(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154286
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】高周波焼入システム
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20241023BHJP
C21D 1/62 20060101ALI20241023BHJP
C21D 1/42 20060101ALI20241023BHJP
C21D 1/10 20060101ALI20241023BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20241023BHJP
H05B 6/42 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H05B6/10 331
C21D1/62
C21D1/42 J
C21D1/10 G
H05B6/36 D
H05B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068034
(22)【出願日】2023-04-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月1日~令和4年6月3日のサーモテック2022第8回国際工業炉・関連機器展にて
(71)【出願人】
【識別番号】390026088
【氏名又は名称】富士電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】増谷 有亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘子
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA09
3K059AB09
3K059AB19
3K059CD75
3K059CD79
(57)【要約】
【課題】本開示の高周波焼入システムは、誘導コイルの取り替えを自動的に行うことができる。
【解決手段】本開示の高周波焼入システムは、第1コイルユニットと、第2コイルユニットと、基端側部材と、交換機構とを有する高周波焼入システムであって、交換機構により、第1結合状態から第2結合状態へと結合状態を変更する場合、第1基端側電極と第1リード部とが接触し第1凸部と第1凹部とが嵌合している状態から、第1基端側電極と第3リード部とが接触し第1凸部と第3凹部とが嵌合する状態へと変更され、第2基端側電極と第2リード部とが接触し第2凸部と第2凹部とが嵌合している状態から、第2基端側電極と第4リード部とが接触し第2凸部と第4凹部とが嵌合する状態へと変更されるものである。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルユニットと、第2コイルユニットと、基端側部材と、交換機構とを有する高周波焼入システムであって、
交換機構は、第1コイルユニットと基端側部材とが結合している第1結合状態から第2コイルユニットと基端側部材とが結合している第2結合状態へと結合状態を変更するものであって、
基端側部材は、第1基端側電極と、第2基端側電極と、第1基端側電極から突出した第1凸部と、第2基端側電極から突出した第2凸部とを有し、
第1コイルユニットは、第1誘導コイルと、第1誘導コイルに電力を供給する第1リード部及び第2リード部と、第1リード部に設けられた第1凹部と、第2リード部に設けられた第2凹部とを有し、
第2コイルユニットは、第2誘導コイルと、第2誘導コイルに電力を供給する第3リード部及び第4リード部と、第3リード部に設けられた第3凹部と、第4リード部に設けられた第4凹部とを有し、
交換機構により、第1結合状態から第2結合状態へと結合状態を変更する場合、第1基端側電極と第1リード部とが接触し第1凸部と第1凹部とが嵌合している状態から、第1基端側電極と第3リード部とが接触し第1凸部と第3凹部とが嵌合する状態へと変更され、
第2基端側電極と第2リード部とが接触し第2凸部と第2凹部とが嵌合している状態から、第2基端側電極と第4リード部とが接触し第2凸部と第4凹部とが嵌合する状態へと変更される高周波焼入システム。
【請求項2】
第1コイルユニットと、第2コイルユニットと、基端側部材と、交換機構とを有する高周波焼入システムであって、
交換機構は、第1コイルユニットと基端側部材とが結合している第1結合状態から第2コイルユニットと基端側部材とが結合している第2結合状態へと結合状態を変更するものであって、
