(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154323
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法、水分散性帯電防止コーティング組成物及び帯電防止塗膜
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20241023BHJP
C08F 299/06 20060101ALI20241023BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20241023BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20241023BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20241023BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241023BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241023BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20241023BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C09D201/00
C08F299/06
C08G18/00 C
C08G18/67 010
C09D5/02
C09D7/65
C09D7/63
C09D4/00
C09D5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068122
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松浪 斉
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
(72)【発明者】
【氏名】小南 剛
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J034BA05
4J034DA01
4J034DB01
4J034DC50
4J034DE02
4J034DG03
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4J127FA11
4J127FA14
4J127FA19
(57)【要約】
【課題】帯電防止性及び耐水帯電防止性を両立した特定組成物の製造方法等を提供する。
【解決手段】(m+n)個のイソシアネート基含有化合物1モル比に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を反応させた後、これに片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール等をmモル比反応させて、式(1):(R1O-CONH)m-R2-(NHCO-OR3)n(式中、R1O-は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物等の脱水素残基、R2は脱イソシアネート基残基、R3O-は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m、n=1~50の整数、m≦n)のオリゴマーを得、該オリゴマーに水を添加しながら、該オリゴマーと水との界面を緩やかに攪拌及び乳化してオリゴマー組成物(A)を得、該組成物(A)にπ共役系導電性ポリマー含有架橋型導電性塗料組成物(B)を添加する水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1モル比に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を反応させ、次いで、得られた反応物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物をmモル比反応させて、式(1)に記載のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得、該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに水を添加しながら、該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと水との界面を緩やかに攪拌し、乳化して得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)を準備し、
該水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)に、π共役系導電性ポリマーを含む架橋型導電性塗料組成物(B)を添加することを特徴とする水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法。
(R1O-CONH)m-R2-(NHCO-OR3)n (1)
(式中、
R1O-は、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物の脱水素残基、
R2は、イソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、
R3O-は、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、
m、n=1~50のいずれかの整数を表す。ただし、m≦nである。)
【請求項2】
前記攪拌を、パドル翼を用いて、回転数10rpm~100rpmにて行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水を、固形分濃度が50重量%以下になるまで添加し、前記水の添加終了後、所定時間緩やかに攪拌を続ける請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記水の添加終了後、10分間以上、回転数10rpm~100rpmにて攪拌を続ける請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(A)のイソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類である請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(A)の片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類である請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(A)の(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加、又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記(A)の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類である請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の製造方法で得られた水分散性帯電防止コーティング組成物であって、
前記架橋型導電性塗料組成物(B)が、π共役系導電性ポリマー(b-1)、バインダー(b-2)及び架橋剤(b-3)を含む水分散性帯電防止コーティング組成物。
【請求項10】
さらに、重合開始剤(C)を含む請求項9に記載の水分散性帯電防止コーティング組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の水分散性帯電防止コーティング組成物の熱硬化物である帯電防止塗膜。
【請求項12】
請求項9に記載の水分散性帯電防止コーティング組成物の活性エネルギー線照射による硬化物である帯電防止塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法、水分散性帯電防止コーティング組成物及び帯電防止塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基材は、家電製品の部品、自動車部品、光学部材、有機板ガラス等の原材として汎用されているが、プラスチック基材は、傷つき易く、帯電し易い。
そのため、プラスチック基材を、帯電防止剤や導電性フィラーの金属微粒子等が含有されたコーティング層で被覆することが提案されている(特許文献1~3及び非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-244618号公報
【特許文献2】特開2000-281736号公報
【特許文献3】特開2022-134106号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】マテリアルライフ学会誌,16[4]p120~123(2004年10月) 特集 導電性高分子の進展 ポリ3,4-エチレンジオキシチオフエン
