(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154299
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】緩衝装置、懸架装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20241023BHJP
F16F 9/348 20060101ALI20241023BHJP
F16F 9/50 20060101ALI20241023BHJP
F16F 9/512 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/348
F16F9/50
F16F9/512
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068055
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】尾野 弘明
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC01
3J069EE06
3J069EE28
3J069EE64
(57)【要約】
【課題】低廉化を図ることができる緩衝装置等を提供する。
【解決手段】緩衝装置は、ピストンにより区画された第1室と第2室とを連通する第1連通路上に配置されるとともに、前記第1室の圧力である第1圧力よりも前記第2室の圧力である第2圧力が高い場合に前記第1連通路を開き、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第1連通路を閉じる調整バルブ41と、前記第1室と前記第2室とを連通する第2連通路上に形成されているとともに、調整バルブ41に対する背圧を生じさせる圧力調整室500と、圧力調整室500に設けられて、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記第2連通路を閉じるとともに圧力調整室500の容積を大きくするように弾性変形し、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第2連通路を開くフロートバルブ52と、を備え、フロートバルブ52は、金属製の本体部56と、本体部56とともに前記第2連通路を閉じるゴム部57とを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンにより区画された第1室と第2室とを連通する第1連通路上に配置されるとともに、前記第1室の圧力である第1圧力よりも前記第2室の圧力である第2圧力が高い場合に前記第1連通路を開き、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第1連通路を閉じる第1バルブ部と、
前記第1室と前記第2室とを連通する第2連通路上に形成されているとともに、前記第1バルブ部に対する背圧を生じさせる背圧室と、
前記背圧室に設けられて、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記第2連通路を閉じるとともに前記背圧室の容積を大きくするように弾性変形し、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第2連通路を開く第2バルブ部と、
を備え、
前記第2バルブ部は、金属製の本体部と、前記本体部とともに前記第2連通路を閉じるゴム部とを有する、
緩衝装置。
【請求項2】
前記ゴム部は、前記本体部に焼き付けられている、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記ゴム部は、前記ピストンを保持するロッドに締め付けられるとともに前記背圧室を形成するピストンナットに焼き付けられている、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記ピストンを保持するロッドに締め付けられるナット部と、前記ナット部から前記ロッドの軸方向に筒状に突出した筒状部とを有するピストンナットと、
前記筒状部の開口部を塞ぎ、前記ピストンナットとともに前記背圧室を形成する塞ぎ部材と、
をさらに備え、
前記塞ぎ部材は、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記第2バルブ部の台座となる台座部と、前記第2バルブ部の前記弾性変形を規制する規制部とを有する、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項5】
前記塞ぎ部材には、前記背圧室と前記第1室とを連通するように前記軸方向の貫通孔が形成され、
前記第2バルブ部の前記本体部は、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記貫通孔を塞いで前記背圧室から前記第1室への液体の移動を抑制し、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記台座部から離れて前記第1室から前記背圧室への液体の移動を許容する、
請求項4に記載の緩衝装置。
【請求項6】
前記ゴム部は、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記本体部と前記ピストンナットとの間を密封し、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第1室から流れてきた液体が前記本体部と前記ピストンナットとの間から前記背圧室へ移動するのを許容する、
請求項5に記載の緩衝装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の緩衝装置と、
前記緩衝装置の周囲に配置されたコイルスプリングと、
