(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154428
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】非極性溶剤に分散可能な金属酸化物ナノ粒子、これを含むインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物及びその製造方法、並びにこれを含む発光素子及びディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/32 20140101AFI20241023BHJP
C09D 11/36 20140101ALI20241023BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20241023BHJP
H10K 71/13 20230101ALI20241023BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20241023BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20241023BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241023BHJP
C01G 9/00 20060101ALI20241023BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C09D11/32
C09D11/36
H10K50/115
H10K71/13
H10K50/16
H10K85/10
B41M5/00 120
C01G9/00 B
B41J2/01 501
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067545
(22)【出願日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】10-2023-0050939
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】524132656
【氏名又は名称】▲韓▼国▲韓▼松化学有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】朴 藝瑟
(72)【発明者】
【氏名】金 度亨
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ソ▼▲マン▼
(72)【発明者】
【氏名】盧 在洪
(72)【発明者】
【氏名】孫 ▲尚▼賢
(72)【発明者】
【氏名】李 大熙
(72)【発明者】
【氏名】金 京南
(72)【発明者】
【氏名】南 春來
(72)【発明者】
【氏名】尹 奎▲チョル▼
(72)【発明者】
【氏名】河 成旻
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
3K107
4G047
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FD20
2H186FB04
2H186FB28
2H186FB56
3K107AA05
3K107BB01
3K107DD53
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3K107DD70
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3K107DD78
3K107DD84
3K107DD87
3K107FF03
3K107FF05
3K107FF07
3K107FF14
3K107GG08
4G047AA04
4G047AB02
4G047AC03
4G047AD03
4J039BE01
4J039CA07
4J039EA24
4J039EA41
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】非極性溶剤に分散可能な金属酸化物ナノ粒子、これを含むインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物及びその製造方法、並びにこれを含む発光素子及びディスプレイを提供する。
【解決手段】本発明は、金属酸化物ナノ粒子、これを含むインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物及びその製造方法、並びにこれを含んで製造される発光素子及びディスプレイに係り、具体的には、非極性溶剤に分散可能であり、極性溶剤タイプの発光層がエッチングされることを防止することができる金属酸化物ナノ粒子、これを含むインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物及びその製造方法、並びにこれを含む発光素子及びディスプレイに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物ナノ粒子であって、
前記金属酸化物ナノ粒子は、表面改質され、
非極性溶剤に分散可能である、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項2】
前記金属酸化物ナノ粒子の表面は、疎水性モイエティを有する有機リガンドで改質される、請求項1に記載のインクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項3】
前記非極性溶剤は、少なくとも2種の溶剤を混合したものである、請求項1に記載のインクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項4】
前記非極性溶剤は、シクロヘキシルベンゼンを含む、請求項3に記載のインクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項5】
前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた金属1モルに対して0.0001~10モルの範囲で含まれる、請求項2に記載のインクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項6】
前記金属酸化物ナノ粒子は、亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子である、請求項1に記載のインクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項7】