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、コーティング層が、帯電防止剤としてカチオン系、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を多量に含有している場合、それらのブリードを惹起し、かえって高湿下での帯電防止性が低下したり、耐擦傷性が低下したり、さらには水と接触した場合、帯電防止剤が可溶化され、帯電防止性が失われたりする。また、コーティング層が導電性フィラーを含有していたり、水溶性又は水分散性の導電性ポリマーを熱硬化したコーティング層である場合、帯電防止性に優れる反面、透明性及び/又は耐擦過性が損なわれることがある。
本発明は、帯電防止性及び耐水帯電防止性を両立し、プラスチック密着性、透明性及び耐擦過性に優れた硬化被膜を形成することができる水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法、水分散性帯電防止コーティング組成物及び帯電防止塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は以下の発明を含む。
[1](m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1モル比に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を反応させ、次いで、得られた反応物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物をmモル比反応させて、式(1)に記載のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得、該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに水を添加しながら、該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと水との界面を緩やかに攪拌し、乳化して得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)を準備し、
該水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)に、π共役系導電性ポリマーを含む架橋型導電性塗料組成物(B)を添加することを特徴とする水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法。
(R1O-CONH)m-R2-(NHCO-OR3)n (1)
(式中、
R1O-は、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物の脱水素残基、
R2は、イソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、
R3O-は、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、
m、n=1~50のいずれかの整数を表す。ただし、m≦nである。)
[2]前記攪拌を、パドル翼を用いて、回転数10rpm~100rpmにて行う[1]に記載の製造方法。
[3]前記水を、固形分濃度が50重量%以下になるまで添加し、前記水の添加終了後、所定時間緩やかに攪拌を続ける[1]に記載の製造方法。
[4]前記水の添加終了後、10分間以上、回転数10rpm~100rpmにて攪拌を続ける[3]に記載の製造方法。
[5]前記(A)のイソシアネート化合物が、ジイソシアネート類又はジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類である[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記(A)の片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物が、アルコキシポリアルキレングリコール類である[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記(A)の(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物が、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加、又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものである[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記(A)の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類である[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の製造方法で得られた水分散性帯電防止コーティング組成物であって、前記架橋型導電性塗料組成物(B)が、π共役系導電性ポリマー(b-1)、バインダー(b-2)及び架橋剤(b-3)を含む水分散性帯電防止コーティング組成物。
[10]さらに、重合開始剤(C)を含む[9]に記載の水分散性帯電防止コーティング組成物。
[11][9]又は[10]に記載の水分散性帯電防止コーティング組成物の熱硬化物である帯電防止塗膜。
[12][9]又は[10]に記載の水分散性帯電防止コーティング組成物の活性エネルギー線照射による硬化物である帯電防止塗膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯電防止性及び耐水帯電防止性を両立し、プラスチック密着性、透明性及び耐擦過性に優れた硬化被膜を形成することができる水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法、水分散性帯電防止コーティング組成物及び帯電防止塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種」及び「アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種」を意味する。特に断りがない限り、%は質量%を意味する。
【0009】
〔水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法〕
本発明の水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法は、特定の水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)に、π共役系導電性ポリマーを含む架橋型導電性塗料組成物(B)を添加する方法である。
【0010】
(水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)の調製)
本願における(A)水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物は、例えば、特開2021-050310号公報に開示の製造方法で得られたものを準備することが好ましい。
具体的には、まず、式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する。
式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、
(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1モル比に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を反応させ、
次いで、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物をmモル比反応させることによって得ることができる。
(R1O-CONH)m-R2-(NHCO-OR3)n (1)
(式中、
R1O-は、片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物の脱水素残基、
R2は、イソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、
R3O-は、は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、
m、n=1~50のいずれかの整数を表す。ただし、m≦nである。)
そして、得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに水を添加しながら、このウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと水との界面を緩やかに攪拌する。これによって、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を製造することができる。
【0011】
上述した水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造方法で得られる乳化液は、平均粒子径が極めて小さく且つ長期に亘って安定(二次凝集が起こらない)でありながら、これを含む組成物によって得られた塗膜は、ハードコート性及び耐水性と耐溶剤性等の耐久性に優れたコーティング組成物とすることができる。