を備える懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝装置および懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の圧力緩衝装置は、液体を収容するシリンダに挿入され前記シリンダに対して軸方向に移動可能に設けられるロッドと、前記ロッドに接続するとともに、前記シリンダ内の空間を、液体を収容する第1液室と第2液室とに区画するピストンとを備える。また、特許文献1に記載の圧力緩衝装置は、前記第1液室と前記第2液室との間における液体の流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部の前記流路を開閉して減衰力を発生させるバルブ部と、液体が流入する流入部を有し、前記流入部の液体の圧力によって前記バルブ部にて発生させる減衰力を変更する減衰力変更部と、を備える。そして、前記減衰力変更部は、変形または変位することにより前記流入部の液体の圧力を変化させる圧力変化部と、前記圧力変化部を支持する支持部と、加締められた加締め部によって前記支持部を保持し、前記支持部と共に前記流入部を形成する流入形成部と、を有する。また、前記減衰力変更部は、前記流入部に対する液体の流路上に設けられて液体に混入する異物を捕集するフィルタを有するとともに、前記加締め部により前記支持部と共に前記流入形成部に保持されるフィルタ部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置においては、液体に混入する異物を捕集するフィルタを有するため、低廉化という点において改善の余地があった。
本発明は、低廉化を図ることができる緩衝装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、ピストンにより区画された第1室と第2室とを連通する第1連通路上に配置されるとともに、前記第1室の圧力である第1圧力よりも前記第2室の圧力である第2圧力が高い場合に前記第1連通路を開き、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第1連通路を閉じる第1バルブ部と、前記第1室と前記第2室とを連通する第2連通路上に形成されているとともに、前記第1バルブ部に対する背圧を生じさせる背圧室と、前記背圧室に設けられて、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記第2連通路を閉じるとともに前記背圧室の容積を大きくするように弾性変形し、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第2連通路を開く第2バルブ部と、を備え、前記第2バルブ部は、金属製の本体部と、前記本体部とともに前記第2連通路を閉じるゴム部とを有する、緩衝装置である。
ここで、前記ゴム部は、前記本体部に焼き付けられていても良い。
また、前記ゴム部は、前記ピストンを保持するロッドに締め付けられるとともに前記背圧室を形成するピストンナットに焼き付けられていても良い。
また、前記ピストンを保持するロッドに締め付けられるナット部と、前記ナット部から前記ロッドの軸方向に筒状に突出した筒状部とを有するピストンナットと、前記筒状部の開口部を塞ぎ、前記ピストンナットとともに前記背圧室を形成する塞ぎ部材と、をさらに備え、前記塞ぎ部材は、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記第2バルブ部の台座となる台座部と、前記第2バルブ部の前記弾性変形を規制する規制部とを有しても良い。
また、前記塞ぎ部材には、前記背圧室と前記第1室とを連通するように前記軸方向の貫通孔が形成され、前記第2バルブ部の前記本体部は、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記貫通孔を塞いで前記背圧室から前記第1室への液体の移動を抑制し、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記台座部から離れて前記第1室から前記背圧室への液体の移動を許容しても良い。
また、前記ゴム部は、前記第1圧力よりも前記第2圧力が高い場合に前記本体部と前記ピストンナットとの間を密封し、前記第2圧力よりも前記第1圧力が高い場合に前記第1室から流れてきた液体が前記本体部と前記ピストンナットとの間から前記背圧室へ移動するのを許容しても良い。
他の観点から捉えると、本発明は、上述した緩衝装置と、前記緩衝装置の周囲に配置されたコイルスプリングと、を備える懸架装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低廉化を図ることができる緩衝装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る懸架装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るピストン部および減衰力変更部の断面の一例を示す図である。
【
図5】エンドキャップ、フロートバルブ、圧力調整室スプリングの一例を示す斜視図である。
【
図6】減衰力変更部の部分断面の一例を示す図である。
【
図7】圧縮行程時および伸長行程時におけるピストン部とボトム部の動作説明図である。
【
図8】伸長行程時における減衰力変更部の動作の一例を示す図である。
【
図9】フロートバルブの動作の一例を説明する図である。
【
図10】第2実施形態に係る緩衝装置の断面の一例を示す図である。
【
図11】第3実施形態に係る緩衝装置の断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る懸架装置1の概略構成の一例を示す図である。
懸架装置1は、乗用自動車等の四輪車に用いられるサスペンションであり、
図1に示すように、油圧式の緩衝装置2と、緩衝装置2の外側に配置されたコイルスプリング3とを備える。また、懸架装置1は、コイルスプリング3における、後述するロッド20の軸方向の第1側(
図1では下側)の端部を支持する下スプリングシート4と、コイルスプリング3における、ロッド20の軸方向の第2側(
