(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154312
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241023BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068081
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 義人
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050DA11
5H050EA23
5H050FA03
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】正極活物質層及び負極活物質層のサイズが適切でないことによる不具合の発生を抑制できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置は、積層された複数の電極ユニット100を備え、複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔の他方の面に形成された負極活物質層130と、を有し、正極活物質層は、外周部に、中央部と比較して正極活物質層中に含まれる樹脂の含有率が高い樹脂高含有部121を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電極ユニットを備え、
前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層は、外周部に、中央部と比較して前記正極活物質層中に含まれる樹脂の含有率が高い樹脂高含有部を有する
蓄電装置。
【請求項2】
前記樹脂高含有部は、加熱により接着性を有する樹脂を含む
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記樹脂高含有部は、紫外線を照射することにより硬化する樹脂を含む
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記複数の電極ユニットは、隣り合う2つの電極ユニットを有し、
前記2つの電極ユニットの一方が有する前記正極活物質層における前記樹脂高含有部と他の部分との境界は、前記2つの電極ユニットの他方が有する前記負極活物質層の端縁と同じ位置、または、当該端縁よりも内側に配置される
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記負極活物質層は、外周部に、中央部と比較して前記負極活物質層中に含まれる樹脂の含有率が高い樹脂高含有部を有する
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記複数の電極ユニットは、隣り合う2つの電極ユニットを有し、
前記2つの電極ユニットの一方が有する前記正極活物質層における前記樹脂高含有部と他の部分との境界は、前記2つの電極ユニットの他方が有する前記負極活物質層における前記樹脂高含有部と他の部分との境界と同じ位置、または、当該境界よりも内側に配置される
請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記複数の電極ユニットは、隣り合う2つの電極ユニットを有し、
前記2つの電極ユニットが有する集電箔同士の間にはシール部が設けられており、
前記シール部は、前記2つの電極ユニットの一方が有する正極活物質層及び前記2つの電極ユニットの他方が有する負極活物質層の周囲に配置されており、
前記樹脂高含有部の一部は、前記シール部と一体化されている
請求項1または2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集電体のうちの正極集電体の表面に正極活物質層が配置され、負極集電体の表面に負極活物質層が配置された蓄電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄電装置において、正極活物質層及び負極活物質層のサイズが適切でないと、不具合を生じるおそれがある。正極活物質層及び負極活物質層を同じサイズで形成するのが好ましいが、正極活物質層及び負極活物質層を同じサイズで形成するのは困難な場合が多い。このため、正極活物質層よりも負極活物質層のサイズを大きくすることが一般的であるが、負極活物質層のサイズが大きいと、負極活物質層が正極活物質層からはみ出している部分(正極活物質層には対向していない部分)が存在するため、エネルギー密度が低下するおそれがある。負極活物質層よりも正極活物質層のサイズが大きいと、電析等の不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、正極活物質層及び負極活物質層のサイズが適切でないことによる不具合の発生を抑制できる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記正極活物質層は、外周部に、中央部と比較して前記正極活物質層中に含まれる樹脂の含有率が高い樹脂高含有部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明における蓄電装置によれば、正極活物質層及び負極活物質層のサイズが適切でないことによる不具合の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る蓄電装置が有する電極ユニットの構成を示す斜視図及び断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法のうちの電極ユニットの製造方法における製造工程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る蓄電装置の製造方法のうちの電極ユニットを積層する工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の変形例1に係る電極ユニットが積層された構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態の変形例2に係る電極ユニットが積層された構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の変形例3に係る電極ユニットが積層された構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の変形例4に係る蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、蓄電パックの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る蓄電装置は、積層された複数の電極ユニットを備え、前記複数の電極ユニットのそれぞれは、少なくとも、集電箔と、前記集電箔の一方の面に形成された正極活物質層と、前記集電箔の他方の面に形成された負極活物質層と、を有し、前記正極活物質層は、外周部に、中央部と比較して前記正極活物質層中に含まれる樹脂の含有率が高い樹脂高含有部を有する。
【0010】
