(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154284
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241023BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068030
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 智弘
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB12
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB18
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033CA28
2H033CA46
2H033CA48
2H270LA25
2H270MA35
2H270MG02
(57)【要約】
【課題】状況に応じて加熱手段を使い分けることができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置1は、円筒状の定着ベルト31と加圧ローラ32とによって挟持した用紙Pを加熱および加圧し、用紙Pに画像を定着させる。定着装置1は、定着ベルト31の内側に当接し、加圧ローラ32と伴に用紙を加圧するニップ部Nを形成する定着パッド34と、定着パッド34に取り付けられ、正の温度特性を有する発熱体を含むヒータとを備える。搬送される用紙Pの幅方向に沿って延びた少なくとも2つ以上のヒータ(第1ヒータ41および第2ヒータ42)が並列に配置されており、それぞれ電力が異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の定着ベルトと加圧部材とによって挟持した用紙を加熱および加圧し、用紙に画像を定着させる定着装置であって、
前記定着ベルトの内側に当接し、前記加圧部材と伴に用紙を加圧するニップ部を形成する定着パッドと、
前記定着パッドに取り付けられ、正の温度特性を有する発熱体を含むヒータと、を備え、
搬送される用紙の幅方向に沿って延びた少なくとも2つ以上のヒータが並列に配置されており、それぞれ電力が異なること
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
少なくとも2つ以上の前記ヒータは、それぞれ複数の前記発熱体を含み、前記ヒータにおける前記発熱体の密度が異なること
を特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1に記載の定着装置であって、
少なくとも2つ以上の前記ヒータは、それぞれの抵抗が異なること
を特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1に記載の定着装置であって、
少なくとも2つ以上の前記ヒータは、前記搬送方向での上流側から下流側に向かうに従って、電力が小さくなるように配置されていること
を特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記定着ベルトが定着動作を実施する前に予め設定された温度まで前記定着ベルトを加熱する予備加熱では、電力が高い前記ヒータを使用すること
を特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記定着ベルトの温度に応じて、少なくとも2つ以上の前記ヒータのいずれかを切り替えて使用すること
を特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、用紙を加熱および加圧して画像を定着させる定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置では、未定着のトナー像が形成された用紙を加圧および加熱することで、トナー像の定着が行われる。近年では、無端状の定着ベルトを用いた定着装置が提案されており、ヒータによって定着ベルトを加熱している。また、画像形成装置では、様々なサイズの用紙が使用されるようになっているが、定着を繰り返すと、用紙が通過しない領域(非通紙領域)では、温度が徐々に上昇するという問題があった。そこで、用紙の幅方向での発熱分布ムラを抑える方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像形成装置におけるヒータは、基板と、基板長手方向に沿って基板上に設けられている第1導電体と、基板上に第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に設けられている第2導電体と、第1導電体と第2導電体間に並列接続されている複数本の発熱抵抗体とを有し、複数本の発熱抵抗体を有する発熱ブロックが形成されている。そして、1つの発熱ブロックの中で、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが、抵抗値が高い。
【0005】
