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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154287
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068039
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 義人
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017CC01
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE07
5H017HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大電流が流れるのを抑制できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニット100を備え、複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔の一方の面に形成された正極活物質層111と、集電箔の他方の面に形成された負極活物質層112と、を有し、少なくとも1つの電極ユニットにおいて、集電箔と、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方の活物質層との間には、導電剤を含む樹脂層150が配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、
少なくとも1つの電極ユニットにおいて、前記集電箔と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方の活物質層との間には、導電剤を含む樹脂層が配置されている
蓄電装置。
【請求項2】
前記集電箔は、前記積層方向に並ぶ2つの金属層を有し、
前記2つの金属層のうちの前記樹脂層が配置された金属層は、前記樹脂層とは反対側の金属層よりも、前記積層方向における厚みが薄い
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記集電箔は、前記積層方向に並ぶ2つの金属層を有し、
前記2つの金属層のうちの前記樹脂層が配置された金属層は、前記樹脂層とは反対側の金属層にメッキされたメッキ層である
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記樹脂層は、
前記集電箔及び前記一方の活物質層の間に位置する第一部と、
前記集電箔及び前記一方の活物質層の間から突出する第二部と、を有し、
前記第二部は、前記第一部よりも、前記積層方向における厚みが厚い
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記集電箔及び前記一方の活物質層は、前記樹脂層によって接合されている
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記樹脂層は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有する
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記一方の活物質層は、前記積層方向から見て、他方の活物質層よりもサイズが大きく、
前記樹脂層は、前記積層方向から見て、前記一方の活物質層よりもサイズが大きい
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集電箔の両面に活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)が形成された電極ユニットを備える蓄電装置が知られている。例えば、特許文献1には、集電体のうちの正極集電体の表面に正極活物質層が配置され、負極集電体の表面に負極活物質層が配置された蓄電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-77634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄電装置において、内部短絡が発生すると大電流が流れてしまうおそれがあるため、大電流が流れるのを抑制できる蓄電装置が望まれる。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、大電流が流れるのを抑制できる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、少なくとも1つの電極ユニットにおいて、前記集電箔と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方の活物質層との間には、導電剤を含む樹脂層が配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明における蓄電装置によれば、大電流が流れるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
図3図3は、実施の形態に係る蓄電装置が有する電極ユニットの構成を示す斜視図及び断面図である。
図4図4は、実施の形態に係る電極ユニットが有する樹脂層の構成を示す断面図である。
図5図5は、蓄電パックの構成を示す断面図である。
図6図6は、蓄電パックの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、少なくとも1つの電極ユニットにおいて、前記集電箔と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも一方の活物質層との間には、導電剤を含む樹脂層が配置されている。
【0010】
これによれば、蓄電装置において、集電箔と、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一方の活物質層との間に、導電剤を含む樹脂層を配置する。これにより、樹脂層によって集電箔と当該活物質層との間の抵抗を高くできる。したがって、蓄電装置に内部短絡が発生した場合でも、樹脂層によって大電流が流れるのを抑制できる。
【0011】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記集電箔は、前記積層方向に並ぶ2つの金属層を有し、前記2つの金属層のうちの前記樹脂層が配置された金属層は、前記樹脂層とは反対側の金属層よりも、前記積層方向における厚みが薄い、としてもよい。
【0012】
集電箔が2つの金属層を有する場合、厚みが薄い方の金属層にピンホールが発生しやすい。このため、厚みが薄い方の金属層に樹脂層を配置する。これにより、当該金属層を樹脂層で保護できるため、当該金属層にピンホールが発生するのを抑制できる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に記載の蓄電装置において、前記集電箔は、前記積層方向に並ぶ2つの金属層を有し、前記2つの金属層のうちの前記樹脂層が配置された金属層は、前記樹脂層とは反対側の金属層にメッキされたメッキ層である、としてもよい。
【0014】
これによれば、2つの金属層を有する集電箔を形成する場合、金属層にメッキ層をメッキすることで、集電箔を容易に形成できる。この場合、メッキ層にピンホールが発生しやすいため、メッキ層に樹脂層を配置する。これにより、メッキ層を樹脂層で保護できるため、メッキ層にピンホールが発生するのを抑制できる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記樹脂層は、前記集電箔及び前記一方の活物質層の間に位置する第一部と、前記集電箔及び前記一方の活物質層の間から突出する第二部と、を有し、前記第二部は、前記第一部よりも、前記積層方向における厚みが厚い、としてもよい。
【0016】
これによれば、樹脂層の第二部が、集電箔及び活物質層の間から突出することで、集電箔のうちの活物質層から突出した部分においても、樹脂層による効果を奏することができる。特に、樹脂層の第二部が第一部よりも厚いことで、第二部において、樹脂層による効果をより図ることができる。つまり、集電箔及び活物質層の間に位置する第一部は、プレス等により厚みを薄くして抵抗を比較的低くし、集電箔及び活物質層の間から突出する第二部は、厚みを厚くして抵抗を比較的高くすることで異物短絡または釘差し短絡等による発熱を抑制できる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記集電箔及び前記一方の活物質層は、前記樹脂層によって接合されている、としてもよい。
