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特開2024-154384制御装置、空調制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154384
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】制御装置、空調制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20241023BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20241023BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241023BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20241023BHJP
   F24F 130/10 20180101ALN20241023BHJP
   F24F 140/50 20180101ALN20241023BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F11/63
F24F110:10
F24F110:20
F24F130:10
F24F140:50
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062351
(22)【出願日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2023067800
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西川 春香
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】由良 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌和
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA42
3L260BA44
3L260BA75
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA32
3L260CA33
3L260CA34
3L260CA39
3L260CB63
3L260CB64
3L260CB67
3L260CB69
3L260CB70
3L260EA01
3L260EA07
3L260EA09
3L260EA22
3L260EA28
3L260FA02
(57)【要約】
【課題】運転条件と制御方法の組において空調制御の性能を実際の運転状態に基づいて高精度に評価する。
【解決手段】複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御部を有する制御装置が、空調機の運転条件に関する情報を取得し、制御方法ごとの運転条件に関する情報の差に基づいて空調機が動作する制御方法を決定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御部を有する制御装置であって、
前記制御部は、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機が動作する前記制御方法を決定する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記運転条件に関する情報をある区間に区分した際に、前記運転条件に関する情報が区分された前記区間で実行していない前記制御方法を、前記空調機が動作する前記制御方法に決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記空調機の運転状態に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報及び前記運転状態に関する情報に基づき、前記制御方法による空調制御の性能評価指標を出力する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
所定の期間において前記制御方法を決定し、
前記所定の期間において取得した前記運転条件に関する情報及び前記運転状態に関する情報に基づいて前記性能評価指標を出力する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
所定の範囲に区分される前記運転条件に関する情報が、前記制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標を算出可能な情報量となるまで、前記制御方法を決定する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記所定の期間以降において、前記運転条件に関する情報を取得し、
前記運転条件に関する情報をある区間に区分した際に、前記所定の期間に取得された前記運転条件に関する情報が区分された前記区間と異なる区間に区分される場合、前記異なる区間で実行していない前記制御方法を、前記空調機が動作する前記制御方法に決定する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記異なる区間に区分される前記運転条件に関する情報が、前記制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標を算出可能な情報量となった場合、前記性能評価指標を更新する、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記制御方法ごとに前記運転条件に対して評価値を算出し、
前記評価値が所定の条件を満たすように前記空調機が動作する前記制御方法を決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記評価値は、前記運転条件ごとの前記空調機の運転時間、前記運転条件ごとの前記空調機の運転頻度、前記運転条件の出現範囲、前記運転条件の出現パターン、又は前記空調機の運転時間に関する情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて算出された値の、前記制御方法間における差を示す、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記所定の条件は、前記制御方法ごとに算出した前記評価値が最小となることである、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記性能評価指標を外部の表示装置に表示する、
請求項3から7のいずれかに記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記制御方法の間の前記性能評価指標の比較結果を示す情報を出力し、
前記所定の期間と前記所定の期間以降とで、前記性能評価指標を異なる方法で比較する、
請求項4から7のいずれかに記載の制御装置。
【請求項13】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部が、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機が動作する前記制御方法を決定する、
空調制御方法。
【請求項14】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部に、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機を動作させる前記制御方法を決定する、
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、空調制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機や空調システムが利用されている。その制御方法を評価する方法として、例えば、特許文献1には、省エネルギー運転制御適用時の消費電力量と外気情報とに基づいて近似式を算出し、省エネルギー運転制御非適用時の外気情報と近似式とに基づいて省エネルギー運転制御を仮想的に適用した時の消費電力量推定値を算出する省エネルギー効果推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-070163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、空調機の運転条件ごとに、その運転条件における各制御方法の空調制御の性能を高精度に評価することができない。
【0005】
本開示は、制御方法ごとの空調制御の性能の差を評価可能な情報を取得する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る制御装置は、複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御部を有する制御装置であって、前記制御部は、前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機が動作する前記制御方法を決定する。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、制御方法ごとの空調制御の性能の差を評価可能な情報を取得できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係る制御装置であって、前記制御部は、前記運転条件に関する情報をある区間に区分した際に、前記運転条件に関する情報が区分された前記区間で実行していない前記制御方法を、前記空調機が動作する前記制御方法に決定する。