図1では上側)の端部を支持する上スプリングシート5とを備える。
【0009】
また、懸架装置1は、懸架装置1を車両に取り付けるための車体側ブラケット6と、懸架装置1を車輪に取り付けるための車輪側ブラケット7と、シリンダ部10およびロッド20の少なくとも一部を覆うダストカバー8とを備える。
以下では、ロッド20の軸方向を、単に「軸方向」と称する場合がある。また、軸方向の第1側(
図1では下側)、軸方向の第2側(
図1では上側)を、それぞれ、単に「第1側」、「第2側」と称する場合がある。また、軸方向に交差する方向(例えば、直交方向)を、「半径方向」と称する。半径方向において、シリンダ11の中心線側を単に「内側」と称し、中心線から離れる側を単に「外側」と称する場合がある。
【0010】
以下、緩衝装置2について詳述する。
緩衝装置2は、オイルを収容するシリンダ部10と、第2側の端部がシリンダ部10から突出して設けられるとともに第1側の端部がシリンダ部10内に挿入されるロッド20とを備える。また、緩衝装置2は、ロッド20の第1側の端部に設けられるピストン部30と、ピストン部30にて発生する減衰力を調整する減衰力変更部40と、シリンダ部10の第1側の端部に設けられるボトム部60とを備える。
【0011】
[シリンダ部10]
シリンダ部10は、薄肉円筒状のシリンダ11と、シリンダ11の外側に設けられる薄肉円筒状の外筒12と、外筒12の第1側の端部を塞ぐ底蓋13とを備える。シリンダ11および外筒12は、円筒の中心線方向が軸方向と一致するように配置されている。そして、シリンダ部10は、シリンダ11の外周面と外筒12の内周面との間に、リザーバ室Rを形成している。リザーバ室Rには、第1側にオイルが、第2側にガスが充填されている。
【0012】
また、シリンダ部10は、ロッド20を移動可能に支持するロッドガイド14と、外筒12における第2側の端部に装着されたバンプストッパキャップ15と、シリンダ部10内のオイルの漏れやシリンダ部10内への異物の混入を防ぐシール部材16とを備える。
【0013】
[ロッド20]
ロッド20は、中実または中空の棒状の部材である。そして、ロッド20は、第1側に設けられる第1側取付部21と、第2側に設けられる第2側取付部22と、第1側取付部21と第2側取付部22との間の軸部23とを有する。第1側取付部21および第2側取付部22は、それぞれ、外面に螺旋状の溝が切られて、ボルトとして機能する。第1側取付部21はピストン部30を保持する。第2側取付部22は車体側ブラケット6を保持し、車体側ブラケット6は例えば車体に連結される。
【0014】
ロッド20は、
図2に示すように、ピストン部30を迂回して、第2室Y2と第1室Y1との間でオイルを流通させるバイパス路25を備えている。バイパス路25は、軸部23における第1側の端部に形成された半径方向に延びる溝と、第1側取付部21における螺旋状の溝よりも第2側に形成された軸方向に延びる溝とによって構成される。
【0015】
[ボトム部60]
ボトム部60は、
図1に示すように、軸方向に貫通する複数の油路を有するバルブボディ61と、バルブボディ61の第1側に設けられるバルブ62と、バルブボディ61の第2側に設けられるバルブ63とを備える。
ボトム部60のバルブボディ61は、第1室Y1とリザーバ室Rとを区画する。
【0016】
[ピストン部30]
図2は、第1実施形態に係るピストン部30および減衰力変更部40の断面の一例を示す図である。
図3は、絞り部材42の概略構成の一例を示す図である。
図4は、支持バネ46の概略構成の一例を示す図である。
図5は、エンドキャップ51、フロートバルブ52、圧力調整室スプリング53の一例を示す斜視図である。
図6は、減衰力変更部40の部分断面の一例を示す図である。
【0017】
図2に示すように、ピストン部30は、ピストン31と、ピストン31の第1側に設けられる伸側減衰バルブ部321と、ピストン31の第2側に設けられる圧側減衰バルブ部322と、を備えている。また、ピストン部30は、第1バルブストッパ351および第2バルブストッパ353を備えている。
【0018】
ピストン31は、略円柱状に形成され後述する複数の油路が形成される円柱状部311と、円柱状部311の第1側に設けられた円筒状の円筒状部312とを有する。
また、ピストン31は、半径方向外側に設けられた摩擦抵抗を低減する摺動部を介してシリンダ11に接触する。そして、ピストン部30は、シリンダ11内のオイルが封入された空間を、第1側の第1室Y1と、第2側の第2室Y2とに区画する。
【0019】
さらに、ピストン31は、ロッド20を通す取付孔33Rと、取付孔33Rよりも半径方向外側に形成された伸側油路341と圧側油路342とを有する。伸側油路341および圧側油路342は、それぞれ、周方向において略等間隔に複数設けられている。そして、伸側油路341および圧側油路342は、それぞれ、第1室Y1と第2室Y2との間におけるオイルの流通を可能にする。
【0020】
伸側減衰バルブ部321は、弾性を有する複数の略円盤状の板材によって構成することができる。そして、伸側減衰バルブ部321は、圧側油路342の第1側を常に開放するとともに、伸側油路341の第1側を開閉する。
圧側減衰バルブ部322は、弾性を有する複数の略円盤状の板材によって構成することができる。そして、圧側減衰バルブ部322は、伸側油路341の第2側を常に開放するとともに、圧側油路342の第2側を開閉する。
【0021】
第1バルブストッパ351は、ロッド20が貫通する取付孔351Rを有する。
第2バルブストッパ353は、所定の外径を有する第1外径部353aと、第1外径部353aよりも外径が大きい第2外径部353bとを有する。そして、第2バルブストッパ353は、第1外径部353aがピストン31の円筒状部312の内側に入り込むように設けられる。そして、第2バルブストッパ353は、伸側減衰バルブ部321が変形した際に、伸側減衰バルブ部321の一定量以上の変形を抑える。また、第2バルブストッパ353は、後述する調整バルブ41のバルブ座として機能する。