従来の画像形成装置において、長手方向全体を加熱する際、全ての発熱抵抗体を使用することしかできない。このように、温度状況に応じて、加熱手段を切り替えることが考慮されていないので、効率的な温度制御を行うことができないという課題がある。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、状況に応じて加熱手段を使い分けることができる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る定着装置は、円筒状の定着ベルトと加圧部材とによって挟持した用紙を加熱および加圧し、用紙に画像を定着させる定着装置であって、前記定着ベルトの内側に当接し、前記加圧部材と伴に用紙を加圧するニップ部を形成する定着パッドと、前記定着パッドに取り付けられ、正の温度特性を有する発熱体を含むヒータと、を備え、搬送される用紙の幅方向に沿って延びた少なくとも2つ以上のヒータが並列に配置されており、それぞれ電力が異なることを特徴とする。
【0008】
本開示に係る定着装置では、少なくとも2つ以上の前記ヒータは、それぞれ複数の発熱体を含み、前記ヒータにおける前記発熱体の密度が異なる構成としてもよい。
【0009】
本開示に係る定着装置では、少なくとも2つ以上の前記ヒータは、それぞれの抵抗が異なる構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る定着装置では、少なくとも2つ以上の前記ヒータは、前記搬送方向での上流側から下流側に向かうに従って、電力が小さくなるように配置されている構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る定着装置は、前記定着ベルトが定着動作を実施する前に予め設定された温度まで前記定着ベルトを加熱する予備加熱では、電力が高い前記ヒータを使用する構成としてもよい。
【0012】
本開示に係る定着装置は、前記定着ベルトの温度に応じて、少なくとも2つ以上の前記ヒータのいずれかを切り替えて使用する構成としてもよい。
【0013】
本開示に係る画像形成装置は、本開示に係る定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によると、温度を上昇させる際と一定の温度を保つ際とで、電力が異なるヒータを使い分けることで、効率的な温度制御を行うことができる。一定の温度を保つ際には、電力が低いヒータを使用することで、温度の変動量を小さくして高調波を抑制し、平滑な温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。
【
図5】本開示の第2実施形態の定着パッドを示す平面図である。
【
図6】本開示の第3実施形態の定着パッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態に係る定着装置および画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本開示の第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【0018】
画像形成装置100は、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能およびプリンタ機能を有する複合機であり、画像読取装置130で読み取った原稿の画像を外部に送信したり、画像読取装置130で読み取った原稿の画像または外部から受信した画像を、用紙等の記録媒体上にカラーまたは単色で形成したりする。
【0019】
画像読取装置130の上側には、開閉自在に支持された原稿搬送装置110が設けられている。原稿搬送装置110は、1枚または複数枚の原稿を1枚ずつ順に搬送する。画像読取装置130は、走査光学系130bを走査して原稿載置台130aに載置された原稿を読み取るか、または原稿搬送装置110で搬送される原稿を読み取って画像データを生成する。
【0020】
画像形成装置100には、定着装置1、現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4、帯電器5、中間転写ベルト装置7、2次転写装置11、光走査装置12、および給紙部18等が設けられている。
【0021】
画像形成装置100では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像、または、単色(例えば、ブラック)を用いたモノクロ画像に応じた画像データが扱われる。画像形成装置100には、4種類のトナー像を形成するための現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4、および帯電器5が4つずつ設けられ、それぞれがブラック、シアン、マゼンタおよびイエローに対応付けられて、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0022】
光走査装置12は、感光体ドラム3の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置2は、感光体ドラム3の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム3の表面にトナー像を形成する。ドラムクリーニング装置4は、感光体ドラム3の表面の残留トナーを除去および回収する。帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させる。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム3の表面に各色のトナー像が形成される。
【0023】