【0009】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様に係る制御装置であって、前記制御部は、前記空調機の運転状態に関する情報を取得し、前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報及び前記運転状態に関する情報に基づき、前記制御方法による空調制御の性能評価指標を出力する。
【0010】
本開示の第4の態様は、第3の態様に係る制御装置であって、前記制御部は、所定の期間において前記制御方法を決定し、前記所定の期間において取得した前記運転条件に関する情報及び前記運転状態に関する情報に基づいて前記性能評価指標を出力する。
【0011】
本開示の第5の態様は、第4の態様に係る制御装置であって、前記制御部は、所定の範囲に区分される前記運転条件に関する情報が、前記制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標を算出可能な情報量となるまで、前記制御方法を決定する。
【0012】
本開示の第6の態様は、第4又は第5の態様に係る制御装置であって、前記制御部は、前記所定の期間以降において、前記運転条件に関する情報を取得し、前記運転条件に関する情報をある区間に区分した際に、前記所定の期間に取得された前記運転条件に関する情報が区分された前記区間と異なる区間に区分される場合、前記異なる区間で実行していない前記制御方法を、前記空調機が動作する前記制御方法に決定する。
【0013】
本開示の第7の態様は、第6の態様に係る制御装置であって、前記制御部は、前記異なる区間に区分される前記運転条件に関する情報が、前記制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標を算出可能な情報量となった場合、前記性能評価指標を更新する。
【0014】
本開示の第8の態様は、第1から第7の態様のいずれかに係る制御装置であって、前記制御部は、前記制御方法ごとに前記運転条件に対して評価値を算出し、前記評価値が所定の条件を満たすように前記空調機が動作する前記制御方法を決定する。
【0015】
本開示の第9の態様は、第8の態様に係る制御装置であって、前記評価値は、前記運転条件ごとの前記空調機の運転時間、前記運転条件ごとの前記空調機の運転頻度、前記運転条件の出現範囲、前記運転条件の出現パターン、又は前記空調機の運転時間に関する情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて算出された値の、前記制御方法間における差を示す。
【0016】
本開示の第10の態様は、第8又は第9の態様に係る制御装置であって、前記所定の条件は、前記制御方法ごとに算出した前記評価値が最小となることである。
【0017】
本開示の第11の態様は、第3から第7の態様のいずれかに係る制御装置であって、前記制御部は、前記性能評価指標を外部の表示装置に表示する。
【0018】
本開示の第12の態様は、第4から第7の態様のいずれかに係る制御装置であって、前記制御部は、前記制御方法の間の前記性能評価指標の比較結果を示す情報を出力し、前記所定の期間と前記所定の期間以降とで、前記性能評価指標を異なる方法で比較する。
【0019】
本開示の第13の態様に係る空調制御方法は、複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部が、前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報に基づいて前記空調機が動作する前記制御方法を決定する。
【0020】
本開示の第14の態様に係るプログラムは、複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部に、前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機を動作させる前記制御方法を決定する、処理を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】空調機の性能評価の流れの一例を示す図である。
図2】学習期間における制御スケジュールの一例を示す図である。
図3】空調システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図4】制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5】空調制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】制御方法決定処理の一例を示すフローチャートである。
図7】運転条件の出現頻度に関する情報の一例を示す図である。
図8】評価値の計算方法の一例を説明するための図である。
図9】評価値の計算方法の一例を説明するための図である。
図10】学習期間中の性能評価処理の一例を示すフローチャートである。
図11】差分関数の一例を示す図である。
図12】性能評価指標の計算方法の一例を説明するための図である。
図13】学習期間の性能評価レポートの一例を示す図である。
図14】予測モデルの再構築処理の一例を示すフローチャートである。
図15】運用期間中の性能評価処理の一例を示すフローチャートである。
図16】運用期間の性能評価の一例を説明するための図である。
図17】運用期間の性能評価レポートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0023】
[実施形態]
本開示の一実施形態は、1以上の空調機により所定の空間の空気調和を行う空調システムである。本実施形態における空調機は、複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機である。
【0024】
本実施形態における制御方法は、例えば、消費エネルギーを低減することを目的とする省エネルギー運転制御を含む。複数の制御方法は、例えば、省エネルギー運転制御を行う制御方法(省エネ制御)と、省エネルギー運転制御を行わない制御方法(非省エネ制御)とを含んでもよい。
【0025】
本実施形態における空調システムは、制御方法ごとの空調制御の結果を評価するための指標(性能評価指標)を出力する。性能評価指標は、例えば、同一の運転条件における制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標である。空調制御の性能は、例えば、省エネルギー効果である。省エネルギー効果は、例えば、省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量と非省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量との差分で表される。消費エネルギー量の差分が大きいほど、省エネルギー効果は高いと評価することができる。
【0026】
ある時点において空調機が動作する制御方法は1つである。そのため、空調制御の性能を比較するためには、他の制御方法における空調制御の性能を予測する必要がある。空調制御の性能の予測には、例えば、空調機の運転条件と空調制御の性能との関係に基づいて構築した予測モデルが用いられる。予測モデルは、制御方法ごとに、その制御方法で運転したときの運転データを用いて構築される。このとき、運転データを収集したときの運転条件の範囲が制御方法の間で同等でないと、予測モデルの予測精度が低下することがある。なお、運転条件は、例えば、空調機の使用条件又は空調機が使用される環境条件を含む。
【0027】
また、空調機を新設した場合、既存の空調機を更新した場合、又は空調機の用途や部屋のレイアウトを変更した場合等には、性能評価のために利用可能な過去の運転データが存在しない。この場合、空調機の設計仕様に基づく予測モデル又はエネルギーシミュレーション等により代替することがある。しかしながら、設計仕様に基づく予測モデル又はエネルギーシミュレーション等では、実際の設置環境を再現することは困難である。
【0028】
特に、空調制御の性能の差が大きくない場合には、予測誤差の影響が相対的に大きくなる。したがって、空調制御の性能の予測精度が低いと、空調制御の性能の差が小さい運転条件であるほど、空調制御の性能の差を正しく評価することがより困難となる。
【0029】
図1は、本実施形態における空調機の性能評価の流れの一例を示す図である。図1に示されているように、本実施形態では、空調機の運転期間が学習期間と運用期間とに分けられる。
【0030】
学習期間は、予測モデルを構築するための運転データを収集するための期間である。学習期間では、空調機は、予め定めた時間間隔(切り替え間隔)で制御方法を決定して動作する。図1において、ONは省エネ制御を示し、OFFは非省エネ制御を示している。
【0031】
学習期間が終了すると、学習期間で収集した運転データに基づいて、制御方法ごとの予測モデルが構築される。また、学習期間では、学習期間で収集した運転データに基づいて、空調制御の性能を評価したレポート(学習期間の性能評価レポート)が出力される。学習期間の性能評価レポートには、学習期間における制御方法ごとの空調制御の性能評価指標に基づく情報が含まれる。学習期間は、空調機の運転条件を網羅できる程度の長さであるとよい。学習期間は、予め定めた期間(例えば、1年間)であってもよい。学習期間は、予測モデルを構築するために十分な運転データが収集されるまでとしてもよい。
【0032】
