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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154306
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B25J19/00 H
B25J19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068075
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 壱
(72)【発明者】
【氏名】石丸 裕二
(72)【発明者】
【氏名】石津 謙生
(72)【発明者】
【氏名】古谷 幸司
(72)【発明者】
【氏名】宮園 義彰
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 寿
(72)【発明者】
【氏名】今野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山元 秀洋
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707BS12
3C707CY06
3C707CY13
3C707CY29
3C707CY37
(57)【要約】
【課題】エンドエフェクタへの線条体の接続作業の安定性・信頼性を向上する。
【解決手段】ロボット1は、内部に中空部16Aを備える第6アーム16と、第6アーム16の先端部に設けられ、先端部からの距離L1だけ延びる円筒ブラケット102と、第6アーム16の先端部において中空部16Aから出て円筒ブラケット102の内部を通る線条体90を、円筒ブラケット102の先端部で把持する継手用プレート150と、ロボット1に取り付けられる塗装ガン100を第6アーム16の先端部から距離L1よりも大きな離間距離L2だけ離間した位置において保持し、継手用プレート150と塗装ガン100との間に開放空間Rを与えるガンホルダー101と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットであって、
内部に第1中空部を備える第1腕部と、
前記第1腕部の先端部に設けられ、前記先端部から第1距離だけ延びる筒部材と、
前記第1腕部の先端部において前記第1中空部から出て前記筒部材の内部を通る線条体を、前記筒部材の先端部で把持する把持部材と、
前記ロボットに取り付けられるエンドエフェクタを前記第1腕部の先端部から前記第1距離よりも大きな第2距離だけ離間した位置において保持し、前記把持部材と前記エンドエフェクタとの間に開放空間を与えるエンドエフェクタ保持部材と、
を有する、
ロボット。
【請求項2】
前記第1腕部の前記先端部に取り付けられ、前記第1中空部から前記筒部材の内部へ前記線条体を導出しつつ当該先端部における前記第1中空部の開口を塞ぐカバー部材をさらに有する、請求項1記載のロボット。
【請求項3】
前記把持部材は、前記筒部材の先端に着脱可能に設けられている、請求項1又は請求項2記載のロボット。
【請求項4】
前記筒部材の軸方向に沿った長さは、
当該筒部材の内部に延設されている前記線条体が前記先端部から這い出しが可能な最小の実長さ寸法よりも短い、請求項3記載のロボット。
【請求項5】
前記線条体は、
前記第1腕部の前記第1中空部から引き出されて前記把持部材に至る第1部分と、前記把持部材から前記エンドエフェクタに至る第2部分と、の2分割構造を備えており、
前記把持部材は、
前記第1腕部側に設けられ、前記第1部分が取り付けられる第1継手と、
前記エンドエフェクタ側に前記第1継手と連通して設けられ、前記第2部分が取り付けられる第2継手と、
を備える、請求項1記載のロボット。
【請求項6】
前記把持部材は、
前記線条体を貫通させる開口部を備えた弾性部材と、
互いに螺合する2部材により構成され、前記2部材の緊締により当該2部材の間に配置した前記弾性部材における前記開口部と前記線条体とのシール性を向上させる締結体と、
を備える、請求項1記載のロボット。
【請求項7】
前記把持部材は、前記筒部材の先端側の開口部を塞ぐ構造部材を兼ねる、請求項5又は請求項6記載のロボット。
【請求項8】
前記第1腕部を第1軸心周りに回動可能に支持する第2腕部と、
前記第2腕部を第2軸心周りに回動可能に支持する第3腕部と、
前記第3腕部を第3軸心周りに回動可能に支持する第4腕部と、
をさらに有し、
