(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154317
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】光変調器素子、光送信器及び光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
G02F1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068091
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 憲介
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA17
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA11
2K102DA05
2K102DB04
2K102DD03
2K102EA08
2K102EA21
2K102EB22
(57)【要約】
【課題】高次モードの発生を抑制し、光信号の品質低下及び光損失を抑制できる光変調器素子等を提供する。
【解決手段】光変調器素子は、リブ型光導波路と、第1の薄膜と、第1の高濃度ドープ領域と、第1の金属電極とを有する。リブ型光導波路は、PN接合を有するリブ部と、前記リブ部のP型領域と連続するP型スラブ領域と、前記リブ部のN型領域と連続するN型スラブ領域と、を有する。第1の薄膜は、前記P型スラブ領域の上に形成され、前記P型スラブ領域の材質との電子親和力が異なる。第1の高濃度ドープ領域は、リブ部から離れた位置にある前記P型スラブ領域内の領域である。第1の金属電極は、前記第1の薄膜が上層に形成される前記P型スラブ領域の外側に位置する前記第1の高濃度ドープ領域と電気的に接続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PN接合を有するリブ部と、前記リブ部のP型領域と連続するP型スラブ領域と、前記リブ部のN型領域と連続するN型スラブ領域と、を有するリブ型光導波路と、
前記P型スラブ領域の上に形成され、前記P型スラブ領域の材質との電子親和力が異なる第1の薄膜と、
前記リブ部から離れた位置にある前記P型スラブ領域の第1の高濃度ドープ領域と、
前記第1の薄膜が上層に形成される前記P型スラブ領域の外側に位置する前記第1の高濃度ドープ領域と電気的に接続する第1の金属電極と、
を有することを特徴とする光変調器素子。
【請求項2】
前記第1の薄膜は、
前記第1の金属電極からギャップを隔てて前記P型スラブ領域上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光変調器素子。
【請求項3】
前記第1の薄膜は、
前記P型スラブ領域の材質に比較して電子親和力が小さい材質を含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調器素子。
【請求項4】
前記第1の薄膜は、意図的にドーピングされていないアンドープ状態であることを特徴とする請求項1に記載の光変調器素子。
【請求項5】
前記第1の薄膜は、
前記リブ部の側壁からギャップを隔てて前記P型スラブ領域上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光変調器素子。
【請求項6】
前記第1の薄膜の少なくとも一部が前記第1の高濃度ドープ領域の上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光変調器素子。
【請求項7】
前記N型スラブ領域の上に形成され、前記N型スラブ領域の材質との電子親和力が異なる第2の薄膜と、
前記リブ部から離れた位置にある前記N型スラブ領域の第2の高濃度ドープ領域と、
前記第2の薄膜が上層に形成される前記N型スラブ領域の外側に位置する前記第2の高濃度ドープ領域と電気的に接続する第2の金属電極と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の光変調器素子。
【請求項8】
前記リブ型光導波路は、シリコンを含み、
前記第1の薄膜及び前記第2の薄膜は、ゲルマニウムを含むことを特徴とする請求項7に記載の光変調器素子。
【請求項9】
前記第1の薄膜及び前記第2の薄膜は、ゲルマニウム組成比が少なくとも0.2~0.4のシリコン・ゲルマニウムで構成することを特徴とする請求項8に記載の光変調器素子。
【請求項10】
送信信号を用いて光を光変調して送信光を送信する光変調器素子を有する光送信器であって、
前記光変調器素子は、
PN接合を有するリブ部と、前記リブ部のP型領域と連続するP型スラブ領域と、前記リブ部のN型領域と連続するN型スラブ領域と、を有するリブ型光導波路と、
前記P型スラブ領域の上に形成され、前記P型スラブ領域の材質との電子親和力が異なる第1の薄膜と、
前記リブ部から離れた位置にある前記P型スラブ領域の第1の高濃度ドープ領域と、
前記第1の薄膜が上層に形成される前記P型スラブ領域の外側に位置する前記第1の高濃度ドープ領域と電気的に接続する第1の金属電極と、
を有することを特徴とする光送信器。
