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特開2024-154314カバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート
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  • 特開-カバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154314
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】カバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/52 20060101AFI20241023BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241023BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20241023BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241023BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H01M10/52
C08L101/00
C08K3/00
B32B27/18 Z
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068085
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河邊 茂樹
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
5H031
【Fターム(参考)】
4F100AC04B
4F100AH06B
4F100AK25B
4F100AK28B
4F100AK42A
4F100AK49A
4F100AK50A
4F100AK52B
4F100AK53B
4F100AK54A
4F100AK56A
4F100AK57A
4F100AK64B
4F100AN02B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100CB05C
4F100DE01B
4F100EJ67B
4F100GB41
4F100JD14B
4F100JJ03A
4F100JK06
4F100JL13C
4F100JL14C
4J002AA001
4J002AC061
4J002BB061
4J002BB151
4J002BB181
4J002BE021
4J002BG041
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF001
4J002CF011
4J002CK021
4J002CL001
4J002CM041
4J002CP031
4J002DJ006
4J002FB136
4J002FB146
4J002FD206
4J002GD02
4J002GD05
4J002GQ00
5H031CC02
5H031EE04
5H031HH03
5H031MM00
(57)【要約】
【課題】ガス吸着性に優れるガス吸着粒子を含む2次電池用ガス吸着シートであって、該ガス吸着粒子のガス吸着性能が十分に発揮され得る2次電池用ガス吸着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートは、耐熱性基材と、該耐熱性基材の少なくとも片側に配置されたガス吸着層とを含む、2次電池用ガス吸着シートと;該ガス吸着層の該耐熱性基材とは反対側に配置されたカバーフィルム;とを備え、該ガス吸着層が、バインダー樹脂と、細孔を有する無機多孔質材料から構成され、ガスを吸着し得るガス吸着粒子とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性基材と、該耐熱性基材の少なくとも片側に配置されたガス吸着層とを含む、2次電池用ガス吸着シートと;
該ガス吸着層の該耐熱性基材とは反対側に配置されたカバーフィルム;とを備え、
該ガス吸着層が、バインダー樹脂と、細孔を有する無機多孔質材料から構成され、ガスを吸着し得るガス吸着粒子とを含む、
カバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項2】
前記耐熱性基材と前記ガス吸着層との間に配置された中間層をさらに備える、請求項1に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項3】
前記ガス吸着粒子が、シリコーンによる表面処理面を有する、請求項1に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項4】
前記シリコーンが、エトキシシラン基またはメトキシシラン基を有する、請求項3に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項5】
前記シリコーンが、エポキシ基またはアミノ基を含むシランカップリング剤である、請求項4に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項6】
前記バインダー樹脂が、アクリル系樹脂である、請求項1に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項7】
前記バインダー樹脂が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含み、
該(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数が4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する、請求項6に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項8】
前記バインダー樹脂が、ブチルゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴムまたはシリコーン系樹脂である、請求項1に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項9】
前記ガス吸着粒子の含有割合が、2次電池用ガス吸着シート100重量部に対して、10重量部~90重量部である、請求項1に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項10】
前記耐熱性基材を構成する材料が、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドまたはポリエーテルエーテルケトンである、請求項1に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項11】
前記カバーフィルムが、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された粘着剤層とを備える、請求項1に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項12】
前記粘着剤層が、ベースポリマーを含む粘着剤から形成され、
