(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154295
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/562 20210101AFI20241023BHJP
H01M 50/581 20210101ALI20241023BHJP
【FI】
H01M50/562
H01M50/581
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068049
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 義人
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA04
5H043GA07
5H043KA01D
5H043KA12D
5H043KA22D
5H043LA02D
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部機器との間で影響を及ぼし合うのを抑制できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】積層方向に積層された複数の電極ユニット100を備える蓄電装置10であって、複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔の他方の面に形成された負極活物質層130と、を有し、蓄電装置は、複数の電極ユニットよりも積層方向の端部に配置されるエンド部材300をさらに備え、エンド部材は、導電剤を含む樹脂層303を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置であって、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、
前記蓄電装置は、前記複数の電極ユニットよりも前記積層方向の端部に配置されるエンド部材をさらに備え、
前記エンド部材は、導電剤を含む樹脂層を有する
蓄電装置。
【請求項2】
前記エンド部材は、前記積層方向で前記樹脂層を挟む2つの金属層を有し、
前記2つの金属層は、前記樹脂層によって接合されている
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記樹脂層は、前記蓄電装置の前記積層方向における最も外側に配置される
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記樹脂層は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記樹脂層は、加熱されることで膨張する特性を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記樹脂層は、前記積層方向における厚みが100μm以下である
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集電箔の両面に活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)が形成された電極ユニットを備える蓄電装置が知られている。例えば、特許文献1には、複合集電体の一方の面上に正極活物質層を有し、他方の面上に負極活物質層を有するバイポーラ電極ユニットを備えるシート電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のような構成の蓄電装置において、内部短絡が発生する等により大電流が流れた場合、当該蓄電装置と電気的に接続された外部機器(他の蓄電装置等)にも大電流が流れてしまい、外部機器に影響を及ぼすおそれがある。外部機器から大電流が流れてきた場合には、蓄電装置に大電流が流れ込んでしまい、外部機器からの影響を受けるおそれもある。このように、従来の蓄電装置では、外部機器との間で影響を及ぼし合うおそれがある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、外部機器との間で影響を及ぼし合うのを抑制できる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置であって、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記蓄電装置は、前記複数の電極ユニットよりも前記積層方向の端部に配置されるエンド部材をさらに備え、前記エンド部材は、導電剤を含む樹脂層を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明における蓄電装置によれば、外部機器との間で影響を及ぼし合うのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る蓄電装置が有する電極ユニットの構成を示す斜視図及び断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る蓄電装置が備えるエンド部材の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の変形例1に係る蓄電装置が備えるエンド部材の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の変形例2に係る蓄電装置が備えるエンド部材の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、蓄電パックの構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、蓄電パックの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層方向に積層された複数の電極ユニットを備える蓄電装置であって、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記蓄電装置は、前記複数の電極ユニットよりも前記積層方向の端部に配置されるエンド部材をさらに備え、前記エンド部材は、導電剤を含む樹脂層を有する。
【0010】
これによれば、蓄電装置において、複数の電極ユニットよりも端部に配置されるエンド部材は、導電剤を含む樹脂層を有している。これにより、エンド部材の抵抗を高くできるため、蓄電装置に内部短絡が発生したり、組み立て時に外部短絡が発生したりする等により大電流が流れても、エンド部材と電気的に接続された外部機器(他の蓄電装置等)に大電流が流れるのを抑制できる。外部機器から大電流が流れてきた場合には、エンド部材によって蓄電装置に大電流が流れ込むのを抑制できる。したがって、蓄電装置において、外部機器との間で影響を及ぼし合うのを抑制できる。
【0011】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記エンド部材は、前記積層方向で前記樹脂層を挟む2つの金属層を有し、前記2つの金属層は、前記樹脂層によって接合されている、としてもよい。
【0012】
これによれば、エンド部材において、樹脂層を挟む2つの金属層を樹脂層によって接合することで、2つの金属層で樹脂層を挟んだ構成のエンド部材を容易に形成できる。
【0013】
(3)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記樹脂層は、前記蓄電装置の前記積層方向における最も外側に配置される、としてもよい。
【0014】
これによれば、エンド部材において、樹脂層を、蓄電装置の最も外側に配置することで、エンド部材が、蓄電装置の最も外側に金属層を有していなくてもよい。この場合、バスバーなどの金属製の板が樹脂層に重なるように配置される等により、蓄電装置が外部と電気的に接続される。したがって、部品点数の削減およびエンド部材の構成の簡素化ができる。複数の蓄電装置を用いたパック組立において、蓄電装置の最も外側を樹脂層とすることで、短絡のおそれが少なくなり、より安全にパックを組み立てられる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記樹脂層は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有する、としてもよい。
【0016】