これによれば、蓄電装置において、正極活物質層の外周部に、中央部と比較して樹脂の含有率が高い樹脂高含有部を設ける。これにより、正極活物質層のサイズが大きい場合でも、正極活物質層の外周部における活物質としての機能を抑制できる。したがって、負極活物質層よりも正極活物質層のサイズが大きくても、電析等の不具合の発生を抑制できるため、正極活物質層及び負極活物質層のサイズが適切でないことによる不具合の発生を抑制できる。
【0011】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記樹脂高含有部は、加熱により接着性を有する樹脂を含む、としてもよい。
【0012】
これによれば、正極活物質層の外周部に当該樹脂を配置して加熱することにより、容易に、正極活物質層の外周部に樹脂高含有部を配置できる。
【0013】
(3)上記(1)または(2)に記載の蓄電装置において、前記樹脂高含有部は、紫外線を照射することにより硬化する樹脂を含む、としてもよい。
【0014】
これによれば、正極活物質層の外周部に当該樹脂を配置して紫外線を照射することにより、容易に、正極活物質層の外周部に樹脂高含有部を配置できる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記複数の電極ユニットは、隣り合う2つの電極ユニットを有し、前記2つの電極ユニットの一方が有する前記正極活物質層における前記樹脂高含有部と他の部分との境界は、前記2つの電極ユニットの他方が有する前記負極活物質層の端縁と同じ位置、または、当該端縁よりも内側に配置される、としてもよい。
【0016】
これによれば、正極活物質層における樹脂高含有部と他の部分との境界を、負極活物質層の端縁と同じ位置、または、当該端縁よりも内側に配置する。これにより、正極活物質層のうちの活物質としての機能が抑制されない当該他の部分を、負極活物質層と同じ位置、または、負極活物質層の端縁よりも内側に配置できる。したがって、正極活物質層の方が負極活物質層よりもサイズが大きいことによる電析を抑制できる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記負極活物質層は、外周部に、中央部と比較して前記負極活物質層中に含まれる樹脂の含有率が高い樹脂高含有部を有する、としてもよい。
【0018】
これによれば、負極活物質層の外周部に、中央部と比較して樹脂の含有率が高い樹脂高含有部を設けることで、負極活物質層のサイズが大きい場合でも、負極活物質層の外周部における活物質としての機能を抑制できる。
【0019】
(6)上記(5)に記載の蓄電装置において、前記複数の電極ユニットは、隣り合う2つの電極ユニットを有し、前記2つの電極ユニットの一方が有する前記正極活物質層における前記樹脂高含有部と他の部分との境界は、前記2つの電極ユニットの他方が有する前記負極活物質層における前記樹脂高含有部と他の部分との境界と同じ位置、または、当該境界よりも内側に配置される、としてもよい。
【0020】
これによれば、正極活物質層における樹脂高含有部と他の部分との境界を、負極活物質層における樹脂高含有部と他の部分との境界と同じ位置、または、当該境界よりも内側に配置することで、電析を抑制できる。
【0021】
(7)上記(1)から(6)のいずれかひとつに記載の蓄電装置において、前記複数の電極ユニットは、隣り合う2つの電極ユニットを有し、前記2つの電極ユニットが有する集電箔同士の間にはシール部が設けられており、前記シール部は、前記2つの電極ユニットの一方が有する正極活物質層及び前記2つの電極ユニットの他方が有する負極活物質層の周囲に配置されており、前記樹脂高含有部の一部は、前記シール部と一体化されている、としてもよい。
【0022】
これによれば、蓄電装置において、樹脂高含有部の一部をシール部と一体化することで、部品点数を低減でき、構成を簡易化できる。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置等について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0024】
以下の説明及び図面中において、蓄電装置の長手方向、または、蓄電装置の一対の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。蓄電装置の一対の長側面の対向方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の厚み方向、複数の電極ユニットの積層方向、集電箔及び活物質層の積層方向、一対のエンド部材の並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0025】
以下の説明において、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。単にX軸方向という場合は、X軸プラス方向及びX軸マイナス方向の双方向またはいずれか一方の方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行であるとは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。以下の説明において、「絶縁」と表現する場合、「電気的な絶縁」を意味する。
【0026】
(実施の形態)
[1 蓄電装置10の全般的な説明]
まず、本実施の形態における蓄電装置10の全般的な説明を行う。
図1は、本実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る蓄電装置10の内部構成を示す断面図である。具体的には、
図2は、
図1の蓄電装置10を、II-II線を通るYZ平面で切断した場合の断面図である。
図2は、蓄電装置10が備える各構成要素を示している。
図3は、本実施の形態に係る蓄電装置10が有する電極ユニット100の構成を示す斜視図及び断面図である。具体的には、
図3の(a)は、電極ユニット100の外観を示す斜視図である。
図3の(b)は、
図3の(a)の電極ユニット100を、IIIb-IIIb線を通るYZ平面で切断した場合の構成を示す断面図である。
図3では、説明の便宜のため、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0027】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる装置である。本実施の形態における蓄電装置10は、略直方体形状を有している。具体的には、蓄電装置10は、バイポーラ電池である。蓄電装置10は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電装置10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0028】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置10は、複数の電極ユニット100と、エンドユニット101及び102と、複数のセパレータ140と、一対のエンド部材300と、を備えている。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102のそれぞれは、平面視で矩形状の板状部位であり、Z軸方向に積層されている。本実施の形態での平面視とは、積層方向(Z軸方向)から見た場合のことをいう。複数の電極ユニット100、エンドユニット101、及び、エンドユニット102が積層される方向(Z軸方向)を、積層方向とも称する。セパレータ140は、複数の電極ユニット100、エンドユニット101及び102のそれぞれの間に配置される。一対のエンド部材300は、積層方向(Z軸方向)において、複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102の両側に配置される。本実施の形態では、エンドユニット101とエンドユニット102との間に、2つの電極ユニット100が積層方向に積層されているが、電極ユニット100が積層される数は特に限定されない。電極ユニット100、エンドユニット101及びエンドユニット102等の平面視の形状も特に限定されない。