有機酸モノマー由来の構成単位の含有割合が、該ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以下である、
請求項11に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【請求項13】
前記カバーフィルムが、剥離可能である、請求項11に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン電池等に代表される非水系2次電池が、種々の分野で多用されている。非水系電解液を用いる非水系2次電池においては、該非水系電解液に含まれる炭酸エステルの電気分解によりCO等のガスが発生しやすく、ガス発生が筐体の変形、内部抵抗の増大、安全性の低下等の原因となり得る。
【0003】
上記のような不具合を防止するための種々の技術が検討されており、そのひとつとして、細孔を有するゼオライトから構成され、ガスを包接して吸着し得るガス吸着材が提案されている(特許文献1)。このガス吸着材は、優れたガス吸着性能を発揮し得、非水系2次電池の安全性を顕著に向上させることができる。また、上記ガス吸着材を用いることにより、2次電池製造工程におけるガス抜き工程を省略することもできる。
【0004】
しかしながら、上記ガス吸着材は、粒状または粉状で提供されるため、ハンドリング性に劣るという問題がある。また、粒状または粉状であるため、凝集したりあるいは不要に分散するなど、所望の量を所望の箇所に配置しがたいという問題もある。また、水分の影響により、ガス吸着材のガス吸着性能が低下するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-162457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ガス吸着性に優れるガス吸着粒子を含む2次電池用ガス吸着シートであって、該ガス吸着粒子のガス吸着性能が十分に発揮され得る2次電池用ガス吸着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の実施形態によるカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートは、耐熱性基材と、該耐熱性基材の少なくとも片側に配置されたガス吸着層とを含む、2次電池用ガス吸着シートと;該ガス吸着層の該耐熱性基材とは反対側に配置されたカバーフィルム;とを備え、該ガス吸着層が、バインダー樹脂と、細孔を有する無機多孔質材料から構成され、ガスを吸着し得るガス吸着粒子とを含む。
[2]上記[1]に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートは、上記耐熱性基材と上記ガス吸着層との間に配置された中間層をさらに備えていてもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記ガス吸着粒子が、シリコーンによる表面処理面を有していてもよい。
[4]上記[3]に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記シリコーンが、エトキシシラン基またはメトキシシラン基を有していてもよい。
[5]上記[4]に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記シリコーンが、エポキシ基またはアミノ基を含むシランカップリング剤であってもよい。
[6]上記[1]から[5]いずれかに記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記バインダー樹脂が、アクリル系樹脂であってもよい。
[7]上記[6]に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記バインダー樹脂が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含み、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数が4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基を有していてもよい。
[8]上記[1]から[5]いずれかに記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記バインダー樹脂が、ブチルゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴムまたはシリコーン系樹脂であってもよい。
[9]上記[1]から[8]いずれかに記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記ガス吸着粒子の含有割合が、2次電池用ガス吸着シート100重量部に対して、10重量部~90重量部であってもよい。
[10]上記[1]から[9]いずれかに記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記耐熱性基材を構成する材料が、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドまたはポリエーテルエーテルケトンであってもよい。
[11]上記[1]から[10]いずれかに記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記カバーフィルムが、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された粘着剤層とを備えていてもよい。
[12]上記[11]に記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記粘着剤層が、ベースポリマーを含む粘着剤から形成され、有機酸モノマー由来の構成単位の含有割合が、該ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以下であってもよい。
[13]上記[1]から[12]いずれかに記載のカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートにおいて、上記カバーフィルムが、剥離可能であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性基材と組み合わせてガス吸着粒子をシート化することにより、ハンドリング性に優れるガス吸着材(ガス吸着シート)を得ることができ、このガス吸着シートにおいては、ガス吸着粒子本来のガス吸着性能が十分に発揮され得、かつ、水分によるガス吸着性能低下が防止され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態による2次電池用ガス吸着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.カバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態によるカバーフィルム付2次電池用ガス吸着シート(以下、カバーフィルム付ガス吸着シートともいう)の概略断面図である。カバーフィルム付ガス吸着シート100は、耐熱性基材10と、耐熱性基材10の少なくとも片側に配置されたガス吸着層20とを含む2次電池用ガス吸着シート110と、ガス吸着層20の耐熱性基材10の反対側に配置されたカバーフィルム120と備える。