前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化亜鉛(ZnO)のバンドギャップを増加させることができる金属が合金化された、請求項6に記載のインクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項8】
前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgO)である、請求項6に記載のインクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項9】
有機リガンドで表面改質された金属酸化物ナノ粒子と、
非極性溶剤と、を含み、
インクジェットによって吐出可能である、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項10】
前記非極性溶剤は、少なくとも2種の溶剤を混合した、請求項9に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項11】
前記非極性溶剤は、シクロヘキシルベンゼンを含む、請求項10に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項12】
前記非極性溶剤は、スチレン、ヘキサデカン、アニソール及びシクロヘキサノンを含む群から選択される1種以上の溶媒をさらに含む、請求項11に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項13】
混合した前記非極性溶剤は、
20℃での粘度が1~6cpsであり、
20℃での蒸気圧が0.001~0.1mmHgであり、
20℃での表面張力が30~40dyn/cmである、請求項10に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項14】
前記シクロヘキシルベンゼンとその他の溶剤との体積比は、7:3~20:1である、請求項11に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項15】
前記組成物は、
20℃での粘度が1.0~5.0cpsであり、
20℃での蒸気圧が0.6~45mmHgであり、
固形分含量が5~30重量%である、請求項9に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項16】
前記有機リガンドは、疎水性モイエティを有する有機リガンドである、請求項9に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項17】
前記金属酸化物ナノ粒子は、亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子である、請求項9に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項18】
前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化亜鉛(ZnO)のバンドギャップを増加させることができる金属が合金化された、請求項17に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項19】
前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgO)である、請求項17に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項20】
前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた金属1モルに対して0.0001~10モルの範囲で含まれる、請求項9に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物。
【請求項21】
金属酸化物ナノ粒子を製造した後、有機リガンドを添加して前記金属酸化物ナノ粒子の表面を改質し、非極性溶剤と混合することを含む、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法。
【請求項22】
前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた主な金属1モルに対して0.0001~10モルの範囲で含まれる、請求項21に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法。
【請求項23】
前記非極性溶剤は、
シクロヘキシルベンゼンと、
スチレン、ヘキサデカン、アニソール及びシクロヘキサノンを含む群から選択される1種以上の溶媒と、を混合して製造された、請求項21に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法。
【請求項24】
前記シクロヘキシルベンゼンとその他の溶剤との体積比は、7:3~20:1である、請求項23に記載のインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法。
【請求項25】
請求項9ないし20のうちいずれか1項に記載の組成物によって製造された電子輸送層を含む、発光素子。
【請求項26】
前記電子輸送層は、インクジェットプリンティングを通じて形成される、請求項25に記載の発光素子。
【請求項27】
請求項26に記載の発光素子を含む、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物ナノ粒子、これを含むインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物及びその製造方法、並びにこれを含んで製造される発光素子及びディスプレイに係り、具体的には、非極性溶剤に分散可能であり、極性溶剤タイプの発光層がエッチングされることを防止することができる金属酸化物ナノ粒子、これを含むインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物及びその製造方法、並びにこれを含む発光素子及びディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(Quantum dot: QD)は、いわゆる半導体ナノ結晶(semiconductor nanocrystals)であり、物質種類の変化なしに粒子サイズ別に異なる波長の光が発生して多様な色を作り出すことができ、既存の発光体よりも色純度及び光安定性が高いという長所があるので、次世代発光素子として注目されている。