【0029】
[1.1 電極ユニット100の説明]
以下に、
図3も用いて、電極ユニット100の構成について、詳細に説明する。電極ユニット100は、1枚の集電箔の両面に活物質層が形成された1単位のユニットである。複数の電極ユニット100のそれぞれは、少なくとも、集電箔110と、集電箔110の一方の面に形成された正極活物質層120と、集電箔110の他方の面に形成された負極活物質層130と、シール部210と、を有している。本実施の形態では、電極ユニット100の厚み(積層方向の厚み)は、135μm~190μm程度である。
【0030】
集電箔110は、平面視が矩形状である板状部材である。集電箔110は、金属箔である。
図3に示すように、集電箔110は、積層方向(Z軸方向)に並ぶ2つの金属層111及び112を有している。金属層111及び112は、平面視で同じ大きさかつ同じ形状を有する板状の部位である。以下では、金属層111及び112のうちの、正極活物質層120が形成される金属層111を正極金属層111とも称し、負極活物質層130が形成される金属層112を負極金属層112とも称する。正極金属層111は、集電箔110のうちのZ軸プラス方向に位置する金属層であり、負極金属層112は、集電箔110のうちのZ軸マイナス方向に位置する金属層である。つまり、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112が互いに接続(接触または接合)された状態で、正極金属層111及び負極金属層112が積層方向に積層されて形成されている。正極金属層111及び負極金属層112は、一方が金属箔であり、他方が当該金属箔にメッキされるメッキ層でもよい。または、正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔でもよい。正極金属層111及び負極金属層112の双方が金属箔の場合、集電箔110は、2つの金属箔同士が接合されて形成されたクラッド材等であってもよいし、2つの金属箔同士が接合されることなく接続(接触)した状態で2つの金属箔を有していてもよい。
【0031】
正極金属層111の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属またはそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスから、正極金属層111の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。正極金属層111の形態としては、メッキ層でもよいが、加工性、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極金属層111としては、アルミニウム箔が好ましい。負極金属層112の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属またはそれらの合金が用いられ、これらの中でも、銅または銅合金が用いられるのが好ましい。負極金属層112の形態としては、メッキ層または箔(銅箔)が挙げられ、銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。集電箔110の厚み(積層方向の厚み)は、20μm~30μm程度である。正極金属層111の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~20μm程度であり、負極金属層112の厚み(積層方向の厚み)は、5μm~15μm程度である。
【0032】
正極活物質層120は、集電箔110の一方の表面(Z軸プラス方向の面)に形成された正極の活物質層である。具体的には、正極活物質層120は、正極金属層111上(正極金属層111の外面(Z軸プラス方向の面))に形成されている。正極活物質層120は、正極金属層111の形状に応じて、平面視で正極金属層111よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。平面視でサイズが小さい(または大きい)とは、XY平面の面積が小さい(または大きい)ことをいう。以下についても同様である。正極活物質層120の厚み(積層方向の厚み)は、70μm~100μm程度である。
【0033】
正極活物質層120は、正極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。正極活物質としては、LiM1O2(M1はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等の層状リチウム遷移金属酸化物、LiM22O4(M2はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のスピネル型リチウム遷移金属酸化物、LiM3PO4、LiM3SiO4、LiM3BO3(M3はLi、Fe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の金属元素)等のポリアニオン化合物等が挙げられる。正極活物質として、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質層120に含有される導電剤としては、導電性を有する限り、特に限定されない。導電剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然または人造の黒鉛などが挙げられる。バインダー(結着剤)としては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。
【0034】
負極活物質層130は、集電箔110の他方の表面(Z軸マイナス方向の面)に形成された負極の活物質層である。具体的には、負極活物質層130は、負極金属層112上(負極金属層112の外面(Z軸マイナス方向の面))に形成されている。負極活物質層130は、負極金属層112の形状に応じて、平面視で負極金属層112よりもサイズが小さい矩形状に形成されている。負極活物質層130の厚み(積層方向の厚み)は、45μm~60μm程度である。
【0035】
負極活物質層130は、負極活物質を含み、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいる。導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層120と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属または半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物または半金属酸化物;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0036】