【請求項11】
送信信号を用いて光を光変調して送信光を送信する光変調器素子と、
光を用いて受信光から受信信号を受信する光受信器素子と、
を有する光トランシーバであって、
前記光変調器素子は、
PN接合を有するリブ部と、前記リブ部のP型領域と連続するP型スラブ領域と、前記リブ部のN型領域と連続するN型スラブ領域と、を有するリブ型光導波路と、
前記P型スラブ領域の上に形成され、前記P型スラブ領域の材質との電子親和力が異なる第1の薄膜と、
前記リブ部から離れた位置にある前記P型スラブ領域の第1の高濃度ドープ領域と、
前記第1の薄膜が上層に形成される前記P型スラブ領域の外側に位置する前記第1の高濃度ドープ領域と電気的に接続する第1の金属電極と、
を有することを特徴とする光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器素子、光送信器及び光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、データセンタ、5Gフロントホール・バックホール等の通信容量の増加に伴って、大容量の光ファイバ通信の需要が増大しているため、電気信号を光信号に変調する光変調器素子を使用した光トランシーバが広く普及している。光トランシーバに使用される光変調器素子は、光損失を低減しながら、高速通信を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0187635号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2022/0026747号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2022/0252911号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光変調器素子では、導波モードの電界が伸長すると、高次モードが発生し、高次モードのモード間干渉により、光変調信号の消光比や光変調強度が低下し、ビットエラーが増大して光信号の品位が低下してしまう。しかも、高次モードが発生すると、基底モードから高次モードへと光エネルギが移行して光損失が発生する。
【0005】
一つの側面では、高次モードの発生を抑制しながら、光信号の品質低下及び光損失を抑制できる光変調器素子等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様の光変調器素子は、リブ型光導波路と、第1の薄膜と、第1の高濃度ドープ領域と、第1の金属電極とを有する。リブ型光導波路は、PN接合を有するリブ部と、前記リブ部のP型領域と連続するP型スラブ領域と、前記リブ部のN型領域と連続するN型スラブ領域と、を有する。第1の薄膜は、前記P型スラブ領域の上に形成され、前記P型スラブ領域の材質との電子親和力が異なる材料を有する。第1の高濃度ドープ領域は、前記リブ部から離れた位置にある前記P型スラブ領域内の高濃度のドープ領域である。第1の金属電極は、前記第1の薄膜が上層に形成される前記P型スラブ領域の外側に位置する前記第1の高濃度ドープ領域と電気的に接続する。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面によれば、高次モードの発生を抑制しながら、光信号の品質低下及び光損失を抑制できる光変調器素子等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の光変調器素子の略断面部分の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施例1の光変調器素子のドーパント配置構成分の一例を示す説明図である。
【
図3A】
図3Aは、実施例1の光変調器素子の導波モードの電界分布の一例を示す説明図である。
【
図3B】
図3Bは、比較例の光変調器素子の導波モードの電界分布の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、比較例の光変調器素子及び実施例1の光変調器素子での基底モードの電界プロファイルの一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、Si及びGeのバンドギャップの一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、電子・ホールの移動度と不純物濃度との関係の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、RF周波数とEO応答との対応関係の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施例2の光変調器素子のドーパント配置構成分の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施例2の光変調器素子の薄膜の略断面部分の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、実施例3の光変調器素子のドーパント配置構成分の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施例3の光変調器素子の略断面部分の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、他の光変調器素子の略断面部分の一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、本実施例の光トランシーバの一例を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、比較例の光変調器素子の略断面部分の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図14は、比較例の光変調器素子100の略断面部分の一例を示す説明図である。