【0022】
また、第2バルブストッパ353は、軸方向に伸びてロッド20の第1側取付部21が貫通可能な内径を有する取付孔353Rを有する。さらに、第2バルブストッパ353は、後述の調整バルブ41に向けて開放された凹部353cが設けられる。
そして、第2バルブストッパ353は、取付孔353Rに第1側取付部21が嵌め込まれ、ピストン31との間に伸側減衰バルブ部321を挟み込む。また、第2バルブストッパ353の凹部353cは、バイパス路25に連通する空間である。
【0023】
[減衰力変更部40]
図2に示すように、減衰力変更部40は、バイパス路25におけるオイルの流れを制御する調整バルブ41と、バイパス路25のオイルの流れを絞る絞り部材42と、ロッド20に接続するピストンナット43と、を有する。さらに、減衰力変更部40は、ピストンナット43に対して移動可能に設けられるスプール44と、ピストンナット43およびスプール44の間を封止するOリング45と、スプール44にバネ力を付与する支持バネ46とを有する。
さらに、減衰力変更部40は、ピストンナット43とともに圧力調整室500を形成するエンドキャップ51と、圧力調整室500のオイルの圧力を変化させるフロートバルブ52と、圧力調整室スプリング53とを有する。
【0024】
調整バルブ41は、第2バルブストッパ353の凹部353cを覆う。また、調整バルブ41は、変形して凹部353cを覆わない状態になると、凹部353cを開放し、バイパス路25および凹部353cを通して第2室Y2のオイルを第1室Y1側へと流す。
【0025】
図3に示すように、絞り部材42は、弾性を有し、円環状に形成される。また、絞り部材42は、半径方向内側にロッド20の第1側取付部21が貫通する開口部42Hと、開口部42Hから外側に向けて切り込まれたオリフィス42Sとを有する。そして、絞り部材42は、調整バルブ41とともに、第2バルブストッパ353とピストンナット43との間に設けられる。なお、
図6に示すように、オリフィス42Sは、圧力室47(後述)まで延びて設けられる。また、オリフィス42Sは、バイパス路25の第1側の端部に連絡している。
なお、本実施形態のオリフィス42Sは、周方向において2本設けているが、本数、長さ、スリット幅などは適宜設定することができる。
【0026】
(ピストンナット43)
ピストンナット43は、円柱状部431と、円柱状部431の第2側に設けられる環状突出部432と、第1側に設けられる円筒状部433とを有する。
円柱状部431は、軸方向に伸びロッド20の第1側取付部21が嵌め込まれる貫通孔であるボルト孔43Rと、ボルト孔43Rの外側において軸方向に環状突出部432側から円筒状部433まで貫通して形成される連絡通路43Hを有している。なお、本実施形態では、連絡通路43Hは、ピストンナット43の周方向において複数設けられている。
【0027】
また、
図6に示すように、円筒状部433は、内側にナットテーパ部433Tを有する。ナットテーパ部433Tは、軸方向に対して、第1側を向くように傾斜している。すなわち、ナットテーパ部433Tは、第1側から第2側に向かうに従って、内径が次第に小さくなるように形成されている。また、ナットテーパ部433Tは、後述するキャップテーパ部513の傾斜角度に対応している。そして、ナットテーパ部433Tは、キャップテーパ部513に対向する。
【0028】
ピストンナット43は、ボルト孔43Rが第1側取付部21に固定されることで、ロッド20に支持される。また、ピストンナット43は、円筒状部433の第1側の端部に加締め部43Kを有する。加締め部43Kは、ストレート状に形成されていた円筒状部433の端部をロール加締め加工により塑性変形させることで形成される。そして、本実施形態のピストンナット43は、減衰力変更部40およびピストン部30を構成する各種部材をロッド20に保持させる。
また、連絡通路43Hは、圧力室47(後述)と圧力調整室500とを連通し、圧力室47と圧力調整室500との間におけるオイルの流路を形成する。
【0029】
スプール44は、略円筒形状の概形をしている。スプール44は、第2側が半径方向内側に向けて突出し、第1側にはピストンナット43の円柱状部431が挿入される。
そして、スプール44は、第2側にて調整バルブ41に接触可能に形成されるとともに、第2側にて支持バネ46により付勢される。そして、スプール44は、調整バルブ41に対して、調整バルブ41を第2バルブストッパ353の第1側の端部に押し付ける力を付与する。
また、スプール44は、ピストンナット43と調整バルブ41とによって、圧力室47を形成する。
【0030】
Oリング45は、ピストンナット43に取り付けられ、スプール44を軸方向において移動可能に支持する。
図4に示すように、支持バネ46は、リング状に形成されるとともに、外周部に外側へ突出する複数の突出部46aを有する。また、支持バネ46は、内周部がピストンナット43の環状突出部432に支持される。そして、
図6に示すように、支持バネ46は、スプール44を第2側に向けて付勢する。
【0031】
(エンドキャップ51)
エンドキャップ51は、外径が、ピストンナット43の円筒状部433の内径よりも若干小さく形成されている。また、エンドキャップ51は、ピストンナット43の円筒状部433の内側に挿入される。そして、エンドキャップ51は、ピストンナット43の円筒状部433の内側に挿入された状態で、円筒状部433との間に円柱状の空間である圧力調整室500を形成する。この圧力調整室500には、フロートバルブ52および圧力調整室スプリング53が収容されている。
【0032】
エンドキャップ51は、第2側に設けられフロートバルブ52と対向するバルブ対向部511と、第2側に設けられるキャップテーパ部513と、を有する。
【0033】
バルブ対向部511は、第2側に形成される環状突出部51Cと、第2側に形成される変形規制部51Gと、軸方向に延びて形成される貫通孔51Hとを有する。そして、
