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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154302
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068061
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017CC01
5H017HH00
5H017HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】集電箔の損傷を抑制できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】積層された複数の電極ユニット100を備え、複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、正極金属層111及び負極金属層112が積層された集電箔110と、正極金属層上に形成された正極活物質層120と、負極金属層上に形成された負極活物質層130と、を有し、正極金属層及び負極金属層の少なくとも一方の金属層は、他方の金属層に対向する金属箔である対向層113と、他方の金属層とは反対側の金属箔である非対向層114と、を有する複数層で形成されている蓄電装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電極ユニットを備え、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、正極金属層及び負極金属層が積層された集電箔と、前記正極金属層上に形成された正極活物質層と、前記負極金属層上に形成された負極活物質層と、を有し、
前記正極金属層及び前記負極金属層の少なくとも一方の金属層は、他方の金属層に対向する金属箔である対向層と、前記他方の金属層とは反対側の金属箔である非対向層と、を有する複数層で形成されている
蓄電装置。
【請求項2】
前記対向層と前記他方の金属層とは、異なる材料で形成されている
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記対向層及び前記非対向層は、同じ材料で形成されている
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記正極金属層が、前記複数層で形成されている
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記非対向層の前記対向層に対向する面は、前記非対向層の前記対向層とは反対側の面よりも、表面粗さが粗い
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記対向層の前記非対向層に対向する面は、前記対向層の前記非対向層とは反対側の面よりも、表面粗さが粗い
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記対向層及び前記非対向層の少なくとも一方は、前記他方の金属層よりも厚みが厚い
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集電体のうちの正極集電体の表面に正極活物質層が配置され、負極集電体の表面に負極活物質層が配置された蓄電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-77634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄電装置において、集電箔が有する正極金属層及び負極金属層の少なくとも一方の金属層にピンホールが生じると短絡が発生する等の不具合が生じるおそれがあるため、集電箔の損傷を抑制することが重要である。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、集電箔の損傷を抑制できる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、正極金属層及び負極金属層が積層された集電箔と、前記正極金属層上に形成された正極活物質層と、前記負極金属層上に形成された負極活物質層と、を有し、前記正極金属層及び前記負極金属層の少なくとも一方の金属層は、他方の金属層に対向する金属箔である対向層と、前記他方の金属層とは反対側の金属箔である非対向層と、を有する複数層で形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明における蓄電装置によれば、集電箔の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
図3図3は、実施の形態に係る蓄電装置が有する電極ユニットの構成を示す斜視図及び断面図である。
図4図4は、実施の形態に係る電極ユニットが有する集電箔の構成を示す断面図である。
図5図5は、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法における製造工程を示す断面図である。
図6図6は、実施の形態の変形例1に係る集電箔の構成を示す断面図である。
図7図7は、実施の形態の変形例2に係る集電箔の構成を示す断面図である。
図8図8は、実施の形態の変形例3に係る集電箔の構成を示す断面図である。
図9図9は、蓄電パックの構成を示す断面図である。
図10図10は、蓄電パックの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、正極金属層及び負極金属層が積層された集電箔と、前記正極金属層上に形成された正極活物質層と、前記負極金属層上に形成された負極活物質層と、を有し、前記正極金属層及び前記負極金属層の少なくとも一方の金属層は、他方の金属層に対向する金属箔である対向層と、前記他方の金属層とは反対側の金属箔である非対向層と、を有する複数層で形成されている。
【0010】
これによれば、蓄電装置において、集電箔が有する正極金属層及び負極金属層の少なくとも一方の金属層は、他方の金属層に対向する対向層と、当該他方の金属層とは反対側の非対向層と、を有する複数層(複数の金属箔)で形成されている。このように、集電箔が有する金属層を複数層で形成することで、金属層を補強できるため、集電箔の損傷を抑制できる。