【0018】
これによれば、樹脂層を用いて集電箔及び活物質層を接合することで、活物質層が集電箔から脱落するのを抑制できる。
【0019】
(6)上記(1)から(5)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記樹脂層は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有する、としてもよい。
【0020】
これによれば、樹脂層は、加熱されることで抵抗が増加するため、蓄電装置に内部短絡等が発生して大電流が流れると樹脂層が加熱されて、樹脂層の抵抗が増加する。これにより、蓄電装置に流れる電流を小さくできる。
【0021】
(7)上記(1)から(6)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記一方の活物質層は、前記積層方向から見て、他方の活物質層よりもサイズが大きく、前記樹脂層は、前記積層方向から見て、前記一方の活物質層よりもサイズが大きい、としてもよい。
【0022】
これによれば、一方の活物質層のサイズが他方の活物質層のサイズよりも大きい場合、樹脂層のサイズを、一方の活物質層のサイズよりも大きくする。これにより、樹脂層が、サイズの大きい一方の活物質層の全体を覆うことができるため、樹脂層による効果を高めることができる。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置等について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0024】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の長手方向、または、蓄電装置の一対の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の一対の長側面の対向方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の厚み方向、複数の電極ユニットの積層方向、集電箔及び活物質層の積層方向、一対のエンド部材の並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0025】
以下の説明において、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。単にX軸方向という場合は、X軸プラス方向及びX軸マイナス方向の双方向またはいずれか一方の方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行であるとは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0026】
(実施の形態)
[1 蓄電装置10の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置10の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電装置10の内部構成を示す断面図である。具体的には、図2は、図1の蓄電装置10を、II-II線を通るYZ平面で切断した場合の断面図である。図2は、蓄電装置10が備える各構成要素を示している。図3は、本実施の形態に係る蓄電装置10が有する電極ユニット100の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、図3の(a)は、電極ユニット100の外観を示す斜視図である。図3の(b)は、図3の(a)の電極ユニット100を、IIIb-IIIb線を通るYZ平面で切断した場合の構成を示す断面図である。図3では、説明の便宜のため、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0027】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置である。本実施の形態における蓄電装置10は、略直方体形状を有している。具体的には、蓄電装置10は、バイポーラ電池である。蓄電装置10は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0028】
図1及び図2に示すように、蓄電装置10は、複数の電極ユニット100と、エンドユニット101及び102と、複数のセパレータ140と、一対のエンド部材300と、を備えている。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102のそれぞれは、平面視で矩形状の板状部位であり、Z軸方向に積層されている。本実施の形態での平面視とは、積層方向(Z軸方向)から見た場合のことをいう。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102が積層される方向(Z軸方向)を、積層方向とも称する。セパレータ140は、複数の電極ユニット100、エンドユニット101及び102のそれぞれの間に配置される。一対のエンド部材300は、積層方向(Z軸方向)において、複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102の両側に配置される。本実施の形態では、エンドユニット101とエンドユニット102との間に、2つの電極ユニット100が積層方向に積層されているが、電極ユニット100が積層される数は特に限定されない。電極ユニット100、エンドユニット101及びエンドユニット102等の平面視の形状も特に限定されない。
【0029】
[1.1 電極ユニット100の説明]
以下に、図3も用いて、電極ユニット100の構成について、詳細に説明する。電極ユニット100は、1枚の集電箔の両面に活物質層が形成された1単位のユニットである。複数の電極ユニット100のそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔110の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔110の他方の面に形成された負極活物質層130と、シール部210と、を有している。本実施の形態では、電極ユニット100の厚み(積層方向の厚み)は、135μm~190μm程度である。
【0030】
集電箔110は、平面視が矩形状である板状部材である。集電箔110は、金属箔である。図3に示すように、集電箔110は、積層方向(Z軸方向)に並ぶ2つの金属層111及び112を有している。金属層111及び112は、平面視で同じ大きさかつ同じ形状を有する板状の部位である。以下では、金属層111及び112のうちの、正極活物質層120が形成される金属層111を正極金属層111とも称し、負極活物質層130が形成される金属層112を負極金属層112とも称する。正極金属層111は、集電箔110のうちのZ軸プラス方向に位置する金属層であり、負極金属層112は、集電箔110のうちのZ軸マイナス方向に位置する金属層である。つまり、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112が互いに接続(接触または接合)された状態で、正極金属層111及び負極金属層112が積層方向に積層されて形成されている。正極金属層111及び負極金属層112は、一方が金属箔であり、他方が当該金属箔にメッキされるメッキ層でもよい。または、正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔でもよい。正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔の場合、集電箔110は、2つの金属箔同士が接合されて形成されたクラッド材等であってもよいし、2つの金属箔同士が接合されることなく接続(接触)した状態で2つの金属箔を有していてもよい。
【0031】