ガス吸着層は、バインダー樹脂とガス吸着粒子とを含む。ガス吸着粒子は、細孔を有する無機多孔質材料から構成される。ガス吸着粒子においては、包接作用により、高いガス吸着性能を発揮する。該ガス吸着粒子に吸着されるガスとしては、例えば、CO、CO等が挙げられる。1つの実施形態においては、上記ガス吸着シート110は、耐熱性基材10とガス吸着層20との間に、中間層30をさらに備える。中間層を形成することにより、ガス吸着層の脱落を防止することができる。また、1つの実施形態においては、カバーフィルム120は、基材41と、基材41の少なくとも片側に配置された粘着剤層51とを備える。粘着剤層51は、ガス吸着層20と対向するようにして積層され得る。本明細書において、カバーフィルム付2次電池用ガス吸着シートを単にカバーフィルム付ガス吸着シートともいい、2次電池用ガス吸着シートを単にガス吸着シートともいう。カバーフィルム付ガス吸着シートおよびガス吸着シートは、本発明の効果が得られる限り、任意の適切なその他の層を備えていてもよい。例えば、ガス吸着シートの外側面一面または両面に配置された粘着剤層を備えていてもよい(図示せず)。
【0011】
本発明によれば、ガス吸着粒子をバインダー樹脂に分散させて、ガス吸着粒子とバインダー樹脂とから構成されるガス吸着層を形成してシート化することにより、ハンドリング性よく種々の用途に適用し得るガス吸着シートを得ることができる。また、耐熱性基材を備えることにより、ハンドリング性向上の効果は、より顕著となる。さらに、基材として耐熱性基材を用いることにより、ガス吸着シート使用前に該ガス吸着シートを加熱すること(例えば、200℃で24時間の加熱)が可能となる。使用前に加熱することにより、ガス吸着粒子に付着した不要な物質を除去することができ、使用時においては、ガス吸着粒子の性能が十分に発揮され得る。
【0012】
上記ガス吸着シートは、例えば、非水系2次電池のガス吸着材として好適に使用され得る。具体的には、非水電解液中に配置する、絶縁シート、絶縁板、絶縁テープ等の形態で使用され得る。上記ガス吸着シートは、COおよびCOの他、水分、フッ化水素等を吸着することもでき、ガス吸着シートを電池に適用すれば、その寿命を延ばすことができる。また、ガス吸着材をシートの形態で提供することにより、既存の電池製造設備を使用して、ガス吸着材を電池に適用することが可能となる。さらには、上記ガス吸着シートを用いれば、所望の量のガス吸着粒子を所望の位置に配置することが容易となる。
【0013】
また、本発明においては、カバーフィルムを配置することにより、例えば保管時に、ガス吸着層の水分による劣化を防止することができる。ドライルーム(例えば、露点温度-50℃)内であっても、水分劣化するようなガス吸着層を備えるガス吸着シートであっても、上記構成であれば、ガス吸着層の水分による劣化(例えば、ガス吸収性の低下)を防止することができる。
【0014】
カバーフィルム付ガス吸着シートの厚みは、好ましくは15μm~1100μmであり、より好ましくは30μm~550μmであり、さらに好ましくは30μm~200μmである。
【0015】
B.ガス吸着シート
上記ガス吸着シートは、片面または両面が粘着性を有していてもよく、粘着性を有さないガス吸着シートであってもよい。粘着性を有するガス吸着シートの形態としては、例えば、ガス吸着層が粘着性を有する形態、ガス吸着シートの最外側に粘着剤層が配置される形態等が挙げられる。
【0016】
上記ガス吸着シートが、粘着性を有する場合、該ガス吸着シートの25℃におけるステンレス板に対する粘着力は、好ましくは0.1N/20mm~10N/20mmであり、より好ましくは0.5N/20mm~5N/20mmである。このような範囲であれば、電池用途に好適なガス吸着シートとすることができる。本明細書において粘着力とは、JIS Z 0237:2000に準じた方法により測定した粘着力であり、2kgのローラーを1往復により粘着テープを被着体(SUS304BA)に貼着し、25℃下で30分間放置した後、剥離角度180°、剥離速度(引張速度)300mm/minの条件で、粘着テープを引きはがして測定される。
【0017】
上記ガス吸着シートの厚みは、好ましくは10μm~1000μmであり、より好ましくは20μm~500μmであり、さらに好ましくは20μm~150μmであり、さらに好ましくは20μm~130μmである。このような範囲であれば、ガス吸着性能およびハンドリング性に優れるガス吸着シートを得ることができる。
【0018】
B-1.ガス吸着層
上記ガス吸着層は、上記のとおり、バインダー樹脂と、該バインダー樹脂に分散して存在するガス吸着粒子とを含む。本発明においては、このような形態とすることにより、バインダー樹脂とガス吸着粒子とを含む塗工液を用いて、ガス吸着層を塗工により形成することが可能となる。その結果、ガス吸着粒子の分散性に優れるガス吸着層を形成することができ、ガス吸着性能に優れるガス吸着シートが得ることができる。
【0019】
上記ガス吸着層の厚みは、好ましくは5μm~150μmであり、より好ましくは5μm~120μmであり、さらに好ましくは10μm~100μmである。このような範囲であれば、ガス吸着粒子の性能が十分に発揮され得るガス吸着層とすることができる。また、ハンドリング性に優れるガス吸着シートを得ることができる。
【0020】
(ガス吸着粒子)
ガス吸着粒子は、細孔を有する無機多孔質材料から構成される。1つの実施形態においては、ガス吸着粒子は、ゼオライトから構成される。ゼオライトは、A型ゼオライトであってもよく、X型ゼオライトであってもよく、LSX型ゼオライトであってもよい。好ましくは、ゼオライトのカチオン部分がLiでイオン交換されたA型ゼオライト、またはCaでイオン交換されたA型ゼオライトである。上記ガス吸着粒子を構成するSiとAlの比(Si/Al)は、好ましくは1~5である。Si/Alが1未満の場合、ガス吸着粒子は構造上不安定となるおそれがある。また、Si/Alが5を超える場合、吸着性能が低下するおそれがある。
【0021】
上記ガス吸着粒子の体積平均粒子径D50(メジアン径)は、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。このような範囲であれば、ガス吸着量の多いガス吸着層を形成することができる。体積平均粒子径D50(メジアン径)は、レーザ回析/散乱式粒子径分布測定装置により測定することができる。
【0022】
上記ガス吸着粒子の比表面積は、好ましくは100m/g~3000m/gである。このような範囲であれば、ガス吸着性能および機械的強度に優れるガス吸着粒子を得ることができる。このように比表面積の大きいガス吸着粒子は凝集しやすいが、本願発明によれば、ガス吸着粒子の分散性よくガス吸着層を形成することができる。
【0023】
上記ガス吸着粒子は、細孔を有する。該細孔の大きさは、好ましくは3Å~10Åである。該細孔は、ガス吸着粒子表面の全面に存在することが好ましい。
【0024】
上記ガス吸着粒子のCO吸着量は、好ましくは15mL/g以上であり、より好ましくは20mL/g以上であり、さらに好ましくは30mL/g以上である。ガス吸着粒子のCO吸着量とは、ガス吸着粒子1g当たりのCO吸着量を意味する。CO吸着量の測定方法は、以下のとおりである。
<CO吸着量の測定方法>
