(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154315
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】パネル、パネルの製造方法およびパネル基材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04F13/08 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068086
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000148151
【氏名又は名称】株式会社川島織物セルコン
(71)【出願人】
【識別番号】595046425
【氏名又は名称】スバル産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 義久
(72)【発明者】
【氏名】茂永 健太
(72)【発明者】
【氏名】宝田 隆
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA33
2E110AA57
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB23
2E110CB03
2E110DA12
2E110GA16W
2E110GA24Z
2E110GA28Y
2E110GA32W
2E110GA42W
2E110GA42Z
2E110GB01Y
2E110GB42Y
2E110GB54Z
2E110GB62Y
(57)【要約】
【課題】表皮材をパネル基材に密着させた美観の良いパネルを提供する。
【解決手段】略円形のパネル基材10と、そのパネル基材10の表面10aの全体およびパネル基材10の側部10bの全体を覆う表皮材20とを備えた略円形のパネル1。パネル基材10の側部10bは、パネル基材10の裏面10cに対して裏面方向に突出している。表皮材20の側部対応領域27が側部10bの外面10b1に密着された状態で、固定代領域28が側部10bの裏面側の縁に沿って裏面方向に折り返されて側部10bの内面10b2に接着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル基材と、
前記パネル基材の表面および側部を覆う表皮材とを備えたパネルであって、
前記パネル基材の側部が前記パネル基材の裏面に対して裏面方向に突出しており、
前記表皮材は、前記側部の外面に密着させた状態で前記側部の裏面側の縁に沿って折り返されて前記パネル基材に接着されている、パネル。
【請求項2】
前記パネル基材の側部が、外側または内側に突出する湾曲面を有する、
請求項1記載のパネル。
【請求項3】
前記パネルの側部が2つの面が所定の角度で交わる表裏方向に延びる角部を有し、
前記角部に表裏方向に延びる切欠溝が設けられており、
前記表皮材の余剰部が前記切欠溝に挿入されている、
請求項1記載のパネル。
【請求項4】
前記パネル基材は、枠体と、その枠体内に配置される充填材とを備えており、
前記枠体の高さが前記充填材の高さより大きい、
請求項1から3のいずれかに記載のパネル。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のパネルの製造方法であって、
前記表皮材の表面対応領域を前記パネル基材の表面に合わせる工程と、
前記表皮材の表面対応領域の境界を折り曲げて、前記表皮材の側部対応領域を前記パネル基材の側部の外面に密着させる工程と、
前記表皮材の側部対応領域の境界を前記側部に沿って折り曲げて、前記表皮材の固定代領域を前記パネル基材に接着する工程とを有する、
パネルの製造方法。
【請求項6】
表面および側面を覆う表皮材を取り付けるためのパネル基材であって、
前記パネル基材の側部が、前記パネル基材の裏面に対して裏面方向に突出しており、
前記パネル基材の側部が、外側または内側に突出する湾曲面を有している、
パネル基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁等に取り付けるためのパネル、そのパネルの製造方法およびそのパネルに用いられるパネル基材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や商業用施設等の建築物の内壁面に、防音、防火ならびに装飾を目的としてパネルを取り付けることが行われている。