これによれば、エンド部材の樹脂層が、加熱されることで抵抗が増加する特性を有することで、蓄電装置に内部短絡が発生する等により大電流が流れると、樹脂層が加熱されて樹脂層の抵抗が増加する。つまり、導電剤を含む樹脂層が加熱されると、樹脂が溶解して樹脂内に分散している導電剤同士の接触が抑制されて、導電剤を含む樹脂層が高抵抗となる。このため、外部機器に大電流が流れるのを抑制できる。外部機器から大電流が流れてきた場合には、エンド部材の樹脂層が加熱されて樹脂層の抵抗が増加するため、蓄電装置に大電流が流れ込むのを抑制できる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記樹脂層は、加熱されることで膨張する特性を有する、としてもよい。
【0018】
これによれば、エンド部材の樹脂層が、加熱されることで膨張する特性を有することで、蓄電装置に内部短絡が発生する等により大電流が流れると、樹脂層が加熱されて膨張するため、樹脂層の抵抗が増加し、外部機器に大電流が流れるのを抑制できる。外部機器から大電流が流れてきた場合には、エンド部材の樹脂層が加熱されて膨張するため、樹脂層の抵抗が増加し、蓄電装置に大電流が流れ込むのを抑制できる。エンド部材の樹脂層が加熱されて膨張することで、蓄電装置と外部機器との間の距離を大きくできるため、蓄電装置と外部機器との間で熱が伝わるのを抑制できる。
【0019】
(6)上記(1)から(5)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記樹脂層は、前記積層方向における厚みが100μm以下である、としてもよい。
【0020】
これによれば、エンド部材の樹脂層を、厚みが100μm以下と薄く形成することで、エンド部材の厚みが厚くなるのを抑制できる。エンド部材の樹脂層は厚くしすぎると通常使用時の抵抗が大きくなる。このため、樹脂層の厚みは、100μm以下が好ましい。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置等について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0022】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の長手方向、または、蓄電装置の一対の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の一対の長側面の対向方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の厚み方向、複数の電極ユニットの積層方向、集電箔及び活物質層の積層方向、一対のエンド部材の並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0023】
以下の説明において、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。単にX軸方向という場合は、X軸プラス方向及びX軸マイナス方向の双方向またはいずれか一方の方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行であるとは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0024】
(実施の形態)
[1 蓄電装置10の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置10の全般的な説明を行う。
図1は、本実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る蓄電装置10の内部構成を示す断面図である。具体的には、
図2は、
図1の蓄電装置10を、II-II線を通るYZ平面で切断した場合の断面図である。
図2は、蓄電装置10が備える各構成要素を示している。
図3は、本実施の形態に係る蓄電装置10が有する電極ユニット100の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、
図3の(a)は、電極ユニット100の外観を示す斜視図である。
図3の(b)は、
図3の(a)の電極ユニット100を、IIIb-IIIb線を通るYZ平面で切断した場合の構成を示す断面図である。
図3では、説明の便宜のため、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0025】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置である。本実施の形態における蓄電装置10は、略直方体形状を有している。具体的には、蓄電装置10は、バイポーラ電池である。蓄電装置10は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0026】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置10は、複数の電極ユニット100と、エンドユニット101及び102と、複数のセパレータ140と、一対のエンド部材300及び310と、を備えている。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102のそれぞれは、平面視で矩形状の板状部位であり、Z軸方向に積層されている。本実施の形態での平面視とは、積層方向(Z軸方向)から見た場合のことをいう。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102が積層される方向(Z軸方向)を、積層方向とも称する。セパレータ140は、複数の電極ユニット100、エンドユニット101及び102のそれぞれの間に配置される。一対のエンド部材300及び310は、積層方向(Z軸方向)において、複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102の両側に配置される。本実施の形態では、エンドユニット101とエンドユニット102との間に、2つの電極ユニット100が積層方向に積層されているが、電極ユニット100が積層される数は特に限定されない。電極ユニット100、エンドユニット101及びエンドユニット102等の平面視の形状も特に限定されない。
【0027】
[1.1 電極ユニット100の説明]
以下に、
図3も用いて、電極ユニット100の構成について、詳細に説明する。電極ユニット100は、1枚の集電箔の両面に活物質層が形成された1単位のユニットである。複数の電極ユニット100のそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔110の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔110の他方の面に形成された負極活物質層130と、シール部210と、を有している。本実施の形態では、電極ユニット100の厚み(積層方向の厚み)は、135μm~190μm程度である。
【0028】
集電箔110は、平面視が矩形状である板状部材である。集電箔110は、金属箔である。
図3に示すように、集電箔110は、積層方向(Z軸方向)に並ぶ2つの金属層111及び112を有している。金属層111及び112は、平面視で同じ大きさかつ同じ形状を有する板状の部位である。以下では、金属層111及び112のうちの、正極活物質層120が形成される金属層111を正極金属層111とも称し、負極活物質層130が形成される金属層112を負極金属層112とも称する。正極金属層111は、集電箔110のうちのZ軸プラス方向に位置する金属層であり、負極金属層112は、集電箔110のうちのZ軸マイナス方向に位置する金属層である。つまり、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112が互いに接続(接触または接合)された状態で、正極金属層111及び負極金属層112が積層方向に積層されて形成されている。正極金属層111及び負極金属層112は、一方が金属箔であり、他方が当該金属箔にメッキされるメッキ層でもよい。または、正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔でもよい。正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔の場合、集電箔110は、2つの金属箔同士が接合されて形成されたクラッド材等であってもよいし、2つの金属箔同士が接合されることなく接続(接触)した状態で2つの金属箔を有していてもよい。