【0012】
(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート類及びジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類等が挙げられる。
ジイソシアネート類は、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、(o-、m-、又はp-)キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジメチレンイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。ジイソシアネート単量体のポリイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物、イソホロンジイソシアネートのヌレート化物、トリレンジイソシアネートのヌレート化物及びこれらジイソシアネートのビュレット化物等が挙げられる。なかでも、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有する、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化物、イソホロンジイソシアネートのヌレート化物、トリレンジイソシアネートのヌレート化物がより好ましい。
なお、イソシアネート化合物としては、その中に含まれる1以上のイソシアネート基に、アルコール化合物が付加したウレタン構造、アミン化合物が付加したウレア構造を有するものであってもよい。イソシアネート基に、アルコール化合物及びアミン化合物が付加している場合には、イソシアネート化合物の1分子あたりの官能基数を増大させることができる。ここでイソシアネート基に付加し得るアルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。アミン化合物としては、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン等が挙げられる。これらアルコール化合物及びアミン化合物は、硬化重合体の耐擦傷性を増大させるという観点から、官能基あたりの分子量が小さいものを用いることが好ましい。
【0013】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類又はアルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリオール(メタ)アクリレート類としては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類としては、例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
イソシアネート化合物に水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させる場合、反応を促進する目的で、ジブチルチンジラウレート等の金属系触媒、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のアミン系触媒等の存在下、50℃~80℃の温度範囲で攪拌することが好ましく、60℃~70℃の温度範囲がより好ましい。
【0015】
続いて、上記で得られた反応物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物反応させる。
(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物は、(メタ)アクリル酸をアルキレンオキサイド付加又はポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート化されたものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物類は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等に代表されるアルキレンオキサイドを(メタ)アクリル酸に付加させることによって得られる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に代表されるポリアルキレングリコールからでも合成できる。(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物の分子量は任意に選択できるが、900以上であることが好ましく、900~2000であることがより好ましい。また、別の観点から、アルキレンオキサイドの付加モル数は、20以上であることが好ましく、20~35であることがより好ましい。
片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物は、アルコキシポリエチレングリコール類であることが好ましい。アルコキシポリエチレングリコール類としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ブトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテル等が挙げられる。アルコキシポリエチレングリコール類の分子量は任意に選択できるが、900以上であることが好ましく、900~2000であることがより好ましい。このような化合物を用いることにより、得られる水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物は、ノニオン性の乳化物とすることができ、コーティング組成物等に、種々の添加剤を添加する場合においても、凝集、沈殿、分離等の乳化物の特性の阻害を防止することができる。
【0016】
上記で得られた反応物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物反応させる場合、ジブチル錫ジラウレート等の金属系触媒の存在下、50℃~80℃の温度範囲で攪拌することが好ましく、60℃~70℃の温度範囲がより好ましい。
得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、樹脂分濃度を100%とすることができる。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、例えば、5000~100000とすることができ、好ましくは7000~20000とすることができる。このような重量平均分子量とすることで、適切な粘度の組成物を得ることができ、自己乳化を起こしやすく、かつ、これを用いて水溶性組成物を容易に調整することができるとともに、このような水溶性組成物を含む塗膜等を形成した場合に、高硬度の塗膜を得ることができる。
なお、重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量を意味し、高速液体クロマトグラフィー(昭和電工社製、「ShodexGPC system-11型」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定することができる。
【0017】
例えば、(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物に、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物を先に反応させると、ポリアルキレングリコール化合物は分子量に分布を有し、片末端水酸基のみならず両末端水酸基含有のポリアルキレングリコールが存在するため、ゲル化がしばしば起きる。ゲル化が生じると、安定した反応ができないばかりか、得られた反応物は、水に溶解しにくくなる。
一方、上述したように、(m+n)個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物に、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物nモル比を先に反応させ、次いで(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物又は片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物を反応させることにより、ポリアルキレングリコール化合物がペンダント様に結合する、ペンダント型ウレタンアクリレート構造となるために、自己乳化が可能となる。
【0018】
続いて、式(1)で表されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに、水を添加して、乳化液状の水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物を製造する。
そのために、上記で得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに、水を徐々に添加する。この際、得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、30℃~80℃の温度範囲に維持するとともに、添加する水の温度も、これと同等の範囲に調整することが好ましく、40℃~70℃又は40℃~60℃の温度範囲とすることがより好ましい。