【0011】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記対向層と前記他方の金属層とは、異なる材料で形成されている、としてもよい。
【0012】
これによれば、当該一方の金属層の対向層と当該他方の金属層とを異なる材料で形成する(つまり、同一の材料で形成しなくてもよい)ことで、対向層と当該他方の金属層とをそれぞれ適した材料で形成できる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に記載の蓄電装置において、前記対向層及び前記非対向層は、同じ材料で形成されている、としてもよい。
【0014】
これによれば、当該一方の金属層の対向層及び非対向層を同じ材料で形成することで、当該一方の金属層を同一材料で形成できる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記正極金属層が、前記複数層で形成されている、としてもよい。
【0016】
これによれば、正極金属層は、一般的に、アルミニウム箔等の取り扱いやすい部材で形成されるため、当該一方の金属層として正極金属層を複数層で形成することで、当該一方の金属層を容易に形成できる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記非対向層の前記対向層に対向する面は、前記非対向層の前記対向層とは反対側の面よりも、表面粗さが粗い、としてもよい。
【0018】
これによれば、非対向層の対向層に対向する面が、反対側の面よりも表面粗さが粗いことで、対向層と非対向層との接触面積を増やすことができるため、対向層と非対向層とを有する複数層の電気抵抗を低くできる。
【0019】
(6)上記(1)から(5)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記対向層の前記非対向層に対向する面は、前記対向層の前記非対向層とは反対側の面よりも、表面粗さが粗い、としてもよい。
【0020】
これによれば、対向層の非対向層に対向する面が、反対側の面よりも表面粗さが粗いことで、対向層と非対向層との接触面積を増やすことができるため、対向層と非対向層とを有する複数層の電気抵抗を低くできる。
【0021】
(7)上記(1)から(6)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記対向層及び前記非対向層の少なくとも一方は、前記他方の金属層よりも厚みが厚い、としてもよい。
【0022】
これによれば、対向層及び非対向層の少なくとも一方を、他方の金属層よりも厚くすることで、複数層で形成された金属層へのピンホールの発生を抑制できる。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置等について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0024】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の長手方向、または、蓄電装置の一対の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の一対の長側面の対向方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の厚み方向、複数の電極ユニットの積層方向、集電箔及び活物質層の積層方向、一対のエンド部材の並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0025】
以下の説明において、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。単にX軸方向という場合は、X軸プラス方向及びX軸マイナス方向の双方向またはいずれか一方の方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行であるとは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0026】
(実施の形態)
[1 蓄電装置10の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置10の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電装置10の内部構成を示す断面図である。具体的には、図2は、図1の蓄電装置10を、II-II線を通るYZ平面で切断した場合の断面図である。図2は、蓄電装置10が備える各構成要素を示している。図3は、本実施の形態に係る蓄電装置10が有する電極ユニット100の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、図3の(a)は、電極ユニット100の外観を示す斜視図である。図3の(b)は、図3の(a)の電極ユニット100を、IIIb-IIIb線を通るYZ平面で切断した場合の構成を示す断面図である。図3では、説明の便宜のため、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0027】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置である。本実施の形態における蓄電装置10は、略直方体形状を有している。具体的には、蓄電装置10は、バイポーラ電池である。蓄電装置10は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0028】
図1及び図2に示すように、蓄電装置10は、複数の電極ユニット100と、エンドユニット101及び102と、複数のセパレータ140と、一対のエンド部材300と、を備えている。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102のそれぞれは、平面視で矩形状の板状部位であり、Z軸方向に積層されている。本実施の形態での平面視とは、積層方向(Z軸方向)から見た場合のことをいう。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102が積層される方向(Z軸方向)を、積層方向とも称する。セパレータ140は、複数の電極ユニット100、エンドユニット101及び102のそれぞれの間に配置される。一対のエンド部材300は、積層方向(Z軸方向)において、複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102の両側に配置される。本実施の形態では、エンドユニット101とエンドユニット102との間に、2つの電極ユニット100が積層方向に積層されているが、電極ユニット100が積層される数は特に限定されない。電極ユニット100、エンドユニット101及びエンドユニット102等の平面視の形状も特に限定されない。
