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特開2024-154290画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154290
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 370Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068043
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 文彦
(72)【発明者】
【氏名】宮狭 和大
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA18
4C093FF16
4C093FF17
4C093FF18
4C093FF20
4C093FF22
4C093FF34
4C093FF42
4C093FG01
4C093FG11
4C093FG14
4C093FG16
4C093FH09
(57)【要約】
【課題】脊柱管の内側のノイズや臨床的にリスクが低い浸潤領域が強調されることを軽減し、臨床的にリスクが高い重要な浸潤領域を強調させることである。
【解決手段】実施形態に係る画像処理装置は、第1の抽出部と、第2の抽出部と、設定部と、生成部とを備える。第1の抽出部は、医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する。第2の抽出部は、前記脊柱管内の異常領域を抽出する。設定部は、前記異常領域に、前記脊柱管内の位置に応じた重要度を設定する。生成部は、前記異常領域に関する表示データを、前記重要度に基づいて生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する第1の抽出部と、
前記脊柱管内の異常領域を抽出する第2の抽出部と、
前記異常領域に、前記脊柱管内の位置に応じた重要度を設定する設定部と、
前記異常領域に関する表示データを、前記重要度に基づいて生成する生成部と
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記異常領域を表す複数の画素の各々に前記重要度を設定する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記表示データは、前記異常領域に関する異常の程度を表す指標値を表すデータである、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記指標値は、前記異常領域を表す複数の画素の夫々の前記重要度を重みとした、該異常領域の加重面積に関する値である、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記指標値は、前記脊柱管の領域を表す複数の画素の夫々の前記重要度を重みとした、該脊柱管の領域の加重面積に対する、前記異常領域の加重面積の割合である、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記指標値を表すデータは、対象画像の脊柱管の走行方向に交差する断面に対して算出された前記指標値を、前記走行方向に沿ってプロットしたグラフである、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示データは、前記重要度に基づいて前記異常領域に対応する画素の表示色を変更した画像データである、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記重要度は、前記脊柱管の輪郭からの距離に基づいて設定される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記重要度は、前記脊柱管の輪郭から遠いほど高く設定される、請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第2の抽出部は、前記医用画像と前記被検体の過去の医用画像との間の差分画像に基づいて前記異常領域を抽出する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記異常領域は、がんの骨転移が脊柱管内に浸潤した、脊柱管内浸潤の領域である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記重要度は臨床的な重要度である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する第1の抽出部と、
前記脊柱管内に、該脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定する設定部と、
前記重要度に基づいて前記脊柱管内の異常領域を抽出する第2の抽出部と、
前記異常領域に関する表示データを生成する生成部と
を備える、画像処理装置。
【請求項14】
前記設定部は、前記脊柱管内の複数の画素の各々に前記重要度を設定する、請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する第1の抽出部と、
前記脊柱管内に、該脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定する設定部と、
前記重要度に基づいて前記脊柱管内の異常領域らしさを算出する算出部と、
前記異常領域らしさに関する表示データを生成する生成部と
を備える、画像処理装置。
【請求項16】
前記設定部は、前記脊柱管内の複数の画素の各々に前記重要度を設定する、請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出するステップと、
前記脊柱管内の異常領域を抽出するステップと、
前記異常領域に、前記脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定するステップと、
前記異常領域に関する表示データを、前記重要度に基づいて生成するステップと
を実行する、画像処理方法。
【請求項18】
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出するステップと、
前記脊柱管内に、該脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定するステップと、
前記重要度に基づいて前記脊柱管内の異常領域を抽出するステップと、
前記異常領域に関する表示データを生成するステップと
を実行する、画像処理方法。
【請求項19】
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出するステップと、
前記脊柱管内に、該脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定するステップと、
前記重要度に基づいて前記脊柱管内の異常領域らしさを算出するステップと、
前記異常領域らしさに関する表示データを生成するステップと
を実行する、画像処理方法。
【請求項20】
コンピュータに、
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する処理と、
前記脊柱管内の異常領域を抽出する処理と、
前記異常領域に、前記脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定する処理と、
前記異常領域に関する表示データを、前記重要度に基づいて生成する処理と
を実行させるためのプログラム。
【請求項21】
コンピュータに、