運用期間は、制御方法を固定して空調機を動作させる期間である。図1には、省エネ制御(ON)に固定して空調機を動作させる例が示されている。運用期間は、複数の評価期間を含む。評価期間は、構築された予測モデルを用いて空調制御の性能を評価する期間である。評価期間では、予め定めた時間間隔(評価間隔)で、空調制御の性能を評価したレポート(運用期間の性能評価レポート)が繰り返し出力される。運用期間の性能評価レポートは、空調機の利用者又は管理者等の指示に応じてオンデマンドで出力されてもよい。運用期間の性能評価レポートには、その評価期間における制御方法ごとの空調制御の性能評価指標に基づく情報が含まれる。評価期間は、予め定めた時間間隔(例えば、3か月、6か月又は1年間等)であってもよい。
【0033】
例えば、省エネ制御を空調機のオプション機能として提供することを考える。この場合、空調機のユーザは省エネ制御を導入するか否かを実環境で評価したいことがある。学習期間において省エネ制御を試用可能とすれば、空調機のユーザは学習期間の性能評価レポートを参照することで、省エネ制御により得られるメリットを評価することが可能となる。また、省エネ制御を導入し常時省エネ制御で運用した場合、空調機のユーザは定期的に運用期間の性能評価レポートを参照することで、メリットを享受できているか否かを検証することができる。
【0034】
図2は、学習期間における制御スケジュールの一例を示す図である。図2に示されているように、本実施形態では、制御方法の切り替え間隔を24時間とする。したがって、空調機は、省エネ制御(ON)と非省エネ制御(OFF)とを交互に毎日切り替えながら動作する。ただし、制御方法の切り替え間隔は、24時間に限定されず、任意の時間長に定めてもよい。
【0035】
図2に示す例のように、1日ごとに制御方法を切り替えれば、収集される運転データにおける曜日、設定温度又は外気温等の運転条件の範囲が制御方法の間で同等となることが期待できる。しかしながら、空調機の設置環境等の影響で運転する曜日又は時間帯が不規則であると、1日ごとに制御方法を切り替えても運転条件の範囲が同等とならないことがある。また、運転条件は外気温又は日射等の気候又は気象に影響を受けるため、時間間隔に基づいて運転条件の範囲を制御方法間で同等とすることは不確実性を伴う。
【0036】
本実施形態は、空調制御の性能評価指標の推定精度を向上することを目的とする。例えば、収集した運転データの運転条件の範囲が制御方法ごとに同等となるように制御方法を決定すれば、各運転条件に対する各制御方法の実測値を1回以上取得することができる。その結果、予測モデルの精度が向上し、複数の空調制御間の性能の差を高精度に評価することが可能となる。
【0037】
<全体構成>
図3は、本実施形態における空調システムの全体構成の一例を示すブロック図である。図3に示されているように、本実施形態における空調システム1は、制御装置10、1台以上の室外機20、1台以上の室内機30、及び端末装置40を含む。
【0038】
制御装置10は、室外機20及び室内機30を制御する情報処理装置である。制御装置10は、室外機20が定期的に送信する運転データを収集する。制御装置10は、収集した運転データに基づいて、室外機20及び室内機30の動作を制御する制御信号を送信する。
【0039】
制御装置10は、室外機20の制御部と一体化し、室外機20の内部に構成してもよい。制御装置10は、室外機20と通信ネットワークを介して通信可能なデータセンタ等に設置されてもよい。制御装置10は、クラウドコンピューティング等によりサービスとして提供されてもよい。
【0040】
また、制御装置10は、収集した運転データに基づいて学習期間の性能評価レポートを出力する。さらに、制御装置10は、収集した運転データに基づいて予測モデルを構築し、構築された予測モデルに基づいて運用期間の性能評価レポートを出力する。
【0041】
室外機20及び室内機30は、1以上の部屋を含む所定の室内空間の空気調和を行うように建物等の施設に設置される空調機を構成する。室外機20は、例えば、空調機の室外機である。室内機30は、例えば、空調機の室内機である。この例では、室外機20と室内機30とは、冷媒配管で接続される。
【0042】
端末装置40は、制御装置10が出力するレポートを表示するパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理端末である。端末装置40は、空調システム1の管理者等による操作に応じて、制御装置10にレポートの出力を要求する。端末装置40は、制御装置10から受信したレポートをディスプレイ等の表示装置(外部の表示装置の一例)に出力する。端末装置40は、制御装置10から受信したレポートを、通信ネットワークを介して他の装置に送信してもよい。
【0043】
制御装置10は、室外機20と通信線N1で接続される。室外機20は、1台以上の室内機30と通信線N2で接続される。制御装置10は、端末装置40と通信線N3で接続される。空調システム1に複数の室外機20が含まれる場合、制御装置10と室外機20とは、バス配線又はスター配線等の任意の接続形態で接続すればよい。
【0044】
空調システム1は、複数の制御方法を切り替えて動作可能である。空調システム1が動作する制御方法は、制御装置10が決定する。制御装置10は、空調システム1の管理者等の入力に基づいて制御方法を決定してもよい。制御装置10は、制御方法を切り替えるための制御信号を、通信線N1を介して室外機20に送信する。室外機20は、制御方法を切り替えて、例えば省エネ制御等を実施する。
【0045】
<ハードウェア構成>
図4は、本実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図4に示されているように、制御装置10は、プロセッサ101、メモリ102、補助記憶装置103、操作装置104、表示装置105、通信装置106、ドライブ装置107を有する。制御装置10の各ハードウェアは、バス108を介して相互に接続されている。
【0046】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ101は、補助記憶装置103にインストールされている各種プログラムをメモリ102上に読み出して実行する。
【0047】
メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ101とメモリ102とは、いわゆるコンピュータ(以下、「制御部」ともいう)を形成し、プロセッサ101が、メモリ102上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0048】
補助記憶装置103(以下、「記憶部」ともいう)は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ101によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0049】
操作装置104は、制御装置10のユーザが各種操作を行うための操作デバイスである。表示装置105は、制御装置10により実行される各種処理の処理結果を表示する表示デバイスである。
【0050】
通信装置106は、不図示のネットワークを介して外部装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0051】
ドライブ装置107は、記憶媒体109をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体109には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記憶する媒体が含まれる。また、記憶媒体109には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記憶する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0052】
なお、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体109がドライブ装置107にセットされ、記憶媒体109に記憶された各種プログラムがドライブ装置107により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、通信装置106を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0053】
<空調制御方法の流れ>
図5は、本実施形態における制御装置10が実行する空調制御方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS1において、制御装置10の制御部は、空調機の制御方法を決定する。制御装置10の制御部は、予め定めた切り替え間隔で空調機の制御方法を決定する。本実施形態では、制御装置10の制御部は、24時間ごとに空調機の制御方法を決定するものとする。
【0055】
本実施形態では、空調機の制御方法は、省エネ制御及び非省エネ制御を含む。ただし、空調機の制御方法は、これらの2つに限定されず、様々な制御方法を構成することができる。また、空調機が取り得る制御方法は、3つ以上であってもよい。
【0056】
≪制御方法決定処理≫
図6は、本実施形態における制御方法決定処理の一例を示すフローチャートである。制御方法決定処理は、図5のステップS1に対応する。
【0057】