【0003】
特に、ディスプレイ分野において新たなトレンドとなった量子ドットは、高分子マトリックスに分散され、複合体の形態にTV、LED以外に多様なディスプレイ、電子素子などに適用可能である。一方、カラーフィルタ用素材は、高い感度、基板への付着力、耐化学性、耐熱性などが要求される。従来、ディスプレイに適用するカラーフィルタは、一般的に、感光性レジスト組成物を使用してフォトマスクを適用した露光工程を通じて所望のパターンを形成し、次いで、現像工程を通じて非露光部を溶解させて除去する、パターニング工程を通じて形成されたが、捨てられる素材によるコスト上昇問題をもたらした。
【0004】
最近、画素に使用される材料の高級化、及びこれによるコスト上昇の解消のために、既存のスピンコーティングやスリットコーティングを行ってパターニングするよりも、所望の部分にのみ材料を使用し、材料の使用を最大限抑制する方法が関心を引いている。最も代表的な方法は、インクジェット方式であり、大きくバブルジェット方式及びピエゾ方式が挙げられるが、インクジェット方式は、所望の画素にのみ材料を使用するため、不要な材料の無駄を防止することができる。
【0005】
このように、インクジェットプリンティング方式の量子ドット溶液は多く研究されているが、インクジェット用の電子輸送層(ETL)組成物に係わる研究はほとんど行われていない。インクジェット用の電子輸送層(ETL)組成物に係わる先行発明としては、韓国公開特許第10-2007-0078615号公報(2007.08.01)に開示されている発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2007-0078615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、インクジェットプリンティング用の自発光ディスプレイに使用される量子ドット発光層の場合、溶剤タイプが明らかではなく、様々な種類の溶剤が研究開発されているが、極性溶剤タイプの発光層が使用される場合、同一の性質である極性溶剤タイプの電子輸送層インク組成物を使用すれば、前記発光層がエッチングされてしまうという技術的問題点がある。したがって、非極性溶剤に分散可能な金属酸化物ナノ粒子及び電子輸送層(ETL)組成物が要求されている。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、極性溶剤タイプの発光層を使用する場合、親水系である金属酸化物ナノ粒子の表面を改質して非極性溶剤に分散可能であり、粘度調節が容易であるので、インクジェットプリンティングが可能な金属酸化物ナノ粒子及び電子輸送層インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するための本発明の一側面によれば、金属酸化物ナノ粒子であって、
前記金属酸化物ナノ粒子は、表面改質され、
非極性溶剤に分散可能である、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0010】
好ましくは、前記金属酸化物ナノ粒子の表面は、疎水性モイエティ(moiety)を有する有機リガンドで改質される、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0011】
好ましくは、前記非極性溶剤は、少なくとも2種の溶剤を混合したものである、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0012】
好ましくは、前記非極性溶剤は、シクロヘキシルベンゼンを含むものである、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0013】
好ましくは、前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた金属1モルに対して0.0001~10モルの範囲で含まれる、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0014】
好ましくは、前記金属酸化物ナノ粒子は、亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子である、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0015】
好ましくは、前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化亜鉛(ZnO)のバンドギャップを増加させることができる金属が合金化された、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0016】
好ましくは、前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgO)である、インクジェットプリンティング用の金属酸化物ナノ粒子を提供する。
【0017】
本発明の他の側面において、有機リガンドで表面改質された金属酸化物ナノ粒子と、
非極性溶剤と、を含み、
インクジェットによって吐出可能である、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0018】
好ましくは、前記非極性溶剤は、少なくとも2種の溶剤を混合したものである、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0019】
好ましくは、前記非極性溶剤は、シクロヘキシルベンゼンを含むものである、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0020】
好ましくは、前記非極性溶剤は、スチレン、ヘキサデカン、アニソール及びシクロヘキサノンを含む群から選択される1種以上の溶媒をさらに含む、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0021】
好ましくは、混合した前記非極性溶剤は、
20℃での粘度が1~6cpsであり、
20℃での蒸気圧が0.001~0.1mmHgであり、
20℃での表面張力が30~40dyn/cmである、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0022】