正極金属層111の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属またはそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスから、正極金属層111の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。正極金属層111の形態としては、メッキ層でもよいが、加工性、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極金属層111としては、アルミニウム箔が好ましい。負極金属層112の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属またはそれらの合金が用いられ、これらの中でも、銅または銅合金が用いられるのが好ましい。負極金属層112の形態としては、メッキ層または箔(銅箔)が挙げられ、銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。集電箔110の厚み(積層方向の厚み)は、20μm~30μm程度である。正極金属層111の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~20μm程度であり、負極金属層112の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~15μm程度である。
【0032】
正極活物質層120は、集電箔110の一方の表面(Z軸プラス方向の面)に形成された正極の活物質層である。具体的には、正極活物質層120は、正極金属層111上(正極金属層111の外面(Z軸プラス方向の面))に形成されている。正極活物質層120は、正極金属層111の形状に応じて、平面視で正極金属層111よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。平面視でサイズが小さいとは、XY平面の面積が小さいことをいう。以下についても同様である。正極活物質層120の厚み(積層方向の厚み)は、70μm~100μm程度である。
【0033】
正極活物質層120は、正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。正極活物質としては、LiM1O(M1はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等の層状リチウム遷移金属酸化物、LiM2(M2はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のスピネル型リチウム遷移金属酸化物、LiM3PO、LiM3SiO、LiM3BO(M3はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のポリアニオン化合物等が挙げられる。正極活物質として、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層120に含有される導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛などが挙げられる。バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。
【0034】
負極活物質層130は、集電箔110の他方の表面(Z軸マイナス方向の面)に形成された負極の活物質層である。具体的には、負極活物質層130は、負極金属層112上(負極金属層112の外面(Z軸マイナス方向の面))に形成されている。本実施の形態では、負極活物質層130は、樹脂層150を介して、負極金属層112上に形成されている。つまり、電極ユニット100は、負極金属層112上(負極金属層112の外面(Z軸マイナス方向の面))に形成された樹脂層150をさらに有しており、負極活物質層130は、樹脂層150上に形成されている。負極活物質層130は、負極金属層112の形状に応じて、平面視で負極金属層112よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。負極活物質層130は、平面視で正極活物質層120よりもサイズが大きく形成されている。平面視でサイズが大きいとは、XY平面の面積が大きいことをいう。以下についても同様である。つまり、負極活物質層130のXY平面の面積は、正極活物質層120のそれよりも大きい。負極活物質層130の厚み(積層方向の厚み)は、45μm~60μm程度である。
【0035】
負極活物質層130は、負極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層120と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属または半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物または半金属酸化物;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0036】
シール部210は、正極活物質層120または負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部210は、正極活物質層120及び負極活物質層130の全周に亘って正極活物質層120及び負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部210は、集電箔110の外周部を覆うように、集電箔110の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部210は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材により形成されている。
【0037】
隣り合う2つの電極ユニット100が有するシール部210同士は、互いに接続されている。当該シール部210同士は、一体的に連続して形成されることで、互いに接続されていてもよいし、シール部210同士がヒートシール(熱溶着)、超音波溶着、レーザ溶着、または、接着剤等によって接合されることで、互いに接続されていてもよい。これにより、シール部210は、当該2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120及び当該2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の周囲に配置され、当該2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にはシール部210が設けられる。つまり、2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にシール部210が連続的に設けられ、集電箔110同士の間がシールされる。
【0038】
複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側には、電解質層(図示省略)が形成されている。電解質層は、本実施の形態では、非水系の液体状の電解質(電解液)であるが、固体状の電解質(固体電解質)、または、ゲル状の電解質等でもよい。これら電解質としては、適宜公知のものを使用できる。電解液(非水電解質)としては、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものを用いることができる。非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートなどを挙げることができる。電解質塩としては、リチウム塩が好ましい。上記リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)、LiN(SOCF)等の無機リチウム塩を挙げることができる。
【0039】
[1.2 エンドユニット101及び102の説明]
次に、エンドユニット101及び102の構成について、詳細に説明する。エンドユニット101は、複数の電極ユニット100のZ軸マイナス方向の端部に配置される。エンドユニット102は、複数の電極ユニット100のZ軸プラス方向の端部に配置される。エンドユニット101及び102は、複数の電極ユニット100をZ軸方向で挟み込む部位である。
【0040】
エンドユニット101は、少なくとも、正極金属層111と、正極金属層111のZ軸プラス方向の面に形成された正極活物質層120と、シール部220と、を有している。エンドユニット101が有する正極金属層111及び正極活物質層120は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110の正極金属層111及び正極活物質層120と同様の構成を有している。
【0041】