基端側部材は、第1基端側電極と、第2基端側電極と、第1基端側電極に設けられた第1凹部と、第2基端側電極に設けられた第2凹部とを有し、
第1コイルユニットは、第1誘導コイルと、第1誘導コイルに電力を供給する第1リード部及び第2リード部と、第1リード部から突出した第1凸部と、第2リード部から突出した第2凸部とを有し、
第2コイルユニットは、第2誘導コイルと、第2誘導コイルに電力を供給する第3リード部及び第4リード部と、第3リード部から突出した第3凸部と、第4リード部から突出した第4凸部とを有し、
交換機構により、第1結合状態から第2結合状態へと結合状態を変更する場合、第1基端側電極と第1リード部とが接触し第1凹部と第1凸部とが嵌合している状態から、第1基端側電極と第3リード部とが接触し第1凹部と第3凸部とが嵌合する状態へと変更され、
第2基端側電極と第2リード部とが接触し第2凹部と第2凸部とが嵌合している状態から、第2基端側電極と第4リード部とが接触し第2凹部と第4凸部とが嵌合する状態へと変更される高周波焼入システム。
【請求項3】
第1凸部、第1凹部、第2凸部、第2凹部、第3凹部、第4凹部、第1誘導コイル、第2誘導コイルのそれぞれは、内部に冷却剤を流す空洞を有し、
第1結合状態の時、第1凸部、第1凹部、第2凸部、第2凹部、第1誘導コイルのそれぞれの空洞の内部を冷却剤が流れ、
第2結合状態の時、第1凸部、第3凹部、第2凸部、第4凹部、第2誘導コイルのそれぞれの空洞の内部を冷却剤が流れる請求項1又は2に記載の高周波焼入システム。
【請求項4】
第1凹部には第1凹部の内側に突出する第1のOリングが配置され、第2凹部には第2凹部側の内側に突出する第2のOリングが配置され、
第3凹部には第3凹部の内側に突出する第3のOリングが配置され、第4凹部には第4凹部側の内側に突出する第4のOリングが配置され、
第1結合状態のとき、第1凸部と第1のOリングとが接触し、第2凸部と第2のOリングとが接触し、
第2結合状態のとき、第1凸部と第3のOリングとが接触し、第2凸部と第4のOリングとが接触する請求項1又は2に記載の高周波焼入システム。
【請求項5】
第1結合状態のとき、第1凸部と第1凹部とが嵌合し、第2凸部と第2凹部とが嵌合して、第1基端側電極と第1リード部、第2基端側電極と第2リード部の位置合わせがなされる請求項1又は2に記載の高周波焼入システム。
【請求項6】
第2結合状態のとき、第1凸部と第3凹部とが嵌合し、第2凸部と第4凹部とが嵌合して、第1基端側電極と第3リード部、第2基端側電極と第4リード部の位置合わせがなされる請求項1又は2に記載の高周波焼入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動的に誘導コイルを取り替える高周波焼入システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高周波焼入は大量生産に適する技術であり、多品種少量生産には不向きであると言われている。
なぜなら、高周波焼入は、誘導コイルをワークに近接させてワークに誘導電流を発生させるものであるため、誘導コイルとワークとの間の距離を一定に保つ必要があり、ワークの形状が変わると、その度に使用する誘導コイルも変えなければならないからである。
【0003】
そこで、従来技術である特許文献1では、複数のワークに対応する複数の誘導コイルを準備しておき、自動的に誘導コイルを取り替えて、多品種少量生産に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、特許文献1の高周波焼入システム100の概略の構成について説明する。
図10に示す様に、特許文献1の高周波焼入システム100は、産業用ロボット102のアーム103と、基端側部材106と、コイルユニット105とを備えている。
産業用ロボット102は、移動手段であり、産業用ロボット102のアーム103でコイルユニット105を保持する。
高周波焼入システム100では、産業用ロボット102のアーム103に基端側部材106が取り付けられており、基端側部材106にコイルユニット105が接続されている。
【0006】
コイルユニット105は、
図10、
図11に示すように、略「コ」の字状の筐体110に誘導コイル115が取り付けられたものである。
筐体150は、
図10に示す様に天面を形成するユニット側フランジ部材120と、左右の側壁部121,122の3面を有し、他の3面が開放された構造をしている。