添加する水は、水道水、脱イオン水、イオン交換水、蒸留水等種々の水を用いることができる。水の添加は、例えば、滴下等によって又は分割して行うことが好ましい。分割添加の場合、1回量は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの質量の50重量%~200重量%、好ましくは、100重量%~200重量%とすることが好ましい。水の添加量は、樹脂分濃度が50重量%以下になる量とすることが好ましく、10重量%~45重量%がより好ましく、15重量%~40重量%又は20重量%~40重量%がさらに好ましい。例えば、水の添加に要する時間は、水の添加開始から終了までの時間を5分間以上とすることが挙げられ、5分間~2時間とすることが好ましく、10分間~30分間又は15分間~30分間とすることがより好ましい。
【0019】
また、水の添加と同時に、それらの界面、つまり、オリゴマーと水との界面付近又は界面よりやや水側に攪拌翼を配置して攪拌することが好ましい。ここでの攪拌は緩やかに行うことが好ましい。なお、スターラでの攪拌は、攪拌子が容器底面に沈み、オリゴマーと水の界面、つまり、W/O界面に配置することができないため、オリゴマーと水の界面付近に攪拌翼を配置することができる攪拌機を用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼としては、例えばパドル翼を用いることができる。パドル翼は、オリゴマーと水との界面付近又は界面よりやや水側に翼を配置することができ、1枚の翼を有するのみであってもよいし、2枚以上の翼を多段で有するものであってもよい。緩やかな攪拌としては、回転数500rpm以下が挙げられ、300rpm以下が好ましく、200rpm以下がより好ましく、100rpm~300rpm、100rpm~150rpm、10rpm~100rpmが特に好ましい。
さらに、水の添加を終了した後においても、攪拌を続けることが好ましい。この場合の攪拌は、添加中の攪拌と異なってもよいが、同程度に緩やかに行うことが好ましい。水の添加終了後、例えば、10分間以上攪拌し続けることが挙げられ、20分間以上が好ましく、30分間以上がより好ましい。この際の回転数も上記と同様の範囲が挙げられる。
【0020】
このような乳化方法(転相乳化)によって乳化させることにより、得られた乳化物は、平均粒子径が極めて小さく、且つ保存安定性が高い。また、その乳化物をコーティング組成物として、例えば、塗工及び乾燥後、放射線硬化塗膜とした場合には、得られた塗膜は、レベリング性が良く、極めて高い耐水性を有し、硬化前のオリゴマーは水溶性でありながら、硬化後の塗膜は耐水性が高いという、相反する特性を併せもつコーティング組成物を得ることができる。これは、得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物におけるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの粒径を均一な微粒子とすることに起因することを確認している。例えば、乳化物粒子の粒度分布において、粒子の累積50%の粒径が100nm以下であるもの等が挙げられる。また、50%の粒径が60nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm~45nmであることがより一層好ましい。また、粒子の95%積算径が150nm以下であるもの等が挙げられる。また、95%の粒径が140nm以下であることが好ましく、120nm以下であることがより好ましく、30nm~115nmであることがより一層好ましい。さらに、別の観点から、算術平均径が110nm以下であるもの等が挙げられる。また、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましく、10nm~60nmであることがより一層好ましい。
これらは、堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置(LB-500)にて乳化液の粒径分布を測定することにより求めた値である。
また、このような塗膜は、帯電防止性をも有しているため、プラスチック等の基材表面の保護、吸埃の防止、ひいては抗菌性を付与することができる。また、このような塗膜は、親水基を有するため、防曇性に優れており、プラスチック類だけでなく眼鏡、鏡等の防曇にも利用することができるとともに、水系顔料において分散性を良好なものとすることができる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー自体は分子量が比較的小さいため、水溶性UVインクジェットインキの成分としても利用することができる。
【0021】
(架橋型導電性塗料組成物(B)の添加)
架橋型導電性塗料組成物(B)は、少なくとも、π共役系導電性ポリマー(b-1)を含む。π共役系導電性ポリマー(b-1)を含むことにより、他の帯電防止剤と比較した場合に、上述した効果、特に、帯電防止性に優れたものを得ることができる。架橋型導電性塗料組成物(B)は、π共役系導電性ポリマー(b-1)に加えて、さらに、バインダー(b-2)及び架橋剤(b-3)を含むものが好ましい。
【0022】
(π共役系導電性ポリマー(b-1))
π共役系導電性ポリマーとして、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリチオフェンビニレン類、ポリピロール類及びポリフラン類等が挙げられる。
ポリチオフェン類としては、ポリチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)類、ポリ(モノアルコキシチオフェン)類、ポリ(ジアルコキシチオフェン)類、ポリ(アルキレンジオキシチオフェン)類等が挙げられる。ポリチオフェン類は、好ましくはポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープされたアルキレンジオキシポリ(チオフェン)であり、より好ましくはポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とPSSの錯体(以下、「PEDOT/PSS」ともいう。)である。PEDOT/PSSは、例えば、モノマーである3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を、水相中、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)の存在下、酸化剤を用いて重合することにより得られる。PEDOT/PSSの市販品として、製品名「Clevios P」(ヘレウス(株)製)、製品名「Orgacon ICP1010」(日本アグフアマテリアルズ(株)製)等が例示される。
ポリアニリン類としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2又は3-アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
ポリチオフェンビニレン類としては、ポリ(チオフェンビニレン)、アルキレンジオキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、アルコキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、アルキル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、カルボキシル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、ヒドロキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、フェニル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、シアノ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類、ハロゲン置換ポリ(チオフェンビニレン)類等が挙げられる。アルキレンジオキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ブテンジオキシチオフェンビニレン)等が挙げられる。アルコキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3-メトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-エトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-ブトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェンビニレン)等が挙げられる。