シール部210は、正極活物質層120または負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部210は、正極活物質層120及び負極活物質層130の全周に亘って正極活物質層120及び負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部210は、集電箔110の外周部を覆うように、集電箔110の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部210は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材により形成されている。
【0037】
隣り合う2つの電極ユニット100が有するシール部210同士は、互いに接続されている。当該シール部210同士は、一体的に連続して形成されることで、互いに接続されていてもよいし、シール部210同士がヒートシール(熱溶着)、超音波溶着、レーザ溶着、または、接着剤等によって接合されることで、互いに接続されていてもよい。これにより、シール部210は、当該2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120及び当該2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の周囲に配置され、当該2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にはシール部210が設けられる。つまり、2つの電極ユニット100が有する集電箔110同士の間にシール部210が連続的に設けられ、集電箔110同士の間がシールされる。
【0038】
複数の電極ユニット100のそれぞれが有するシール部210の内側には、電解質層(図示省略)が形成されている。電解質層は、本実施の形態では、非水系の液体状の電解質(電解液)であるが、固体状の電解質(固体電解質)、または、ゲル状の電解質等でもよい。これら電解質としては、適宜公知のものを使用できる。電解液(非水電解質)としては、非水溶媒に電解質塩が溶解されたものを用いることができる。非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートなどを挙げることができる。電解質塩としては、リチウム塩が好ましい。上記リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)等の無機リチウム塩を挙げることができる。
【0039】
[1.2 エンドユニット101及び102の説明]
次に、エンドユニット101及び102の構成について、詳細に説明する。エンドユニット101は、複数の電極ユニット100のZ軸マイナス方向の端部に配置される。エンドユニット102は、複数の電極ユニット100のZ軸プラス方向の端部に配置される。エンドユニット101及び102は、複数の電極ユニット100をZ軸方向で挟み込む部位である。
【0040】
エンドユニット101は、少なくとも、正極金属層111と、正極金属層111のZ軸プラス方向の面に形成された正極活物質層120と、シール部220と、を有している。エンドユニット101が有する正極金属層111及び正極活物質層120は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110の正極金属層111及び正極活物質層120と同様の構成を有している。
【0041】
シール部220は、正極活物質層120の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部220は、正極活物質層120の全周に亘って正極活物質層120の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部220は、正極金属層111及びエンド部材300の外周部を覆うように、正極金属層111及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部220は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0042】
シール部220は、エンドユニット101に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部220とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット101の正極金属層111と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部220の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0043】
エンドユニット102は、少なくとも、集電箔110と、集電箔110のZ軸マイナス方向の面に配置された負極活物質層130と、シール部230と、を有している。エンドユニット102が有する集電箔110及び負極活物質層130は、上述した電極ユニット100が有する集電箔110及び負極活物質層130と同様の構成を有している。
【0044】
シール部230は、負極活物質層130の周囲に配置される部位である。本実施の形態では、シール部230は、負極活物質層130の全周に亘って負極活物質層130の周囲に配置される環状の部位である。具体的には、シール部230は、集電箔110及びエンド部材300の外周部を覆うように、集電箔110及びエンド部材300の外周部に沿って四角環状に形成されている。シール部230は、電極ユニット100が有するシール部210と同様の材質で形成されている。
【0045】
シール部230は、エンドユニット102に隣り合う電極ユニット100が有するシール部210と、互いに接続されている。シール部230とシール部210との接続は、上述のシール部210同士の接続と同様であるため、詳細な説明は省略する。これにより、エンドユニット102の集電箔110と電極ユニット100の集電箔110との間がシールされる。シール部230の内側には、上述の電解質層(図示省略)が形成されている。
【0046】
このように、シール部210、220及び230が互いに接続されて、シール部材200が構成される。シール部材200は、正極金属層111、負極金属層112、正極活物質層120、負極活物質層130、セパレータ140、及び、エンド部材300の全ての全周を囲うように配置され、これらと外部との間をシールする筒状(四角筒状)の部材である。
【0047】
[1.3 セパレータ140及びエンド部材300の説明]
