(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154354
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】防振構造、ストラットマウント、及び、防振構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 1/38 20060101AFI20241023BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F16F1/38 F
F16F1/38 G
F16F15/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147970
(22)【出願日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2023067972
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048DA06
3J048EA18
3J059AA02
3J059BA42
3J059BB01
3J059BC06
3J059BD04
3J059EA03
3J059EA06
3J059EA13
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】ねじり方向の剛性を低減できる防振構造及びストラットマウント、並びに、ねじり方向の剛性を低減できる防振構造を得ることができる防振構造の製造方法を、提供する。
【解決手段】防振構造1は、内筒2と、外筒3と、内筒及び外筒どうしを連結する本体ゴム4と、を備えた、防振構造であって、本体ゴムの内周面は、軸線方向両側において内筒の外周面及び/又は軸線方向端面に対して全周にわたって接合された、一対の接合部41と、一対の接合部どうしの間を延在し、内筒に対して接合されていないが接触している、非接合部42と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、
外筒と、
前記内筒及び前記外筒どうしを連結する本体ゴムと、
を備えた、防振構造であって、
前記本体ゴムの内周面は、
軸線方向両側において前記内筒の外周面及び/又は軸線方向端面に対して全周にわたって接合された、一対の接合部と、
前記一対の接合部どうしの間を延在し、前記内筒に対して接合されていないが接触している、非接合部と、
を有している、防振構造。
【請求項2】
前記外筒は、軸線方向に平行に延在する、ストレート部を有しており、
前記ストレート部は、少なくとも前記防振構造の軸線方向中心から前記本体ゴムの前記一対の接合部のそれぞれの少なくとも一部の軸線方向位置までにわたって、延在している、請求項1に記載の防振構造。
【請求項3】
前記内筒と前記本体ゴムの前記非接合部との間には、潤滑剤が介在している、請求項1に記載の防振構造。
【請求項4】
前記内筒の外周面は、外周側へ向かって突出するバルジ形状をなすバルジ形状部を有している、請求項1に記載の防振構造。
【請求項5】
前記本体ゴムの前記一対の接合部は、前記内筒の前記外周面のうち前記バルジ形状部を除く部分及び/又は前記内筒の前記軸線方向端面に対して、全周にわたって接合されており、
前記本体ゴムの前記非接合部は、前記内筒の前記バルジ形状部に対して接合されていないが接触している、請求項4に記載の防振構造。
【請求項6】
前記外筒は、周方向に沿って配列されるとともに互いに別体に構成された複数の部分外筒部材からなり、
前記防振構造に外力が作用していない自然状態において、前記複数の部分外筒部材は、周方向において互いから離間している、請求項1に記載の防振構造。
【請求項7】
前記内筒の外周面は、前記本体ゴムの前記一対の接合部よりも軸線方向内側において、それぞれ周方向に延在する一対の周方向溝を有しており、
前記本体ゴムの前記非接合部は、前記一対の周方向溝に嵌合するように構成された一対の突条部を有している、請求項1に記載の防振構造。
【請求項8】
前記防振構造は、サスペンション装置のリンク機構に用いられるブッシュとして構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の防振構造。
【請求項9】
前記防振構造は、ストラットマウントに備えられるように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の防振構造。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の防振構造を備えた、ストラットマウント。
【請求項11】
加硫工程を経て請求項1~7のいずれか一項に記載の防振構造を製造する、防振構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防振構造、ストラットマウント、及び、防振構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内筒と、外筒と、内筒及び外筒どうしを連結する本体ゴムと、を備えた、防振構造がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防振構造では、本体ゴムが内筒及び外筒のそれぞれに対して本体ゴムの全面にわたって接合されており、そのため、ねじり方向の剛性が高く、内筒が外筒に対してねじり方向に揺動しにくいおそれがあった。
【0005】
この発明は、ねじり方向の剛性を低減できる防振構造及びストラットマウント、並びに、ねじり方向の剛性を低減できる防振構造を得ることができる防振構造の製造方法を、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕内筒と、
外筒と、
前記内筒及び前記外筒どうしを連結する本体ゴムと、
を備えた、防振構造であって、
前記本体ゴムの内周面は、
軸線方向両側において前記内筒の外周面及び/又は軸線方向端面に対して全周にわたって接合された、一対の接合部と、
前記一対の接合部どうしの間を延在し、前記内筒に対して接合されていないが接触している、非接合部と、
を有している、防振構造。
これにより、ねじり方向の剛性を低減できる。
【0007】
〔2〕前記外筒は、軸線方向に平行に延在する、ストレート部を有しており、
前記ストレート部は、少なくとも前記防振構造の軸線方向中心から前記本体ゴムの前記一対の接合部のそれぞれの少なくとも一部の軸線方向位置までにわたって、延在している、〔1〕に記載の防振構造。
これにより、耐久性を向上できる。
【0008】
〔3〕前記内筒と前記本体ゴムの前記非接合部との間には、潤滑剤が介在している、〔1〕又は〔2〕に記載の防振構造。
この場合、本体ゴムが内筒に対して摺動しやすくなる。
【0009】
〔4〕前記内筒の外周面は、外周側へ向かって突出するバルジ形状をなすバルジ形状部を有している、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の防振構造。
この場合、軸直方向の変位に対して、より高いバネ剛性を発揮することができる。
【0010】
〔5〕前記本体ゴムの前記一対の接合部は、前記内筒の前記外周面のうち前記バルジ形状部を除く部分及び/又は前記内筒の前記軸線方向端面に対して、全周にわたって接合されており、
前記本体ゴムの前記非接合部は、前記内筒の前記バルジ形状部に対して接合されていないが接触している、〔4〕に記載の防振構造。
この場合、こじり方向の変位に対するバネ剛性を、より低減することができる。
【0011】
〔6〕前記外筒は、周方向に沿って配列されるとともに互いに別体に構成された複数の部分外筒部材からなり、
前記防振構造に外力が作用していない自然状態において、前記複数の部分外筒部材は、周方向において互いから離間している、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の防振構造。
【0012】
〔7〕前記内筒の外周面は、前記本体ゴムの前記一対の接合部よりも軸線方向内側において、それぞれ周方向に延在する一対の周方向溝を有しており、
前記本体ゴムの前記非接合部は、前記一対の周方向溝に嵌合するように構成された一対の突条部を有している、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の防振構造。
【0013】
〔8〕前記防振構造は、サスペンション装置のリンク機構に用いられるブッシュとして構成されている、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の防振構造。
【0014】
〔9〕前記防振構造は、ストラットマウントに備えられるように構成されている、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の防振構造。
【0015】
〔10〕〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の防振構造を備えた、ストラットマウント。