前記第1腕部の前記第1中空部は、前記第2腕部の内部の第2中空部に連通しており、
前記第2腕部の前記第2中空部は、前記第3腕部の内部の第3中空部に連通しており、
前記第3腕部の前記第3中空部は、前記第4腕部の内部の第4中空部に連通しており、
前記線条体は、
前記第4中空部、前記第3中空部、前記第2中空部、前記第1中空部内を連続して引き回され、かつ、前記第4中空部内に設けた結束部材によって前記第4腕部に固定されている、請求項1記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多関節ロボットが記載されている。この多関節ロボットは、アームと、該アームの末端に形成される手首部と、該手首部に設けられていてエンドエフェクタを受容可能であるとともに動力を前記エンドエフェクタに伝達する減速機と、を備える多関節ロボットであって、前記減速機は、固定要素によって前記手首部に固定される固定部と、該固定部に対して回動可能な回動部と、を有し、カバーが、前記減速機の前記固定部に取付けられるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-046397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のロボットでは、腕部の内部の中空部にケーブルやチューブ等の線条体を延設し、その線条体をエンドエフェクタに対し接続する構成については開示がない。そのため、当該線条体をエンドエフェクタに対し接続する作業の安定性・信頼性等について特に配慮がなされていなかった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、エンドエフェクタへの線条体の接続作業の安定性・信頼性を向上できるロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、ロボットであって、内部に第1中空部を備える第1腕部と、前記第1腕部の先端部に設けられ、前記先端部から第1距離だけ延びる筒部材と、前記第1腕部の先端部において前記第1中空部から出て前記筒部材の内部を通る線条体を、前記筒部材の先端部で把持する把持部材と、前記ロボットに取り付けられるエンドエフェクタを前記第1腕部の先端部から前記第1距離よりも大きな第2距離だけ離間した位置において保持し、前記把持部材と前記エンドエフェクタとの間に開放空間を与えるエンドエフェクタ保持部材と、を有する、ロボットが適用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンドエフェクタへの線条体の接続作業の安定性・信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のロボットの構成の一例を表す斜視図である。
図2図1に示したロボットの側面図である。
図3】第6アームの先端側に設けられる一実施形態の要部構造を表す斜視図である。
図4図3中のIV方向から見た側面図である。
図5図3中のV方向から見た斜視図である。
図6】継手用プレートの詳細構造を表す図3と同方向からの斜視図である。
図7図5に示す構造の一部を破断して示す透視図である。
図8】線条体の接続作業工程を表す説明図である。
図9】線条体を2分割構造とせずゴムブッシュでシールしつつ把持する変形例の要部構造を表す斜視図である。
図10図9中のX方向から見た側面図である。
図11図9中のXI方向から見た斜視図である。
図12図11に示す構造の一部を破断して示す透視図である。
図13】コネクタ用プレート及び防水コネクタの詳細構造を表す、図9と同方向からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<1.ロボット及びロボットシステムの全体構成>
図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るロボット1の全体構成の一例について説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、ロボット1は、第1軸A11、第2軸A12、第3軸A13、第4軸A14、第5軸A15、及び第6軸A16の、6つの回転軸を有する6軸のロボットである。ロボット1は、各軸に対応する関節部を有しており、各関節部を駆動するアクチュエータ(図示せず)によって各アームを旋回又は回転させることで姿勢を変更する。なお、図1に示した6軸のロボットは、ロボット1の一例であり、軸数が6軸以外のロボットを用いることとしてもよい。