このようなパネルとして、略多角形状のパネル本体と、そのパネル本体を包み込むように覆う表皮とを備えた内装パネルが開示されている(特許文献1)。この内装パネルのパネル本体の裏面側の角部には溝部が設けられており、その溝部に対応する表皮の縁にはつまみ縫いにより形成された縫い部が設けられている。またパネル本体の裏面側の縁部には、断面略J字状の係止部材が設けられている。そして、この表皮の縫い部をパネル本体の溝部に挿入し、表皮の縁部をパネル本体の係止部材に引っ掛ける。つまり、この内装パネルは、表皮の縁部をパネル本体の裏面側(溝部および係止部材)に固定することにより、しわの発生や張りの偏り等のないように表皮が見栄えよく張られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、引用文献1は、表皮の縁部をパネル本体の裏面側に設けられている溝部および係止部材に挿入するものであるため、表皮に張力を与えた状態で固定することは困難である。つまり、表皮を延ばしながら表皮の縁部を溝部または係止部材に配置させることはできるが、表皮の縁部に溝部または係止部材に挿入したときに延ばされた表皮が緩むことになる。特に、引用文献1の
図9のように、表皮の縁部を係止部材に挿入する場合は、緩みが大きくなる。このように引用文献1の内装パネルは、しわの発生や張りの偏りが生じないようにするものではあるが、表皮を延ばした状態を維持するものではない。引用文献1のように表面から側面に向かって連続した湾曲形状を呈した内装パネルにおいて、このわずかな緩みは美観に大きな影響を与えないが、表面と側面とが角によって仕切られている場合、このわずかな緩みが美観に大きな影響を与える。
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、表皮材をパネル基材に密着させた美観の良いパネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパネルは、パネル基材と、前記パネル基材の表面および側部を覆う表皮材とを備えたパネルであって、前記パネル基材の側部が前記パネル基材の裏面に対して裏面方向に突出しており、前記表皮材は、前記側部の外面に密着させた状態で前記側部の裏面側の縁に沿って折り返されて前記パネル基材に接着されていることを特徴としている。ここで「密着」とは、表皮材の面とパネル基材の側部の面とがしわ無く接していることを言う。
【0006】
本発明のパネルであって、前記パネル基材の側部が、外側または内側に突出する湾曲面を有するものが好ましい。
パネル基材の側部が湾曲面を有する場合、シート状の表皮材をパネル基材の表面の縁で側面に折り曲げたとき、表皮材のパネル基材の側面に対応する領域(以下、側面対応領域という)の面積がパネル基材の側面の面積に対して異なることになる。詳しくは、外側に突出する湾曲面の場合、表皮材の側面対応領域の面積がパネル基材の側面の面積より大きくなり、内側に突出する湾曲面の場合、表皮材の側面対応領域の面積がパネル基材の側面の面積より小さくなる。そのため、外側に突出する湾曲面を有する場合は、パネル基材の側部に密着させるためには、側面対応領域を延ばしながら過剰な部分を前記側部の内面に引っ張る必要がある。一方、内側に突出する湾曲面を有する場合は、不足する部分を補うように側面対応領域を延ばしてパネル基材の側面に密着させる必要がある。このように湾曲面を有するパネル基材であっても表皮材をパネル基材の側部にしわ無く密着させることができる。
【0007】
本発明のパネルであって、前記パネルの側部が、2つの面が所定の角度で交わる表裏方向に延びる角部を有し、前記角部に表裏方向に延びる切欠溝が設けられており、前記表皮材の余剰部が前記切欠溝に挿入されているものが好ましい。ここで「余剰部」とは、表皮材でパネル基材の表面を覆い、パネル基材の表面の縁部に沿って折ってパネル基材の側面部を覆うときに、パネル基材の側面に対して余る領域をいう。このような余剰部は、表皮材の延びでは十分に吸収することができない。この余剰部を切欠溝に挿入することにより、パネル基材の角部周辺において、表皮材をパネル基材に密着させて装着することができる。またここで「角部」とは、2つの面の境界線(角)だけでなくその周辺を含む。
【0008】
本発明のパネルであって、前記パネル基材は、枠体と、その枠体内に配置される板状の充填材とを備えており、前記枠体の高さが前記充填材の高さより大きいものが好ましい。つまり、枠体と充填材の表面を合わせることにより、枠体が充填材に対して裏面方向に突出することになる。