図6に示すように、バルブ対向部511は、フロートバルブ52を支持する。
環状突出部51Cは、軸方向の第2側に向けて円環状に突出する。そして、環状突出部51Cは、圧力調整室スプリング53との間に、フロートバルブ52の本体部56を挟み込む。
【0034】
変形規制部51Gは、環状突出部51Cよりも内側に設けられ、環状突出部51Cに対して第1側に向けて窪む。そして、変形規制部51Gは、フロートバルブ52が撓み変形した際に、フロートバルブ52の一定の変形量の変形を許容するとともに、一定の変形量以上の変形を規制する。
【0035】
貫通孔51Hは、バルブ対向部511において貫通して設けられる。貫通孔51Hは、複数(例えば、2つ)設けられる。貫通孔51Hは、第2側が変形規制部51Gにて開口し、第1側が第1室Y1にて開口する。そして、貫通孔51Hは、圧力調整室500と第1室Y1との間におけるオイルの流通を可能にする。
【0036】
キャップテーパ部513は、環状突出部51Cの半径方向外側に形成される。キャップテーパ部513は、軸方向に対して、第2側を向くように傾斜している。すなわち、キャップテーパ部513は、第1側から第2側に向かうに従って、外径が次第に小さくなるように形成されている。また、キャップテーパ部513は、ナットテーパ部433Tの傾斜角度に対応している。そして、キャップテーパ部513は、ナットテーパ部433Tに対向する。
【0037】
(フロートバルブ52)
フロートバルブ52は、円形状の金属製の本体部56と、本体部56の外周部に設けられているとともにゴムにて成形されたゴム部57とを有する。フロートバルブ52は、圧力調整室スプリング53により、エンドキャップ51に向けて付勢される。ただし、フロートバルブ52は、圧力調整室スプリング53の付勢力に抗して移動することが可能であり、軸方向および軸方向に直交する方向において変位可能である。
【0038】
本体部56の径は、エンドキャップ51の環状突出部51Cの径よりも大きく、ピストンナット43の円筒状部433の内周面の径よりも小さい。本体部56は、薄い板状の部材であり、弾性変形容易である。それゆえ、本体部56は、エンドキャップ51の環状突出部51Cに接触しながら、圧力調整室500の圧力を受けることによって、エンドキャップ51の変形規制部51Gに接触するまで変形可能である。
【0039】
ゴム部57は、本体部56の外周部に焼き付けられた円環状の基端部571と、基端部571における外周部から第2側に円筒状に突出した突出部572とを有する。突出部572の外周面の径はピストンナット43の円筒状部433の内周面の径以下である。
ゴム部57の肉厚は、本体部56の肉厚以下であることを例示することができる。ゴム部57は、圧力調整室500の圧力が第1室Y1の圧力よりも高い場合には突出部572がピストンナット43の円筒状部433の内周面に接触して圧力調整室500を密封する。他方、第1室Y1の圧力が圧力調整室500の圧力よりも高い場合には突出部572が内側に折れ曲がり、第1室Y1から圧力調整室500へオイルが流れるのを許容する。
【0040】
以上のように構成されたフロートバルブ52は、伸長行程時や圧縮行程時において、変形または変位することで、圧力調整室500の容積を変化させる。また、エンドキャップ51の貫通孔51Hを塞いだり、開放したりすることによって圧力調整室500と第1室Y1側とのオイルの流れを遮断したり、許容したりする。
【0041】
圧力調整室スプリング53は、
図5に示すように、板状円環部53aと、放射状に設けられる複数の上向きバネ脚53bと下向きバネ脚53cとを有する。
そして、
図6に示すように、圧力調整室スプリング53は、上向きバネ脚53bがピストンナット43の円柱状部431における第1側の端面に対向して取り付けられ、下向きバネ脚53cによってフロートバルブ52を環状突出部51Cに向けて付勢する。
【0042】
図6に示すように、エンドキャップ51、フロートバルブ52および圧力調整室スプリング53は、ピストンナット43の第1側に形成される加締め部43Kによって、ピストンナット43に保持される。
【0043】
加締め部43Kは、エンドキャップ51を第2側に向けて押し付ける。この加締め部43Kにより生じた軸力によって、エンドキャップ51のキャップテーパ部513を、ピストンナット43のナットテーパ部433Tに押し付ける。これによって、エンドキャップ51は、ピストンナット43に対してガタつきなく固定され、エンドキャップ51とピストンナット43との接触箇所におけるシール性が高められる。
【0044】
そして、ピストン部30および減衰力変更部40を第1側から見ると、加締め部43Kは、周方向の全域に亘って形成され、エンドキャップ51をピストンナット43側に押さえ付ける。
【0045】
次に、緩衝装置2の動作を説明する。
図7は、圧縮行程時および伸長行程時におけるピストン部30とボトム部60の動作説明図である。
【0046】
図7に示すように、ロッド20が、白抜き矢印のようにシリンダ11に対して第1側へ移動する圧縮行程においては、第1室Y1のオイルの圧力は上昇する。これにより、圧側油路342を塞ぐ圧側減衰バルブ部322が開き、オイルは矢印Aに示すように圧側油路342を通って第2室Y2に流入する。この第1室Y1から第2室Y2へのオイルの流れは、圧側減衰バルブ部322で絞られ、緩衝装置2の圧縮行程時における減衰力が得られる。
また、ピストン31の軸方向の第1側への移動によって圧力が高まった第1室Y1のオイルは、ボトム部60のバルブ62を開く。そして、第1室Y1内のオイルは、矢印Bに示すように、リザーバ室Rに流出する。
【0047】
一方、
図7に示すように、ロッド20が、白抜き矢印のようにシリンダ11に対して第2側へ移動する伸長行程においては、その体積分のオイルが第1室Y1に不足することにより負圧となる。これにより、第2室Y2内のオイルがピストン部30の伸側油路341を通り、この伸側油路341を閉塞する伸側減衰バルブ部321を開き、矢印Cのように、第1室Y1に流入する。この第2室Y2から第1室Y1へのオイルの流れは、ピストン部30の伸側減衰バルブ部321で絞られ、緩衝装置2の伸長行程時における減衰力が得られる。