シール部220は、正極活物質層120の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部220は、正極活物質層120の全周に亘って正極活物質層120の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部220は、正極金属層111及びエンド部材300の外周部を覆うように、正極金属層111及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部220は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0042】
シール部220は、エンドユニット101に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部220とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット101の正極金属層111と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部220の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0043】
エンドユニット102は、少なくとも、集電箔110と、集電箔110のZ軸マイナス方向の面に配置された負極活物質層130と、シール部230と、を有している。エンドユニット102が有する集電箔110及び負極活物質層130は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110及び負極活物質層130と同様の構成を有している。つまり、エンドユニット102においても、負極活物質層130は、樹脂層150を介して、集電箔110上に形成されている。具体的には、エンドユニット102は、集電箔110の負極金属層112上に形成された樹脂層150をさらに有しており、負極活物質層130は、樹脂層150上に形成されている。
【0044】
シール部230は、負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部230は、負極活物質層130の全周に亘って負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部230は、集電箔110及びエンド部材300の外周部を覆うように、集電箔110及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部230は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0045】
シール部230は、エンドユニット102に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部230とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット102の集電箔110と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部230の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0046】
このように、シール部210、220及び230が互いに接続されて、シール部材200が構成される。シール部材200は、正極金属層111、負極金属層112、正極活物質層120、負極活物質層130、セパレータ140、及び、エンド部材300の全ての全周を囲うように配置され、これらと外部との間をシールする筒状(四角筒状)の部材である。
【0047】
[1.3 セパレータ140及びエンド部材300の説明]
セパレータ140は、樹脂からなる微多孔性のシートである。セパレータ140は、電極ユニット100同士の間、エンドユニット101と電極ユニット100との間、及び、エンドユニット102と電極ユニット100との間に、それぞれ配置される。具体的には、セパレータ140は、正極活物質層120と負極活物質層130との間に配置される。セパレータ140の材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ140として、これらの多孔質樹脂フィルムの表面にフィラーを含む層を形成した多層のフィルムであってもよい。セパレータ140は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが大きい矩形状に形成されている。本実施の形態では、セパレータ140のサイズは、平面視で集電箔110のそれよりも小さいが、平面視で集電箔110よりもサイズが大きくてもよい。セパレータ140の厚み(積層方向の厚み)は、15μm~20μm程度である。
【0048】
エンド部材300は、複数の電極ユニット100よりも、蓄電装置10における積層方向(Z軸方向)の端部に配置される部材である。本実施の形態では、一対のエンド部材300が、蓄電装置10の最もZ軸マイナス方向端部及び最もZ軸プラス方向端部に配置される。一対のエンド部材300は、エンドユニット101及び102(が有する正極金属層111)に接続される。これにより、一対のエンド部材300は、その間に位置する複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102等を、積層方向(Z軸方向)の両側から挟み込む。エンド部材300は、平板状の部材(エンドプレート)である。エンド部材300は、他の導電部材(バスバー、冷却板等。図示せず)を介して、他の蓄電装置10が有する他のエンド部材300と電気的に接続される。
【0049】
エンド部材300は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材等で形成されている。エンド部材300は、正極金属層111と接続されるため、アルミニウムなど、正極金属層111と同じ材質で形成されるのが好ましい。エンド部材300の厚み(積層方向の厚み)は、0.5mm~3mm程度である。蓄電装置10は、エンド部材300の外側(Z軸方向の外側)に他の導電部材を有していてもよい。
【0050】
以上の構成において、セパレータ140と、セパレータ140をZ軸方向で挟む正極活物質層120及び負極活物質層130と、これらをZ軸方向で挟む正極金属層111及び負極金属層112とを、1つの蓄電素子と称してもよい。この場合、蓄電装置10は、Z軸方向に積層された複数の蓄電素子がZ軸方向において一対のエンド部材300で挟まれ、これらの周囲がシール部材200で囲われた構成を有する蓄電素子群であるとも言える。
【0051】
[2 樹脂層150の説明]
次に、樹脂層150の構成について、さらに詳細に説明する。図4は、本実施の形態に係る電極ユニット100が有する樹脂層150の構成を示す断面図である。具体的には、図4の(a)は、図3の(b)の電極ユニット100を示し、図4の(b)は、図4の(a)に示した電極ユニット100の一部(破線で囲った部分)を拡大して示している。
【0052】
上述の通り、電極ユニット100において、集電箔110と、正極活物質層120及び負極活物質層130の少なくとも一方の活物質層(本実施の形態では、負極活物質層130)との間には、樹脂層150が配置されている。図4に示すように、当該一方の活物質層(負極活物質層130)は、積層方向(Z軸方向)から見て、他方の活物質層(正極活物質層120)よりもサイズが大きく、樹脂層150は、積層方向(Z軸方向)から見て、当該一方の活物質層(負極活物質層130)よりもサイズが大きい。本実施の形態では、樹脂層150は、Z軸方向から見て、集電箔110(負極金属層112)の全面を覆う矩形状の部位である。
【0053】
樹脂層150は、集電箔110及び当該一方の活物質層(負極活物質層130)の間に位置する第一部151と、集電箔110及び当該一方の活物質層(負極活物質層130)の間から突出する第二部152と、を有している。第一部151は、樹脂層150のうちの、負極金属層112と負極活物質層130との間に配置される部位である。つまり、第一部151は、樹脂層150のうちの、Z軸方向から見て、負極活物質層130と重なる領域に位置する矩形状の部位である。第二部152は、樹脂層150のうちの、負極金属層112と負極活物質層130との間から突出した(はみ出た)部位である。つまり、第二部152は、樹脂層150のうちの、Z軸方向から見て、負極活物質層130と重ならない領域に位置する環状(四角環状)の部位(第一部151以外の部位)である。
【0054】