【0029】
[1.1 電極ユニット100の説明]
以下に、図3も用いて、電極ユニット100の構成について、詳細に説明する。電極ユニット100は、1枚の集電箔の両面に活物質層が形成された1単位のユニットである。複数の電極ユニット100のそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔110の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔110の他方の面に形成された負極活物質層130と、シール部210と、を有している。本実施の形態では、電極ユニット100の厚み(積層方向の厚み)は、135μm~190μm程度である。
【0030】
集電箔110は、平面視が矩形状である板状部材である。集電箔110は、金属箔である。図3に示すように、集電箔110は、積層方向(Z軸方向)に並ぶ2つの金属層111及び112を有している。金属層111及び112は、平面視で同じ大きさかつ同じ形状を有する板状の部位である。以下では、金属層111及び112のうちの、正極活物質層120が形成される金属層111を正極金属層111とも称し、負極活物質層130が形成される金属層112を負極金属層112とも称する。正極金属層111は、集電箔110のうちのZ軸プラス方向に位置する金属層であり、負極金属層112は、集電箔110のうちのZ軸マイナス方向に位置する金属層である。つまり、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112が互いに接続(接触または接合)された状態で、正極金属層111及び負極金属層112が積層方向に積層されて形成されている。正極金属層111及び負極金属層112は、一方が金属箔であり、他方が当該金属箔にメッキされるメッキ層でもよい。または、正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔でもよい。正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔の場合、集電箔110は、2つの金属箔同士が接合されて形成されたクラッド材等であってもよいし、2つの金属箔同士が接合されることなく接続(接触)した状態で2つの金属箔を有していてもよい。
【0031】
正極金属層111の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属またはそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスから、正極金属層111の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。正極金属層111の形態としては、メッキ層でもよいが、加工性、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極金属層111としては、アルミニウム箔が好ましい。負極金属層112の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属またはそれらの合金が用いられ、これらの中でも、銅または銅合金が用いられるのが好ましい。負極金属層112の形態としては、メッキ層または箔(銅箔)が挙げられ、銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。集電箔110の厚み(積層方向の厚み)は、20μm~30μm程度である。正極金属層111の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~20μm程度であり、負極金属層112の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~15μm程度である。
【0032】
正極活物質層120は、集電箔110の一方の表面(Z軸プラス方向の面)に形成された正極の活物質層である。具体的には、正極活物質層120は、正極金属層111上(正極金属層111の外面(Z軸プラス方向の面))に形成されている。正極活物質層120は、正極金属層111の形状に応じて、平面視で正極金属層111よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。平面視でサイズが小さいとは、XY平面の面積が小さいことをいう。以下についても同様である。正極活物質層120の厚み(積層方向の厚み)は、70μm~100μm程度である。
【0033】
正極活物質層120は、正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。正極活物質としては、LiM1O(M1はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等の層状リチウム遷移金属酸化物、LiM2(M2はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のスピネル型リチウム遷移金属酸化物、LiM3PO、LiM3SiO、LiM3BO(M3はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のポリアニオン化合物等が挙げられる。正極活物質として、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層120に含有される導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛などが挙げられる。バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。
【0034】