中間転写ベルト装置7は、中間転写ローラ6、無端状の中間転写ベルト71、中間転写駆動ローラ72、中間転写従動ローラ73およびクリーニング装置9を備えている。中間転写ローラ6は、各色に応じた4種類のトナー像を形成するようにそれぞれ4つずつ中間転写ベルト71の内側に設けられている。中間転写ローラ6は、感光体ドラム3の表面に形成された各色のトナー像を、周回移動する中間転写ベルト71に転写する。
【0024】
中間転写ベルト71は、中間転写駆動ローラ72および中間転写従動ローラ73に張架されている。画像形成装置100では、各感光体ドラム3の表面に形成された各色のトナー像を順次転写して重ね合わせて、中間転写ベルト71の表面にカラーのトナー像を形成する。クリーニング装置9は、用紙に転写されずに中間転写ベルト71の表面に残った廃トナーを除去および回収する。
【0025】
2次転写装置11は、2次転写ローラ11aと中間転写ベルト71との間の転写ニップ部TNに、用紙搬送路21を通じて搬送されてきた用紙を挟み込んで搬送する。用紙は、転写ニップ部TNを通過する際に、中間転写ベルト71の表面のトナー像が転写されて定着装置1に搬送される。
【0026】
定着装置1は、軸線まわりに回転する定着ベルト31および加圧ローラ32(加圧部材の一例)を備えている。定着装置1は、定着ベルト31および加圧ローラ32の間のニップ部Nに、トナー像が転写された用紙を挟み込んで加熱および加圧し、トナー像を用紙に定着させる。なお、
図1においては図示を省略しているが、定着装置1は、定着ベルト31および加圧ローラ32以外の構成部材も有している。この定着装置1の詳細については、後述する。
【0027】
給紙部18は、画像形成に使用する記録媒体(用紙)を積載する給紙カセットを備えており、光走査装置12の下方に設けられている。用紙は、ピックアップローラ16によって給紙部18から引き出されて、用紙搬送路21に搬送される。用紙搬送路21に搬送された用紙は、2次転写装置11や定着装置1を経由して、排出ローラ17により排紙トレイ19に排出される。
【0028】
用紙搬送路21には、搬送ローラ13、レジストローラ14および排出ローラ17が配置されている。搬送ローラ13は、用紙の搬送を促す。レジストローラ14は、用紙の画像形成を行うプロセススピードと等しい速度で、用紙を搬送する。このレジストローラ14は、給紙部18と2次転写装置11との間に設けられ、2次転写装置11でトナー像が用紙に転写されるように用紙の搬送タイミングを調節する。例えば、レジストローラ14は、給紙部18から搬送された用紙を挟持した状態で待機(一旦停止)させ、2次転写装置11と同期させて一定速度での用紙の搬送を開始する。
【0029】
用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合には、排出ローラ17で用紙の搬送方向が変えられ、反転搬送路22へと用紙が搬送される。反転搬送路22では、反転搬送ローラ15により用紙は表裏が反転された状態でレジストローラ14まで導かれる。画像形成装置100は、レジストローラ14に導かれた用紙を表面と同様にして裏面に画像形成し、排紙トレイ19に排出する。
【0030】
図2は、本開示の第1実施形態に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。
【0031】
定着装置1は、定着ベルト31および加圧ローラ32を備えている。
図2に示すように、定着装置1は、さらに、定着ベルト31の内側に、支持部材33、定着パッド34、および摺動シート35を備えている。また、定着装置1は、定着ベルト31の外側に、定着温度センサ38および剥離板39を備えている。
【0032】
定着ベルト31は、無端状のフレキシブルなベルトであり、略環状に形成されている。定着ベルト31は、例えば、ポリイミド等の合成樹脂またはニッケル等の金属によって形成された帯状の基材の表面に離型層を設けた構成を有する。定着ベルト31は、
図2において紙面に対して垂直方向に沿った軸線を中心に回転可能に設けられている。定着ベルト31の軸線方向は、搬送される用紙Pの幅方向W(後述する
図4参照)と略平行とされている。
【0033】
定着パッド34は、定着ベルト31の軸線方向(後述する幅方向W)に沿って延びる長板状とされ、例えば、合成樹脂により形成されている。定着パッド34の外周面(定着ベルト31に近接する側の面)には、摺動シート35が設置されている。なお、定着パッド34の長さは、定着ベルト31の幅方向Wでの長さと略同等とされている。定着パッド34には、定着ベルト31を加熱する部材であって、正の温度特性(PTC(Positive Temperature Coefficient)特性)を有するヒータが複数取り付けられている。具体的に、ヒータは、PTCヒータとされている。
【0034】
本実施の形態では、搬送される用紙Pの幅方向Wに沿って延びた少なくとも2つ以上のヒータが並列に配置されている。以下では説明のため、ヒータについて、搬送方向Sにおいて、上流側に配置された一方を第1ヒータ41と呼び、下流側に配置された他方を第2ヒータ42と呼んで区別することがある。なお、ヒータの詳細な構成については、後述する
図4を参照して説明する。
【0035】
摺動シート35は、定着ベルト31の内周面と摺接するように設けられている。回転運動を行う定着ベルト31に対して、定着パッド34は固定されており、摺動シート35が定着ベルト31と摺動する。摺動シート35には、定着ベルト31との摩擦力を低減するための潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0036】