また、ピストン31が第2側に移動すると、リザーバ室R内のオイルは、矢印Dに示すように、バルブ63を開いて、第1室Y1内に流入する。
【0048】
図8は、伸長行程時における減衰力変更部40の動作の一例を示す図である。
ロッド20が小振幅で移動する場合、伸長行程において、第2室Y2からバイパス路25に流入したオイルは、絞り部材42のオリフィス42S、ピストンナット43の連絡通路43Hを通って、圧力調整室500に流れ込む。このとき、圧力調整室500では、フロートバルブ52の本体部56が変形規制部51Gに向けて撓むことでオイルを収容する容積が増加し、圧力調整室500内のオイルの圧力が上昇し難くなっている。そのため、圧力調整室500側に設けられるスプール44による調整バルブ41を第2バルブストッパ353に向けて押す力も小さくなる。そして、調整バルブ41は、第2バルブストッパ353の凹部353cを開く。そして、バイパス路25を流れるオイルは、第2バルブストッパ353の凹部353cから第1室Y1へと流出する。このように、ロッド20が小振幅で移動する場合、ピストン部30を迂回するオイルの流れが生じる。
従って、ロッド20が小振幅で移動する場合に、伸長行程において、ピストン部30の伸側油路341のオイルの流れ(
図7(B)参照)に加えて、バイパス路25をオイルが流れることとなり、ピストン部30にて発生する減衰力が小さくなる。
【0049】
他方、ロッド20が大振幅で移動する場合、伸長行程において、第2室Y2からバイパス路25に流入したオイルは、絞り部材42のオリフィス42S、ピストンナット43の連絡通路43Hを通って、圧力調整室500に流れ込む。そして、大振幅で移動する場合には、圧力調整室500にてフロートバルブ52の本体部56が変形規制部51Gまですぐに撓むとともにゴム部57の円筒状部433の内周面への接触圧力が高まることで、圧力調整室500内のオイルが高圧化する。そのため、圧力調整室500側に設けられるスプール44による調整バルブ41を第2バルブストッパ353に向けて押す力が大きくなる。そして、調整バルブ41は、第2バルブストッパ353の凹部353cを塞ぐ。
従って、ロッド20が大振幅で移動する場合に、伸長行程において、バイパス路25をオイルが流れず、ピストン部30の伸側油路341のオイルの流れ(
図7(B)参照)だけになるため、ピストン部30にて発生する減衰力が大きくなる。
【0050】
一方、圧縮行程時においては、圧力調整室500の圧力に対して第1室Y1の圧力が高くなる。そうすると、エンドキャップ51に設けられる貫通孔51Hを通って、圧力調整室500内に第1室Y1からオイルが流入する。
【0051】
以上説明したように、緩衝装置2は、例えば車両が悪路を走行しているような場合であって、ロッド20が小さく動くときには、減衰力が小さくなることで、車両の乗り心地が高められる。一方で、緩衝装置2は、例えば車両がカーブを走行しているような場合であって、ロッド20が大きく動くときには、減衰力が高くなることで、車両の操安性が高められる。
【0052】
次に、フロートバルブ52の作用について詳述する。
図9は、フロートバルブ52の動作の一例を説明する図である。
上述したように、伸長行程時においては、圧力調整室500の圧力が第1室Y1の圧力よりも高くなるので、フロートバルブ52のゴム部57の突出部572が、ピストンナット43の円筒状部433の内周面に張り付き、圧力調整室500を密封する。そして、仮に、
図9に示すように、フロートバルブ52のゴム部57の突出部572とピストンナット43の円筒状部433との間に異物が存在していたとしても、ゴム部57が異物を包み込むように変形するので、圧力調整室500の密封性が保たれる。また、仮に、フロートバルブ52の本体部56とエンドキャップ51との間に異物が存在していたとしても、ゴム部57がピストンナット43の円筒状部433の内周面に張り付くので、圧力調整室500の密封性が保たれる。
【0053】
他方、圧縮行程時においては、圧力調整室500の圧力に対して第1室Y1の圧力が高くなり、オイルが第1室Y1から圧力調整室500内に流入する際に、フロートバルブ52の本体部56は、圧力調整室スプリング53に抗して環状突出部51Cから離れる。また、フロートバルブ52のゴム部57は、突出部572の先端部が内側に折れ曲がり、本体部56の外側から圧力調整室500へオイルが流れるのを許容する。
【0054】
それゆえ、仮に、フロートバルブ52のゴム部57の突出部572とピストンナット43の円筒状部433との間に異物が存在していたとしても、第1室Y1から圧力調整室500へ流れるオイルにより異物も圧力調整室500へ流される。また、仮に、フロートバルブ52の本体部56とエンドキャップ51との間に異物が存在していたとしても、第1室Y1から圧力調整室500へ流れるオイルにより異物も圧力調整室500の方へ流される。その結果、フロートバルブ52のゴム部57の突出部572とピストンナット43の円筒状部433との間や、フロートバルブ52の本体部56とエンドキャップ51との間に異物が存在し難くなるので、確度高く圧力調整室500の密封性が保たれる。
【0055】
以上、説明したように、緩衝装置2は、ピストン31により区画された第1室Y1と第2室Y2とを連通する第1連通路上に配置される調整バルブ41(第1バルブ部の一例)と、第1室Y1と第2室Y2とを連通する第2連通路上に形成されているとともに、調整バルブ41に対する背圧を生じさせる圧力調整室500(背圧室の一例)とを備える。第1連通路は、バイパス路25、第2バルブストッパ353の凹部353c、調整バルブ41と第2バルブストッパ353との隙間等により構成される流路である。第2連通路は、バイパス路25、絞り部材42のオリフィス42S、支持バネ46の内側、ピストンナット43の連絡通路43H、圧力調整室500、エンドキャップ51の貫通孔51H等により構成される流路である。そして、調整バルブ41は、第1室Y1の圧力である第1圧力よりも第2室Y2の圧力である第2圧力が高い場合に第1連通路を開き、第2圧力よりも第1圧力が高い場合に第1連通路を閉じる。また、緩衝装置2は、圧力調整室500に設けられて、第1圧力よりも第2圧力が高い場合に第2連通路を閉じるとともに圧力調整室500の容積を大きくするように弾性変形し、第2圧力よりも第1圧力が高い場合に第2連通路を開くフロートバルブ52(第2バルブ部の一例)を備える。そして、フロートバルブ52は、金属製の本体部56と、本体部56とともに第2連通路を閉じるゴム部57とを有する。