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する処理と、
前記脊柱管内に、該脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定する処理と、
前記重要度に基づいて前記脊柱管内の異常領域を抽出する処理と、
前記異常領域に関する表示データを生成する処理と
を実行させるためのプログラム。
【請求項22】
コンピュータに、
医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する処理と、
前記脊柱管内に、該脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定する処理と、
前記重要度に基づいて前記脊柱管内の異常領域らしさを算出する処理と、
前記異常領域らしさに関する表示データを生成する処理と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脊髄は脊椎椎体後方に存在する神経束であり、脊柱管は脊髄を包むように存在する管状の構造物である。ここで、脊柱管内にがんが浸潤すると、脊柱管の内腔で脊髄が圧迫され、四肢や体幹の麻痺が生じる場合がある。がんの脊柱管内浸潤は、主に患者のQOL(Quality Of Life)の維持のために早期発見が重要である。しかし、脊柱管内浸潤の確認は、現状では医師による医用画像の目視で行われており、これを補助する技術開発が望まれている。
【0003】
例えば、診断対象の画像から異常領域を検出する技術が開発されている。しかしながら、このような技術によって単に異常領域として脊柱管内浸潤の候補領域を検出しそれを表示するのみでは、脊柱管内浸潤の誤検出によるノイズや、臨床的にリスクの低い浸潤が目立って表示されてしまうことがある。これによって、臨床的にリスクの高い重要な浸潤が目立たなくなることがある。ここで、特許文献1では、管腔における腫瘍領域を検出し、管腔の壁における腫瘍領域の深さ情報を求め、管腔の画像とともに深さ情報を表示する技術が開示されている。しかし、特許文献1に記載の技術では、管腔の壁、すなわち脊柱管を囲む椎骨領域への浸潤の深さ情報は表示できるが、脊柱管の内側のノイズやリスクが低い浸潤領域が強調される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-131127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、脊柱管の内側のノイズや臨床的にリスクが低い浸潤領域が強調されることを軽減し、臨床的にリスクが高い重要な浸潤領域を強調させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像処理装置は、第1の抽出部と、第2の抽出部と、設定部と、生成部とを備える。第1の抽出部は、医用画像に写る被検体領域から脊柱管を抽出する。第2の抽出部は、前記脊柱管内の異常領域を抽出する。設定部は、前記異常領域に、前記脊柱管内の位置に応じた重要度を設定する。生成部は、前記異常領域に関する表示データを、前記重要度に基づいて生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る画像処理システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置が行う全体の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態において、対象画像のアキシャル面における脊柱管および脊柱管内浸潤を示す模式図である。
図4図4は、第1の実施形態において、対象画像のアキシャル面における脊柱管領域に設定された重要度を表す模式図である。
図5図5は、第1の実施形態において、浸潤候補領域を、対象画像上に重畳させた画像データ(重畳画像)の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態において、浸潤候補領域に対して算出された、浸潤の程度を表す指標値のグラフ(指標値グラフ)を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る画像処理システムの機器構成を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る画像処理装置が行う全体の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態において、ステップS2040で抽出した浸潤候補領域を、対象画像上に重畳させた画像データ(重畳画像)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0009】
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る画像処理装置について説明する。本実施形態に係る画像処理装置は、画像処理対象となる対象画像に写る被検体領域における、脊柱管内浸潤の候補領域を可視化する装置である。具体的には、画像処理装置は、例えば、対象画像から脊柱管を抽出し、さらに脊柱管内の異常領域である脊柱管内浸潤の候補領域として浸潤候補領域を抽出する。なお、脊柱管内浸潤の領域は、がんの骨転移が脊柱管内に浸潤した領域である。そして、画像処理装置は、浸潤候補領域に対して、その領域がどの程度臨床的に重要かを示す臨床的な重要度を設定したうえで、浸潤候補領域を対象画像に重畳した画像や、浸潤の程度を表す指標値のグラフを表示データとして表示する制御を行う。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る画像処理システムの構成の一例を示す図である。本画像処理システムは画像処理装置100及びデータサーバ130を有している。画像処理装置100は、ネットワーク120を介してデータサーバ130と接続されている。第1の実施形態に係る画像処理装置100は、対象画像から脊柱管内浸潤の候補領域を抽出し、その結果から表示データを生成することが可能な装置である。
【0011】
データサーバ130は、複数の医用画像(複数の医用画像データ)を保持している。データサーバ130は例えば、モダリティで撮影された医用画像を受信し、ネットワークを通じて保管・管理するPACS(Picture Archiving and Communication System)を表す。以下の説明では、データサーバ130には、医用画像として、異なる条件(異なるモダリティ、撮影モード、日時、体位等)で被検体を予め撮像して得られた複数の3次元断層画像が保持されているとする。本実施形態では、医用画像はX線CT装置により撮像して得られた3次元断層画像(3次元医用画像)であるとして説明を行う。
【0012】
なお、本明細書においては、被検体の右手から左手への方向を表す軸をX軸、被検体の正面から背面への方向を表す軸をY軸、被検体の頭から足への方向を表す軸をZ軸として定義する。また、XY断面をアキシャル面、YZ断面をサジタル面、ZX断面をコロナル面と定義する。すなわち、X軸方向は、サジタル面に直交する方向(以下、サジタル方向)である。また、Y軸方向は、コロナル面に直交する方向(以下、コロナル方向)である。さらに、Z軸方向は、アキシャル面に直交する方向(以下、アキシャル方向)である。このとき、2次元断層画像(スライス画像)の集合として構成されるCT画像の場合は、画像のスライス面はアキシャル面を表し、スライス面に直交する方向(以下、スライス方向)はアキシャル方向を表す。なお、座標系の取り方は一例であり、これ以外の定義であってもよい。
【0013】