第二部152は、第一部151よりも、積層方向(Z軸方向)における厚みが厚い。電極ユニット100の製造時において、負極金属層112に樹脂層150が塗布され、負極金属層112がプレスロールでプレスされる。これにより、樹脂層150のうちの第一部151が圧縮されて、第二部152の厚みが第一部151の厚みよりも厚くなる。さらに、第二部152の密度(負極活物質の密度)は、第一部151の密度(負極活物質の密度)よりも低くなる。その後、樹脂層150は、100℃程度の熱によって硬化される(2液混合の樹脂によって硬化されてもよい)。本実施の形態では、第二部152は、負極活物質層130の周囲の全周において、第一部151よりも厚みが厚いが、第二部152の当該全周の一部が、第一部151と同じ厚み、または、第一部151よりも厚みが薄くなっていてもよい。
【0055】
蓄電装置10の厚みを薄くする等の観点から、第一部151は、積層方向(Z軸方向)における厚みが、20μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがより好ましい。樹脂層150による後述の効果をより高める等の観点から、第一部151の厚みは、0.5μm以上であるのが好ましく、2μm以上であるのがより好ましい。これらの理由から、第一部151の厚みは、0.5μm以上20μm以下であるのが好ましく、2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。第二部152の厚みは、1μm以上25μm以下であるのが好ましく、3μm以上13μm以下であるのがより好ましい。樹脂層150(第一部151及び第二部152)の厚みは、電極ユニット100の断面SEM(Scanning Electron Microscope)において、樹脂層150の厚みを5点以上測定し平均することで得られる平均厚みである。断面SEMとは、サンプルの切断面を作製し、その断面を走査電子顕微鏡で観察する方法である。上述または後述のその他の部材の厚みの測定についても、同様の方法を採用できる。
【0056】
本実施の形態では、集電箔110が有する2つの金属層111及び112のうちの樹脂層150が配置された金属層112(負極金属層112)は、樹脂層150とは反対側の金属層111(正極金属層111)よりも、積層方向(Z軸方向)における厚みが薄い。具体的には、2つの金属層111及び112のうちの樹脂層150が配置された金属層112(負極金属層112)は、樹脂層150とは反対側の金属層111(正極金属層111)にメッキされたメッキ層である。つまり、正極金属層111は、金属箔であり、負極金属層112は、メッキ層である。正極金属層111は、上述した正極金属層111に用いられるいずれの材質の金属箔でもよいが、本実施の形態では、アルミニウムを含む金属箔である。具体的には、正極金属層111は、アルミニウム箔である。負極金属層112は、正極金属層111(金属箔)にメッキされたメッキ層である。負極金属層112は、上述した負極金属層112に用いられるいずれの材質のメッキ層でもよいが、本実施の形態では、銅を含むメッキ層である。具体的には、負極金属層112は、銅メッキである。負極金属層112は、粘着性のメッキ等によって、正極金属層111上に形成される。
【0057】
負極金属層112の積層方向(Z軸方向)における厚みは、5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。負極金属層112の厚みが一様でない場合には、負極金属層112の最小の厚みが、5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。さらに、本実施の形態では、負極金属層112(メッキ層)は、正極金属層111(金属箔)よりも、積層方向における厚みが薄い。上述の通り、正極金属層111の厚みは、5μm~20μm程度であり、負極金属層112の厚みは、正極金属層111の厚みよりも薄い。
【0058】
本実施の形態では、蓄電装置10が備える複数の電極ユニット100のそれぞれについて、集電箔110(負極金属層112)と負極活物質層130との間に、樹脂層150が配置されている。上述の通り、エンドユニット102においても、集電箔110(負極金属層112)と負極活物質層130との間に樹脂層150が配置されているが、その構成は、電極ユニット100における構成と同様である。この樹脂層150について、以下に詳細に説明する。
【0059】
樹脂層150は、導電剤を含む樹脂層(樹脂と導電剤との混合物)である。本実施の形態では、樹脂層150は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有している。具体的には、樹脂層150は、温度が上昇するにしたがって電気抵抗が増加するPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する樹脂(PTC樹脂)によって形成されている。樹脂層150としては、樹脂材料が溶融することで導電剤による内部の導電パスが切れ、電気抵抗が増加するタイプ、または、加熱されることで膨張し、電気抵抗が増加するタイプ等が挙げられる。
【0060】
具体的には、樹脂層150は、導電剤、ポリオレフィン、及び、バインダーを含んでいる。
【0061】
(導電剤)
導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤としては、これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。導電剤の形状は、通常、粒子状である。「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを意味する。導電剤の粒子径としては、例えば20nm以上1μm以下であることが好ましい。このような粒子径の導電剤を用いることで、ポリオレフィンの軟化によって導電剤間の電子伝導経路の分断が生じやすく、シャットダウン機能をより高めることができる。粒子径は、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値(D50)を意味する。
【0062】
樹脂層150における導電剤の含有量の下限としては、例えば1質量%であってもよいが、2質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。樹脂層150における導電剤の含有量が上記下限以上であることにより、通常使用時に十分な導電性を発現することができる。樹脂層150における導電剤の含有量の上限としては、例えば20質量%であってもよいが、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。樹脂層150における導電剤の含有量の上限が上記範囲であることで、ポリオレフィンの軟化に伴い導電剤間の電子伝導経路が効果的に分断され、より優れたシャットダウン機能を発現させることができる。樹脂層150における導電剤の含有量が15質量%以下であることで、短絡電流の大きさが抑制されるので、より安全性を向上できる。
【0063】
(ポリオレフィン)
ポリオレフィンは、不飽和炭化水素化合物であるオレフィンをモノマーとして合成されるポリマーである。ポリオレフィンは、通常、絶縁性である。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中では、融点が比較的高いという観点から、ポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィンは、1種または2種以上を混合して用いることができる。上記ポリオレフィンの融点の下限としては、100℃でもよく、140℃が好ましく、160℃がより好ましい。ポリオレフィンの融点を上記範囲とすることで、通常時には十分な導電性を確保しつつ、過剰な発熱時に導電剤間の電子伝導経路が十分に分断され、効果的に抵抗を高めることができる。製造工程における乾燥時には、軟化されず保型性が維持されるので、効率よく製造できる。
【0064】
上記ポリオレフィンが、通常時の樹脂層150中において粒子状であることが好ましい。ポリオレフィンの融点を上記範囲とすることで、通常時には十分な導電性を確保しつつ、短絡による過剰な発熱時に軟化して導電剤を被覆することができるので、効果的に抵抗を高めることができる。上記粒子状とは、粒子形状を保っていれば、粒子同士の一部が溶けて結着していてもよい。ポリオレフィンが粒子状である場合、ポリオレフィンの粒子径が導電剤の粒子径よりも大きいことが好ましい。このような粒子径のポリオレフィンを用いることで、樹脂層150の厚み方向においてポリオレフィンが導電剤よりも高さがある状態で存在する。そのため、短絡による過剰な発熱時に軟化したポリオレフィンが導電剤を被覆することができるので、効果的に抵抗を高めることができ、短絡電流の増大の抑制効果を向上できる。ポリオレフィンの粒子径としては例えば1μm以上10μm以下であることが好ましい。粒子径は、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値(D50)を意味する。