【0029】
正極金属層111の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属またはそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスから、正極金属層111の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。正極金属層111の形態としては、メッキ層でもよいが、加工性、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極金属層111としては、アルミニウム箔が好ましい。負極金属層112の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属またはそれらの合金が用いられ、これらの中でも、銅または銅合金が用いられるのが好ましい。負極金属層112の形態としては、メッキ層または箔(銅箔)が挙げられ、銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。集電箔110の厚み(積層方向の厚み)は、20μm~30μm程度である。正極金属層111の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~20μm程度であり、負極金属層112の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~15μm程度である。
【0030】
正極活物質層120は、集電箔110の一方の表面(Z軸プラス方向の面)に形成された正極の活物質層である。具体的には、正極活物質層120は、正極金属層111上(正極金属層111の外面(Z軸プラス方向の面))に形成されている。正極活物質層120は、正極金属層111の形状に応じて、平面視で正極金属層111よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。平面視でサイズが小さいとは、XY平面の面積が小さいことをいう。以下についても同様である。正極活物質層120の厚み(積層方向の厚み)は、70μm~100μm程度である。
【0031】
正極活物質層120は、正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。正極活物質としては、LiM1O2(M1はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等の層状リチウム遷移金属酸化物、LiM22O4(M2はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のスピネル型リチウム遷移金属酸化物、LiM3PO4、LiM3SiO4、LiM3BO3(M3はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のポリアニオン化合物等が挙げられる。正極活物質として、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層120に含有される導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛などが挙げられる。バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。
【0032】
負極活物質層130は、集電箔110の他方の表面(Z軸マイナス方向の面)に形成された負極の活物質層である。具体的には、負極活物質層130は、負極金属層112上(負極金属層112の外面(Z軸マイナス方向の面))に形成されている。負極活物質層130は、負極金属層112の形状に応じて、平面視で負極金属層112よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。負極活物質層130は、平面視で正極活物質層120よりもサイズが大きく形成されている。平面視でサイズが大きいとは、XY平面の面積が大きいことをいう。以下についても同様である。つまり、負極活物質層130のXY平面の面積は、正極活物質層120のそれよりも大きい。負極活物質層130の厚み(積層方向の厚み)は、45μm~60μm程度である。
【0033】
負極活物質層130は、負極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層120と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属または半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物または半金属酸化物;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0034】
シール部210は、正極活物質層120または負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部210は、正極活物質層120及び負極活物質層130の全周に亘って正極活物質層120及び負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部210は、集電箔110の外周部を覆うように、集電箔110の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部210は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材により形成されている。
【0035】
隣り合う2つの電極ユニット100が有するシール部210同士は、互いに接続されている。当該シール部210同士は、一体的に連続して形成されることで、互いに接続されていてもよいし、シール部210同士がヒートシール(熱溶着)、超音波溶着、レーザ溶着、または、接着剤等によって接合されることで、互いに接続されていてもよい。これにより、シール部210は、当該2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120及び当該2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の周囲に配置され、当該2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にはシール部210が設けられる。つまり、2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にシール部210が連続的に設けられ、集電箔110同士の間がシールされる。
【0036】
複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側には、電解質層(図示省略)が形成されている。電解質層は、本実施の形態では、非水系の液体状の電解質(電解液)であるが、固体状の電解質(固体電解質)、または、ゲル状の電解質等でもよい。これら電解質としては、適宜公知のものを使用できる。電解液(非水電解質)としては、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものを用いることができる。非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートなどを挙げることができる。電解質塩としては、リチウム塩が好ましい。上記リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)等の無機リチウム塩を挙げることができる。
【0037】
[1.2 エンドユニット101及び102の説明]
次に、エンドユニット101及び102の構成について、詳細に説明する。エンドユニット101は、複数の電極ユニット100のZ軸マイナス方向の端部に配置される。エンドユニット102は、複数の電極ユニット100のZ軸プラス方向の端部に配置される。エンドユニット101及び102は、複数の電極ユニット100をZ軸方向で挟み込む部位である。
【0038】