【0056】
以上のように構成された緩衝装置2によれば、第1圧力よりも第2圧力が高い場合にフロートバルブ52のゴム部57が圧力調整室500を密封するので、仮に、フロートバルブ52と、ピストンナット43又はエンドキャップ51との間に異物が存在していたとしても圧力調整室500の密封性が保たれる。また、第2圧力よりも第1圧力が高い場合に異物を流すので、フロートバルブ52と、ピストンナット43又はエンドキャップ51との間に異物が存在し難くなる。それゆえ、緩衝装置2においては、第1室Y1からエンドキャップ51の貫通孔51Hを介して圧力調整室500の方へ流入するオイルに異物が混入していたとしても減衰力変更部40における減衰力調整機能は損なわれない。その結果、オイルに混入する異物を捕集するフィルタを設ける必要がないので、低廉化を図ることができる。
【0057】
本実施形態に係るフロートバルブ52においては、ゴム部57は、本体部56に焼き付けられている。それゆえ、フロートバルブ52を容易に成形することができる。
【0058】
また、緩衝装置2は、ピストン31を保持するロッド20に締め付けられる円柱状部431(ナット部の一例)と、円柱状部431からロッド20の軸方向に筒状に突出した円筒状部433(筒状部の一例)とを有するピストンナット43を備える。また、緩衝装置2は、円筒状部433の開口部を塞ぎ、ピストンナット43とともに圧力調整室500を形成するエンドキャップ51(塞ぎ部材の一例)をさらに備える。そして、エンドキャップ51は、第1圧力よりも第2圧力が高い場合にフロートバルブ52の台座となる環状突出部51C(台座部の一例)と、フロートバルブ52の弾性変形を規制する変形規制部51G(規制部の一例)とを有する。これにより、圧力調整室500の容積を確度高く増加させることができる。
【0059】
また、エンドキャップ51には、圧力調整室500と第1室Y1とを連通するように軸方向の貫通孔51Hが形成されている。そして、フロートバルブ52の本体部56は、第1圧力よりも第2圧力が高い場合に貫通孔51Hを塞いで圧力調整室500から第1室Y1へのオイル(液体の一例)の移動を抑制し、第2圧力よりも第1圧力が高い場合に環状突出部51Cから離れて第1室Y1から圧力調整室500へのオイルの移動を許容する。これにより、フロートバルブ52は、第2連通路の開閉を確度高く行うことができる。
【0060】
そして、ゴム部57は、第1圧力よりも第2圧力が高い場合に本体部56とピストンナット43との間を密封し、第2圧力よりも第1圧力が高い場合に第1室Y1から流れてきたオイルが本体部56とピストンナット43との間から圧力調整室500へ移動するのを許容する。これにより、圧力調整室500の密封性が確度高く保たれる。
【0061】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る緩衝装置202の断面の一例を示す図である。
第2実施形態に係る緩衝装置202は、第1実施形態に係る緩衝装置2に対して、フロートバルブ52に相当するフロートバルブ252が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第2実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図10に示すように、フロートバルブ252は、本体部56と、本体部56の外周部に設けられたゴム部257とを有する。
ゴム部257は、基端部571と、基端部571における内周部から軸方向に傾斜する方向に外側に全周に亘って突出した突出部574とを有する。突出部574の先端部の外部の径はピストンナット43の円筒状部433の内周面の径以下である。
【0063】
ゴム部257の肉厚は、本体部56の肉厚以下であることを例示することができる。ゴム部257は、圧力調整室500の圧力が第1室Y1の圧力よりも高い伸長行程時には突出部574の先端部がピストンナット43の円筒状部433の内周面に接触して圧力調整室500を密封する。また、仮に、ゴム部257の突出部574とピストンナット43の円筒状部433との間に異物が存在していたとしても、ゴム部257が異物を包み込むように変形するので、圧力調整室500の密封性が保たれる。
【0064】
他方、第1室Y1の圧力が圧力調整室500の圧力よりも高い圧縮行程時には突出部574の先端部が内側に折れ曲がり、第1室Y1から圧力調整室500へオイルが流れるのを許容する。それゆえ、仮に、ゴム部257の突出部574とピストンナット43の円筒状部433との間に異物が存在していたとしても、第1室Y1から圧力調整室500へ流れるオイルにより異物も圧力調整室500へ流される。また、仮に、フロートバルブ252の本体部56とエンドキャップ51との間に異物が存在していたとしても、第1室Y1から圧力調整室500へ流れるオイルにより異物も圧力調整室500の方へ流される。その結果、フロートバルブ252のゴム部257の突出部574とピストンナット43の円筒状部433との間や、フロートバルブ252の本体部56とエンドキャップ51との間に異物が存在し難くなるので、確度高く圧力調整室500の密封性が保たれる。
【0065】
以上のように構成されたフロートバルブ252を有する緩衝装置202においては、第1室Y1からエンドキャップ51の貫通孔51Hを介して圧力調整室500の方へ流入するオイルに異物が混入していたとしてもフロートバルブ252による減衰力調整機能は損なわれない。その結果、オイルに混入する異物を捕集するフィルタを設ける必要がないので、低廉化を図ることができる。