図14に示す光変調器素子100は、リブ型導波路101と、リブ型導波路101と電気的に接続すると共に、信号電極104と接続する金属電極103とを有する。リブ型導波路101は、リブ形状のコア102で構成し、コア102を挟み込む上部クラッド層106及び下部クラッド層105と、を有する。コア102は、リブ部111と、リブ部111の両側と連続するスラブ部112と、スラブ部112上に形成する薄膜113とを有する。
【0010】
リブ部111は、横型のPN接合を構成するP型領域111A及びN型領域111Bを有する。スラブ部112は、P型領域111Aと連続するP型スラブ領域112Aと、N型領域111Bと連続するN型スラブ領域112Bとを有する。薄膜113は、P型スラブ領域112A上に形成された第1の薄膜113Aと、N型スラブ領域112B上に形成された第2の薄膜113Bとを有する。金属電極103は、第1の薄膜113Aと電気的に接続する第1の金属電極103Aと、第2の薄膜113Bと電気的に接続する第2の金属電極103Bとを有する。第1の金属電極103Aは、信号電極104内の第1の信号電極104Aと電気的に接続すると共に、第2の金属電極103Bは、信号電極104内の第2の信号電極104Bと電気的に接続する。
【0011】
第1の薄膜113Aは、P型スラブ領域112Aの材質と電子親和力が異なる半導体材料で構成される。尚、半導体の電子親和力とは、外部の真空準位から半導体の伝導体の底にまで電子1個を移動させる際に得られるエネルギである。
【0012】
第2の薄膜113Bは、N型スラブ領域112Bの材質と電子親和力が異なる半導体材料で構成される。第1の薄膜113Aは、リブ部111のP型領域111Aの側壁からギャップg11を隔ててP型スラブ領域112A上に形成されている。また、第2の薄膜113Bは、リブ部111のN型領域111Bの側壁からギャップg12を隔ててN型スラブ領域112B上に形成されている。
【0013】
第1の薄膜113AとP型スラブ領域112Aとの界面には、SiとGeとのヘテロ接合が形成される。また、第2の薄膜113BとN型スラブ領域112Bとの界面にも、SiとGeとのヘテロ接合が形成される。
【0014】
従って、比較例の光変調器素子100では、ヘテロ接合で形成される高移動度のキャリアによって第1の信号電極104Aと第2の信号電極104Bとの間の電気抵抗が小さくなる。その結果、直列電気抵抗Rと静電容量Cとの積で与えられるRC時定数を低減できる。
【0015】
比較例の光変調器素子100では、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bが金属電極103の直下まで延びている。ヘテロ接合を形成して電子及び正孔(ホール)の移動度を高めるには、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bを形成する材料として、リブ形状のコア102を形成する材料に比較して高い屈折率を有する材料が使用される。量産に適するシリコンフォトニクスをプラットフォームとして設計・製造される場合、コア102は、例えば、シリコン結晶で構成し、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bは、例えば、ゲルマニウム結晶、あるいはシリコン・ゲルマニウム混晶で構成する。つまり、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bの屈折率はコア102よりも高い。その結果、導波モードの電界は、金属電極103及び、金属電極103直下のスラブ部112まで伸長するため、金属電子及びキャリアによる光吸収が生じて光損失が発生する。例えば、金属電極103の直下のスラブ部112を高濃度ドープ領域とした場合、電界が高濃度ドープ領域まで伸長するため、金属電子及び高濃度キャリアによる光吸収が生じて光損失が発生する。
【0016】
また、光変調器素子100に、シリコン・ゲルマニウム以外の材料、例えば、III-V族の一つであるGaAs系を使用したとしても、コア102はAlGaAs混晶、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113BはGaAs結晶を含む構成となる。しかしながら、GaAs結晶の方がAlGaAs混晶に比較して屈折率が高いため、やはり、光損失が発生する。
【0017】