【0065】
樹脂層150における導電剤の含有量に対するポリオレフィンの含有量の下限としては、質量比で2倍であり、4倍が好ましく、6倍がより好ましい。導電剤に対するポリオレフィンの含有量を上記下限以上とすることで、上記分断が生じるために十分な量のポリオレフィンによる被覆が導電剤に対してされることから、効果的に電気抵抗の上昇が可能となり、十分なシャットダウン機能が発現する。樹脂層150における導電剤の含有量に対するポリオレフィンの含有量の上限としては、質量比で20倍であり、16倍が好ましく、12倍がより好ましい。導電剤に対するポリオレフィンの含有量を上記上限以下とすることで、樹脂層150中に十分な量の導電剤を存在させることができ、通常時における良好な導電性を確保することができる。
【0066】
樹脂層150におけるポリオレフィンの含有量の下限としては、例えば30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。樹脂層150におけるポリオレフィンの含有量が上記下限以上であることにより、上記分断が生じるために十分な量のポリオレフィンによる被覆が導電剤に対してされることから、樹脂層150内の電子伝導経路が効果的に分断され、より優れたシャットダウン機能を発現させることができる。樹脂層150におけるポリオレフィンの含有量の上限としては、例えば90質量%が好ましく、85質量%がより好ましい。樹脂層150におけるポリオレフィンの含有量を上記上限以下とすることで、通常使用時に良好な導電性と、過剰な発熱時における良好なシャットダウン機能とをバランス良く発現することができる。
【0067】
(バインダー)
バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子などが挙げられる。これらの中でも、フッ素樹脂が好ましく、PVDFがより好ましい。分子間力が小さく、表面エネルギーが低いフッ素を含有するフッ素樹脂は発熱に伴って膨潤し、バインダーとして適度な結着性を有する。その結果、フッ素樹脂を用いることで、発熱時のポリオレフィンの軟化の際に樹脂層150内の電子伝導経路が比較的容易に分断され、シャットダウン機能をより効果的に発現できる。樹脂層150におけるバインダーの含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。この含有量の上限としては、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。樹脂層150におけるバインダーの含有量を上記範囲とすることで、十分な結着性と、過剰な発熱時の樹脂層150内の電子伝導経路の分断性とをバランス良く発現することができる。
【0068】
このように、樹脂層150がバインダー(結着剤)を含むことで、樹脂層150は、結着性を有することとなる。このため、集電箔110(負極金属層112)及び上記一方の活物質層(負極活物質層130)は、樹脂層150によって接合(接着)されている。樹脂層150は、上述のポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を原料とする結着性の強い変性ポリオレフィンを含んでいてもよい。当該変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに極性基を導入し、異種材料との接着性を付与したものである。
【0069】
(他の成分)
樹脂層150には、短絡電流の増大の抑制効果を向上する観点から、導電剤、ポリオレフィン及びバインダー以外の他の成分がさらに含有されていてもよい。ただし、樹脂層150における上記他の成分の含有量の上限としては、例えば20質量%が好ましい。この上限としては、10質量%であってもよく、5質量%であってもよく、1質量%であってもよい。他の成分の含有量を上記上限以下とすることにより、通常使用時における良好な導電性と、異常時におけるシャットダウン機能とをより良好に両立させることができる。
【0070】
上記他の成分としては、例えば炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化物(ただし、アルカリ金属の水酸化物は除く)、その他の無機化合物またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。上記樹脂層150が、このような他の成分をさらに含有することで、過剰な発熱の際のシャットダウン機能を高めることができ、安全性をより高めることができる。
【0071】
炭酸化合物としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、その他、炭酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、炭酸マグネシウムがより好ましい。このような炭酸化合物を用いることで、過剰な発熱の際のシャットダウン機能を高めることができ、安全性をより高めることができる。炭酸水素化合物としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩や、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸水素塩等が挙げられる。水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アルミニウム等(ただし、アルカリ金属の水酸化物は除く)が挙げられる。このような水酸化物を用いることで、短絡等による発熱に伴って、電流のシャットダウン機能が働き、更なる発熱を抑えることができるため、安全性をより高めることができる。その他の無機化合物としては、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム-酸化ケイ素複合酸化物等の無機酸化物;チタン酸バリウム等のチタン酸化合物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物等が挙げられる。上記無機化合物を用いることで、ポリオレフィン樹脂が軟化した場合にも樹脂層150の形状を保つことができる。
【0072】
樹脂層150は、ポリオレフィンに代えて、気体発生化合物を含んでいてもよい。つまり、ポリオレフィンの軟化によって導電剤間の電子伝導経路を分断させる代わりに、気体発生によって導電剤間の電子伝導経路を分断してもよい。この場合の樹脂層150は、上述の導電剤、気体発生化合物、及び、上述のバインダーを含んでいる。
【0073】
気体発生化合物の一態様は、100℃以上で分解して気体を発生する化合物(a)である。このような化合物(a)の具体例としては、炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化酸化物、水和物、水酸化物、及びその他有機化合物等を挙げることができ、炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化酸化物、水和物及び水酸化物が好ましく、炭酸化合物、炭酸水素化合物及び水酸化物がより好ましく、炭酸化合物及び水酸化物がさらに好ましく、水酸化物がよりさらに好ましい。気体発生化合物の他の態様としては、炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化酸化物、水和物及び水酸化物(ただし、アルカリ金属の水酸化物は除く)である。これらの化合物(b)は、通常、加熱に伴って分解し、気体を発生する。化合物(b)は、例えば100℃以上で分解する。化合物(b)の中でも、炭酸化合物、炭酸水素化合物及び水酸化物が好ましく、炭酸化合物及び水酸化物がより好ましく、水酸化物がさらに好ましい。気体発生化合物は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0074】