ステップS1-1において、制御装置10の制御部は、現在までの空調機の運転状態に関する情報を取得する。運転状態に関する情報は、制御方法に関する情報及び空調機の稼働状態に関する情報を含む。空調機の稼働状態に関する情報は、例えば、空調機のオン又はオフを示すフラグ情報等である。運転状態に関する情報は、例えば、空調機が備える各種センサで観測された情報を記録した運転データや、起動中、定常運転中、設定温度変更後といった運転制御状態等である。
【0058】
ステップS1-2において、制御装置10の制御部は、現在までに収集された運転データに基づいて、制御方法ごとの運転条件に関する情報を取得する。運転条件に関する情報は、空調機の使用条件に関する情報又は空調機が使用される環境条件に関する情報を含む。
【0059】
使用条件に関する情報は、例えば、室内温度、室内湿度、設定温度、空調熱負荷、空調空間内の人数、空調空間のレイアウト、曜日、時刻等に関する情報を含む。環境条件に関する情報は、例えば、外気温、外気湿度、日射又は季節等に関する情報を含む。
【0060】
図7は、取得した運転条件に関する情報に基づく、運転条件の出現頻度に関する情報の一例を示す図である。図7に示されているように、運転条件の出現頻度に関する情報は、例えば、設定温度を示す行と、外気温を示す列とを有し、設定温度と外気温との組み合わせにおいて出現頻度を値にもつ行列であってもよい。出現頻度とは、設定温度と外気温との組み合わせにおいて収集された運転データの数である。
【0061】
図7に示されているように、運転条件の出現頻度に関する情報は、収集された運転データを運転条件に基づく所定の区間に区分することで生成される。図7の例では、設定温度及び外気温を1℃刻みの区間に分割し、設定温度と外気温との各組み合わせに運転データを区分することで生成されている。
【0062】
図7に示す例は、使用条件の一例として設定温度を用い、環境条件の一例として外気温を用いているが、使用条件及び環境条件は他の項目であってもよい。また、図7に示す例は、使用条件を行とし、環境条件を列とする行列であるが、行と列とが逆であってもよい。また、運転条件の出現頻度に関する情報は、行列でなくてもよく、一意の運転条件に対する出現頻度をもつ情報であればよい。また、運転条件の出現頻度に関する情報は、1つの項目において収集されたデータの数、又は3つ以上の項目の組み合わせにおいて収集された運転データの数を示してもよい。
【0063】
なお、室内機30が複数存在する場合、各室内機30で設定温度が異なることが起こり得る。この場合、各室内機30の設定温度を平均する等した値を設定温度として、出現頻度を集計すればよい。
【0064】
図6に戻って説明する。ステップS1-3において、制御装置10の制御部は、次の時間区間における空調機の運転条件を取得する。運転条件に含まれる環境条件は、外部のデータソースから取得してもよいし、所定の予測モデルから決定してもよい。例えば、環境条件の一例である外気温は、気象情報サービスで提供される天気予報データから取得することができる。運転条件に含まれる使用条件は、過去の運転データに基づいて、環境条件から予測することができる。例えば、使用条件の一例である設定温度は、運転データに基づいて外気温と設定温度との関係を学習した機械学習モデルにより予測することができる。
【0065】
なお、次の時間区間とは、今回制御方法を決定してから次回制御方法を決定するまでの時間区間である。したがって、次の時間区間の時間長は、予め定めた切り替え間隔と等しくなる。本実施形態では、切り替え間隔は24時間であるため、次の時間区間には直後の24時間が含まれる。
【0066】
ここでは、直後に続く単一の時間区間における運転条件を予測する例を説明したが、連続する複数の時間区間における運転条件を予測してもよい。外部のデータソースから長期的な環境条件を取得可能であれば、複数の時間区間における運転条件を予測することが可能である。例えば、気象情報サービスから一週間分の天気予報データが提供されていれば、各日の予想気温に基づいて一週間分の運転条件を予測することができる。
【0067】
ステップS1-4において、制御装置10の制御部は、制御方法ごとに、運転条件に関する情報に基づいて評価値を計算する。評価値は、制御方法の間の運転条件の差を示す値である。評価値は、例えば、運転条件ごとの運転時間や、時間区間を考慮した運転条件ごとの出現頻度(言い替えると、運転条件ごとの空調機の運転頻度)、運転条件の出現範囲、運転条件の出現パターン、又は空調機の運転時間に関する情報に基づいて算出される。
【0068】
具体的には、制御装置10の制御部は、制御方法ごとに、ステップS1-2で取得した運転条件に、ステップS1-3で取得した運転条件を加算する。これにより、次の時間区間において、ある制御方法で運転したときの運転条件と、他の制御方法で運転したときの運転条件とが得られる。次に、制御装置10の制御部は、ある制御方法で運転したときの運転条件に基づいて、所定の評価値を計算する。また、制御装置10の制御部は、他の制御方法で運転したときの運転条件に基づいて、所定の評価値を計算する。これにより、制御装置10の制御部は、制御方法ごとの評価値を計算することができる。
【0069】
本実施形態における評価値の計算方法について、図8及び図9を参照しながらより詳しく説明する。図8に示されているように、省エネ制御で運転したときに収集された運転データに基づく運転条件201(省エネ制御運転情報)と、非省エネ制御で運転したときに収集された運転データに基づく運転条件202(非省エネ制御運転情報)とが取得されているものとする。このとき、次の時間区間において取得された運転条件203(予測運転情報)を、省エネ制御運転条件201及び非省エネ制御運転条件202それぞれに加算する。これにより、図9に示されているように、省エネ制御運転条件201に予測運転条件203を加算した運転条件211(予測省エネ制御運転条件)及び非省エネ制御運転条件202に予測運転条件203を加算した運転条件212(予測非省エネ制御運転条件)が生成される。
【0070】
次に、図9に示されているように、予測省エネ制御運転条件211及び非省エネ制御運転条件202に基づいて、第1評価値213を計算する。第1評価値213は、次の時間区間において省エネ制御で運転した場合における運転条件に対する評価値である。また、省エネ制御運転条件201及び予測非省エネ制御運転条件212に基づいて、第2評価値214を計算する。第2評価値214は、次の時間区間において非省エネ制御で運転した場合における運転条件に対する評価値である。
【0071】
具体的には、制御装置10の制御部は、式(1)により各評価値を計算する。
【0072】
【数1】
【0073】
ただし、Xは予め定めた閾値である。出現頻度がX以上となる出現箇所の数とは、2つの運転条件の両方で出現頻度がX以上である設定温度と外気温の組み合わせの数である。出現頻度とはその運転条件で収集された運転データの数である。
【0074】
制御装置10の制御部は、式(2)により各評価値を計算してもよい。
【0075】
【数2】
【0076】
なお、α,β,γは予め定めた係数である。出現範囲とは、1以上の運転データが収集されている運転条件の範囲である。出現範囲の差とは、2つの運転条件における出現範囲の差分であり、一方の運転条件では1以上の運転データが収集されており、他方の運転条件では運転データが収集されていない範囲である。平均外気温及び平均設定温度は、出現頻度を重みとした加重平均である。
【0077】
制御装置10の制御部は、式(3)により各評価値を計算してもよい。
【0078】
【数3】
【0079】
ただし、出現頻度が一致する出現箇所とは、2つの運転条件で出現頻度が同一となる設定温度と外気温の組み合わせである。
【0080】
制御装置10の制御部は、式(4)により各評価値を計算してもよい。
【0081】
【数4】
【0082】
ただし、ここでiは使用条件のインデックスであり、jは環境条件のインデックスである。
【0083】
図6に戻って説明する。ステップS1-5において、制御装置10の制御部は、ステップS1-4で計算した評価値に基づいて、次の時間区間における空調機の制御方法を決定する。具体的には、制御装置10の制御部は、制御方法ごとの評価値が所定の条件を満たすように制御方法を決定する。所定の条件は、制御方法ごとの運転条件の差が小さくなるように定められる。
【0084】
所定の条件は、評価値の種類により異なる。運転条件の差が大きいほど値が大きくなる評価値であれば、評価値が最小となることを所定の条件とすればよい。一方、運転条件の差が小さいほど値が大きくなる評価値であれば、評価値が最大となることを所定の条件とすればよい。
【0085】
例えば、評価値を式(1)で計算した場合、所定の条件は、評価値が最小となることである。すなわち、制御装置10の制御部は、省エネ制御運転条件に関する第1評価値213と非省エネ制御運転条件に関する第2評価値214とを比較し、第1評価値213が第2評価値214よりも小さければ、次の時間区間の制御方法を省エネ制御に決定する。一方、第1評価値213が第2評価値214よりも大きければ、制御装置10の制御部は、次の時間区間の制御方法を非省エネ制御に決定する。
【0086】
ここでは、直後の時間区間における制御方法を決定する例を説明したが、連続する複数の時間区間について運転条件を予測していれば、連続する複数の時間区間について制御方法を決定してもよい。
【0087】
上述のように、制御装置10の制御部は、制御方法ごとの運転条件に関する情報の差を示す評価値に基づいて、次の時間区間に空調機が動作する制御方法を決定する。
【0088】
例えば、制御装置10の制御部は、運転条件に関する情報を所定の区間に区分した際に、運転条件に関する情報が区分された区間で実行していない制御方法を、次の時間区間に空調機が動作する制御方法に決定してもよい。言い替えると、制御装置10の制御部は、設定温度と外気温との組み合わせについて運転データを収集していない制御方法を、次の時間区間の制御方法に決定してもよい。