しかも、光変調器素子100では、導波モードの電界が伸長すると、高次モードが発生し、高次モードのモード間干渉により、光変調信号の消光比や光変調強度が低下し、ビットエラーが増大して光信号の品位が低下してしまう。しかも、高次モードが発生すると、基底モードから高次モードへと光エネルギが移行して光損失が発生する。
【0018】
また、光変調器素子100では、金属電極103の直下に第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bが存在しているので、金属電極103との低抵抗コンタクトを達成するため、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bに高い導電性を備える必要がある。そこで、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bに対するイオン注入によって高濃度のドーパントを分布させ、アニーリングによりドーパントを活性化させる必要がある。そして、格子歪みを有するヘテロ接合の場合、アニーリングによる温度上昇によって格子緩和が生じ、ヘテロ接合界面に結晶欠陥が発生してしまう。その結果、結晶欠陥による散乱により電気抵抗が大きくなって、RC時定数を小さくできなくなる。ヘテロ接合界面に発生する結晶欠陥は、ウエハ上で不規則に分布し、長期間の使用に伴って増える傾向があるため、光変調器素子100の量産性の低下や信頼性を損なうことになる。
【0019】
そこで、高次モードの発生を抑制しながら、光信号の品質低下及び光損失を抑制できる本実施例の光変調器素子が求められている。
【0020】
以下、本願が開示する光変調器素子等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0021】
図1は、実施例1の光変調器素子1の略断面部分の一例を示す説明図である。尚、
図1は、光変調器素子1の基底モードが伝搬する方向と直交する断面である。
図1に示す光変調器素子1は、リブ型導波路2と、リブ型導波路2の両端に電気的に接続すると共に、信号電極16と電気的に接続する金属電極3とを有する。リブ型導波路2は、リブ形状のコア10と、コア10を挟み込む上部クラッド層14及び下部クラッド層13とを有する。尚、説明の便宜上、下部クラッド層13は、支持基板上に積層されているものの、支持基板の図示は省略する。コア10は、リブ部11と、リブ部11の両側と連続するスラブ部12と、スラブ部12上に形成する薄膜15と、を有する。リブ部11は、P型領域11Aと、N型領域11Bとを有する。スラブ部12は、リブ部11内のP型領域11Aと連続するP型スラブ領域12Aと、リブ部11内のN型領域11Bと連続するN型スラブ領域12Bとを有する。薄膜15は、P型スラブ領域12A上に形成された第1の薄膜15Aと、N型スラブ領域12B上に形成された第2の薄膜15Bとを有する。
【0022】
金属電極3は、上部クラッド層14を上下に貫通して、P型スラブ領域12Aと電気的に接続する第1の金属電極3Aと、上部クラッド層14を上下に貫通してN型スラブ領域12Bと電気的に接続する第2の金属電極3Bとを有する。第1の金属電極3Aは、信号電極16内の第1の信号電極16Aと電気的に接続する。第2の金属電極3Bは、信号電極16内の第2の信号電極16Bと電気的に接続する。
【0023】
図2は、実施例1の光変調器素子1のドーパント配置構成の一例を示す説明図である。
図2に示すコア10は、P領域12A1と、P+領域12A2と、P++領域12A3と、N領域12B1と、N+領域12B2と、N++領域12B3とを有する。P領域12A1は、P型領域11A及び、P型領域11Aと連続するP型スラブ領域12Aの一部で構成する。P+領域12A2は、P領域12A1と接続するP型スラブ領域12Aの一部で高ドープ領域を構成する。P++領域12A3は、P+領域12A2と接続するP型スラブ領域12Aの一部で高濃度ドープ領域を構成する。ドーピング濃度は、P領域12A1<P+領域12A2<P++領域12A3の関係である。高濃度ドープ領域であるP++領域12A3は、リブ部のP型領域と連続するP型スラブ領域の中で最もドーピング濃度が高い領域と言うことができる。
【0024】
第1の金属電極3Aは、第1の薄膜15Aが上層に形成されるP型スラブ領域12Aの外側に位置するP++領域12A3と電気的に接続する。つまり、第1の金属電極3Aは、第1の薄膜15Aが上層に形成されるP型スラブ領域12Aの外側、かつリブ部11から遠く離れた側に位置するP++領域12A3と電気的に接続する。P++領域12A3は、第1の金属電極3Aの底部と接してP側のコンタクト領域となる。P++領域12A3は、第1の薄膜15Aと接触し、かつ、水平方向で重なっている。その結果、P型スラブ領域12Aに比較して正孔に対する電子親和力が高いアンドープの第1の薄膜15Aに正孔が引き入れられて分布し、第1の薄膜15A中に高移動度の正孔が二次元キャリアとして存在することで、直列電気抵抗の低減が可能となる。P++領域12A3と第1の薄膜15Aとの水平方向の重なりは50nm程度とする。また、P++領域12A3と第1の薄膜15Aとの水平方向の重なりは、加工工程における光学マスクによるパターニングの位置合わせ精度を考慮した場合、100nm程度にすることが好ましい。