【0009】
本発明のパネルの製造方法は、前記表皮材の表面対応領域を前記パネル基材の表面に合わせる工程と、前記表皮材の表面対応領域の境界を折り曲げて、前記表皮材の側部対応領域を前記パネル基材の側部の外面に密着させる工程と、前記表皮材の側部対応領域の境界を前記側部の裏面側の縁に沿って折り曲げて、前記表皮材の固定代領域を前記パネル基材に接着する工程とを有することを特徴としている。
【0010】
本発明のパネル基材は、表面および側面を覆う表皮材を取り付けるためのパネル基材であって、前記パネル基材の側部が、前記パネル基材の裏面に対して裏面方向に突出しており、前記パネル基材の側部が、外側または内側に突出する湾曲面を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパネルは、表皮材がパネル基材の側部の外面に密着させた状態でパネル基材の側部の裏面側の縁に沿って折り返されている。つまり、パネル基材の側部の裏面側の縁による表皮材の折り返し部分の係止によって、表皮材の密着状態を維持することができる。そして、この係止状態を維持するように、表皮材がパネル基材に接着されているため、パネルの側部において表皮材のしわ等がない、美観に優れたパネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1aおよび
図1bはそれぞれ本発明のパネルの第1実施形態を示す表斜視図および裏斜視図であり、
図1cはその分解図を示す裏斜視図である。
【
図2】
図2aは
図1のパネルの枠体を示す裏斜視図であり、
図2bは
図1のパネルの充填材を示す裏斜視図であり、
図2cは
図1のパネルの表皮材の展開図を示す表斜視図であり、
図2dは
図1のパネルの概略を示す一部拡大側面断面図である。
【
図3】
図3aおよび
図3bはそれぞれ本発明のパネルの第2実施形態を示す表斜視図および裏斜視図であり、
図3cはその分解図を示す裏斜視図である。
【
図4】
図4aは
図3のパネルの枠体を示す表斜視図であり、
図4bは
図3のパネルの充填材を示す裏斜視図であり、
図4cは
図3のパネルの表皮材の展開図を示す表斜視図である。
【
図5】
図5aは本発明のパネルの第3実施形態を示す側面図であり、
図5bは本発明のパネルの第4実施形態の分解図を示す裏斜視図であり、
図5cおよび
図5dはそれぞれ本発明のパネルの第5実施形態および第6実施形態を示す表視図である。
【
図6】
図6aは本発明のパネルの第7実施形態を示す裏斜視図であり、
図6bはそのパネルの概略を示す一部拡大側面断面図である。
【
図7】
図7aおよび
図7bはそれぞれ本発明の円形のパネルの実施例を示す平面写真および裏面写真であり、
図7cはその一部を示す拡大側面写真であり、
図7dはその一部を示す斜視写真である。
【
図8】
図8aおよび
図8bはそれぞれ本発明の正方形のパネルの実施例を示す平面写真および裏面写真であり、
図8cおよび
図8dはそれぞれその一部を示す拡大側面写真であり、
図8eはその一部を示す斜視写真である。
【
図9】
図9aは本発明のパネルを複数並べた裏面写真であり、
図9bおよび
図9cはそれぞれその中の一つのパネルを示す平面写真および裏面写真であり、
図9dおよび
図9eはそれぞれ他のパネルを示す平面写真および裏面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は次の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
「パネル1(第1の実施形態)」
図1a、
図1bのパネル1は、略円形のパネル基材10と、そのパネル基材10の表面10aの全体およびパネル基材10の側部10bの全体を覆う表皮材20とを備えた略円形のものである。パネル基材10は、
図1cに示すように、側部10bがパネル基材10の裏面10cに対して裏面方向に突出している。そして、
図1cおよび
図2dに示すように、表皮材20の側部対応領域27が側部10bの外面10b1に密着された状態で、固定代領域28が側部10bの裏面側の縁に沿って裏面方向に折り返されて側部10bの内面10b2に接着されている。これはパネル1の裏面の縁部の突出部30として現れる(
図1b、
図2d参照)。
このパネル1は、建築物の壁・天井・床に取り付けられるパネルであり、特に、防音・吸音用、防火用および/または装飾用として内壁に取り付けるためのパネルである。
【0015】
「パネル基材10」