負極活物質層130は、集電箔110の他方の表面(Z軸マイナス方向の面)に形成された負極の活物質層である。具体的には、負極活物質層130は、負極金属層112上(負極金属層112の外面(Z軸マイナス方向の面))に形成されている。負極活物質層130は、負極金属層112の形状に応じて、平面視で負極金属層112よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。負極活物質層130は、平面視で正極活物質層120よりもサイズが大きく形成されている。平面視でサイズが大きいとは、XY平面の面積が大きいことをいう。以下についても同様である。つまり、負極活物質層130のXY平面の面積は、正極活物質層120のそれよりも大きい。負極活物質層130の厚み(積層方向の厚み)は、45μm~60μm程度である。
【0035】
負極活物質層130は、負極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層120と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属または半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物または半金属酸化物;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0036】
シール部210は、正極活物質層120または負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部210は、正極活物質層120及び負極活物質層130の全周に亘って正極活物質層120及び負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部210は、集電箔110の外周部を覆うように、集電箔110の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部210は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材により形成されている。
【0037】
隣り合う2つの電極ユニット100が有するシール部210同士は、互いに接続されている。当該シール部210同士は、一体的に連続して形成されることで、互いに接続されていてもよいし、シール部210同士がヒートシール(熱溶着)、超音波溶着、レーザ溶着、または、接着剤等によって接合されることで、互いに接続されていてもよい。これにより、シール部210は、当該2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120及び当該2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の周囲に配置され、当該2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にはシール部210が設けられる。つまり、2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にシール部210が連続的に設けられ、集電箔110同士の間がシールされる。
【0038】
複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側には、電解質層(図示省略)が形成されている。電解質層は、本実施の形態では、非水系の液体状の電解質(電解液)であるが、固体状の電解質(固体電解質)、または、ゲル状の電解質等でもよい。これら電解質としては、適宜公知のものを使用できる。電解液(非水電解質)としては、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものを用いることができる。非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートなどを挙げることができる。電解質塩としては、リチウム塩が好ましい。上記リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)、LiN(SOCF)等の無機リチウム塩を挙げることができる。
【0039】
[1.2 エンドユニット101及び102の説明]
次に、エンドユニット101及び102の構成について、詳細に説明する。エンドユニット101は、複数の電極ユニット100のZ軸マイナス方向の端部に配置される。エンドユニット102は、複数の電極ユニット100のZ軸プラス方向の端部に配置される。エンドユニット101及び102は、複数の電極ユニット100をZ軸方向で挟み込む部位である。
【0040】
エンドユニット101は、少なくとも、正極金属層111と、正極金属層111のZ軸プラス方向の面に形成された正極活物質層120と、シール部220と、を有している。エンドユニット101が有する正極金属層111及び正極活物質層120は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110の正極金属層111及び正極活物質層120と同様の構成を有している。
【0041】
シール部220は、正極活物質層120の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部220は、正極活物質層120の全周に亘って正極活物質層120の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部220は、正極金属層111及びエンド部材300の外周部を覆うように、正極金属層111及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部220は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0042】
シール部220は、エンドユニット101に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部220とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット101の正極金属層111と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部220の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0043】