エンドユニット101は、少なくとも、正極金属層111と、正極金属層111のZ軸プラス方向の面に形成された正極活物質層120と、シール部220と、を有している。エンドユニット101が有する正極金属層111及び正極活物質層120は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110の正極金属層111及び正極活物質層120と同様の構成を有している。
【0039】
シール部220は、正極活物質層120の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部220は、正極活物質層120の全周に亘って正極活物質層120の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部220は、正極金属層111及びエンド部材310の外周部を覆うように、正極金属層111及びエンド部材310の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部220は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0040】
シール部220は、エンドユニット101に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部220とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット101の正極金属層111と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部220の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0041】
エンドユニット102は、少なくとも、集電箔110と、集電箔110のZ軸マイナス方向の面に配置された負極活物質層130と、シール部230と、を有している。エンドユニット102が有する集電箔110及び負極活物質層130は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110及び負極活物質層130と同様の構成を有している。
【0042】
シール部230は、負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部230は、負極活物質層130の全周に亘って負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部230は、集電箔110及びエンド部材300の外周部を覆うように、集電箔110及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部230は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0043】
シール部230は、エンドユニット102に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部230とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット102の集電箔110と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部230の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0044】
このように、シール部210、220及び230が互いに接続されて、シール部材200が構成される。シール部材200は、正極金属層111、負極金属層112、正極活物質層120、負極活物質層130、セパレータ140、及び、エンド部材300、310の全ての全周を囲うように配置され、これらと外部との間をシールする筒状(四角筒状)の部材である。
【0045】
[1.3 セパレータ140及びエンド部材300、310の説明]
セパレータ140は、樹脂からなる微多孔性のシートである。セパレータ140は、電極ユニット100同士の間、エンドユニット101と電極ユニット100との間、及び、エンドユニット102と電極ユニット100との間に、それぞれ配置される。具体的には、セパレータ140は、正極活物質層120と負極活物質層130との間に配置される。セパレータ140の材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ140として、これらの多孔質樹脂フィルムの表面にフィラーを含む層を形成した多層のフィルムであってもよい。セパレータ140は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが大きい矩形状に形成されている。本実施の形態では、セパレータ140のサイズは、平面視で集電箔110のそれよりも小さいが、平面視で集電箔110よりもサイズが大きくてもよい。セパレータ140の厚み(積層方向の厚み)は、15μm~20μm程度である。
【0046】
エンド部材300及び310は、複数の電極ユニット100よりも、蓄電装置10における積層方向(Z軸方向)の端部に配置される部材である。本実施の形態では、エンド部材310が、蓄電装置10の最もZ軸マイナス方向端部に配置され、エンド部材300が、蓄電装置10の最もZ軸プラス方向端部に配置される。エンド部材310は、エンドユニット101(が有する正極金属層111)に接続され、エンド部材300は、エンドユニット102(が有する正極金属層111)に接続される。これにより、一対のエンド部材300及び310は、その間に位置する複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102等を、積層方向(Z軸方向)の両側から挟み込む。エンド部材300及び310は、平板状の部材(エンドプレート)である。エンド部材300及び310は、他の導電部材(バスバー、冷却板等。図示せず)を介して、他の蓄電装置10が有する他のエンド部材と電気的に接続される。
【0047】
エンド部材300の構成についてのさらに詳細な説明は、後述する。エンド部材310は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材等で形成されている。エンド部材310は、正極金属層111と接続されるため、アルミニウムなど、正極金属層111と同じ材質で形成されるのが好ましい。エンド部材310の厚み(積層方向の厚み)は、0.5mm~3mm程度である。蓄電装置10は、エンド部材300または310の外側(Z軸方向の外側)に他の導電部材を有していてもよい。
【0048】
以上の構成において、セパレータ140と、セパレータ140をZ軸方向で挟む正極活物質層120及び負極活物質層130と、これらをZ軸方向で挟む正極金属層111及び負極金属層112とを、1つの蓄電素子と称してもよい。この場合、蓄電装置10は、Z軸方向に積層された複数の蓄電素子がZ軸方向において一対のエンド部材300及び310で挟まれ、これらの周囲がシール部材200で囲われた構成を有する蓄電素子群であるとも言える。
【0049】
[2 エンド部材300の詳細説明]
次に、エンド部材300の構成について、さらに詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る蓄電装置10が備えるエンド部材300の構成を示す断面図である。具体的には、
図4の(a)は、
図2の蓄電装置10のZ軸プラス方向の部分を示し、
図4の(b)は、
図4の(a)に示した蓄電装置10におけるエンド部材300及び集電箔110の正極金属層111の一部(破線で囲った部分)を拡大して示している。
図4の(a)には、蓄電装置10(エンド部材300)のZ軸プラス方向に配置される接続部材20が図示されている。
【0050】
図4に示すように、エンド部材300は、金属層301と、金属層302と、樹脂層303と、を有している。具体的には、エンド部材300は、導電剤を含む樹脂層303と、積層方向(Z軸方向)で樹脂層303を挟む2つの金属層301及び302と、を有している。
【0051】
[2.1 金属層301及び302の説明]