【0025】
N領域12B1は、N型領域11B及び、N型領域11Bと連続するN型スラブ領域12Bの一部で構成する。N+領域12B2は、N領域12B1と接続するN型スラブ領域12Bの一部で高ドープ領域を構成する。N++領域12B3は、N+領域12B2と接続するN型スラブ領域12Bの一部で高濃度ドープ領域を構成する。第2の金属電極3Bは、第2の薄膜15Bが上層に形成されるN型スラブ領域12Bの外側に位置するN++領域12B3と電気的に接続する。つまり、第2の金属電極3Bは、第2の薄膜15Bが上層に形成されるN型スラブ領域12Bの外側、かつリブ部11から遠く離れた側に位置するN++領域12B3と電気的に接続する。N++領域12B3は、第2の金属電極3Bの底部と接してN側のコンタクト領域となる。ドーピング濃度は、N領域12B1<N+領域12B2<N++領域12B3の関係である。高濃度ドープ領域であるN++領域12B3は、リブ部のN型領域と連続するN型スラブ領域の中で最もドーピング濃度が高い領域と言うことができる。
【0026】
N++領域12B3は、第2の薄膜15Bと接触し、かつ、水平方向で重なっている。N++領域12B3と第2の薄膜15Bとの水平方向の重なりは50nm程度とする。また、N++領域12B3と第2の薄膜15Bとの水平方向の重なりは、加工工程における光学マスクによるパターニングの位置合わせ精度を考慮した場合、100nm程度にすることが好ましい。
【0027】
尚、各領域のドーピング濃度は、例えば以下のように設定する。P領域12A1は、例えば、5×10^17cm^-3、P+領域12A2は、例えば、5×10^18cm^-3、P++領域12A3は、例えば、1×10^20cm^-3とする。N領域12B1は、例えば、2×10^17cm^-3、N+領域12B2は、例えば、5×10^18cm^-3、N++領域12B3は、例えば、1×10^20cm^-3とする。但し、これらのドーピング密度の配置や設定は一例であり、これらに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0028】
第1の金属電極3Aは、上部クラッド層14を上下に貫通して、P型スラブ領域12A内のP++領域12A3と電気的に接続する。第2の金属電極3Bは、上部クラッド層14を上下に貫通してN型スラブ領域12B内のN++領域12B3と電気的に接続する。
【0029】
第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bの厚みをhOL、スラブ部12の厚みをhslab、リブ部11の厚みをhribとした場合、光変調器素子1のリブ部11の厚みは、スラブ部12及び第1の薄膜15A(又は第2の薄膜15B)を合計した厚みに比較して厚くなる。つまり、リブ部11の厚みは、hrib>hslab+hOLである。
【0030】
リブ部11と薄膜15との間にはギャップ領域17が形成されている。リブ部11と第1の薄膜15Aとの間には、幅g1の第1のギャップ領域17Aが形成されている。また、リブ部11と第2の薄膜15Bとの間にも、幅g2の第2のギャップ領域17Bが形成されている。しかしながら、光変調器素子1に求められる光損失に応じて、第1のギャップ領域17A及び第2のギャップ領域17Bは設けなくても良く、適宜変更可能である。
【0031】
金属電極3と薄膜15との間にはギャップ領域18が形成されている。ギャップ領域18は、第1の薄膜15Aと第1の金属電極3Aとの間に形成されている幅g3の第3のギャップ領域18Aと、第2の薄膜15Bと第2の金属電極3Bとの間に形成されている幅g4の第4のギャップ領域18Bとを有する。
【0032】
コア10、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bは、上部クラッド層14で被覆されている。従って、第1のギャップ領域17A、第2のギャップ領域17B、第3のギャップ領域18A及び第4のギャップ領域18Bにも上部クラッド層14が存在する。
【0033】
第1の薄膜15Aと第1の金属電極3Aとの間に第3のギャップ領域18Aが存在するため、第1の薄膜15Aは横方向に有限である。また、第2の薄膜15Bと第2の金属電極3Bとの間に第4のギャップ領域18Bが存在するため、第2の薄膜15Bも横方向に有限である。つまり、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bは横方向に有限である。従って、コア10を伝搬する基底モードの電界が、横方向に伸長することが抑制されると共に、第1の金属電極3A及び第2の金属電極3B直下の高濃度ドープ領域(P++領域12A3及びN++領域12B3)への伸長を抑制できる。その結果、光損失の低減及び高次モードの抑圧が可能となる。
【0034】
光変調器素子1Aでは、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bに意図的にドーピングすることなく、アンドープの第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bを配置したので、直列電気抵抗を低減し、RC時定数を短縮できる。
【0035】