ガス吸着粒子を、露点-40℃の環境下、所定の密閉ガラス容器内でガス吸着粒子1g当たり電解液が80ml/gとなるようにリチウムイオン電池用電解液(組成:6フッ化リン酸リチウム(1mol/l)エチレンカーボネート溶液/エチルメチルカーボネート=3/7(体積比))に浸漬させ、60℃で24時間保管する。
その後、ガラス容器内のCO濃度Aをガスクロマトグラフィーにより測定する。
ガス吸着粒子を投入しなかったこと以外は、上記と同様にして、すなわち、ガラス容器内にリチウムイオン電池用電解液のみを封入して、60℃で24時間保管した後、ガラス容器内のCO濃度Bを測定し(濃度B=0.43v/v%)、CO濃度AとCO濃度Bとの差から、ガス吸着粒子のガス吸着量(ガス吸着粒子1g当たりのガス吸着量(mL/g)を評価する。
【0025】
1つの実施形態においては、上記ガス吸着粒子は、表面処理面を有する。表面処理は、ガス吸着粒子とバインダー樹脂との親和性を調整する処理であり得る。表面処理面を有するガス吸着粒子を用いれば、機械的強度に優れ、脱落し難いガス吸着層を形成することができる。カバーフィルムを積層して提供される上記カバーフィルム付ガス吸着シートにおいては、ガス吸着シート使用時にカバーフィルムを剥離する際、ガス吸着層の損傷を防止することができる点、特に好ましい。また、表面処理面を有するガス吸着粒子を用いれば、切断加工時の加工性に優れるガス吸着シートを得ることができる。例えば、トムソン刃型等の刃型により、ガス吸着シートを打ち抜く際にガス吸着層の損傷を防止することができる。表面処理面は、ガス吸着粒子の表面全面であってもよく、表面の一部面であってもよい。表面処理としては、例えば、シランカップリング剤処理、イソシアネート化合物処理、チオール化合物処理、酸化合物処理、アルコール化合物処理、エポキシ化合物処理等が挙げられる。1つの実施形態においては、上記表面処理は、カップリング処理であり得る。カップリング処理されたガス吸着粒子を用いれば、ガス吸着層の脱離防止、加工性向上の効果が顕著となる。
【0026】
1つの実施形態においては、シリコーンによる表面処理面を有するガス吸着粒子が用いられる。1つの実施形態においては、当該シリコーンはエトキシシラン基またはメトキシシラン基を有する。このようなシリコーンを用いれば、機械的強度に優れ、脱落し難いガス吸着層を形成することができる。上記シリコーンは、シランカップリング剤であり得る。好ましくは、当該シランカップリング剤は、エポキシ基および/またはアミノ基を含む。このようなシランカップリング剤を用いれば、機械的強度に優れ、脱落し難いガス吸着層を形成することができる。上記ガス吸着粒子、すなわち、シリコーン(シランカップリング剤)による表面処理されたガス吸着粒子は、シランカップリング剤を上記ガス吸着粒子表面に接触させることで、当該表面に存在する有機基(例えば、水酸基)とシランカップリング剤の加水分解で生じたシラノール基とを反応させたり、シラノール基同士が縮合して生じたオリゴマーをガス吸着粒子に結合させることにより、得ることができる。
【0027】
上記シランカップリング剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジチオールトリアジンプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
上記ガス吸着粒子の含有割合は、ガス吸着シート100重量部に対して、好ましくは10重量部~90重量部であり、より好ましくは30重量部~80重量部であり、さらに好ましくは40重量部~70重量部である。このような範囲であれば、ガス吸着性能に優れ、かつ、ハンドリング性に優れるガス吸着シートを得ることができる。
【0029】
上記ガス吸着粒子の含有割合は、ガス吸着層を構成するバインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは10重量部~2000重量部であり、より好ましくは50重量部~1500重量部であり、さらに好ましくは100重量部~1000重量部であり、特に好ましくは280重量部~1000重量部である。このような範囲であれば、ガス吸着粒子が脱離しがたいガス吸着層を得ることができる。また、ガス吸着性能、ハンドリング性および耐電解液性に優れるガス吸着シートを得ることができる。
【0030】
(バインダー樹脂)
上記バインダー樹脂としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な樹脂が用いられる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂;ブチルゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム系樹脂;シリコーン系樹脂;ウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;アルキド系樹脂;ポリエステル系樹脂;メラミン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。1つの実施形態においては、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。アクリル系樹脂を用いれば、ガス吸着粒子の分散性に優れるガス吸着層を形成することができる。また、アクリル系樹脂を用いれば、脱離し難いガス吸着層を形成することができる。また、ガス吸着粒子のガス吸着性能が十分に発揮され得るガス吸着層を形成することができる。別の実施形態においては、ブチルゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、またはシリコーン系樹脂が用いられる。これらの樹脂を用いれば、ガス吸着粒子の分散性に優れるガス吸着層を形成することができる。
【0031】
上記バインダー樹脂はガス透過性を有することが好ましい。ガス透過性を有するバインダー樹脂を用いれば、電池用途に好適なガス吸着シートを得ることができる。ガス透過性に優れる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ブチルゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂;ウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;アルキド系樹脂;ポリエステル系樹脂;メラミン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等が挙げられる。ガス吸着層のCO透過度は、好ましくは1500cm/m・24hrs・atm以上であり、より好ましくは3000cm/m・24hrs・atm以上である。ガス吸着層のCO透過量は、温度23℃の環境下、JIS K 7126(等圧法)により測定され得る。
【0032】
上記バインダー樹脂は、非水系電解液に対して、高い親和性を示すことが好ましい。このようなバインダー樹脂としては、例えば、SP値が、8cal/cm~15.4cal/cm(好ましくは9cal/cm~13.2cal/cm)である樹脂が挙げられる。また、上記バインダー樹脂は、非水系電解液に対して高い耐電解液性を有することが好ましい。