ユニット側フランジ部材120の表面には、2個の位置決め孔123a,123bが設けられている。
またユニット側フランジ部材120の表面には、冷却液導入口125a,125b,125cと冷却液排出口126a,126b,126cとの組み合わせを3組備えている。
【0007】
図11に示す様に、誘導コイル115は、小型の半開放鞍型コイルであり、ワークに対してワークの半径方向に接近及び離間することができる。
また、誘導コイル115は、銅合金等の良導体で構成された中空の導線で構成されており、誘導コイル115の内部を冷却液が流通する。
コイルユニット105には、誘導コイル115と電気的につながるコイル側接点130a,130bが設けられている。コイル側接点130a,130bは、給電部131a,131bを介して誘導コイル115と電気的につながっている。
【0008】
コイル側接点130a,130bは、
図11の姿勢を基準として水平に配されたバーである。
誘導コイル115のコイル側接点130a,130bはユニット側フランジ部材120から突出した位置にあり、コイル側接点130a,130bの表面は、ユニット側フランジ部材120の表面と平行に配置されている。
給電部131a,131b及び誘導コイル115の内部は空洞であって、冷却液流路が形成されている。そして
図11の様に、冷却液導入口125aと冷却液排出口126aのコイルユニット105の内部側の開口が、チューブ136a,136bを介して冷却液流路に接続されている。
冷却液導入口125bと冷却液排出口126b、冷却液導入口125cと冷却液排出口126cも、冷却液導入口125aと冷却液排出口126aと同様の構造である。
【0009】
次に基端側部材106について説明する。基端側部材106は、基端側枠142と、スライド部材140と、基端側接点143a,143bとを有している。
基端側枠142は、天面と底面を含む4面が囲まれた枠である。
即ち基端側枠142は、天面となる取り付け壁141と、底面となる基端側フランジ部材145とを有し、さらに両者を接続する側面壁146a,146bを有している。基端側枠142は、4面が囲まれた枠であり、内部は空洞である。
基端側部材106の内部において、電極である直方体の基端側接点143a,143bが設けられている。
【0010】
次に、高周波焼入システム100における基端側部材106とユニット側フランジ部材120との接合方法について、説明する。
【0011】
図10に示す様に、基端側部材106とユニット側フランジ部材120とが接続する際、基端側部材106の2個の位置決めピン147a,147bと、ユニット側フランジ部材120の2個の位置決め孔123a,123bとが嵌合して、位置合わせが行われる。
【0012】
基端側部材106の基端側接点143a,143bの下面と、コイルユニット105のコイル側接点130a,130bの上面のそれぞれが接触する。
【0013】
基端側フランジ部材145の下面に設けられた冷却液供給口148a,148b,148cと、ユニット側フランジ部材120の上面に設けられた冷却液導入口125a,125b,125cとが合致する。またユニット側フランジ部材120の冷却液排出口126a,126b,126cと、基端側フランジ部材145の冷却液回収口150a,150b,150cとが合致する。
【0014】
特許文献1では、冷却液が漏れないように、基端側フランジ部材145の表面には冷却液供給口148a,148b,148c及び冷却液回収口150a,150b,150cにはそれぞれOリング144が設けられている。そのことにより、基端側フランジ部材145側の表面の各孔(冷却液供給口148a~148c,冷却液回収口150a~150c)と、ユニット側フランジ部材120の各孔(冷却液導入口125a~125c,冷却液排出口126a~126c)とは液密性を保った状態で接合される。
また、Oリング144は、ユニット側フランジ部材120の冷却液導入口125a~125c,冷却液排出口126a~126cの上にせ、液密性を保つ場合もある。
【0015】
しかしながら、特許文献1では、冷却液が漏れないようにするため、基端側部材106とユニット側フランジ部材120とに大きな力を加えないと、基端側部材106とユニット側フランジ部材120とを密着させることができないという課題を有していた。
また、特許文献1では、大きな力を加えるため、Oリング144、その他の部材の寿命が短くなるという課題を有していた。