アルキル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3-メチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-エチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-プロピルチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェンビニレン)等が挙げられる。カルボキシル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3-カルボキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェンビニレン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェンビニレン)等が挙げられる。ヒドロキシ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3-ヒドロキシチオフェンビニレン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェンビニレン)等が挙げられる。フェニル基置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3-フェニルチオフェンビニレン)等が挙げられる。シアノ基置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3-シアノチオフェンビニレン)等が挙げられる。ハロゲン置換ポリ(チオフェンビニレン)類としては、ポリ(3-ブロモチオフェンビニレン)、ポリ(3-クロロチオフェンビニレン)、ポリ(3-ヨードチオフェンビニレン)等が挙げられる。
ポリピロール類としては、ポリ(ピロール)、アルコキシ基置換ポリ(ピロール)類、アルキル基置換ポリ(ピロール)類、カルボキシル基置換ポリ(ピロール)類、ヒドロキシ基置換ポリ(ピロール)類等が挙げられる。アルコキシ基置換ポリ(ピロール)類としては、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)等が挙げられる。アルキル基置換ポリ(ピロール)類としては、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)等が挙げられる。カルボキシル基置換ポリ(ピロール)類としては、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)等が挙げられる。ヒドロキシ基置換ポリ(ピロール)類としては、ポリ(3-ヒドロキシピロール)等が挙げられる。
ポリフラン類としては、ポリフラン、アルコキシ基置換ポリフラン類、アルキル基置換ポリフラン類、カルボキシル基置換ポリフラン類、ヒドロキシ基置換ポリフラン類等が挙げられる。アルコキシ基置換ポリフラン類としては、ポリ(3-メトキシフラン)、ポリ(3-エトキシフラン)、ポリ(3-ブトキシフラン)、ポリ(3-ヘキシルオキシフラン)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシフラン)等が挙げられる。アルキル基置換ポリフラン類としては、ポリ(3-メチルフラン)、ポリ(3-エチルフラン)、ポリ(3-n-プロピルフラン)、ポリ(3-ブチルフラン)、ポリ(3,4-ジメチルフラン)、ポリ(3,4-ジブチルフラン)等が挙げられる。カルボキシル基置換ポリフラン類としては、ポリ(3-カルボキシフラン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシフラン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルフラン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルフラン)等が挙げられる。ヒドロキシ基置換ポリフラン類としては、ポリ(3-ヒドロキシフラン)等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。(b-1)成分は、硬化物の帯電防止性及び透明性等の観点より、好ましくはポリチオフェン類及び/又はポリアニリン類であり、より好ましくはポリチオフェン類であり、さらに好ましくはPEDOT/PSSである。
【0023】
(バインダー(b-2))
バインダーは、基材と塗膜との密着性および塗膜強度を向上させる目的で用いられる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミドなどのホモポリマー;スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートなどのモノマーを共重合して得られるコポリマー;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(架橋剤(b-3))
架橋剤は、塗膜強度をさらに向上させる目的や耐水(帯電防止)性を向上させる目的で用いられる。架橋剤は、バインダーと併用して、バインダーを架橋する目的で使用してもよく、バインダーを併用せずに架橋剤の自己架橋膜を形成させてもよい。架橋させるための触媒として、ドーパントが有する酸性基を利用してもよく、さらに、有機酸または無機酸を添加してもよい。また、感熱性酸発生剤、感放射線性酸発生剤および感電磁波性酸発生剤を添加してもよい。
架橋剤としては、例えば、メラミン系、ポリカルボジイミド系、ポリオキサゾリン系、ポリエポキシ系及びポリイソシアネート系の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
架橋型導電性塗料組成物(B)は、本発明の効果が阻害されない範囲内で、一般的に導電性コーティング用組成物に用いられる溶媒、分散媒、添加剤等を含んでいてもよい。
溶媒又は分散媒としては、導電性塗料組成物に含有される各成分を溶解又は分散させるものであればよく、例えば、水、有機溶剤、これらの混和物等が挙げられる。なかでも、水が含有されていることが好ましく、さらに有機溶剤を含む場合、メタノール、エタノール及び2-プロパノール等が好ましい。なお、本発明においては、導電性塗料組成物に含まれる、溶媒又は分散媒以外の各成分が溶解している場合は溶媒と称し、組成物を構成する少なくとも1成分が均一に分散している場合は分散媒と称する。
添加剤としては、レベリング剤、導電性向上剤等が挙げられる。
レベリング剤は、レベリング性の改善を目的として用いられる。レベリング剤としては、例えば、非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸エタノールアマイドなど)、アニオン系界面活性剤(スルホン酸エステル、リン酸エステル、コハク酸エステルなど)等の界面活性剤が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電性向上剤は、導電性を向上させる目的で用いられる。導電性向上剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N-ジメチルホルムアミド、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。中でも、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N-メチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンが好ましい。これらの導電性向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
架橋型導電性塗料組成物(B)は、π共役系導電性ポリマー(b-1)を固形分換算で、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部、より好ましくは0.1~1質量部含む。
バインダー(b-2)が含まれる場合、バインダー(b-2)は、固形分換算で、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
架橋剤(b-3)が含まれる場合、架橋剤(b-3)は、固形分換算で、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.05~30質量部、より好ましくは0.1~25質量部である。
架橋型導電性塗料組成物(B)に含まれる水の量は、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは20~50質量部、より好ましくは30~40質量部である。
溶媒又は分散媒が含まれる場合、溶媒又は分散媒は、メタノール、エタノール及び2-プロパノールが好ましい。溶媒又は分散媒の含有量は特に限定されず、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは55~75質量部、より好ましくは60~70質量部である。水と有機溶媒との比率(質量比)は、好ましくは100:0~5:95であり、より好ましくは100:0~30:70である。
レベリング剤が含まれる場合、レベリング剤は、固形分換算で、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.01~0.5質量部、より好ましくは0.02~0.2質量部である。