これにより、ねじり方向の剛性を低減できる。
【0016】
〔11〕加硫工程を経て〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の防振構造を製造する、防振構造の製造方法。
これにより、ねじり方向の剛性を低減できる防振構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ねじり方向の剛性を低減できる防振構造及びストラットマウント、並びに、ねじり方向の剛性を低減できる防振構造を得ることができる防振構造の製造方法を、提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る防振構造を概略的に示す、断面図である。
【
図2】
図1の内筒における接合部及び非接合部について説明するための図面である。
【
図3】
図1の防振構造を製造する際に潤滑剤注入工程を行う例について説明するための図面である。
【
図4】
図1の防振構造を製造する際に栓挿入工程を行う例について説明するための図面である。
【
図5】
図3の注入穴を絞り工程により塞ぐ例について説明するための図面である。
【
図6】
図1の防振構造において、内筒がこじり変位する際の動作を説明するための図面である。
【
図7】
図1の防振構造の第1変形例を概略的に示す、断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る防振構造を備えたストラットマウントを概略的に示す、断面図である。
【
図9】
図8の内筒における接合部及び非接合部について説明するための図面である。
【
図10】
図8の防振構造を製造する際に潤滑剤注入工程を行う例について説明するための図面である。
【
図11】
図8の防振構造を製造する際に栓挿入工程を行う例について説明するための図面である。
【
図12】
図8の防振構造を製造する際に絞り工程を行う例について説明するための図面である。
【
図13】
図8の防振構造において、内筒がこじり変位する際の動作を説明するための図面である。
【
図14】
図8の防振構造において、内筒が軸線方向に変位する際の動作を説明するための図面である。
【
図15】
図8の防振構造の一変形例を概略的に示す、断面図である。
【
図16】
図15の内筒における接合部及び非接合部について説明するための図面である。
【
図17】
図1の防振構造の第2変形例を概略的に示す、断面図である。
【
図18】
図17の防振構造において、内筒が軸直方向に変位する際の動作を説明するための図面である。
【
図19】
図17の防振構造を製造する際に加硫工程の後に折り曲げ工程を行う例について説明するための図面である。
【
図20】
図1の防振構造の第3変形例を概略的に示す、断面図である。
【
図21】
図1の防振構造の第4変形例を径方向外側から見たときの様子を概略的に示す、側面図である。
【
図22】
図21の防振構造を軸線方向一方側から見たときの様子を概略的に示す、正面図である。
【
図23】
図22の防振構造を
図22のA-A線に沿う断面により概略的に示す、A-A断面図である。
【
図24】
図23の防振構造において、内筒が軸直方向に変位する際の動作を説明するための図面である。
【
図25】
図25(a)は
図21におけるいずれか1つの部分外筒部材を径方向外側から見たときの様子を概略的に示す側面図であり、
図25(b)は
図25(a)の部分外筒部材を軸線方向一方側から見たときの様子を概略的に示す正面図である。
【
図26】
図26(a)は
図23と同様に自然状態にある
図23の防振構造を示しており、
図26(b)は
図26(a)の防振構造を外部部材の筒状部の内周面に圧入した状態を概略的に示す断面図である。
【
図27】
図27(a)は
図26(b)に示す防振構造及び外部部材を軸線方向一方側から見たときの様子を概略的に示す正面図であり、
図27(b)は
図27(a)に示す防振構造及び外部部材を径方向外側から見たときの様子を概略的に示す側面図である。
【
図28】
図1の防振構造の第5変形例を軸線方向一方側から見たときの様子を概略的に示す、正面図である。
【
図29】
図1の防振構造の第6変形例を軸線方向一方側から見たときの様子を概略的に示す、正面図である。
【
図30】
図1の防振構造の第7変形例を概略的に示す、断面図である。
【
図31】
図31(a)は
図30におけるいずれか1つの部分外筒部材を径方向外側から見たときの様子を概略的に示す側面図であり、
図31(b)は
図31(a)の部分外筒部材を軸線方向一方側から見たときの様子を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る防振構造、ストラットマウント、及び、防振構造の製造方法は、車両のサスペンション装置に適用されると好適なものであり、例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置に適用されると好適なものである。本発明に係る防振構造、及び、防振構造の製造方法は、例えば、車両のサスペンション装置(例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置)のリンク機構(サスペンションリンクアーム等)に用いられるブッシュとして構成されると好適であり、あるいは、車両のサスペンション装置(例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置)のストラットマウントに備えられると好適である。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る防振構造、ストラットマウント、及び、防振構造の製造方法の実施形態を例示説明する。
【0020】
図1~
図7、
図17~
図31は、本発明の第1実施形態及びその変形例に係る防振構造1及びその製造方法を説明するための図面である。第1実施形態において、防振構造1は、車両のサスペンション装置のリンク機構(サスペンションリンクアーム等)に用いられるブッシュとして構成されている。
図8~
図16は、本発明の第2実施形態及びその変形例に係る防振構造1及びその製造方法を説明するための図面である。第2実施形態において、防振構造1は、車両のサスペンション装置のストラットマウント7に備えられている。
以下では、説明の便宜のため、これらの実施形態を並行して説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係る防振構造1を概略的に示す、断面図である。上述のように、第1実施形態において、防振構造1は、車両のサスペンション装置のリンク機構(サスペンションリンクアーム等)に用いられるブッシュとして構成されている。本実施形態において、防振構造1の軸線方向は、略水平方向となるように指向される。
図1に示すように、第1実施形態において、防振構造1は、内筒2と、外筒3と、本体ゴム4と、を備えている。これらの構成については、後に説明する。
【0022】
図8は、本発明の第2実施形態に係る防振構造1を備えたストラットマウント7を概略的に示す、断面図である。上述のように、第2実施形態において、防振構造1は、車両のサスペンション装置のストラットマウント7に備えられている。本実施形態において、防振構造1の軸線方向は、略鉛直方向となるように指向される。
サスペンション装置は、図示は省略するが、ストラットマウント7と、ショックアブソーバと、スプリング8と、を備えている。
ショックアブソーバは、ダンパーロッド6と、シリンダーと、を有している。シリンダーは、ダンパーロッド6の下側に位置しており、ダンパーロッド6と同軸に配設されている。
ストラットマウント7は、ダンパーロッド6の上端部に取り付けられている。
スプリング8は、ダンパーロッド6及びストラットマウント7を一体に上方付勢状態で下方移動可能に支持するように構成されている。スプリング8の下端部は、ショックアブソーバのシリンダーに固定された受部によって支持されている。
ストラットマウント7は、
図8の例において、防振構造1と、ブラケット71と、ベアリング72と、スプリングシート73と、を備えている。
図8に示すように、第2実施形態において、防振構造1は、内筒2と、外筒3と、本体ゴム4と、を備えている。
ブラケット71は、車体側に取り付けられるように構成されている。
図8に示す例において、ブラケット71は、ブラケット筒状部711と、ブラケットフランジ部712と、ブラケット上環状部715と、ブラケット下環状部716と、を有している。
ブラケット筒状部711は、防振構造1の軸線方向に延在する筒状に構成されている。
ブラケット上環状部715は、ブラケット筒状部711における上側の部分から内周側へ延在している。ブラケット上環状部715は、環状をなしている。
ブラケット下環状部716は、ブラケット上環状部715よりも下側において、ブラケット筒状部711から内周側へ延在している。ブラケット下環状部716は、環状をなしている。