【0089】
また、例えば、制御装置10の制御部は、運転条件に関する情報を所定の区間に区分した際に全ての区間で全ての制御方法が実行されるように制御方法を決定してもよい。言い替えると、制御装置10の制御部は、設定温度と外気温との全ての組み合わせについて1以上の運転データを収集するように次の時間区間の制御方法を決定してもよい。
【0090】
また、例えば、制御装置10の制御部は、運転条件に関する情報を所定の区間に区分した際に所定の範囲に含まれる区間で全ての制御方法が実行されるように制御方法を決定してもよい。言い替えると、制御装置10の制御部は、予め定めた範囲の設定温度と予め定めた範囲の外気温の全ての組み合わせについて1以上の運転データを収集するように次の時間区間の制御方法を決定してもよい。
【0091】
所定の範囲は、例えば、運転条件に関する情報を所定の区間に区分した際の全ての区間のうち、所定の割合で全ての制御方法が実行される範囲に設定すればよい。所定の割合は、例えば、8割程度であってもよい。言い替えると、制御装置10の制御部は、設定温度と外気温との全ての組み合わせのうち、8割程度の組み合わせについて1以上の運転データを収集するように次の時間区間の制御方法を決定してもよい。そのような設定温度と外気温との組み合わせは空調機の設置環境にもよるが、一例として、冷房では外気温が25~37℃であり、設定温度が22~27℃である範囲が挙げられる。また、暖房では外気温が0~15℃であり、設定温度が20~25℃である範囲が挙げられる。
【0092】
図5に戻って説明する。ステップS2において、制御装置10の制御部は、ステップS1で決定した制御方法で運転するように空調機を制御する。具体的には、制御装置10の制御部は、ステップS1で決定した制御方法に変更するための制御信号を室外機20に送信する。室外機20は制御装置10から受信した制御信号に基づいて制御方法を変更する。
【0093】
なお、ステップS1で決定した制御方法が現在動作している制御方法と同一である場合、ステップS2はスキップすればよい。
【0094】
ステップS3において、制御装置10の制御部は、学習期間が終了したか否かを判定する。学習期間が終了した場合(YES)、制御装置10の制御部はステップS4に処理を進める。一方、学習期間が終了していない場合(NO)、制御装置10の制御部はステップS1に処理を戻す。
【0095】
学習期間の終了条件は、運転条件の出現範囲に基づく条件であってもよい。例えば、学習期間の終了条件は、運転条件に関する情報を所定の区間に区分した際に全ての区間で全ての制御方法が実行されたとき、としてもよい。また、例えば、運転条件に関する情報を所定の区間に区分した際に所定の範囲に含まれる区間で全ての制御方法が実行されたとき、としてもよい。
【0096】
学習期間の終了条件は、運転条件に関する情報の情報量に基づく条件であってもよい。例えば、運転条件に関する情報の情報量が、制御方法ごとの空調制御の性能評価指標を算出可能な情報量となったとき、としてもよい。性能評価指標を算出可能な情報量は、性能評価指標の種類に応じて予め定めておけばよい。例えば、冷房運転における運転データと暖房運転における運転データとを考慮し、学習期間の開始から1年間と定めてもよい。
【0097】
ステップS4において、制御装置10の制御部は、学習期間における空調制御の性能を評価した学習期間の性能評価レポートを出力する。学習期間の性能評価レポートは、制御方法ごとの空調制御の性能評価指標に基づいて作成される。空調制御の性能評価指標は、関数であってもよく、値であってもよい。性能評価指標は、運転条件をパラメータとする関数、統計モデル又は機械学習モデルを用いて、作成してもよい。
【0098】
空調制御の性能評価指標は、同一の運転条件における制御方法ごとの性能を比較可能な評価指標である。同一の運転条件とは、空調機の使用条件に関する情報又は空調機が使用される環境条件に関する情報が、その情報の取得単位において制御方法の間で同等であることを意味する。言い替えると、同一の運転条件とは、室内温度、室内湿度、設定温度、空調熱負荷、空調空間内の人数、空調空間のレイアウト、曜日、時刻、外気温、外気湿度、日射又は季節の少なくとも1つが同等と評価できることを意味する。
【0099】
性能評価指標の値は、すべての運転条件にわたる空調制御の性能を示す値である。空調制御の性能は、例えば、省エネルギー性、快適性、温室効果ガス削減量、経済性、信頼性又は制御性を示す指標である。省エネルギー性を示す指標は、例えば、制御方法間の消費電力量の差である。
【0100】
性能評価指標の関数は、運転条件に応じた空調制御の性能を示す関数である。例えば、評価指標の関数は、設定温度と外気温との組み合わせを入力とし、制御方法ごとの消費エネルギー量の差分を出力する関数である。評価指標の関数は、例えば、設定温度を示す行と外気温を示す列とを有し、消費エネルギー量の差分を示す値をもつ行列である。評価指標の関数は、3つ以上の運転条件の項目を入力とする関数であってもよい。
【0101】
≪学習期間の性能評価処理≫
図10は、本実施形態における学習期間の性能評価処理の一例を示すフローチャートである。学習期間の性能評価処理は、図5のステップS4に対応する。
【0102】
ステップS4-1において、制御装置10の制御部は、制御方法ごとの空調制御の性能を取得する。空調制御の性能は、運転条件ごとに収集された運転データに基づいて、運転条件ごとに取得される。空調制御の性能は、例えば、消費エネルギー量である。制御装置10の制御部は、外気温と設定温度との組み合わせごとに運転データから消費エネルギー量を取得し、それらの平均値を計算する。これにより、制御方法ごとに、運転条件ごとの空調制御の性能を示す情報が生成される。
【0103】
ステップS4-2において、制御装置10の制御部は、ステップS4-1で生成した運転条件ごとの空調制御の性能を示す情報に基づいて、制御方法ごとに予測モデルを構築する。制御装置10の制御部は、例えば、制御方法ごとに空調制御の性能の差分を示す関数(差分関数)に基づいて予測モデルを構築する。制御装置10の制御部は、構築済みの予測モデルを記憶部に記憶する。
【0104】
予測モデルは、例えば、制御方法ごとに空調制御の性能の差分を示す関数(差分関数)に基づいて、構築される。例えば、制御装置10の制御部は、制御方法ごとに、運転条件を説明変数とし、平均消費エネルギー量を目的変数とする線形回帰を行う。次に、制御装置10の制御部は、制御方法ごとに、各運転条件における回帰結果として得られる平均消費エネルギー量の差分を計算する。これにより、制御方法ごとに差分関数が生成される。なお、差分関数は、運転状態又は運転条件に基づいて複数生成してもよい。
【0105】
図11は、差分関数の一例を示す図である。図11に示されているように、差分関数は、設定温度を示す行と外気温を示す列とを有し、設定温度と外気温との組み合わせにおいて制御方法ごとの平均消費エネルギー量の差分を値にもつ行列である。図11は、省エネ制御で運転したときの性能を評価するための差分関数(省エネ制御差分関数)である。省エネ制御差分関数は、省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量から非省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量を減算した差分を示す関数である。
【0106】
図11に示す差分関数では、平均消費エネルギー量の差分は、非省エネ制御で運転したときの平均消費エネルギー量に対する省エネ制御で運転したときの平均消費エネルギー量の比で表現される。すなわち、平均消費エネルギー量の差分は、"(省エネ制御の平均消費エネルギー量-非省エネ制御の平均消費エネルギー量)/非省エネ制御の平均消費エネルギー量"で計算される。
【0107】
制御装置10の制御部は、省エネ制御差分関数に加えて、非省エネ制御で運転したときの性能を評価するための差分関数(非省エネ制御差分関数)を生成する。非省エネ制御差分関数は、非省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量から省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量を減算した差分を示す関数となる。
【0108】
非省エネ制御差分関数では、平均消費エネルギー量の差分は、省エネ制御で運転したときの平均消費エネルギー量に対する非省エネ制御で運転したときの平均消費エネルギー量の比で表現される。すなわち、平均消費エネルギー量の差分は、"(非省エネ制御の平均消費エネルギー量-省エネ制御の平均消費エネルギー量)/省エネ制御の平均消費エネルギー量"で計算される。
【0109】
図10に戻って説明する。ステップS4-3において、制御装置10の制御部は、ステップS4-2で生成した差分関数に基づく予測モデルに基づいて、制御方法ごとに、学習期間全体でその制御方法で運転した場合の空調制御の性能を予測する。学習期間では、制御方法を切り替えながら空調機を運転させるため、ある制御方法で運転した期間では、その同一期間における他の制御方法で運転した運転データが存在しない。しかしながら、差分関数を用いれば、ある制御方法で運転したときに、異なる期間にて同一条件で実測した空調制御の性能を考慮できるため、他の制御方法で運転した場合の空調制御の性能を予測することができる。
【0110】