本開示の高周波焼入システムは、上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の一態様に係る高周波焼入システムは、第1コイルユニットと、第2コイルユニットと、基端側部材と、交換機構とを有する高周波焼入システムであって、交換機構は、第1コイルユニットと基端側部材とが結合している第1結合状態から第2コイルユニットと基端側部材とが結合している第2結合状態へと結合状態を変更するものであって、基端側部材は、第1基端側電極と、第2基端側電極と、第1基端側電極から突出した第1凸部と、第2基端側電極から突出した第2凸部とを有し、第1コイルユニットは、第1誘導コイルと、第1誘導コイルに電力を供給する第1リード部及び第2リード部と、第1リード部に設けられた第1凹部と、第2リード部に設けられた第2凹部とを有し、第2コイルユニットは、第2誘導コイルと、第2誘導コイルに電力を供給する第3リード部及び第4リード部と、第3リード部に設けられた第3凹部と、第4リード部に設けられた第4凹部とを有し、交換機構により、第1結合状態から第2結合状態へと結合状態を変更する場合、第1基端側電極と第1リード部とが接触し第1凸部と第1凹部とが嵌合している状態から、第1基端側電極と第3リード部とが接触し第1凸部と第3凹部とが嵌合する状態へと変更され、第2基端側電極と第2リード部とが接触し第2凸部と第2凹部とが嵌合している状態から、第2基端側電極と第4リード部とが接触し第2凸部と第4凹部とが嵌合する状態へと変更されるものである。
本開示の別の態様に係る高周波焼入システムは、第1コイルユニットと、第2コイルユニットと、基端側部材と、交換機構とを有する高周波焼入システムであって、交換機構は、第1コイルユニットと基端側部材とが結合している第1結合状態から第2コイルユニットと基端側部材とが結合している第2結合状態へと結合状態を変更するものであって、基端側部材は、第1基端側電極と、第2基端側電極と、第1基端側電極に設けられた第1凹部と、第2基端側電極に設けられた第2凹部とを有し、第1コイルユニットは、第1誘導コイルと、第1誘導コイルに電力を供給する第1リード部及び第2リード部と、第1リード部から突出した第1凸部と、第2リード部から突出した第2凸部とを有し、第2コイルユニットは、第2誘導コイルと、第2誘導コイルに電力を供給する第3リード部及び第4リード部と、第3リード部から突出した第3凸部と、第4リード部から突出した第4凸部とを有し、交換機構により、第1結合状態から第2結合状態へと結合状態を変更する場合、第1基端側電極と第1リード部とが接触し第1凸部と第1凹部とが嵌合している状態から、第1基端側電極と第3リード部とが接触し第1凹部と第3凸部とが嵌合する状態へと変更され、第2基端側電極と第2リード部とが接触し第2凹部と第2凸部とが嵌合している状態から、第2基端側電極と第4リード部とが接触し第2凹部と第4凸部とが嵌合する状態へと変更されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本開示の高周波焼入システムは、小さな力で基端側部材とユニット側フランジ部材と密着させることが可能である。また、Oリング、その他の部材の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態1における焼入れロボットの概略の斜視図である。
【
図2】本実施形態1における基端側部材の内部を捉えた高周波焼入システムの概略の斜視図である。
【
図3】本実施形態1における第1コイルユニットの上面を捉えた高周波焼入システムの概略の斜視図である。
【
図4】本実施形態1における基端側部材と第1コイルユニットとが装着されている状態の概略の断面図である。
【
図5】
図4における第1基端側電極及び第2基端側電極周辺の概略の断面図である。
【
図6】本実施形態1における第2コイルユニットの上面を捉えた高周波焼入システムの概略の斜視図である。
【
図7】本実施形態1における第1コイルユニットと第2コイルユニットとを交換する動作を示す概略の斜視図で、(a)は、第1コイルユニットが装着されている状態を示す図であり、(b)は、第1コイルユニットを第1コイルユニット台に設置する状態を示す図であり、(c)は、第2コイルユニットが装着されている状態を示す図であり、(d)は、第2コイルユニットを第2コイルユニット台に設置する状態を示す図である。
【
図8】変形例における基端側部材の下面を捉えた高周波焼入システムの概略の斜視図である。
【
図9】変形例における第1コイルユニットの上面を捉えた高周波焼入システムの概略の斜視図である。
【
図10】従来技術の高周波焼入れシステムの概略の斜視図である。
【