ブラケット上環状部715の内周端部とブラケット下環状部716の内周端部とは、ブラケット71を軸線方向に貫通する中央貫通穴713を区画している。ブラケット71の中央貫通穴717は、ダンパーロッド6の上端部が挿入されるように構成されている。
ブラケットフランジ部712は、ブラケット筒状部711における上側の部分から外周側へ張り出している。ブラケットフランジ部712は、1つ又は複数の締結具F1を介して車体側に対して締め付けられることによって、車体側に取り付けられるように構成されている。締結具F1は、例えばボルトである。
ただし、ブラケット71は、締結具F1による締結とは異なる手段によって車体側に取り付けられるように構成されてもよい。
防振構造1は、軸線方向におけるブラケット上環状部715とブラケット下環状部716との間において、ブラケット筒状部711の内周側に配置されている。防振構造1の外筒3は、ブラケット筒状部711の内周面に接しており、圧入等によってブラケット筒状部711の内周面に嵌め込まれている。防振構造1の外筒3は、ブラケット筒状部711と同軸である。
ダンパーロッド6は、その上端部に取付部61を有している。取付部61は、ダンパーロッド6のうち取付部61よりも下側の部分よりも小径である。取付部61のうち上側の部分には、その外周面に、おねじが形成されている。ダンパーロッド6は、取付部61の下端から外周側へ延在するとともに上側を向く段差面62を有している。段差面62は、軸線方向におけるブラケット上環状部715とブラケット下環状部716との間に位置している。防振構造1の内筒2は、内筒2の内周面によって区画される中央貫通穴にダンパーロッド6の取付部61が挿通され、内筒2の下側の端面がダンパーロッド6の段差面62に接した状態で、内筒2の上側の端面がナット等の締結具F2によって上側から締め付けられることによって、ダンパーロッド6に取り付けられるように構成されている。このように防振構造1の内筒2の中央貫通穴にダンパーロッド6の取付部61が挿通された状態において、内筒2とダンパーロッド6とは同軸となる。
ベアリング72は、ブラケット筒状部711よりも外周側に位置しており、ブラケットフランジ部712に下側から接している。
スプリングシート73は、ベアリング72に下側から接している。スプリングシート73には、スプリング8の上端部が、下側から接している。
ベアリング72は、ブラケット71及びこれに嵌め込まれた防振構造1を一体として、スプリングシート73(ひいてはスプリング8)に対して相対的に、防振構造1の中心軸線O3の周りで回転可能に支持している。これにより、例えば、車両が転陀する際等におけるスプリング8の回転を吸収することができる。
ただし、ストラットマウント7は、本明細書で説明する防振構造1以外の部分の構成については、
図8に示す例とは異なる任意の構成を有してよい。
【0023】
以下、第1実施形態(
図1)、第2実施形態(
図8)、及びそれらの変形例における防振構造1について、さらに詳しく説明する。
図7は、第1実施形態の第1変形例を説明するための図面である。
図17は、第1実施形態の第2変形例を説明するための図面である。
図20は、第1実施形態の第3変形例を説明するための図面である。
図21~
図27は、第1実施形態の第4変形例を説明するための図面である。
図28は、第1実施形態の第5変形例を説明するための図面である。
図29は、第1実施形態の第6変形例を説明するための図面である。
図30~
図31は、第1実施形態の第7変形例を説明するための図面である。
図15~
図16は、第2実施形態の一変形例を説明するための図面である。以下に説明する事項は、特に断りが無い限り、本明細書で説明する各例にそれぞれ適用され得る事項である。
【0024】
本明細書では、防振構造1について説明する際、便宜のため、特に断りが無い限りは、
図1や
図8等に示すように、防振構造1に入力やその他の外力が加わっておらず、防振構造1が静止した、通常の状態(本明細書では、「自然状態」ともいう。)にあるときの構造について、説明するものとする。
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20、
図21~
図23、
図28~
図30において、防振構造1は、自然状態にある。
【0025】
【0026】
外筒3は、内筒2の外周側に位置している。内筒2は外筒3と同軸に配設されており、言い換えれば、内筒2の中心軸線O2は、外筒3の中心軸線O3と一致している。
【0027】
本明細書では、外筒3の中心軸線O3を、防振構造1の中心軸線O3とみなすものとする。また、本明細書では、特に断りが無い限り、防振構造1の中心軸線O3に平行な方向を、「軸線方向」といい、軸線方向において防振構造1の中心から遠い側を「軸線方向外側」といい、軸線方向において防振構造1の中心に近い側を「軸線方向内側」といい、防振構造1の中心軸線O3に垂直な方向を、「軸直方向」といい、防振構造1の中心軸線O3に近い側を「内周側」といい、防振構造1の中心軸線O3から遠い側を「外周側」といい、防振構造1の中心軸線O3を中心とする周方向を「周方向」といい、防振構造1の中心軸線O3を中心とする径方向を「径方向」という。
【0028】
本体ゴム4は、ゴムから構成されている。本体ゴム4は、径方向における内筒2と外筒3との間に位置している。本体ゴム4は、内筒2及び外筒3どうしを連結している。本体ゴム4は、内筒2と外筒3との間を全周にわたって延在しており、ひいては、筒状をなしている。
【0029】
本体ゴム4の外周面は、全周にわたって、外筒3の内周面に対して接合されていると、好適である。本体ゴム4は、本体ゴム4のうち外筒3と接触している部分の全体にわたって、外筒3に対して接合されていてもよい。本体ゴム4と外筒3との間の接合は、例えば、加硫接着、及び/又は、接着剤を介した接着等、任意の手法でなされたものでよい。
【0030】
本体ゴム4の内周面は、一対の接合部41と、非接合部42と、を有している(
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20、
図23、
図30)。
理解し易さのため、各図では、接合部41が存在する領域にドットハッチングを付している。
【0031】
本体ゴム4の内周面における一対の接合部41は、防振構造1の軸線方向中心(外筒3の軸線方向中心と同じ軸線方向位置。)に対する軸線方向両側に位置しており、それぞれ内筒2の外周面及び/又は軸線方向端面に対して全周にわたって接合されている(
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20、
図23、
図30)。
例えば、
図1に示す第1実施形態や
図7、
図20、
図23、
図30に示す各変形例において、一対の接合部41は、内筒2の外周面(より具体的には、当該外周面における軸線方向の両端側の部分)に対して、接合されている。
図8に示す第2実施形態において、本体ゴム4の内周面は、二対の接合部41を有しており、そのうち一方の一対の接合部41は、内筒2の外周面(より具体的には、当該外周面における軸線方向の両端部)に対して接合されており、もう一方の一対の接合部41は、内筒2の軸線方向両端面に対して、接合されている。
図15に示す変形例において、一対の接合部41は、内筒2の軸線方向両端面に対して、接合されている。
本明細書で説明する各例においては、
図1、
図7、
図15、
図17、
図20、
図23、
図30の各例のように、本体ゴム4の内周面が、軸線方向両側に位置する一対の接合部41を、一対のみ、有してもよいし、あるいは、
図8の例のように、本体ゴム4の内周面が、軸線方向両側に位置する一対の接合部41を、複数対、有してもよい。
本明細書で説明する各例においては、例えば
図8の例において、防振構造1の軸線方向中心に対する軸線方向両側において、内筒2の外周面に対して接合されている接合部41と内筒2の軸線方向端面に対して接合されている接合部41とを一体に構成すること等により、一対の接合部41のそれぞれが内筒2の外周面及び軸線方向端面の両方に対して接合されていてもよい。
【0032】
本体ゴム4の内周面における非接合部42は、一対の接合部41(複数対の接合部41が存在する場合は、そのうちのいずれか一対の接合部41)どうしの間を延在している(
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20、
図23、
図30)。非接合部42は、内筒2(具体的には、内筒2の外周面)に対して、接合されていないが接触している。非接合部42は、防振構造1の軸線方向中央に位置しており、防振構造1の軸線方向中心上に位置している。
第2実施形態(
図8)において、非接合部42は、二対の接合部41のうち、内筒2の外周面に接合されたほうの一対の接合部41どうしの間を延在している。非接合部42は、一対の接合部41における、一方の接合部41から他方の接合部41までにわたって延在しており、一対の接合部41どうしを連結している。