パネル基材10は、
図1cに示すように、略円形の枠体110と、その枠体110内に配置される板状の充填材120とを備えている。枠体110の高さが、充填材120の高さより大きくなっている。そのため、枠体110の表面と充填材120の表面とを面一とするにより、枠体110が充填材120に対して裏面方向に突出する。つまり、パネル基材10の側部10bは、裏面10cに対して環状に突出することになる。そして、この裏面方向に突出している側部10bは、環状に連続していることが好ましいが、一部に切り欠け等が設けられてもよい。またパネル基材10の表面10aと側部10bとは、所定の角度(ここでは90度)で交わっており、その境界は角になっている。
枠体110は、
図2aに示すように、細長い枠片111を幅方向に立て、それを円形に曲げて、両端部111aを連結したものである。この枠片111がパネル基材10の側部(外側に突出した湾曲面)10bを形成する。
枠片111の材質は特に限定されるものではないが、例えば、木製、樹脂製あるいは金属製などの硬質材が用いられ、特に自己消化性や難燃性を有するものが好ましく用いられる。
枠体110の高さ(パネルの高さ)は、例えば、4mm~100mm、好ましくは6mm~50mm、特に、6mm~30mmである。パネル1の表皮材20の側面対応領域の過剰な部分(または不足する部分)は、その高さが大きくなるに従って増大する。そのため、枠体110の高さが100mmより大きい場合、表皮材の材質にもよるが、表皮材の過剰な部分(または不足する部分)が大きくなりすぎて表皮材を延ばすだけでは対応できなくなる。一方、枠体110の高さが4mmより小さい場合、枠体の裏面側の端部で表皮材の折り返し部分を係止しにくくなる。特に、表皮材として織物を用いる場合の係止が困難になる。
【0016】
充填材120は、
図2bに示すように、枠体110内に固定される円板である。
このような充填材120の材質は、特に限定されるものではない。しかし、吸音材としては、ウレタン等の発泡性材料、あるいは、繊維を圧縮した繊維集合体材料等が好ましく挙げられる。特に、繊維集合体としては、ガラス繊維を雲状に圧縮したモルトンや、天然繊維や化学繊維等を圧縮したフェルト等が好ましく挙げられる。
【0017】
なお、パネル基材10において、枠体110の高さから充填材120の高さを差し引いた裏面方向に突出した部分の深さH(
図2a参照)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5mm以上、好ましくは2mm以上、特に好ましくは3mm以上であり、10mm以下、好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下である。0.5mmより浅いと、延ばした表皮材20を係止しにくくなる。一方、10mmより深いと、延ばした表皮材20を係止する治具等として特殊なものが必要となる。
枠体110(枠片111)の厚みD(
図2a参照)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1mm以上であり、5mm以下、好ましくは3mm以下、特に好ましくは2mm以下である。0.2mmより厚みが小さいと、表皮材を破けたり、表皮材の張力によって枠体110が割れるおそれがある。一方、5mmより厚みが大きいと、延ばした表皮材20を係止しにくくなる。
【0018】
「表皮材20」
表皮材20は、
図2cに示すように、パネル基材10の表面を実質的に覆う表面対応領域26と、パネル基材10の側面を実質的に覆う側部対応領域27と、パネル基材10の裏面に固定される固定代領域28とを有する。
側部対応領域27は、半径方向外側に向かって徐々に面積が大きくなる。そのため、パネル基材10の側部10bより大きく、過剰な部分を有する。
固定代領域28は、側部対応領域27の外側にあり、実質的にパネル基材10の側部10cの裏面側の端部を支点として折り返した部分となる。固定代領域28は、パネル基材10の側部10bの内面10b2およびパネル基材10の裏面10cに接着されている(
図2d参照)。固定代領域28も、半径方向外側に向かって徐々に面積が大きくなる。そのため、固定代領域28と内面10b2との接着は、密着していなくてもよく、少なくとも内面10b2の一部に接着されていればよい。
