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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154377
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ホイール分解装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20241023BHJP
   B64F 5/40 20170101ALI20241023BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
B64F5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049099
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023067922
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132013
【氏名又は名称】株式会社ジャムコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 顕
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS06
3C707BS03
3C707CY22
3C707CY36
3C707HS27
3C707HT11
3C707JT10
3C707JU12
3C707KS16
3C707KS30
3C707KV11
3C707KW06
3C707KX02
3C707KX17
(57)【要約】
【課題】簡素かつ安価でありながらボルトの供回りを抑制でき、一人の作業者により大型のホイールを分解できるホイール分解装置を提供する。
【解決手段】ホイール分解装置1の制御装置CONTは、x方向センサーS1から出力されたx方向検出信号Sxを入力したときは、ボルト押さえ45のx方向変位量に等しいx方向変位量でナットランナー46が変位するように、x方向アクチュエータACT1にx方向駆動信号Dxを出力し、またy方向センサーS2から出力されたy方向検出信号Syを入力したときは、ボルト押さえ45のy方向変位量に等しいy方向変位量でナットランナー46が変位するように、y方向アクチュエータACT2にy方向駆動信号Syを出力する。また第1スイッチST1の操作に応じて、アクチュエータ48は、ボルト押さえ45に向かってナットランナー46をz方向に駆動する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトにナットを螺合させることにより第1ピースと第2ピースとを連結してなるホイールを分解可能なホイール分解装置であって、
y方向を高さ方向とし、水平方向における一方向をx方向とし、水平方向における前記一方向に直交する方向をz方向としたときに、前記ホイールの軸線をz方向に略一致させて前記ホイールを支持するホイール支持部と、
マスターアーム機構、スレーブアーム機構、及び制御装置を備えたマスター・スレーブ装置と、を有し、
前記マスターアーム機構は、
前記ボルトの頭部に係合可能な係合部を備えたボルト押さえを、前記ホイール支持部に対してx方向、y方向およびz方向に変位可能に保持するマスター保持部と、
前記ホイール支持部に対する前記マスター保持部のx方向変位量を検出してx方向検出信号を出力するx方向センサーと、
前記ホイール支持部に対する前記マスター保持部のy方向変位量を検出してy方向検出信号を出力するy方向センサーと、
z方向駆動スイッチと、を有し、
前記スレーブアーム機構は、
前記ナットに係合可能な係合部を備えたナットランナーを、前記ホイール支持部に対してx方向及びy方向に変位可能に保持するスレーブ保持部と、
前記ホイール支持部に対して前記スレーブ保持部をx方向に相対変位させるx方向アクチュエータと、
前記ホイール支持部に対して前記スレーブ保持部をy方向に相対変位させるy方向アクチュエータと、
前記スレーブ保持部に対して、前記ナットランナーをz方向に駆動するz方向アクチュエータと、を有し、
前記制御装置は、前記x方向検出信号を入力したときは、前記ボルト押さえのx方向変位量に等しいx方向変位量で前記ナットランナーが変位するように、前記x方向アクチュエータにx方向駆動信号を出力し、また前記y方向検出信号を入力したときは、前記ボルト押さえのy方向変位量に等しいy方向変位量で前記ナットランナーが変位するように、前記y方向アクチュエータにy方向駆動信号を出力し、
前記z方向駆動スイッチの操作に応じて、前記z方向アクチュエータは、前記ボルト押さえに向かって前記ナットランナーをz方向に駆動する、
ことを特徴とするホイール分解装置。
【請求項2】
前記ホイール支持部は、前記ホイールを保持しつつy方向に移動可能な昇降装置を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のホイール分解装置。
【請求項3】
前記ホイールは車輪付きホイールであり、
前記ホイール支持部は、前記車輪付きホイールの軸線がz方向に略一致するように、その姿勢を矯正する姿勢矯正機構を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のホイール分解装置。
【請求項4】
前記姿勢矯正機構は、前記車輪付きホイールを回転させる回転駆動装置と、前記車輪付きホイールの車輪の側面を両側から押圧するクランプと、を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のホイール分解装置。
【請求項5】
前記クランプは、前記車輪の側面に当接し前記車輪の回転に応じて回転可能なクランプローラーを有する、ことを特徴とする請求項4に記載のホイール分解装置。