なお、本明細書において、本体ゴム4と内筒2との間の関係において、「接触している」とは、本体ゴム4と内筒2とが、間に何も介在していない状態で直接接触している場合に限られず、後述のように本体ゴム4と内筒2との間に潤滑剤5が介在している場合(
図1、
図8)をも含むが、本体ゴム4と内筒2との間に潤滑剤5以外の部材や空間等が介在している場合は除く趣旨である。
【0033】
なお、
図1、
図7、
図8、
図15等の図面では、非接合部42が存在する領域を理解しやすくするために、非接合部42における本体ゴム4と内筒2との間の隙間G(本明細書では、「非接合部隙間G」ともいう。)を、一部、誇張して示しているが、実際には、非接合部42においては、本体ゴム4と内筒2とが接触しているため、この隙間Gは、ほぼ又は完全に潰れた状態にある。
【0034】
図1~
図2、
図7、
図8~
図9、
図15~
図16に示すように、本明細書では、内筒2の表面のうち、本体ゴム4の接合部41に対して接合されている部分を「接合部21」といい、本体ゴム4の非接合部42に対して接合されていないが接触している部分を「非接合部22」という。接合部21は、内筒2の外周面及び/又は軸線方向端面に位置する。
理解し易さのため、各図では、接合部21が存在する領域にドットハッチングを付している。
図1~
図2に示す第1実施形態や
図7、
図17、
図20、
図23、
図30に示す各変形例においては、内筒2の外周面が、防振構造1の軸線方向中心に対する軸線方向両側に位置する一対の接合部21とその間の非接合部22とを有している。一対の接合部21は、内筒2の外周面における軸線方向の両端側の部分に位置している。
図8~
図9に示す第2実施形態においては、内筒2の外周面が、防振構造1の軸線方向中心に対する軸線方向両側に位置する一対の接合部21とその間の非接合部22とを有しており、内筒2の軸線方向両端面が、防振構造1の軸線方向中心に対する軸線方向両側に位置するさらなる一対の接合部21を有している。内筒2の二対の接合部21のうち、一方の一対の接合部21は、内筒2の外周面における軸線方向の両端部に位置しており、もう一方の一対の接合部41は、内筒2の軸線方向両端面に位置している。
図15~
図16に示す変形例においては、内筒2の軸線方向両端面が、防振構造1の軸線方向中心に対する軸線方向両側に位置する一対の接合部21を有しており、内筒2の外周面が、その全体にわたって、非接合部22を有している。
内筒2における非接合部22は、一対の接合部21(複数対の接合部21が存在する場合は、そのうちのいずれか一対の接合部21)どうしの間を延在している。第2実施形態(
図8~
図9)において、非接合部22は、二対の接合部21のうち、内筒2の外周面に位置するほうの一対の接合部21どうしの間を延在している。非接合部22は、一方の接合部21から他方の接合部21までにわたって延在しており、一対の接合部21どうしを連結している。非接合部22は、防振構造1の軸線方向中央に位置しており、防振構造1の軸線方向中心上に位置している。
【0035】
接合部41、21における本体ゴム4と内筒2との間の接合は、例えば、加硫接着、及び/又は、接着剤を介した接着等、任意の手法でなされたものでよい。
接合部41、21、非接合部42、22を形成する手法の例については、後にさらに詳しく説明する。
【0036】
本明細書で説明する各例においては、上述のように、本体ゴム4が、軸線方向両側の一対の接合部41において、内筒2に対して全周にわたって接合されているとともに、一対の接合部41どうしの間における非接合部42においては、内筒2に対して接合されていないが接触している(
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20、
図23、
図30)。
したがって、内筒2が外筒3に対してねじり方向(内筒2が外筒3に対して周方向に回転する場合の方向)又はこじり方向(
図6、
図13に示すように、内筒2の中心軸線O2が外筒3の中心軸線O3に対して傾く場合の方向)に変位する際には、
図6、
図13に例示するように、本体ゴム4が、軸線方向両側の一対の接合部21において内筒2上に固定されていつつも、その間の非接合部22において、内筒2上で摺動することができる。そのため、ねじり方向又はこじり方向の変位をする間、本体ゴム4のうち一対の接合部41の近傍部分は、バネ剛性に寄与するものの、本体ゴム4のうち非接合部42の近傍部分は、バネ剛性にほとんど又は全く寄与しない。よって、仮に本体ゴム4が内筒2に対して本体ゴム4の全面にわたって接合されている場合に比べて、本体ゴム4が内筒2に対して接合されている部分の面積が小さいで、その分、ねじり方向及びこじり方向の剛性を低減でき、ひいては、内筒2が外筒3に対してねじり方向やこじり方向に揺動しやすくなる。これにより、車両のサスペンション装置用の防振構造としての性能を向上できる。
また、本明細書で説明する各例においては、本体ゴム4と内筒2との接合箇所を上述のようにした簡単な構成によって、追加の部材を要さずに(すなわち、部品点数の増加を抑止しつつ)、上述の効果を得ることができる、という利点もある。
また、本明細書で説明する各例においては、ねじり方向だけでなく、ねじり方向及びこじり方向の両方に対して、スムーズな滑り構造を実現することができる、という利点もある。
また、本明細書で説明する各例においては、本体ゴム4の非接合部42の存在は、軸直方向の変位に対しては影響を与えないため、本体ゴム4は、内筒2が外筒3に対して軸直方向に変位する際に、従来と同等以上の高いバネ剛性を発揮することができ、ひいては、車両のサスペンション装置用の防振構造として良好な性能を発揮できる。
また、本明細書で説明する各例においては、上述のように、本体ゴム4における非接合部42の両側の一対の接合部41が、全周にわたって内筒2に接合されているので、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の隙間Gは、その両側の一対の接合部41によってシールされた密閉空間となる。したがって、追加の部材(シール部材等)を要さずに(すなわち、部品点数の増加を抑止しつつ)、この隙間Gに外部からホコリ等が侵入するのを抑制でき、ひいては、そこでの本体ゴム4と内筒2との間の摺動性が低下するのを抑制でき、また、仮に後述のようにこの隙間Gに潤滑剤5が充填された場合であっても、追加の部材(シール部材等)を要さずに(すなわち、部品点数の増加を抑止しつつ)、潤滑剤5が本体ゴム4と内筒2との間から漏れ出るのを抑制できる。
【0037】
なお、第1実施形態の防振構造1(
図1)からなるブッシュは、上述のように、本体ゴム4が内筒2に対して摺動可能な部分(非接合部42)を有するので、いわゆる「すべり型のブッシュ」といえる。
また、第2実施形態の防振構造1を備えたストラットマウント(
図8)は、上述のように、本体ゴム4が内筒2に対して摺動可能な部分(非接合部42)を有するので、いわゆる「すべり型のストラットマウント」といえる。
【0038】
本明細書で説明する各例においては、
図1、
図8、
図15、
図17、
図20に示すように、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間に、潤滑剤5が介在していると、好適である。この場合、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の隙間Gには、潤滑剤5が充填されることとなる。
なお、上述のように、
図1、
図8、
図15、
図17、
図20ではこの隙間Gを誇張して示しているが、実際には、この隙間Gは、ほぼ又は完全に潰れた状態にある。そのため、潤滑剤5の層厚も、実際には、非常に薄くなる。この場合、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42とは、潤滑剤5を介して、互いに接触することとなる。
潤滑剤5は、例えば、潤滑油からなる。
内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間に潤滑剤5が介在していることにより、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の摩擦抵抗を低減でき、ひいては、本体ゴム4の非接合部42が内筒2の非接合部22に対して摺動しやすくなる。よって、内筒2がねじり方向やこじり方向にさらに揺動しやすくなる。
ただし、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間には、潤滑剤5が介在していなくてもよい。
【0039】
本明細書で説明する各例においては、
図1に示す例のように、内筒2が、その全体にわたって一体に構成されており、ひいては、その全体にわたって同じ材料で構成されていてもよい。
あるいは、本明細書で説明する各例においては、
図7、
図8、
図15に示す各例のように、内筒2が、互いに異なる材料から構成された複数の部分から構成されてもよい。例えば、
図7、
図8、