リブ部11の幅wribは、例えば、450~500nmに設定することにより、リブ部11での高次モードの発生を抑え、かつ、側壁荒れの影響を低減したコア10を形成し、低光損失の光変調器のための基本構造として利用できる。コア10は、例えば、シリコン結晶、上部クラッド層14及び下部クラッド層13はともにシリカである。第1の金属電極3A及び第2の金属電極3Bはアルミニウムの成膜、光学描画やエッチングにより形成される。リブ部11の厚みhribは、例えば、220nm、P型スラブ領域12A及びN型スラブ領域12Bの厚みhslabは、例えば、100nm、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bの厚みhOLは、例えば、10nmとする。第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bは、第1の金属電極3A及び第2の金属電極3Bと分離され、第1の金属電極3A及び第2の金属電極3Bの底面に比較して上側に位置している。
【0036】
第1のギャップ領域17Aの幅g1及び第2のギャップ領域17Bの幅g2は、例えば、50~200nmとする。例えば、第1のギャップ領域17Aの幅g1及び第2のギャップ領域17Bの幅g2が50nmより狭くした場合を想定する。この場合、コア10に比較して屈折率が高いゲルマニウム結晶の第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bによって基底モードの電界がP型スラブ領域12A及びN型スラブ領域12Bへと拡がることになる。従って、加工における位置合わせ精度を考慮して、第1のギャップ領域17Aの幅g1及び第2のギャップ領域17Bの幅g2は、例えば、50~200nmの範囲内であることが好ましい。
【0037】
コア10の形状の対称性を保って偏波回転を避けるため、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bの幅は、例えば、700nmとする。また、第3のギャップ領域18Aの幅g3及び第4のギャップ領域18Bの幅g4も、例えば、500nmとする。第3のギャップ領域18Aの幅g3及び第4のギャップ領域18Bの幅g4は500nmに設定した場合、基底モードの電界がP++領域12A3及びN++領域12B3へと拡がるのを抑制できる。
【0038】
図3Aは、実施例1の光変調器素子1の導波モードの電界分布の一例を示す説明図である。
図3Bは、比較例の光変調器素子100の導波モードの電界分布の一例を示す説明図である。光変調器素子1のコア10は、例えば、シリコン結晶、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bは、例えば、ゲルマニウム結晶で構成するものとする。また、光変調器素子100のコア102も、例えば、シリコン結晶、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bは、例えば、ゲルマニウム結晶で構成するものとする。シリコン結晶の屈折率は3.48、ゲルマニウム結晶の屈折率は4.28である。
図3Aに示す光変調器素子1の導波モードの電界分布は、
図3Bに示す比較例の光変調器素子100の導波モードの電界分布に比較して水平方向の広がりが抑制されていることが解る。
【0039】
図4は、比較例の光変調器素子100と実施例1の光変調器素子1での基底モードの電界プロファイルの一例を示す説明図である。
図4に示す電界分布では、
図3A及び
図3Bにおける基底モードのプロファイルの垂直方向、すなわち、垂直方向の位置を示すy軸に対し、位置y=50nmでの波形が抽出されて表示されている。
【0040】
実施例1の光変調器素子1では、
図4に示すように、コア10と下部クラッド層13との境界面(水平面)に沿う方向、すなわち、x軸に対して、基底モードの電界分布の広がりが抑制されている。実施例1の光変調器素子1では、比較例の光変調器素子100に比較して電界分布の広がりを抑制できるため、光損失の低減及び高次モードの抑圧が可能となる。しかも、金属電極3と接触するスラブ部12をP++領域12A3及びN++領域12B3の高濃度ドープ領域としているので、金属電子及び高濃度キャリアによる光吸収が比較例に比較しても半分以下に低減できる。
【0041】
図5は、Si及びGeのバンドギャップの一例を示す説明図である。コア10に、例えば、シリコン結晶、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bに、例えば、ゲルマニウム結晶で構成する場合では、
図5に示すようにヘテロ接合のバンド配置はType IIとなる。電子はバンド端のエネルギがゲルマニウムよりも低い(電子親和力がゲルマニウムよりも高い)シリコン側に分布する。しかしながら、伝導帯のバンドオフセットは小さい(電子親和力の差は小さい)ので、室温では、電子はゲルマニウム中にも分布する。従って、シリコン及びアンドープゲルマニウム両方の経路を伝導することにより、移動度が増加する。
【0042】
図6は、電子・ホールの移動度と不純物濃度との関係の一例を示す説明図である。尚、