【請求項6】
前記回転駆動装置は、z方向に回転軸線を持つ一対の車輪ローラーと、前記車輪ローラーを回転させるモーターとを有し、前記車輪を前記車輪ローラー上に載置した状態で、前記モーターにより前記車輪ローラーを回転させることにより前記車輪付きホイールを回転可能である、ことを特徴とする請求項4に記載のホイール分解装置。
【請求項7】
前記車輪ローラーの間隔を調整する間隔調整装置を有する、ことを特徴とする請求項6に記載のホイール分解装置。
【請求項8】
前記車輪ローラーの間にロードセルが配置され、前記ロードセルが前記車輪付きホイールの荷重を検出しなくなったことに応じて、前記間隔調整装置は、前記車輪ローラーの間隔を固定する、ことを特徴とする請求項7に記載のホイール分解装置。
【請求項9】
前記車輪ローラーの間に、z方向に沿って光ビームを投受光する第1光学センサー及び第2光学センサーがy方向に離間して配置され、前記第1光学センサーの検出により、前記車輪付きホイールが前記車輪ローラーの間に配置されたことを検出でき、また前記第2光学センサーの検出により、前記車輪ローラーの間隔が適切に設定されたことを検出できる、ことを特徴とする請求項7に記載のホイール分解装置。
【請求項10】
前記z方向駆動スイッチの操作は、前記ボルト押さえがz方向に沿って前記ナットランナーに向かって移動したときにのみ有効となる、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のホイール分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機において、懸架装置に対して回転可能に車輪を保持するホイールが用いられている。図1は、一般的な航空機用のホイールの一部をカットして示す斜視図である。図1に示すように、ホイールWHは、対応した形状を有する第1ピースP1と第2ピースP2とを軸線方向に合わせてなり、第1ピースP1の貫通孔H1と、これに整合する第2ピースP2の貫通孔H2とに対して、一方側から挿通されたボルトBTの雄ねじ部にナットNTを螺合させることにより連結されてなる。第1ピースP1と第2ピースP2との間にはシールSLが設けられており、これにより車輪の内部からの空気漏れを抑制する。
【0003】
航空機は、ホイールを含め定期的な点検やオーバーホールが義務付けられている。例えばシールSLの状態を点検するためには、車輪(図1で不図示)を取り付けた状態で、第1ピースP1と第2ピースP2とを分解してホイールWHより車輪を取り外し、作業者がシールSLにアクセスできるようにする必要がある。ホイールWHの分解に際しては、ボルトBTに対してナットNTを緩み方向に回転させる必要があるが、ボルトBTの頭部を固定していないと、ナットNTとともにボルトBTが供回りしてしまい、ナットNTを緩めることができない。
【0004】
ここで、車輪の外径が比較的小さければ、一人の作業者が工具を用いて一方の手でボルトBTの頭部を把持しつつ、他方の手でナットNTを緩めることも可能である。ところが、航空機用の車輪は外径が1.5m以上ある場合もあり、通常は一人の作業者の手でボルトBTの頭部とナットNTとを同時に把持することは困難である。これに対し、ボルトBTの頭部を一人の作業者が把持し、ナットNTを別の作業者が把持して緩めるなどすれば、ホイールWHの分解は可能であるが、作業効率が悪いという問題がある。
【0005】
かかる問題に対し、ボルトBTの頭部に係合可能な先端形状を有する軸部材を、ボルトBTの周方向ピッチに合わせてリング状の部材に植設させた特殊治具も開発されている。このような特殊治具を用いて、ホイールWHの全てのボルトBTの頭部に軸部材を係合させれば、ナットNTを緩める際にボルトBTの供回りを阻止することができるため、一人の作業者でホイール分解作業を行うことも可能である。
【0006】
しかしながら、そのような特殊治具は汎用性がなく、数多くある航空機の機種ごとに、ホイールを分解する各地の整備工場に準備しなくてはならず、コストや保管の手間がかかる。また、かかる特殊治具は、金属製であって重量物であることから、作業者にとって必ずしも取り扱いやすいものとは言い難い。
【0007】
これに対し、特許文献1には、オペレータから離れた位置にある多軸ロボットのスレーブアームに対して、オペレータがマスターアームを介して操作信号を送信することにより、マスターアームに追従してスレーブアームを移動させる遠隔操縦装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-13167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる遠隔操縦システムを利用して、ナットNTを緩めようとするボルトBTの頭部を多軸ロボットのスレーブアームに装着した工具により把持することもでき、それにより一人の作業者によりホイールWHの分解が可能である。しかしながら、特許文献1の技術によれば、マスターアームにスレーブアームを追従させる制御が複雑であり、また多軸ロボットは一般的には高価であり、ホイール分解を行うためだけに多軸ロボットを用いた制御動作を実行することは現実的ではない。
【0010】
そこで本発明は、簡素かつ安価でありながらボルトの供回りを抑制でき、一人の作業者により大型のホイールを分解できるホイール分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明によるホイール分解装置は、
ボルトにナットを螺合させることにより第1ピースと第2ピースとを連結してなるホイールを分解可能なホイール分解装置であって、
y方向を高さ方向とし、水平方向における一方向をx方向とし、水平方向における前記一方向に直交する方向をz方向としたときに、前記ホイールの軸線をz方向に略一致させて前記ホイールを支持するホイール支持部と、