【0012】
ロボット1は、基端側から先端側へ向けて、ベース部10と、第1アーム11と、第2アーム12と、第3アーム13と、第4アーム14と、第5アーム15と、第6アーム16と、を備える。
【0013】
ベース部10は、例えば適宜の設置用部材へ固定される。
【0014】
第1アーム11は、図1に示す第1軸A11まわりに回転可能にベース部10に基端側が支持される。第2アーム12は、第1軸A11と垂直な第2軸A12まわりに旋回可能に第1アーム11の先端側に基端側が支持される。
【0015】
第3アーム13(第4腕部の一例)は、第2軸A12と平行な第3軸A13まわりに旋回可能に第2アーム12の先端側に基端側が支持される。第4アーム14(第3腕部の一例)は、第3軸A13と垂直な第4軸A14(第3軸心の一例)まわりに回転可能に第3アーム13の先端側に基端側が支持される。
【0016】
第5アーム15(第2腕部の一例)は、第4軸A14に所定角度傾いて交差する第5軸A15(第2軸心の一例)まわりに回転可能に第4アーム14の先端側に基端側が支持される。第6アーム16(第1腕部の一例)は、第5軸A15に所定角度傾いて交差する第6軸A16(第1軸心の一例)まわりに回転可能に第5アーム15の先端側に基端側が支持される。
【0017】
ロボット1の先端のアームである第6アーム16には、エンドエフェクタ100(後述の図3図5等参照)を着脱可能である。なお、ロボット1は、取り付けられるエンドエフェクタ100の種類によって、例えば、塗装、溶接、組立、加工等、多種多様な用途に使用することが可能である。本実施形態では、以下、エンドエフェクタ100として塗装ガン(以下適宜、「塗装ガン100」と称する)が取り付けられる、いわゆる塗装ロボットを例にとって説明する。
【0018】
第1アーム11、第2アーム12、第3アーム13、第4アーム14、第5アーム15、及び、第6アーム16は、それぞれ、内部空間である中空部11A、中空部12A、中空部13A(第4中空部の一例)、中空部14A(第3中空部の一例)、中空部15A(第2中空部の一例)、及び、中空部16A(第1中空部の一例)、をそれぞれ備えている。これら中空部11A~16Aは、互いに隣接する者同士が互いに連通しており、結果として、中空部11A~16A全体が連通している。これら中空部11A~16Aのうち少なくとも中空部13A,14A,15A、16Aには、塗装ガン100に接続する各種ケーブルや塗料チューブなどの線条体90が連続して引きまわされており、これによって線条体90は外部に露出することなく塗装ガン100へと導かれる。なお、線条体90は、第3アーム13の内部の中空部13A内において、結束部材91によって互いに束ねられて第3アーム13に固定されている。この結束部材91よりも塗装ガン100側の中空部では線条体90は束ねられず、また固定されていない。すなわち、中空部13Aにおける結束部材91よりも図3中の右側、中空部14A、中空部15A、中空部16A、においては、線条体90はどこにも固定されず、上記アクチュエータの駆動によるロボット1の姿勢の変化に応じて、適宜に長手方向等に沿って摺動する構成となっている。
【0019】
<エンドエフェクタの支持構造、及び、線条体の配線構造>
上記基本構成の本実施形態の要部は、エンドエフェクタである塗装ガン100の支持構造、及び、その塗装ガン100までの線条体の配線構造にある。以下、その詳細を図3図7により説明する。
【0020】
図3は、第6アーム16の先端側に設けられる上記要部構造を表す斜視図であり、図4図3中のIV方向から見た側面図であり、図5図3中のV方向から見た斜視図である。これら図3図5において、第6アーム16の先端部には、塗装ガン100を取り付けるためのガンホルダー101(エンドエフェクタ保持部材の一例)が設けられる。
【0021】
<ガンホルダー>
ガンホルダー101は、フランジプレート101A(カバー部材の一例)と、アーム101Bと、ホルダー本体101Cと、一体的に備えている。
【0022】
フランジプレート101Aは、第6アーム16の先端部に、上記中空部16Aを臨む開口部(図示せず)を塞ぐようにボルト101bにより固定される。ホルダー本体101Cは、塗装ガン100が、その長手方向が上記第6軸A16と略垂直な方向となるように適宜の取付具により取り付けられる。アーム101Bは、その長手方向が上記第6軸A16と略平行な方向となるように延びており、第6アーム16の先端部から塗装ガン100までの離間距離L2(第2距離の一例)を確保できる長さを備えている。