好ましくは、前記シクロヘキシルベンゼンとその他の溶剤との体積比は、7:3~20:1である、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0023】
好ましくは、前記組成物は、
20℃での粘度が1.0~5.0cpsであり、
20℃での蒸気圧が0.6~45mmHgであり、
固形分含量が5~30重量%である、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0024】
好ましくは、前記有機リガンドは、疎水性モイエティを有する有機リガンドである、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0025】
好ましくは、前記金属酸化物ナノ粒子は、亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子である、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0026】
好ましくは、前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化亜鉛(ZnO)のバンドギャップを増加させることができる金属が合金化された、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0027】
好ましくは、前記亜鉛(Zn)を含有する金属酸化物ナノ粒子は、酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgO)である、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0028】
好ましくは、前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた金属1モルに対して0.0001~10モルの範囲で含まれる、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供する。
【0029】
本発明のさらに他の側面において、金属酸化物ナノ粒子を製造した後、有機リガンドを添加して前記金属酸化物ナノ粒子の表面を改質し、非極性溶剤と混合することを含む、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法を提供する。
【0030】
好ましくは、前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた主な金属1モルに対して0.0001~10モルの範囲で含まれる、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法を提供する。
【0031】
好ましくは、前記非極性溶剤は、
シクロヘキシルベンゼンと、
スチレン、ヘキサデカン、アニソール及びシクロヘキサノンを含む群から選択される1種以上の溶媒と、を混合して製造されたものである、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法を提供する。
【0032】
好ましくは、前記シクロヘキシルベンゼンとその他の溶剤との体積比は、7:3~20:1である、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物の製造方法を提供する。
【0033】
本発明のさらに他の側面において、前述の組成物によって製造された電子輸送層を含む、発光素子を提供する。
【0034】
好ましくは、前記電子輸送層は、インクジェットプリンティングを通じて形成される、発光素子を提供する。
【0035】
本発明のさらに他の側面において、前記発光素子を含む、ディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明の実施形態によれば、金属酸化物ナノ粒子の表面改質を通じて2種の非極性溶剤に混合することができ、インクジェット法による均一な吐出が容易である。
【0037】
また、極性溶剤型発光層を使用する際、発光層の上端に均一な成膜が可能なインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を提供することができ、極性溶剤型発光層のエッチング問題を解消することができる。
【0038】
これにより、本発明の電子輸送層インク組成物は、インクジェットプリンティング工程を通じて、発光素子、具体的には、自発光ディスプレイの作製に有用に適用可能であるだけでなく、簡単かつ安価なインクジェット工程の適用を通じて、商用化及び大型化により有利な効果を発揮することができる。
【0039】
本発明による効果は、上記に例示された内容によって制限されず、より多様な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明による実施例1及び比較例によって製造された金属酸化物ナノ粒子(ZnMgO)の吸収スペクトルをそれぞれ示す図面である。
【
図2】本発明による実施例1、2及び比較例で製造されたZnMgOのTGAグラフをそれぞれ示す図面である。
【
図3】本発明による実施例1、3及び比較例で製造されたZnMgOのFT-IRグラフをそれぞれ示す図面である。
【
図4】本発明による実施例1で製造された電子輸送層インク組成物を利用して基板上に形成された1ドロップイメージである。
【
図5】本発明による実施例1の電子輸送層インク組成物を利用して基板上に形成されたインク形状及びCRF(coffee ring factor)結果を示す図面である。
【
図6】比較例の電子輸送層インク組成物を利用して基板上に形成されたインク形状及びCRF結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明について説明する。
【0042】
本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって共通に理解される意味として使用できるであろう。また、通常使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にあるいは過度に解釈されない。
【0043】
また、本明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0044】