図11】従来技術の高周波焼入れシステムのコイルユニットの概略の斜視図である。
【
図12】従来技術の高周波焼入れシステムの基端側部材の概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示により具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0020】
(実施形態1)
(焼入れロボットについて)
まず、本開示の一態様の焼入れロボット40の概略について、説明する。
図1は、本実施形態1における焼入れロボット40の概略の斜視図である。
図1に示す様に、焼入れロボット40は、搬入エリア44と、焼入れエリア45と、交換エリア46とを有する。
焼入れエリア45及び交換エリア46には、ワークに焼入れを行う高周波焼入システム1が配置されている。
搬入エリア44は、ワークが搬入され、搬入されたワークを搬送装置で焼入れエリア45に搬送するエリアである。
【0021】
焼入れエリア45は、第2ハンド部47で焼入れエリア45にあるワークを焼入れエリア45にある載置台に載置し、後述する第1コイルユニット5または第2コイルユニットで、載置台に載置されたワークに誘導加熱による高周波焼入れを行うエリアである。
交換エリア46は、第1コイルユニット5と第2コイルユニットとの交換エリアである。具体的には、第1ハンド部42の基端側部材3に装着されている第1コイルユニット5を、第1コイルユニット台51に設置する。そして、第1コイルユニット5の替りに、第2コイルユニット台52に設置されている第2コイルユニットを基端側部材3に装着させる。基端側部材3に装着された第2コイルユニットにより、焼入れエリア45にあるワークに誘導加熱による高周波焼入れを行う。
【0022】
図1、2、6に示す様に、高周波焼入システム1は、基端側部材3と、第1コイルユニット5と、第2コイルユニット6とを有する。
次に、高周波焼入システム1の詳細について、説明する。
(基端側部材、第1コイルユニット及び第2コイルユニットについて)
【0023】
図2に示す様に、高周波焼入システム1は、移動手段41の第1ハンド部42と、基端側部材3と、第1コイルユニット5とを備えている。
移動手段41は第1ハンド部42を移動させるもので、第1コイルユニット5は第1ハンド部42に保持されている。
高周波焼入システム1では、基端側部材3に第1コイルユニット5が接続されている。
【0024】
基端側部材3について説明する。
基端側部材3は、第1基端側電極10及び第2基端側電極11を有している。第1基端側電極10及び第2基端側電極11は、銅などの導電性の板状である。
第1基端側電極10には、銅などの導電性の第1凸部12が配置されている。
第2基端側電極11には、銅などの導電性の第2凸部13が配置されている。
【0025】
第1コイルユニット5について説明する。
図3に示す様に、第1コイルユニット5は、第1リード部21と、第2リード部22と、後述する第1電極28aと、後述する第2電極28bと、第1誘導コイル27とを有する。
第1リード部21と、第1電極28aと、第1誘導コイル27と、第2電極28bと、第2リード部22とは、この順に接続され、電気的に繋がっている。
第1電極28a、第2電極28b、第1誘導コイル27の内部は空洞であって、冷却液が流れる冷却液流路が形成されている。
【0026】
第1リード部21の表面には第1凹部23が配置され、第2リード部22の表面には第2凹部24が配置されている。
図3の真ん中の拡大図に示す様に、第2凹部24の内部の任意の位置には、第2のOリング26が配置されている。第2のOリング26の上面は、第2凹部24の上部からは飛び出していない。
また、第2のOリング26と同様に、第1凹部23の内部の任意の位置には、第1のOリング25が配置されている。第1のOリング25の上面は、第1凹部23の上部からは飛び出していない。
基端側部材3と第1コイルユニット5とが接合される際、第1凸部12と第1のOリング25とが嵌合し、第2凸部13と第2のOリング26とが嵌合する。
【0027】
図2、3に示す様に、第1コイルユニット5は、略「コ」の字状の筐体15に第1誘導コイル27が取り付けられたものである。
第1誘導コイル27は、小型の半開放鞍型コイルであり、ワークに対してワークの半径方向に接近及び離間することができる。
上記したように、第1誘導コイル27は、銅合金等の良導体で構成された中空の導線で構成されており、第1誘導コイル27の内部を冷却液が流通する。
【0028】
第2コイルユニット6について説明する。