【0066】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態に係る緩衝装置302の断面の一例を示す図である。
第3実施形態に係る緩衝装置302は、第1実施形態に係る緩衝装置2に対して、フロートバルブ52に相当するフロートバルブ352、ピストンナット43に相当するピストンナット343が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第3実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0067】
第3実施形態に係るフロートバルブ352は、第1実施形態に係るフロートバルブ52と異なりゴム部57を有していない。つまり、フロートバルブ352は、本体部56に相当する円形状の金属製の部材である。
【0068】
第3実施形態に係るピストンナット343は、第1実施形態に係るピストンナット43に対して、円筒状部433におけるナットテーパ部433Tよりも第2側にゴムにて成形されたゴム部440が焼き付けられている点が異なる。そして、ゴム部440は、以下のように機能する。つまり、ゴム部440は、圧力調整室500の圧力が第1室Y1の圧力よりも高い場合にはフロートバルブ352における第2側の面に接触して圧力調整室500を密封する。他方、第1室Y1の圧力が圧力調整室500の圧力よりも高い場合にはゴム部440がフロートバルブ352から離れ、第1室Y1から圧力調整室500へオイルが流れるのを許容する。
【0069】
ゴム部440の形状や位置は、上述したように機能するのであれば特に限定されない。
図11に示した例においては、ゴム部440は、円筒状部433の内周面から内側に半径方向に突出した基端部441と、基端部441における内周部から軸方向に傾斜する方向に第1側かつ内側に延びた傾斜部442と、傾斜部442における内周部から内側に半径方向に突出した先端部443とを有する。そして、ゴム部440は、圧力調整室500の圧力と第1室Y1の圧力とが同じである場合に、先端部443が、エンドキャップ51の環状突出部51Cに載ったフロートバルブ352における第2側の面に接触するように設けられている。
【0070】
以上のように構成されたゴム部440は、圧力調整室500の圧力が第1室Y1の圧力よりも高い伸長行程時には先端部443がフロートバルブ352における第2側の面に接触して圧力調整室500を密封する。また、仮に、ゴム部440とフロートバルブ352との間に異物が存在していたとしても、ゴム部440が異物を包み込むように変形するので、圧力調整室500の密封性が保たれる。
【0071】
他方、第1室Y1の圧力が圧力調整室500の圧力よりも高い圧縮行程時には、基端部441を支点にして傾斜部442および先端部443が第2側に撓み、第1室Y1から圧力調整室500へオイルが流れるのを許容する。それゆえ、仮に、ゴム部440とフロートバルブ352との間に異物が存在していたとしても、第1室Y1から圧力調整室500へ流れるオイルにより異物も圧力調整室500へ流される。また、仮に、フロートバルブ352とエンドキャップ51との間に異物が存在していたとしても、第1室Y1から圧力調整室500へ流れるオイルにより異物も圧力調整室500の方へ流される。その結果、フロートバルブ352とゴム部440との間や、フロートバルブ352とエンドキャップ51との間に異物が存在し難くなるので、確度高く圧力調整室500の密封性が保たれる。
【0072】
以上、説明したように、緩衝装置302は、圧力調整室500に設けられて、第1圧力よりも第2圧力が高い場合に第2連通路を閉じるとともに圧力調整室500の容積を大きくするように弾性変形し、第2圧力よりも第1圧力が高い場合に第2連通路を開く第2バルブ部の一例としてフロートバルブ352およびゴム部440を備える。そして、フロートバルブ352およびゴム部440は、金属製のフロートバルブ352(本体部の一例)と、フロートバルブ352とともに第2連通路を閉じるゴム部440とを有する。
【0073】
以上のように構成された緩衝装置302によれば、第1圧力よりも第2圧力が高い場合にゴム部440がフロートバルブ352に密着して圧力調整室500を密封するので、仮に異物が存在していたとしても圧力調整室500の密封性が保たれる。また、第2圧力よりも第1圧力が高い場合に異物を流すので、フロートバルブ352と、ゴム部440又はエンドキャップ51との間に異物が存在し難くなる。それゆえ、緩衝装置302においては、第1室Y1からエンドキャップ51の貫通孔51Hを介して圧力調整室500の方へ流入するオイルに異物が混入していたとしても減衰力変更部40における減衰力調整機能は損なわれない。その結果、オイルに混入する異物を捕集するフィルタを設ける必要がないので、低廉化を図ることができる。
【0074】
なお、フロートバルブ352は、円形状の外周部における周方向の複数箇所に、外周部から半径方向の外側に向けて突出する突出部を有していても良い。これにより、フロートバルブ352の半径方向の位置決めを確度高く行うことができ、ゴム部440とフロートバルブ352とを確度高く密着させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…懸架装置、2,202,302…緩衝装置、3…コイルスプリング、10…シリンダ部、20…ロッド、30…ピストン部、31…ピストン、40…減衰力変更部、41…調整バルブ(第1バルブ部の一例)、51…エンドキャップ(塞ぎ部材の一例)、51C…環状突出部(台座部の一例)、51G…変形規制部(規制部の一例)、51H…貫通孔、52,252…フロートバルブ(第2バルブ部の一例)、56…本体部、57,257,440…ゴム部、343…ピストンナット、352…フロートバルブ(本体部の一例)、431…円柱状部(ナット部の一例)、433…円筒状部(筒状部の一例)、500…圧力調整室、Y1…第1室、Y2…第2室