本明細書において、「有機基」は、C1-C30の直鎖または分枝鎖アルキル基、C2-C30の直鎖または分枝鎖アルケニル基、C2-C30の直鎖または分枝鎖アルキニル基を意味する。また、前記アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、それぞれ置換もしくは非置換のものである。
【0045】
本明細書において、「アルキル」は、炭素数1~30の直鎖または側鎖の飽和炭化水素に由来の1価置換基を意味する。その例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、iso-ブチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書において、「アルケニル」は、炭素-炭素二重結合を1個以上有する炭素数2~30の直鎖または側鎖の不飽和炭化水素に由来の1価置換基を意味する。その例としては、ビニル、アリル、イソプロぺニル、2-ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書において、「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を1個以上有する炭素数2~30の直鎖または側鎖の不飽和炭化水素に由来の1価置換基を意味する。その例としては、エチニル、n-プロピニル、n-ブタ-2-エニル、n-ヘキサ-3-エニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
<電子輸送層インク組成物>
本発明の一実施形態による電子輸送層インク組成物は、一般的なインクジェット法によって吐出可能であり、電子輸送層(ETL)を形成することができるインク組成物である。
【0049】
本発明の一実施形態による電子輸送層インク組成物は、有機リガンドで表面改質された金属酸化物ナノ粒子と、非極性溶剤とを含みうる。
【0050】
以下、前記電子輸送層インク組成物の組成を具体的に説明すれば下記の通りである。
【0051】
金属酸化物ナノ粒子
金属酸化物ナノ粒子は、当該分野において電子輸送層に使用される物質を制限なしに使用することができる。一例として、ドーパント物質として使用される通常の金属酸化物ナノ粒子を使用することができ、その非制限的な例には、In2S3、Cu2S、Ag2S、ZnSe、ZnS、ZnO、ZnTe、ZnSe、TiO2、SnO2、ZnS、または前述の成分に少なくとも1種の元素が添加された形態を含んでもよい。
【0052】
一具体例を挙げれば、前記金属酸化物ナノ粒子は、亜鉛(Zn)含有金属酸化物ナノ粒子であり、より具体的には、酸化亜鉛(ZnO)のバンドギャップを増加させることができる金属(M)が合金化されたもの[ZnMO(M=Ca、Mg)]であってもよい。ZnOのバンドギャップを増加させることができる金属(M)は、カルシウム(Ca)またはマグネシウム(Mg)である。これらの金属は、Znのイオン半径と類似しているので、応力誘発なしにZnO格子内に混入され、ZnOのサイズ減少を通じてZnOのバンドギャップを増加させることができ、好ましくは、酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgO)である。
【0053】
このように、合金によってZnOナノ粒子のバンドギャップを増加させて電子輸送層に適用すれば、伝導帯の最低点(conduction band minimum: CBM)準位のアップシフト(upshift)が生じ、量子ドット発光層のCBMと電子輸送層とのエネルギー近接性をもたらし、これは、電子エネルギー障壁を低減させ、結果として量子ドット領域への電子の注入を促進する。これにより、合金化されたZnOナノ粒子が含有された電子輸送層を具備する発光素子は、ZnOナノ粒子が含有された電子輸送層を具備する素子に比べて、輝度及び効率の面において優れており、さらに低い駆動電圧でもさらに高い発光効率を有することができる。すなわち、前述の電子輸送層を適用する場合、電子注入障壁を低減させ、QLEDの駆動電圧低減、効率向上、さらに消費電力低減の効果が得られる。素子の駆動電圧が低減すれば、素子の発熱も低減し、これにより、素子の寿命増加を予想することができる。
【0054】
一具体例を挙げれば、前記金属酸化物ナノ粒子の表面の一部または全部に、疎水性モイエティを有する有機リガンドが付着されうる。
【0055】
有機リガンドは、当該分野において知られたものを制限なしに使用することができ、有機リガンドのうち一部には、量子ドット表面との親和性に優れた官能基を有することができる。具体的には、カルボン酸、アクリレート、ピリジン、チオール、ホスフィン、ホスフィンオキシド、1級アミン、2級アミン、またはこれらの組み合わせなどがある。
【0056】
有機リガンドは、疎水性モイエティを含んでもよく、具体的には、C1-C30の直鎖または分枝鎖アルキル基、C2-C30の直鎖または分枝鎖アルケニル基、C2-C30の直鎖または分枝鎖アルキニル基であり、好ましくは、C5-C30の直鎖または分枝鎖アルキル基、C5-C30の直鎖または分枝鎖アルケニル基、C5-C30の直鎖または分枝鎖アルキニル基である。
【0057】
使用可能な有機リガンドの非制限的な例には、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイルアミン、n-オクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘキシルホスホニック酸、n-オクチルホスホニック酸、テトラデシルホスホニック酸、オクタデシルホスホニック酸、またはこれらの組み合わせなどがある。
【0058】
そのような有機リガンドは、金属酸化物ナノ粒子の表面に付着され、ナノ粒子の表面を疎水性モイエティによって取り囲み、非極性溶剤に混合及び分散されるようにし、インクジェット吐出時にコーヒーリング効果(CRE)の改善効果を発揮することで、膜均一度を確保する役割を行うことができる。
【0059】
ここで、コーヒーリング効果(CRE)は、蒸発過程の流体力学的効果によってコロイド粒子がエッジに移動し、粒子の密度分布が不均一になる現象を称する。すなわち、粒子サイズが小さいほど、エッジにさらに移動できるので、サイズが小さい粒子が液滴のエッジに近い側に分布し、相対的に大きい粒子は液滴の中心部に近い側に分布する。
【0060】
有機リガンドの含量は、特に制限されず、当該分野において知られた含量の範囲内で適切に調節することができる。分散性及び膜均一性を考慮して、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた金属、例えば、亜鉛(Zn)1モルに対して0.001~10モルの範囲で含まれ、具体的には、0.001~5モルの範囲である。