なお、医用画像は、2次元断層画像の集合として構成された3次元医用画像(3次元断層画像)である。なお、3次元断層画像を撮像するモダリティは、MRI装置、3次元超音波撮影装置などであってもよい。そして、各2次元断層画像の位置および姿勢は、基準座標系(被検体を基準とした空間中の座標系)に変換した上でデータサーバ130に保持されているものとする。このとき、基準座標系で表現された医用画像は、後述する指示部140を操作するユーザの指示に応じて、画像処理装置100に入力される。なお、医用画像の選択はユーザの指示に基づかなくてもよく、例えば、所定ルールに基づいて画像処理装置100が医用画像を自動選択する構成でもよい。
【0014】
画像処理装置100は、指示部140及び表示部150に接続されている。指示部140は、マウスやキーボード、タッチパネル等の機器により構成されており、ユーザからの各種の処理の要求や各種の指示を受け付け、受け付けた各種の処理の要求や各種の指示を画像処理装置100に出力する。
【0015】
表示部150は、LCDやCRT等の任意の機器により構成されており、医師が読影するために医用画像等の表示を行う。具体的には、画像処理装置100から取得した対象画像の断面画像を表示する。また、画像処理装置100で生成された表示データを表示する。
【0016】
画像処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行する。このようなプログラムを実行するプロセッサを機能的に表すと、図1に示すように、画像処理装置100が、取得部101と、第1の抽出部102と、第2の抽出部103と、重要度設定部104と、表示データ生成部105と、表示制御部106とを備えるように表される。このように、本実施形態では、画像処理装置100は、上述したような構成要素により構成されている。重要度設定部104は、例えば、設定部の一例である。また、表示データ生成部105は、例えば、生成部の一例である。
【0017】
画像処理装置100は、指示部140からユーザによる処理の要求を受け付けて画像処理を行い、処理結果を表示部150へ出力する装置であり、医師等のユーザが操作する読影用の端末装置として機能する。具体的には、指示部140を通じたユーザからの指示に基づいて、データサーバ130から、画像処理対象の医用画像である対象画像を取得する。そして、画像処理装置100は、この画像から浸潤候補領域を抽出した後、表示データを生成して表示部150に出力する。なお、処理の実行はユーザの指示に基づかなくてもよく、例えば、対象画像が入力されたら処理を自動実行する構成でもよい。
【0018】
取得部101は、画像処理装置100へと入力される対象画像の情報を取得する。第1の抽出部102は、対象画像から脊柱管領域を抽出する。第2の抽出部103は、抽出された脊柱管領域から浸潤候補領域を抽出する。重要度設定部104は、脊柱管領域および、浸潤候補領域に重要度を設定する。表示データ生成部105は、重要度に基づく浸潤候補領域の表示データを生成する。表示制御部106は、生成された表示データ等を表示部150に出力し、表示部150に表示データを表示させる制御を行う。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置100が行う全体の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0020】
(S1010) (対象画像を取得)
ステップS1010において、取得部101は、データサーバ130から、指示部140を通じてユーザが指定した、対象画像を取得する。そして、取得部101は、対象画像を、第1の抽出部102、および表示制御部106へと出力する。
【0021】
(S1020) (脊柱管を抽出)
ステップS1020において、第1の抽出部102は、対象画像から脊柱管領域を抽出する処理を行う。例えば、第1の抽出部102は、対象画像に写る被検体の領域(被検体領域)から脊柱管の領域(脊柱管領域)を抽出する。そして、第1の抽出部102は、脊柱管領域の情報を第2の抽出部103、および重要度設定部104へと出力する。
【0022】
図3は、第1の実施形態において、対象画像のアキシャル面における脊柱管および脊柱管内浸潤を示す模式図である。図3において、Rverは椎骨領域、Rribは肋骨領域、Rspiは脊柱管領域、Rinfは脊柱管内浸潤の領域(脊柱管内浸潤領域)を示す。本実施形態では、第1の抽出部102は、公知の領域抽出手法により脊柱管領域Rspiの抽出を行う。例えば、第1の抽出部102は、モルフォロジ演算により脊柱管領域を抽出する。対象画像がCT画像である場合、図3のように、脊柱管領域Rspiは画素値が高い椎骨領域Rverで囲まれており、かつ、脊髄などの軟部組織で満たされた脊柱管領域Rspiは椎骨領域Rverよりも画素値が低い。そこで、第1の抽出部102は、画素値が高い椎骨領域Rverを含む骨領域を所定の閾値処理などにより抽出した後、抽出した骨領域に対して、モルフォロジ演算の一種であるBlack-Top-Hat変換を行う。これにより、第1の抽出部102は、画素値が高い椎骨領域Rverに囲まれた脊柱管領域Rspiを抽出することができる。
【0023】
なお、脊柱管領域Rspiの抽出方法はこれに限られるものではない。例えば、公知の機械学習による領域抽出手法により、予め多数の症例の脊柱管領域を学習させた推論モデルを構築しておき、第1の抽出部102は、対象画像を推論モデルに入力することで、脊柱管領域を抽出するようにしてもよい。公知の機械学習による領域抽出手法としては、Convolutional Neural Network(CNN)などの方法が挙げられる。
【0024】
(S1030) (脊柱管内の浸潤候補領域を抽出)
ステップS1030において、第2の抽出部103は、ステップS1020で抽出した脊柱管領域から、脊柱管内浸潤の候補領域(浸潤候補領域)Rext1を抽出する処理を行う。すなわち、ステップS1030において、第2の抽出部103は、脊柱管内の異常領域である浸潤候補領域Rext1を抽出する。そして、第2の抽出部103は、浸潤候補領域Rext1の情報を重要度設定部104および表示データ生成部105へと出力する。
【0025】
本実施形態では、第2の抽出部103は、まず対象画像の輝度情報に基づいて、脊柱管領域内の各画素がどの程度浸潤らしいかを表す浸潤らしさの情報を取得し、次に浸潤らしさに基づいて浸潤候補領域を抽出する。なお、各画素の浸潤らしさの値が高いほど浸潤である確率が高いものとする。本ステップでは、第2の抽出部103は、一定の閾値以上の浸潤らしさの値を有する脊柱管領域内の画素を抽出することで、浸潤候補領域Rext1を抽出する。なお、浸潤らしさの値の分布から浸潤候補領域を求める処理は、閾値処理以外にも、領域抽出を行う何れの方法を用いてもよい。例えば、第2の抽出部103は、閾値処理したのちにモルフォロジ演算等によるノイズ除去を行ってもよい。また、第2の抽出部103は、グラフカットやレベルセット法等のセグメンテーション技術を用いてもよい。また、浸潤らしさの値の分布から浸潤候補領域を求める処理は、アキシャル断面画像ごとに行ってもよいし、対象画像全体で行ってもよい。また、第2の抽出部103は、対象画像と被検体の過去の医用画像(対象画像)との間の差分画像から、浸潤候補領域Rext1を抽出してもよい。
【0026】
以下に、対象画像の輝度情報に基づく浸潤らしさの具体的な取得方法を記載する。図3において、脊柱管領域Rspiの内腔には脊髄が存在し、正常な組織であれば概ね一定の画素値が分布する。一方、脊柱管内浸潤領域Rinfが存在すると、その部分は他の脊柱管内の画素値よりも高い画素値になる。つまり、脊柱管内の画素値が高いと浸潤である可能性が高い。そこで、第2の抽出部103は、脊柱管領域Rspi内の各画素の画素値を浸潤らしさの値として取得することができる。また、脊柱管領域Rspi内の各画素の画素値Iを浸潤らしさの値dに変換する任意の変換関数fを定義し、第2の抽出部103は、d=f(I)として浸潤らしさを求めるようにしてもよい。なお、浸潤らしさの値は、所定の範囲(例えば0~1の間)に正規化されていることが望ましい。