【0023】
<円筒ブラケット>
フランジプレート101Aの塗装ガン100側には、円筒ブラケット102(筒部材の一例)が設けられる。円筒ブラケット102は、筒本体102Aと、筒本体102Aの第6アーム16側に位置するフランジ部102Bと、筒本体102Aの塗装ガン100側に位置するフランジ部102Cと、を一体的に備えている。フランジ部102Bは、ボルト102aを介してフランジプレート101Aに固定される。
【0024】
フランジプレート101Aの径方向中央部には開口101aが設けられており、中空部16A内を這いまわされてきた上記線条体90は、この開口101aを介して円筒ブラケット102の筒本体102Aの内部へと引き出される。円筒ブラケット102の筒本体102Aは、第6アーム16の先端部からフランジ部102Cの塗装ガン100側の端部までの軸方向(図4の左右方向)の距離L1(第1距離の一例)を確保できるような長さを備えている。
なお、円筒ブラケット102の軸方向に沿った長さは、確保される上記距離L1が、前述のように結束部材91において固定されている線条体90が上記ロボット1の姿勢変化によって第6アーム16の先端部から這い出し得る最小の実長さ寸法よりも小さくなるようにあらかじめ設定されている。その長さは、例えば80[mm]である。
【0025】
<継手用プレート>
円筒ブラケット102のフランジ部102Cの塗装ガン100側の端部には、継手用プレート150がボルト151を介して着脱可能に取り付けられる。すなわち、この例では、継手用プレート150は、円筒ブラケット102の先端側の開口部を塞ぐ構造部材として機能する。なお、当該開口部を塞ぐ構造部材を、継手用プレート150とは別に設けてもよい。継手用プレート150の詳細構造を表す図3と同方向からの斜視図を図6に、図5に示す構造の一部を破断して示す透視図を図7に示す。
【0026】
図6及び図7において、継手用プレート150は、第6アーム16側に位置する(言い換えれば円筒ブラケット102側)に位置する第1面150Aと、塗装ガン100側に位置する第2面150Bと、第1面150Aから第2面150Bにわたって貫通する、上記ボルト151用の貫通孔150aと、を備えている。
【0027】
第1面150Aには複数(この例では4つ)のプラグ155a~d(第1継手の一例)が設けられ、第2面150Bにはそれらプラグ155a~dとそれぞれ連通する、複数(この例では4つ)のプラグ156a~d(第2継手の一例)が設けられている。なお、以下、プラグ155a~dそれぞれを区別しない場合は単に「プラグ155」と総称し、プラグ156a~dそれぞれを区別しない場合は単に「プラグ156」と総称する。なお、継手用プレート150と、プラグ155a~dと、プラグ156a~dとが、把持部材の一例を構成している。
【0028】
第1面150Aのプラグ155には、円筒ブラケット102の内部へ引き出されてきた線条体90が接続される。すなわち、前述のように円筒ブラケット102の筒本体102Aの内部で延設される複数の線条体90(第1部分の一例)が、円筒ブラケット102の先端部において継手用プレート150によって把持されることとなる。なお、以下適宜、上記第1部分に相当する線条体90を「線条体90a」と称する場合がある(図示も同様)。一方、第2面150Bのプラグ156には、上記複数の線条体90aそれぞれに対応する複数の線条体90(第2部分の一例)がそれぞれ接続される。それら複数の線条体90の継手用プレート150と反対側は、塗装ガン100の対応する端子100aへとそれぞれ接続される。なお、以下適宜、上記第2部分に相当する線条体90を「線条体90b」と称する場合がある(図示も同様)。
【0029】
言い換えれば、第1アーム11~第6アーム16の中空部11A~16Aから円筒ブラケット102を介し塗装ガン100へと導かれる複数の線条体90それぞれは、上記第1部分である線条体90aと上記第2部分である線条体90bとに分割されている。そして、それら線条体90aと線条体90bとの間がプラグ155及びプラグ156を介し連結されている。
【0030】
なお、上記構成において、プラグ155,156における線条体90a,90bとのシールは、例えばシール剤、Oリング等を用いた通常の手法により行えば足りる。また、円筒ブラケット102の外径D1及び継手用プレート150の外径D2は、第6アーム16の最大外径D以下となるように設定されている。