エンドユニット102は、少なくとも、集電箔110と、集電箔110のZ軸マイナス方向の面に配置された負極活物質層130と、シール部230と、を有している。エンドユニット102が有する集電箔110及び負極活物質層130は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110及び負極活物質層130と同様の構成を有している。
【0044】
シール部230は、負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部230は、負極活物質層130の全周に亘って負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部230は、集電箔110及びエンド部材300の外周部を覆うように、集電箔110及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部230は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0045】
シール部230は、エンドユニット102に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部230とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット102の集電箔110と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部230の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0046】
このように、シール部210、220及び230が互いに接続されて、シール部材200が構成される。シール部材200は、正極金属層111、負極金属層112、正極活物質層120、負極活物質層130、セパレータ140、及び、エンド部材300の全ての全周を囲うように配置され、これらと外部との間をシールする筒状(四角筒状)の部材である。
【0047】
[1.3 セパレータ140及びエンド部材300の説明]
セパレータ140は、樹脂からなる微多孔性のシートである。セパレータ140は、電極ユニット100同士の間、エンドユニット101と電極ユニット100との間、及び、エンドユニット102と電極ユニット100との間に、それぞれ配置される。具体的には、セパレータ140は、正極活物質層120と負極活物質層130との間に配置される。セパレータ140の材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ140として、これらの多孔質樹脂フィルムの表面にフィラーを含む層を形成した多層のフィルムであってもよい。セパレータ140は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが大きい矩形状に形成されている。本実施の形態では、セパレータ140のサイズは、平面視で集電箔110のそれよりも小さいが、平面視で集電箔110よりもサイズが大きくてもよい。セパレータ140の厚み(積層方向の厚み)は、15μm~20μm程度である。
【0048】
エンド部材300は、複数の電極ユニット100よりも、蓄電装置10における積層方向(Z軸方向)の端部に配置される部材である。本実施の形態では、一対のエンド部材300が、蓄電装置10の最もZ軸マイナス方向端部及び最もZ軸プラス方向端部に配置される。一対のエンド部材300は、エンドユニット101及び102(が有する正極金属層111)に接続される。これにより、一対のエンド部材300は、その間に位置する複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102等を、積層方向(Z軸方向)の両側から挟み込む。エンド部材300は、平板状の部材(エンドプレート)である。エンド部材300は、他の導電部材(バスバー、冷却板等。図示せず)を介して、他の蓄電装置10が有する他のエンド部材300と電気的に接続される。エンド部材300は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材等で形成されている。エンド部材300は、正極金属層111と接続されるため、アルミニウムなど、正極金属層111と同じ材質で形成されるのが好ましい。エンド部材300の厚み(積層方向の厚み)は、0.5mm~3mm程度である。蓄電装置10は、エンド部材300の外側(Z軸方向の外側)に他の導電部材を有していてもよい。
【0049】
以上の構成において、セパレータ140と、セパレータ140をZ軸方向で挟む正極活物質層120及び負極活物質層130と、これらをZ軸方向で挟む正極金属層111及び負極金属層112とを、1つの蓄電素子と称してもよい。この場合、蓄電装置10は、Z軸方向に積層された複数の蓄電素子がZ軸方向において一対のエンド部材300で挟まれ、これらの周囲がシール部材200で囲われた構成を有する蓄電素子群であるとも言える。
【0050】
[2 集電箔110の説明]
次に、集電箔110の構成について、さらに詳細に説明する。以下では、電極ユニット100が有する集電箔110の構成について説明するが、エンドユニット102が有する集電箔110の構成についても同様である。図4は、本実施の形態に係る電極ユニット100が有する集電箔110の構成を示す断面図である。具体的には、図4の(a)は、図3の(b)の電極ユニット100を示し、図4の(b)は、図4の(a)に示した電極ユニット100における集電箔110の一部(破線で囲った部分)を拡大して示している。
【0051】
集電箔110の構成について、上述にて種々の態様を説明したが、その態様のうちの一例を以下に示し、その詳細を説明する。上述の通り、集電箔110は、正極金属層111と負極金属層112とを有している。正極金属層111及び負極金属層112の少なくとも一方の金属層は、他方の金属層に対向する金属箔である対向層と、他方の金属層とは反対側の金属箔である非対向層と、を有する複数層で形成されている。図4に示すように、本実施の形態では、正極金属層111が、複数層で形成されている。つまり、正極金属層111は、負極金属層112に対向する金属箔である対向層113と、負極金属層112とは反対側の金属箔である非対向層114と、を有する複数層(2層、2重箔)で形成されている。
【0052】