セパレータ140は、樹脂からなる微多孔性のシートである。セパレータ140は、電極ユニット100同士の間、エンドユニット101と電極ユニット100との間、及び、エンドユニット102と電極ユニット100との間に、それぞれ配置される。具体的には、セパレータ140は、正極活物質層120と負極活物質層130との間に配置される。セパレータ140の材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ140として、これらの多孔質樹脂フィルムの表面にフィラーを含む層を形成した多層のフィルムであってもよい。セパレータ140は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが大きい矩形状に形成されている。本実施の形態では、セパレータ140のサイズは、平面視で集電箔110のそれよりも小さいが、平面視で集電箔110よりもサイズが大きくてもよい。セパレータ140の厚み(積層方向の厚み)は、15μm~20μm程度である。
【0048】
エンド部材300は、複数の電極ユニット100よりも、蓄電装置10における積層方向(Z軸方向)の端部に配置される部材である。本実施の形態では、一対のエンド部材300が、蓄電装置10の最もZ軸マイナス方向端部及び最もZ軸プラス方向端部に配置される。一対のエンド部材300は、エンドユニット101及び102(が有する正極金属層111)に接続される。これにより、一対のエンド部材300は、その間に位置する複数の電極ユニット100並びにエンドユニット101及び102等を、積層方向(Z軸方向)の両側から挟み込む。エンド部材300は、平板状の部材(エンドプレート)である。エンド部材300は、他の導電部材(バスバー、冷却板等。図示せず)を介して、他の蓄電装置10が有する他のエンド部材300と電気的に接続される。エンド部材300は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル等の金属製の導電部材若しくはそれらの組み合わせ、または、金属以外の導電性の部材等で形成されている。エンド部材300は、正極金属層111と接続されるため、アルミニウムなど、正極金属層111と同じ材質で形成されるのが好ましい。エンド部材300の厚み(積層方向の厚み)は、0.5mm~3mm程度である。蓄電装置10は、エンド部材300の外側(Z軸方向の外側)に他の導電部材を有していてもよい。
【0049】
以上の構成において、セパレータ140と、セパレータ140をZ軸方向で挟む正極活物質層120及び負極活物質層130と、これらをZ軸方向で挟む正極金属層111及び負極金属層112とを、1つの蓄電素子と称してもよい。この場合、蓄電装置10は、Z軸方向に積層された複数の蓄電素子がZ軸方向において一対のエンド部材300で挟まれ、これらの周囲がシール部材200で囲われた構成を有する蓄電素子群であるとも言える。
【0050】
[2 正極活物質層120の説明]
次に、電極ユニット100が有する正極活物質層120の構成について、さらに詳細に説明する。以下では、電極ユニット100が有する正極活物質層120の構成について説明するが、エンドユニット101が有する正極活物質層120についても、基本的な構成は同じである。
【0051】
図2及び
図3に示すように、正極活物質層120は、外周部に樹脂高含有部121を有している。正極活物質層120の外周部とは、正極活物質層120のうちの正極活物質層120の周縁(外周縁)を含む領域であって、当該周縁から幅3mm以内の領域である。つまり、正極活物質層120の外周部は、正極活物質層120の周囲(正極活物質層120のX軸プラス方向端部、X軸マイナス方向端部、Y軸プラス方向端部、及び、Y軸マイナス方向端部の全周)を囲うように配置される環状(四角環状)の部位である。正極活物質層120のうちの樹脂高含有部121以外の部位を、正極活物質層本体122と称す。正極活物質層本体122は、平面視で、四角環状の樹脂高含有部121の内側に位置し、外縁が樹脂高含有部121と隣り合って配置される矩形状の部位である。つまり、正極活物質層本体122は、正極活物質層120の大部分を占める正極活物質層120の本体部分である。
【0052】
樹脂高含有部121は、正極活物質層120の中央部と比較して正極活物質層120中に含まれる樹脂の含有率が高い部位である。正極活物質層120の中央部とは、正極活物質層120のうちの、平面視で正極活物質層120の中央に位置する部位である。つまり、正極活物質層120の中央部は、平面視で、正極活物質層120の中心を含む所定領域内の部位である。当該所定領域は、正極活物質層120の中心をその中心とし、X軸方向において正極活物質層120の長さの1/3~1/2の範囲内、かつ、Y軸方向において正極活物質層120の長さの1/3~1/2の範囲内に位置する領域である。正極活物質層120の中央部は、正極活物質層本体122に含まれる部位である。
【0053】
本実施の形態では、樹脂高含有部121は、樹脂高含有部121の他の部分である正極活物質層本体122と比較して、正極活物質層120中に含まれる樹脂の含有率が高い。つまり、樹脂高含有部121の単位量(単位質量)における樹脂の含まれる割合が、正極活物質層本体122の単位量(単位質量)における樹脂の含まれる割合よりも高い。具体的には、正極活物質層本体122には、正極活物質及びバインダー等の樹脂が含まれ、樹脂高含有部121には、当該正極活物質及びバインダー等の樹脂に加え、その他の樹脂も含まれる。樹脂高含有部121は、樹脂の含有率が高い(「その他の樹脂」が含まれる)ことで、正極活物質の機能が抑制される(リチウムイオン伝導性が抑制され(失活し)、放電容量が小さくなる)。樹脂の含有率は、比較対象の部位をそれぞれ取り出して、含まれる樹脂の量を計測することで比較する。
【0054】
樹脂の含有量が大きいと、活物質の機能をより確実に抑制できるため、樹脂高含有部121における樹脂の含有率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。つまり、樹脂高含有部121における樹脂の含有率は、50%以上100%未満であるのが好ましく、70%以上100%未満であるのがより好ましく、80%以上100%未満であるのがさらに好ましい。正極活物質層本体122における樹脂の含有率が小さいと、活物質特性に与える影響が小さくなるため、正極活物質層本体122における樹脂の含有率は、40%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。つまり、正極活物質層本体122における樹脂の含有率は、1%以上40%以下であるのが好ましく、1%以上20%以下であるのがより好ましく、1%以上10%以下であるのがさらに好ましい。
【0055】
樹脂高含有部121に含まれる樹脂(上記の「その他の樹脂」)は、正極活物質の機能を抑制する(リチウムイオン伝導性を抑制し失活させる)絶縁部材であれば、材質は特に限定されない。本実施の形態では、「その他の樹脂」は、加熱により接着性を有する樹脂、または、紫外線を照射することにより硬化する樹脂である。加熱により接着性を有する樹脂としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を原料とする接着性の強い変性ポリオレフィン等が挙げられる。当該変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに極性基を導入し、異種材料との接着性を付与したものである。紫外線を照射することにより硬化する樹脂としては、UV(紫外線)硬化性のエポキシ樹脂等が挙げられる。このように、樹脂高含有部121は、加熱により接着性を有する樹脂、または、紫外線を照射することにより硬化する樹脂を含む。
