
第3実施形態では、連通路42と連通路52とは、軸穴34の周囲(周方向)に互い違いに(異なる位相で)配置される。第3実施形態では、摩擦部材51を軸線方向の視線で見たとき、連通路42と該連通路42に隣接する連通路52とは、60°間隔で配置される。
【0032】
第3実施形態によれば、前述した第1及び第2実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
第3実施形態では、連通路42(第1連通路)と連通路52(第2連通路)とを同位相で配置した場合、即ち摩擦部材51を軸線方向の視線で見たとき連通路42と連通路53とが重なるように配置した場合と比較して、ベース部32の肉厚を確保することが可能であり、摩擦部材51の剛性を確保することができる。これにより、摩擦部材51の撓みを抑制することが可能であり、減衰力特性の変化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 緩衝器、2 シリンダ、2A シリンダ上室(第1室)、2B シリンダ下室(第2室)、5 ピストン(ピストン部のピストン本体)、6 ロッドガイド、8 オイルシール(シール部材)、20 ピストンロッド、31 摩擦部材、32 ベース部、33 摺動部、34 軸穴