正極金属層111の対向層113及び非対向層114は、上述した正極金属層111に用いられるいずれの材質の金属箔でもよいが、本実施の形態では、アルミニウムを含む金属箔である。具体的には、対向層113及び非対向層114は、アルミニウム箔である。負極金属層112は、正極金属層111(対向層113)にメッキされたメッキ層である。負極金属層112は、上述した負極金属層112に用いられるいずれの材質のメッキ層でもよいが、本実施の形態では、銅を含むメッキ層である。具体的には、負極金属層112は、銅メッキである。負極金属層112は、粘着性のメッキ等によって、正極金属層111(対向層113)上に形成される。
【0053】
このように、正極金属層111(一方の金属層)の対向層113及び非対向層114は、同じ材料で形成されている。正極金属層111(一方の金属層)の対向層113と負極金属層112(他方の金属層)とは、異なる材料で形成されている。同様に、正極金属層111(一方の金属層)の非対向層114と負極金属層112(他方の金属層)とは、異なる材料で形成されている。本実施の形態では、対向層113及び非対向層114のそれぞれの厚み(Z軸方向の厚み)は、負極金属層112の厚み以下であるが、正極金属層111の厚み(対向層113及び非対向層114の合計厚み)は、負極金属層112の厚み以上である。例えば、正極金属層111の厚み(対向層113及び非対向層114の合計厚み)は、10μm程度であり、負極金属層112の厚みは、5μm~10μm程度である。対向層113及び非対向層114は、平面視で、同じサイズに形成されている。
【0054】
対向層113及び非対向層114は、互いに対向する面(内側の面)が、その反対側の面(外側の面)よりも表面粗さが粗い。つまり、対向層113の非対向層114に対向する面113aは、対向層113の非対向層114とは反対側の面113bよりも、表面粗さが粗い。非対向層114の対向層113に対向する面114aは、非対向層114の対向層113とは反対側の面114bよりも、表面粗さが粗い。対向層113の面113aは、非対向層114の面114bよりも、表面粗さが粗い。非対向層114の面114aは、対向層113の面113bよりも、表面粗さが粗い。対向層113の面113aは、非対向層114の面114aと同等の表面粗さである。対向層113の面113bは、非対向層114の面114bと同等の表面粗さである。
【0055】
表面粗さの比較は、以下のように行う。集電箔110から負極金属層112を取り除き、正極金属層111の両面にテープを貼って引っ張ることで、対向層113と非対向層114とを引き剥がす。その後、表面粗さとして、各面(対向層113の面113a、面113b、非対向層114の面114a、面114b)の算術平均粗さRaをJIS B0601:2013に準じて測定し、各面の表面粗さを比較する。本実施の形態では、対向層113において、面113aの表面粗さは、0.2μm程度であり、面113bの表面粗さは、0.05μm程度である。本実施の形態では、非対向層114において、面114aの表面粗さは、0.2μm程度であり、面114bの表面粗さは、0.05μm程度である。
【0056】
[3 蓄電装置10の製造方法の説明]
次に、蓄電装置10の製造方法について、説明する。図5は、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法における製造工程を示す断面図である。図5は、蓄電装置10の製造方法における集電箔110の製造方法を示している。具体的には、図5の(a)は、集電箔110の製造方法のうちの正極金属層111の形成工程を示し、図5の(b)は、集電箔110の形成工程を示している。
【0057】
図5の(a)に示すように、まず、対向層113及び非対向層114の2枚の金属箔をZ軸方向で重ねて、正極金属層111を形成する。具体的には、対向層113及び非対向層114を重ねた状態で、加圧プレスロールを用いて圧延プレス(圧縮接合)する等により、正極金属層111を形成する。これにより、対向層113及び非対向層114において、プレスされる外側の面(面113b及び面114b)の表面粗さが小さくなり、その結果、内側の面(面113a及び面114a)が、外側の面(面113b及び面114b)よりも、表面粗さが粗くなる。このように、表面粗さの異なる金属箔の形成方法として、圧延工程では金属箔同士を重ねて圧延を行う、重ね圧延プロセスが好適である。このようにして圧延した金属箔は、金属箔同士の重ね面は表面粗さの大きい凹凸のある非光沢面となり、反対の面は表面粗さの小さい平滑な光沢面となる。本実施の形態では、対向層113及び非対向層114をプレスするのみで、対向層113及び非対向層114を接合(接着)する工程は行わないが、対向層113及び非対向層114を接合(接着)してもよい。
【0058】
次に、図5の(b)に示すように、正極金属層111に負極金属層112を形成する。具体的には、正極金属層111に銅メッキを施すことで、正極金属層111に上にメッキ層である負極金属層112を形成する。これにより、正極金属層111及び負極金属層112が積層された集電箔110が形成される。
【0059】
その後、集電箔110に正極活物質層120及び負極活物質層130を形成する等により、電極ユニット100(及びエンドユニット102)を形成する。そして、複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とをセパレータ140を挟んで積層方向に積層し、一対のエンド部材300で挟み込むことで、蓄電装置10を製造する。
【0060】
[4 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10によれば、集電箔110が有する正極金属層111及び負極金属層112の少なくとも一方の金属層は、他方の金属層に対向する対向層113と、当該他方の金属層とは反対側の非対向層114と、を有する複数層(複数の金属箔)で形成されている。このように、集電箔110が有する金属層を複数層で形成することで、金属層を補強できるため、集電箔110の損傷を抑制できる。
【0061】