マスターアーム機構、スレーブアーム機構、及び制御装置を備えたマスター・スレーブ装置と、を有し、
前記マスターアーム機構は、
前記ボルトの頭部に係合可能な係合部を備えたボルト押さえを、前記ホイール支持部に対してx方向、y方向およびz方向に変位可能に保持するマスター保持部と、
前記ホイール支持部に対する前記マスター保持部のx方向変位量を検出してx方向検出信号を出力するx方向センサーと、
前記ホイール支持部に対する前記マスター保持部のy方向変位量を検出してy方向検出信号を出力するy方向センサーと、
z方向駆動スイッチと、を有し、
前記スレーブアーム機構は、
前記ナットに係合可能な係合部を備えたナットランナーを、前記ホイール支持部に対してx方向及びy方向に変位可能に保持するスレーブ保持部と、
前記ホイール支持部に対して前記スレーブ保持部をx方向に相対変位させるx方向アクチュエータと、
前記ホイール支持部に対して前記スレーブ保持部をy方向に相対変位させるy方向アクチュエータと、
前記スレーブ保持部に対して、前記ナットランナーをz方向に駆動するz方向アクチュエータと、を有し、
前記制御装置は、前記x方向検出信号を入力したときは、前記ボルト押さえのx方向変位量に等しいx方向変位量で前記ナットランナーが変位するように、前記x方向アクチュエータにx方向駆動信号を出力し、また前記y方向検出信号を入力したときは、前記ボルト押さえのy方向変位量に等しいy方向変位量で前記ナットランナーが変位するように、前記y方向アクチュエータにy方向駆動信号を出力し、
前記z方向駆動スイッチの操作に応じて、前記z方向アクチュエータは、前記ボルト押さえに向かって前記ナットランナーをz方向に駆動する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡素かつ安価でありながらボルトの供回りを抑制でき、一人の作業者により大型のホイールを分解できるホイール分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一般的な航空機用のホイールの一部をカットして示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかるホイール分解装置単体の平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態にかかるホイール分解装置単体の側面図である。
図4図4は、車輪付きホイールを取り付けた状態で示すホイール分解装置の平面図である。
図5図5は、車輪付きホイールを取り付けた状態で示すホイール分解装置の側面図である。
図6A図6Aは、車輪付きホイールを把持した状態で、姿勢矯正装置を図4のVI方向に見た図である。
図6B図6Bは、車輪付きホイールとともに、変形例にかかる姿勢矯正装置を示す図である。
図7図7は、マスターアーム機構とスレーブアーム機構の制御構成を模式的に示す図である。
図8図8は、ホイール分解装置の動作を示す図である。
図9図9は、ホイール分解装置の動作を示す図である。
図10図10は、ホイール分解装置の動作を示す図である。
図11図11は、ホイール分解装置の動作を示す図である。
図12図12は、ホイール分解装置の動作を示す図である。
図13図13は、ホイール分解装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、本発明の実施形態にかかるホイール分解装置単体の平面図であるが、姿勢矯正装置を取り外した状態で示し、図3は、本発明の実施形態にかかるホイール分解装置単体の側面図であるが、回転駆動装置の一部とマスターアーム装置を省略して示す。図4は、車輪付きホイールを取り付けた状態で示すホイール分解装置の平面図であるが、姿勢矯正装置を取り外した状態で示し、図5は、車輪付きホイールを取り付けた状態で示すホイール分解装置の側面図であるが、回転駆動装置の一部とマスターアーム装置を省略して示す。なお、図面において、理解しやすいように一部が透視された状態で示されることがある。
【0015】
ここでは上下方向(高さ方向)をy方向とし、水平面においてホイール分解装置の中心線に平行な方向をx方向とし、y方向とx方向に直交する方向をz方向とする。
【0016】
ホイール分解装置1は、基礎部10と、車輪付きホイールTWを保持し昇降させる昇降装置20と、車輪付きホイールTWの姿勢を制御する姿勢矯正装置30と、マスター・スレーブ装置40と、を有する。昇降装置20と姿勢矯正装置30とにより、ホイール支持部を構成する。
【0017】
車輪付きホイールTWは、図1に示す構造を備えたホイールWHと、その外周に取り付けられた車輪TRとからなる(図5)。ホイールWHのボルトとナットは図示を省略する。
【0018】
(基礎部の構成)
基礎部10は、水平な床面GRに設置された水平板11と、水平板11に下端を固定してy方向に延在する一対のメイン支柱12と、メイン支柱12の上端を連結するメイン梁13と、を有する。メイン支柱12の下部と、水平板11とを連結する三角板状の補強板14が配設されている。
【0019】
昇降装置20は、メイン支柱12に取り付けられた直動装置21と、直動装置21に対して上下方向に移動する直動要素22と、直動要素22に取り付けられた昇降フレーム23と、昇降フレーム23の下端に取り付けられた矩形板状の昇降ベース24と、昇降ベース24上に配置された回転駆動装置25と、を有する。昇降ベース24における水平面の基準点をSPとする(図2)。基準点SPは、昇降ベース24のx方向中心線及びz方向中心線が通過すると好ましい。昇降フレーム23と昇降ベース24とを連結する三角板状の補強板26が配設されている。
【0020】