導電性向上剤が含まれる場合、導電性向上剤は、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部である。
【0027】
なお、架橋型導電性塗料組成物の「架橋型」は、塗料のポットライフが短いために2液タイプで供給されるものが好ましい。これに対して、「一液型」の導電性塗料組成物とは、導電性ポリマー(b-1)及びバインダー(b-2)を含むものであって、架橋剤(b-3)を含まない塗料組成物である。「架橋型」導電性塗料組成物は、「一液型」導電性塗料組成物と比較した場合に耐水(帯電防止)性に優れる。
「一液型」導電性塗料組成物では、π共役系導電性ポリマー(b-1)を、固形分換算で、導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部、より好ましくは0.1~1.5質量部含む。
バインダー(b-2)は、固形分換算で、導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部含む。
この場合、導電性塗料組成物(B)に含まれる水の量は、架橋型導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは50~95質量部、より好ましくは60~90質量部である。
溶媒又は分散媒が含まれる場合、溶媒又は分散媒は、メタノール、エタノール及び2-プロパノールが好ましい。溶媒又は分散媒の含有量は特に限定されず、導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは5~10質量部である。
レベリング剤が含まれる場合、レベリング剤は、固形分換算で、導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.01~0.5質量部、より好ましくは0.05~1質量部である。
導電性向上剤が含まれる場合、導電性向上剤は、導電性塗料組成物(B)100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは1~3質量部である。
市販品として、製品名「デナトロンTX-401」(ナガセケムテックス(株)製)、製品名「セプルジーダAS-G1」(信越ポリマー(株)製)等が挙げられるが、これに架橋剤(b-3)を添加して用いてもよい。
架橋剤の含有量は特に限定されないが、固形分換算で、「一液型」導電性塗料組成物100質量部に対して、好ましくは0.05~30質量部、より好ましくは0.1~25質量部である。
【0028】
〔水分散性帯電防止コーティング組成物〕
上述したように得られる水分散性帯電防止コーティング組成物は、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)(樹脂分濃度30質量%基準)100質量部に対して、(B)架橋型導電性塗料組成物(固形分濃度7質量%基準)10~60質量部で含まれるものが挙げられ、20~50質量部が好ましい。
【0029】
このような水分散性帯電防止コーティング組成物は、さらに、重合開始剤(C)が添加されていることが好ましい。水分散性帯電防止コーティング組成物に重合開始剤を添加することにより、熱、活性エネルギー線(例えば、紫外線)によって、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、より容易に架橋及び/又は重合して硬化重合体を構成することができ、水分散性帯電防止コーティング組成物としての機能(防曇性、基材密着性、透明性、耐溶剤性、耐擦過性等)を発揮させることができる。
重合開始剤(C)としては、熱又は還元性物質等によってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、水溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が挙げられる。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t-ブチルヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ヒドロクロリド及び2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。なかでも、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート(商品名:VA-057、富士フィルム 和光純薬社製)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,2’-ジメチル-2,2’-ジアゼンジイルジプロパンアミド(商品名:VA-086、富士フィルム和光純薬社製)、ビス[2-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-2-イル]ジアゼン(商品名:VA-061、富士フィルム和光純薬社製)、アゾビスイソ酪酸アミジン塩酸塩(商品名:V-50、富士フィルム和光純薬社製)、(E)-1,2-ビス[2-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)プロパン-2-イル]ジアゼン-二塩酸塩(商品名:VA-044、富士フィルム和光純薬社製)、アゾビスシアノ吉草酸(商品名:V-501、富士フィルム和光純薬社製)等の水溶性アゾ重合開始剤、tert-ブチル=ヒドロペルオキシド(商品名:パーブチルH、日油社製)等の水溶性有機過酸化物が好ましい。
重合開始剤(C)は、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)(樹脂分濃度30質量%基準)の固形分100質量部に対して、0.001~10質量部で含むことが挙げられ、0.01~10質量部が好ましく、0.05~8質量部より好ましく、0.6~5質量部がさらに好ましい。重合速度の促進及び70℃以下等の低温での重合が望まれる場合は、例えば、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩及びロンガリット等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることが好ましい。
【0030】
水分散性帯電防止コーティング組成物には、さらに、光重合開始助剤、エチレン性不飽和モノマー、帯電防止剤、フィラー、染顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、一般的な水性エマルション塗料用添加剤、例えば、表面硬度及び擦過性を向上させるためナノ粒子のコロイダルシリカ等を含む表面調整剤、ポリグリセリン誘導体等を含む界面活性剤、顔料、着色剤、増粘剤、チクソトロピー性付与剤、難燃剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、可塑剤、充填剤、補強剤、艶消し剤等が配合されていてもよい。また、硝子との接着を目的にシランカップリング剤を添加してもよいし、塗膜の耐光性を上げるため酸化防止剤又は紫外線吸収剤等を添加してもよい。これらは、当該分野で通常用いられているもののいずれを用いてもよい。
また、必要に応じて、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
これらの成分は、同時に又は順次、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物又は水分散性帯電防止コーティング組成物に添加し、混合すればよい。
【0031】
光重合開始剤は、水分散性帯電防止コーティング組成物を活性エネルギー線により硬化することができる。光重合開始剤としては、水溶性又は水分散性を有する光重合開始剤を使用することが好ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシプロポキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメトクロライド(オクテルケミカルズ社製、「Quantacure QTX」)、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1- オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」)等が挙げられる。なかでも、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ- 2-メチル-1-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」、IGM Resins B.V.社製「Omnirad 2959」)が好ましい。
光重合開始剤は、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)(樹脂分濃度30質量%基準)の固形分100質量部に対して、0.002~10質量部で添加することが挙げられ、0.01~10質量部が好ましく、0.05~8質量部より好ましく、0.6~5質量部がさらに好ましい。
【0032】