【0031】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のロボット1は、第6アーム16の中空部16Aから出されたケーブルやチューブ等の線条体90が、円筒ブラケット102の内部に通される。円筒ブラケット102は第6アーム16の先端部に設けられ、先端部から上記距離L1を確保できる長さを備えている。その円筒ブラケット102の先端に継手用プレート150が設けられており、線条体90は、円筒ブラケット102の先端部において継手用プレート150により把持される。そして円筒ブラケット102によって線条体90に対する防塵が図られる。
【0032】
一方、最終的に線条体90が接続される塗装ガン100が、第6アーム16の先端部から離間距離L2だけ離れた位置においてガンホルダー101によって保持される。このとき、離間距離L2は上記距離L1よりも大きくなっており、これによって、継手用プレート150と塗装ガン100との間に、(離間距離L2-距離L1)の長さに相当する開放空間Rが形成される。
【0033】
この結果、第6アーム16に対する塗装ガン100の取付及び線条体90の接続作業の際には、図8(a)~(f)に示すような以下の段取りで行うことができる。
【0034】
すなわち、図8(a)に示すようなガンホルダー101によって塗装ガン100が保持された状態から、まず、図8(b)に示すように、第6アーム16の先端部に円筒ブラケット102を固定する。その後、図8(c)に示すように、第6アーム16の中空部16Aから延びてきた線条体90aを円筒ブラケット102の中で曳き延ばし円筒ブラケット102の先端部から引き出す。その後、図8(d)及び図8(e)に示すように、上記引き出された線条体90aを、円筒ブラケット102の先端部において(言い替えれば第6アーム16の先端部から距離L1の位置において)継手用プレート150により把持する。そして、図8(f)に示すように、ガンホルダー101により第6アーム16の先端部から離間距離L2の位置まで離れて配置されている塗装ガン100に対し、上記継手用プレート150により把持されている線条体90bの先端部を接続する。なお、塗装ガン100は、必ずしも上記図8(a)のように最初からガンホルダー101により保持されている必要はなく、線条体90bが接続される直前まで(すなわち図8(f)の直前まで)のどこかの段階において保持されていれば足りる。
【0035】
本実施形態によれば、予め、線条体90aが第6アーム16の先端部から上記距離L1の位置にて把持されるとともにそれより遠い離間距離L2の位置にて塗装ガン100が取り付けられ、かつそれらの間に上記開放空間Rが確保された状態で、塗装ガン100への線条体90bの接続作業を行うことができる(図8(e)、図8(f)参照)。この結果、線条体90bの接続作業を容易に行うことができるので、良好な施工性・メンテナンス性を確保でき、作業の安定性・信頼性を向上することができる。
【0036】
また、第6アーム16から延びてくる線条体90aが継手用プレート150の位置でいったん把持されているため、第6アーム16を末端側に備えるロボット1の姿勢が変化した場合等においても、継手用プレート150よりも先端側の線条体90bにはそのロボット1の姿勢変化の影響が及ばない。言い換えればロボット1の姿勢変化等の影響は、継手用プレート150よりも第6アーム16側の線条体90aにおいて吸収することができる。したがって、継手用プレート150よりも先端側の線条体90bにおいてあまり余長を設ける必要がなくなり、線条体90bの長さを抑制することができる(図8(f)参照)。
線状体90bの余長を抑制することにより、前記ロボット1の動作に伴う線条体90bの揺れや変形に基づく他部材への干渉のリスクや線条体90b自身への特に接続部への負荷を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では特に、フランジプレート101Aが第6アーム16の中空部16Aの開口を塞ぐことにより、第6アーム16内への防塵を図ることができる。特にエンドエフェクタとして塗装ガン100を使用する塗装ロボット1である場合に、塗料が中空部16Aに侵入し、アーム内で乾燥した塗料がアームの回転により中空部16A内の関節摺動部シール部材やケーブルやチューブ等と擦れ耐久性に悪影響が出るのを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態では特に、継手用プレート150が円筒ブラケット102の先端に取り付けられることにより、第6アーム16の先端部から継手用プレート150まで延設される線条体90aを円筒ブラケット102によって確実に覆い、線条体90aに対し確実な防塵を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態では特に、上記距離L1に対応した円筒ブラケット102の軸方向長さが、線条体90aの這い出し可能な最小の実長さ寸法よりも短く設定されている。