支持部材33は、定着パッド34および摺動シート35を、定着ベルト31の内周面に押し当てながら支持する部材である。支持部材33は、断面が略L字状に形成されており、定着パッド34が固定される長板状の固定部33aと、固定部33aの端部から立設される長板状の立設部33bとを有している。
【0037】
加圧ローラ32は、定着ベルト31を挟んで定着パッド34と対向する位置に配置されている。加圧ローラ32は、定着ベルト31の軸線方向に平行な回転軸を中心に回転し、定着ベルト31と略平行に延びるように配置されている。加圧ローラ32と定着ベルト31との間のニップ部Nでは、定着パッド34により定着ベルト31が加圧ローラ32に押圧される。加圧ローラ32は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成される円筒状の芯材の表面を、ゴム等の弾性材によって覆った構成とされている。
【0038】
加圧ローラ32には、図示しないモータ等の駆動源からの駆動力が、ギア等を介して伝達される。加圧ローラ32は、この駆動力を受けて回転駆動し、加圧ローラ32の回転駆動に伴って、定着ベルト31が加圧ローラ32の回転方向とは逆方向に従動回転する。用紙Pは、加圧ローラ32と定着ベルト31との間のニップ部Nを搬送方向Sに沿って通過するものとなる。
【0039】
定着温度センサ38は、定着ベルト31の表面温度である定着温度を検出する。剥離板39は、ニップ部Nよりも搬送方向Sの下流側に配置され、定着ベルト31に対する用紙Pの巻き付きを防止する。
【0040】
【0041】
図3において、横軸は、時間の経過を示し、縦軸は、温度の高低を示している。
図3では、目標温度HTまで加熱される際のヒータの温度の推移を示しており、初期状態は、ヒータが低温とされている。時間が経過するにつれて、ヒータの温度が徐々に上昇しており、目標温度HTに到達すると、ヒータは、自身の抵抗が変化して温度が上がりにくくなり、電流等を制御しなくても、自然と目標温度HTを保つように動作する。このように、ヒータ自身が温度調整機能を有するが、例えば、位相制御により、ヒータへ供給する電流を適切に制御してやることで、PTC特性を持たないヒータと同様に、目標温度HTとは異なる温度を維持したり、温度の上昇カーブを変化させたりするなど、細かな温度制御も可能である。
【0042】
【0043】
図4に示すように、定着パッド34には、2つのヒータ(第1ヒータ41および第2ヒータ42)が取り付けられている。ヒータは、2つの電極の間に、複数の発熱体が掛け渡されている。
【0044】
具体的に、第1ヒータ41は、幅方向Wで間隔を空けて複数並べられた第1発熱体41aと、幅方向Wでの一端側に設けられた第1電極43と、幅方向Wでの他端側に設けられた第3電極45とで構成されている。第1電極43および第3電極45は、幅方向Wに延伸されており、複数の第1発熱体41aは、両端が対応する電極に接続されている。
【0045】
また、第2ヒータ42は、幅方向Wで間隔を空けて複数並べられた第2発熱体42aと、幅方向Wでの一端側に設けられた第2電極44と、第3電極45とで構成されている。第2電極44および第3電極45は、幅方向Wに延伸されており、複数の第2発熱体42aは、両端が対応する電極に接続されている。
【0046】
第3電極45は、第1ヒータ41と第2ヒータ42とで共用される電極とされており、それぞれのヒータに対応した2つの延伸部を有している。このように、1つの電極を共用する構成であっても、もう1つの電極に電流を供給するかどうかを制御することで、使用するヒータを適宜選択することができる。なお、これに限定されず、第3電極45を2つに分離して、第1ヒータ41と第2ヒータ42とで独立した電極を設けた構成としてもよい。
【0047】
第1ヒータ41と第2ヒータ42とは、電力が異なるように設定されており、本実施の形態では、それぞれ発熱体の密度が異なる構成とされている。具体的に、第1ヒータ41における第1発熱体41aの数は、第2ヒータ42における第2発熱体42aの数よりも多くなっており、第1ヒータ41の方が、第2ヒータ42よりもワット密度が高くなっている。このように、発熱体の密度を異ならせることで、ヒータにおける電力(ワット密度)の高低差を容易に設けることができる。なお、
図4において、第2ヒータ42は、模式的に記載しているので、隣り合う発熱体が幅方向Wで重なり合っていないが、実際の配置では、幅方向Wでの重なりがないと、幅方向Wでの加熱ムラが生じる虞がある。そのため、幅方向Wにおいて重なり合う配置とするか、少なくとも隙間がない配置とするのが望ましい。
【0048】
画像形成装置100において、定着ベルト31が定着動作を実施する前に予め設定された温度まで定着ベルト31を加熱する予備加熱(ウォームアップ)では、第1ヒータ41を使用する。そして、定着動作の際には、定着ベルト31の温度に応じて、2つのヒータのいずれかを切り替えて使用しており、所定の温度を超えると第2ヒータ42を使用する。このように、温度を上昇させる際と一定の温度を保つ際とで、電力が異なるヒータを使い分けることで、効率的な温度制御を行うことができる。そして、低温から加熱する際に電力が高い第1ヒータ41を使用するので、予備加熱時間の短縮化による処理の高速化を図ることができる。また、一定の温度を保つ際には、電力が高いヒータを用いるほど、ヒータへ供給する電力を細かく制御したり、位相制御での位相角の大きい制御を多用して発熱量を抑えたりする必要がある。位相角の大きい制御の多用は、高調波ノイズの発生原因にもなり得るので望ましくない。しかし、電力が低い第2ヒータ42を使用することで、ヒータへ供給する電力を細かく制御する必要がなくなり、温度の変動量を小さくして高調波を抑制し、平滑な温度制御を行うことができる。