光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。
光重合開始助剤は、光重合開始剤100質量部に対して、0.1~100質量部で添加することが挙げられる。
【0033】
エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、ビニル基含有化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸化合物としては、(メタ)アクリル酸アミド類、アルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類、ポリオールポリ(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。ビニル基含有化合物としては、酢酸ビニル、N-ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
アクリル酸アミド類としては、例えば、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アミノアルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩類としては、アルキロイルアミノプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム塩等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類としては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ る。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの酸無水物付加物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートヘキサヒドロ無水フタル酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートヘキサヒドロ無水フタル酸付加物等が挙げられる。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ )アクリレート等が挙げられる。アルキルジオールジ(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、へキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリオールポリ(メタ)アクリレート類としては、トリメ チロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキレンオキサイド付加ポリオールポリ(メタ)アクリレート類としては、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートアルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ビニルアルキルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、2-エチルヘ キシルビニルエーテル等が挙げられる。
なかでも、(メタ)アクリル酸化合物又はビニル基含有化合物は、水分散性を有する、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ビニルピロリドン、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級塩、ジメチルアミ ノアルキル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ビニルスルホン酸及びビニルスルホン酸塩であることがより好ましい。
エチレン性不飽和モノマーは、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)(樹脂分濃度20質量%基準)100質量部に対して、0~100質量部で添加することが挙げられ、0.02~80質量部が好ましい。
【0034】
水分散性帯電防止コーティング組成物は、種々の被塗物に形成して、帯電防止コーティングとして利用することができる。被塗物としては、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエン等のポリオレフィン系樹脂、特にポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂等)、ガラス、金属、紙、木材、セメント等の基材が挙げられる。水分散性帯電防止コーティング組成物を、被塗物(例えば、易接着PETフィルム)の表面に形成する場合、その乾燥厚みを、0.01~100μm、好ましくは0.5~20μmとすることが挙げられる。このように、水分散性帯電防止コーティング組成物を被塗物に形成することにより、良好な基材密着性を有するとともに、透明性、初期帯電防止性、耐水(帯電防止)性、耐擦過性に優れた帯電防止塗膜とすることができる。
【0035】
水分散性帯電防止コーティング組成物を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
水分散性帯電防止コーティング組成物を基材に塗工(塗布)した後、活性エネルギー線を照射するか、熱処理するか、それらを組み合わせて行うことにより、塗布膜を硬化させる。活性エネルギー線は、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、例えば、100~2000mJ/cm2の範囲が挙げられ、500~1000mJ/cm2の範囲が好ましい。熱処理は、80~200℃の温度範囲、具体的には、100~200℃以下の温度範囲で、1~30分間の熱風乾燥兼熱処理が挙げられ、100℃で5~15分間、120℃で3~10分間、130℃又は150℃で1~5分間がより好ましい。また、このような熱風乾燥した後活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、水分が塗膜に残ることなく、塗膜外観が白化せずに基材との密着性が良好となる。また、塗膜による硬化物の表面のレベリング性がより良くなり、耐スチールウール性や耐水性をも向上させることができる。特に、高温の熱処理下で架橋させることにより耐水性、耐水帯電防止性が向上する。
【0036】
本発明の水分散性帯電防止コーティング組成物は、架橋/重合した塗膜とすることにより、耐擦傷性に優れ、帯電防止性を有しているため、プラスチック等の基材表面の保護、吸埃の防止をすることができる。また、防曇性が優れており、プラスチック類だけでなく眼鏡、鏡等の防曇にも利用することができる。また、本発明の水分散性帯電防止コーティング組成物は、各種ディスプレイの光学フィルム、各種電子部品、電子部品包装用のキャリアテープ及びカバーテープ、トレイなどの帯電防止剤、各種ディスプレイの透明電極および電磁波シールドなどの分野で有用である。また、このような構成からなる光学フィルムは、液晶ディスプレイ、偏光板、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池等に用いる、帯電防止層を備えた光学フィルムとして好適である。
【実施例0037】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
本発明の水分散性帯電防止コーティング組成物は、以下のように製造した。
(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物の製造)
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、乾燥空気吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアネート基含有量23%)159g(0.29モル)、2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.6g、ジブチルスズジラウリレート0.02gを仕込んだ。これに、70℃にて、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(0.58モル)(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(水酸基価59.8mgKOH/g)545gとして仕込む)を約1時間で滴下し、70℃で4時間反応させた。残存イソシアネート基が1.7%となった時点で60℃に冷却した。
これに、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重量平均分子量989.59、水酸基価56.7mgKOH/g)643.9g(0.30モル)を55℃にて約1時間で滴下した。反応が開始すると激しく発熱するため随時冷却した。発熱がほぼなくなったところで70℃に加熱し、3時間反応させて、オリゴマーの赤外吸収スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失した時点で反応を終了し、ウレタンアクリレートオリゴマーを得た(樹脂分濃度100質量%)。得られたウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量は12,000であった。