第2コイルユニット6は、基本的に、第1コイルユニット5と同じ構成である。
図6に示す様に、第2コイルユニット6は、第3リード部31と、第2電極38a(図示せず)と、第2電極38b(図示せず)と、第4リード部32と、第2誘導コイル37とを有する。
第3リード部31と、第2電極38aと、第2電極38bと、第4リード部32とは、この順に接続され、電気的に繋がっている。
第2電極38aと、第2電極38b、第2誘導コイル37の内部は空洞であって、冷却液が流れる冷却液流路が形成されている。
【0029】
第3リード部31の表面には第3凹部33が配置され、第4リード部32の表面には第4凹部34が配置されている。
第3凹部33の内部の任意の位置には、第3のOリング35が配置されている。第3のOリング35の上面は、第3凹部33の上部からは飛び出していない。
また、第4凹部34の内部の任意の位置には、第4のOリング36が配置されている。第4のOリング36の上面は、第4凹部34の上部からは飛び出していない。
【0030】
基端側部材3と第2コイルユニット6とが接合される際、第1凸部12と第3のOリング35とが嵌合し、第2凸部13と第4のOリング36とが嵌合する。
【0031】
第2誘導コイル37は、小型の半開放鞍型コイルであり、ワークに対してワークの半径方向に接近及び離間することができる。
第2誘導コイル37は、銅合金等の良導体で構成された中空の導線で構成されており、第2誘導コイル37の内部を冷却液が流通する。
【0032】
(第1コイルユニット及び第2コイルユニットの交換動作)
図4は、実施形態1における基端側部材3と第1コイルユニット5とが装着されている状態の概略の断面である。
図5は、
図4における第1基端側電極10及び第2基端側電極11周辺の概略の断面図である。
図7は、実施形態1における第1コイルユニット5と第2コイルユニット6とを交換する動作を示す概略の斜視図である。
図4、5、7を用いて、第1コイルユニット5と第2コイルユニット6とを交換する動作について説明する。
【0033】
図4、5、7(a)に示す様に、基端側部材3と第1コイルユニット5とが装着されている。
図4に示す様に、第1基端側電極10と第1リード部21とが接触し、第1基端側電極10と第1リード部21とが電気的に接続され、第2基端側電極11と第2リード部22とが接触し、第2基端側電極11と第2リード部22とが電気的に接続されている。
【0034】
上記により、基端側部材3から高周波の電力が、第1誘導コイル27の第1コイル部29に供給される。第1コイル部29に高周波の電力が供給されることで、第1コイル部29は近接したワークに誘導加熱が行われる。
また、第1基端側電極10を介して、第1誘導コイル27の内部を冷却液が流通する。
【0035】
図5に示す様に、第1凸部12と第1凹部23とが嵌合し、第2凸部13と第2凹部24とが嵌合している。
第1凹部23の任意の位置に配置された第1のOリング25は第1凸部12の外表面と密着し、第2凹部24の任意の位置に配置された第2のOリング26は第2凸部13の外表面と密着している。
そのことにより、第1誘導コイル27の内部を冷却液が通過しても、外部に漏れ出すことはない。
第1のOリング25及び第2のOリング26は、半径方向には容易に変形するので、小さな力で基端側部材とコイルユニットと密着させることができる。
上記態様によれば、高周波焼入システムは、小さな力で基端側部材とコイルユニットと密着させることが可能である。また、Oリング、その他の部材の寿命を長くすることができる。また、基端側部材と、第1コイルユニットまたは第2コイルユニットとを容易に位置合せすることができる。
【0036】
(STEP1)
STEP1では、
図7(b)に示す様に、基端側部材3から第1誘導コイル27が離脱され、第1コイルユニット台51に第1誘導コイル27が設定される。
【0037】
(STEP2)
STEP2では、基端側部材3は、一旦、
図7(a)の位置に戻る。そして、基端側部材3は、
図7(c)のように、第2コイルユニット6が設置されている第2コイルユニット台52の上に移動する。
【0038】
(STEP3)
STEP3では、
図7(d)に示す様に、基端側部材3が降下し、基端側部材3と第2コイルユニット6とが接合する。
【0039】
(STEP4)
まず、STEP4では、
図7(c)に示す様に、第2コイルユニット6が装着された基端側部材3を上昇させる。
次に、移動手段41で、第2コイルユニット6を焼入れエリア45に移動させる。
次に、第2コイルユニット6を載置台に載置されたワークに近接させる。