メイン支柱12に対して、昇降フレーム23は一対のガイド23a(図2参照)により案内されており、メイン支柱12に内蔵されたモーター(不図示)により直動装置21を動作させることにより、直動要素22とともに、昇降フレーム23及び昇降ベース24はy方向に移動可能となっている。
【0021】
(回転駆動装置の構成)
回転駆動装置25は、図2に示すように、第1モーター25aと、昇降ベース24に対してx方向に移動可能に保持された一対の移動板25bと、各移動板25bに回転可能に設置され軸線をz方向に向けた車輪ローラー25cと、第1モーター25aの回転駆動力を車輪ローラー25cに伝達する第1駆動系25dと、基準点SPから2つの移動板25bがx方向に沿って等距離の位置に変位するように両者を連結するリンク機構25fと、第2モーター25gと、第2モーター25gの回転駆動力をx方向駆動力に変換して移動板25bの一方に伝達する第2駆動系25hと、移動板25bの間に配置されたロードセル25iと、を有する。図3に示すように、y方向において、ロードセル25iの上面よりも、車輪ローラー25cの上端が高くなるように配置されている。第2モーター25gと、第2駆動系25hと、移動板25bと、リンク機構25fとで、車輪ローラー25cの間隔を調整する間隔調整装置を構成する。
【0022】
ロードセル25iの検出信号は、第2モーター25gの制御回路(不図示)に入力され、る。第2モーター25gは、該制御回路からの信号により回転駆動と停止が行われる。第1モーター25aは、不図示のスイッチにより回転駆動と停止が可能である。
【0023】
(姿勢矯正装置の構成)
図6Aは、車輪付きホイールTWを把持した状態で、姿勢矯正装置30を図4のVI方向に見た図であり、姿勢矯正装置30以外は省略する。姿勢矯正装置30と回転駆動装置25とにより、姿勢矯正機構を構成する。
【0024】
図5,6Aにおいて、姿勢矯正装置30は、昇降フレーム23に対して回転可能に保持されy方向に延在するねじ軸31と、ねじ軸31に螺合するボールナット32と、ボールナット32を取り付けた垂直部と水平部とからなる支持板33と、支持板33の水平部の先端に固定された支持フレーム34と、支持フレーム34の上部に配置されたエアシリンダ35と、エアシリンダ35によってy方向に移動する押圧軸36と、押圧軸36の下端に配設されて車輪付きホイールTWの上端に当接するパッド36aと、支持フレーム34に対して枢動可能に配置された一対のクランプ37と、押圧軸36に連結されエアシリンダ35の駆動力をクランプ37に伝達するリンク機構38と、を有する。クランプ37の先端には、y方向に回転軸線を有し回転可能なクランプローラー37aがそれぞれ配置されている。支持板33の水平部と垂直部を連結するように、支持板33に三角板状の補強板39が配設されている。
【0025】
昇降フレーム23に対して、支持板33は一対のガイド33a(図2参照)により案内されており、昇降フレーム23に内蔵されたモーター(不図示)によりねじ軸31を回転させることにより、直動要素22とともに、昇降フレーム23及び昇降ベース24はy方向に移動可能となっている。これにより、回転駆動装置25に搭載した車輪付きホイールTWの外径に合わせて、姿勢矯正装置30のy方向位置を調整できる。
【0026】
エアシリンダ35が押圧軸36を下方に変位させると、その力がリンク機構38を介してクランプ37に伝達され、クランプローラー37aが互いに接近するように、クランプ37が上端の枢支点回りに枢動する。一方、エアシリンダ35が押圧軸36を上方に変位させると、クランプローラー37aが互いに離間するように、クランプ37が枢動する。
【0027】
姿勢矯正装置30の変形例を図6Bに示す。図6Bの変形例によれば、車輪付きホイールTWの上部を把持するクランプローラー37aに加え、図6Bに一点鎖線で示すように、車輪付きホイールTWのx方向端部をz方向両側から一対のクランプローラー37bで把持することができる。車輪付きホイールTWのx方向端部を把持することで、X方向に対する車輪付きホイールTWのヨーイング動作を抑制し、これにより適切に車輪付きホイールTWを保持することができる。
【0028】
(マスター・スレーブ装置の構成)
図2~5において、マスター・スレーブ装置40は、水平板11に下端を固定してy方向に延在する一対のサブ支柱41と、サブ支柱41の上端を連結するサブ梁42と、一方のサブ支柱41に取り付けられたマスターアーム機構43と、他方のサブ支柱41に取り付けられたスレーブアーム機構44と、制御装置CONT(図7)とを有する。
【0029】
マスターアーム機構43は、一方のサブ支柱41からx方向に延在する上下一対のマスター支持板43aと、マスター支持板43aに対して変位可能な上下一対のマスター可動部材43bと、マスター支持板43aに対してマスター可動部材43bをそれぞれ平行移動可能に連結するマスター平行リンク43cと、マスター可動部材43bに対して、x方向に沿って変位可能に延在する一対のマスターx方向軸43fと、マスターx方向軸43fの先端に取り付けられたマスターxステージ43eと、マスターxステージ43eに対してy方向に沿って変位可能に延在する一対のマスターy方向軸43hと、マスターy方向軸43hに取り付けられたマスターyステージ43iと、マスターyステージ43iに対してz方向に変位可能に取り付けられたマスター保持部43jと、を有する。このため、マスター保持部43jは、マスター可動部材43bに対してx方向およびy方向に変位可能となっている。
【0030】
マスター保持部43jには、ボルト押さえ45が取り付けられている。ボルト押さえ45は、スレーブアーム機構44に近い側の端部に、ボルトの頭部に係合可能な係合部45aを有する。なお、ボルト押さえ45が自重でy方向下方に移動しないように、不図示のバランサー(錘)をマスター保持部43jに連結して釣り合いをとると好ましい。
【0031】