【0038】
(乳化)
上記で得られたウレタンアクリレートオリゴマー300gを60℃に保ち、室温(25℃)のイオン交換水700gを滴下または分割仕込み5回(初期400g、30分ごとに100g追加)(転相乳化法)しながら、パドル翼にて、オリゴマーとイオン交換水との界面(W/O界面)付近で撹拌した。このときの攪拌は、10~50rpmにて行った。樹脂分濃度が30質量%になった時点で滴下を終了し、乳化液を得た。その後、30分間撹拌を維持し、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)を得た。
得られた水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)のpHは4~5、加熱残分(以下、「樹脂分濃度」ともいう)は30質量%、25℃での粘度は10mPa・Sであった。
【0039】
(π共役系導電性ポリマーを含む架橋型導電性塗料組成物(B)の準備)
以下の成分を準備した。
(B)π共役系導電性ポリマーを含む架橋型導電性塗料組成物
π共役系導電性ポリマー(b-1)液:PEDOT/PSS0.1~1%、エタノール1~10%、プロパノール1~10%、水80~95%、pH:6.9、粘度:23.7mPa・s/25℃、固形分:3.6%、
バインダー(b-2)及び架橋剤(b-3)の混合液:アクリル樹脂共重合体1~15質量部とメラミン樹脂誘導体1~25質量部との樹脂混合物2~40%、エタノール5~25%、メタノール0.1~1%、水30~70%、pH:7.4、粘度:7.6mPa・s/25℃、固形分:20.2%、
(B’-1)π共役系導電性ポリマーを含む一液型導電性塗料組成物:製品名「デナトロンTX-401」(ナガセケムテックス(株)製)、外観:濃青色、粘度:26.1mPa・s、pH:7.5、固形分:3.9質量%、PEDOT/PSSを1~1.5質量%で含有、
(B’-2)π共役系導電性ポリマーを含む一液型導電性塗料組成物:製品名「セプルジーダAS-G1」(信越ポリマー(株)製)、外観:濃青色液体、pH:1.5-2.5、固形分:1.2~1.3質量%、
(B’-3)SW-CNT(シングルウォール・カーボンナノチューブ3.4%含有)導電性塗料組成物:製品名「デナトロンC-100A」(ナガセケムテックス(株)製)、外観:黒色、粘度:7-10mPa・s、pH:7-10、固形分:3.4質量%、
(B’-4)4級アンモニウム塩系導電性塗料組成物:製品名「ASA-197」(高松油脂(株)製)、主成分:アクリル及び4級アンモニウム塩、粘度:約500mPa・s、pH:3-5、
(B’-5)合成鉱物(アニオン)系導電性塗料組成物:製品名「ASA-2050」(高松油脂(株)製)、主成分:ポリエステル+合成粘度鉱物、粘度:100mPa・s以下、pH:8-10、
(B’-6)Liイオン電解質(LiFSI:リチウムビスフルオロスルホニルイミド):製品名「イオネル(登録商標)LF-101」((株)日本触媒製)、外観:白色粉末、純度:99.9%以上、溶解性:DMC、EMCに50wt%以上溶解。
【0040】
実施例1
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、乾燥空気吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、水溶性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物(A)100g(固形分30質量%:固形分量30g)と、π共役系導電性ポリマー液(b-1)20g(PEDOT/PSSを0.1~1%を含む、固形分3.6%:固形分量0.72g)を常温で配合し、均一に分散させた後、(b-2)及び架橋剤(b-3)の樹脂混合物10g(日本カーバイド工業社製のニカラックM W - 30LF(固形分20.2%:固形分量2.02g))を常温で配合して均一に分散させた。その後、重合開始剤(C-1)1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」)1.2gを仕込み、常温にて分散して水分散性帯電防止コーティング剤組成物(固形分26%)を得た。
【0041】
実施例2
実施例1の重合開始剤(C-1)1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」)1.2gに代えて、(C-2)加硫酸アンモニウム1.5gを仕込み、常温にて分散して水分散性帯電防止コーティング剤組成物(固形分26%)を得た。
【0042】
実施例3~4及び比較例1~11
以下の表1に示す各成分を混合して、実施例及び比較例の水分散性帯電防止コーティング剤組成物を、実施例1と同様に調製した。表1における各成分は、表2に示すとおりである。
【表1】
【表2】
【0043】
試験例1
実施例及び比較例で得られた各水分散性帯電防止コーティング組成物を、易接着性ポリエステルフィルム(以下、基材PET)に、バーコーター#14を用いて、乾燥後の膜厚が2μm~4μmとなるように塗工した。
水分散性帯電防止コーティング組成物の塗工後、以下の〔a-1〕又は〔a-2〕条件で硬化させた。
〔a-1〕130℃で2分間、乾燥兼熱処理を行い、無電極ランプHバルブを用いて、ラインスピード:5.4m/min、照射量:600mJ/cm2、Peak照度:1,500mW/cm2で紫外線照射を行った。
〔a-2〕150℃で5分間、乾燥兼熱硬化を行った。
これにより、各水分散性帯電防止コーティング剤組成物を易接着性ポリエステルフィルム上にコーティングして、硬化し、得られた帯電防止塗膜付きポリエステルフィルムを用いて、以下の評価を行った。
【0044】
(塗膜外観及びレベリング性)
防曇塗膜付きポリエステルフィルムの塗膜外観及びレベリング性を、塗膜の白化及びムラ(不均一性)、ハジキの有無により、目視確認した。透明性及びハジキがないものは、均一透明な塗膜であり、良好と評価した。その結果を表3に示す。
【表3】
【0045】
試験例2
試験例1で作製した帯電防止塗膜付きポリエステルフィルムについて、以下の各試験を行った。それらの結果を表4に示す。
(初期帯電防止性)
ハイレスターUX 印加電圧:250V
20℃ 45%RHの測定環境下で表面抵抗率(Ω/sq.)を測定した。
表面抵抗率:1×10
5~1×10
11Ω/sq.を帯電防止性有り○とした。
表面抵抗率:1×10
12Ω/sq.以上を帯電防止性無し×とした。
(耐水帯電防止性)
帯電防止塗膜付きポリエステルフィルムを流水中に10分間浸漬後、ウエスで水滴を拭き取り、20℃、45%RHの測定環境下で1時間静置した。その後、
ハイレスターUX 印加電圧:250Vで、20℃、45%RHの測定環境下で表面抵抗率(Ω/sq.)を測定した。
初期帯電防止性が有って、
耐水試験後の表面抵抗率上昇が認められないものを○、
耐水試験後の表面抵抗率上昇が1×10
1程度のものを△、
耐水試験後の表面抵抗率上昇が1×10<のものを×、
耐水試験後の塗膜が基材から剥離・流れたり、白化したものを××とした。
(耐擦過性)
防曇塗膜付きポリエステルフィルムに対して、荷重50~500gの負荷をかけたスチールウール(#0000)で10往復、擦ることにより耐擦過性を評価した。傷の状態を目視観察した。荷重300g以上で傷が無いものを〇とした。
(塗膜硬度)
帯電防止塗膜付きポリエステルフィルムについて、JISK5400に準じて鉛筆硬度を測定した。
(基材密着性)
各基材への密着性を評価した。JIS K5400に準じて、実施例及び比較例で得られた各水分散性帯電防止コーティング組成物を硬化して得られた帯電防止塗膜付きポリエステルフィルムに、2mmの碁盤目を100ヶ所作り、セロハンテープにより密着試験を行った。碁盤目の剥離状態を観察し、残存したマス目の数を測定した。
(光学特性)
帯電防止塗膜付きポリエステルフィルムをコニカミノルタ製分光測色計CM-3600Aにて全光線透過率を測定した。全光線透過率:89%以上を合格とした(基材A:89.6%上)。
【表4】
【0046】
試験例3
試験例2にて初期帯電防止性が良好〇で、耐水帯電防止性も良好〇と評価された帯電防止塗膜付きポリエステルフィルムについて、耐水試験前後の光学特性を評価した。その結果を表5に示す。
(光学特性)
防曇塗膜付きポリエステルフィルムをコニカミノルタ製分光測色計CM-3600Aにてヘイズ及び全光線透過率を測定した。
ヘイズの変化が無く、全光線透過率:88%以上を合格とした(基材:89.4%以上)。
【表5】
本発明の水分散性帯電防止コーティング組成物の製造方法で得られた水分散性帯電防止コーティング組成物は、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、剥離剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材等、各種の被膜形成材料として非常に有用である。また、本発明の塗装物品は、耐擦傷性に優れ、帯電防止性を有しているので、プラスチック等の基材表面の保護、吸埃の防止をすることができる。また、防曇性が優れており、プラスチック類だけでなく眼鏡、鏡等の防曇にも利用できる。