図15に示す各例のように、内筒2は、内筒内周部25と、内筒内周部25の外周側に位置する内筒外周部26と、を有していてもよい。内筒内周部25と内筒外周部26とは、互いに異なる材料から構成されている。内筒内周部25は、その内周面によって、中心軸線O2上を通る中央貫通穴を区画している。
内筒2を構成する材料としては、例えば、金属、及び/又は、樹脂等が挙げられる。
【0040】
本明細書で説明する各例においては、内筒2のうち少なくとも非接合部22の少なくとも一部(好適には非接合部22の全部)を構成する部分が、比較的滑りやすい(すなわち、摩擦抵抗が低い)材料(以下、「低摩擦抵抗材料」という。)から構成されていると、好適である。これにより、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の摩擦抵抗を低減でき、ひいては、本体ゴム4の非接合部42が内筒2の非接合部22に対して摺動しやすくなる。この構成は、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間に、潤滑剤5が介在していない場合に、特に好適である。内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間に潤滑剤5が介在していない場合であっても、上述のように内筒2に低摩擦抵抗材料を用いることにより、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の摩擦抵抗を低減することが可能である。
低摩擦抵抗材料としては、例えば、樹脂が好適であり、例えばポリアセタールが挙げられる。樹脂は、繊維補強された樹脂であってもよいし、繊維補強されていない樹脂であってもよい。
例えば、上述のように、内筒2が、内筒内周部25と、内筒内周部25の外周側に位置する内筒外周部26と、を有している場合(
図7、
図8、
図15)、内筒外周部26の外周面が、少なくとも、非接合部22の少なくとも一部(
図7、
図8、
図15の各例では、非接合部22の全部)を構成するようにし、また、内筒外周部26を低摩擦抵抗材料から構成するようにしてもよい。この場合、内筒内周部25は、例えば、内筒外周部26を構成する低摩擦抵抗材料よりも摩擦抵抗及び/又は強度の高い材料(例えば、金属)から構成してもよい。
なお、
図7、
図8、
図15の各例では、各接合部21が、内筒外周部26の外周面又は軸線方向端面によって構成されているが、各接合部21は、内筒内周部25の外周面及び/又は軸線方向端面によって構成されてもよい。
また、内筒2のうち接合部21を構成する部分は、内筒2のうち非接合部22を構成する部分と、同じ材料から構成されていてもよいし、それとは異なる材料から構成されていてもよい。
また、内筒2の全部を、低摩擦抵抗材料で構成してもよい。
【0041】
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2、
図7、
図8~
図9、
図15~
図16、
図17、
図20、
図23、
図30の各例のように、内筒2の外周面は、外周側へ向かって突出するバルジ形状をなすバルジ形状部23を有していると、好適である。この場合、本体ゴム4の内周面のうち、内筒2のバルジ形状部23と接触する部分は、バルジ形状部23に適合するように外周側へ窪んだ凹形状をなすこととなる。バルジ形状部23は、環状をなすように全周にわたって延在していると、好適である。
内筒2の外周面がバルジ形状部23を有している場合、本体ゴム4の軸直方向(
図1における上下方向、
図8における左右方向)の厚さが、本体ゴム4のうち軸直方向においてバルジ形状部23に対向する部分において、比較的薄くなるので、その分、本体ゴム4が、内筒2の軸直方向の相対変位に対して、より高いバネ剛性を発揮することができる。
本明細書で説明する各例においては、
図1~
図2、
図8~
図9、
図17、
図20、
図23、
図30の各例のように、内筒2の外周面は、バルジ形状部23と、軸線方向におけるバルジ形状部23の両側に位置するとともにバルジ形状をなしていない、一対の非バルジ形状部24と、を有していてもよい。非バルジ形状部24は、例えば、
図1~
図2、
図7、
図8~
図9、
図17、
図20の各例のように、非バルジ形状部24の全体にわたって軸線方向に沿って直線状(例えば、円筒形状)に構成されていてもよい。
あるいは、本明細書で説明する各例においては、
図15~
図16の例のように、内筒2の外周面は、バルジ形状部23のみを有していてもよい。
【0042】
本明細書で説明する各例においては、上述のように内筒2の外周面がバルジ形状部23を有する場合、
図1~
図2、
図7、
図8~
図9、
図15~
図16、
図17、
図20、
図23、
図30の各例のように、本体ゴム4の一対の接合部41は、内筒2の外周面のうちバルジ形状部23を除く部分(すなわち、非バルジ形状部24)の少なくとも一部及び/又は内筒2の軸線方向端面の少なくとも一部に対して、全周にわたって接合されており、本体ゴム4の非接合部42は、内筒2のバルジ形状部23に対して接合されていないが接触している(すなわち、バルジ形状部23が非接合部22をなす)と、好適である。
この場合、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22に対してさらに摺動しやすくなる(
図6、
図13)。よって、こじり方向の変位に対するバネ剛性を、より低減することができる。
図1~
図2、
図7、
図17、
図20、
図23、
図30の各例においては、本体ゴム4の一対の接合部41は、内筒2の外周面において軸線方向におけるバルジ形状部23の両側に位置する一対の非バルジ形状部24の少なくとも一部に対して、全周にわたって接合されており、本体ゴム4の非接合部42は、内筒2のバルジ形状部23の全体に対して接合されていないが接触している。
図8~
図9の例においては、本体ゴム4の二対の接合部41のうち一方の一対の接合部41は、内筒2の外周面において軸線方向におけるバルジ形状部23の両側に位置する一対の非バルジ形状部24に対して、全周にわたって接合されており、本体ゴム4の二対の接合部41のうち一方の一対の接合部41は、内筒2の軸線方向両端面に対して、全周にわたって接合されており、本体ゴム4の非接合部42は、内筒2のバルジ形状部23の全体に対して接合されていないが接触している。
図15~
図16の例においては、本体ゴム4の一対の接合部41は、内筒2の軸線方向両端面の少なくとも一部に対して、全周にわたって接合されており、本体ゴム4の非接合部42は、内筒2のバルジ形状部23の全体に対して接合されていないが接触している。
【0043】
本明細書で説明する各例においては、上述のように内筒2の外周面がバルジ形状部23を有する場合、バルジ形状部23のなすバルジ形状は、外周側へ突出した形状である限り、任意の形状であってよい。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、
図1~
図2、
図7、
図8~
図9、
図15~
図16、
図17、
図20、
図23、
図30の各例のように、曲面形状をなす部分を含むと、好適である。この場合、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22に対してさらに摺動しやすくなる。バルジ形状部23のなすバルジ形状は、曲面形状のみからなるものでもよい。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、
図1~
図2、
図7、
図8~
図9、
図15~
図16、
図17、
図20、
図23、
図30の各例のように、角張りのない形状であると、好適である。この場合、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22に対してさらに摺動しやすくなる。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、
図1~
図2、
図7、
図8~
図9、
図15~
図16、
図17、
図20、
図23、
図30の各例のように、防振構造1の軸線方向中心に向かうほど徐々に外周側へ向かう形状であると、好適である。この場合、内筒2がこじり方向に変位する際に、本体ゴム4の非接合部42が内筒2のバルジ形状部23からなる非接合部22に対してさらに摺動しやすくなる。
バルジ形状部23のなすバルジ形状は、例えば、球面形状であってもよい。
【0044】
防振構造1がストラットマウント7に備えられる場合、
図8~
図9、
図15~
図16の各例のように、本体ゴム4は、その軸線方向両端面において、軸線方向外側へ突出するストッパー部43を有していると、好適である。ストッパー部43は、それぞれ、内筒2の軸線方向端面上に位置していると、好適である。ストッパー部43は、それぞれ、軸線方向においてブラケット71のブラケット上環状部715又はブラケット下環状部716と対向するように配置されると、好適である。ストッパー部43は、