【0049】
ヒータの出力を調整する際には、位相制御を組み合わせてもよい。例えば、第1ヒータ41を使用している際、目標の温度に近づくに従って、位相制御によって出力を少しずつ下げていき、ある段階を越えたところで、第2ヒータ42を使用するようにすればよい。このように、位相制御を組み合わせることで、より細かく出力を調整することができる。
【0050】
上述したように、第1ヒータ41および第2ヒータ42は、搬送方向Sでの上流側から下流側に向かうに従って、電力が小さくなるように配置されている。画像形成装置100において、ウォームアップ直後のジョブなどでは、温度低下が起きやすい。そこで、電力が高いヒータをニップ部Nの上流に配置することで、ニップ部Nの終端に至るまでの距離を確保することができ、用紙Pを充分に加熱することができる。
【0051】
第1電極43と第2電極44とは、スイッチ等を介して、電源回路に並列に接続されていてもよい。画像形成装置100では、制御部からの指示によって、スイッチ等を作動させることで、第1ヒータ41と第2ヒータ42とのいずれかを切り替えて使用することができる。このように、第1ヒータ41と第2ヒータ42とを切り替えて使用する構成とされているので、これらに接続される電源や回路等の部品を共通化でき、低コスト化を図ることができる。また、いずれか一方に通電するので、何らかの不具合によって全ての加熱手段に通電されたときに、電流容量を超えることを回避できる。上述したスイッチ等は、物理的に接続先を切り替える構成に限らず、入力された信号等に応じて電気的に接続先を切り替える構成としてもよい。
【0052】
本実施の形態では、2つのヒータを並列に配置した構成としたが、これに限定されず、3つ以上のヒータを並列に配置してもよく、ヒータの数を適宜変更してもよい。電力が異なるヒータをさらに増やすことで、より細かく区切って、段階的に出力を調整することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0054】
第2実施形態では、第1実施形態に対し、第2ヒータ42の構成が異なっている。なお、第2実施形態は、
図1ないし
図4に示す第1実施形態と略同様の構成とされているので、説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0055】
図5は、本開示の第2実施形態の定着パッドを示す平面図である。
【0056】
第2実施形態において、第2ヒータ42における第2発熱体42aの数は、第1ヒータ41における第1発熱体41aの数と同じになっているが、第2発熱体42aは、第1発熱体41aよりも抵抗が高くなっている。このように、発熱体の抵抗を異ならせることで、第1ヒータ41の抵抗と第2ヒータ42の抵抗とを異ならせることができる。詳しくは、第1電極43と第3電極45との間の抵抗と、第2電極44と第3電極45との間の抵抗とが異なる。このように各ヒータにおける抵抗値が異なるので、ヒータにおける電力(ワット密度)の高低差を容易に設けることができる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0058】
第3実施形態では、第1実施形態に対し、第2ヒータ42の構成が異なっている。なお、第2実施形態は、
図1ないし
図5に示す第1実施形態および第2実施形態と略同様の構成とされているので、説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0059】
図6は、本開示の第3実施形態の定着パッドを示す平面図である。
【0060】
第3実施形態において、第2ヒータ42における第2発熱体42aの数は1つであるが、幅方向Wに亘って長く配置されている。具体的に、第2発熱体42aの幅方向Wでの長さは、第1ヒータ41における複数の第1発熱体41aを設けた範囲と略同じになっている。つまり、第1ヒータ41および第2ヒータ42について、幅方向Wでの加熱範囲は、略同じとされている。この場合において、第2発熱体42aは、第1発熱体41aよりも抵抗が高くなっている。第2発熱体42aの抵抗をRとし、第1発熱体41aの抵抗をrとし、第1抵抗体41aの個数をNとすると、第1発熱体41aと第2発熱体42aとの関係は、R>N/rを満たす。このように、発熱体のサイズを大きくするとともに抵抗を異ならせても、第1ヒータ41の抵抗と第2ヒータ42の抵抗とを異ならせることができる。詳しくは、第1電極43と第2電極45との間の抵抗と、第2電極44と第3電極45との間の抵抗とが異なる。このように、各ヒータにおける抵抗値が異なるので、ヒータにおける電力(ワット密度)の高低差を容易に設けることができる。
【0061】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 定着装置
31 定着ベルト
32 加圧ローラ(加圧部材の一例)
34 定着パッド
36 加熱部
41 第1ヒータ
42 第2ヒータ
100 画像形成装置
W 幅方向