炭酸化合物としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、その他、炭酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、炭酸マグネシウムがより好ましい。炭酸マグネシウム等は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。炭酸水素化合物としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩や、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸水素塩等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属の炭酸水素塩が好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。水酸化酸化物としては、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト等)や水酸化酸化マグネシウム等が挙げられる。水和物としては、硫酸カルシウム二水和物、硫酸銅五水和物、炭酸マグネシウムn水和物等が挙げられる。水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物や、水酸化アルミニウム等の第13族元素の水酸化物等が挙げられる。
【0075】
気体発生化合物の分解する温度の下限は、130℃が好ましく、160℃がより好ましく、200℃がさらに好ましい場合もある。これにより、乾燥工程において、気体発生化合物が分解するおそれが低減できる。気体発生物質の分解する温度の上限は、短絡等の異常時における蓄電装置10内部の最高到達温度以下であれば特に限定されないが、800℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、450℃以下がさらに好ましい。気体発生化合物の分解する温度は、蓄電装置10が熱逸走する温度よりも低いことが好ましい。蓄電装置10の熱逸走前に気体発生化合物が分解して気体が発生することで、樹脂層150内の電子伝導経路の分断が進行し、十分なシャットダウン機能が発現できる。気体発生化合物の形状は、通常時の樹脂層150中において、通常、粒子状である。気体発生化合物は、通常、絶縁性である。
【0076】
気体発生化合物を常温(20℃)から300℃または500℃まで加熱した場合の、質量減少率の下限としては、3質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%、20質量%または30質量%がさらに好ましいこともある。この質量減少率の上限としては、70質量%が好ましく、50質量%、30質量%または20質量%がより好ましいこともある。質量減少率、すなわち気体の発生量が上記範囲であることで、発熱時における安全性をより高めることができる。
【0077】
気体発生化合物が発生する気体は、難燃性かつ非助燃性であることが好ましい。難燃性かつ非助燃性の気体を発生することにより、発熱に伴う発火の可能性を低減することができ、安全性がより高まる。難燃性かつ非助燃性の気体としては、二酸化炭素、水(水蒸気)、窒素等が挙げられ、これらの中でも、二酸化炭素が好ましい。気体発生化合物は、分解の際に、酸化物等の固体の絶縁性無機物が生じるものであることが好ましい。このような場合、この固体の絶縁性無機物自体も絶縁性の確保に寄与することができる。
【0078】
気体発生化合物のD50粒子径としては、例えば0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。気体発生化合物のBET比表面積としては、例えば1m/g以上10m/g以下であることが好ましい。このような粒子径や比表面積を有する気体発生化合物を用いることで、発熱時により効果的に気体が発生し、効果的に抵抗を高めることができる。「BET比表面積」は、以下の方法により測定された値である。まず、窒素吸着法を用いた細孔径分布測定を行う。この測定は、Quantachrome社製「autosorb iQ」により行うことができる。得られる吸着等温線のP/P0=0.06~0.3の領域から5点を抽出してBETプロットを行い、その直線のy切片と傾きからBET比表面積を算出する。
【0079】
気体発生化合物の形状は特に限定されないが、棒状であることが好ましい。気体発生化合物が棒状である場合、アンカー効果が高まり、PTC機能を発現するバインダーの溶融流出を十分に抑制することができる。棒状である場合、加熱に伴う分解が生じやすい。「棒状」とは、短径に対する長径の比が2以上の粒子をいい、この比が5以上の粒子であることが好ましい。この比の上限は例えば100であってよい。上記短径及び長径は、電子顕微鏡で観察される1視野において、長径の大きい上位5つの粒子の平均値とする。棒状の気体発生化合物の短径の下限としては、0.01μmが好ましく、0.1μmが好ましい。この短径の上限としては、10μmが好ましく、4μmがより好ましい。
【0080】
樹脂層150における導電剤の含有量に対する気体発生化合物の含有量の下限は、質量比で2倍であり、4倍が好ましく、6倍がより好ましい。導電剤に対する気体発生化合物の含有量を上記下限以上とすることで、樹脂層150内の電子伝導経路の分断が十分に生じるほどの気体が生じ、十分なシャットダウン機能が発現する。樹脂層150における導電剤の含有量に対する気体発生化合物の含有量の上限は、質量比で20倍であり、16倍が好ましく、12倍がより好ましい。導電剤に対する気体発生化合物の含有量を上記上限以下とすることで、樹脂層150中に十分な量の導電剤を存在させることができ、通常時における良好な導電性を確保することができる。
【0081】
樹脂層150における気体発生化合物の含有量の下限としては、例えば10質量%であってもよく、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。樹脂層150における気体発生化合物の含有量が上記下限以上であることにより、気体の発生に伴い、樹脂層150内の電子伝導経路が効果的に分断され、より優れたシャットダウン機能を発現させることができる。樹脂層150における気体発生化合物の含有量が上記下限以上であることにより、アンカー効果が高まり、PTC機能を発現するバインダーの溶融流出を十分に抑制することができる。樹脂層150における気体発生化合物の含有量の上限としては、例えば95質量%であってもよく、90質量%が好ましく、85質量%がより好ましい。樹脂層150における気体発生化合物の含有量を上記上限以下とすることで、通常使用時に良好な導電性と、発熱時における良好なシャットダウン機能とをバランス良く発現することができる。
【0082】
このように、樹脂層150は、加熱されることで膨張する特性を有する。樹脂層150は、加熱されることで、1.1倍~3倍に膨張する。
【0083】
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10によれば、集電箔110と、正極活物質層120及び負極活物質層130の少なくとも一方の活物質層との間に、導電剤を含む樹脂層150を配置する。これにより、樹脂層150によって集電箔110と当該活物質層との間の抵抗を高くできる。したがって、蓄電装置10に内部短絡が発生した場合でも、樹脂層150によって大電流が流れるのを抑制できる。
【0084】
集電箔110にピンホールがある場合、電解液がピンホールから浸透し、電解液による短絡を形成するおそれがある。具体的には、正極金属層111としてのアルミニウム箔を、加圧プレスロールを用いて圧延して形成する場合、圧延時に、潤滑油によるオイルまたは異物を圧縮することでピンホールが発生することがある。負極金属層112としてのメッキ層は厚みが薄いため、ピンホールが発生するおそれがある。正極金属層111または負極金属層112にピンホールが生じると、電解液がピンホールから浸透し、電解液による短絡(金属層と逆極の活物質との短絡)を形成するおそれがある。正極金属層111のピンホールでは、正極活物質層120と負極金属層112(Cuメッキ等)とが電解液を介して短絡して、さらにCuの溶出によりCuにもピンホールが形成されて、最終的には正極活物質層120と負極活物質層130との短絡が発生する。負極金属層112のピンホールでは、負極活物質層130と正極金属層111(Al箔等)とが電解液を介して短絡して、さらにAlに負極のLiが浸透して、Li/Al合金を形成し、合金部は膨張によりクラックを形成し、最終的には正極活物質層120と負極活物質層130との短絡が発生する。このため、集電箔110と活物質層との間に樹脂層150を配置することで、電解液がピンホールから浸透しても、樹脂層150で電解液の浸透を止めることができ、電解液による短絡を抑制できる。樹脂層150によって集電箔110を保護できるため、集電箔110にピンホールが発生するのを抑制することもできる。
【0085】