【0061】
一方、本発明では、電子輸送層を構成する物質として金属酸化物ナノ粒子を主に説明している。しかし、前述の物質に限定されず、当該分野において電子輸送層物質として使用可能な有機物または有機無機合成物を適用することも本発明の範疇に属する。
【0062】
本発明において、前記金属酸化物ナノ粒子の含量は、特に制限されず、当該分野において知られた範囲内で適切に調節することができる。一例として、当該電子輸送層インク組成物の総重量(例えば、100重量部)を基準として5~30重量部であり、具体的には、10~20重量部である。
【0063】
非極性溶剤
従来の金属酸化物ナノ粒子、例えば、ZnMgOは、材料の特性上、アルコール系溶媒を分散媒として使用するが、エタノールを単独で使用する場合、素子の特性は具現される一方、インクジェット吐出が行われていない。また、エタノールと同一の極性溶剤タイプの発光層が使用される場合、同一の溶剤を使用したために発光層がエッチングされるという必然的な問題を避けることができなかった。金属酸化物ナノ粒子を非極性溶剤に分散させることができ、かつインクジェット吐出条件に合う非極性溶剤を見つけるのは、産業界において持続的に非常に困難な問題として残っていた。
【0064】
一方、インクジェット装備の吐出条件は、大きく粘度と蒸気圧(Vapor pressure)に分けられる。粘度が過度に高いか低ければ、均一な膜が得られず、かつ、蒸気圧によって吐出程度が決定される。本発明では、インクジェット吐出に適正な粘度と蒸気圧を考慮し、そのような物性を満たすことができる少なくとも2種の混合溶剤を選定し、これらの混合割合を所定の範囲で制御し、電子輸送層インク組成物の溶剤で構成することを特徴とする。
【0065】
一具体例を挙げれば、少なくとも2種の溶剤が含まれた本発明の電子輸送層インク組成物は、20℃での粘度が1.0~5.0cpsであり、20℃での蒸気圧が0.6~45mmHgであり、固形分含量が5~30重量%である。より具体的には、1.2~3.0cpsの粘度、1.0~30mmHgの蒸気圧、及び5~25重量%の固形分含量を有することができる。
【0066】
前述の固形分含量、粘度及び蒸気圧の物性を有する場合、インクジェット吐出が容易であるだけでなく、吐出されたインクの均一性によって素子の特性が具現できる。
【0067】
本発明による電子輸送層インク組成物は、前述の固形分含量、粘度及び蒸気圧の特性を満たすならば、前記組成物を構成する少なくとも2種以上の溶剤の具体成分及び/またはその含量などに特に制限されない。
【0068】
一具体例を挙げれば、前記非極性溶剤は、シクロヘキシルベンゼン(CHB)を含んでもよい。
【0069】
すなわち、本発明では、分散性が良好なCHBを主溶剤として使用することができ、インクジェット吐出用途を考慮すれば、CHB溶剤を単独で使用する場合、粘度の面において適していない。これにより、CHBの粘度と異なる粘度を有するその他の非極性溶剤を混合するが、それぞれの体積比を調節し、最終組成物が前述の固形分含量、粘度及び蒸気圧の特性を同時に満たすように制御することができる。
【0070】
CHBの粘度と異なる粘度を有するその他の非極性溶剤には、スチレン、ヘキサデカン、アニソール及びシクロヘキサノンを含む群から選択される1種以上の溶剤を含んでもよい。
【0071】
このとき、CHBは、主溶剤であり、全体溶剤100体積%を基準として70体積%以上を有するように構成されうる。シクロヘキシルベンゼンとその他の非極性溶剤との体積比は、7:3~20:1であり、好ましくは、7:3~9.5:0.5であり、さらに好ましくは、7:3~9:1である。シクロヘキシルベンゼンではないその他の非極性溶剤が全体溶剤の30体積%を超える場合、全体溶剤の粘度が高くなり、インクジェットの吐出性が低下しうる。
【0072】
また、本発明において混合した非極性溶剤の特性は、20℃での粘度が1~6cpsであり、20℃での蒸気圧が0.001~0.1mmHgであり、20℃での表面張力が30~40dyn/cmであることを特徴とする。混合した非極性溶剤の特性が前記範囲内にある場合、インクジェットプリンティング用のインク組成物に使用するのに適している。
【0073】
本発明において、インク組成物中の非極性溶剤の総含量は、特に制限されず、当該分野において知られた範囲内で適切に調節することができる。一例として、当該電子輸送層インク組成物100重量部を満たす残量であり、具体的には、70~95重量部である。
【0074】
その他の添加剤
前述の成分以外に、本発明の電子輸送層インク組成物は、発明の効果を阻害しない範囲内で、当該分野において知られた少なくとも1種の添加剤を制限なしに使用することができる。
【0075】
使用可能な添加剤の一例を挙げれば、光安定化剤、熱安定化剤、光開始促進剤、熱開始促進剤、平滑化剤、強靱化剤、増粘剤、着色剤、反応性希釈剤、カップリング剤、分散剤などが含まれる。これらを単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。このとき、添加剤の含量は、当該分野において知られた範囲内で適切に調節することができ、特に制限されない。一例として、前記少なくとも1種の添加剤は、当該電子輸送層インク組成物の総重量を基準として0.01~5重量部、具体的には、0.01~2重量部で含まれる。
【0076】
<電子輸送層インク組成物の製造方法>
本発明によるインクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物は、前述の表面改質された金属酸化物ナノ粒子、少なくとも2種の非極性溶剤、及び必要に応じて配合されるその他の添加剤を、当該分野において知られた通常の方法によって混合及び撹拌して製造されうる。
【0077】
本発明による一実施形態として、金属酸化物ナノ粒子を製造した後、有機リガンドを添加して前記金属酸化物ナノ粒子の表面を改質し、遠心分離して、非極性溶剤と混合し、インクジェットプリンティング用の電子輸送層インク組成物を製造することができる。
【0078】
このとき、前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子に含まれた主な金属1モルに対して0.0001~10モルの範囲で添加することができる。
【0079】