マスターx方向軸43fには、x方向センサーS1(図7参照)が内蔵されており、マスター可動部材43bに対するマスターx方向軸43fのx方向相対変位量(x方向変位量ともいう)を検出可能となっている。また、マスターy方向軸43hには、y方向センサーS2(図7参照)が内蔵されており、マスターxステージ43eに対するマスターy方向軸43hのy方向相対変位量(y方向変位量ともいう)を検出可能となっている。ここで、x方向相対変位量とy方向相対変位量は、昇降装置20の基準点SPの座標を原点として算出されると好ましい。
【0032】
図2、4に示すように、マスター支持板43aに対しマスター平行リンク43cを反時計回りに枢動させたときは、マスター可動部材43bは、サブ支柱41に近接する側に平行移動し、マスターアーム機構43は待機位置となる。一方、マスター平行リンク43cを時計回りに枢動させることで、マスター可動部材43bは、サブ支柱41にから離間する側に平行移動し、マスターアーム機構43は動作可能位置となる(図9参照)。マスターアーム機構43は、待機位置及び動作可能位置でロックされるようにロック機構を有すると好ましい。
【0033】
スレーブアーム機構44は、他方のサブ支柱41からx方向に延在する上下一対のスレーブ支持板44aと、スレーブ支持板44aに対して変位可能な上下一対のスレーブ可動部材44bと、スレーブ支持板44aに対してスレーブ可動部材44bをそれぞれ平行移動可能に連結するスレーブ平行リンク44cと、スレーブ可動部材44bに対して、x方向に沿って変位可能に延在する一対のスレーブx方向軸44fと、スレーブx方向軸44fの先端に取り付けられたスレーブxステージ44eと、スレーブxステージ44eに対してy方向に沿って変位可能に延在する一対のスレーブy方向軸44hと、スレーブy方向軸44hに取り付けられたスレーブyステージ44iと、スレーブyステージ44iに対してz方向に変位可能に取り付けられたスレーブ保持部44jと、を有する。スレーブ保持部44jは、アクチュエータ(z方向アクチュエータ)48(図7参照)によりスレーブ可動部材44bに対してx方向およびy方向に変位可能となっている。例えばスレーブ可動部材44bに取り付けられた電気又は空圧のアクチュエータ48は、第1スイッチST1(図7参照)の操作により、z方向におけるいずれかの方向(押し出し又は引き込み)を選択して、スレーブx方向軸44fおよびスレーブy方向軸44hとともにスレーブ保持部44jを変位させることができる。
【0034】
スレーブ保持部44jには、ナットランナー46が取り付けられている。ナットランナー46は、マスターアーム機構43に近い側の端部に、ナットに係合する係合部46aを有し、第2スイッチST2(図7参照)の操作により、電気又は空気圧で係合部46aを回転駆動可能である。なお、ナットランナー46が自重でy方向下方に移動しないように、不図示のバランサー(錘)をスレーブ保持部44jに連結して釣り合いをとると好ましい。また、スレーブアーム機構44にナットランナー46を設けているので、マスターアーム機構43にナットランナー46を設けた場合と比べると、ナットランナー46の動作時の振動が作業者に伝わることを抑制でき、作業者の負担を低減できる。
【0035】
スレーブx方向軸44fには、x方向アクチュエータACT1(図7参照)が内蔵されており、スレーブ可動部材44bに対してスレーブx方向軸44fをx方向に変位可能となっている。また、スレーブy方向軸44hには、y方向アクチュエータACT2(図7参照)が内蔵されており、スレーブyステージ44iに対してスレーブy方向軸44hをx方向に変位可能となっている。
【0036】
図2、4に示すように、スレーブ支持板44aに対してスレーブ平行リンク44cを時計回りに枢動させたときは、スレーブ可動部材44bは、サブ支柱41に近接する側に平行移動し、スレーブアーム機構44は待機位置となる。一方、スレーブ平行リンク44cを反時計回りに枢動させることで、スレーブ可動部材44bは、サブ支柱41にから離間する側に平行移動し、スレーブアーム機構44は動作可能位置となる(図9、11参照)。スレーブアーム機構44は、待機位置及び動作可能位置でロックされるようにロック機構を有すると好ましい。
【0037】
図7は、マスターアーム機構43とスレーブアーム機構44の制御構成を模式的に示す図であり、実際とは形状が異なる。
【0038】
マスターx方向軸43fに内蔵されたx方向センサーS1により、マスター可動部材43bを基準としてマスターx方向軸43fのx方向相対変位量に対応するx方向検出信号Sxが出力される。また、マスターy方向軸43hに内蔵されたy方向センサーS2により、マスター可動部材43bを基準としてy方向相対変位量に対応するy方向検出信号Syが出力され、これらの信号は外部の制御装置CONTに入力される。換言すれば、x方向センサーS1は、昇降装置20に対するボルト押さえ45のx方向相対位置を検出し、またy方向センサーS2は、昇降装置20に対するボルト押さえ45のy方向相対位置を検出することができる。
【0039】
制御装置CONTは、x方向検出信号Sxを入力したときは、スレーブx方向軸44fに内蔵されたx方向アクチュエータACT1に対してx方向駆動信号Dxを出力し、スレーブx方向軸44fを、検出したx方向相対変位量と同じ相対変位量となるように、スレーブ可動部材44bを基準にx方向に駆動する。換言すれば、制御装置CONTは、ナットランナー46が昇降装置20に対してボルト押さえ45と同じ変位量でx方向に変位するよう、x方向アクチュエータACT1を駆動できる。
【0040】
また、制御装置CONTは、y方向検出信号Syを入力したときは、スレーブy方向軸44hに内蔵されたy方向アクチュエータACT2に対してy方向駆動信号Dyを出力し、スレーブy方向軸44hを、検出したy方向相対変位量と同じ相対変位量となるように、スレーブ可動部材44bを基準にy方向に駆動する。換言すれば、制御装置CONTは、ナットランナー46が昇降装置20に対してボルト押さえ45と同じ変位量でy方向に変位するよう、y方向アクチュエータACT2を駆動できる。