具体的には、以下の通りである。正極金属層111または負極金属層112にピンホールが生じると、電解液がピンホールから浸透し、電解液による短絡(金属層と逆極の活物質との短絡)が発生するおそれがある。正極金属層111のピンホールでは、正極活物質層120と負極金属層112とが電解液を介して短絡して、さらにCuの溶出によりCuにもピンホールが形成されて、最終的には正極活物質層120と負極活物質層130との短絡が発生する。負極金属層112のピンホールでは、負極活物質層130と正極金属層111とが電解液を介して短絡して、さらにAlに負極のLiが浸透して、Li/Al合金を形成し、合金部は膨張によりクラックを形成し、最終的には正極活物質層120と負極活物質層130との短絡が発生する。ピンホールは、圧延プレス時に潤滑油または異物を圧縮することで発生する場合がある。このため、正極金属層111及び負極金属層112の少なくとも一方の金属層を複数層で形成する。これにより、複数層のいずれかの層にピンホールが発生した場合でも、各層のピンホールが重なる可能性は低く、複数層を貫通するようなピンホールの発生を抑制できるため、電解液による短絡を抑制できる。
【0062】
当該一方の金属層の対向層113と当該他方の金属層とを異なる材料で形成する(つまり、同一の材料で形成しなくてもよい)ことで、対向層113と当該他方の金属層とをそれぞれ適した材料で形成できる。
【0063】
当該一方の金属層の対向層113及び非対向層114を同じ材料で形成することで、当該一方の金属層を同一材料で形成できる。
【0064】
正極金属層111は、一般的に、アルミニウム箔等の取り扱いやすい部材で形成されるため、当該一方の金属層として正極金属層111を複数層で形成することで、当該一方の金属層を容易に形成できる。
【0065】
非対向層114の対向層113に対向する面114aが、反対側の面114bよりも表面粗さが粗いことで、対向層113と非対向層114との接触面積を増やすことができるため、対向層113と非対向層114とを有する複数層の電気抵抗を低くできる。対向層113と非対向層114とを圧延プレスすることで、非対向層114の対向層113とは反対側の面114bは、プレスロールによる圧延により平滑さが増す。このため、非対向層114の対向層113に対向する面114aの表面粗さを、非対向層114の対向層113とは反対側の面114bの表面粗さよりも粗くできる。
【0066】
対向層113の非対向層114に対向する面113aが、反対側の面113bよりも表面粗さが粗いことで、対向層113と非対向層114との接触面積を増やすことができるため、対向層113と非対向層114とを有する複数層の電気抵抗を低くできる。対向層113と非対向層114とを圧延プレスすることで、対向層113の非対向層114とは反対側の面113bは、プレスロールによる圧延により平滑さが増す。対向層113に当該他方の金属層(負極金属層112)を接続した場合でも、面113bの平滑さが維持される。このため、対向層113の非対向層114に対向する面113aの表面粗さを、対向層113の非対向層114とは反対側の面113bの表面粗さよりも粗くできる。
【0067】
[5 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0068】
上記実施の形態において、集電箔110の正極金属層111の厚み(対向層113及び非対向層114の厚み)は、特に限定されない。図6は、本実施の形態の変形例1に係る集電箔110aの構成を示す断面図である。図7は、本実施の形態の変形例2に係る集電箔110bの構成を示す断面図である。図6及び図7は、図4の(b)に対応する図である。
【0069】
図6に示すように、変形例1における集電箔110aは、上記実施の形態における集電箔110が有する正極金属層111に代えて、正極金属層111aを有している。上記実施の形態では、正極金属層111の対向層113及び非対向層114の厚みは、ともに、負極金属層112の厚み以下であることとしたが、本変形例では、正極金属層111aの対向層113及び非対向層114の少なくとも一方が、負極金属層112よりも厚みが厚い。具体的には、正極金属層111aの非対向層114が、負極金属層112よりも厚みが厚い。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0070】
本変形例において、正極金属層111aの対向層113が、負極金属層112よりも厚みが厚くてもよいし、正極金属層111aの対向層113及び非対向層114の双方が、負極金属層112よりも厚みが厚くてもよい。つまり、一方の金属層(正極金属層111a)の対向層113及び非対向層114の少なくとも一方は、他方の金属層(負極金属層112)よりも厚みが厚い。本変形例の構成によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、本変形例では、一方の金属層(正極金属層111a)の対向層113及び非対向層114の少なくとも一方を、他方の金属層(負極金属層112)よりも厚くすることで、複数層で形成された金属層(正極金属層111a)へのピンホールの発生を抑制できる。
【0071】
図7に示すように、変形例2における集電箔110bは、上記実施の形態における集電箔110が有する正極金属層111に代えて、正極金属層111bを有している。上記実施の形態では、正極金属層111の厚み(対向層113及び非対向層114の合計厚み)は、負極金属層112の厚み以上であることとしたが、本変形例では、正極金属層111bの厚み(対向層113及び非対向層114の合計厚み)は、負極金属層112の厚みよりも薄い。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。本変形例の構成によっても、正極金属層111bは、複数の金属箔で形成されているため、損傷するのが抑制される。特に、正極金属層111bの厚みが薄いため、集電箔110b(電極ユニット100)の厚みを薄くできる。これにより、集電箔110bが蓄電装置10に占める体積が小さくなるため、蓄電装置10のエネルギー密度を向上させることができる。
【0072】
上記実施の形態では、集電箔110の正極金属層111は、2層の金属箔であることとしたが、正極金属層111は、3層以上の金属箔でもよい。図8は、本実施の形態の変形例3に係る集電箔110cの構成を示す断面図である。図8は、図4の(b)に対応する図である。図8に示すように、本変形例に係る集電箔110cは、上記実施の形態における集電箔110が有する正極金属層111に代えて、正極金属層111cを有している。正極金属層111cは、対向層113及び非対向層114に加えて、中間層115を有する3層の複数層で形成されている。中間層115は、対向層113と非対向層114との間に配置される金属箔である。中間層115は、対向層113及び非対向層114と同じ材料及び同じサイズで形成されている。