例えば本実施形態では、ロボット1の姿勢、特には第4アーム14、第5アーム15、第6アーム16の姿勢に関わらず、円筒ブラケット102の先端側から線条体90aの這い出しが常に可能となるように、上記距離L1に対応する円筒ブラケット102の軸方向長さ寸法が設定されている。これにより、円筒ブラケット102の内部において線条体90aに若干弛みを持たせることができる(図8(e)及び図8(f)参照)。この結果、ロボット1の姿勢が変化するのに応じて第6アーム16及び円筒ブラケット102の内部において線条体90aが長さ方向に摺動する場合にも、その摺動の影響を上記弛みによって吸収することができる。また特に、円筒ブラケット102の先端から線条体90aが確実に這い出し可能とすることで、継手用プレート150を円筒ブラケット102に固定するとき、ロボットの姿勢によって線条体90aが最も基部側に引っ張られた状態であっても、線条体90aが緩んだ状態で取り付けを行うことができる。その結果、線条体90aと継手用プレート150とが確実に組み付け可能となる(図8(d)参照)。
【0040】
また、本実施形態では特に、線条体90は、第6アーム16の中空部16Aから引き出されて継手用プレート150に至る線条体90aと、継手用プレート150から塗装ガン100に至る線条体90bと、の2分割構造を備えている。また、継手用プレート150は、第6アーム16側に設けられ、線条体90aが取り付けられるプラグ155と、塗装ガン100側にプラグ155と連通して設けられ、線条体90bが取り付けられるプラグ156とを備えている。
【0041】
これにより、第6アーム16に対する塗装ガン100の取付及び線条体90の接続作業の際には、まず、第6アーム16の先端部に円筒ブラケット102を固定し(前述の図8(a)及び図8(b)参照)、第6アーム16の中空部16Aから延びてきた線条体90の線条体90aを円筒ブラケット102の中で曳き延ばし円筒ブラケット102の先端部から引き出す(図8(c)参照)。その後、引き出された線条体90の線条体90aをプラグ155に接続することで継手用プレート150により把持し(図8(d)参照)、線条体90aが第6アーム16側に接続された継手用プレート150を、線条体90aを円筒ブラケット102の内部に押し込みつつ円筒ブラケット102の先端部に取り付ける(図8(e)参照)。そして、上記継手用プレート150のプラグ156に線条体90bの第6アーム16側を接続した後、その線条体90bの先端部を、ガンホルダー101により離れて配置されている塗装ガン100に接続する(図8(f)参照)。
【0042】
以上のように、予め、線条体90aがプラグ155で把持されて継手用プレート150と塗装ガン100との間に開放空間Rが確保された状態で、線条体90bにより、プラグ156と塗装ガン100との間を接続することができる。この結果、線条体90bの接続作業をさらに容易に行うことができ、作業の安定性・信頼性を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態では特に、継手用プレート150は、円筒ブラケット102の先端側の開口部を塞ぐ構造部材を兼ねている。継手用プレート150が円筒ブラケット102の開口部を塞ぐことにより、円筒ブラケット102の内部への防塵を確実に図ることができる。
【0044】
また、本実施形態では特に、ロボット1の腕部が、少なくとも、第3アーム13、第4アーム14、第5アーム15、第6アーム16を備える多関節構造となっており、それぞれの内部に備えられる中空部13A、中空部14A、中空部15A、中空部16A内にて線条体90aが引き回されている。そしてその際、線条体90aは、第3アーム13内に設けた結束部材91によって束ねられて第3アーム13に固定されている(図2参照)。
【0045】