【0027】
また、浸潤らしさの取得方法はこれに限られるものではなく、例えば、取得部101は、対象画像と同じ患者を過去に撮影した過去画像をデータサーバ130から取得し、第2の抽出部103は、過去画像との比較によって浸潤らしさを取得するようにしてもよい。より具体的には、第2の抽出部103は、対象画像と過去画像の間で公知の位置合わせ処理により位置を対応させたうえで、対象画像から過去画像を減算する差分処理を行う。これにより、過去画像では脊柱管内浸潤が存在しない、或いはその程度が対象画像よりも低い場合に、浸潤領域が高い差分値として現れる。このように、脊柱管内の差分値が高いと浸潤である可能性が高いため、第2の抽出部103は、対象画像から過去画像を減算した際の、脊柱管領域内の各画素の差分値を浸潤らしさとして取得することができる。なお、公知の位置合わせ手法としては、例えば、アフィン変換による方法やFree Form Deformation(FFD)、Demonsアルゴリズム、Large Deformation Diffeomorphic Metric Mapping(LDDMM)等が挙げられる。
【0028】
また、第2の抽出部103は、他の浸潤らしさの取得方法として、例えば、領域抽出を行う公知の機械学習手法を用いてもよい。具体的には、予め多数の症例の浸潤領域を学習させた推論モデルを構築しておき、第2の抽出部103は、当該推論モデルに対象画像を入力することで得られる脊柱管内の各画素の出力値を、浸潤らしさの値としてもよい。公知の機械学習による領域抽出手法は、ステップS1020に記載したものと同様の方法を用いることができる。通常、CNNなどの推論モデルの各画素の出力値は0~1の値であり、抽出対象の領域である可能性が高いほど値が高くなる。そのため、第2の抽出部103は、浸潤領域を学習させた機械学習の推論モデルの各画素の出力値を浸潤らしさとして取得することができる。
【0029】
(S1040) (脊柱管領域、浸潤候補領域に重要度を設定)
ステップS1040において、重要度設定部104は、脊柱管領域Rspi、および浸潤候補領域Rext1の各画素に対して、その位置がどの程度臨床的に重要かを表す臨床的な重要度(以下、重要度と称する)を、脊柱管内における当該画素の位置情報に基づいて設定する。すなわち、重要度設定部104は、浸潤候補領域Rext1を表す画素の夫々に、脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定する。そして、重要度設定部104は、重要度の情報を表示データ生成部へと出力する。
【0030】
ここで、重要度の設定方法について説明する。脊柱管内浸潤の発生個所が、脊柱管の輪郭に近い外側の領域に留まっている場合よりも、中心に近い内側の領域に到達した場合の方が、より脊髄が圧迫される度合いが大きいため、四肢や体幹に麻痺が発生するリスクが大きくなり、臨床的に重要である。そこで、本実施形態では、重要度設定部104は、脊柱管内において、輪郭に近い外側の領域よりも、中心に近い内側の領域の方が、値が大きくなるように重要度を設定する。また、浸潤の発生個所の違いによる臨床的なリスクの度合いは、脊柱管の走行方向に交差する断面内の位置で変化するものである。そのため、本実施形態では、重要度設定部104は、脊柱管の走行方向に交差する断面単位で重要度を設定する。より具体的には、脊柱管の走行方向は概ね対象画像のZ方向に沿っているため、重要度設定部104は、Z方向に直行する断面である対象画像のアキシャル面を、脊柱管の走行方向に交差する断面として採用し、対象画像のアキシャル面ごとに重要度を設定する。なお、脊柱管の走行方向に交差する断面はこれに限らず、例えば、重要度設定部104は、脊柱管の芯線を抽出し、芯線に直交する断面を採用してもよい。また、以下のような断面であってもよい。例えば、重要度設定部104は、最初に、対象画像の脊柱管を含む周辺領域から、脊柱管の芯線に沿った曲断面を切り出して芯線が真っすぐになるように平面に変換したCurved Planner Reconstruction(CPR)画像を生成する。そして、重要度設定部104は、生成したCPR画像に直交する断面を採用してもよい。以下に、重要度の具体的な設定方法について例示する。
【0031】
図4は、第1の実施形態において、対象画像のアキシャル面における脊柱管領域Rspiに設定された重要度を表す模式図である。図4(a)は、アキシャル面内の脊柱管の輪郭からの距離に基づいて脊柱管領域Rspiに重要度を設定した例を示す図であり、また、図4の(b)は、図4(a)に対応する、脊柱管の輪郭からの距離に基づいて重要度を算出する関数の例を示す図である。以下、重要度を算出する関数を、重要度算出関数と称する。重要度設定部104は、重要度算出関数を用いて重要度を算出する。図4において、Rver、Rrib、Rspiは、図3と同様のものを表す。また、Mは、アキシャル面内の脊柱管の輪郭からの距離に基づいて脊柱管領域Rspiに重要度を設定した際の重要度のマップを表す。このとき、重要度は正の実数値であり、値1.0を最大値にとるものとする。
【0032】
重要度の一例である図4(a)の重要度マップMでは、対象画像のアキシャル面内の脊柱管の輪郭を基準にして脊柱管の中心に近づくにつれ、重要度マップの濃度が濃くなる、つまり重要度が大きくなっている。これにより、脊柱管の端の部分からどの程度浸潤が内部に入り込んでいるかという観点で、重要度を設定することができる。重要度マップMは、重要度のグラデーションに脊柱管の輪郭形状が反映されるのが特徴である。重要度マップMを計算するための、図4(b)の重要度算出関数は、以下のシグモイド関数の式(1)で表される。
【0033】
【数1】
【0034】
式(1)において、xは脊柱管の輪郭からの距離、αは関数の傾き、βは関数の中心位置を表す。ここでは、例えば、α=1.0、β=1.5の値を採用する。この場合、脊柱管の輪郭からの距離が0.0mmの位置(輪郭上の位置)において、重要度の値は小さいが0よりも大きい値(0.2付近の値)をとり、輪郭からの距離が5.0mmの位置において、重要度が最大値1.0に近い値をとる。重要度設定部104は、輪郭上の位置において、重要度を値は小さいが0よりも大きい値に設定することで、輪郭近傍の領域に対して、浸潤が存在すると臨床的なリスクが重大ではないが、程度が低いリスクが存在することを表す重要度を設定することができる。また、輪郭からの距離が5.0mmの位置で重要度を最大値1.0に近い値に設定することで、以下の効果が得られる。すなわち、重要度設定部104は、通常直径が15.0mm(半径7.5mm)程度である脊柱管の中心に近い領域(中心からの距離が2.5mm程度以内の領域)に対して、浸潤が存在すると臨床的なリスクが重大であることを表す重要度を設定できる。なお、脊柱管の輪郭からの距離に基づく重要度算出関数はこれに限られるものではなく、脊柱管の中心付近で最大値1、輪郭近傍で値は小さいが0より大きい値をとり、その間を滑らかに変化する関数であれば何であってもよい。例えば、脊柱管の中心付近で最大値1をとり、距離が短くなるに従って滑らかに減衰するガウス関数が用いられてもよい。本実施形態では、重要度の算出方法として上記説明した図4(a)及び(b)で定義される手法を採用する。
【0035】
なお、脊柱管の輪郭からの距離は近似値でもよい。例えば、重要度設定部104は、脊柱管の輪郭を楕円近似し、当該楕円からの距離を用いてもよい。これにより、楕円中心から楕円内の各位置への距離の計算が容易にできるため、距離の計算を高速化できる。また、脊柱管の輪郭からの距離は、3次元的に一番近い輪郭からの距離でもよい。
【0036】