【0041】
さらに、マスターアーム機構43は、作業者が操作可能な第1スイッチ(z方向駆動スイッチ)ST1を有する。第1スイッチST1からのオン・オフ信号は、図7において点線で示す配線を介してアクチュエータ48に入力される。第1スイッチST1のオン信号により、アクチュエータ48はスレーブ保持部44jとともにナットランナー46をz方向に突き出し、またオフ信号によりナットランナー46を引き込む。
【0042】
さらに、マスターアーム機構43は、作業者が操作可能な第2スイッチST2を有する。第2スイッチST2からのオン・オフ信号は、図7において点線で示す配線を介してナットランナー46に入力され、ナットランナー46は、第2スイッチST2のオン信号により係合部46aを回転させ、オフ信号により係合部46aの回転を停止させる。なお、図7において、第1スイッチST1と第2スイッチST2は、マスター保持部43jに設けた状態で示したが、その他のスイッチとともにスイッチ操作盤等に設けられていてよい。また、第1スイッチST1のオン信号は、ボルト押さえ45の係合部45aがz方向に駆動されて、ボルトの頭部に係合する位置に来たときにのみ、有効となる(アクチュエータ48が動作する)ようにしてもよい。
【0043】
(ホイール分解装置の動作)
次に、ホイール分解装置1を用いた車輪付きホイールTWの分解工程について説明する。図8~13は、ホイール分解装置1の動作を示す図であり、図4の平面図又は図5の側面図に相当するが、理解しやすいように装置の一部を省略して示すことがある。
【0044】
ホイール分解にあたり、予め分解対象とする車輪付きホイールTWから空気を抜いておくが、車輪の剛性が高いため、空気を抜いても車輪付きホイールTWの外形はほぼ円形を維持する。また、図2,3に示すように、マスターアーム機構43とスレーブアーム機構44を待機位置に移動させ、昇降装置20の昇降ベース24を床面GRの近傍まで下降させるとともに、姿勢矯正装置30を昇降フレーム23に対してy方向上方へと退避させておく。回転駆動装置25の一対の車輪ローラー25cの間隔は、最も外径の大きな車輪付きホイールTWに対応させておく。
【0045】
なお、車輪ローラーの変形例として、図6Aに一点鎖線で示すように、各車輪ローラーを車輪ローラー部25c’、25c’に二分割し、その軸線をz方向に対して同じ角度で逆方向に傾斜させてもよい。車輪ローラー部25c’、25c’は、それぞれ回転駆動可能である。かかる変形例を用いれば、車輪ローラー部25c’、25c’の突合せ端側の位置が低くなるため、車輪付きホイールTWは、自律的に車輪ローラー部25c’、25c’の間に保持されるようになる。
【0046】
作業者は、ホイール分解装置1に対し、図中左方からx方向に沿って車輪付きホイールTWを転がして、昇降ベース24に載り上げさせ、一対の車輪ローラー25cの間に配置する。このとき、車輪付きホイールTWのボルト頭部側がマスターアーム機構43側となり、ナット側がスレーブアーム機構44側となるようにする。
【0047】
かかる状態で、ロードセル25iが車輪付きホイールTWの下端に接したときは、その荷重を検出し、荷重に応じた信号を不図示の制御回路に出力する。該信号を入力した制御回路は、第2モーター25gに駆動信号を出力し、第2モーター25gを回転駆動させ、移動板25bの一方を基準位置SPに接近させると、リンク機構25fにより他方の移動板25bも等しい量で基準位置SPに接近する。これにより車輪ローラー25cの間隔が狭まるため、車輪付きホイールTWが一対の車輪ローラー25cにより持ち上げられてy方向上方へと変位する(図5参照)。
【0048】
車輪付きホイールTWが所定の位置まで上方すると、ロードセル25iが車輪付きホイールTWの荷重を検出しなくなり、荷重ゼロに相当する信号がロードセル25iから出力される。該信号を入力した制御回路は、第2モーター25gを自動的に停止させる。なお、ロードセル25iの荷重信号を読み取って、作業者が手動で第2モーター25gの回転駆動/停止を行ってもよい。この時点で、車輪付きホイールTWは一対の車輪ローラー25c上に載置して支持された状態となり、車輪付きホイールTWの中心が基準点SPの真上に位置し、車輪付きホイールTWの上端が姿勢矯正装置30のパッド36aの下面に概ね対向するようになるが、車輪付きホイールTWの軸線が水平面に対して上下に傾いている場合がある。そこで、姿勢矯正装置30を用いて、車輪付きホイールTWの姿勢を矯正する。
【0049】
なお、ロードセル25iの代わりに車輪付きホイールTWの位置を検出する変形例として、車輪ローラー25cにより保持される車輪付きホイールTWの下端側面に対向して、車輪ローラー25cの間に光学的センサーを配置してもよい。たとえば図8に点線で示すように、光ビームをz方向に投射可能な第1光学センサーS1と第2光学センサーS2とをy方向に離間して、昇降ベース24に設置したケースCSに収容する。第1光学センサーS1と第2光学センサーS2から照射された光ビームは、不図示の受光部(光学センサーの一部を構成する)でそれぞれ受光され、その検出信号が制御回路に入力される。車輪付きホイールTWを車輪ローラー25cに載り上げさせたとき、制御回路は、第1光学センサーS1から投射された光ビームが車輪付きホイールTWに遮られたことをその検出信号により認識したときは、車輪ローラー25cの間に車輪付きホイールTWに到達したと判断する。続いて制御回路は、第2光学センサーS2から投射された光ビームが車輪付きホイールTWに遮られたことをその検出信号により認識したときは、車輪ローラー25cの間隔が適切になったと判断する。
【0050】