線条体90aが、第6アーム16から遠い第3アーム13内にて結束部材91で固定されることにより、ロボット1の姿勢が変化した際に、その結束部材91よりも塗装ガン100側の線条体90aが上記第4アーム14~第6アーム16内を摺動してその姿勢変化の影響を吸収し、破断等を防止できる。実施形態においては、このように線条体90aがロボット1の姿勢変化により摺動するよう構成されているものの、上記継手用プレート150の位置で把持されることにより、継手用プレート150よりも先端側の線条体90bにその姿勢変化の影響が及ばないようにすることができる。すなわち、前述したように、ロボット1の姿勢変化等の影響を、継手用プレート150よりも反塗装ガン100側の線条体90aにおいて確実に吸収することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0047】
(1)線条体を2分割構造とせずゴムブッシュでシールしつつ把持する場合
本変形例の要部構造を図9図13により説明する。図9は、第6アーム16の先端側に設けられる本変形例の上記要部構造を表す斜視図であり、図10図9中のX方向から見た側面図であり、図11図9中のXI向から見た斜視図であり、図12は、図11に示す構造の一部を破断して示す透視図であり、それぞれ、上記実施形態の図3図4図5図7に対応する図である。
【0048】
本変形例においては、ガンホルダー101及び円筒ブラケット102の構成は上記実施形態と同様である。すなわち、ガンホルダー101のアーム101Bは、第6アーム16の先端部から塗装ガン100までの上記離間距離L2を確保できる長さを備えている。円筒ブラケット102の筒本体102Aは、第6アーム16の先端部からフランジ部102Cの塗装ガン100側の端部までの軸方向の上記距離L1を確保できる長さを備えている。
【0049】
<コネクタ用プレート>
本変形例では、円筒ブラケット102のフランジ部102Cの塗装ガン100側の端部には、コネクタ用プレート250がボルト251を介して着脱可能に取り付けられる。コネクタ用プレート250には、防水コネクタ300が設けられる。なお、本変形例では、コネクタ用プレート250と、防水コネクタ300とが、把持部材の一例に相当している。
【0050】
コネクタ用プレート250及び防水コネクタ300の詳細構造を表す、図9と同方向からの斜視図を図13に示す。
【0051】
図13及び前述の図9図12において、コネクタ用プレート250は、上記フランジ部102Cへの固定時にボルト251を貫通させるための貫通孔250aを備えている。なお、本変形例では、コネクタ用プレート250の外径D3が、円筒ブラケット102の外径D1と同様、第6アーム16の最大外径D以下となるように設定されている。
【0052】
防水コネクタ300は、第1コネクタ部材260と、第2コネクタ部材270と、ゴムブッシュ280と、を備えている。
【0053】
第1コネクタ部材260及び第2コネクタ部材270は、この例では、第1コネクタ部材260の第2コネクタ部材270側の部位に設けた雄ねじ部に対し、第2コネクタ部材270の第1コネクタ部材260側の部位に設けた雌ねじ部が螺合可能になっている。なお、第1コネクタ部材260側に設けた雌ねじ部に対し第2コネクタ部材270に設けた雄ねじ部が螺合する構成であってもよい。これらコネクタ部材260,270が、互いに螺合する2部材により構成される締結体の一例に相当している。
【0054】
ゴムブッシュ280(弾性部材の一例)は、この例では略円板形状を備えており、上記複数の線条体90をそれぞれ貫通させる複数の開口部281を備えている。なお、開口部281は、図示のようなゴムブッシュ280の略円板形状の外周部に接しない貫通孔として形成されていてもよいし、外周部から切れ込んだ切れ込み又はスリットとして形成されていてもよい。ゴムブッシュ280は、各開口部281それぞれに対応する線条体90が通された状態で(図12参照)、互いに螺合する第1コネクタ部材260と第2コネクタ部材270との間に挟まれるように挿入配置されている。そして、ゴムブッシュ280は、上記コネクタ部材260,270が螺合して緊締されることによる弾性変形(潰れ)によって、開口部281と線条体90との密着度を増加させてシール性を向上させるようになっている、
【0055】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。すなわち、コネクタ用プレート250と塗装ガン100との間に、(離間距離L2-距離L1)の長さに相当する開放空間Rが形成され(図9図10図12参照)、その開放空間Rが確保された状態で、塗装ガン100への線条体90接続作業を行うことができる。この結果、線条体90接続作業を容易に行うことができるので、作業の安定性・信頼性を向上することができる。また、第6アーム16から延びてくる線条体90がコネクタ用プレート250の位置でいったん把持されているため、コネクタ用プレート250よりも先端側の線条体90にはロボット1の姿勢変化の影響が及ばない。したがって、コネクタ用プレート250よりも先端側の線条体90においてあまり余長を設ける必要がなくなり、線条体90の長さを抑制することができる。