図6に示す比較例は薄膜15なしの光変調器素子である。高移動度の二次元正孔及び電子が分布する第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bに第1の金属電極3A及び第2の金属電極3Bを直接接続せず、P++領域12A3及びN++領域12B3に接続し、かつ、
図2に示すドーパント構成を採用する。その結果、電気特性の最適化(電気抵抗減少による高速化)及び、光学特性の最適化(モード広がり抑制による光損失の低減及び高次モードの抑圧)を同時に達成できる。
【0043】
第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bには、ドーパントによる不純物イオンが分布しないので、イオン化不純物による散乱が起こらず、電子及び正孔の移動度が上昇する。
図6の特性曲線により、移動度の増加を見積もることができる。シリコン・ゲルマニウムのヘテロ接合では、アンドープゲルマニウム中を正孔が伝導することにより、正孔の移動度増加が著しい。しかしながら、正孔及び電子の移動度増加を考慮すると、光変調器素子1は、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bが存在しない場合に比較して、半分以下に電気抵抗を低減できる。
【0044】
また、光変調器素子1は、金属電極3の直下に第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bが存在していないので、金属電極3との低抵抗コンタクトを達成するため、第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bに高い導電性を備える必要がなくなる。その結果、結晶欠陥の発生が無くなるため、光変調器素子1Aの量産性及び信頼性の向上を図ることができる。
【0045】
実施例1の光変調器素子1では、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bが横方向に有限であるため、第1の金属電極3AとP型スラブ領域12Aとの間を直接接続すると共に、第2の金属電極3BとN型スラブ領域12Bとの間を直接接続する。その結果、電界分布の水平方向への広がりを抑制することで、光損失の低減及び高次モードの抑圧を図ることができる。しかも、例えば、第1の金属電極3A及び第2の金属電極3Bと高濃度ドープ領域とが重なるように配置したので、比較例の光変調器素子100に比較して光吸収を低減できる。つまり、導波モードの電界伸長による高次モードの発生を抑制し、光信号の品質低下および光損失を抑制できる。
【0046】
光変調器素子1では、P領域12A1及びP+領域12A2に比較して高いキャリア密度を有するP++領域12A3が第1の薄膜15Aと接触し、かつ水平方向で重なっている。その結果、P+領域12A2やP++領域12A3等に存在するキャリアが第1の薄膜15Aに拡散して分布することになる。従って、第1の薄膜15Aの移動度を高くして電気抵抗の低減を図ることができる。
【0047】
光変調器素子1では、N領域12B1及びN+領域12B2に比較して高いキャリア密度を有するN++領域12B3が第2の薄膜15Bと接触し、かつ水平方向で重なっている。その結果、N+領域12B2やN++領域12B3等に存在するキャリアが第2の薄膜15Bに拡散して分布することになる。従って、第2の薄膜15Bの移動度を高くして電気抵抗の低減を図ることができる。
【0048】
尚、P領域12A1とP+領域12A2との境界は、第1の薄膜15Aの直下にあり、水平方向で第1の薄膜15Aと重なっている。しかし、これは必ずしも必要でなく、P領域12A1とP+領域12A2との境界は水平方向で第1の薄膜15Aの外側、すなわち第1の薄膜15Aに比較して中央のリブ部11に近い側に存在しても良く、適宜変更可能である。
【0049】
また、N領域12B1とN+領域12B2との境界は、第2の薄膜15Bの直下にあり、水平方向で第2の薄膜15Bと重なっている。しかし、これは必ずしも必要でなく、N領域12B1とN+領域12B2との境界は水平方向で第2の薄膜15Bの外側、すなわち第2の薄膜15Bに比較して中央のリブ部11に近い側に存在しても良く、適宜変更可能である。
【0050】
尚、本実施例の2個の光変調器素子1を使用してマッハツェンダ干渉計の2本のアームに配置することで、位相変調部等の光変調器を構成しても良く、適宜変更可能である。
図7は、本実施例の光変調器素子1を使用した光変調器の電気-光学周波数応答のシミュレーション結果の一例を示す説明図である。尚、本実施例の光変調器素子1を採用した光変調器のシミュレーション結果を実線、比較例の光変調器素子100を採用した光変調器のシミュレーション結果を破線、比較例の薄膜なしの光変調器素子を採用した光変調器のシミュレーション結果を点線で示すものとする。比較例の光変調器素子100は、
図14に示す光変調器素子100である。薄膜なしの光変調器素子は、高移動度の正孔若しくは電子が分布する第1の薄膜113A及び第2の薄膜113Bと同等の高移動度層がスラブ部の直上に配置されていないリブ型コアで構成する。説明の便宜上、比較例の光変調器素子100を採用した光変調器は第1の光変調器、比較例の薄膜なしの光変調器素子を採用した光変調器は第2の光変調器とする。