また、重要度の算出方法は以下の方法であってもよい。図4(c)は、アキシャル面内の脊柱管の中心からの距離に基づいて脊柱管領域Rspiに重要度を設定した例を示す図である。Mは、アキシャル面内の脊柱管の中心からの距離に基づいて脊柱管領域Rspiに重要度を設定した際の重要度の別の例である重要度マップを表す。このとき、重要度は正の実数値であり、値1.0を最大値にとるものとする。また、図4(d)は、図4(c)に対応する、脊柱管の中心からの距離に基づいて重要度を算出する関数の例を示す図である。図4(c)の重要度マップMでは、対象画像のアキシャル面内の脊柱管の中心を基準にして脊柱管の輪郭に近づくにつれ、重要度マップの濃度が薄くなる、つまり重要度が小さくなっている。これにより、重要度設定部104は、脊柱管の中心からどの程度近い位置まで浸潤が入り込んでいるかという観点で、重要度を設定することができる。重要度マップMは、脊柱管の輪郭形状とは関係なく、重要度のグラデーションが同心円状に広がるのが特徴である。重要度マップMを計算するための、図4(d)の重要度算出関数は、以下のガウス関数の式(2)で表される。
【0037】
【数2】
【0038】
式(2)において、xは脊柱管の中心からの距離、μは関数の中心位置、σは関数の広がりの度合いを表す。ここでは、例えば、μ=0.0,σ=2.5の値を採用する。この場合、脊柱管の中心からの距離が0.0mmの位置(脊柱管の中心位置)において、最大値1.0をとり、中心からの距離が5.0mmの位置で、重要度の値は小さいが0よりも大きい値(0.1付近の値)をとる。重要度設定部104は、中心位置において、重要度を最大値1.0に設定することで、脊柱管の中心位置に対して、浸潤が存在すると臨床的なリスクが重大であることを表す重要度を設定できる。また、重要度設定部104は、中心からある程度離れた領域に対して、重要度を値は小さいが0よりも大きい値を設定することで、浸潤が存在すると臨床的なリスクが重大ではないが、程度が低いリスクが存在することを表す重要度を設定することができる。なお、脊柱管の中心からの距離に基づいて重要度を算出する関数はこれに限られるものではなく、脊柱管の中心で最大値1、中心から離れた領域において値は小さいが0より大きい値とり、その間を滑らかに変化する関数であれば何であってもよい。例えば、脊柱管の中心で最大値1をとり、距離が長くなるに従って滑らかに減衰するシグモイド関数が用いられてもよい。
【0039】
なお、脊柱管の中心からの距離は近似値でもよい。例えば、重要度設定部104は脊柱管の中心位置からなる芯線の走行形状を、近似した線(折れ線やスプライン曲線等:以下、近似線と呼ぶ)に近似し、脊柱管の中心からの距離が、この近似線からの距離であってもよい。また、脊柱管の中心からの距離は、3次元的に一番近い芯線からの距離でもよい。
【0040】
また、重要度の算出方法は、上述の方法に限られるものではなく、脊柱管の中心部の方が辺縁部よりも値が大きくなる方法であれば何であってもよい。
【0041】
本実施形態では、重要度設定部104は、対象画像内の脊柱管領域Rspiに対応する画素の夫々に対して重要度の設定を行う。より具体的には、重要度設定部104は、脊柱管領域Rspiに対応する画素の位置ごとに上記の重要度算出関数を用いた計算を行うことで、各画素に重要度を付与することができる。また、脊柱管内の浸潤候補領域Rext1は、脊柱管内に含まれる領域であるため、脊柱管領域Rspiに対応する画素に重要度を設定することにより、自動的に浸潤候補領域Rext1に重要度が設定される。つまり、本ステップでは、必ずしも浸潤候補領域Rext1の情報を取得する必要はなく、脊柱管領域Rspiの情報のみを取得するようにしてもよい。一方、重要度設定部104は、取得した浸潤候補領域Rext1の情報を利用して、浸潤候補領域Rext1に対応する画素のみに重要度を設定するようにしてもよい。これにより、重要度を計算する範囲を小さくすることで、重要度の計算を高速に行うことができる。この方法は、後述のステップS1050において、脊柱管領域Rspi全体の重要度を用いた表示データ(より具体的には、脊柱管領域Rspiの面積に重要度で重みづけすることで生成される浸潤の程度を表す指標値のグラフ)を生成しない場合に適用することができる。
【0042】
(S1050) (表示データを生成)
ステップS1050において、表示データ生成部105は、重要度に基づく浸潤候補領域Rext1の表示データを生成する。すなわち、表示データ生成部105は、浸潤候補領域Rext1に関する表示データを、重要度に基づいて生成する。そして、表示データ生成部105は、表示データを表示制御部106へと出力する。本実施形態では、表示データ生成部105は、2種類の表示データを生成する。
【0043】
表示データ生成部105は、表示データの一例として、ステップS1030で抽出した浸潤候補領域Rext1を、対象画像上に重畳させた画像データ(以降、重畳画像と称する)を生成する。
【0044】
図5は、第1の実施形態において、浸潤候補領域Rext1を、対象画像上に重畳させた画像データ(重畳画像)の一例を示す図である。図5(a)において、Iover1は重畳画像を表す。また、Rver、Rrib、Rspiは、図3と同様のものを表す。また、Rext1は浸潤候補領域を表す。浸潤候補領域Rext1の表示色は、重要度に基づいて変更されている。また、Tは、浸潤候補領域Rext1がアキシャル面内に存在する場合に画像上に重畳される注意喚起のメッセージである。
【0045】
本ステップでは、表示データ生成部105は、ステップS1030で抽出した浸潤候補領域Rext1に表示色を付与する。表示色として、周囲の脊柱管内の輝度値を区別可能な色が表示されることが望ましい。図5の例では、浸潤候補領域Rext1が、周囲の脊柱管内の領域と区別できるように色付けされている。なお、浸潤候補領域Rext1は、図3の脊柱管内浸潤領域Rinfに対応する領域が脊柱管内浸潤の候補として抽出された領域である。このように、ユーザが浸潤候補領域Rext1を確認することで、ユーザによる脊柱管内浸潤の存在の発見を支援することができる。
【0046】
さらに、本ステップでは、表示データ生成部105は、ステップS1040で設定した重要度に基づいて浸潤候補領域Rext1の各画素の表示色を変更する。より具体的には、例えば、表示データ生成部105は、重要度が大きいほど色の濃淡を濃くする。このように、対象画像上で浸潤候補領域Rext1を色付けすることで、浸潤候補を見つけやすくするだけでなく、浸潤候補領域Rext1の右上の脊柱管の中心に近い領域を色濃くすることで、臨床的にリスクが高い重要な領域であると判断したことをユーザが容易に把握できる。
【0047】
一方、浸潤候補領域Rext1の左下の脊柱管の輪郭に近い領域の色を薄くすることで、臨床的にリスクが低い重要性が低い領域であると判断したことをユーザが容易に把握できる。すなわち、重要度に基づいて浸潤候補領域Rext1の表示色を変更することで、抽出された浸潤候補領域Rext1がどの程度臨床的に重要と判断したかをユーザが容易に把握することができる。このように、本実施形態によれば、臨床的に重要な脊柱管内浸潤を強調して表示できる一方、臨床的に重要でない脊柱管内浸潤やノイズが強調されることを軽減することができる。
【0048】