本実施形態における性能評価指標の計算方法について、図12を参照しながらより詳しく説明する。図12は、性能評価指標の計算方法の一例を説明するための図である。図12に示されているように、学習期間では、空調機は、省エネ制御(ON)と非省エネ制御(OFF)とを交互に切り替えながら動作する。そのため、消費エネルギー量の実測値は、省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量が測定された時間区間と、非省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量が測定された時間区間とが混在することになる(切り替え運転の実測値)。
【0111】
このとき、省エネ制御差分関数を用いて、非省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量から省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量を予測すると、常時省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量(常時省エネ制御の予測値)を学習期間全体にわたって得ることができる。同様に、非省エネ制御差分関数を用いて、省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量から非省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量を予測すると、常時非省エネ制御で運転したときの消費エネルギー量(常時非省エネ制御の予測値)を学習期間全体にわたって得ることができる。
【0112】
図10に戻って説明する。ステップS4-4において、制御装置10の制御部は、ステップS4-3で予測した制御方法ごとの空調制御の性能に基づいて、学習期間全体における空調制御の性能を計算する。例えば、制御装置10の制御部は、制御方法ごとに、学習期間全体における消費エネルギー量の総和を計算する(図12の合計消費電力の予測値)。
【0113】
ステップS4-5において、制御装置10の制御部は、学習期間の性能評価レポートを作成する。次に、制御装置10の制御部は、学習期間の性能評価レポートを端末装置40に送信する。制御装置10の制御部は、電子メール等の手段によりインターネット経由で学習期間の性能評価レポートを示す電子データを端末装置40に送信してもよい。端末装置40は、制御装置10から学習期間の性能評価レポートを受信する。そして、端末装置40は、受信した学習期間の性能評価レポートを表示装置等に出力する。
【0114】
学習期間の性能評価レポートには、制御方法ごとの空調制御の性能が比較可能な状態で表示される。制御方法ごとの空調制御の性能は、予め定めた時間間隔ごとの空調制御の性能、及び学習期間全体の空調制御の性能が含まれてもよい。
【0115】
図13は、学習期間の性能評価レポートの一例を示す図である。図13に示されているように、学習期間の性能評価レポート1000には、学習期間における制御方法ごとに推定される消費電力量の差分が表示されている。例えば、性能評価レポート1000には、常時省エネONした場合の削減効果、及び期間中の省エネ効果が表示されている。常時省エネONした場合の削減効果は、常時省エネ制御で運転したと仮定したときの消費電力量と、常時非省エネ制御で運転したと仮定したときの消費電力量からの削減量とを、所定の時間区間(ここでは1か月)ごとに集計したグラフである。期間中の省エネ効果は、常時省エネ制御で運転したと仮定したときの消費電力量と、常時非省エネ制御で運転したと仮定したときの消費電力量からの削減量を、学習期間全体で集計したグラフである。
【0116】
学習期間の性能評価レポートには、性能を評価するための参考情報が表示されてもよい。図13に示す例では、消費電力量の削減量(kWh)、消費電力量の削減率(%)、電力料金の削減金額(円)、CO2削減量(t-CO2)等が表示されている。削減金額は、削減量に電力単価(図13の例では20円)を乗じた金額である。CO2削減量は、消費電力量の削減量に排出係数(図13の例では0.000441)を乗じた値である。
【0117】
学習期間の性能評価レポートには、快適性を評価するための指標が表示されてもよい。図13に示す例では、快適性の評価指標として、室温分布及び設定温度分布が表示されている。室温分布は、制御方法ごとの出現頻度の差を室内温度ごとに比較したグラフである。設定温度分布は、制御方法ごとの出現頻度の差を設定温度ごとに比較したグラフである。
【0118】
上述のように、学習期間の性能評価レポートには、複数の制御方法の間の性能評価指標の比較結果を示す情報が表示されているため、制御方法ごとの消費電力の削減効果を確認できる。また、学習期間の性能評価レポートには、削減効果と共に快適性の評価指標が示されているため、制御方法を変更することで、快適性に与える影響を確認できる。
【0119】
ステップS5において、制御装置10の制御部は、空調機の制御方法を設定する。制御装置10の制御部は、空調システム1の利用者又は管理者等の操作に応じて、空調機の制御方法を設定してもよい。本実施形態では、空調機の制御方法を省エネ制御に設定したものとして説明を続ける。
【0120】
なお、制御装置10の制御部は、設定した制御方法の特性に応じて、ステップS6以降の処理を実行しなくてもよい。例えば、省エネ制御を提供する場合に空調機の制御方法を非省エネ制御に設定した場合は、ユーザが省エネ制御を利用しないと判断したことを意味するため、ステップS6以降の処理を実行しなくてもよい。また、例えば、一部の部屋の用途が変更され、省エネ性より快適性を優先する場合に空調機の制御方法を非省エネ制御に設定する場合がある。この場合は一時的にステップS6以降の処理を実行しなくてもよい。また、利用者又は管理者の要求に応じて制御方法の設定が変更された場合はステップS6以降の処理を実行してもよい。
【0121】
ステップS6において、制御装置10の制御部は、予測モデルを再構築する必要があるか否かを判定する。予測モデルを再構築する必要がある場合(YES)、制御装置10の制御部は、ステップS7に処理を進める。一方、予測モデルを再構築する必要がない場合(NO)、制御装置10の制御部は、ステップS7をスキップし、ステップS8に処理を進める。
【0122】
制御装置10の制御部は、予め定めた評価間隔で予測モデルの再構築の要否を判定してもよい。制御装置10の制御部は、予め定めた判定間隔で予測モデルの再構築の要否を判定してもよいし、評価間隔及び判定間隔とは異なる時間間隔で予測モデルの再構築の要否を判定してもよい。
【0123】
制御装置10の制御部は、学習期間の運転条件に関する情報及び運用期間の運転条件に関する情報に基づく評価値を、閾値と比較することで、予測モデルを再構築する必要があるか否かを判定する。学習期間の運転条件に関する情報は、学習期間に収集された運転データに基づいて取得される。運用期間の運転条件に関する情報は、運用期間に収集された運転データに基づいて取得される。
【0124】
評価値は、例えば、運転条件が異なる複数の期間の間の運転条件の差を示す値である。評価値の計算方法は、ステップS1-4で計算した評価値と同様である。
【0125】
予測モデルを再構築する必要があるか否かの判定条件は、評価値の種類により異なる。運転条件の差が大きいほど値が大きくなる評価値であれば、評価値が閾値以上の場合、予測モデルを再構築する必要があると判定する。一方、運転条件の差が小さいほど値が大きくなる評価値であれば、評価値が閾値以下の場合、予測モデルを再構築する必要があると判定する。
【0126】
予測モデルを再構築する必要があるか否かの判定条件は、運転条件の出現範囲に基づく条件であってもよい。例えば、制御装置10の制御部は、学習期間で取得した運転条件に関する情報が区分された区間とは異なる区間に、評価期間で取得された運転条件に関する情報が区分されたとき、としてもよい。学習期間で運転条件に関する情報が取得されていない区間は、予測モデルが構築されていないため、その区間に関する性能評価指標を算出可能となるまで、各制御方法で運転するように制御し、その運転データに基づいて予測モデルを再構築するとよい。
【0127】
≪予測モデルの再構築処理≫
図14は、本実施形態における予測モデルの再構築処理の一例を示すフローチャートである。予測モデルの再構築処理は、図5のステップS7に対応する。
【0128】
ステップS7-1において、制御装置10の制御部は、学習期間に収集された運転データに基づいて、運転状態に関する情報を取得する。学習期間は、制御方法を切り替えながら空調機を動作させた期間である。言い替えると、学習期間は、ステップS4-2において予測モデルを構築する前に運転データを収集した期間である。
【0129】
ステップS7-2において、制御装置10の制御部は、学習期間に収集された運転データに基づいて、運転条件に関する情報を取得する。学習期間は、ステップS7-1において運転状態を取得した対象の期間と同じである。
【0130】
ステップS7-3において、制御装置10の制御部は、次の時間区間における空調機の運転条件を取得する。次の時間区間における運転条件の取得方法は、ステップS1-3において次の時間区間における運転条件を取得した方法と同じ方法を用いてもよいし、異なる方法を用いてもよい。
【0131】
なお、次の時間区間とは、今回制御方法を決定してから次回制御方法を決定するまでの時間区間である。次の時間区間の時間長は、予め定めた切り替え間隔としてもよい。例えば、本実施形態では、切り替え間隔は24時間であるため、次の時間区間には直後の24時間が含まれるとしてもよい。また、次の時間区間の時間長は、予め定めた判定間隔としてもよいし、切り替え間隔及び判定間隔とは異なる時間長としてもよい。
【0132】
ここでは、直後に続く単一の時間区間における運転条件を予測する例を説明したが、連続する複数の時間区間における運転条件を予測してもよい。