金属層301は、エンド部材300の本体部であり、エンド部材300の最も内側(Z軸マイナス方向)の端部に配置される平板状の部材である。金属層301は、エンド部材310と同様の構成を有している。つまり、金属層301は、エンドユニット102(が有する集電箔110の正極金属層111)に接続される。金属層301は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ等で形成されている。金属層301は、正極金属層111と接続されるため、アルミニウムなど、正極金属層111と同じ材質で形成されるのが好ましい。金属層301の厚み(積層方向の厚み)は、0.5mm~3.0mm程度である。金属層301は、平面視で樹脂層303及び金属層302よりもサイズが大きく形成され、外周部(Z軸方向から見て外縁を含む端部)が、シール部230に覆われている。
【0052】
金属層302は、蓄電装置10(エンド部材300)の最も外側(Z軸プラス方向)の端部に配置される金属箔である。金属層302には、接続部材20が接続される。蓄電装置10は、接続部材20を介して、他の蓄電装置10と電気的に接続される。接続部材20は、バスバーの機能を有する金属板である。接続部材20は、内方に冷媒通路(貫通孔)が形成されており、冷媒通路に冷媒が流れることで、蓄電装置10を冷却する導電性の冷却板であってもよいし、中実の金属板でもよい。金属層302は、樹脂層303を覆うカバーであり、樹脂層303を保護する機能も有している。金属層302の厚み(積層方向の厚み)は、0.1mm~3.0mm程度である。本実施の形態では、金属層302は、平面視で樹脂層303と同じサイズを有する矩形状の部位であるが、金属層302の形状は特に限定されない。
【0053】
[2.2 樹脂層303の説明]
樹脂層303は、導電剤を含む樹脂層(樹脂と導電剤との混合物)である。本実施の形態では、樹脂層303は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有している。具体的には、樹脂層303は、温度が上昇するにしたがって電気抵抗が増加するPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有する樹脂(PTC樹脂)によって形成されている。樹脂層303としては、樹脂材料が溶融することで導電剤による内部の導電パスが切れ、電気抵抗が増加するタイプ、または、加熱されることで膨張し、電気抵抗が増加するタイプ等が挙げられる。
【0054】
具体的には、樹脂層303は、導電剤、ポリオレフィン、及び、バインダーを含んでいる。
【0055】
(導電剤)
導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤としては、これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。導電剤の形状は、通常、粒子状である。「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cm以下であることを意味する。導電剤の粒子径としては、例えば20nm以上1μm以下であることが好ましい。このような粒子径の導電剤を用いることで、ポリオレフィンの軟化によって導電剤間の電子伝導経路の分断が生じやすく、シャットダウン機能をより高めることができる。粒子径は、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値(D50)を意味する。
【0056】
樹脂層303における導電剤の含有量の下限としては、例えば1質量%であってもよいが、2質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。樹脂層303における導電剤の含有量が上記下限以上であることにより、通常使用時に十分な導電性を発現することができる。樹脂層303における導電剤の含有量の上限としては、例えば20質量%であってもよいが、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。樹脂層303における導電剤の含有量の上限が上記範囲であることで、ポリオレフィンの軟化に伴い導電剤間の電子伝導経路が効果的に分断され、より優れたシャットダウン機能を発現させることができる。樹脂層303における導電剤の含有量が15質量%以下であることで、短絡電流の大きさが抑制されるので、より安全性を向上できる。
【0057】
(ポリオレフィン)
ポリオレフィンは、不飽和炭化水素化合物であるオレフィンをモノマーとして合成されるポリマーである。ポリオレフィンは、通常、絶縁性である。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中では、融点が比較的高いという観点から、ポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィンは、1種または2種以上を混合して用いることができる。上記ポリオレフィンの融点の下限としては、100℃でもよく、140℃が好ましく、160℃がより好ましい。ポリオレフィンの融点を上記範囲とすることで、通常時には十分な導電性を確保しつつ、過剰な発熱時に導電剤間の電子伝導経路が十分に分断され、効果的に抵抗を高めることができる。製造工程における乾燥時には、軟化されず保型性が維持されるので、効率よく製造できる。
【0058】
上記ポリオレフィンが、通常時の樹脂層303中において粒子状であることが好ましい。ポリオレフィンの融点を上記範囲とすることで、通常時には十分な導電性を確保しつつ、短絡による過剰な発熱時に軟化して導電剤を被覆することができるので、効果的に抵抗を高めることができる。上記粒子状とは、粒子形状を保っていれば、粒子同士の一部が溶けて結着していてもよい。ポリオレフィンが粒子状である場合、ポリオレフィンの粒子径が導電剤の粒子径よりも大きいことが好ましい。このような粒子径のポリオレフィンを用いることで、樹脂層303の厚み方向においてポリオレフィンが導電剤よりも高さがある状態で存在する。そのため、短絡による過剰な発熱時に軟化したポリオレフィンが導電剤を被覆することができるので、効果的に抵抗を高めることができ、短絡電流の増大の抑制効果を向上できる。ポリオレフィンの粒子径としては例えば1μm以上10μm以下であることが好ましい。粒子径は、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値(D50)を意味する。
【0059】
樹脂層303における導電剤の含有量に対するポリオレフィンの含有量の下限としては、質量比で2倍であり、4倍が好ましく、6倍がより好ましい。導電剤に対するポリオレフィンの含有量を上記下限以上とすることで、上記分断が生じるために十分な量のポリオレフィンによる被覆が導電剤に対してされることから、効果的に電気抵抗の上昇が可能となり、十分なシャットダウン機能が発現する。樹脂層303における導電剤の含有量に対するポリオレフィンの含有量の上限としては、質量比で20倍であり、16倍が好ましく、12倍がより好ましい。導電剤に対するポリオレフィンの含有量を上記上限以下とすることで、樹脂層303中に十分な量の導電剤を存在させることができ、通常時における良好な導電性を確保することができる。
【0060】
樹脂層303におけるポリオレフィンの含有量の下限としては、例えば30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。樹脂層303におけるポリオレフィンの含有量が上記下限以上であることにより、上記分断が生じるために十分な量のポリオレフィンによる被覆が導電剤に対してされることから、樹脂層303内の電子伝導経路が効果的に分断され、より優れたシャットダウン機能を発現させることができる。樹脂層303におけるポリオレフィンの含有量の上限としては、例えば90質量%が好ましく、85質量%がより好ましい。樹脂層303におけるポリオレフィンの含有量を上記上限以下とすることで、通常使用時に良好な導電性と、過剰な発熱時における良好なシャットダウン機能とをバランス良く発現することができる。
【0061】
(バインダー)
バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子などが挙げられる。これらの中でも、フッ素樹脂が好ましく、PVDFがより好ましい。分子間力が小さく、表面エネルギーが低いフッ素を含有するフッ素樹脂は発熱に伴って膨潤し、バインダーとして適度な結着性を有する。その結果、フッ素樹脂を用いることで、発熱時のポリオレフィンの軟化の際に樹脂層303内の電子伝導経路が比較的容易に分断され、シャットダウン機能をより効果的に発現できる。樹脂層303におけるバインダーの含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。この含有量の上限としては、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。樹脂層303におけるバインダーの含有量を上記範囲とすることで、十分な結着性と、過剰な発熱時の樹脂層303内の電子伝導経路の分断性とをバランス良く発現することができる。
【0062】
このように、樹脂層303がバインダー(結着剤)を含むことで、樹脂層303は、結着性を有することとなる。このため、2つの金属層301及び302は、樹脂層303によって接合(接着)されている。樹脂層303は、上述のポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を原料とする結着性の強い変性ポリオレフィンを含んでいてもよい。当該変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに極性基を導入し、異種材料との接着性を付与したものである。
【0063】
(他の成分)
樹脂層303には、短絡電流の増大の抑制効果を向上する観点から、導電剤、ポリオレフィン及びバインダー以外の他の成分がさらに含有されていてもよい。ただし、樹脂層303における上記他の成分の含有量の上限としては、例えば20質量%が好ましい。この上限としては、10質量%であってもよく、5質量%であってもよく、1質量%であってもよい。他の成分の含有量を上記上限以下とすることにより、通常使用時における良好な導電性と、異常時におけるシャットダウン機能とをより良好に両立させることができる。
【0064】
上記他の成分としては、例えば炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化物(ただし、アルカリ金属の水酸化物は除く)、その他の無機化合物またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。上記樹脂層303が、このような他の成分をさらに含有することで、過剰な発熱の際のシャットダウン機能を高めることができ、安全性をより高めることができる。
【0065】
炭酸化合物としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、その他、炭酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、炭酸マグネシウムがより好ましい。このような炭酸化合物を用いることで、過剰な発熱の際のシャットダウン機能を高めることができ、安全性をより高めることができる。炭酸水素化合物としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩や、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸水素塩等が挙げられる。水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アルミニウム等(ただし、アルカリ金属の水酸化物は除く)が挙げられる。このような水酸化物を用いることで、短絡等による発熱に伴って、電流のシャットダウン機能が働き、更なる発熱を抑えることができるため、安全性をより高めることができる。その他の無機化合物としては、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム-酸化ケイ素複合酸化物等の無機酸化物;チタン酸バリウム等のチタン酸化合物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物等が挙げられる。上記無機化合物を用いることで、ポリオレフィン樹脂が軟化した場合にも樹脂層303の形状を保つことができるので、金属層301及び302が直接接触することを阻止できる。
【0066】
樹脂層303は、ポリオレフィンに代えて、気体発生化合物を含んでいてもよい。つまり、ポリオレフィンの軟化によって導電剤間の電子伝導経路を分断させる代わりに、気体発生によって導電剤間の電子伝導経路を分断してもよい。この場合の樹脂層303は、上述の導電剤、気体発生化合物、及び、上述のバインダーを含んでいる。
【0067】
気体発生化合物の一態様は、100℃以上で分解して気体を発生する化合物(a)である。このような化合物(a)の具体例としては、炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化酸化物、水和物、水酸化物、及びその他有機化合物等を挙げることができ、炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化酸化物、水和物及び水酸化物が好ましく、炭酸化合物、炭酸水素化合物及び水酸化物がより好ましく、炭酸化合物及び水酸化物がさらに好ましく、水酸化物がよりさらに好ましい。気体発生化合物の他の態様としては、炭酸化合物、炭酸水素化合物、水酸化酸化物、水和物及び水酸化物(ただし、アルカリ金属の水酸化物は除く)である。これらの化合物(b)は、通常、加熱に伴って分解し、気体を発生する。化合物(b)は、例えば100℃以上で分解する。化合物(b)の中でも、炭酸化合物、炭酸水素化合物及び水酸化物が好ましく、炭酸化合物及び水酸化物がより好ましく、水酸化物がさらに好ましい。気体発生化合物は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
炭酸化合物としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、その他、炭酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、炭酸マグネシウムがより好ましい。炭酸マグネシウム等は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。炭酸水素化合物としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩や、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸水素塩等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属の炭酸水素塩が好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。水酸化酸化物としては、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト等)や水酸化酸化マグネシウム等が挙げられる。水和物としては、硫酸カルシウム二水和物、硫酸銅五水和物、炭酸マグネシウムn水和物等が挙げられる。水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物や、水酸化アルミニウム等の第13族元素の水酸化物等が挙げられる。
【0069】
気体発生化合物の分解する温度の下限は、130℃が好ましく、160℃がより好ましく、200℃がさらに好ましい場合もある。これにより、乾燥工程において、気体発生化合物が分解するおそれが低減できる。気体発生物質の分解する温度の上限は、短絡等の異常時における蓄電装置10内部の最高到達温度以下であれば特に限定されないが、800℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、450℃以下がさらに好ましい。気体発生化合物の分解する温度は、蓄電装置10が熱逸走する温度よりも低いことが好ましい。蓄電装置10の熱逸走前に気体発生化合物が分解して気体が発生することで、樹脂層303内の電子伝導経路の分断が進行し、十分なシャットダウン機能が発現できる。気体発生化合物の形状は、通常時の樹脂層303中において、通常、粒子状である。気体発生化合物は、通常、絶縁性である。
【0070】