なお、重要度に応じた表示色の変更方法はこれに限られるものではなく、表示データ生成部105は、重要度に応じて異なる2色(例えば青と赤)の間でのグラデーションで色を変化させてもよい。また、表示データ生成部105は、予め定義された3色以上のカラーテーブルに重要度を対応付けることでグラデーションによって色を変化させてもよい。また、表示データ生成部105は、重要度を複数の段階に分割し、重要度の段階に応じて異なるテクスチャを割り当てて画像データに重畳するようにしてもよい。また、表示データ生成部105は、浸潤候補領域Rext1における重要度の分布に応じてメッセージTの表示方法を変えてもよい。例えば、表示データ生成部105は、浸潤候補領域Rext1内の重要度の値の総和が大きいほど、メッセージTの大きさを大きくしたり、メッセージTを太く色濃くするなどにより、メッセージTを強調して表示したりしてもよい。また、メッセージT1は、文字列ではなくてもよく、文字列の代わりに図5(b)のTに示すようなアイコンであっても良い。また、重畳画像Iover1はメッセージTを含まなくてもよい。なお、重畳画像Iover1は必ずしも対象画像上に浸潤候補領域Rext1を色付けして重畳した画像である必要はなく、例えば、ステップS1030で記載した、対象画像に対して同じ患者の過去画像を減算した差分値を格納した差分画像であってもよい。
【0049】
上述したように、表示データは、重要度に基づいて浸潤候補領域Rext1に対応する各画素の表示色を変更した画像データである。ここで、重要度は、脊柱管の輪郭からの距離に基づいて設定される。例えば、重要度は、脊柱管の輪郭から遠いほど高く設定される。
【0050】
また、表示データ生成部105は、表示データの一例として、ステップS1030で抽出した浸潤候補領域Rext1に対して浸潤の程度を表す指標値のグラフ(以降、指標値グラフと称する)を生成する。
【0051】
図6は、第1の実施形態において、浸潤候補領域Rext1に対して算出された、浸潤の程度を表す指標値のグラフ(指標値グラフ)を示す図である。図6において、Isagは、対象画像におけるサジタル面の画像を表す。画像Isagにおいて、Rver、Rspi、Rinfは、図3と同様のものを表す。Gidxは、指標値グラフを表しており、対象画像の各アキシャル面において、脊柱管内への浸潤の程度を表す指標値を、画像IsagのZ軸に沿ってプロットしたグラフである。
【0052】
本ステップでは、表示データ生成部105は、浸潤の程度を表す指標値として、対象画像のアキシャル面ごとに、脊柱管領域Rspiおよび浸潤候補領域Rext1に関して、ステップS1040で各領域の画素の夫々に設定した重要度に基づいて、領域の面積に重み付けした加重面積を算出する。そして、脊柱管領域Rspiの加重面積に対する浸潤候補領域Rext1の加重面積の割合(加重割合)を、浸潤の程度を表す指標値として算出する。つまり、表示データ生成部105は、以下の式(3)により指標値vidxを算出する。
【0053】
【数3】
【0054】
式(3)において、iは脊柱管領域Rspiに属する画素の番号、jは浸潤候補領域Rext1に属する画素の番号を表す。また、wは脊柱管領域Rspiのi番目の画素における重要度、wは浸潤候補領域Rext1のj番目の画素における重要度を表す。そして、Nspiは脊柱管領域Rspiの画素数、Nextは浸潤候補領域Rext1の画素数を表す。式(3)において、浸潤候補領域Rext1が存在しない、すなわちNext=0のときに、指標値vidx=0.0で最小値をとる。一方、浸潤候補領域Rext1が脊柱管領域Rspiに一致する(浸潤候補領域Rext1が脊柱管領域Rspi全体を占める)、すなわちNext=Nspiのときに1.0で最大値をとる。式(3)により、重要度の値が高い脊柱管の中心付近の画素が加重面積に寄与する度合いが大きい一方、重要度の値が小さい脊柱管の輪郭付近の画素が加重面積に寄与する度合いは小さくなる。これにより、浸潤候補領域Rext1が脊柱管の中心付近に分布していれば指標値vidxは大きい値をとり、浸潤候補領域Rext1が脊柱管の輪郭付近のみに分布していれば指標値vidxは小さい値をとる。
【0055】
図6のP1は、画像Isag上の脊柱管内浸潤領域Rinfに対応する、指標値グラフGidx上のグラフ位置である。P1は、周囲よりも高い指標値vidxをとっていることが分かる。例えば、脊柱管内浸潤領域Rinfは、図3において、脊柱管の中心に近い箇所まで分布しているため、浸潤候補領域Rext1には重要度が大きい領域が多く含まれている。このため、指標値vidxが大きくなる。一方、脊柱管内の他の領域には、脊柱管の中心に近い箇所まで分布する脊柱管内浸潤が存在せず、抽出された浸潤候補領域Rext1にも重要度が大きい領域が含まれていないため、指標値vidxが小さくなる。このような理由で、P1は、周囲よりも高い指標値vidxをとる。このように、重要度に応じて浸潤の程度を示す指標値を算出してグラフ化することで、臨床的に重要な脊柱管内浸潤を強調して表示できる一方、臨床的に重要でない脊柱管内浸潤やノイズが強調されることを軽減することができる。
【0056】
このように、指標値グラフGidxは、浸潤候補領域Rext1に関する異常の程度を表す指標値vidxを表すデータである。また、指標値vidxは、浸潤候補領域Rext1を表す夫々の画素の重要度を重みとした、浸潤候補領域Rext1の加重面積に関する値である。また、指標値vidxは、脊柱管の領域を表す夫々の画素の重要度を重みとした、該脊柱管の領域の加重面積に対する、浸潤候補領域Rext1の加重面積の割合である。また、指標値グラフGidxは、対象画像の脊柱管の走行方向に交差する断面ごとに算出された指標値vidxを、当該走行方向に沿ってプロットしたグラフである。
【0057】
また、ステップS1040の重要度算出関数において、脊柱管の輪郭上(輪郭からの距離=0の位置)の重要度として、値は小さいが0より大きい値(0.2付近)をとる。そのため、輪郭付近にのみ浸潤候補領域Rext1が存在する場合に、小さい値ではあるが、ある程度の大きさの値を持った指標値vidxが算出される。これによって、以下のような効果が得られる。仮に輪郭上の重要度が0として算出される場合には、輪郭付近にのみ浸潤候補領域Rext1が存在すると、重要度は限りなく0に近い値をとるため、指標値vidxは0に限りなく近い値をとる。従って、もし、初期の脊柱管内浸潤が輪郭付近にのみ存在しても、指標値が0に近い値となるため、殆どグラフ上に現れないため、ユーザが浸潤を見落とす可能性がある。しかし、上述の方法をとることで、脊柱管の輪郭付近にのみ存在する初期の脊柱管内浸潤に対応する指標値がグラフ上に現れるため、ユーザが浸潤を見落とすのを防ぐことができる。
【0058】
なお、本ステップでは、浸潤の程度を表す指標値vidxとして、浸潤候補領域Rext1の加重面積を脊柱管領域Rspiの加重面積で割った値(加重割合)を用いたが、指標値vidxは必ずしもこれに限られるものではない。例えば、表示データ生成部105は、浸潤候補領域Rext1の加重面積をそのまま指標値vidxとして採用し、指標値グラフとしてグラフ化するようにしてもよい。
【0059】
なお、本ステップでは、表示データ生成部105は、重畳画像Iover1及び指標値グラフGidxの両方を表示データとして生成したが、重畳画像Iover1及び指標値グラフGidxの何れか一方のみを生成するようにしてもよい。
【0060】
(S1060) (表示データを表示)
ステップS1060において、表示制御部106は、表示データ生成部105から取得した表示データ、および取得部101から取得した対象画像を、表示部150に表示させる制御を行う。また、表示制御部106は、対象画像の断面画像と表示データにおける重畳画像Iover1の断面画像を連動させて表示部150に表示させる制御を行う。また、表示制御部106は、指標値グラフGidxを対象画像や重畳画像Iover1と表示部150に連動表示させる制御を行う。より具体的には、対象画像や重畳画像Iover1の表示されている断面画像がアキシャル面である場合、表示制御部106は、対象画像上のZ方向の対応位置を指標値グラフGidx上に線や矢印等で表示する。なお、表示する表示データは、重畳画像Iover1及び指標値グラフGidxの両方であってもよいし、重畳画像Iover1及び指標値グラフGidxの何れか一方であってもよい。