【0033】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種または2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含むアクリル系樹脂が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有割合は、アクリル系樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部~97重量部であり、より好ましくは70重量部~94重量部である。
【0034】
好ましくは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数が1~24(より好ましくは3から20、さらに好ましくは6~18)の直鎖状または分枝状のアルキル基を有する。
【0035】
1つの実施形態においては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数が4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基を有することが好ましく、炭素数が6~12の直鎖状または分岐状のアルキル基を有することが好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成単位として有するアクリル系樹脂を用いて、ガス吸着層を形成すれば、電解液中での変色、膨潤が抑制されたガス吸着シートを得ることができる。また、脱離し難いガス吸着層を形成することができる。1つの実施形態においては、上記アクリル系樹脂において、炭素数が4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位100重量部に対して、好ましくは20重量部~100重量部であり、より好ましくは30重量部~100重量部であり、さらに好ましくは50重量部~100重量部であり、特に好ましくは70重量部~100重量部である。
【0036】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
【0037】
1つの実施形態においては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いれば、ガス吸着粒子のガス吸着性能が十分に発揮され得るガス吸着層を形成することができる。直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを併用してもよい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独で使用してもよい。
【0038】
1つの実施形態においては、上記アクリル系樹脂において、分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位100重量部(すなわち、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルも含む)と、分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの合計量100重量部)に対して、好ましくは20重量部~100重量部であり、より好ましくは30重量部~100重量部であり、さらに好ましくは50重量部~100重量部であり、特に好ましくは70重量部~100重量部である。このような範囲であれば、耐電解液性に特に優れるガス吸着シートを得ることができる。
【0039】
分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル等が挙げられる。なかでも好ましくは、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、である。
【0040】
上記アクリル系樹脂は、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。このような他のモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクルロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記他のモノマー由来の構成単位の含有割合は、アクリル系樹脂100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは15重量部以下であり、さらに好ましくは1重量部~10重量部である。
【0042】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30万~200万であり、より好ましくは50万~150万である。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定され得る。
【0043】
(添加剤)
上記ガス吸着層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤(例えば、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、炭化水素系粘着付与剤等)、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、顔料、染料、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粒子等が挙げられる。
【0044】
B-2.耐熱性基材
本明細書において、耐熱性基材とは、温度150℃/圧力-100kPa~0kPaの雰囲気下で24時間(好ましくは、温度200℃/圧力-100kPa~0kPaの雰囲気下で24時間)の加熱に耐え得る基材であり、具体的には、温度150℃/圧力-100kPaの雰囲気下で24時間(好ましくは、温度200℃/圧力-100kPaの雰囲気下で24時間)で加熱しても、寸法変化が5%以下である基材を意味する。また、耐熱性基材が樹脂から形成される場合、耐熱性基材は、ガラス転移温度が80℃以上(好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上)の樹脂から構成された基材を意味する。なお、「ガラス転移温度」とは、DMA法(引っ張り法)において、昇温速度5℃/min、サンプル幅5mm、チャック間距離20mm、周波数10Hzの条件において確認される損失正接(tanδ)のピークを示す温度を意味する。
【0045】
上記耐熱性基材を構成する材料としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な材料が採用され得る。好ましくは、上記耐熱性基材は、樹脂から構成される。耐熱性基材を構成する材料としては、例えば、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。これらの樹脂は、耐熱性に優れ、かつ、耐電解液性に優れる。
【0046】
上記耐熱性基材の厚みは、好ましくは5μm~500μmであり、より好ましくは10μm~300μmであり、さらに好ましくは15μm~100μmである。このような範囲であれば、ハンドリング性に特に優れるガス吸着シートを得ることができる。
【0047】
B-3.中間層