最後に、第2コイルユニット6で、載置台に載置されたワークに誘導加熱による高周波焼入れを行う。
(変形例)
【0040】
変形例について、説明する。
図8は変形例の基端側部材3の下面を捉えた高周波焼入システム1の概略の斜視図で、
図9は変形例の第1コイルユニット5の上面を捉えた高周波焼入システム1の概略の斜視図である。
変形例は、基端側部材3における第1凸部12が第1凹部23になっており、基端側部材3における第2凸部13が第2凹部24になっている点が、実施形態1と異なっている。他の構成は、実施形態1と同じであるので、説明を省略する。
【0041】
図8に示す様に、第1基端側電極10に第1凹部23が設けられ、第2基端側電極11に第2凹部24が設けられている。
第1凹部23の内部の任意の位置には、第1のOリング25が配置されている。第1のOリング25の上面は、第1凹部23の上部からは飛び出していない。
また、第2凹部24の内部の任意の位置には、第2のOリング26が配置されている。第2のOリング26の上面は、第2凹部24の上部からは飛び出していない。
【0042】
基端側部材3と第1コイルユニット5とが接合される際、第1凸部12と第1のOリング25とが嵌合し、第2凸部13と第2のOリング26とが嵌合する。
その際、第1凹部23の任意の位置に配置された第1のOリング25は第1凸部12の外表面と密着し、第2凹部24の任意の位置に配置された第2のOリング26は第2凸部13の外表面と密着している。
上記態様によれば、第1のOリング及び第2のOリングは、半径方向には容易に変形するので、小さな力で基端側部材とコイルユニットと密着させることができるので、第1誘導コイルの内部を冷却液が通過しても、外部に漏れ出すことはない。
また、Oリング、その他の部材の寿命を長くすることができる。
また、基端側部材と、第1コイルユニットまたは第2コイルユニットとを容易に位置合せすることができる。
【0043】
尚、
図1では交換エリア46に第1コイルユニット5と第2コイルユニット6しか記載していないが、3個以上のコイルユニットが配置されていてもよい。
【0044】
尚、実施形態1、変形例に係る発明は、矛盾が生じない限り、置き換えたり、組合せたりすることができる。
【0045】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の高周波焼入システムを含む。
【0046】
〔項目1〕
第1コイルユニットと、第2コイルユニットと、基端側部材と、交換機構とを有する高周波焼入システムであって、
交換機構は、第1コイルユニットと基端側部材とが結合している第1結合状態から第2コイルユニットと基端側部材とが結合している第2結合状態へと結合状態を変更するものであって、
基端側部材は、第1基端側電極と、第2基端側電極と、第1基端側電極から突出した第1凸部と、第2基端側電極から突出した第2凸部とを有し、
第1コイルユニットは、第1誘導コイルと、第1誘導コイルに電力を供給する第1リード部及び第2リード部と、第1リード部に設けられた第1凹部と、第2リード部に設けられた第2凹部とを有し、
第2コイルユニットは、第2誘導コイルと、第2誘導コイルに電力を供給する第3リード部及び第4リード部と、第3リード部に設けられた第3凹部と、第4リード部に設けられた第4凹部とを有し、
交換機構により、第1結合状態から第2結合状態へと結合状態を変更する場合、第1基端側電極と第1リード部とが接触し第1凸部と第1凹部とが嵌合している状態から、第1基端側電極と第3リード部とが接触し第1凸部と第3凹部とが嵌合する状態へと変更され、
第2基端側電極と第2リード部とが接触し第2凸部と第2凹部とが嵌合している状態から、第2基端側電極と第4リード部とが接触し第2凸部と第4凹部とが嵌合する状態へと変更される高周波焼入システム。
上記態様によれば、第1のOリング及び第2のOリングは、半径方向には容易に変形するので、小さな力で基端側部材とコイルユニットと密着させることができるので、第1誘導コイルの内部を冷却液が通過しても、外部に漏れ出すことはない。
また、Oリング、その他の部材の寿命を長くすることができる。
また、基端側部材と、第1コイルユニットまたは第2コイルユニットとを容易に位置合せすることができる。
【0047】
〔項目2〕
第1コイルユニットと、第2コイルユニットと、基端側部材と、交換機構とを有する高周波焼入システムであって、
交換機構は、第1コイルユニットと基端側部材とが結合している第1結合状態から第2コイルユニットと基端側部材とが結合している第2結合状態へと結合状態を変更するものであって、