集電箔110が2つの金属層111及び112を有する場合、厚みが薄い方の金属層112(負極金属層112)にピンホールが発生しやすい。このため、厚みが薄い方の金属層112(負極金属層112)に樹脂層150を配置する。これにより、金属層112(負極金属層112)を樹脂層150で保護できるため、金属層112(負極金属層112)にピンホールが発生するのを抑制できる。金属層112(負極金属層112)にピンホールが発生している場合(または、メッキ層にメッキしきれていない部分がある場合)でも、樹脂層150によって当該ピンホール等から浸透する電解液の浸入を防ぐことができるため、電解液を介した内部短絡を防ぐことができる。
【0086】
2つの金属層111及び112を有する集電箔110を形成する場合、金属層111(正極金属層111)にメッキ層(負極金属層112)をメッキすることで、集電箔110を容易に形成できる。この場合、メッキ層(負極金属層112)にピンホールが発生しやすいため、メッキ層(負極金属層112)に樹脂層150を配置する。これにより、メッキ層(負極金属層112)を樹脂層150で保護できるため、メッキ層(負極金属層112)にピンホールが発生するのを抑制できる。
【0087】
樹脂層150の第二部152が、集電箔110及び負極活物質層130の間から突出することで、集電箔110のうちの負極活物質層130から突出した部分においても、樹脂層150による効果を奏することができる。特に、樹脂層150の第二部152が第一部151よりも厚いことで、第二部152において、樹脂層150による効果をより図ることができる。つまり、集電箔110及び負極活物質層130の間に位置する第一部151は、プレス等により厚みを薄くして抵抗を比較的低くし、集電箔110及び負極活物質層130の間から突出する第二部152は、厚みを厚くして抵抗を比較的高くすることで異物短絡または釘差し短絡等による発熱を抑制できる。つまり、第一部151の位置では、異物短絡または釘差し短絡等が発生しても、負極活物質層130及び樹脂層150の両方の抵抗によって抵抗が比較的大きくなっているため、流れる電流は小さくなる。しかしながら、第二部152の位置で異物短絡または釘差し短絡等が発生すると、負極活物質層130が配置されていないため、抵抗が比較的小さくなっており、大電流が流れやすくなる。このため、第二部152の位置では、抵抗層となる樹脂層150の厚さを厚くすることにより、釘-樹脂層150-集電箔110間の抵抗を増大させ、短絡電流を絞ることができるため、発熱を抑制でき、安全性を向上できる。
【0088】
樹脂層150を用いて集電箔110及び負極活物質層130を接合することで、負極活物質層130が集電箔110から脱落するのを抑制できる。
【0089】
樹脂層150は、加熱されることで抵抗が増加するため、蓄電装置10に内部短絡等が発生して大電流が流れると樹脂層150が加熱されて、樹脂層150の抵抗が増加する。これにより、蓄電装置10に流れる電流を小さくできる。
【0090】
一方の活物質層(負極活物質層130)が他方の活物質層(正極活物質層120)よりもサイズが大きくても、樹脂層150を、一方の活物質層(負極活物質層130)よりもサイズを大きくする。これにより、樹脂層150が一方の活物質層(負極活物質層130)の全体を覆うことができるため、樹脂層150による効果を高めることができる。
【0091】
[4 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0092】
上記実施の形態では、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112の複数層(2層)で形成されていることとしたが、集電箔110は、1層(1枚の金属箔)で形成されていてもよい。つまり、集電箔110は、1枚のステンレス箔等で形成され、1枚のステンレス箔等で正極金属層及び負極金属層の機能を有することにしてもよい。
【0093】
上記実施の形態では、樹脂層150は、Z軸方向から見て、負極活物質層130よりもサイズが大きいこととしたが、負極活物質層130と同じサイズ、または、負極活物質層130よりもサイズが小さくてもよい。樹脂層150は、Z軸方向から見て矩形状の部位であることとしたが、樹脂層150の形状は特に限定されない。
【0094】
上記実施の形態では、樹脂層150において、第二部152は、第一部151よりも厚みが厚いこととしたが、第一部151と同じ厚み、または、第一部151よりも厚みが薄くてもよい。つまり、上記実施の形態において、樹脂層150は、上述した厚みには限定されない。他の部材についても、上述した厚みには限定されない。
【0095】
上記実施の形態では、樹脂層150は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有することとしたが、当該特性を有していなくてもよい。この場合でも、樹脂層150は、絶縁部材(樹脂)を有しており、絶縁部材(樹脂)を有さない場合よりも抵抗が増加しているため、蓄電装置10に内部短絡が発生した場合でも、樹脂層150によって大電流が流れるのを抑制できる。
【0096】
上記実施の形態では、樹脂層150は、集電箔110(負極金属層112)と負極活物質層130との間に配置されることとしたが、集電箔110(正極金属層111)と正極活物質層120との間に配置されてもよい。この場合、エンドユニット101が、正極金属層111と正極活物質層120との間に樹脂層150を有していてもよい。これらの場合であっても、樹脂層150は、上記実施の形態と同様の構成を有し、同様の効果を奏することができる。
【0097】
上記実施の形態では、全ての電極ユニット100が樹脂層150を有していることとしたが、いずれかの電極ユニット100が樹脂層150を有していなくてもよい。つまり、少なくとも1つの電極ユニット100において、集電箔110と、正極活物質層120及び負極活物質層130の少なくとも一方の活物質層との間に、導電剤を含む樹脂層150が配置されていればよい。同様に、エンドユニット102は、樹脂層150を有していることとしたが、樹脂層150を有していなくてもよい。
【0098】
蓄電装置10は、図5に示すような蓄電パック1に用いられてもよい。図5は、蓄電パック1の構成を示す断面図である。図5において、蓄電装置10の内部構成の図示は省略している。図5に示すように、蓄電パック1は、複数の蓄電装置10が積層された蓄電装置積層体2と、導電部材3と、を備えている。この場合、蓄電パック1に含まれる少なくとも1つの蓄電装置10に対して、本発明の技術が適用されればよい。蓄電装置積層体2における隣り合う2つの蓄電装置10は、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。導電部材3は、ステンレス等の金属からなり、積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。接合には接着剤を用いてもよい。蓄電装置積層体2における複数の蓄電装置10は直列に接続されており、導電部材3を介して充放電が実施される。蓄電パック1は、積層方向(Z軸方向)に拘束されてもよく、この場合、ネジ、樹脂バンドまたは金属バンド等の拘束部材を用いることができる。蓄電装置積層体2及び導電部材3は、金属ケースまたは樹脂ケースに収容されていてもよい。
【0099】
蓄電パック1の他の例として、個々の蓄電装置10が外装体4に収容された構成を図6に示す。図6は、蓄電パック1aの構成を示す断面図である。図6に示すように、本構成の蓄電装置10は、外装体4から露出した接続部分5を有している。外装体4としてラミネートフィルム等を用いることができる。隣り合う蓄電装置10の接続部分5同士が、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10の接続部分5と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。その他の構成は、上述の蓄電パック1と同様のため説明を省略する。
【0100】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、バイポーラ電池等の蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0102】
1、1a 蓄電パック
2 蓄電装置積層体
3 導電部材
4 外装体
5 接続部分
10 蓄電装置
100 電極ユニット
101、102 エンドユニット
110 集電箔
111 正極金属層(金属層)
112 負極金属層(金属層)
120 正極活物質層
130 負極活物質層
140 セパレータ
150 樹脂層
151 第一部
152 第二部
200 シール部材
210、220、230 シール部
300 エンド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6