上記中間層は、任意の適切な樹脂を含む。中間層を形成する樹脂としては、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂が好ましく用いられ得る。また、粘着剤として、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂を用いてもよい。中間層を構成する樹脂としては、上記バインダー樹脂が例示される。1つの実施形態においては、中間層を構成する樹脂として、上記ガス吸着層を構成するバインダー樹脂と同様の樹脂が用いられる。中間層は、ガス吸着粒子を含まない。
【0048】
中間層を形成することにより、ガス吸着層が脱離し難いガス吸着シートを得ることができる。
【0049】
中間層の厚みは、好ましくは1μm~50μmであり、より好ましくは2μm~30μmであり、さらに好ましくは2μm~20μmである。
【0050】
上記中間層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、溶剤等が挙げられる。
【0051】
C.カバーフィルム
1つの実施形態において、カバーフィルムは、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された粘着剤層とを含む。
【0052】
1つの実施形態においては、上記カバーフィルムは、剥離可能に配置される。1つの実施形態においては、カバーフィルムは、110℃×3時間の加熱乾燥後、ガス吸着シートから剥離可能である。このようなカバーフィルムは、例えば、粘着剤層の組成等により、カバーフィルムの粘着力を調整することにより、剥離性を制御することができる。
【0053】
上記カバーフィルムの25℃におけるステンレス板に対する粘着力は、好ましくは0.05N/20mm~5N/20mmであり、より好ましくは0.1N/20mm~3N/20mmである、より好ましくは0.15N/20mm~2N/20mmであり、さらに好ましくは0.15N/20mm~1N/20mmである。
【0054】
カバーフィルム付ガス吸着シートを、-100kPaの減圧下110℃で3時間乾燥した後、カバーフィルムをガス吸着シートから剥離する際の剥離強度は、好ましくは0.01N/50mm~5N/50mmであり、より好ましくは0.02N/50mm~3N/50mmであり、さらに好ましくは0.05N/50mm~2.5N/50mmである。このような範囲であれば、ガス吸収層の損傷を防止しつつ剥離可能なカバーフィルムとすることができる。上記剥離強度とは、JIS Z 0237:2000に準じた方法により測定することができる。すなわち、上記剥離強度は、測定温度25℃、剥離角度180°、剥離速度(引張速度)300mm/minの条件で、カバーフィルム付ガス吸着シートのカバーフィルムをガス吸着シートから引き剥がして測定される。
【0055】
C-1.基材
上記基材は、任意の適切な材料から構成され得る。基材は、例えば、樹脂フィルム、紙、布、不織布、金属箔、あるいはそれらのプラスチックラミネート体、プラスチック同士の積層体など、様々なシート状物を用いることが可能である。中でも、取り扱い性やコストの観点から、樹脂フィルムが最も好ましい。樹脂フィルムを構成する材料としては、強度、耐熱性などの観点から、必要に応じて選択できる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、アクリル樹脂などが挙げられる。 これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、プラスチックフィルムとしては、未延伸フィルム、1軸配向フィルム、2軸配向フィルムのいずれを用いてもよい。また、これらのフィルムは2層以上のフィルム層からなる積層フィルムでもよいし、取り扱い性の観点から、適宜、不活性粒子などの滑剤を添加したフィルムを用いてもよい。
【0056】
上記基材の厚みは、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは1μm~200μmであり、さらに好ましくは5μm~100μmであり、特に好ましくは10μm~100μmであり、特に好ましくは20μm~100μmであり、最も好ましくは30μm~100μmである。このような範囲であれば、ロール形状にした際の浮きが防止され、かつ、作業性に優れるカバーフィルム付ガス吸着シートを得ることができる。
【0057】
上記基材の透湿度は、好ましくは500g/m・24hr以下であり、より好ましくは100g/m・24hr以下である。透湿度は、JIS Z 0208の透湿度試験(カップ法)に準拠して決定され得る。
【0058】
上記基材は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、下塗り剤によるコーティング処理等が挙げられる。
【0059】
C-2.粘着剤層
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。粘着剤層厚みの下限は、例えば、1μm(好ましくは0.5μm)である。
【0060】
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤を含む。当該粘着剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。上記粘着剤としては、例えば、感圧粘着剤が用いられ得る。
【0061】
感圧粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、等が挙げられる。なかでも好ましくは、アクリル系粘着剤またはゴム系粘着剤であり、より好ましくはアクリル系粘着剤である。なお、上記粘着剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。1つの実施形態においては、紫外線吸収の観点から、芳香環および/または二重結合を有するベースポリマーを含む粘着剤が用いられる。このような点からも、アクリル系粘着剤は好ましく用いられ得る。
【0062】
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。なかでも、炭素数が4~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。
【0063】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクルロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0064】
1つの実施形態においては、ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)中、有機酸モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー)由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以下であり、より好ましくは0.3重量部以下である。このような範囲であれば、ガス吸着シートからの剥離時に、当該ガス吸着シートのガス吸着層を破壊し難いカバーフィルムを得ることができる。特に、表面処理(好ましくは、カップリング処理)されたガス吸着粒子を用いる場合、このような効果は顕著となる。1つの実施形態においては、有機酸モノマー由来の構成単位を含まないアクリル系ポリマーが用いられる。
【0065】