【0056】
樹脂高含有部121は、正極活物質層120の外周部に点在しているのではなく、正極活物質層120の外周部の全周に亘って連続的に配置されている。つまり、樹脂高含有部121は、正極活物質層120のX軸方向端部においては、Y軸方向の一端から他端までに亘って連続的に配置され、かつ、正極活物質層120のY軸方向端部におけるX軸方向の一端から他端までに亘って連続的に配置されている。樹脂高含有部121は、シール部材200(シール部210、220及び230)から離間して配置されている(シール部材200とは別体の部位である)。正極活物質層120の外周部の全周の一部に、樹脂高含有部121が配置されていない構成でもよい。
【0057】
本実施の形態では、外周部に樹脂高含有部121を有する正極活物質層120は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが大きく、樹脂高含有部121を除いた正極活物質層本体122は、平面視で負極活物質層130よりもサイズが小さい。つまり、平面視で、正極活物質層本体122の外縁(
図3の(b)の位置P)は、負極活物質層130の端縁(外縁)よりも内側に配置される。言い換えると、樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P)は、負極活物質層130の端縁(外縁)よりも内側に配置される。樹脂高含有部121の外縁(
図3の(b)の位置Q)は、平面視で負極活物質層130の端縁(外縁)よりも外側に配置される。上記の負極活物質層130の端縁(外縁)は、積層方向(Z軸方向)から見た場合の負極活物質層130の端縁(外縁)であり、積層方向(Z軸方向)と交差(直交)する方向における負極活物質層130の端縁(外縁)である。以下の説明においても同様である。
【0058】
[3 蓄電装置10の製造方法の説明]
次に、蓄電装置10の製造方法について、説明する。
図4は、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法のうちの電極ユニット100の製造方法における製造工程を示す断面図である。具体的には、
図4の(a)及び(b)は、集電箔110に正極活物質層120及び負極活物質層130を配置する工程を示し、
図4の(c)は、正極活物質層120の外周部に樹脂高含有部121を形成する工程を示している。
図5は、本実施の形態に係る蓄電装置10の製造方法のうちの電極ユニット100を積層する工程を示す断面図である。
図4及び
図5は、
図3の(b)に対応する図であり、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0059】
まず、
図4の(a)及び(b)に示すように、集電箔110に正極活物質層120及び負極活物質層130を配置する。
図4の(a)は、正極活物質層120と負極活物質層130とが、平面視で同じサイズで集電箔110に配置(塗工)された場合を示している。
図4の(b)は、平面視で正極活物質層120の方が負極活物質層130よりも大きなサイズで、集電箔110に配置(塗工)された場合を示している。電極ユニット100においては、平面視で負極活物質層130の方が正極活物質層120よりも大きなサイズで集電箔110に配置(塗工)されるのが好ましいが、
図4の(a)及び(b)のいずれの場合においても、その条件を満たさない。
【0060】
このため、
図4の(c)に示すように、
図4の(a)及び(b)のいずれの場合においても、正極活物質層120の外周部に樹脂高含有部121を形成する。具体的には、正極活物質層120の外周部の正極活物質が配置された部位に、樹脂(上記の「その他の樹脂」)をしみこませる。正極活物質層120の外周部に樹脂成型用の金型を押し当て、当該金型に「その他の樹脂」を流し込むことで、容易に、正極活物質層120の外周部に「その他の樹脂」をしみこませることができる。「その他の樹脂」が、加熱により接着性を有する樹脂の場合には、あらかじめ正極活物質層120の外周部を覆う形状に成形した樹脂シート(結着性の変性ポリオレフィンシート等)を、正極活物質層120の外周部に配置し、加熱し、溶融して、しみこませてもよい。「その他の樹脂」が、紫外線を照射することにより硬化する樹脂の場合には、当該樹脂を正極活物質層120の外周部にしみこませた後に、紫外線を照射して硬化させる。
【0061】
これにより、正極活物質層120の外周部に樹脂高含有部121が形成されて、電極ユニット100が製造される。樹脂高含有部121は、他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P)が負極活物質層130の端縁(外縁)よりも内側に配置され、外縁(位置Q)が、負極活物質層130の端縁(外縁)よりも外側に配置される。このように、正極活物質層120のうちの平面視で負極活物質層130から突出した部分に樹脂高含有部121が形成されることで、当該突出した部分における正極活物質の機能が抑制される。
【0062】
次に、
図5に示すように、製造された複数の電極ユニット100は、Z軸方向に積層される。具体的には、複数の電極ユニット100とエンドユニット101及び102とをセパレータ140を挟んでZ軸方向に積層し、一対のエンド部材300で挟み込むことで、蓄電装置10を製造する。この際、隣り合う2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120における樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P)は、2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の端縁(外縁)よりも内側に配置される。つまり、平面視で、一方の電極ユニット100の樹脂高含有部121と正極活物質層本体122との境界(位置P)は、他方の電極ユニット100の負極活物質層130の端縁(外縁)よりも内側に配置される。
【0063】
[4 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10によれば、正極活物質層120の外周部に、中央部と比較して樹脂の含有率が高い樹脂高含有部121を設ける。これにより、正極活物質層120のサイズが大きい場合でも、正極活物質層120の外周部における活物質としての機能を抑制できる。したがって、負極活物質層130よりも正極活物質層120のサイズが大きくても、電析等の不具合の発生を抑制できるため、正極活物質層120及び負極活物質層130のサイズが適切でないことによる不具合の発生を抑制できる。特に、正極活物質層120の外周部に樹脂を塗工する際に、樹脂の吐出位置を画像で見てロボット制御する等により、正極活物質層120の外周部に樹脂を精度良く塗工できる。
【0064】
樹脂高含有部121が加熱により接着性を有する樹脂を含む構成の場合、正極活物質層120の外周部に当該樹脂を配置して加熱することにより、容易に、正極活物質層120の外周部に樹脂高含有部121を配置できる(しみこませることができる)。
【0065】
樹脂高含有部121が紫外線を照射することにより硬化する樹脂を含む構成の場合、正極活物質層120の外周部に当該樹脂を配置して紫外線を照射することにより、容易に、正極活物質層120の外周部に樹脂高含有部121を配置できる(しみこませることができる)。