図8に示す例のように、内筒2への入力が無い通常時において、ブラケット上環状部715又はブラケット下環状部716に接触していると好適であるが、接触していてなくてもよい。
ストッパー部43があることにより、
図14に示すように、ダンパーロッド6及び内筒2が一体となって外筒3に対して軸線方向に変位する際に、ストッパー部43が内筒2とブラケット上環状部715又はブラケット下環状部716との間で圧縮されるので、内筒2とブラケット71との間の衝撃を緩和しつつ、ダンパーロッド6及び内筒2の軸線方向の変位を効果的に止めることができる。ストラットマウント7においては、軸線方向に大きな入力が入る場合があるので、この構成は有利である。
図8~
図9、
図15~
図16の各例のように、各ストッパー部43の軸線方向内側の面は、少なくとも一部において、内筒2の軸線方向端面に接合された接合部41をなしていると、好適である。これにより、ストッパー部43の位置ずれを抑制できる。
ストッパー部43は、環状をなすように全周にわたって延在していてもよいし、あるいは、周方向に沿って複数のストッパー部43が互いから離間して配列されていてもよい。
ただし、ストッパー部43は、無くてもよい。
【0045】
図17は、
図1の防振構造1の第2変形例を概略的に示す、断面図である。
図20は、
図1の防振構造1の第3変形例を概略的に示す、断面図である。
【0046】
本明細書で説明する各例においては、
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20に示す各例のように、外筒3が、軸線方向に平行に延在する、ストレート部3Sを有していると、好適である。ストレート部3Sは、少なくともその内周面が軸線方向に平行に延在していればよい。ストレート部3Sの外周面は、
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20に示す各例のように軸線方向に平行に延在していてもよいし、あるいは、軸線方向に対して非平行に延在していてもよい。ストレート部3Sは、少なくとも防振構造1の軸線方向中心(ひいては、外筒3の軸線方向の中心)から本体ゴム4の一対の接合部41のそれぞれの少なくとも一部(好適には、全部)の軸線方向位置までにわたって、連続して延在している。ストレート部3Sは、全周にわたって、本体ゴム4の非接合部42の全体の外周側に位置するとともに、本体ゴム4の一対の接合部41のそれぞれの少なくとも一部(好適には、全部)の外周側に位置する。
これにより、例えば、仮に外筒3が防振構造1の軸線方向中心から本体ゴム4の一対の接合部41のそれぞれの少なくとも一部までにわたる軸線方向領域内において軸線方向外側へ向かうにつれて徐々に小径となる場合と比べて、本体ゴム4のうち一対の接合部41の近傍部分の径方向厚さを大きく確保できる。このため、本体ゴム4のうち一対の接合部41の近傍部分の耐久性を向上できる。本体ゴム4のうち一対の接合部41の近傍部分は、その径方向内側及び外側において内筒2及び外筒3と連結されていることから、内筒2がねじり方向やこじり方向等に相対変位する時において、本体ゴム4のうち非接合部42の近傍部分に比べて、大きく伸び縮みする部分であるため、高い耐久性を有することが望ましい。
【0047】
図1、
図7、
図8、
図15に示す各例のように、外筒3は、ストレート部3Sのみから構成されていてもよい。
【0048】
あるいは、
図17、
図20に示す各変形例のように、外筒3は、ストレート部3Sに加えて、ストレート部3Sの軸線方向両外端から、径方向内側へ向かって軸直方向に平行に延在する、一対の垂直部3Vを、さらに有していてもよい。各垂直部3Vの径方向内端は、内筒2の外周面に対して外周側へ離間していると、好適である。
外筒3が一対の垂直部3Vを有する場合、軸線方向の剛性を高められるので、軸線方向の変位の抑制効果を高めることができる。これにより、車両のサスペンション装置用の防振構造としての性能を向上できる。
また、外筒3が一対の垂直部3Vを有する場合、仮に、外筒3がストレート部3Sのみからなる場合や、外筒3が、ストレート部3Sに加えて、ストレート部3Sの軸線方向両外端から径方向内側へ向かって軸直方向に傾斜した方向に延在する部分を有する場合に比べて、内筒2が軸直方向に相対変位する際(
図18)に、垂直部3Vは、本体ゴム4のうち圧縮される側の部分(
図18では下側の部分)が軸線方向に膨らむのを効果的に抑えることができ、ひいては、軸線方向のバネ剛性を高めることができる。これにより、車両のサスペンション装置用の防振構造としての性能を向上できる。
この場合、
図17、
図20に示す各変形例のように、本体ゴム4は、外筒3の一対の垂直部3Vの軸線方向内側面の少なくとも一部に対して、接合されているか、あるいは、接合されていないが接触していると、好適である。
【0049】
図17に示す例のように、外筒3は、ストレート部3Sと、その軸線方向両側の一対の垂直部3Vと、のみから構成されていてもよい。
【0050】
外筒3がストレート部3S及び一対の垂直部3Vを有する場合、外筒3は、
図20に示す変形例のように、一対の垂直部3Vの径方向内端からそれぞれ軸線方向外側へ向かって軸線方向に平行に延在する、一対の張り出し部3Eを、さらに有していてもよい。
この場合、
図20に示す例のように、本体ゴム4は、外筒3の一対の張り出し部3Eの内周面の少なくとも一部に対して、接合されているか、あるいは、接合されていないが接触していると、好適である。
【0051】
本明細書で説明する各例においては、
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20に示す各例のように、外筒3の外周面が、軸線方向外側へ向かうにつれて外周側へ延在する(すなわち、拡径する)部分を有しないと、好適である。この場合、防振構造1を外部の筒状部材(例えば、
図8の例では、ブラケット71のブラケット筒状部711)の内周面に圧入しやすくなる。
本明細書で説明する各例においては、
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20に示す各例のように、外筒3が、軸線方向及び軸直方向の両方に対して傾斜した方向に延在する部分を有しないと、好適である。
【0052】
なお、本明細書で説明する各例の防振構造1は、上述した用途以外の任意の用途に用いられてもよい。また、防振構造1の軸線方向は、任意の方向に指向されてよい。
【0053】
以下、本発明の防振構造の製造方法の実施形態について説明する。この製造方法は、本明細書で説明する各例の防振構造1を製造するために好適に使用できる。
この製造方法においては、加硫工程を経て、内筒2と、外筒3と、内筒2及び外筒3どうしを連結する本体ゴム4と、を備え、本体ゴム4の内周面が一対の接合部41とその間の非接合部42とを有している、防振構造1を、製造する。
例えば、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により防振構造1を加硫成形すると、好適である。
【0054】
接合部41及び非接合部42の形成は、加硫工程において行うと、好適である。
加硫工程において接合部41及び非接合部42を形成する手法の1つは、つぎのとおりである。まず、加硫工程の前における接着剤塗布工程において、内筒2の表面のうち非接合部22となる部分にマスキングをした上で、内筒2の表面のうち接合部21となる部分に接着剤を塗布する。これにより、内筒2の表面のうち非接合部22となる部分には接着剤が塗布されないようにする。その後、マスキングは除去する。その後、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により防振構造1を加硫成形する。この場合、加硫工程中において、本体ゴム4が、内筒2の表面のうち接着剤が塗布された部分に接合され、そこで、接合部41が形成されるとともに、内筒2の表面のうちマスキングされていた(すなわち、接着剤が塗布されなかった)部分には接合されず、そこで、非接合部42が形成される。
加硫工程において接合部41及び非接合部42を形成する他の手法は、つぎのとおりである。まず、加硫工程の前における接着シート貼り付け工程において、内筒2の表面のうち接合部21となる部分に接着シートを貼り付ける。このとき、内筒2の表面のうち非接合部22となる部分には接着シートが貼り付けられないようにする。その後、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により防振構造1を加硫成形する。この場合、加硫工程中において、本体ゴム4が、内筒2の表面のうち接着シートが貼り付けられた部分に接合され、そこで、接合部41が形成されるとともに、内筒2の表面のうち接着シートが貼り付けられなかった部分には接合されず、そこで、非接合部42が形成される。なお、この接着シートとしては、例えば、特許第4681634号に記載されたものを採用してもよい。