気体発生化合物を常温(20℃)から300℃または500℃まで加熱した場合の、質量減少率の下限としては、3質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%、20質量%または30質量%がさらに好ましいこともある。この質量減少率の上限としては、70質量%が好ましく、50質量%、30質量%または20質量%がより好ましいこともある。質量減少率、すなわち気体の発生量が上記範囲であることで、発熱時における安全性をより高めることができる。
【0071】
気体発生化合物が発生する気体は、難燃性かつ非助燃性であることが好ましい。難燃性かつ非助燃性の気体を発生することにより、発熱に伴う発火の可能性を低減することができ、安全性がより高まる。難燃性かつ非助燃性の気体としては、二酸化炭素、水(水蒸気)、窒素等が挙げられ、これらの中でも、二酸化炭素が好ましい。気体発生化合物は、分解の際に、酸化物等の固体の絶縁性無機物が生じるものであることが好ましい。このような場合、この固体の絶縁性無機物自体も絶縁性の確保に寄与することができる。
【0072】
気体発生化合物のD50粒子径としては、例えば0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。気体発生化合物のBET比表面積としては、例えば1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。このような粒子径や比表面積を有する気体発生化合物を用いることで、発熱時により効果的に気体が発生し、効果的に抵抗を高めることができる。「BET比表面積」は、以下の方法により測定された値である。まず、窒素吸着法を用いた細孔径分布測定を行う。この測定は、Quantachrome社製「autosorb iQ」により行うことができる。得られる吸着等温線のP/P0=0.06~0.3の領域から5点を抽出してBETプロットを行い、その直線のy切片と傾きからBET比表面積を算出する。
【0073】
気体発生化合物の形状は特に限定されないが、棒状であることが好ましい。気体発生化合物が棒状である場合、アンカー効果が高まり、PTC機能を発現するバインダーの溶融流出を十分に抑制することができる。棒状である場合、加熱に伴う分解が生じやすい。「棒状」とは、短径に対する長径の比が2以上の粒子をいい、この比が5以上の粒子であることが好ましい。この比の上限は例えば100であってよい。上記短径及び長径は、電子顕微鏡で観察される1視野において、長径の大きい上位5つの粒子の平均値とする。棒状の気体発生化合物の短径の下限としては、0.01μmが好ましく、0.1μmが好ましい。この短径の上限としては、10μmが好ましく、4μmがより好ましい。
【0074】
樹脂層303における導電剤の含有量に対する気体発生化合物の含有量の下限は、質量比で2倍であり、4倍が好ましく、6倍がより好ましい。導電剤に対する気体発生化合物の含有量を上記下限以上とすることで、樹脂層303内の電子伝導経路の分断が十分に生じるほどの気体が生じ、十分なシャットダウン機能が発現する。樹脂層303における導電剤の含有量に対する気体発生化合物の含有量の上限は、質量比で20倍であり、16倍が好ましく、12倍がより好ましい。導電剤に対する気体発生化合物の含有量を上記上限以下とすることで、樹脂層303中に十分な量の導電剤を存在させることができ、通常時における良好な導電性を確保することができる。
【0075】
樹脂層303における気体発生化合物の含有量の下限としては、例えば10質量%であってもよく、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。樹脂層303における気体発生化合物の含有量が上記下限以上であることにより、気体の発生に伴い、樹脂層303内の電子伝導経路が効果的に分断され、より優れたシャットダウン機能を発現させることができる。樹脂層303における気体発生化合物の含有量が上記下限以上であることにより、アンカー効果が高まり、PTC機能を発現するバインダーの溶融流出を十分に抑制することができる。樹脂層303における気体発生化合物の含有量の上限としては、例えば95質量%であってもよく、90質量%が好ましく、85質量%がより好ましい。樹脂層303における気体発生化合物の含有量を上記上限以下とすることで、通常使用時に良好な導電性と、発熱時における良好なシャットダウン機能とをバランス良く発現することができる。
【0076】
このように、樹脂層303は、加熱されることで膨張する特性を有する。樹脂層303は、加熱されることで、1.1倍~3倍に膨張する。
【0077】
蓄電装置10の厚みを薄くする等の観点から、樹脂層303は、積層方向(Z軸方向)における厚みが、100μm以下であるのが好ましく、70μm以下であるのがより好ましい。シャットダウン機能をより高める等の観点から、樹脂層303の厚みは、1μm以上であるのが好ましく、10μm以上であるのがより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。これらの理由から、樹脂層303の厚みは、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上70μm以下であるのがより好ましく、30μm以上70μm以下であるのがさらに好ましい。樹脂層303の厚みは、エンド部材300の断面SEM(Scanning Electron Microscope)において、樹脂層303の厚みを5点以上測定し平均することで得られる平均厚みである。断面SEMとは、サンプルの切断面を作製し、その断面を走査電子顕微鏡で観察する方法である。上述したその他の部材の厚みの測定についても、同様の方法を採用できる。
【0078】
樹脂層303は、金属層301または302に塗布され、金属層301及び302に挟まれた状態でプレスロールでプレスされることで、厚さが調整される。その後、樹脂層303は、100℃程度の熱によって硬化される(2液混合の樹脂によって硬化されてもよい)。金属層301及び302のうちの一方の金属層に樹脂層303を塗り付けた後、他方の金属層を貼り付け、その後に温度をかけて硬化することで、樹脂層303を形成することもできる。本実施の形態では、樹脂層303は、平面視で、金属層301のうちのシール部230から露出した部分のほぼ全面を覆う矩形状の部位であるが、樹脂層303の形状は特に限定されない。
【0079】
[3 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10によれば、複数の電極ユニット100よりも端部に配置されるエンド部材300は、導電剤を含む樹脂層303を有している。これにより、エンド部材300の抵抗を高くできるため、蓄電装置10に内部短絡が発生したり、組み立て時に外部短絡が発生したりする等により大電流が流れても、エンド部材300と電気的に接続された外部機器(他の蓄電装置10等)に大電流が流れるのを抑制できる。外部機器から大電流が流れてきた場合には、エンド部材300によって蓄電装置10に大電流が流れ込むのを抑制できる。したがって、蓄電装置10において、外部機器との間で影響を及ぼし合うのを抑制できる。
【0080】
エンド部材300において、樹脂層303を挟む2つの金属層301及び302を樹脂層303によって接合することで、2つの金属層301及び302で樹脂層303を挟んだ構成のエンド部材300を容易に形成できる。
【0081】
エンド部材300の樹脂層303が、加熱されることで抵抗が増加する特性を有することで、蓄電装置10に内部短絡が発生する等により大電流が流れると、樹脂層303が加熱されて樹脂層303の抵抗が増加する。つまり、導電剤を含む樹脂層303が加熱されると、樹脂が溶解して樹脂内に分散している導電剤同士の接触が抑制されて、導電剤を含む樹脂層303が高抵抗となる。このため、外部機器に大電流が流れるのを抑制できる。外部機器から大電流が流れてきた場合には、エンド部材300の樹脂層303が加熱されて樹脂層303の抵抗が増加するため、蓄電装置10に大電流が流れ込むのを抑制できる。
【0082】
エンド部材300の樹脂層303が、加熱されることで膨張する特性を有する場合には、蓄電装置10に内部短絡が発生する等により大電流が流れると、樹脂層303が加熱されて膨張するため、樹脂層303の抵抗が増加し、外部機器に大電流が流れるのを抑制できる。外部機器から大電流が流れてきた場合には、エンド部材300の樹脂層303が加熱されて膨張するため、樹脂層303の抵抗が増加し、蓄電装置10に大電流が流れ込むのを抑制できる。エンド部材300の樹脂層303が加熱されて膨張することで、蓄電装置10と外部機器との間の距離を大きくできるため、蓄電装置10と外部機器との間で熱が伝わるのを抑制できる。