【0066】
正極活物質層120における樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P)を、負極活物質層130の端縁よりも内側に配置する。これにより、正極活物質層120のうちの活物質としての機能が抑制されない当該他の部分(正極活物質層本体122)を、負極活物質層130の端縁よりも内側に配置できる。したがって、正極活物質層120の方が負極活物質層130よりもサイズが大きいことによる電析を抑制できる。
【0067】
[5 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0068】
(変形例1)
上記実施の形態では、樹脂高含有部121は、平面視で、正極活物質層本体122との境界(位置P)が負極活物質層130の端縁(外縁)よりも内側に配置されることとしたが、当該境界(位置P)が負極活物質層130の端縁(外縁)と同じ位置に配置されてもよい。
図6は、本実施の形態の変形例1に係る電極ユニット100が積層された構成を示す断面図である。
図6は、
図5に対応する図であり、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0069】
図6に示すように、変形例1では、正極活物質層本体122は、平面視で負極活物質層130と同じサイズである。つまり、平面視で、正極活物質層本体122の外縁(位置P1)は、負極活物質層130の端縁(外縁)と同じ位置に配置される。言い換えると、樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P1)は、負極活物質層130の端縁(外縁)と同じ位置に配置される。これにより、隣り合う2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120における樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P1)は、2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130の端縁(外縁)と同じ位置に配置される。つまり、平面視で、一方の電極ユニット100の樹脂高含有部121と正極活物質層本体122との境界(位置P1)は、他方の電極ユニット100の負極活物質層130の端縁(外縁)と同じ位置に配置される。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0070】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、本変形例では、正極活物質層120における樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P1)を、負極活物質層130の端縁と同じ位置に配置する。これにより、正極活物質層120のうちの活物質としての機能が抑制されない当該他の部分(正極活物質層本体122)を、負極活物質層130と同じ位置に配置できる。したがって、正極活物質層120の方が負極活物質層130よりもサイズが大きいことによる電析を抑制できる。
【0071】
(変形例2、3)
上記実施の形態では、正極活物質層120に樹脂高含有部121が設けられることとしたが、負極活物質層130にも樹脂高含有部が設けられてもよい。
図7は、本実施の形態の変形例2に係る電極ユニット100が積層された構成を示す断面図である。
図8は、本実施の形態の変形例3に係る電極ユニット100が積層された構成を示す断面図である。
図7及び
図8は、
図5に対応する図であり、電極ユニット100が有するシール部210の図示は省略している。
【0072】
図7及び
図8に示すように、変形例2及び3では、負極活物質層130は、外周部に、中央部と比較して負極活物質層130中に含まれる樹脂の含有率が高い樹脂高含有部131を有している。負極活物質層130のうちの樹脂高含有部131以外の部位を、負極活物質層本体132と称す。負極活物質層130が有する樹脂高含有部131及び負極活物質層本体132の具体的な構成は、上記実施の形態における正極活物質層120が有する樹脂高含有部121及び正極活物質層本体122と同様である。
【0073】
図7に示すように、変形例2では、正極活物質層本体122は、平面視で負極活物質層本体132と同じサイズである。つまり、平面視で、正極活物質層本体122の外縁(位置P2)は、負極活物質層本体132の外縁と同じ位置に配置される。言い換えると、樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P2)は、樹脂高含有部131と他の部分(負極活物質層本体132)との境界と同じ位置に配置される。これにより、隣り合う2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120における樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P2)は、2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130における樹脂高含有部131と他の部分(負極活物質層本体132)との境界と同じ位置に配置される。つまり、平面視で、一方の電極ユニット100の樹脂高含有部121と正極活物質層本体122との境界(位置P2)は、他方の電極ユニット100の樹脂高含有部131と負極活物質層本体132との境界と同じ位置に配置される。本変形例では、平面視で、樹脂高含有部121の外縁は、樹脂高含有部131の外縁と同じ位置に配置されるが、異なる位置に配置されてもよい。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0074】
図8に示すように、変形例3では、正極活物質層本体122は、平面視で負極活物質層本体132よりもサイズが小さい。つまり、平面視で、正極活物質層本体122の外縁(位置P3)は、負極活物質層本体132の外縁(位置P4)よりも内側に配置される。言い換えると、樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P3)は、樹脂高含有部131と他の部分(負極活物質層本体132)との境界(位置P4)よりも内側に配置される。これにより、隣り合う2つの電極ユニット100の一方が有する正極活物質層120における樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界(位置P3)は、2つの電極ユニット100の他方が有する負極活物質層130における樹脂高含有部131と他の部分(負極活物質層本体132)との境界(位置P4)よりも内側に配置される。つまり、平面視で、一方の電極ユニット100の樹脂高含有部121と正極活物質層本体122との境界(位置P3)は、他方の電極ユニット100の樹脂高含有部131と負極活物質層本体132との境界(位置P4)よりも内側に配置される。本変形例では、平面視で、樹脂高含有部121の外縁は、樹脂高含有部131の外縁よりも内側に配置されるが、どのような位置に配置されてもよい。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