【0056】
また、本変形例では特に、第6アーム16に対する塗装ガン100の取付及び線条体90の接続作業の際には、まず、第6アーム16の先端部に円筒ブラケット102を固定し、第6アーム16の中空部16Aから延びてきた線条体90を円筒ブラケット102の中で曳き延ばし円筒ブラケット102の先端部から引き出す。そして、引き出された線条体90をまだ緊締していない状態の第1コネクタ部材260及び第2コネクタ部材270の中を通した後、それらコネクタ部材260,270が円筒ブラケット102の先端部近傍に位置した状態で緊締することで、線条体90とゴムブッシュ280との間のシールを行う。ゴムブッシュ280によるシールを行ったコネクタ部材260,270を、線条体90の第6アーム16側を円筒ブラケット102の内部に押し込みつつ円筒ブラケット102の先端部に取り付けることで、線条体90を前述の距離L1となる位置でコネクタ用プレート250により把持する。そして、取り付けられたコネクタ用プレート250よりも塗装ガン100側に延び出ている線条体90の残り部分を、ガンホルダー101により離れて配置されている塗装ガン100に接続する。
【0057】
以上のように、本変形例においても、上記実施形態と同様、予め、線条体90が円筒ブラケット102先端部に取り付けたコネクタ用プレート250で把持されてコネクタ用プレート250と塗装ガン100との間に上記開放空間Rが確保された状態で、線条体90の残り部分を塗装ガン100に接続することができる。この結果、線条体90の接続作業をさらに容易に行うことができ、作業の安定性・信頼性を向上することができる。
【0058】
(2)その他
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0059】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0060】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態及び変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0061】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態等は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 ロボット
13 第3アーム(第4腕部の一例)
13A 中空部(第4中空部の一例)
14 第4アーム(第3腕部の一例)
14A 中空部(第3中空部の一例)
15 第5アーム(第2腕部の一例)
15A 中空部(第2中空部の一例)
16 第6アーム(第1腕部の一例)
16A 中空部(第1中空部の一例)
90 線条体
90a 線条体(第1部分の一例)
90b 線条体(第2部分の一例)
91 結束部材
100 塗装ガン(エンドエフェクタの一例)
101 ガンホルダー(エンドエフェクタ保持部材の一例)
101A フランジプレート(カバー部材の一例)
102 円筒ブラケット(筒部材の一例)
150 継手用プレート(把持部材の一例)
155 プラグ(第1継手、把持部材の一例)
156 プラグ(第2継手、把持部材の一例)
250 コネクタ用プレート(把持部材の一例)
260 第1コネクタ部材(締結体の一例)
270 第2コネクタ部材(締結体の一例)
280 ゴムブッシュ(弾性部材の一例)
281 開口部
300 防水コネクタ(把持部材の一例)
A14 第4軸(第3軸心の一例)
A15 第5軸(第2軸心の一例)
A16 第6軸(第1軸心の一例)
D 第6アームの最大外径
D1 円筒ブラケットの外径
D2 継手用プレートの外径
D3 コネクタ用プレートの外径
L1 第6アームの先端部から円筒ブラケットの塗装ガン側の端部までの軸方向距離(第1距離の一例)
L2 第6アームの先端部から塗装ガンまでの離間距離(第2距離の一例)
R 開放空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13