【0083】
エンド部材300の樹脂層303を、厚みが100μm以下と薄く形成することで、エンド部材300の厚みが厚くなるのを抑制できる。エンド部材300の樹脂層303は厚くしすぎると通常使用時の抵抗が大きくなる。このため、樹脂層303の厚みは、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましい。しかしながら、樹脂層303を薄くしすぎると、大電流が流れた際に十分な抵抗が得られないことから、樹脂層303の厚みは、1μm以上がより好ましい。さらには、薄い層のコートが難しいことや、外力により容易に樹脂層が壊れる恐れがあり、樹脂層303の厚みは、10μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。このため、樹脂層303の厚みは、1μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上70μm以下がより好ましく、30μm以上70μm以下がさらに好ましい。
【0084】
[4 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0085】
上記実施の形態では、エンド部材300は、2つの金属層301及び302を有していることとしたが、1つの金属層しか有していなくてもよいし、3つ以上の金属層を有していてもよい。
【0086】
エンド部材300が1つの金属層しか有していない場合の例を以下に示す。
図5は、本実施の形態の変形例1に係る蓄電装置10aが備えるエンド部材300aの構成を示す断面図である。
図6は、本実施の形態の変形例2に係る蓄電装置10bが備えるエンド部材300bの構成を示す断面図である。
図5及び
図6は、
図4に対応する図である。
【0087】
図5に示すように、変形例1におけるエンド部材300aは、上記実施の形態におけるエンド部材300が有していた金属層302を有しておらず、1つの金属層301と、樹脂層303と、を有している。これにより、樹脂層303は、蓄電装置10aの積層方向における最も外側に配置される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。本変形例の構成によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、本変形例では、エンド部材300aの樹脂層303を、蓄電装置10aの最も外側に配置することで、エンド部材300aが、蓄電装置10aの最も外側に金属層(アルミ箔等)を有していなくてもよい。この場合、バスバーなどの金属製の板(接続部材20)が樹脂層303に重なるように配置される等により、蓄電装置10aが外部と電気的に接続される。したがって、部品点数の削減およびエンド部材300aの構成の簡素化ができる。複数の蓄電装置10aを用いたパック組立において、蓄電装置10aの最も外側を樹脂層303とすることで、短絡のおそれが少なくなり、より安全にパックを組み立てられる。
【0088】
図6に示すように、変形例2におけるエンド部材300bは、上記変形例1におけるエンド部材300aが有していた金属層301と樹脂層303とを入れ替えたような構成を有している。これにより、金属層301が、蓄電装置10bの積層方向における最も外側に配置され、樹脂層303は、エンドユニット102(が有する集電箔110の正極金属層111)に接続される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。本変形例の構成によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、本変形例では、上記変形例1と同様にエンド部材300bの構成を簡素化するとともに、エンド部材300bの金属層301を蓄電装置10bの最も外側に配置することで、金属層301によって樹脂層303を保護できる。樹脂層303がバインダー(結着剤)を含む場合、樹脂層303によって金属層301とエンドユニット102とを接合(接着)できる。
【0089】
上記実施の形態では、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112の複数層(2層)で形成されていることとしたが、集電箔110は、1層(1枚の金属箔)で形成されていてもよい。つまり、集電箔110は、1枚のステンレス箔等で形成され、1枚のステンレス箔等で正極金属層及び負極金属層の機能を有することにしてもよい。
【0090】
上記実施の形態において、樹脂層303がバインダー(結着剤)を含んでおらず、2つの金属層301及び302が樹脂層303によって接合(接着)されていなくてもよい。
【0091】
上記実施の形態では、樹脂層303は、加熱されることで抵抗が増加する特性を有することとしたが、当該特性を有していなくてもよい。この場合でも、樹脂層303は、絶縁部材(樹脂)を有しており、絶縁部材(樹脂)を有さない場合よりも抵抗が増加しているため、エンド部材300によって蓄電装置10と外部機器との間で大電流が流れるのを抑制できる。
【0092】
上記実施の形態において、樹脂層303は、上述した厚みには限定されない。他の部材についても、上述した厚みには限定されない。
【0093】
上記実施の形態において、エンド部材310がエンド部材300と同様の構成を有していてもよい。
【0094】
蓄電装置10は、
図7に示すような蓄電パック1に用いられてもよい。
図7は、蓄電パック1の構成を示す断面図である。
図7において、蓄電装置10の内部構成の図示は省略している。
図7に示すように、蓄電パック1は、複数の蓄電装置10が積層された蓄電装置積層体2と、導電部材3と、を備えている。この場合、蓄電パック1に含まれる少なくとも1つの蓄電装置10に対して、本発明の技術が適用されればよい。蓄電装置積層体2における隣り合う2つの蓄電装置10は、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。蓄電装置10同士の間に接続部材20が配置されてもよい。導電部材3は、ステンレス等の金属からなり、積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。接合には接着剤を用いてもよい。蓄電装置積層体2における複数の蓄電装置10は直列に接続されており、導電部材3を介して充放電が実施される。蓄電パック1は、積層方向(Z軸方向)に拘束されてもよく、この場合、ネジ、樹脂バンドまたは金属バンド等の拘束部材を用いることができる。蓄電装置積層体2及び導電部材3は、金属ケースまたは樹脂ケースに収容されていてもよい。
【0095】
蓄電パック1の他の例として、個々の蓄電装置10が外装体4に収容された構成を
図8に示す。
図8は、蓄電パック1aの構成を示す断面図である。
図8に示すように、本構成の蓄電装置10は、外装体4から露出した接続部分5を有している。外装体4としてラミネートフィルム等を用いることができる。隣り合う蓄電装置10の接続部分5同士が、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10の接続部分5と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。その他の構成は、上述の蓄電パック1と同様のため説明を省略する。
【0096】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、バイポーラ電池等の蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0098】
1、1a 蓄電パック
2 蓄電装置積層体
3 導電部材
4 外装体
5 接続部分
10、10a、10b 蓄電装置
20 接続部材
100 電極ユニット
101、102 エンドユニット
110 集電箔
111 正極金属層(金属層)
112 負極金属層(金属層)
120 正極活物質層
130 負極活物質層
140 セパレータ
200 シール部材
210、220、230 シール部
300、300a、300b、310 エンド部材
301、302 金属層
303 樹脂層