【0061】
図6では、表示制御部106は、脊柱管内浸潤の程度を表す指標値グラフを重畳画像と共に表示部150に表示させたが、骨外腫瘤の程度を表す指標値グラフを重畳画像と共に同様に表示させてもよい。また、表示制御部106は、重畳画像に対して、脊柱管内浸潤の程度を表す指標値グラフと骨外腫瘤の程度を表す指標値グラフとを対比可能に表示部150へ表示させてもよい。例えば、表示制御部106は、両指標値グラフを重畳画像上にさらに重畳させた画像を表示させてもよいし、両指標値グラフと重畳画像とを並べて表示させてもよい。もしくは、表示制御部106は、両指標値グラフをユーザ指示に応じて切り替え表示させてもよい。
【0062】
ここで、骨外腫瘤の程度を表す指標値グラフとは、対象画像の各アキシャル面において、椎骨周囲における腫瘤増大の程度を表す指標値を、画像IsagのZ軸に沿ってプロットしたグラフである。骨外腫瘤の程度を表す指標値グラフは、表示データ生成部105により生成される。指標値は、椎骨周囲の現在画像もしくは差分画像の画素値から閾値処理や機械学習を用いて腫瘤領域を抽出し、腫瘤領域の面積を規定の幅を持った椎骨周囲の面積で割った値である。脊柱管内浸潤が発生する際には、同時に椎骨周辺に骨外腫瘤が発生することが多いため、表示データ生成部105により骨外腫瘤に関しても可視化・グラフ化し、表示制御部106が両指標グラフを表示部150に表示させることで、ユーザが脊柱管内浸潤と骨外腫瘤とを併せて観察することでき、浸潤を見落とすのを防ぐことができる。
【0063】
なお、表示制御部106は、生成された表示データを、対象画像と関連付けて不図示の記憶部やデータサーバ130に保存するようにしてもよい。これにより、他の任意の医用画像ビューアで対象画像と表示データを表示することができるようになる。また、本画像処理装置100の処理が終わった後、表示データを再度取得したい場合に、取得部101は、保存された表示データを読み込むことで、容易に表示データを取得することができる。また、表示制御部106は、生成された表示データを保存する場合は、ステップS1060による表示データの表示処理を行わなくてもよい。また、表示制御部106は、必ずしも生成された表示データを不図示の記憶部に保存せずともよい。なお、保存する表示データは、重畳画像Iover1及び指標値グラフGidxの両方であってもよいし、重畳画像Iover1及び指標値グラフGidxの何れか一方であってもよい。
【0064】
以上によって、第1の実施形態に係る画像処理装置100の処理が実施される。
【0065】
第1の実施形態によれば、画像処理装置100は、対象画像から抽出した浸潤候補領域Rext1に対して、浸潤候補領域Rext1がどの程度臨床的に重要かを示す臨床的な重要度を設定したうえで、浸潤候補領域Rext1を対象画像に重畳した画像や、浸潤の程度を表す指標値のグラフを表示データとして表示する。これにより、画像処理装置100は、臨床的に重要な脊柱管内浸潤を強調して表示できる一方、臨床的に重要でない脊柱管内浸潤や脊柱管の内側のノイズが強調されることを軽減することができる。したがって、画像処理装置100は、脊柱管の内側のノイズや臨床的にリスクが低い浸潤領域が強調されることを軽減し、臨床的にリスクが高い重要な浸潤領域を強調させることができる。
【0066】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る画像処理装置200について説明する。第1の実施形態では、画像処理装置100が、脊柱管内の浸潤候補領域Rext1を抽出した後に、浸潤候補領域Rext1に対して重要度に基づく重み付けを行って表示データを生成する。一方、第2の実施形態では、画像処理装置200は、脊柱管内の浸潤候補領域を抽出する際に、脊柱管内の各位置の浸潤らしさに対して重要度で重み付けして浸潤候補領域を抽出する。そして、画像処理装置200は、その結果に基づいて表示データを生成する。以下、第2の実施形態に係る画像処理装置200について説明する。なお、第2の実施形態についての説明では、上述した第1の実施形態に係る画像処理装置100と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0067】
図7は、第2の実施形態に係る画像処理システムの構成の一例を示す図である。本画像処理システムは、画像処理装置200を有しており、ネットワークとの接続関係や処理の役割は第1の実施形態の画像処理装置100と同様であるため、説明を省略する。また、画像処理装置200の構成は、画像処理装置100における第2の抽出部103及び重要度設定部104の配置が逆になり、重要度設定部203及び第2の抽出部204となったこと以外は同様であり、説明は省略する。以下、第2の実施形態と第1の実施形態との相違部分の構成を中心に説明する。重要度設定部203は、抽出された脊柱管領域Rspiに重要度を設定する。第2の抽出部204は、重要度に基づいて、抽出された脊柱管領域Rspiから浸潤候補領域を抽出する。重要度設定部203は、例えば、設定部の一例である。
【0068】
図8は、第2の実施形態に係る画像処理装置200が行う全体の処理手順の一例を示すフローチャートである。図8におけるステップS2010~S2020、S2050~S2060は、第1の実施形態のステップS1010~S1020、S1050~S1060と同じであるため、説明を省略する。以下、図8のフローチャートにおける第1の実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0069】
(S2030) (脊柱管領域に重要度を設定)
ステップS2030において、重要度設定部203は、脊柱管領域Rspiの各画素に対して、画素の位置がどの程度臨床的に重要かを表す臨床的な重要度(以下、重要度と称する)を設定する。すなわち、重要度設定部203は、脊柱管内の画素の夫々に、該脊柱管内の位置に応じた臨床的な重要度を設定する。そして、重要度設定部203は、重要度の情報を表示データ生成部105へと出力する。本ステップは、第1の実施形態に係るステップS1040での処理から、浸潤候補領域Rext1に重要度を設定する処理を除いただけの処理なので、詳細な説明は省略する。
【0070】
(S2040) (重要度に基づいて脊柱管内の浸潤候補領域を抽出)
ステップS2040において、第2の抽出部204は、ステップS2030で設定した重要度に基づいて、S2020で抽出した脊柱管領域から、異常領域として浸潤候補領域を抽出する処理を行う。すなわち、第2の抽出部204は、重要度に基づいて脊柱管内の浸潤候補領域を抽出する。そして、第2の抽出部204は、浸潤候補領域の情報を表示データ生成部105へと出力する。
【0071】
本実施形態では、画像処理装置200は、まず対象画像の輝度情報に基づいて、脊柱管領域内の各画素がどの程度浸潤らしいかを表す浸潤らしさの情報を取得し、次に浸潤らしさに対して、ステップS2030で設定した重要度で重み付けした上で浸潤候補領域を抽出する。なお、浸潤らしさの取得方法は第1の実施形態のステップS1030と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
以下に、画像処理装置200が、浸潤らしさを重要度で重み付けした上で、浸潤候補領域を抽出する方法を説明する。最初に、第2の抽出部204は、脊柱管領域Rspi内の各画素に設定された浸潤らしさに対して、ステップS2030で脊柱管領域Rspiの各画素に設定された重要度の値を掛け合わせることで、重要度で重み付けした浸潤らしさを算出する。そして、第2の抽出部204は、一定の閾値以上の、重み付けした浸潤らしさの値を有する脊柱管領域Rspi内の画素を抽出することで、浸潤候補領域を抽出する。このように、第2の抽出部204が、対象画像の輝度情報に基づいて取得した浸潤らしさに対して、輝度情報からは得られない臨床的な重要度に基づいて重み付けすることで、以下の効果が得られる。すなわち、臨床的に重要な領域を浸潤候補領域として抽出するとともに、臨床的に重要性が低い領域を浸潤候補領域から取り除くことができる。なお、重み付けした浸潤らしさの分布から浸潤候補領域を抽出する方法は閾値処理に限らず、ステップS1030における処理と同様に他の処理を用いてもよい。