加硫工程において接合部41及び非接合部42を形成するさらに他の手法は、つぎのとおりである。まず、加硫工程前における表面加工工程において、内筒2の表面のうち接合部21となる部分に、レーザーによる表面加工を施し、それにより、内筒2の当該部分に、多数の微小溝を形成する。内筒2の表面のうち非接合部22となる部分には、表面加工を施さない。その後、射出工程において、内筒2及び外筒3がセットされた金型内に、本体ゴム4を構成するための未加硫ゴムを射出し、その後、加硫工程において当該金型により防振構造1を加硫成形する。この場合、加硫工程中において、本体ゴム4が、内筒2の表面のうち表面加工が施された部分における微小溝に入り込み、アンカー効果によって、当該部分に接合され、そこで、接合部41が形成されるとともに、内筒2の表面のうち表面加工が施されなかった部分には接合されず、そこで、非接合部42が形成される。なお、この表面加工としては、例えば、特開2020-116862号公報、特許第6489908号に記載されたものを採用してもよい。
ただし、接合部41及び非接合部42を形成する手法としては、上記のもの以外のものを用いてもよい。
【0055】
防振構造1において、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間に潤滑剤5を介在させる場合は、加硫工程の後に、潤滑剤注入工程を行うと、好適である。
図3、
図10は、それぞれ、
図1、
図8の例の防振構造1を製造する際に潤滑剤注入工程を行う例について説明するための図面である。
潤滑剤注入工程を行う場合は、
図3、
図10にそれぞれ示すように、事前に、防振構造1に注入穴Hを形成する。注入穴Hは、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の隙間Gと防振構造1の外部とを連通する。注入穴Hは、
図3、
図10の各例のように、当該隙間Gと防振構造1の外部との間において、防振構造1の外筒3及び本体ゴム4を通るものであってもよい。この場合、事前に注入穴Hを形成する手法としては、任意でよいが、例えば、予め外筒3の対応箇所に貫通穴を形成しておくとともに、射出工程及び加硫工程中に使用される金型に、注入穴Hを形成するための突起を設けておくものが、挙げられる。
潤滑剤注入工程においては、外部から、注入穴Hを介して、内筒2の非接合部22と本体ゴム4の非接合部42との間の隙間Gに、潤滑剤5を注入する。
【0056】
上述のように潤滑剤注入工程を行う場合は、潤滑剤注入工程の後に、栓挿入工程を行ってもよい。
図4、
図11は、それぞれ、
図1、
図8の例の防振構造1を製造する際に栓挿入工程を行う例について説明するための図面である。
栓挿入工程を行う場合は、
図4、
図11にそれぞれ示すように、栓Pを防振構造1の外部から注入穴Hに挿入することにより、注入穴Hを塞ぐ。これにより、潤滑剤5が外部に漏れ出るのを防ぐことができる。
【0057】
加硫工程の後、絞り工程を行ってもよい。絞り工程においては、外筒3を径方向内側へ絞ることにより、外筒3を縮径させる。これにより、本体ゴム4が圧縮された状態となり、本体ゴム4の剛性が高くなるので、本体ゴム4の耐久性を向上できる。
上述のように潤滑剤注入工程を行う場合は、潤滑剤注入工程の後に、絞り工程を行うと、好適である。この場合、
図5に概略的に示すように、注入穴Hが、絞り工程の前において開口している状態(
図5(a))から、絞り工程後において閉じた状態(
図5(b))になることが可能である。したがって、上述の栓挿入工程を行わずとも、絞り工程によって、注入穴Hを塞ぐことが可能である。
ただし、加硫工程の後に、栓挿入工程及び絞り工程の両方を行ってもよい。
なお、
図5は、
図1の例の防振構造1に対して絞り工程を行う様子を示しているが、
図8の例や他の例の防振構造1に対しても同様に絞り工程を行ってよい。
【0058】
上記の絞り工程は、絞り加工機等を防振構造1に対して用いることにより、行ってもよい。
あるいは、上記の絞り工程は、防振構造1を外部の筒状部材(例えば、
図8の例では、ブラケット71のブラケット筒状部711)の内周面に圧入することにより、行ってもよい。
【0059】
上述のように絞り工程を行う場合は、外筒3の軸線方向の全体にわたって、絞り率を同じ(均一)としてもよい。
【0060】
あるいは、上述のように絞り工程を行う場合は、
図12に概略的に示すように、外筒3の軸線方向両端部31における絞り率が外筒3の軸線方向中央部32における絞り率よりも大きくなるようにしてもよい。
図12は、
図8の例の防振構造1を製造する際に絞り工程を行う例を説明するための図面であり、
図12(a)は絞り工程前における防振構造1を概略的に示しており、
図12(b)は絞り工程後における防振構造1を概略的に示している。
この場合、絞り工程後の防振構造1(
図12(b))においては、本体ゴム4の軸線方向両端部における圧縮率が、本体ゴム4の軸線方向中央部における圧縮率よりも、高くなる。
これにより、本体ゴム4の軸線方向両端部の耐久性を効果的に向上できるとともに、本体ゴム4の軸線方向中央部において、非接合部42での内筒2に対する摺動性が低下するのを抑制できる。本体ゴム4の軸線方向両端部は、一対の接合部41を介して内筒2と連結されていることから、内筒2の相対変位時において、本体ゴム4の軸線方向中央部に比べて、大きく伸び縮みする部分であるため、高い圧縮率ひいては高い耐久性を有することが望ましい。一方、本体ゴム4の軸線方向中央部は、圧縮率が高いと、非接合部42での内筒2との間の摩擦が大きくなり、摺動抵抗が増加するおそれがあるため、低い圧縮率を有することが望ましい。
絞り工程において外筒3の軸線方向両端部31における絞り率が外筒3の軸線方向中央部32における絞り率よりも大きくなる手法としては、例えば、
図12に示す例のように、絞り工程前(
図12(a))において、外筒3が、軸線方向両端部31において、軸線方向中央部32よりも、拡径した形状をなしているとともに、絞り工程後(
図12(b))において、外筒3が、軸線方向の全体にわたって同径となるように(すなわち、外筒3がストレート部3Sのみからなるように)、絞りをすることが、挙げられる。この場合、
図12(a)の例のように、絞り工程前(
図12(a))において、外筒3の軸線方向両端部31は、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に外周側へ向かうように延在していてもよい。
外筒3の軸線方向両端部31における絞り率が外筒3の軸線方向中央部32における絞り率よりも大きくなるように絞り工程を行うことは、
図8の例のように防振構造1がストラットマウント7に備えられる場合、こじり方向の動きが大きい傾向があるので、特に好適である。ただし、同様の絞り工程を、
図1の例や他の例の防振構造1に対しても行ってよい。
【0061】
防振構造1において、外筒3がストレート部3Sに加えて一対の垂直部3V(場合によっては、さらに一対の張り出し部3E)を有するようにする場合(
図17、
図20)、
図19に概略的に例示するように、加硫工程の後に、外筒3の軸線方向両端部31を折り曲げる折り曲げ工程を行うことで、一対の垂直部3V(場合によっては、さらに一対の張り出し部3E)を形成してもよい。
あるいは、防振構造1において、外筒3がストレート部3Sに加えて一対の垂直部3V(場合によっては、さらに一対の張り出し部3E)を有するようにする場合(
図17、
図20)、加硫工程の前に予め外筒3がストレート部3Sに加えて一対の垂直部3V(場合によっては、さらに一対の張り出し部3E)を有するように外筒3を形成しておき、その後、加硫工程を行うようにしてもよい。
【0062】
【0063】
本明細書で説明する各例においては、
図1、
図7、
図8、
図15、
図17、
図20に示す各例のように、外筒3は、全体が一体に構成されており、ひいては、一部材のみからなっていてもよい。
【0064】
あるいは、本明細書で説明する各例においては、
図21~
図27に示す第4変形例、
図28に示す第5変形例、
図29に示す第6変形例、
図30~
図31に示す第7変形例のように、外筒3は、周方向に沿って配列されるとともに互いに別体に構成された複数の部分外筒部材3Pからなっていてもよい。この構成は、
図26~
図27に例示するように、防振構造1が外部部材LA(例えば、サスペンションリンクアーム)の筒状部TPの内周面に圧入される場合に、特に好適なものである。各部分外筒部材3Pは、それぞれ、外筒3の周方向の一部分を構成しており、ひいては、部分筒形状をなしている。各部分外筒部材3Pは、互いに略同じ角度範囲(ひいては、周方向長さ)にわたって延在していてもよい。
図21~
図27に示す例、及び、
図30~
図31に示す例において、外筒3は、2つの部分外筒部材3Pから構成されており、各部分外筒部材3Pは、約180°の角度範囲にわたって延在している。
図28に示す例において、外筒3は、3つの部分外筒部材3Pから構成されており、各部分外筒部材3Pは、約120°の角度範囲にわたって延在している。