また、非極性溶剤は、2種の非極性溶剤を混合したものであり、具体的には、シクロヘキシルベンゼンとその他の非極性溶剤とを混合したものであり、シクロヘキシルベンゼンとその他の非極性溶剤とを7:3~20:1の体積比で混合したものである。
【0080】
前記電子輸送層インク組成物を製造する一実施形態を挙げれば、(i)亜鉛含有化合物と、ZnOのバンドギャップを増加させることができる金属含有化合物とが溶媒に溶解された反応溶液に塩基性物質を添加し、約50~80℃で30分~2時間均一な速度で撹拌及び加熱し、(ii)前記反応溶液に、亜鉛含有物に含まれた亜鉛イオンのモル数に対して10~70%範囲のモル数で有機リガンドを添加し、約80~120℃で10分~1時間均一な速度で撹拌及び加熱し、(iii)反応が終わった溶液にヘキサンとアセトンを添加して遠心分離し、表面改質された金属酸化物ナノ粒子を得る。(iv)表面改質された金属酸化物ナノ粒子は、シクロヘキシルベンゼンとその他の非極性溶剤とを7:3の体積比で混合した溶剤に混合して分散させ、電子輸送層インク組成物を製造することができる。
【0081】
前記実施形態において、亜鉛含有化合物と金属含有化合物は、特に制限されず、当該分野において知られた物質を制限なしに使用することができる。一例として、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸マグネシウム四水和物などを使用することができる。
【0082】
また、塩基性物質は、特に制限されず、当該分野において知られた物質を制限なしに使用することができる。一例として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、カリウムヒドロキシド(KOH)、ナトリウムヒドロキシド(NaOH)及びアミンで構成された群から選択された少なくとも1種の物質を使用することができる。
【0083】
表面改質された金属酸化物ナノ粒子を、溶媒(solvent)と非溶媒(non-solvent)特性を利用して分離する際に使用可能な溶媒の非制限的な例には、ヘキサン、ベンゼン、キシレン、トルエン、オクタン、クロロホルム、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロベンゼンなどがあり、これらを単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。また、使用可能な非溶媒の非制限的な例には、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどがあり、これらを単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0084】
前記製造方法における混合方法は、特に制限されず、一例として、当該分野において知られた通常のホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリミキサー、ニーダ、3本ロールなどの混合器を使用することができる。
【0085】
前記製造された電子輸送層インク組成物は、分散剤などその他の添加剤のうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0086】
前述のように構成される本発明の電子輸送層インク組成物は、粘度及び蒸気圧の特性が最適化されることで、優秀な作業性及び工程性を付与することができ、特に、インクジェット吐出性、吐出されたインクの形状、基板上に形成されたインクの形状の面においていずれも均一性と安定性を確保することで、インクジェットプリンティング方式に有用に適用可能である。
【0087】
その他、重複する範囲において、前記電子輸送層インク組成物で前述の通りである。
【0088】
<発光素子及びディスプレイ装置>
本発明の一実施形態による発光素子は、前述の電子輸送層インク組成物から形成された電子輸送層を具備するという点において、従来の発光素子と区別される。
【0089】
本発明の一実施形態による発光素子は、量子ドット発光素子(Quantum dot Light Emitting Device)、有機発光素子などがあり、これらに限らず、多様な種類の発光素子に適用可能である。
【0090】
一般的に、発光素子は、第1電極、前記第1電極と対向して配置される第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される発光層、前記第1電極と前記発光層との間に配置される正孔輸送層、及び前記発光層と前記第2電極との間に配置され、前述の電子輸送層インク組成物をインクジェットプリンティングして形成された電子輸送層を含む。必要に応じて、前記発光素子は、正孔注入層及び電子注入層のうち少なくとも1層をさらに含んでもよい。
【0091】
このとき、電子輸送層は、第2電極からの電子の注入を容易にし、発光層へ電子を伝送する役割を行う。そのような電子輸送層は、ZnOのバンドギャップを増加させることができる金属が合金化されたZn含有金属酸化物ナノ粒子を含む。一例として、電子輸送層は、発光層上に前述の電子輸送層インク組成物をインクジェットプリンティングした後、溶剤を揮発させて形成されうる。本発明の電子輸送層は、電子注入層の役割を兼ねる単一層構造で提供されてもよく、別個の電子注入層を積層構造で形成されてもよい。
【0092】
また、本発明は、前述の量子ドット組成物を含むディスプレイ装置を提供する。ここで、ディスプレイ装置は、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)などがあるが、これらに限定されない。
【0093】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
【実施例0094】
実施例1.非極性溶剤型のインクジェット用の電子輸送層インク組成物
酢酸亜鉛(Zn(OAc)2)と酢酸マグネシウム四水和物とをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた後、塩基性物質であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を注入し、約60℃に加熱し、約1時間反応させた。Zn(OAc)2のモル数に対してオレイン酸を約30%モル数有するように添加し、約100℃で約30分間反応した。反応が終わった溶液は遠心分離し、シクロヘキシルベンゼン:スチレンを7:3の体積比で混合した溶剤に分散させた。
【0095】
実施例2.
実施例1と同様であるが、表面改質が終わった溶液の遠心分離を2回行った後に非極性溶剤に分散させた。
【0096】
実施例3.