【0133】
ステップS7-4において、制御装置10の制御部は、制御方法ごとに、運転条件に関する情報に基づいて評価値を計算する。評価値は、制御方法の間の運転条件の差を示す値である。評価値の計算方法は、ステップS1-4で評価値を計算した方法と同様である。
【0134】
ステップS7-5において、制御装置10の制御部は、ステップS7-4で計算した評価値に基づいて、次の時間区間における空調機の制御方法を決定する。具体的には、制御装置10の制御部は、制御方法ごとの評価値が所定の条件を満たすように制御方法を決定する。所定の条件は、ステップS1-5において用いる条件と同じである。
【0135】
ステップS7-6において、制御装置10の制御部は、ステップS7-5で決定した制御方法で運転するように空調機を制御する。具体的には、制御装置10の制御部は、ステップS7-5で決定した制御方法に変更するための制御信号を室外機20に送信する。室外機20は制御装置10から受信した制御信号に基づいて制御方法を変更する。
【0136】
なお、ステップS7-5で決定した制御方法が現在動作している制御方法と同一である場合、ステップS7-6はスキップすればよい。
【0137】
ステップS7-7において、制御装置10の制御部は、再学習期間が終了したか否かを判定する。再学習期間は、予測モデルを再構築するための運転データを収集するための期間である。再学習期間は、予め定めた期間であってもよい。再学習期間は、予測モデルを再構築するために十分な運転データが収集されるまでとしてもよい。再学習期間が終了した場合(YES)、制御装置10の制御部はステップS7-8に処理を進める。一方、再学習期間が終了していない場合(NO)、制御装置10の制御部はステップS7-1に処理を戻す。
【0138】
再学習期間の終了条件は、運転条件の出現範囲に基づく条件であってもよい。例えば、再学習期間の終了条件は、運転条件に関する情報を所定の区間に区分した際に上記の異なる区間で全ての制御方法が実行されたとき、としてもよい。
【0139】
再学習期間の終了条件は、運転条件に関する情報の情報量に基づく条件であってもよい。例えば、運転条件に関する情報の情報量が、上記の異なる区間における制御方法ごとの空調制御の性能評価指標を算出可能な情報量となったとき、としてもよい。
【0140】
再学習期間の終了条件は、ステップS3において用いた学習期間の終了条件と同じ条件であってもよいし、異なる条件であってもよい。
【0141】
ステップS7-8において、制御装置10の制御部は、学習期間において収集された運転データ、及び再学習期間において収集された運転データに基づいて予測モデルを再構築する。具体的には、制御装置10の制御部は、学習期間において収集された運転データ及び再学習期間において収集された運転データを用いて、ステップS4-2において予測モデルを構築した方法と同じ方法で予測モデルを構築する。制御装置10の制御部は、S7-8において再構築した予測モデルを記憶部に記憶する。
【0142】
なお、ステップS7-8で予測モデルを再構築した後に、再度ステップS6で予測モデルを再構築する必要があるか否かを判定する場合には、学習期間において収集された運転データ及び再学習期間において収集された運転データの両方に基づいて、学習期間の運転条件に関する情報を取得する。
【0143】
ステップS7-9において、制御装置10の制御部は、空調機の制御方法を、ステップS5において設定した制御方法に設定する。
【0144】
図5に戻って説明する。ステップS8において、制御装置10の制御部は、ステップS5又はステップS7-9で設定した制御方法で運転するように空調機を制御する。具体的には、制御装置10の制御部は、ステップS5又はステップS7-9で設定した制御方法に変更するための制御信号を室外機20に送信する。室外機20は、制御装置10から受信した制御信号に基づいて制御方法を変更する。
【0145】
ステップS9において、制御装置10の制御部は、現在の評価期間が終了したか否かを判定する。現在の評価期間が終了した場合(YES)、制御装置10の制御部はステップS10に処理を進める。一方、現在の評価期間が終了していない場合(NO)、制御装置10の制御部はステップS6に処理を戻す。
【0146】
評価期間の終了条件は、予め定めた日時に基づく条件であってもよい。例えば、現在の日時が予め定めた日時を過ぎたとき、としてもよい。
【0147】
評価期間の終了条件は、予め定めた期間に基づく条件であってもよい。例えば、評価期間が開始してから予め定めた期間が経過したときとしてもよい。
【0148】
評価期間が終了していない場合でも、空調システム1の利用者又は管理者等の操作に応じて評価期間を終了し、当該評価期間の性能評価を実施してもよい。
【0149】
ステップS10において、制御装置10の制御部は、現在の評価期間における空調制御の性能を評価した運用期間の性能評価レポートを出力する。運用期間の性能評価レポートは、ステップS4-2で構築した予測モデル(又はステップS7-8で再構築した予測モデル)を用いて作成される。例えば、運用期間の性能評価レポートは、省エネ制御で運転したことによって、非省エネ制御で運転した場合と比較して、どの程度の省エネルギー効果が生じたかを評価したレポートである。
【0150】
≪運用期間中の性能評価処理≫
図15は、本実施形態における運用期間中の性能評価処理の一例を示すフローチャートである。運用期間中の性能評価処理は、図5のステップS10に対応する。
【0151】
ステップS10-1において、制御装置10の制御部は、現在の制御方法における空調制御の性能を取得する。空調制御の性能は、現在の評価期間において収集された運転データに基づいて、運転条件ごとに取得される。これにより、現在の制御方法における運転条件ごとの空調制御の性能を示す情報が生成される。
【0152】
なお、空調制御の性能は、空調機の運転制御状態ごとに取得してもよい。空調機運転制御状態は、例えば、起動中、定常運転中、設定温度変更後等を含んでもよい。空調機運転制御状態は、これらに限定されず、空調制御の性能を評価する意味のある状態の種類を任意に定めることができる。
【0153】
ステップS10-2において、制御装置10の制御部は、ステップS10-1で生成した運転条件ごとの空調制御の性能を示す情報に基づいて、他の制御方法における運転条件ごとの空調制御の性能を予測する。他の制御方法における空調制御の性能は、ステップS4-2で構築した予測モデル(又はステップS7-8で再構築した予測モデル)に基づいて予測される。なお、他の制御方法における空調制御の性能は、運転条件をパラメータとする関数又は統計モデルに基づいて計算してもよい。
【0154】
図16は、運用期間の性能評価の一例を説明するための図である。図16に示されているように、運用期間の性能評価1100では、省エネ制御における消費電力の推移と、非省エネ制御における消費電力の推移とを比較することで、制御方法ごとの空調制御の性能を評価する。運用期間の性能評価では、空調機の運転制御状態ごとに、制御方法ごとの空調制御の性能を比較してもよい。
【0155】
図15に戻って説明する。ステップS10-3において、制御装置10の制御部は、運用期間の性能評価レポートを作成する。次に、制御装置10の制御部は、運用期間の性能評価レポートを端末装置40に送信する。端末装置40は、制御装置10から運用期間の性能評価レポートを受信する。そして、端末装置40は、受信した運用期間の性能評価レポートを表示装置等に出力する。
【0156】
図17は、運用期間の性能評価レポートの一例を示す図である。図17に示されているように、運用期間の性能評価レポート1200には、現在の評価期間における消費電力量の実績値と、現在の評価期間において他の制御方法で運転したと仮定したときの消費電力量の予測値との差分が表示されている。例えば、性能評価レポート1200には、推定削減効果、及び期間中の省エネ効果が表示されている。推定削減効果は、常時省エネ制御で運転したときの消費電力量と、常時非省エネ制御で運転したと仮定したときの消費電力量からの削減量とを、所定の時間区間(ここでは1か月)ごとに集計したグラフである。期間中の省エネ効果は、常時省エネ制御で運転したときの消費電力量と、常時非省エネ制御で運転したと仮定したときの消費電力量からの削減量を、現在の評価期間全体で集計したグラフである。
【0157】
運用期間の性能評価レポートには、快適性を評価するための指標が表示されてもよい。図17に示す例では、快適性の評価指標として、室温分布が表示されている。室温分布は、制御方法ごとの出現頻度の差を室内温度ごとに比較したグラフである。室温分布は、例えば、常時省エネ制御で運転したときの出現頻度の実績値と、常時非省エネ制御で運転したと仮定したときの出現頻度の予測値とを並べて表示してもよい。室温分布は、例えば、常時省エネ制御で運転したときの出現頻度の実績値のみを表示してもよい。
【0158】
上述のように、運用期間の性能評価レポートには、複数の制御方法の間の性能評価指標の比較結果を示す情報が表示されているため、制御方法ごとの消費電力の削減効果を確認できる。また、運用期間の性能評価レポートには、削減効果と共に快適性の評価指標が示されているため、制御方法を固定したことで、快適性に与えた影響を確認できる。
【0159】
図13に示した学習期間の性能評価レポート1000と、図17に示した運用期間の性能評価レポート1200とを比較すると、制御方法ごとの性能評価指標を異なる方法で比較していることがわかる。学習期間は、制御方法ごとの空調制御の性能を評価することが目的である。一方、運用期間は、制御方法を固定したことで実現した空調制御の性能を評価することが目的である。学習期間の性能評価レポートと運用期間の性能評価レポートとで制御方法ごとの性能評価指標の比較方法を変更することで、空調制御の性能を適切に評価できる。