【0073】
(S2050) (表示データを生成)
ステップS2050において、表示データ生成部105は、浸潤候補領域の表示データを生成する。そして、表示データ生成部105は、表示データを表示制御部106へと出力する。本実施形態では、第1の実施形態のステップS1050と同様、表示データ生成部105は、浸潤候補領域を対象画像上に重畳させた重畳画像と、指標値グラフの2種類の表示データを生成する。このとき、重畳画像および指標値グラフの2つは、第1の実施形態のステップS1050において、重要度に基づかない表示データに相当する。より具体的には、重畳画像は、ステップS1050と同様、浸潤候補領域に表示色を付与するが、重要度に基づいて各画素の表示色を変更することは行わない。
【0074】
図9は、第2の実施形態において、ステップS2040で抽出した浸潤候補領域を、対象画像上に重畳させた画像データ(重畳画像)の一例を示す図である。図9において、Iover2は本実施形態における重畳画像を表す。また、Rver、Rrib、Rspi、Tは、図5と同様のものを表す。また、また、Rext2は浸潤候補領域を表し、周囲と区別可能な一様な表示色が付与されている。このように、ユーザは浸潤候補領域Rext2を確認することで、ユーザによる脊柱管内浸潤の存在の発見を支援することができる。また、浸潤候補領域Rext2図5の浸潤候補領域Rext1に比べ、脊柱管の辺縁部が領域として抽出されていない。このように、臨床的に重要性が低い領域を取り除いた領域が、浸潤候補領域Rext2として対象画像上に重畳されていることが分かる。
【0075】
また、第2の実施形態において、表示データ生成部105は、重要度に基づいて面積に重み付けされることにより得られるものではなく、脊柱管領域Rspiの面積に対する浸潤候補領域Rext2の面積の割合を指標値として算出することにより指標値グラフを得る。それ以外の内容はステップS1050におけると同様であるため、説明を省略する。
【0076】
以上によって、第2の実施形態に係る画像処理装置200の処理が実施される。
【0077】
第2の実施形態によれば、画像処理装置200が、浸潤候補領域Rext2の抽出において、臨床的な重要度を考慮して領域抽出することで、以下の効果が得られる。すなわち、画像処理装置200は、抽出結果として、臨床的に重要な領域を浸潤候補領域Rext2として抽出するとともに、誤検出によるノイズや臨床的に重要性が低い領域を浸潤候補領域Rext2から取り除くことができる。したがって、画像処理装置200は、脊柱管の内側のノイズや臨床的にリスクが低い浸潤領域が強調されることを軽減し、臨床的にリスクが高い重要な浸潤領域を強調させることができる。
【0078】
(変形例1)
第2の実施形態では、画像処理装置200が、浸潤候補領域を抽出する際に重要度に重み付けして、誤検出によるノイズや臨床的に重要性が低い領域を浸潤候補領域から取り除く代わりに、重要度に基づかない表示データを生成していた。しかし、画像処理装置200は、浸潤候補領域の抽出時だけではなく、表示データの生成時にも重要度に基づくようにしてもよい。より具体的には、画像処理装置200は、処理の開始から浸潤候補領域の抽出までは、第2の実施形態におけるステップS2010~S2040の各処理を実行し、その後表示データの表示までは第1の実施形態におけるステップS1040~S1060の各処理を実行するようにする。これにより、浸潤候補領域の抽出時に誤検出によるノイズや臨床的に重要性が低い領域を取り除いたうえで、表示データの表示時にも、それらの領域が強調されることを軽減することができる。
【0079】
(変形例2)
第2の実施形態では、ステップS2040において、脊柱管領域内の各画素に設定された浸潤らしさに対して重要度で重みづけた浸潤らしさを算出し、それに基づいて浸潤候補領域を異常領域として抽出していた。しかし、ステップS2040では、必ずしも浸潤候補領域の抽出を行わずともよい。より具体的には、ステップS2040では、脊柱管領域内の各画素について、重要度で重みづけした浸潤らしさの算出までを行い、ステップS2050ではその値を用いた表示データの生成を行うようにしてもよい。この場合、画像処理装置200が、第2の抽出部204に代えて算出部を備えることとなる。すなわち、ステップS2040では、算出部は、重要度に基づいて浸潤らしさ(重要度で重みづけした浸潤らしさ)を算出する。このようにして、算出部は、算出度に基づいて異常領域らしさを算出する。
【0080】
そして、ステップS2050では、表示データ生成部105は、重畳画像として、対象画像上に重要度で重みづけた浸潤らしさを輝度情報として重畳させた画像データを生成することができる。このようにして、表示データ生成部105は、異常領域らしさに関する表示データを生成することができる。このとき、ステップS2020、S2030に記載のように、重みづけ前の浸潤らしさと、重要度がともに0~1の値で設定されているものとすると、重要度で重みづけした浸潤らしさも0~1の値で設定される。そして、表示データ生成部105は、設定された値に基づいて脊柱管領域内の各画素の表示色を変更するようにする。例えば、表示データ生成部105は、重みづけした浸潤らしさの値が大きいほど色の濃淡を濃くする。また、指標値グラフに関しては、例えば対象画像のアキシャル面ごとに、脊柱管領域内の各画素における重みづけされた浸潤らしさの値の代表値(例:平均値、中央値など)を算出し、それを指標値とするようにしてもよい。このように、異常領域として浸潤候補領域を抽出せずに、脊柱管領域内の重要度で重みづけた浸潤らしさ(異常領域らしさ)の情報をそのまま表示することで以下の効果が得られる。すなわち、閾値処理等で浸潤候補領域として拾い上げられなかった領域に関する浸潤らしさの情報をユーザに提示することができる。
【0081】
<その他の実施形態>
また、本明細書に開示の技術は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータなどのサーバ機器、インターフェイス機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、1つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0082】
また、本明細書に開示の技術の目的は、以下のようにすることによって達成されることはいうまでもない。すなわち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(コンピュータプログラム)を記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給する。係る記憶媒体は言うまでもなく、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本明細書に開示の技術を構成することになる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
101 取得部
102 第1の抽出部
103,204 第2の抽出部
104,203 重要度設定部
105 表示データ生成部
106 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9