1つの実施形態においては、ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)中、含窒素モノマー由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは15重量部以下である。このような範囲であれば、ガス吸着シートの剥離時に、当該ガス吸着シートのガス吸着層を破壊し難いカバーフィルムを得ることができる。
【0066】
上記感圧粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤(例えば、ロジン系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、炭化水素系粘着付与剤等)、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、顔料、染料、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粒子等が挙げられる。
【0067】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤である。1つの実施形態においては、紫外線吸収の観点から、芳香環および/または二重結合を有する架橋剤(例えば、芳香族イソシアネート系架橋剤)が用いられる。
【0068】
上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。
【0069】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE-400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP-200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の含有量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.03重量部~5重量部である。
【0070】
上記粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂(例えば、ロジンエステル樹脂など)、テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール共重合体(テルペン変性フェノール樹脂)、水素添加テルペン樹脂など)、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、石油系樹脂(例えば、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、芳香族系石油樹脂などの炭化水素系石油樹脂など)、フェノール系樹脂などが挙げられる。1つの実施形態においては、紫外線吸収の観点から、芳香環および/または二重結合を有する架橋剤(例えば、ロジン系樹脂)が用いられる。粘着付与剤の含有量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には1重量部~50重量部であり、より好ましくは10重量部~30重量部である。
【0071】
D.ガス吸着シートの製造方法
上記ガス吸着シートは、任意の適切な方法により製造され得る。1つの実施形態においては、上記ガス吸着シートは、耐熱性基材上に、上記バインダー樹脂とガス吸着粒子とを含むガス吸着層形成用組成物を塗工(塗布・乾燥)して製造される。塗工によりガス吸着層を形成すれば、ガス吸着粒子の分散性に優れ、ガス吸着性能に優れるガス吸着シートを得ることができる。ガス吸着シートが中間層を備える場合、耐熱性基材上に中間層形成用組成物を塗工して中間層を形成した後、ガス吸着層を形成して製造され得る。
【0072】
上記ガス吸着層形成用組成物は、バインダー樹脂およびガス吸着粒子の他、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。または、中間層形成用組成物は、上記樹脂の他、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。架橋剤とてしては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤である。また、ガス吸着層形成用組成物は、トルエン、酢酸エチル等の溶剤を含んでいてもよい。
【0073】
上記ガス吸着層形成用組成物および中間層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティング法;フレキソ印刷等の凸版印刷法、ダイレクトグラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法等の凹版印刷法、オフセット印刷法等の平版印刷法、スクリーン印刷法等の孔版印刷法等の印刷法が挙げられる。
【0074】
カバーフィルム付ガス吸着シートは、カバーフィルムを任意の適切な方法により、ガス吸着シートのガス吸着層上に積層して得ることができる。なお、カバーフィルムは、基材上に、任意の適切な方法により、上記粘着剤を塗工して得ることができる。
【実施例0075】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0076】
[製造例1]カバーフィルムAの製造方法
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにモノマー(アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/アクリル酸ヒドロキシエチル=30重量部/70重量部/5重量部/4重量部)、開始剤として過酸化ベンゾイル0.2重量部、トルエン244重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って約6時間重合反応を行い、アクリル系共重合体Aを含む樹脂組成物Aを得た。
得られたアクリル系共重合体A100重量部を含む樹脂組成物Aにイソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名「タケネートD-101E」)3重量部、酢酸エチルを加え、ベース15%の粘着剤Aを調整した。粘着剤Aを厚さ75μmの基材(ポリエステルフィルム、東レ社製、商品名「ルミラーS10」)上に、乾燥後の粘着剤層厚みが10μmとなるように塗工して、カバーフィルムA(基材/粘着剤層A)を得た。
【0077】
[製造例2]カバーフィルムB~Qの製造方法
表1に示す基材を用いたこと;アクリル系共重合体の材料モノマーとして、<アクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/アクリル酸ヒドロキシエチル=30重量部/70重量部/5重量部/4重量部>に替えて、表1に示すモノマーを用いたこと;架橋剤の種類・配合量を表1に示す量としたこと;粘着剤層の厚みを表1に示すとおりとしたこと以外は、製造例1と同様にしてカバーフィルムB~Qを得た。
各成分の詳細は、下記のとおりである。
(モノマー)
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
EA:アクリル酸エチル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸ブチル
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AA:アクリル酸
NVP:N-ビニルピロリドン