なお、表皮材20は延ばしながらパネル基材10に装着されるため、各領域の厳密な境界は各々の製品によって異なる。例えば、側部対応領域27と固定代領域の境界線は、厳密には円形とならない。また固定代領域28の形状は、特に限定するものではなく、外側端部に半径方向に延びる切込みを入れてもよい。切込みを入れることにより、パネル基材10の裏面10cに接着させやすくなる。
表皮材20としては、特に限定されるものではないが、織物やフィルムなどが挙げられる。しかし、延性の小さいものが好ましく、例えば、延性の小さい織物が特に好ましく挙げられる。なお、表皮材20には、模様等の装飾が施されていてもよい。
【0019】
「パネル1の製造方法」
次にパネル1の製造方法について説明する。
パネル1の製造方法は、パネル基材10を準備する工程(工程1)と、表皮材20の表面対応領域26をパネル基材10の表面10aに合わせる工程(工程2)と、表皮材20の表面対応領域26の境界を折り曲げて、表皮材20の側部対応領域27をパネル基材10の側部10bの外面10b1に密着させる工程(工程3)と、表皮材20の側部対応領域27の境界をパネル基材10の側部10bの裏面側の縁に沿って折り曲げて、表皮材20の固定代領域28をパネル基材10の側部10bの内面10b2に接着する工程(工程4)とを有する。
【0020】
上記工程1は、パネル枠体110と充填材120とを準備して組み立てることによってパネル基材10を準備する。
上記工程2は、
図1cに示すように、表皮材20の表面対応領域26をパネル基材10の表面10aに合わせる。
上記工程3は、表皮材20の表面対応領域26をパネル基材10の表面10aに合わせて、パネル基材10の形状に沿って表面対応領域の境界を裏面方向に折り曲げて、表皮材20の側部対応領域27とパネル基材10の側部10bの外面10b1とを合わせる。つまり、表面対応領域26と側部対応領域27との境界に折り目が設けられる。それと同時に、側部対応領域27の外側(固定代領域等)を引っ張ることにより側部対応領域27を延ばし、側部対応領域27をパネル基材10の側部10bの外面10b1に隙間なく密着させる。
【0021】
上記工程4は、表皮材20の端部を引っ張りながら、パネル基材の10の側部10bの裏面側の縁に沿って側部対応領域の境界を内側かつ表面方向に折り返し、表皮材20の固定代領域28とパネル基材10の側部10bの内面10b2とを合わせると同時に、固定代領域28と内面10b2とを接着する。つまり、表皮材20の側部対応領域27と固定代領域28の境界(折り返し部分)を、パネル基材10の側部10bの裏面側の縁に係止させて、固定代領域28をパネル基材10に接着させる。
この固定代領域28とパネル基材10との接着は、特に限定するものではないが、両面テープやホットメルトや接着剤等による接着が挙げられる。接着剤等で接着する場合、表皮材の側部対応領域27と側部10bの外面10b1との密着状態を確実に維持するべく、表皮材20の上から側部10b(外面10b1および/または内面10b2)に向かって治具等で押圧したり、洗濯ばさみやクリップ等で側部10bを表皮材20の上から挟んだり、パネル基材10を裏にして表皮材20の上から錘を置いたりするのが好ましい。また固定代領域28と内面10b2との接着と共に、外側の固定代領域28をパネル基材10の裏面10cと固定することにより一層強固に表皮材20をパネル基材10に固定することができる。
工程4の一例として、固定代領域28と内面10bとを両面テープで接着し、その後、その外側の固定代領域28とパネル基材10の裏面10c(および/または内面10b)との間にホットメルトや接着剤等を塗布し、固定する方法が挙げられる。この場合、接着剤等が固定するまでの間、両面テープで表皮材の側部対応領域27と側部10bの外面10b1との密着状態を維持できる。そして、接着剤等が固化することにより一層強固な固定を実現できる。なお、この場合、固定代領域28と裏面10cとの間のホットメルトや接着剤等が固化するまでの間、クリップや治具等で表皮材の固定代領域28を内面10bに押し付けるようにするのが好ましい。
【0022】
「パネル1の効果」
パネル1は、表皮材20がパネル基材10の側部10bの外面10b1に密着させた状態でパネル基材10の側部10bの裏面側の縁に沿って折り返されている。つまり、表皮材20の端部を引っ張ることにより、パネル基材10の側部10bの裏面側の縁で表皮材20の折り返し部分が係止され、表皮材20の密着状態が維持される。この状態で接着剤を固化させることにより、パネルの側部において表皮材のしわ等がなく、美観に優れたパネル1が得られる。特に、表皮材20をパネル基材10の側部10bの内面10b2に接着することにより、安定して表皮材20をパネル基材10に固定することができる。このようにパネル1は、パネル基材10の側部10bと表皮材20の側部対応領域27の面積が異なるが、外面にしわや膨出部等が生じさせることなく装着することができる。