【0160】
<まとめ>
以上、本開示の各実施形態によれば、制御方法ごとの空調制御の性能の差を評価可能な情報を取得できる。本実施形態における制御装置10は、制御方法ごとの運転条件に関する情報の差に基づいて空調機が動作する制御方法を決定する。本実施形態によれば、運転条件に関する情報の差に基づいて適切に制御方法を決定できるため、制御方法ごとの空調制御の性能の差を評価可能な情報を取得できる。
【0161】
本実施形態における制御装置10は、運転条件に関する情報をある区間に区分した際に、運転条件に関する情報が区分された区間で実行していない制御方法を、空調機が動作する制御方法に決定する。本実施形態によれば、区間ごとに実行していない制御方法で空調機を動作させるため、運転条件に関する情報が区分される区間ごとに、制御方法ごとの空調制御の性能の差を評価可能な情報を取得できる。
【0162】
本実施形態における制御装置10は、所定の期間において取得した運転条件に関する情報及び運転状態に関する情報に基づいて性能評価指標を出力する。本実施形態によれば、所定の期間において制御方法ごとの空調制御の性能を評価できる。
【0163】
本実施形態における制御装置10は、所定の範囲に区分される運転条件に関する情報が、制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標を算出可能な情報量となるまで、制御方法を決定する。本実施形態によれば、所定の範囲において空調制御の性能を評価可能な性能評価指標を出力することができる。
【0164】
本実施形態における制御装置10は、所定の期間において取得した運転条件に関する情報に基づいて性能評価指標を出力し、所定の期間以降に取得した運転条件に関する情報が、所定の期間に取得された運転条件に関する情報が区分された区間と異なる区間に区分される場合、異なる区間で全ての制御方法を実行すべく制御方法を決定する。所定の期間以降に取得した運転条件に関する情報が異なる区間に区分されると、その区間では性能評価指標が出力されない。本実施形態によれば、性能評価指標を出力した後に運転条件が変化したときであっても、運転条件ごとの空調制御の性能を制御方法ごとに評価することができる。
【0165】
本実施形態における制御装置10は、制御方法の間の性能評価指標の比較結果を示す情報を出力し、所定の期間と所定の期間以降とで、性能評価指標を異なる方法で比較する。制御方法を切り替えて空調機を動作させる期間と、制御方法を固定して空調機を動作させる期間とでは、性能評価指標を参照する目的が異なる。本実施形態によれば、性能評価指標を参照する目的に応じて、適切な評価方法で空調制御の性能を比較できる。
【0166】
[補足]
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)のようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等の機器を含むものとする。
【0167】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0168】
10 制御装置
20 室外機
30 室内機
40 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御部を有する制御装置であって、
前記制御部は、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機が動作する前記制御方法を決定し、
決定した前記制御方法で動作した前記空調機の運転状態に関する情報を取得し、
前記運転条件に関する情報は、前記空調機の使用条件に関する情報及び前記空調機が使用される環境条件に関する情報を含む、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記運転条件に関する情報をある区間に区分した際に、前記運転条件に関する情報が区分された前記区間で実行していない前記制御方法を、前記空調機が動作する前記制御方法に決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は
記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報及び前記運転状態に関する情報に基づき、前記制御方法による空調制御の性能評価指標を出力する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
所定の期間において前記制御方法を決定し、
前記所定の期間において取得した前記運転条件に関する情報及び前記運転状態に関する情報に基づいて前記性能評価指標を出力する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
所定の範囲に区分される前記運転条件に関する情報が、前記制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標を算出可能な情報量となるまで、前記制御方法を決定する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記所定の期間以降において、前記運転条件に関する情報を取得し、
前記運転条件に関する情報をある区間に区分した際に、前記所定の期間に取得された前記運転条件に関する情報が区分された前記区間と異なる区間に区分される場合、前記異なる区間で実行していない前記制御方法を、前記空調機が動作する前記制御方法に決定する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記異なる区間に区分される前記運転条件に関する情報が、前記制御方法ごとの性能に関する比較可能な評価指標を算出可能な情報量となった場合、前記性能評価指標を更新する、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御部を有する制御装置であって、
前記制御部は、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとに、当該制御方法で動作したときの前記制御方法の間の前記運転条件に関する情報の差を示す評価値を算出し、
前記制御方法ごとに算出した前記評価値が最小となる前記制御方法に、前記空調機が動作する前記制御方法を決定し、
決定した前記制御方法で動作した前記空調機の運転状態に関する情報を取得する、
制御装置。
【請求項9】
前記評価値は、前記運転条件ごとの前記空調機の運転時間、前記運転条件ごとの前記空調機の運転頻度、前記運転条件の出現範囲、前記運転条件の出現パターン、又は前記空調機の運転時間に関する情報のうち、少なくとも1つ以上の情報に基づいて算出された値の、前記制御方法間における差を示す、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記性能評価指標を外部の表示装置に表示する、
請求項3から7のいずれかに記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記制御方法の間の前記性能評価指標の比較結果を示す情報を出力し、
前記所定の期間と前記所定の期間以降とで、前記性能評価指標を異なる方法で比較する、
請求項4から7のいずれかに記載の制御装置。
【請求項12】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部が、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機が動作する前記制御方法を決定し、
決定した前記制御方法で動作した前記空調機の運転状態に関する情報を取得し、
前記運転条件に関する情報は、前記空調機の使用条件に関する情報及び前記空調機が使用される環境条件に関する情報を含む、
空調制御方法。
【請求項13】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部が、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとに、当該制御方法で動作したときの前記制御方法の間の前記運転条件に関する情報の差を示す評価値を算出し、
前記制御方法ごとに算出した前記評価値が最小となる前記制御方法に、前記空調機が動作する前記制御方法を決定し、
決定した前記制御方法で動作した前記空調機の運転状態に関する情報を取得する、
空調制御方法。
【請求項14】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部に、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとの前記運転条件に関する情報の差に基づいて前記空調機を動作させる前記制御方法を決定し、
決定した前記制御方法で動作した前記空調機の運転状態に関する情報を取得する、
処理を実行させ
前記運転条件に関する情報は、前記空調機の使用条件に関する情報及び前記空調機が使用される環境条件に関する情報を含む、
プログラム。
【請求項15】
複数の制御方法を切り替えて動作可能な空調機を制御する制御装置が有する制御部に、
前記空調機の運転条件に関する情報を取得し、
前記制御方法ごとに、当該制御方法で動作したときの前記制御方法の間の前記運転条件に関する情報の差を示す評価値を算出し、
前記制御方法ごとに算出した前記評価値が最小となる前記制御方法に、前記空調機を動作させる前記制御方法を決定し、
決定した前記制御方法で動作した前記空調機の運転状態に関する情報を取得する、
処理を実行させるためのプログラム。