(基材)
トレファンBO:ポリプロピレンフィルム
ルミラーS1N:ポリエステルフィルム
(架橋剤)
テトラッドC:エポキシ系架橋剤、三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」
【0078】
【表1】
【0079】
[実施例1]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにガス吸着粒子(ユニオン昭和社製、商品名「モレキュラーシーブ3ABパウダー」)100重量部、シランカップリング剤(信越化学社製、商品名「KBM-4803」)4重量部、テトラヒドロフラン150重量部、蒸留水1.3重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って約6時間カップリング反応を行い、表面処理されたガス吸着粒子(1)を得た。
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコにアクリル酸2-エチルヘキシル/アクリル酸(95重量部/5重量部)、開始剤(過酸化ベンゾイル)0.2重量部、酢酸エチル120重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って、約6時間重合反応を行い、アクリル系共重合体(1)を含む樹脂組成物(1)を得た。
アクリル系共重合体(1)100重量部を含む樹脂組成物(1)に、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名「タケネートD-101E」)3重量部、酢酸エチルを加え、ベース18%の中間層形成用組成物(1)を調整した。
得られた中間層形成用組成物(1)を耐熱性基材(ポリイミドフィルム、東レデュポン社製、商品名 「カプトン100H」、厚み:25μm)上に、乾燥後の厚みが10μmになるように塗工し、中間層付き耐熱性基材(1)を得た。
アクリル系共重合体(1)100重量部を含む樹脂組成物(1)に、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)1重量部、酢酸エチル、上記ガス吸着粒子(1)900重量部を添加してベース50%のガス吸着層形成用組成物(1)を調製した。
得られたガス吸着層形成用組成物(1)を、離型処理フィルム(フジコー社製、商品名「CA0」、厚み:7 5μm)上に、乾燥後の厚みが80μmになるように塗布し、ガス吸着層(1)を得た。
得られたガス吸着層(1)を中間層形成用組成物(1)の中間層へ転写し、ガス吸着シート(1)を得た。
ガス吸着シート(1)上に上記カバーフィルムAを、ガス吸着層(1)と粘着剤層Aとが対向するように積層して、カバーフィルム付ガス吸着シートを得た。
【0080】
[実施例2~19、比較例1~3]
ガス吸着粒子作成時のカップリング剤の種類・配合量を表2に示すとおりとし;中間層の厚みを表2に示すとおりとし;ガス吸着層に添加する架橋剤の種類・配合量を表2に示すとおりとし;表2に示すカバーフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カバーフィルム付ガス吸着シートを得た。
なお、比較例においては、カバーフィルムを積層せずに、粘着シートを得、当該粘着シートを下記評価に供した。さらに、比較例1は、中間層付き耐熱性基材に替えて、耐熱性基材(ポリイミドフィルム、東レデュポン社製、商品名「カプトン100H」、厚み:25μm)を用い、当該耐熱性基材にガス吸着層形成組成物を塗布し、ガス吸着シートを得た。
各成分の詳細は、下記のとおりである。
(カップリング剤)
KBM903:信越化学社製、商品名「KBM903」
KBM3033:信越化学社製、商品名「KBM3033」
KBM13:信越化学社製、商品名「KBM13」
KBM403:信越化学社製、商品名「KBM403」
【0081】
【表2】
【0082】
<評価>
実施例および比較例で得られたカバーフィルム付ガス吸着シートを下記評価に供した。結果を表2に示す。
(1)カバーフィルム剥離強度
カバーフィルム付ガス吸着シートを、-100kPaの減圧下110℃で3時間乾燥した後、カバーフィルム付ガス吸着シートからカバーフィルムを剥離し、その剥離強度を測定した。
試験速度:300mm/min
はく離角度:180度
測定温度:25℃
【0083】
(2)カバーフィルム剥離性(乾燥後の剥離性)
上記評価(1)における破壊モードを評価した。
〇:カバーフィルム/ガス吸着層の界面で剥離可能
△:ガス吸着層の表層がカバーフィルム側に移る
×:ガス吸着層が全てカバーフィルム側に移る
【0084】
(3)ガス吸着層強度
カバーフィルム付ガス吸着シートを、-100kPaの減圧下110℃で3時間乾燥した後、カバーフィルム付ガス吸着シートからカバーフィルムを剥離し、露出したガス吸着層表面に日東電工社製No.31Bを貼り合わせ、その剥離強度を測定し、これをガス吸着層強度とした。
貼り合わせ条件:25℃環境下、2kgローラー1往復で貼り合わせ。
試験速度:300mm/min
はく離角度:180度
測定温度:25℃
【0085】
(4)ガス吸着層密着性
上記評価(3)における破壊モードを評価した。
〇:ガス吸着層の凝集破壊モード
×:ガス吸着層の投錨破壊モード
【0086】
(5)カバーフィルム耐熱性
カバーフィルム付ガス吸着シートを、-100kPaの減圧下110℃で3時間乾燥した後、カバーフィルムの状態を評価した。
〇:浮き、剥がれ、収縮によるガス吸着層の露出なし
×:浮き、剥がれ、収縮によるガス吸着層の露出のいずれかが起きる。
【0087】
(6)加工性
カバーフィルム付ガス吸着シートをトムソン刃型(5mm×20mmサイズ、刃厚0.7mm、R:0.2)を用いて、打ち抜き加工後にガス吸着シートの状態を評価した。
〇:ガス吸着層の欠けなし
△:ガス吸着層の欠けは無いが、カバーフィルムの浮き、剥がれあり。
×:ガス吸着層の欠けあり。
【0088】
(7)防湿性
露点温度-50℃、室温23℃のドライルーム内で-100kPaの減圧下110℃で3時間乾燥したカバーフィルム付ガス吸着シートをドライルーム内で保管し、吸湿による水分率変化を測定した。
〇:ドライルーム内で8時間以上水分率1%以下を保持。
×:ドライルーム内で水分率1%以下を8時間保持できない。
・水分率測定法(カールフィッシャー法)
・水分率測定器:HIRANUMA社製 AQ-2100
【0089】
(8)カバーフィルム粘着力
得られたカバーフィルムをSUS304BA板に貼り合わせ、引きはがした際の剥離強度を測定し、これをカバーフィルム粘着力とした。
貼り合わせ条件:25℃環境下、2kgローラー1往復で貼り合わせ。
試験速度:300mm/min
はく離角度:180度
測定温度:25℃
【0090】
(9)ハンドリング性
カバーフィルム付ガス吸着シートを3インチのABS樹脂からなる巻き芯に巻きとる際の不具合を評価する。
〇:問題なし
×:搬送中のガス吸着層の欠け、又は巻き取り後のカバーフィルムの浮きあり。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のガス吸着シートは、非水系2次電池用のガス吸着材として好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0092】
10 耐熱性基材
20 ガス吸着層
30 中間層
100 カバーフィルム付ガス吸着シート
図1