図29に示す例において、外筒3は、4つの部分外筒部材3Pから構成されており、各部分外筒部材3Pは、約90°の角度範囲にわたって延在している。外筒3を構成する複数の部分外筒部材3Pの数は、任意でよい。
防振構造1に外力が作用していない自然状態(
図21~
図23、
図28、
図29、
図30)において、外筒3を構成する複数の部分外筒部材3Pは、周方向において互いから離間していると、好適である。この場合、部分外筒部材3Pどうしの間には、隙間3Q(本明細書において「分割隙間3Q」ともいう。)が存在することとなる。
この場合において、本体ゴム4は、
図22、
図28、
図29、
図30に示す各例のように、全周にわたって連続して延在していると、好適である。各部分外筒部材3Pの内周面は、本体ゴム4に対して、接着等により接合されている。
外筒3を構成する複数の部分外筒部材3Pは、各部分外筒部材3Pの周方向端どうしが接触し、それにより各隙間3Qがつぶれて、外筒3が全周にわたって連続する状態となったときに(
図27(a)参照。)、各部分外筒部材3Pの中心軸線O3Pどうしが一致する(一か所に集中する)ように構成されている。各部分外筒部材3Pの周方向端どうしが接触したときの各部分外筒部材3Pの中心軸線O3Pは、外筒3の中心軸線O3をなすものとする。なお、部分外筒部材3Pの中心軸線O3Pとは、部分外筒部材3Pのなす部分筒形状の中心軸線である。
防振構造1が自然状態(
図21~
図23、
図28、
図29、
図30)にあるときの外筒3の外径(すなわち、外筒3を構成する複数の部分外筒部材3Pの外周面の外接円筒の径)は、外部部材LAの筒状部TPの内径よりも大きいようにされている。また、防振構造1は、防振構造1が外部部材LAの筒状部TPに圧入された状態において、各部分外筒部材3Pの周方向端どうしが接触するように、構成されている(
図26(b)、
図27)。
このような構成を備えた防振構造1においては、
図26~
図27に例示するように、防振構造1が外部部材LA(例えば、サスペンションリンクアーム)の筒状部TPの内周面に圧入される際、本体ゴム4が径方向内側へ圧縮されつつ、外筒3を構成する複数の部分外筒部材3Pが径方向内側へ変位しながら周方向において互いに徐々に近づき、その後、各部分外筒部材3Pの周方向端どうしが接触し、それにより各隙間3Qがつぶれて、外筒3が全周にわたって連続する状態となる(
図26(b)、
図27)。
このようにして、防振構造1が外部部材LAの筒状部TPに圧入された状態において、本体ゴム4は圧縮された状態となるため、本体ゴム4にイニシャルひずみを与えることができ、ひいては、本体ゴム4の耐久性の向上や非接合部42のガタツキの抑制が可能となる。
なお、
図5等を参照しつつ上述したように一部材からなる外筒3を絞る絞り工程を行う場合は、当該絞り工程により、本体ゴム4と外筒3との間の接着がはがれやすくなるおそれがある。その点、本例のように外筒3が複数の部分外筒部材3Pからなる場合は、本体ゴム4を圧縮状態にするにあたって上述のような絞り工程を要しないので、本体ゴム4と外筒3との間の接着がはがれやすくなるおそれを回避できる。
なお、防振構造1が外部部材LAの筒状部TPに圧入される前の状態において、各部分外筒部材3Pの周方向端どうしが接触したときの外筒3の外径は、外部部材LAの筒状部TPの内径以上となるようにされている。防振構造1が外部部材LAの筒状部TPに圧入される前の状態において、各部分外筒部材3Pの周方向端どうしが接触したときの外筒3の外径は、外部部材LAの筒状部TPの内径よりも若干大きくなるようにされていると、好適である。これにより、防振構造1が外部部材LAの筒状部TPに圧入された状態において、防振構造1が外部部材LAの筒状部TPから抜けにくくすることができる。
【0065】
本明細書で説明する各例においては、
図23、
図30に示す各例のように、内筒2の外周面は、本体ゴム4の一対の接合部41よりも軸線方向内側において(すなわち、内筒2の外周面の非接合部22が)、それぞれ周方向に延在する一対の周方向溝27を有していてもよい。一対の周方向溝27は、防振構造1の軸線方向中心に対する両側に位置している。一対の周方向溝27は、全周にわたって延在し、ひいては、環状をなしていると、好適である。
図23、
図30に示す各例のように、一対の周方向溝27は、内筒2の外周面のうち、バルジ形状部23と一対の接合部21との間に位置していてもよい。一対の周方向溝27は、一対の接合部21よりも内周側へ向かって窪んでいると、好適である。
図23、
図30において、内筒2の外周面における非バルジ形状部24は、周方向溝27と、周方向溝27から軸線方向外側へ軸線方向に平行に延在する部分と、を含んでいる。
本体ゴム4の内周面の非接合部42は、一対の周方向溝27に嵌合するように構成された一対の突条部44を有している。一対の突条部44は、内周側へ向かって突出しているとともに、周方向に延在している。一対の突条部44は、全周にわたって延在し、ひいては、環状をなしていると、好適である。
例えば内筒2が外筒3に対して軸直方向に相対変位する際(
図24)や防振構造1が外部部材LAの筒状部TPに圧入される際(
図26)等、本体ゴム4が内筒2と外筒3との間で圧縮されるときにおいては、特に非接合部42に沿う部分で、本体ゴム4が軸線方向外側へ逃げようとするところ、本例によれば、一対の突条部44が一対の周方向溝27に嵌合していることにより、非接合部42に沿う部分において本体ゴム4が軸線方向にずれるのを効果的に抑制することができる。これにより、例えば、非接合部42に沿う部分において本体ゴム4が軸線方向外側にずれて接合部41の手前で座屈するのを抑制でき、耐久性を向上できる。
図23、
図30に示す各例のように、防振構造1が自然状態にあるときに、本体ゴム4は、一対の突条部44に対応する一対の軸線方向領域(ひいては、一対の突条部44の径方向外側)において、一対の突条部44から外筒3の内周面までにわたって径方向に連続して延在していると、好適である。これにより、例えば内筒2が外筒3に対して軸直方向に相対変位する際(
図24)や防振構造1が外部部材LAの筒状部TPに圧入される際(
図26)等、本体ゴム4が内筒2と外筒3との間で圧縮されるときにおいては、本体ゴム4に作用する軸直方向の圧縮力が、よりしっかりと一対の周方向溝27に掛かることができるので、本体ゴム4が軸線方向にずれるのを、さらに抑制することができる。
【0066】
本明細書で説明する各例においては、
図23、
図30に示す各例のように、外筒3(ひいては、部分外筒部材3P)の内周面のうち、内筒2のバルジ形状部23に対応する軸線方向部分(すなわち、バルジ形状部23の径方向外側に位置する部分)が、軸線方向外側に向かうにつれて内周側へ向かって延在するとともに、外周側に凸となるように湾曲していてもよい。
この場合、
図23に示す例のように、外筒3の肉厚を不均一として、外筒3の外周面が軸線方向に平行に延在するようにしてもよいし、あるいは、
図30~
図31に示す例のように、外筒3(ひいては、部分外筒部材3P)の肉厚を均一として、プレス加工等によって、外筒3自体を湾曲させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る防振構造、ストラットマウント、及び、防振構造の製造方法は、車両のサスペンション装置に適用されると好適なものであり、例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置に適用されると好適なものである。本発明に係る防振構造、及び、防振構造の製造方法は、例えば、車両のサスペンション装置(例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置)のリンク機構(サスペンションリンクアーム等)に用いられるブッシュとして構成されると好適であり、あるいは、車両のサスペンション装置(例えばマクファーソン・ストラット式サスペンション装置)のストラットマウントに備えられると好適である。
【符号の説明】
【0068】
1:防振構造、
2:内筒、 21:接合部、 22:非接合部、 23:バルジ形状部、 24:非バルジ形状部、 25:内筒内周部、 26:内筒外周部、 27:周方向溝、
3:外筒、 31:軸線方向端部、 32:軸線方向中央部、 3S:ストレート部、 3V:垂直部、 3E:張り出し部、 3P:部分外筒部材、 3PO:部分外筒部材の中心軸線、 3Q:隙間(分割隙間)、
4:本体ゴム、 41:接合部、 42:非接合部、 43:ストッパー部、 44:突条部、
5:潤滑剤、
6:ダンパーロッド、 61:取付部、 62:段差面、
7:ストラットマウント、
71:ブラケット、 711:ブラケット筒状部、 712:ブラケットフランジ部、 713:中央貫通穴、 715:ブラケット上環状部、 716:ブラケット下環状部、
72:ベアリング、
73:スプリングシート、
8:スプリング、
F1、F2:締結具、
H:注入穴、
O2:内筒の中心軸線、 O3:外筒の中心軸線(防振構造の中心軸線)、
G:隙間(非接合部隙間)、
P:栓、
LA:外部部材、 TP:筒状部