【0023】
「パネル2(第2の実施形態)」
図3a、
図3bのパネル2は、
図1のパネル1と異なり、側部10bが湾曲面を有さず、4つの平面から構成されている。具体的にパネル2は、略正方形状のパネル基材10と、そのパネル基材10の表面10aの全体およびパネル基材10の側面10bの全体を覆う表皮材20とを備えた略正方形状のものである。パネル基材10は、
図3cに示すように、側部10bがパネル基材の裏面10cに対して裏面方向に突出している。そして、表皮材20の側部対応領域27が側部10bの外面10b1に密着した状態で、表皮材20の固定代領域28が側部10bの裏面側の縁に沿って裏面方向に折り返されて側部10bの内面10b2に接着されている。これはパネル2の裏面の縁部の突出部30として現れる。またパネル基材10の側部10bが角部16を4つ有し、この角部16に表裏方向に延びる切欠溝17が設けられており、表皮材20の余剰部29がその切欠溝17に挿入されている。
【0024】
「パネル基材10」
パネル基材10は、略正方形状の枠体110と、その枠体110内に配置される板状の充填材120とを備えている。枠体110の高さが、充填材20の高さより大きくなっている。そのため、枠体110の表面と充填材120の表面とを面一とすることにより、枠体110が充填材120に対して裏面方向に突出する。つまり、このパネル基材10も側部10bが裏面10cに対して環状に突出している。またパネル基材10の表面10aと側部10bとは、所定の角度(特に90度)で交わっており、その境界は角になっている。
枠体110は、
図4aに示すように、4つの細長い枠片111を幅方向に立てて、正方形状に連結したものである。この枠片111がパネル基材10の側面10bを形成する。隣接する各枠片111は、直角で交わっており、外側に突出した表裏方向に延びる角部16を形成している。この枠体110の4つ角部16には、パネル基材10の裏面に相当する枠片111の下端(
図4aの下)から上端側に向かって外溝115が形成されている。
この外溝115は、枠体110の内外を貫通するように形成されている。外溝115は、枠体110の裏面とは連続し、表面と非連続となっている。そして、角部16には、外溝115の上底115aが形成されている。
枠片111の材質は特に限定されるものではないが、例えば、木製、樹脂製あるいは金属製などの硬質材が用いられ、特に自己消化性や難燃性を有するものが好ましく用いられる。
枠体110の高さ(パネルの高さ)は、例えば、4mm~100mm、好ましくは6mm~50mm、特に、6mm~30mmであり、
図1のパネル1と実質的に同じである。
【0025】
充填材120は、
図4bに示すように、枠体110内に固定される正方形状の板である。
取り付けられる枠体110の外溝115と対応するように充填材120の角部には、裏面120cから表面側に向かって延びる内溝125が形成されている。また内溝125は、角部から充填材120の内側(中心側)にも延びている。つまり、この内溝125は、充填材120の側部外側方向に開口し、裏面と連続し、表面と非連続である。
充填材120の材質は、
図1のパネル1と実質的に同じである。
【0026】
このようにパネル基材10の切欠溝17は、枠体110の外溝115と、充填材120の内溝125とから構成されている。つまり、パネル基材10の切欠溝17は、パネル基材10の側部(角部)において、パネル基材10の裏面10cと連続し、表面10aと非連続となっている。
なお、
図4のパネル基材10の切欠溝17は枠体110の外溝115と充填材120の内溝125とから構成しているが、内溝125を設けず、外溝115のみから構成してもよい。またその場合、枠片111の厚みが十分である場合は、外溝115は枠片111を貫通していなくてもよい。また切欠溝17は、パネル基材10の角部16の角を無くすように設けられているが、表皮材の余剰部29を挿入できて、かつ、余剰部29を挿入することにより角部16の周辺に装着される表皮材20の側部対応領域27をパネル基材に密着させることができれば、多少ずれていてもよい。