【0073】
本変形例においても、対向層113の面113b及び非対向層114の面114bが、プレスロールによる圧延によって平滑さが増す。このため、対向層113の面113a及び非対向層114の面114aは、中間層115に対向するが、対向層113の面113b及び非対向層114の面114bよりも、表面粗さが粗い。中間層115の、対向層113に対向する面115a、及び、非対向層114に対向する面115bは、同等の表面粗さであり、対向層113の面113b及び非対向層114の面114bよりも、表面粗さが粗い。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。本変形例の構成によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、本変形例では、正極金属層111cは、3層の複数層で形成されているため、損傷するのがさらに抑制される。本変形例において、正極金属層111cは、中間層115を複数有することで、4層以上の複数層で形成されてもよい。
【0074】
上記実施の形態では、正極金属層111の対向層113及び非対向層114は、同じ材料で形成されていることとしたが、異なる材料で形成されていてもよい。正極金属層111の対向層113と負極金属層112とは、異なる材料で形成されていることとしたが、同じ材料で形成されていてもよい。
【0075】
上記実施の形態では、正極金属層111の対向層113において、面113aは、面113bよりも表面粗さが粗いこととしたが、同じ表面粗さでもよいし、面113bが面113aよりも表面粗さが粗くてもよい。正極金属層111の非対向層114において、面114aは、面114bよりも表面粗さが粗いこととしたが、同じ表面粗さでもよいし、面114bが面114aよりも表面粗さが粗くてもよい。その他、表面粗さの関係は、特に限定されない。
【0076】
上記実施の形態では、集電箔110は、複数層の正極金属層111に負極金属層112がメッキされて形成されることを一例として説明したが、これには限定されない。集電箔110は、複数層の正極金属層111に、金属箔である負極金属層112が圧延プレス等により接合されたクラッド材として形成されてもよい。集電箔110は、複数層の正極金属層111に、金属箔である負極金属層112が接合されることなく接続(接触)したような構成でもよい。
【0077】
上記実施の形態では、集電箔110において、正極金属層111が複数層で形成されることとしたが、負極金属層112が複数層で形成されてもよい。この場合、集電箔110は、複数層の負極金属層112に正極金属層111がメッキされて形成されてもよい。集電箔110は、複数層の負極金属層112に、金属箔である正極金属層111が圧延プレス等により接合されたクラッド材として形成されてもよい。集電箔110は、複数層の負極金属層112に、金属箔である正極金属層111が接合されることなく接続(接触)したような構成でもよい。正極金属層111及び負極金属層112の双方が複数層で形成されてもよい。
【0078】
上記実施の形態では、全ての電極ユニット100及びエンドユニット102が有する全ての集電箔110が上記構成を有することとしたが、いずれかの集電箔110が上記構成を有していなくてもよい。エンドユニット101が有する正極金属層111が複数層で形成されてもよい。
【0079】
蓄電装置10は、図9に示すような蓄電パック1に用いられてもよい。図9は、蓄電パック1の構成を示す断面図である。図9において、蓄電装置10の内部構成の図示は省略している。図9に示すように、蓄電パック1は、複数の蓄電装置10が積層された蓄電装置積層体2と、導電部材3と、を備えている。この場合、蓄電パック1に含まれる少なくとも1つの蓄電装置10に対して、本発明の技術が適用されればよい。蓄電装置積層体2における隣り合う2つの蓄電装置10は、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。導電部材3は、ステンレス等の金属からなり、積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。接合には接着剤を用いてもよい。蓄電装置積層体2における複数の蓄電装置10は直列に接続されており、導電部材3を介して充放電が実施される。蓄電パック1は、積層方向(Z軸方向)に拘束されてもよく、この場合、ネジ、樹脂バンドまたは金属バンド等の拘束部材を用いることができる。蓄電装置積層体2及び導電部材3は、金属ケースまたは樹脂ケースに収容されていてもよい。
【0080】
蓄電パック1の他の例として、個々の蓄電装置10が外装体4に収容された構成を図10に示す。図10は、蓄電パック1aの構成を示す断面図である。図10に示すように、本構成の蓄電装置10は、外装体4から露出した接続部分5を有している。外装体4としてラミネートフィルム等を用いることができる。隣り合う蓄電装置10の接続部分5同士が、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10の接続部分5と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。その他の構成は、上述の蓄電パック1と同様のため説明を省略する。
【0081】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、バイポーラ電池等の蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0083】
1、1a 蓄電パック
2 蓄電装置積層体
3 導電部材
4 外装体
5 接続部分
10 蓄電装置
100 電極ユニット
101、102 エンドユニット
110、110a、110b、110c 集電箔
111、111a、111b、111c 正極金属層(金属層)
112 負極金属層(金属層)
113 対向層
113a、113b、114a、114b、115a、115b 面
114 非対向層
115 中間層
120 正極活物質層
130 負極活物質層
140 セパレータ
200 シール部材
210、220、230 シール部
300 エンド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10