【0051】
各光変調器のシミュレーションのパラメータは以下の通りである。光変調器の導波路の寸法は、リブ幅Wribを500nm、リブ厚みhribを220nm、導波路長3mmとする。
【0052】
本実施例の光変調器の導波路における光損失は0.4dB/mmと見積もることができる。これに対して、比較例の第1の光変調器及び第2の光変調器の導波路における光損失は、高次モードによる損失を考慮して0.6dB/mmと見積もることができる。
【0053】
つまり、シミュレーションでは、直列電気抵抗R、静電容量Cからなる電気回路として電気特性を数値解析し、得られた電気特性を、光変調器である位相変調部の周波数特性として入力し、光干渉強度の周波数応答を導出した。直列電気抵抗R及び静電容量Cは以下の値を用いた。その結果、本実施例の光変調器及び比較例の第1の光変調器の直列電気抵抗Rは、例えば、1.7Ω、第2の光変調器の直列電気抵抗Rは、例えば、3.5Ωである。更に、本実施例の光変調器、比較例の第1の光変調器及び第2の光変調器の静電容量Cは、すべて1.2pF(DC逆バイアス3V)である。
【0054】
従って、
図7に示すシミュレーション結果からわかるように、本実施例の光変調器の光損失は、比較例の第1の光変調器の光損失に比較して、さらに2dB改善できる。
【0055】
尚、実施例1の光変調器素子1では、シリコン・ゲルマニウム系の材料で構成する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、III-V化合物のGaAs系やInP系の材料でも可能である。また、これらとシリコン・ゲルマニウム系を組み合わせても良く、適宜変更可能である。尚、GaAs系の材料で構成する場合、リブ部11、P型スラブ領域12A及びN型スラブ領域12Bは、例えば、AlGaAs、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bは、例えば、GaAlAsで構成しても良い。また、InP系の材料で構成する場合、リブ部11、P型スラブ領域12A及びN型スラブ領域12Bは、例えば、InP、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bは、例えば、GaInAsで構成しても良く、適宜変更可能である。
【0056】
本実施例では、導波モードの電界伸長による高次モードの発生を抑制し、光信号の品質低下及び光損失を抑制できる光変調器素子1を提供できる。
【0057】
尚、実施例1の光変調器素子1では、第1の薄膜15A及び第2の薄膜15Bをゲルマニウム結晶で構成する場合を例示したが、ゲルマニウム結晶では、シリコン結晶との格子不整合が大きいため、格子緩和が生じない臨界膜厚は1nm以下とすることが望ましい。しかしながら、ゲルマニウム結晶を成膜して作製する際、格子緩和を発生することも考えられる。また、ゲルマニウムの光吸収端波長は1600nm以上であり、光通信のC帯又はO帯では光吸収による損失が発生することも考えられる。
【0058】
そこで、このような事態に対処する実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。尚、実施例1の光変調器素子1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
図8は、実施例2の光変調器素子1のドーパント配置構成の一例を示す説明図である。
ゲルマニウム結晶の組成比が高いほど、正孔の有効質量が減少し、移動度を高めて電気抵抗を小さくできる。移動度の増加による電気抵抗の低減、すなわち高速化と、光損失の低減及び臨界膜厚の増加との両立を図ることができる。例えば、ゲルマニウム結晶:シリコン結晶の組成比は、例えば、0.3:0.7が好ましい。この場合、シリコン・ゲルマニウム混晶の膜厚は10nm程度まで欠陥を生ずることなく積層することが可能である。この程度の膜厚が確保できれば、成膜時の膜厚の変動も小さく、光学特性に与える変動も小さくできる。
高移動度層21の厚みは、例えば、10nm、被覆層22の厚みは、例えば、5nmとする。被覆層22は、高移動度層21の表面にイオン化欠陥等の発生を抑止できる。被覆層22は、シリコン結晶で形成するため、シリコン結晶の被覆層22の中に高移動度の電子が二次元キャリアとして存在し、さらなる電気抵抗の低減が可能となる。
実施例2の光変調器素子1の薄膜15(第1の薄膜15A1,第2の薄膜15B1)は、シリコン・ゲルマニウム混晶の高移動度層21と、シリコン結晶の被覆層22とを有する。その結果、臨界膜厚を増すことができると同時に、光吸収端波長が短くなるため、光吸収による損失も低下できる。
実施例2の光変調器素子1は、高移動度層21をシリコン・ゲルマニウム混晶、被覆層22をシリコン結晶で構成する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、ゲルマニウム結晶、若しくはIII-V半導体系にも応用できる。GaAs系の材料を使用した場合、高移動度層21をGaAs、被覆層22をGaAlAsとする。InP系の材料を使用した場合、高移動度層21をGaInAs、被覆層22をInPとしても良く、適宜変更可能である。