切欠溝17の深さは、少なくともパネル基材10(枠体110)の厚みの50%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上であり、枠体110の厚みの95%以下、好ましくは90%以下である。例えば、5mm以上、好ましくは6mm以上、特に好ましくは8mm以上であり、80mm以下、好ましくは25mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
切欠溝17の幅は、特に限定されるものではないが、用いる表皮材の厚みの1.5倍以上、好ましくは2倍以上、3倍以下、好ましくは2.5倍以下である。
【0027】
「表皮材20」
表皮材20は、
図4cに示すように、パネル基材10の表面10aを覆う表面対応領域26と、パネル基材10の側部10bを覆う側部対応領域27と、パネル基材10の裏面側に固定される固定代領域28と、余剰部29とを有する。余剰部29は、表皮材20を表面対応領域26の縁部に沿って折ったとき、隣接する側部対応領域27の間に生じる領域である。固定代領域28は、実質的にパネル基材10の側部10bの裏面側の縁を支点として折り返す部分になり、パネル基材10の側部10bの内面10b2およびパネル基材10の裏面10cに接着される。
表皮材20としては、特に限定されるものではないが、織物やフィルムなどが挙げられる。しかし、延性の小さいものが好ましく、例えば、延性の小さい織物が特に好ましく挙げられる。なお、表皮材20には、模様等の装飾が施されていてもよい。
【0028】
「パネル2の製造方法」
次にパネル2の製造方法について説明する。
パネル2の製造方法は、パネル基材10を準備する工程(工程1)と、表皮材20の表面対応領域26をパネル基材10の表面10aに合わせる工程(工程2)と、表皮材20の表面対応領域26の境界を折り曲げて、表皮材20の側部対応領域27をパネル基材10の側部10bの外面10b1に密着させる工程(工程3)と、表皮材20の側部対応領域27の境界をパネル基材10の側部10bの裏面側の縁に沿って折り曲げて、表皮材20の固定代領域28をパネル基材10の側部10bの内面10b2に接着する工程(工程4)とを有する。
【0029】
上記工程1は、パネル枠体110と充填材120とを準備して組み立てることによってパネル基材10を準備する。
上記工程2は、
図1cに示すように、表皮材20でパネル基材10を覆うように準備し、表皮材20の表面対応領域26をパネル基材10の表面10aに合わせる。
上記工程3は、表皮材20の表面対応領域26をパネル基材10の表面10aに合わせて、パネル基材10の形状に沿って表面対応領域の境界を裏面方向に折り曲げて、表皮材20の側部対応領域27とパネル基材10の側部10bの外面10b1とを合わせる。つまり、表面対応領域26と側部対応領域27との境界に折り目が設けられる。それと同時に、側部対応領域27の外側(固定代領域等)を引っ張ることにより側部対応領域27を延ばし、側部対応領域27をパネル基材10の側部10bの外面10b1に隙間なく密着させる。さらに、表皮材20の余剰部29をパネル基材10の切欠溝17に挿入する。なお、切欠溝17に挿入した余剰部29は、裏面側から引っ張ってもよく、治具等で押し込むようにしてもよい。
上記工程4は、表皮材20の端部を引っ張りながら、パネル基材の10の側部10bの裏面側の縁に沿って側部対応領域の境界を内側かつ表面方向に折り返し、表皮材20の固定代領域28とパネル基材10の側部10bの内面10b2とを合わせると同時に、固定代領域28と内面10b2とを接着する。接着には、
図1のパネル1と同様に両面テープ、接着剤またはホットメルト等が用いられる。このとき、表皮材20の上から側部10bに向かって治具等で押圧することにより、表皮材の側部対応領域27と側部10bの外面10b1との密着状態を確実に維持することができる。接着剤が完全に乾いて固化したのを確かめて、治具等による押圧を解除する。なお、余剰部29は、切欠溝17の裏面側において接着してもよく、切欠溝15内においてエラストマー等を入れて固定してもよい。
【0030】
「パネル2の効果」
パネル2も、
図1のパネル1と同様に、表皮材20がパネル基材10の側部10bの外面10b1に密着させた状態でパネル基材10の側部10bの裏面側の縁に沿って折り返されているため、表皮材20をパネル基材10に密着させた状態でしわ無く固定することができる。特に、パネル2の場合、パネル基材10の表面10aおよび側部10bと、表皮材20の表面対応領域26および側部対応領域27とは実質的に面積が同じとなるため、湾曲したもののように表皮材20を延ばす必要がないが、若干延ばして表皮材に張力を与えることにより、より美しく表皮材20を装着させることができる。