作業者は、スイッチ操作により、y方向上方に退避していた姿勢矯正装置30を下降させ、図6A、8に示すように、パッド36aを車輪付きホイールTWの上端に当接させる。かかる状態で、作業者は、エアシリンダ35を駆動して押圧軸36を下降させると、リンク機構38を介して、一対のクランプ37が枢動し、クランプローラー37aが車輪の両側面に当接する。
【0051】
さらに、上記スイッチ操作により第1モーター25aが同時に駆動され、車輪ローラー25cが同方向に回転するため、その外周面を介して駆動力を受けた車輪付きホイールTWも連れ回りする。車輪付きホイールTWは、車輪TRの両側面に当接したクランプローラー37aを介してクランプ37からz方向に対向する力を受けるが、車輪付きホイールTWの軸線が水平面に対して傾いていた場合(すなわち車輪付きホイールTWがz方向に倒れていた場合)には、クランプ37に近い側面の方がより強い力を受ける。したがって、車輪TRの両側面が受ける力の差により、車輪付きホイールTWは直立する(車輪付きホイールTWの軸線が水平面に近づく)方向に付勢され、車輪付きホイールTWの回転に連れて両クランプ37から受ける力が均等になる。これにより、車輪付きホイールTWの傾き(姿勢)が矯正される。その際に、クランプローラー37aは、回転することで車輪の側面との間に摩擦抵抗が生じないように機能し、それにより車輪付きホイールTWの姿勢矯正を支援する。
【0052】
仮に車輪付きホイールTWの軸線が水平面に対して傾いていた場合、ホイールを固定するボルトとナットのy方向の高さ位置が異なることとなる。本発明者の検討結果によれば、PCDが1000mmである車輪付きホイールTWの軸線が、水平面に対して2.5°傾いた場合、ボルトとナットの中心位置は約1mm上下にずれることが分かっている。ボルトとナットの高さ位置が大きくずれると、ボルト押さえ45がボルトの頭部に係合したときに、ナットランナー46が、そのボルトに螺合するナットに係合できない恐れがある。本実施形態によれば、姿勢矯正装置30により車輪付きホイールTWの軸線がz方向に略一致するように、その姿勢を矯正することでボルトとナットの高さ位置のずれを抑制できる。
【0053】
所定時間にわたって車輪ローラー25cを回転させることにより、車輪付きホイールTWの姿勢を矯正した後、タイマー作動により第1モーター25aが停止し、車輪付きホイールTWの回転が止まる。なお、車輪付きホイールTWの回転・静止は、作業者のスイッチ操作により行うようにしてもよい、その後、作業者は、スイッチ操作により昇降装置20のアクチュエータを駆動して、図9に示すように、昇降ベース24及び姿勢矯正装置30とともに車輪付きホイールTWを上昇させる。ここで、スイッチ操作により、例えば「高」、「中」、「低」の3ポジションを選択可能となっており、選択されたポジションに従い、作業者の身長に合わせて車輪付きホイールTWを作業しやすい位置に上昇させることができる。昇降ベース24が上昇しても、車輪付きホイールTWは、姿勢矯正装置30により保持されているため、倒れることがない。
【0054】
車輪付きホイールTWが選択されたポジションまで上昇したときに、自動的に昇降装置20が静止する。そして、作業者は、マスターアーム機構43とスレーブアーム機構44を待機位置(図10)から動作可能位置(図11)へと移動させる。より具体的には、マスター平行リンク43cを時計回りに枢動させることで、マスター支持板43aに対してマスター可動部材43bを車輪付きホイールTW側に平行移動させる。すると、不図示のセンサーがマスター平行リンク43cの枢動を検出して、スレーブ平行リンク44cを反時計回りに枢動させる。これにより、自動的にスレーブ支持板44aに対してスレーブ可動部材44bを車輪付きホイールTW側に平行移動させることができる。
【0055】
動作可能状態において、不図示のロック機構によりマスター可動部材43bとスレーブ可動部材44bが、マスター支持板43aとスレーブ支持板44aに対してロック(係止)されることが望ましい。これにより、マスター可動部材43bとスレーブ可動部材44bは、基礎部10を介して昇降装置20に対して剛的に連結されることとなり、昇降装置20に保持された車輪付きホイールTWに対して相対変位することが阻止される。
【0056】
次に、作業者は、ボルト押さえ45を把持して、図12に示すようにボルト押さえ45をz方向に変位させ、車輪付きホイールTWのボルト頭部に係合部45aを係合させる。ボルト押さえ45がx方向に移動することで、マスターx方向軸43fに内蔵されたx方向センサーS1からx方向相対変位量に対応するx方向検出信号Sxが出力され、またy方向に移動することで、マスターy方向軸43hに内蔵されたy方向センサーS2からy方向相対変位量に対応するy方向検出信号Syが出力される。このx方向検出信号Sxとy方向検出信号Syは、外部の制御装置CONTに出力される(図7)。ただし、制御装置CONTは、ボルト押さえ45のz方向の移動を検出しない。
【0057】
制御装置CONTは、x方向検出信号Sxの入力に応じて、スレーブx方向軸44fに内蔵されたx方向アクチュエータACT1に対してx方向駆動信号Dxを出力し、スレーブx方向軸44fを、検出したx方向相対変位量と同じ相対変位量となるようにx方向に駆動する。また、制御装置CONTは、y方向検出信号Syの入力に応じて、スレーブy方向軸44hに内蔵されたy方向アクチュエータACT2に対してy方向駆動信号Dyを出力し、スレーブy方向軸44hを、検出したy方向相対変位量と同じ相対変位量となるようにy方向に駆動する。これにより、ナットランナー46は、車輪付きホイールTWを挟んでボルト押さえ45に対向する位置に変位する。ただし、制御装置CONTは、ナットランナー46をz方向に駆動しないため、係合部46aはナットから離間したままとなる。
【0058】