基端側部材は、第1基端側電極と、第2基端側電極と、第1基端側電極に設けられた第1凹部と、第2基端側電極に設けられた第2凹部とを有し、
第1コイルユニットは、第1誘導コイルと、第1誘導コイルに電力を供給する第1リード部及び第2リード部と、第1リード部から突出した第1凸部と、第2リード部から突出した第2凸部とを有し、
第2コイルユニットは、第2誘導コイルと、第2誘導コイルに電力を供給する第3リード部及び第4リード部と、第3リード部から突出した第3凸部と、第4リード部から突出した第4凸部とを有し、
交換機構により、第1結合状態から第2結合状態へと結合状態を変更する場合、第1基端側電極と第1リード部とが接触し第1凹部と第1凸部とが嵌合している状態から、第1基端側電極と第3リード部とが接触し第1凹部と第3凸部とが嵌合する状態へと変更され、
第2基端側電極と第2リード部とが接触し第2凹部と第2凸部とが嵌合している状態から、第2基端側電極と第4リード部とが接触し第2凹部と第4凸部とが嵌合する状態へと変更される高周波焼入システム。
上記態様によれば、第1のOリング及び第2のOリングは、半径方向には容易に変形するので、小さな力で基端側部材とコイルユニットと密着させることができるので、第1誘導コイルの内部を冷却液が通過しても、外部に漏れ出すことはない。
また、Oリング、その他の部材の寿命を長くすることができる。
また、基端側部材と、第1コイルユニットまたは第2コイルユニットとを容易に位置合せすることができる。
【0048】
〔項目3〕
第1凸部、第1凹部、第2凸部、第2凹部、第3凹部、第4凹部、第1誘導コイル、第2誘導コイルのそれぞれは、内部に冷却剤を流す空洞を有し、
第1結合状態の時、第1凸部、第1凹部、第2凸部、第2凹部、第1誘導コイルのそれぞれの空洞の内部を冷却剤が流れ、
第2結合状態の時、第1凸部、第3凹部、第2凸部、第4凹部、第2誘導コイルのそれぞれの空洞の内部を冷却剤が流れる項目1又は2に記載の高周波焼入システム。
上記態様によれば、第1のOリング及び第2のOリングは、半径方向には容易に変形するので、小さな力で基端側部材とコイルユニットと密着させることができるので、第1誘導コイルの内部を冷却液が通過しても、外部に漏れ出すことはない。
また、Oリング、その他の部材の寿命を長くすることができる。
【0049】
〔項目4〕
第1凹部には第1凹部の内側に突出する第1のOリングが配置され、第2凹部には第2凹部側の内側に突出する第2のOリングが配置され、
第3凹部には第3凹部の内側に突出する第3のOリングが配置され、第4凹部には第4凹部側の内側に突出する第4のOリングが配置され、
第1結合状態のとき、第1凸部と第1のOリングとが接触し、第2凸部と第2のOリングとが接触し、
第2結合状態のとき、第1凸部と第3のOリングとが接触し、第2凸部と第4のOリングとが接触する項目1乃至3のいずれかに記載の高周波焼入システム。
上記態様によれば、第1のOリング及び第2のOリングは、半径方向には容易に変形するので、小さな力で基端側部材とコイルユニットと密着させることができるので、第1誘導コイルの内部を冷却液が通過しても、外部に漏れ出すことはない。
また、Oリング、その他の部材の寿命を長くすることができる。
【0050】
〔項目5〕
第1結合状態のとき、第1凸部と第1凹部とが嵌合し、第2凸部と第2凹部とが嵌合して、第1基端側電極と第1リード部、第2基端側電極と第2リード部の位置合わせがなされる項目1乃至4のいずれかに記載の高周波焼入システム。
上記態様よれば、基端側部材と第1コイルユニットとを容易に位置合せすることができる。
【0051】
〔項目6〕
第2結合状態のとき、第1凸部と第3凹部とが嵌合し、第2凸部と第4凹部とが嵌合して、第1基端側電極と第3リード部、第2基端側電極と第4リード部の位置合わせがなされる項目1乃至5のいずれかに記載の高周波焼入システム。
上記態様よれば、基端側部材と第2コイルユニットとを容易に位置合せすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 高周波焼入システム
3 基端側部材
5 第1コイルユニット
6 第2コイルユニット
10 第1基端側部材
11 第2基端側部材
12 第1凸部
13 第2凸部
21 第1リード部
22 第2リード部
23 第1凹部
24 第2凹部
25 第1のOリング
26 第2のOリング
27 第1誘導コイル
37 第2誘導コイル
31 第3リード部
32 第4リード部
33 第3凹部
34 第4凹部
35 第3のOリング
36 第4のOリング