またパネル2は、表皮材20の余剰部29をパネル基材10の切欠溝17に挿入している、あるいは、差し込んでいるため、外力等が加えられても剥がれたりしにくい。特に、余剰部29の切欠溝17への挿入に伴い、パネル基材110の角部112の周辺を覆う表皮材20に適切な張力を与えることができるため、角部周辺にしわや膨出部が形成されるのを防ぐことができる。
【0031】
「その他の形態」
図1のパネル1および
図3のパネル2は、いずれもパネル基材10の側面が表面に対して垂直に延びているが、
図5aのパネル3のように側面10bが、表面10aに対して裏面10cが縮小するように傾斜していてもよい。この場合、複数のパネルを並べる際、パネルの側面の厚みに関係なく隣接したパネルの縁(辺)を近づけることができるため、並べたパネルの美観をより向上させることができる。なお、図示しないが、側面10bが、表面10aに対して裏面10cが拡大するように傾斜させてもよい。
図1のパネル1および
図3のパネル2は表面と裏面とが平行になっているが、表面が裏面に対して所定の角度を有するようにしてもよい(図示せず)。
図1のパネル1および
図3のパネル3は枠体と充填材とからなるパネル基材を用いているが、枠体を設けずに充填材のみから構成してもよい。例えば、充填材の縁部を裏面側に突出させるように成形してもよく、または、充填材の縁部に突条を設けるようにしてもよい(図示せず)。
図3のパネル2では、余剰部29を切欠溝17に挿入しているが、
図5bのパネル4のように表皮材20から余剰部29を予め切断し、パネル基材10に切欠溝17を設けなくしてもよい。
図3のパネル2は、パネル基材10の切欠溝17が裏面10cと連続し、表面10aと連続していないが特に限定するものではない。例えば、切欠溝17は、裏面10cから表面10aまで延びていてもよく(表面10aおよび裏面10cと連続)、裏面10cおよび表面10aのいずれとも非連続としてもよく、表面10aと連続し、裏面10cと非連続としてもよい(図示せず)。
【0032】
これまで
図1のパネル1および
図3のパネル2を紹介しているが、パネルの形状は特に限定されるものではない。例えば、正三角形や二等辺三角形等の三角形でもよく、長方形等の正方形以外の四角形でもよく、正五角形等の五角形等の多角形であってもよい。また
図5cのパネル5や
図5dのパネル6のように、湾曲面と平面との両方を備えた形状であってもよい。具体的に、パネル5は、外側に向かって湾曲する湾曲面11と、2つの平面12とを有する側部からなり、3つの角部16を有する扇状のものである。パネル6は、内側に向かって湾曲する湾曲面11と、2つの平面12とを有する側部からなり、3つの角部16を有する扇状のものである。パネル5およびパネル6の各角部16には、切欠溝17が設けられている。
【0033】
図1のパネル1および
図3のパネル2は、いずれも表皮材20の側部対応領域27が側部10bの外面10b1に密着した状態で、表皮材20の固定代領域28が側部10bの裏面側の縁に沿って裏面方向に折り返されて側部10bの内面10b2に接着されている。しかし、
図6a、bのパネル7のように、表皮材20の固定代領域28は、側部10bに沿って裏面方向に折り返され、側部10bの内面10b2に接着させずにパネル基材10の裏面10cに接着されてもよい。この場合、パネル基材10の裏面10cと、表皮材20の固定代領域28との間に、パネル基材10の裏面10cの縁部にて空間Sが設けられることになる。そのため、パネルの裏面に、その空間Sを潰すように外力が加わると接着が剥離するおそれがある。このような表皮材20の接着(固定)は、例えば、表皮材20が分厚いなど表皮材20を側部10bに沿って折り曲げるのが困難な場合、好ましく用いられる。
【実施例0034】
図7~
図9に本発明のパネルの実施例を示す。
図7a~
図7dのパネルは、
図1のパネル1(円形のパネル)の実施例である。り、
図8a~
図8dのパネルは、
図3のパネル2(正方形のパネル)の実施例である。また
図9a~
図9dのパネルは、側部として湾曲面と平面とを有する形状のパネルの実施例である。いずれのパネルも、表面および側部にしわなく表皮材がパネル基材に装着されている。例えば、
図7の円形のパネルは、
図7cのように側部の織目が上に向かって湾曲しており、表皮材が上側に延ばされて装着されているのがわかる。このように本発明は、種々の形状のパネルでもしわなく表皮材を装着することができる。