実施例1と同様であるが、オレイン酸のモル数をZn(OAc)2のモル数に対して約50%モル数有するように添加して製造した。
【0097】
比較例.従来のインクジェット用の電子輸送層インク組成物(極性溶剤型)
実施例1と同様の方法によって反応が終わった前記溶液に別途の有機リガンドの添加なしに反応を終了し、ヘキサンとアセトンとを添加して粒子を遠心分離した後、DMSO、エタノール、2-メトキシエタノール及びブタノールを5:3:1:1の体積比で混合した溶剤に分散させた。
【0098】
試験例1.分光評価
実施例1及び比較例で製造された電子輸送層組成物を利用して、吸収スペクトルを測定した。
【0099】
図1を参照すれば、実施例1(青色線)で合成されたZnMgOナノ粒子のUV-可視吸収スペクトルと、比較例(オレンジ色線)で合成されたZnMgOナノ粒子のUV-可視吸収スペクトルとが共に示されている。
図1に示されたように、両者は、類似の吸収スペクトルを有し、特に約305nmにおいて最大吸収波長を有することが分かる。
【0100】
したがって、実施例1の金属酸化物ナノ粒子を使用しても、既存の極性溶剤型のインクジェット用の電子輸送層インク組成物と同一の分光特性を表すことができることを確認することができた。
【0101】
試験例2.実施例1、2及び比較例で製造されたZnMgOのTGA分析
TGA分析は、温度変化による試料の質量変化を測定する熱分析技法である。重量変化が急激に起こる温度を有機物の分解温度であると解釈することができ、総重量減少の程度によって有機物が占めていた重量%を数値的に確認することができる。
【0102】
実施例1、2及び比較例で製造されたZnMgOを利用してTGA分析を行い、その結果を下記表1及び
図2に示している。
【0103】
【0104】
比較例で製造されたナノ粒子に含まれた約10%の有機物の重量減少があった。
【0105】
実施例1の場合、約30%の有機物の重量減少があり、実施例2の場合、約15%の有機物の重量減少があった。これから、ZnMgOの表面に付着された有機リガンドは、遠心分離を多く行うほど、ナノ粒子から多く離れることが分かる。
【0106】
また、比較例で製造されたナノ粒子には有機リガンドを添加せず、分解温度が約300℃である一方、実施例の分解温度はいずれも約360℃と同一であった。したがって、比較例から除去される有機物は、遠心分離過程で少なく除去された有機物であるものと判断され、実施例から除去される有機物は、ZnMgOの表面に付着されていた有機リガンドであるものと把握される。
【0107】
試験例3.実施例1、3及び比較例で製造されたZnMgOのFT-IR分析
実施例1、3及び比較例で製造されたZnMgOを利用してFT-IR分析を行い、その結果を
図3に示している。
【0108】
図3を参照すれば、実施例1及び3では、2800~2900nmで類似形状のピークが示されるが、比較例では、当該範囲でピークが全然示されていない。したがって、実施例で製造されたZnMgOの表面には有機リガンドがよく付着されていることを確認することができる。
【0109】
試験例4.実施例1、3及び比較例で製造されたZnMgOの分散性評価
実施例1、3及び比較例で製造されたZnMgOを非極性溶剤と混合及び撹拌し、分散が可能であるか否か確認した。非極性溶剤は、シクロヘキシルベンゼン:スチレンを7:3の体積比で混合した溶剤を使用した。その結果を下記表2に示している。
【0110】
【0111】
実施例1及び3は、有機リガンドの添加量の差と関係なくいずれも非極性溶剤に分散可能であったが、比較例のナノ粒子は、非極性溶剤と混合したとき、層が分離され、全然混合されない様子が示されている。
【0112】
試験例5.インクジェット吐出性評価
実施例1の電子輸送層インク組成物を利用して、インクジェットプリンティングによる吐出性を評価した。具体的には、製造された各インク組成物を、インクジェットプリンティング装置(OMNIJET200)を使用して吐出し、このとき、1ドロップの形態に吐出し、その結果を
図4に示している。
【0113】
図4を参照すれば、それぞれのドットは円状に導出され、他のドットの領域を侵犯するか、ドット間の間隔が変わるなどのいかなる変形も見つけられていない。
【0114】
試験例6.インクジェット形状(CRF)評価
実施例1及び比較例の電子輸送層インク組成物を、インクジェットプリンティング装置(OMNIJET200)を使用して吐出し、基板上に形成されるインクは、三次元表面形状測定器(NV9000、Zygo)を利用して分析し、このとき、コーヒーリング効果(coffee-ring effect)の程度を定量化するために下記式1を導入し、その結果を
図5及び6に示している。
【0115】
[式1]CRF(Coffee Ring Factor)=Hmax/Hmin
前記式中、Hmaxはパターンの最も厚い厚さを示し、Hminはパターンの最も薄い厚さを示し、CRF値はコーヒーリング効果の程度を意味する。すなわち、CRF=1は、コーヒーリング効果が完壁に除去されていることを示す。
【0116】
図5を参照すれば、実施例1のインクジェット形状のHmaxは約11.86nmであり、Hminは約9.49nm(図示せず)であった。したがって、CRFは約1.25と1に非常に近い値であり、立体形状を見ても一断面ではなく全体的に均一な形状を有していることを確認することができる。
【0117】
一方、
図6を参照すれば、比較例のインクジェット形状のHmaxは約15.26nmであり、Hminは約9.66nm(図示せず)であった。したがって、CRFは約1.58と1から非常に遠い値であり、立体形状を見ても、一断面のみコーヒーリング効果が明白に示されたものではなく、全体的にコーヒーリング現象が示されていることが分かる。
【0118】
また、参考までに、それぞれ同一の量を吐出したにもかかわらず、Hmaxが実施例1では約11.86nmであり、比較例では15.26nmであることを比較してみても、比較例では、インクジェット形状の高低の偏差が非常に大きいことを予想することができる。
【0119】
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で多様に修正または変形されて実施可能なことは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。