そこで、作業者が第1スイッチST1(図7)を操作してオン信号を出力すると、アクチュエータ48が駆動され、それにより図13に示すように、ナットに対してナットランナー46が押し出され、係合部46aがナットに係合する。これにより車輪付きホイールTWにおいて、ボルト押さえ45が頭部に係合したボルトに螺合するナットに対し、ナットランナー46が係合したこととなる。かかる状態で、作業者が第2スイッチST2(図7)を操作してオン信号を出力することで、ナットランナー46の係合部46aが、係合するナットとともに緩み方向に回転し、それにより、ボルトからナットを離脱させることができる。
【0059】
作業者が第2スイッチST2を操作してオフ信号を出力することで、ナットランナー46の回転駆動が中止され、また作業者が第1スイッチST1を操作してオフ信号を出力することで、アクチュエータ48はナットランナー46を車輪付きホイールTWから離間した位置へと戻す。
【0060】
このとき、ナットランナー46の係合部46aには、ボルトから離脱したナットが残存することもあるが、例えばコイルスプリングを係合部46a内に収容しておくことで、その弾性力により、係合部46aがボルトから離間した際に自動的に係合部46aから押し出すことができ、次のナット緩め動作の妨げになることを回避できる。
【0061】
1つのナットの緩め動作が終了したら、作業者は、ボルト押さえ45を把持して、次の緩め対象となるナットが螺合したボルト頭部に係合部45aが係合するように、ボルト押さえ45を変位させる。これにより、上述と同様にナットランナー46は、車輪付きホイールTWを挟んでボルト押さえ45に対向するx方向及びy方向の位置に追従して変位するため、作業者が、第1スイッチST1の操作及び第2スイッチST2の操作を行うことでナットを緩めることができる。なお、所定角度範囲にわたってナットを緩めたのちに、作業者のスイッチ操作で車輪付きホイールTWを回転させ、まだ緩められていない複数のナットを該所定角範囲内に変位させたのち、続けてナットを緩めるようにすることもできる。これにより、マスターアーム機構43とスレーブアーム機構44のx方向およびy方向の稼働範囲(すなわちアーム長)を抑えることができ、それによりホイール分解装置の小型化を図れ、また作業範囲が限定されることで作業者の負担を軽減できる。以下、同様の動作を行うことで、車輪付きホイールTWの全てのナットをボルトより離脱することができる。
【0062】
ナット緩め動作が終了した後、マスターアーム機構43とスレーブアーム機構44を待機位置に移動させ、作業者は車輪付きホイールTWからホイールWHを取り外す。その後、昇降装置20の昇降ベース24を床面GRにまで下降させ、姿勢矯正装置30を昇降フレーム23に対してy方向上方へと退避させることで、車輪TRをホイール分解装置1から離脱させることができる。なお、ホイールを再組立てする際にも、本実施形態を用いて、ボルトに対してナットを螺合することが可能となる。
【0063】
本実施形態によれば、一人の作業者により、車輪付きホイールTWをホイール分解装置1に設置し、マスターアーム機構43に追従させるようにスレーブアーム機構44を動作させることで、ボルトの供回りを抑制しつつ全てのナットを緩めることができる。このため、車輪付きホイールTWの分解効率が格段に向上する。
【0064】
また、ホイール分解装置1において、全ての動作を自動制御化することなく、ボルト押さえ45とナットランナー46のx方向及びy方向の追従動作のみを自動制御化することで、ホイール分解装置1の簡素化と低コスト化を図ることができる。
【0065】
(変形例)
変形例として、x方向のみマスター保持部43jが移動可能とするとともに、x方向にのみスレーブ保持部44jが追従可能なように、マスター・スレーブ装置を構成してもよい。かかる場合、車輪付きホイールTWの(例えば最上部の)ボルトとナットが、マスター保持部43j及びスレーブ保持部44jの移動範囲内に入るように、昇降装置20により車輪付きホイールTWの高さ位置を調整する。かかる状態で、ボルト押さえに追従するナットランナーを用いてナットを緩めたのち、ボルトのピッチ分だけ回転駆動装置25により車輪付きホイールTWを回転させれば、隣のボルトとナットがほぼ同じ位置にくるため、ボルトの供回りを防ぎつつ順次ナットを緩めることができる。これにより、ホイール分解装置1をさらに簡素化できる。
【0066】
なお、本発明にかかるホイール分解装置の具体的な構成は、上述した各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更があっても本発明に含まれることはもちろんである。例えば、上記実形態怠においては、車輪付きホイールにおけるホイールの分解について説明したが、車輪のないホイールについても、本発明のホイール分解装置により分解可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 ホイール分解装置、10 基礎部、11 水平板、12 メイン支柱、13 メイン梁,14 補強板、20 昇降装置、21 直動装置、22 直動要素、23 昇降フレーム、24 昇降ベース、25 回転駆動装置、25c 車輪ローラー、25i ロードセル、30 姿勢矯正装置、31 ねじ軸、32 ボールナット、33 支持板、34 支持フレーム、35 エアシリンダ、36 押圧軸、37 クランプ、38 リンク機構、40 マスター・スレーブ装置、41 サブ支柱、42 サブ梁、43 マスターアーム機構、44 スレーブアーム機構、45 ボルト押さえ、46 ナットランナー、48 アクチュエータ、ACT1 x方向アクチュエータ、ACT2 y方向アクチュエータ、CONT 制御装置、S1 x方向センサー、S2 y方向センサー、TW 車輪付きホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13