変形例2、3によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、変形例2、3では、負極活物質層130の外周部に、中央部と比較して樹脂の含有率が高い樹脂高含有部131を設けることで、負極活物質層130のサイズが大きい場合でも、負極活物質層130の外周部における活物質としての機能を抑制できる。つまり、負極活物質の表面に被膜(SEI)が形成されると電解質(Li)が消費されるが、Liが消費されると容量が低下してしまう。これに対し、負極活物質に樹脂を浸透させておけば、負極活物質への被膜(SEI)の形成が抑制されるため、容量の低下が抑制される。なお、負極活物質層130の中央部に樹脂高含有部を設けた場合でも、被膜(SEI)の形成による容量の低下は抑制されるが、負極活物質層130における充放電に寄与する部分が少なくなることにより容量が低下するため、好ましくない。さらに、正極活物質層120における樹脂高含有部121と他の部分(正極活物質層本体122)との境界を、負極活物質層130における樹脂高含有部131と他の部分(負極活物質層本体132)との境界と同じ位置、または、当該境界よりも内側に配置することで、電析を抑制できる。
【0076】
(変形例4)
上記実施の形態では、樹脂高含有部121は、シール部材200(シール部210、220及び230)から離間して配置されている(シール部材200とは別体の部位である)こととしたが、シール部材200と一体化されていてもよい。
図9は、本実施の形態の変形例4に係る蓄電装置11の内部構成を示す断面図である。
図9は、
図2に対応する図である。
【0077】
図9に示すように、変形例4では、樹脂高含有部121は、一部(端部)がシール部材200と一体化されている。具体的には、電極ユニット100が有する正極活物質層120においては、樹脂高含有部121の一部(端部)は、シール部210と一体化されている。エンドユニット101が有する正極活物質層120においては、樹脂高含有部121の一部(端部)は、シール部220と一体化されている。樹脂高含有部121と正極活物質層本体122とは一体形成されているため、樹脂高含有部121と正極活物質層本体122とシール部材200とが一体化されている。つまり、正極活物質層120とシール部材200とが一体化されている。シール部材200は正極活物質を含まない(樹脂の含有率が非常に高い)ため、正極活物質層本体122、樹脂高含有部121、シール部材200の順に樹脂の含有率が高くなる(正極活物質の含有率が低くなる)。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0078】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果が奏される。特に、本変形例では、樹脂高含有部121の一部をシール部210、220(シール部材200)と一体化することで、部品点数を低減でき、構成を簡易化できる。
【0079】
(その他の変形例)
上記実施の形態では、樹脂高含有部121は、平面視で、外縁(位置Q)が、負極活物質層130の端縁(外縁)よりも外側に配置されることとしたが、これには限定されない。樹脂高含有部121は、平面視で、外縁(位置Q)が、負極活物質層130の端縁(外縁)と同じ位置、または、負極活物質層130の端縁(外縁)よりも内側に配置されてもよい。
【0080】
上記実施の形態では、集電箔110は、正極金属層111及び負極金属層112の複数層(2層)で形成されていることとしたが、集電箔110は、1層(1枚の金属箔)で形成されていてもよい。つまり、集電箔110は、1枚のステンレス箔等で形成され、1枚のステンレス箔等で正極金属層及び負極金属層の機能を有することにしてもよい。
【0081】
上記実施の形態では、蓄電装置10の製造方法において、正極活物質層120は、平面視で負極活物質層130と同じサイズまたは負極活物質層130よりも大きなサイズで、集電箔110に配置されることとしたが、これには限定されない。正極活物質層120が、平面視で負極活物質層130よりも小さなサイズで集電箔110に配置された場合でも、正極活物質層120の外周部に樹脂高含有部121を形成してもよい。
【0082】
上記実施の形態では、全ての電極ユニット100が有する正極活物質層120が上記構成を有していることとしたが、いずれかの正極活物質層120が上記構成を有していなくてもよい。エンドユニット101が有する正極活物質層120が上記構成を有していなくてもよい。
【0083】
蓄電装置10は、
図10に示すような蓄電パック1に用いられてもよい。
図10は、蓄電パック1の構成を示す断面図である。
図10において、蓄電装置10の内部構成の図示は省略している。
図10に示すように、蓄電パック1は、複数の蓄電装置10が積層された蓄電装置積層体2と、導電部材3と、を備えている。この場合、蓄電パック1に含まれる少なくとも1つの蓄電装置10に対して、本発明の技術が適用されればよい。蓄電装置積層体2における隣り合う2つの蓄電装置10は、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。導電部材3は、ステンレス等の金属からなり、積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続される。接合には接着剤を用いてもよい。蓄電装置積層体2における複数の蓄電装置10は直列に接続されており、導電部材3を介して充放電が実施される。蓄電パック1は、積層方向(Z軸方向)に拘束されてもよく、この場合、ネジ、樹脂バンドまたは金属バンド等の拘束部材を用いることができる。蓄電装置積層体2及び導電部材3は、金属ケースまたは樹脂ケースに収容されていてもよい。
【0084】
蓄電パック1の他の例として、個々の蓄電装置10が外装体4に収容された構成を
図11に示す。
図11は、蓄電パック1aの構成を示す断面図である。
図11に示すように、本構成の蓄電装置10は、外装体4から露出した接続部分5を有している。外装体4としてラミネートフィルム等を用いることができる。隣り合う蓄電装置10の接続部分5同士が、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。積層方向(Z軸方向)の端部に位置する蓄電装置10の接続部分5と導電部材3とは、接触または接合(溶接等)によって電気的に接続されている。その他の構成は、上述の蓄電パック1と同様のため説明を省略する。
【0085】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、バイポーラ電池等の蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0087】
1、1a 蓄電パック
2 蓄電装置積層体
3 導電部材
4 外装体
5 接続部分
10、11 蓄電装置
100 電極ユニット
101、102 エンドユニット
110 集電箔
111 正極金属層(金属層)
112 負極金属層(金属層)
120 正極活物質層
121、131 樹脂高含有部
122 正極活物質層本体
130 負極活物質層
132 負極活物質層本体
140 セパレータ
200 シール部材
210、220、230 シール部
300 エンド部材